【安価】勇者「勇者になってみっか……」 (66)

~はじまりの街~

勇者「ニートから勇者に転職したはいいけど、何すればいいんだろ。平和過ぎてやることねーわ」

勇者「とりあえず、酒場に行って仲間を集めるか。そんな暇人いんのかな……」

カランカラン! 酒場に行った

酒場の主人「よう兄ちゃん、こんな朝っぱらからどうした。就職先が決まらずヤケ酒かい?」

勇者「おい主人、俺はニートから勇者に転職したんだぞ。早く仲間を寄越せ。なるべく強い奴な。あと人件費が安くて、優しくて、俺の言葉に逆らわない奴」

酒場の主人「フム、ま、いいだろう。ちょうどそれっぽい冒険者が入ったところなんだ。窓際の席に座ってる、あの>>3だよ」

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次期魔王(女)

勇者「やあ、そこのお嬢さん」

次期魔王「なんですか……私のことはほっといて下さい」

勇者「主人、ビールをふたつ」

次期魔王「ちょっと! 何を勝手に……!」

勇者「俺のおごりだ、呑めよ。今にも身投げしそうな表情に見えたからさ。俺で良ければ、相談に乗るぜ」

次期魔王「あなたには関係ないでしょ」

勇者「実を言うと、たった今勇者に転職してさ。ほら、この街あまりに平和じゃん? 暇してっから教えてくれよ」

次期魔王「>>6

自分の将来を勝手に決められていい気分なわけ無い

マジか……
文体で分かるもんなのか

別にあっち書けとは言わんけどな。ゴミ安価でクソスレになってたし

次期魔王「自分の将来を勝手に決められて、いい気分なわけがないでしょう」

勇者「将来? どっかに嫁がされんの?」

次期魔王「そうじゃないんですけど……お父様が次の魔王はお前だって、勝手に決めてきたんです」

勇者「へー、魔王になったらどうなんの?」

次期魔王「人間を滅ぼさなくちゃいけなくなります。私、人間とは仲良くやっていきたいのに……元老院の魔物達やお父様が許さないに決まってます」

勇者「うーん、よくわかんねぇな。結局、嬢ちゃんはどうしたいわけ?」

次期魔王「>>15

>>12
あれは安価のせいじゃないで……

魔王となった自分に未来などないので自殺したい、というかあと10秒で仕組んでおいた呪印によって死にますけどね

次期魔王「魔王となった自分に未来などないので自殺したい、というかあと10秒で仕組んでおいた呪印によって死にますけどね」

勇者「へぇー、そりゃおもしろ」

ドガアァァァァァァン!!!!!!

酒屋が木っ端微塵に爆発四散した。
呪印は時限爆弾式のものだったのである。
次期魔王はもちろん、勇者も酒場の主人も全て消し飛んだ。

それから1000年後……

~どっかの厨房~

ゴキブリ「ケッ、腐ったチーズに食べかけのソーセージ、虫食いだらけのルッコラか。シケたレストランだぜ」

ネズミ「おい、そろそろ引き上げるぞ。ネコの巡回が来たみたいだぜ。おい、なんだその緑色のチーズは」

ゴキブリ「これか。食うのはやめた方がいい。腐ってるからな。中にウジも湧いてる。腹を壊すのは必定だ。このルッコラをやるから、ソーセージを寄越せ」

ネズミ「おい、取り分は山分けだろうが。なんで俺が雑草で我慢しなくちゃならねぇんだよ」

ゴキブリ「仕方ねぇな……なら>>19

餌狩ってくる

ゴキブリ「仕方ねぇな……なら餌を狩ってきてやる。先に巣に戻ってろ」カササササ

ネズミと別れたゴキブリは、ひたすら暗い厨房内をひた走った。
米、麦、チーズ。どれもキッチンの上に置いてある。
ゴキブリの触覚がウニウニと動く。

ゴキブリ(風が変わった……。デカいし速い! ネコ野郎め、俺を追ってきてやがる)

ゴキブリ「捕まえられるもんなら、捕まえてみな! テメェの脚じゃ、俺にはついて来れないぜ」

ゴキブリはネコを攪乱するように蛇行して走った。
背後で『フッフッ』と猫の荒い息遣いが聞こえる。

ゴキブリ(クソッ! やはり体格差は埋められねぇか。ちくしょう、俺はこんなところで死ぬわけにはいかねぇ!)

