男「今の人って、みーんないつでもどこでもスマホいじってるよな」
友人「まぁな」
男「俺だって、家でも外でも、下手すりゃ寝ながらいじってることもあるもん」
友人「風呂場でいじる奴すらいるらしいぜ」
男「マジかー」
友人「マジマジ」
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男「よし、決めた!」
友人「何を?」
男「俺、一日だけ全くスマホにさわらない生活をしてみようと思う!」
友人「一日だけかよ」
男「目標に無理があると続かないからな」
友人「あ~……でもたしかに、一日だけでもかなりキツイかも」
男「明日は休日だし、さっそくやってみるよ」
友人「頑張れよ」
~ 自宅 ~
男「……ん」ムクッ
男(やべえ、ずいぶん朝寝坊しちゃったな)
男(あ、そうか……スマホのアラーム切ってたからな)
男「とりあえず、どこか出かけるか」
男(今日はスマホ使わないって決めたけど、万が一の時のために携帯だけはするようにしよう)
~ 駅 ~
男「たまにはどこか、めったに行かない駅に行ってみるか」
男(えぇ~と、時刻表をスマホで調べ……)スッ
男(って危ない危ない! いきなり禁を破るとこだった!)
男「おー、着いた着いた」
男「ちょうど昼飯時だし、どこか入ろうかな」
男(ハズレを引くのは勘弁だから、さっそく口コミサイトを……)スッ
男(ってまたかよぉ!)
男(スマホには頼らず、自分の勘だけで入る店を決めるんだ!)
~ ラーメン屋 ~
男「味噌ラーメン」
店員「あいよー!」
男「……」
男「……」
男「……」ソワソワ
男(ヒマだな……)
男(いつもなら待ってる間、ずっとスマホいじってるから退屈しないけど)
男(スマホを使わないとこうも時間を持て余すとは……)
男「あぁ~、うまかった」スタスタ
通行人A「おい、このニュース見たかよ! 俳優の○○が書類送検だって!」
通行人B「マジで?」
男(おおっ、気になるニュースだ!)
男(うう……ニュースサイトを見たい!)
男(掲示板でこのニュースがどう語られてるか知りたい……!)
男(ああ~……スマホいじりたい)
男(あのサイト見たい……あの情報検索したい……暇潰しにゲームしたい……)
インターネット… 検索機能… 動画… 画像… 音楽… 地図… ゲーム…
LINE… 電子書籍… カメラ… 辞書… 天気… 買い物… 財布代わり…
男(こうして考えると、スマホは誘惑のかたまりだな!)
~ 自宅 ~
男「ふぅ~……」
男(どうにか一日スマホを使わずに済んだぞ)
男(ところで今何時だ? スマホで……)
男「あぶねええええええええ! 最後の最後でやっちまうとこだった!」
――
――――
友人「一日スマホなし生活はどうだった?」
男「予想以上にキツかった」
男「普段、自分がいかにスマホに頼り切ってるかってのがよく分かったよ」
男「ちょっとしたことでいじりたくなるもん」
友人「だよな、よくやり遂げたもんだよ」
男「だからこれからも、連絡とかを除いてなるべくスマホを使わないようにするよ」
男「多分すぐ挫折するだろうけど」
友人「そうやって意識するだけでも違うだろ。偉いよ、お前は」
一週間後――
友人「どうだ?」
男「まだ続いてるよ。本当に必要な連絡の時以外は、スマホ使わなくなった」
友人「なにか効果はあったか?」
男「まず……自分に自信がついたな。スマホに頼らなくなったから」
男「あと、スマホやらないと当然目も疲れないし、やることないから夜更かしもしなくなったな」
友人「偉いなぁ、俺もちょっとやってみたけど半日でギブだった」
~ 自宅 ~
男(スマホは使わないから、インターネットする時はパソコンで……)カタカタ
男「ってこれじゃ意味ないじゃねえかぁ!」
男「よし、決めた! パソコンも使うのやめよう!」
男「あと……元々そこまで見てなかったけど、テレビもやめよう」
男「情報はなるべく新聞で仕入れるんだ!」
友人「おーっす」
男「おう」
友人「なんかだいぶ健康的になったな」
男「ああ、スマホ、パソコン、テレビをやめたからな」
友人「パソコンやテレビまでやめたのか!」
男「おかげで目がすっきりして、前みたいにしょっちゅう目薬さすこともなくなったよ」
友人「ふぅ~、最近はすっかり寒くなったな~」
男「ああ、家じゃいつも毛布にくるまってるよ」
友人「え? お前んち、たしかストーブあっただろ?」
男「ああ、今はもう冷暖房に頼るのもやめたんだ」
友人「へ? どうして?」
男「なんていうか、ああいうのはズルなような気がしてさ。やっぱり気候をそのまま受け入れないと」
友人「へ、へえ~……」
友人(あいつんちの近く通りがかったけど、電気ついてないな……留守か)
ガチャッ
男「あれ、奇遇だな」
友人「いたのか! 電気ついてないから、てっきり留守かと……」
男「電気を使うのをやめたんだ」
友人「電気を!?」
男「おかげで日が沈んだら寝るしかないから、すっかり健康さ!」
友人「久しぶり~……ってなんだその服!?」
男「俺手作りの服さ。似合うか?」
友人「あ、ああ」
友人(布と葉っぱを組み合わせた、いかにも手作りって感じの服だ……)
男「店で衣服を買うって、なんか違う気がしてな。服は自分で作ることにしたんだ」
男「よかったら、お前の分も作ってやろうか?」
友人「いやいや! 俺は店の服でいいや! ハ、ハハハ……」
男「そうか」
男「お、これは食える雑草だ!」ブチブチッ
友人「お前なにしてんだ……!?」
男「飲食店に入ったり、店で売ってるものを食べるのはやめにしたんだ」
男「これからは食料は自然から調達!」ムシャムシャ
友人「いや、いくら食える雑草っていっても、生でいくのかよ……せめて煮るとか」
男「火は怖いからな!」
男「うん、うまい!」
友人(あいつがアパートから消えたのは、それからすぐのことだった)
友人(もちろん、いくら電話しても繋がらない)
友人(きっとあいつは自分の住居も、現代的な建物には頼らないことにしたのだろう)
友人(一体どこにいっちまったのやら……)
――――――
――――
――
友人(それからしばらくして――)
友人(スマホをいじってたら、こんなニュース動画を目の当たりにした)
『猿とも人ともつかない全裸の生物が、山中で飛びまわってる姿が目撃され……』
『ウホホッ! ウホホホッ! ウーホーッ!』
友人(あいつ、ついに野生化したのか……)
友人(だけど、動画に登場するあいつの顔は、どこか幸せそうで羨ましかった)
― 終 ―
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