男「ワンダーイズマイ社蓄ライフ」 (12)

男「ふぅ、今日も仕事が終わった」

男「帰るか。飯食って、風呂沸かして入って、明日の提出物を済ませたら……寝るか。明日早いもんな」

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男「……はい、はい、すいません」

上司「それが社会人の常識ってもんだろうが。お?お前がボケっと休憩してる間に同僚は仕事進めてるぞ。あいつはほぼ休憩してないんだぞ」

男「仰る通りで」

上司「人の心が無いのかお前は。少しは変わってやろうとか思わないのか」

男「すいません。すいません」

男「終わったな、今日も」

男「ここで何も考えず、喉元過ぎれば熱さを忘れるぐらい俺がアホなら、楽なんだろうがなぁ」

男「特に今日は何もない。早く帰れる。けど気は抜きすぎ無いようにしよう。明日また同じミスをやらかしたら申し訳ない」

上司「よくやってくれてるよ、男は」

男「はい」

上司「若い内は怒られる事が仕事みたいなもんだ。まぁここの奴らは年取ってからも怒られてるがな。よく見とくと良い。あいつらが怒られてることはそれだけ大事なことだ。いつか、お前も背負う様になる」

男「頑張ります」

上司「落ち着いてゆっくりな。テンパるとパニックになるのがお前の悪い癖だ」

男「今日は褒められたな」

男「明日、この信頼を裏切ったら意味がない。反復するんだ」

男「……まだ9時か。11時ぐらいまでは起きてられる。それまで趣味を」

男「いや、寝よう。仕事に響く」

神様「何が不満なのだ?」

男「あなたは?」

神様「神様だ。お前を異世界へ転生させてやろうと思った」

男「なるほど、ここは夢の中か」

神様「聞こう。お前の不満は何だ」

男「……不満は、あるかも知れんが口に出した事はない。だからこんな夢を見てるんだろう。態々人に聞かれる夢だなんて、口開けたままの雛鳥でもあるまいし。惨めなものだ」

男「不満か。体面なく言って良いのなら、働く事に不満がある。それは巡り巡って会社や上司への不満なのかもしれないが、原因を突き詰めると俺自身に不満が帰ってくる」

男「俺は学生時代、好き勝手やり過ぎた。人生を謳歌していた。この20年で一生分楽しんだのなら、残りの人生、苦しまなきゃ嘘だ。償いにならない」

神様「慰め目当ての自虐は聞き飽きた。不満を言うのだ」

男「自虐以外の不満なら、勝手なもんだよ。結局の所、俺は何もかも思い通りに行かないから不満なんだ。まるで俺が神様にでもなったかの様に何でもかんでも思い通りになる。そういう事を望む好き勝手。それが叶わないから不満なんだ」

男「働く上での息苦しさ、緊張感。そんなもの誰でも経験する。適当に折り合いつけて適当に上手くやる。俺はそれが出きんらしい。適当に仕事をこなす力はない。だから毎日1秒だって仕事の予習を忘れず繰り返して、何とか上司から頑張っているヤツだって評価を貰ってる。無論、それでも努力が空回りするやつだと思われてるがな」

男「嫌なら居心地の良い場所へ逃げれば良い。だが俺にそれは出来ない。その為の努力も、リスクを負う覚悟もない。勝手な自業自得だよなぁ。何も苦労せずボーッと突っ立ってるだけで思い通りになれ、だなんて」

男「もしあなたが神様なら、俺を殺してくれ。俺の臓器を使って救われない人を救ってくれ」

神様「なんと浅ましい。綺麗事を言えば善人になれるとでも?お前は真性のクズだ。
聖人じみた発言の裏には、「苦しませずに殺してくれ」「他人の役に立てばちょっとは自分を良く見せる保険になる」という汚さが見えている」

男「俺の夢だもんな。お見通しだよな。ここで死にたきゃ自分で死にゃあいいのに、人に頼る。迷惑をかける。結局自分じゃ何にも出来ない愚図のくせに人に頼るから俺はダメなんだ」

神様「どうするのだ、お前は」

男「これからはもう、不満は言わない。抱え込んだまま隠し通す。こうなったのは自業自得なんだと自分を納得させて、普通の生き方に合わせる努力をしていくよ」

男「……朝か」

男「さぁて、今日も一日」

男「頑張ろう!」






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