愛海「どあ・いん・ざ・ふぇいす」 (16)


・デレマスのSSです


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愛海「……って知ってる?」

P「聞いたことないな。なんだそれ」

愛海「私も昨日テレビで初めて知ったんだけどね、心理テクというか、交渉術の一つらしいんだ」

P「そんなん仕入れる暇があったらダンスの振りの一つでも覚えてこい」

愛海「まあまあそう言わずに。これは私にもプロデューサーにも有益な情報なんだよ? ね? ちょっとは興味あるでしょ?」

P「……とりあえず聞いてやる」


愛海「じゃあプロデューサー。私甘いものが食べたい気分だから、アイス買って? ハー○ンダッ○のイチゴ味がいいなー」

P「なんだよ藪から棒に」

愛海「いーじゃんいーじゃん。授業料だと思ってさー」

P「ダメだダメだ。余計な間食はアイドルの敵だからな」

愛海「えー。でも私最近頑張ってると思わない? それこそダンスだってさ、昨日トレーナーさんに褒められてたの見たでしょ?」

P「む、確かにそうだったな……でもハー○ンはダメだ。あれは他のアイスより高カロリーって聞いたことがある」


愛海「本音は?」

P「俺でさえ高くて滅多に食べられないのに、お前だけ食うのはなんか気に食わない」

愛海「ちぇー。じゃあそれより安かったらいいの?」

P「……まあご褒美だからな。それくらいは許そう」

愛海「じゃあ月見大福ならいい?」

P「仕方ない。トレーナーさんには内緒だからな」

愛海「やったー! プロデューサー大好きー!」

P「ははは、じゃれるなじゃれるな」


愛海「……とまあこれがどあ・いん・ざ・ふぇいすというものらしいんだよね」

P「え?」

愛海「さっき私は最初の要求としてハー○ンを出しました。でもそれはプロデューサーに断られてしまいました」

P「うむ」

愛海「そこで私は妥協案として月見大福を所望しました。プロデューサーはこれを受け入れました」

P「ハー○ンよりは財布に優しいからな」

愛海「めでたく私は月見大福を食べる権利をゲットしたのです、と」

P「これのどこが交渉術なんだ? お前の要求のランクを一つ下げさせたことで、結果的に俺が得をしているように見えるんだが」


愛海「……私が初めから月見大福を狙っていた、としたら?」

P「……なん……だと?」

愛海「どあいんざふぇいすって言うのはね。初めの要求の難易度をわざと高く設定して、一旦相手にわざと断らせるの」

P「お前の場合、最初のハー○ンがそれにあたるわけか」

愛海「そう。で、その時プロデューサーはどんな気持ちになった?」

P「高すぎるからもっと安いのなら買ってやろうかなって……はっ!?」

愛海「ふっふっふ。気付いたようだね」

P「……なるほど。要求を断らせた時の後ろめたさとか、そういうのを利用して俺に月見大福を買わせるように仕向けたってことか」

愛海「正解! ちょっと気付くのが遅かったようだけどねー」

P「くそ、まんまと嵌められた」

愛海「ふっふっふー」


P「……それはいいとして、これがなんの役に立つんだ?」

愛海「このテクニックは色んな場面で使えると思わない? 営業の時とか」

P「ふむ。考えてみれば確かに使えそうだな。諸々の対ちひろ交渉にも……」

愛海「ちひろ交渉ってなに?」

P「あの緑、ことあるごとにドリンクとか石とか買わせようと交渉してきやがるんだ。これを使えばちょっとは有利に話が進むかもしれない」

愛海「欲しくなかったら買わなきゃいいのに」

P「簡単に言うけどな、あの人の交渉術はすごいんだぞ。相対して気付いた時には財布から諭吉が消えてるんだ」

愛海「交渉術というか、最早それは催眠術の類じゃないかな……?」

P「武器はあるに越したことはないだろ。例え相手が悪魔だとしても……」

ちひろ「あら、二人で仲良く何の話ですか?」

P「ヒィッ!?」


愛海「あ、ちひろさん。こんにちはー」

P「こ、っこここんにちわ!?」

ちひろ「こんにちは。なんだかプロデューサーさん、すごく狼狽えてませんか?」

P「い、いやいや!? 全然そんなことありませんことよ!?」

愛海「ちひろさーん。Pさんさっきちひろさんの悪口言ってたー」

P「愛海てめぇ! 寝返り登山か!」

愛海「なにさ寝返り登山って」

P「裏切ったなってことだよ!」

ちひろ「プロデューサーさん?」

P「ハイ」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……」

P「……」

愛海「……」




ちひろ「今なら超お得にドリンクとスタージュエルのセットが大特価ですよ♪」

P「ハイ、買わせて頂きます」

愛海(交渉術というか、単に気圧された……)


P「くそぅ! くそぅ!」

愛海「うひひ、がっつり買わされたねー。まぁこれはプロデューサーが悪いし。他人の悪口を言うもんじゃないってことだね」

P「交渉術云々の問題じゃなかったってことか……」

愛海「そーそー。じゃ、プロデューサー。はい」

P「? なんだその手? 俺の山でも登りたいのか?」

愛海「平野を登りたいとはおかしなこと言うね。隆々とした雄っぱいでもあれば話は違うけど」

P「泣くぞ」

愛海「月見大福買うためのお金をちょうだいって言ってるのー」

P「あぁそういうこと……ほらよ。ついでだから俺の分も買ってきてくれ」

愛海「はーい」ガチャ


P「全く……」

愛海「あ、そうだプロデューサー?」ガチャ

P「なんだよ。アイス買いに行ったんじゃなかったのか」

愛海「んーちょっと思いついたことがあって」

P「?」



愛海「……プロデューサーは私をトップアイドルにしてくれるんだよね?」

P「……藪から棒にどうした」

愛海「いいから、答えてよ」

P「……」

愛海「……」


P「……あぁ。大丈夫だ。絶対にしてみせる」

P「お前はパッと見はちゃらけたセクハラ娘だが……根は真面目で負けず嫌いで、他の誰よりも頑張ってることを知ってるからな」

愛海「……」

P「だから大丈夫だ。俺に任せとけ。絶対に……」

愛海「もしなれなかったら」

P「え?」

愛海「もし……私がトップアイドルになれなかったら、プロデューサーはどうするの?」

P「……」

愛海「失望する? 諦観する? こんなもんかって切り捨てる?」

愛海「プロデューサーは……どうするの?」

P「……」


P「その時はその時だよ」

愛海「え? それって……」

P「安心しろ。そうだな……」

P「もしお前が年をとって酒を飲むようになっても、微妙な洒落を言うようになっても、腰に湿布を貼るようになっても、皺だらけになっても」

P「俺はずっと、間違いなくお前のプロデューサーだよ」



愛海「……そっかぁ」

P「なんだ? 急に真面目な話なんかして。さっさと月見大福買ってこい」

愛海「はーい!」ガチャ

P「……なんだったんだ」




愛海(……プロデューサーには交渉術なんて必要無いよ)

愛海(……ありがとう)


以上です。
愛海ボイス追加おめでとう!

雪見だいふくとちゃうんか



※この物語に登場する云々は実在のなんたらにかんたら

はぇ~……

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