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とどのつまり、あたしはさ、
「シンデレラ」ってお話自体が嫌いだったんだろうなって思うんだ。
多分、だけど。
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突然どうしたんだって?
まぁまぁ、折角スカウトしたんだし、身の上話の一つくらい聞いてくれてもいーんじゃない?
今日は色々あったからさ。
たまにはセンチメンタルなキブンってのになるのよ、あたしもね。
雨、止まないねえ。
で、何の話だっけ。
そうそう、あたしがシンデレラを嫌いって話だった。
んー、別に具体的に此処が!って訳じゃないんだけど、なんかモヤモヤするんだよね。
意地悪な姉達に虐められていたシンデレラは魔法使いの力でビビデバビデブーっと王子様と結ばれてめでたしめでたし。
略しすぎ?でも大体こんな感じじゃない?
まぁ簡単に言っちゃえば、なんにもしてないのに救われるシンデレラが気に食わなかったんかねぇ。
子供じみたちっちゃな嫉妬。あたしはつまんない人生を歩んでるのにーってね。
我ながらイイ性格してると思うよ?
本来はもうちょっと違うらしい話らしいけどね。
生活に不満があったのかって?
いやいや、ぜーんぜん?
ほら、あたしの実家和菓子屋じゃん。
あれ、言ってなかったっけ。初耳?そう。
とりあえず和菓子屋なんだ。それなりに歴史もあるらしいよ。
お金にも別に不自由したことはないし、両親もちょっと厳しいけど良いヒト達。学校では友達も出来たし、成績も素行もごく普通な優等生。
こんな環境を恵まれてないなんて言おうものならもう夜道は一人で歩けないね、確実に。
でもさ、ふと思っちゃんたんだよね。
あたしが生きてるのは誰の人生なんだろうって。
ないんだよね。
何かに熱中したことも、必死になったことも、絶対忘れられないようなことも、死ぬほど悔しい思いをしたことも。
中学では部活に入らないでテキトーに過ごしてたし、高校もみんなが行くから進学したってだけで目的も夢もありゃしない。
誰かと同じような道を進んで、あとは実家を継いで良く知りもしない男の人と結婚して後継を作ってめでたしめでたし。
何かが不足することは無かったけど、何かが満たされることも無かった。たぶん、これからも。
だってきっと、あたしが何もしなくたってあたしのお話の続きは誰かが書いてくれるし、先の展開なんてみんな決まり切ってる。王子様も魔法使いもカボチャの馬車も、そこには出て来てなんてくれない。
じゃあさ、あたしは何の為に生きてるんだろう。
そんな風に一度考えちゃったら頭から離れなくて、やる気も何もなくなっちゃって。
お金のこともあるし、大学まで進むのは気が引けたからってのもあるけど、高校を卒業してからは家でごろごろしてばっかりだった。一応お店の手伝いもしてたけどね。
うん、まあ、そういうこと。
そんなだからうちの親にも「少しは独り立ちしろ!」って追い出されちゃった訳よ。
…お伽話みたいな展開なんて、有るはずないと思ってたんだけどな~。
……………はい!しゅーこちゃんの恥ずかしい自分語りはここまで!
慣れないことはするもんじゃないね、やっぱ。
何で急にこんな話をしたのかって?
いやぁ、まぁ、言い訳…かな。
断ったじゃん、最初。Pさんのスカウト。
追い出されたばっかりで、さてこっからどうしようかなって考えてた時に突然話しかけてくるんだもん、ビックリしたよ。
それで、差し出された名刺に「シンデレラガールズプロダクション」って書いてあったから、ちょーっとイラっとしちゃってさ、年甲斐もなく。
もちろん、それが全部ってわけじゃないよ?三分の一は「知らない人に話しかけられた」っていう警戒。もう三分の一が「スカウトなんて怪しい」。残りがさっきの。
…ごめんね、八つ当たりして。
あはは、あたしだってまさか数時間後にまた会うとは思ってなかったよ。
やっぱり冷えた身体にはお風呂が1番だよねー、あのままだったら絶対風邪引いてたわ。
わざわざこんな宿まで取って貰って…助かったよ、本当に。そのちひろさんって人にも今度お礼言っとかないとね。うちの生八つ橋でも贈ろうかな。
それにしても…Pさんって結構ええかっこしいなん?それか筋金入りのお人好しか…ついさっきスカウト断られた女の子に傘差し出して「風邪引くぞ」なんてさ~。
うん、出会ったのがPさんで良かったよ。王子様は白馬じゃなくてずぶ濡れスーツと共に現れるんだね、初めて知った。
なんてね。
またまたご冗談を~。
Pさん、多分悪いことできないでしょ。
ましてやスカウトしてきた女の子襲うなんて以ての外。
うん、そういう顔してる。京女の勘ってヤツ?
それにしゅーこちゃんだって何も考えなしにほいほい男について行くほど頭空っぽではないつもりだし?
…雨、ちょっと弱くなって来たね。
ね、聞かせてよ。Pさんがあたしを見て見出したってものを。
え?心変わりというか、んー…物理的に頭冷やされたからねぇ。冷静になったというか、気付かされたというか、ね?