ゴキブリ(まだやり終えてないことがあるんだ。餌を集めるんじゃない、もっと大事なことが……)

???「ふぉっふぉっふぉ、猫に追われておるようじゃの、ゴキブリよ」

ゴキブリ「誰だあんた!?」

???「>>21じゃよ」

神様

神様「神様じゃよ」

ゴキブリ「神様だと……? その神様が俺に何の用だ」

神様「天界から見ておったが、まさかあのニートがゴキブリに転生するとはな……。これでは魔王を倒そうにも、既にネコで死にそうではないか」

ゴキブリ「やい! 何をゴチャゴチャ言ってやがる!」

神様「ゴキブリよ、貴様……わしと天下を取ってみんか?」

ゴキブリ「天下だと!? どういう意味だ!」

神様「俄かには信じられぬかもしれぬが……。貴様は1000年前、人間の勇者だったのじゃよ」

ゴキブリ「嘘だ! 人間は俺らを見るとすぐスリッパで叩いたりマッチで燃やしてくる」

神様「1000年前、勇者だった男は魔族の自爆に巻き込まれて死んだ。そして時が経ち、貴様に転生したのだよ」

ゴキブリ「クッ……! そいつもご苦労なこった! 俺みたいな忌み嫌われる生き物に生まれ変わっちまうなんてよォ!」

神様「そうじゃ、悔しいだろう。だから、貴様が因果を断ち切るのだ。この世のどこかにいる魔王を探し、討ち果たすのじゃ! 仲間もおるぞ!」

ゴキブリの仲間
>>24
>>25

カマドウマ

ナメクジ

カマドウマ「よろしくッス」

ナメクジ「うふん、のんびりいきましょ~?」

ゴキブリ「こ……こいつらでどうやって魔王を倒せってんだ! そもそも、ネコの攻撃を凌ぎきることだってできねェだろ!」

神様「彼らの使いようは貴様次第じゃ。彼らは貴様に絶対服従を誓っておる。そこをよく考えることじゃ」

スゥウウウウ……。神様は闇の中に消えた。残されたのはゴキブリとカマドウマとナメクジだけであった。

ゴキブリ「二人とも、とりあえず机の下に隠れるぞ。神様とやらのおかげで、ネコが逃げて行ったからな」

カマドウマ「それでも、すぐに戻ってくるっしょ。油断は禁物っスよ、コクロチ夫さんよ」

ゴキブリ「コクロチ夫とか変なあだ名つけるな。俺はゴキブリでいい。どうせ、長い付き合いにはならないんだ」

カサカサッ、ゴキブリとカマドウマはコンロの下に隠れた。
しかしナメクジは動きが遅く、なかなかゴキブリ達のいるところまで辿り着けない。
ゴキブリの触覚がピクリと動いた。

ゴキブリ「やばい、ネコが戻ってきたぞ! 急げ! テメェなんでそんな歩くのが遅いんだ!」

ナメクジ「し、仕方ないでしょ~。うふ~ん、ナメクジなんだからぁ~」

ゴキブリ「クソが、喰われるぞ! カマドウマ、ナメクジを助けてやってくれ!」

カマドウマ「分かったッス!」

カマドウマがコンロの下から飛び出し、ナメクジに噛みついた。
流石は神から送られた助っ人。恐ろしい筋力で床に張り付いたナメクジを投げ飛ばした。
だが、次の瞬間

ネコ「にゃー」ガブッ

カマドウマ「ぐ、ぐわあああああああああああああ!!!!!!!」

ゴキブリ「カ、カマドウマーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」

カマドウマは猫に連れ去られた





ゴキブリ「ちくしょう……せっかく得た仲間だったのに。ナメクジ! テメェが遅いから……カマドウマが死んだんだろうが!」

ナメクジ「うふ~ん、それは違うわねぇ。ボウヤ、あなたが指示を出していなければ食べられたのはアタシで済んだのよ。うふ~ん」

ゴキブリ「うぬ、口答えするか!」

ゴキブリは床に落ちていた塩の粒を口に含むと、ナメクジに向かって勢いよく吹きかけた。
たちまち、ナメクジが体をよじって苦しみだす。

ナメクジ「ううぅ……ぐえぇッ!!! 体が溶けるゥウウゥウゥウ!!!! 熱い熱い熱い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ」

ゴキブリ「俺の予感は当たったみてぇだな。やっぱりテメェらとは長く続かなかった。ネコが退散したことだし、俺もこのまま外へずらかってやるぜ」

ナメクジ「あんったね……ロクな死に方しないわよ、こんなことしてると……」ゼェゼェ

ゴキブリ「まだ生きてやがったか、塩が足りないみたいだな」プッ

ナメクジ「アあアあああアアアアアアアアアア亜アアアアアアあ」ジュウウ

仲間を殺したゴキブリは外に出て、新しい仲間を集めに下水道へ行った。

下水道の主人「ようゴキブリ、こんな朝っぱらからどうした。就職先が決まらずヤケ酒かい?」

ゴキブリ「おい主人、俺は既に貴重な仲間を二人を失ったんだぞ。早く新しい仲間を寄越せ。なるべく強い奴な。あと優しくて、俺に逆らわない奴」

下水道の主人「フム、ま、いいだろう。ちょうどそれっぽいクソ虫が入ったところなんだ。あそこで蠢いてる、>>29だよ」

プラチナスカモン

ゴキブリ「それっぽいクソ虫って、まんまクソそのものじゃねぇか! 俺を舐めてんのか!?」

下水道の主人「舐めているのはお前の方だろう。プラチナスカモンの強さを知らないから、そんな傲慢な口が叩ける」

ゴキブリ「このクソに一体何ができるんだよ」

下水道の主人「一緒にバトルをするだけで、経験値が二倍も入るんだ。たとえばムカデを倒したら経験値は10入るけど、ウンコと一緒に戦うと20も入る。ほら、経験値を10も得したね」