なんにもしてこなかったのはあたしの方だったんやなぁ…って。今までだっていくらでもチャンスはあった。でもあたしはそれを見て見ぬ振りして生きてきた。失敗するのが怖いとか、そういうのよりもっと根本的なところできっと、外へ出ることを拒んでた。
だけどシンデレラは、自分の意思でお城へ行ったんだよね。
長々と話聞いてもらったのも、頭の中整理したかったからでさ。やっと決心できた…ってより、自分の気持ちに素直になれそうなんだ。
多分、これが最後のチャンス。だから、思いっきり背中を押してほしいんだ。
臆病なあたしが、小さな一歩を踏み出すために。
…えっ、そんなようわからん勘で声かけたん?
そっかー…うーん…そっかぁ……そういう人やったかぁPさん…
いや、まぁ、でも。
悪くはないと思うよ?
ロマンチストな魔法使い、なんてちょっとキザすぎるかもしれんけどね~。
それにきっと、変な理屈よりずっと信じられるよ。
確証は無いけど、確信はある。
それならひとつ、目指すとしましょっか。
Pさんが思い描く、サイリウムの海の真ん中で一番輝くあたしってのを。
そーいうわけで、これからもよろしくね?
あたしのプロデューサーさん。
まずはウチの両親にご挨拶だね!堅物だよ~?
ま、でもPさんなら大丈夫でしょ。二人とも、真っ直ぐな人は嫌いじゃないから。
お城までの道は長いけど、一歩ずつ、ね。
ー ー ー ー ー ー
ー ー ー ー ー
ー ー ー ー
ー ー ー
ー ー
ー
いや~、このお宿も久々だねぇ。
覚えてる?プロデューサー。
あたしとプロデューサーが初めて会った日のこと。
もう随分と懐かしいね、あの日は雨だったっけ?
あたしがシンデレラガール、かぁ。
今更実感が無いなんて言うつもりはないけどさ、やっぱどうにも不思議な感じがするんだ。
おっ、八つ橋あるやーん。いただきっ!
うん、美味しい。ウチのほどじゃないけどね!なーんて。
あれから色んなことがあったねぇ。
あたしは要領は良い方だからなんとかやっていけたけどさ、最初のうちはついていくのも大変だった。事務所のみんなも他の事務所の子達もみーんな、本気でアイドルをしてるんだもんねぇ。
眩しくて目を逸らしたくなった時もあったよ、もちろん。やっぱしゅーこちゃんに熱いのは似合わんわぁって言い訳して逃げようとしたことも。
でも一番近くにびっくりするくらい真面目な人がいたからね、あたしももう少しだけ頑張ろっかなって思えたんだ。
さぁ、誰のことだろうねぇ?
初めてのライブのことは今でも覚えてるよ~。
ちっちゃなステージで、お客さんもそんなにいなくて、メインでもなかったよね。
それでも自分でも驚くくらい緊張してたなー。誰かの期待に応えよう、なんて思ったのは初めてだったからさ。頭の中真っ白になって、プロデューサーに手握ってもらうまでだいぶ危なかったよ。初々しいしゅーこちゃんも可愛かった?
あ、ちなみにこの間の握手会にその時からのファンだーって人も何人か来てくれてたよ。アイドル冥利に尽きますわぁ、ホントに。
うん、純粋に嬉しかったよ、すごく。
仕事に慣れてからはだいぶ余裕が持てるようになったよね。まぁ力の抜き方には自信があったし、割と早かったとは思うよ。
改めて事務所を見回してみて唖然としたなー。
悪姫だったりサイキッカーだったりギフテッドだったりお嬢様だったり女王様だったり世界レベルだったり…
ホント、どうやって集めてるんだろうねあの濃い面子。そのおかげで沢山面白い出会いは出来たけど。
夢みたいだよね~。
実際夢見てるだけだったりして。
目覚ましが鳴って目を覚ますと、そこにはまだうら若きしゅーこちゃんが…!
居間からお母ちゃんが「周子ー起きなさーい!」なんて大声で呼んでてさ、何処かから甘ーい小豆の匂いが漂ってくるんだろうね。そんで今まで通りぐうたらな生活をしてるのかな。もしかしたらちゃんと和菓子職人の修行をしてたりしてね~。
うーん、ちょっとそれもいいかな~、なんて。
もちろんジョーダンよジョーダン。
しゅーこちゃんはもうちょっと布団でゴロゴロぬくぬく微睡んでいたいからね。
さて、それじゃあたしはお風呂入ってこようかな。
分かってるって、流石に今回は自分の部屋に帰りますよ~。なんてったってあたしはアイドルだもんね。
明日のライブに備えてゆっくり眠らせていただくとしますよっと。
…ね、プロデューサー。
もしさ、12時の鐘が鳴って、あたしが夢から覚めちゃっても…あたしのこと、ちゃんと見つけてくれる?
即答かー、照れるやないの、もう…
うん、でも、安心したよ。
あたしはまだ、この幸せな夢を見ていられる。
…んー、なんかこのお宿にいると妙にポエマーになっちゃうねぇ、お互い。どっかの誰かさんの影響でも受けるんやろか。あー恥ずかし!
……お月様、綺麗やねえ。
それじゃおやすみ、プロデューサー。
これからも末永くしゅーこちゃんをよろしくね~。
叶うなら魔法が解けちゃったそのあとも、ね?
以上です。ありがとうございました。
周子、誕生日おめでとう。
大切な副担当のひとりです。
せめてフェス限か限定を早く手に入れたい…
モバのSRはまだまだとても手を出せそうにない…
あ、一応恒常SSRは持ってます。
過去作
【モバマス】雪解けと春の夢
【モバマス】雪解けと春の夢 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1505830682/)
【モバマス】追憶は珈琲と共に。
【モバマス】追憶は珈琲と共に。 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1504512248/)
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