ゴキブリ「それだけかよ」

下水道の住人「いいや違うぞ、プラチナスカモン自身もレアメタルウンチという必殺技を持っている。これは強いのか弱いのかよく分からん技だけど、逃げ回るだけのお前よかいくらかマシだよな。なぁゴキブリ」

ゴキブリ「けどよ、こいつさっきから何も言わんぜ。喋らないだけの置物なんて、仲間とは呼べないな。アイテムだ。所詮アイテムだよ」

下水道の主人「……なんてワガママなやつだ。その場合も考えて、もう一人呼んであるぜ。>>32だ」

ゴキブリダイスキドラゴン

下水道の主人「こちらの、ゴキブリダイスキドラゴンだ。どんな意味で大好きかは、よく分かってるよな。一歩間違えれば死ぬぜ」

下水の中から真っ黒いヘドロのような蛇が這いあがってきた。
ゴキブリの何倍も体が大きい。猫と同じくらいか。
ドラゴンが本気になれば、そこいらの昆虫などひとのみだろう。
ゴキブリは憎まれ口を叩くのも忘れ、震え上がった。

ゴキブリダイスキドラゴン「ボク……ゴキブリ……ダイスキ……」

下水道の主人「定期的に生きたゴキブリを与えろ。こいつの食欲を上手くコントロールすれば、昆虫界じゃ負けナシだ」

ゴキブリ「生きたゴキブリって、どこで手に入れんだよ」

下水道の主人「さぁな。お前だって虫脈がないわけじゃないだろ。友人や親族を騙して、ドラゴンに食わせてやれ」

ゴキブリダイスキドラゴン「ボク……ゴキブリ……ダイスキ……」

ゴキブリ「なぁ、チェンジはできないのか?」

下水道の主人「無理だな。俺だってこいつを持て余していた。お前が引き取ってくれるなら万々歳だ」

ゴキブリ「嫌だ! プラチナウンコだけでいい。頼むからダイスキドラゴンだけはナシにしてくれ!」

下水道の主人「だから、無理だっつってんだろ。他の客の迷惑になるからとっとと出ていけ」

こうしてゴキブリはプラチナスカモン、ゴキブリダイスキドラゴンと魔王を倒すための旅に出ることとなったのである

ゴキブリダイスキドラゴンが腹を空かしているので、ゴキブリは実家へと帰省することにした。

プラチナスカモン「……」

ゴキブリダイスキドラゴン「……」

ゴキブリ「……なんだ、この無言の圧力は」

ゴキブリの実家は東京都文京区目白台二丁目の、小ぢんまりとした一軒家にあった。家の者が留守にしている昼時を狙い、ひっそりと侵入する。ゴキブリダイスキドラゴンは目立つので、これも家の中へ招き入れた。

ゴキブリ「いいか、俺が合図するまで姿を見せるんじゃねぇぞ。テメェに飯を食わせてやるんだ。ちったぁ感謝しな」

ゴキブリダイスキドラゴン「ウゥ……アリガトウ……」

神様「ゴキブリよ……ゴキブリよ……」

ゴキブリ「なんだ、神か。ゴキブリダイスキドラゴンの飯を用意するんだ。無駄な時間はあまり取りたくない」

神様「自分の父を……母を……差し出すのじゃろう……?」

ゴキブリ「そうだな、別に構わねーよ。親を生け贄として献上しないと、俺が喰われちまうし」

神様「愚かじゃ……まさか、ここまで愚かだったとは」

ゴキブリ「そうかよ、もう行くぜ」

神様「昔……インドに一人の年老いた僧がおった。僧は飢えていて、今にも行き倒れそうじゃった」

神様「そこへ兎が一羽、現れた。心優しき兎は僧が飢えているのを見て、自ら燃え盛る炎へ身を投げ、僧の糧となった」

ゴキブリ「つまり俺にどうしろってんだよ」

神様「死ね、ということじゃな。カマドウマとナメクジを殺したのも含めて、貴様は一度地獄へ堕ちるべきじゃ」

ゴキブリ「なっ、なに……!?」

背後に忍び寄っていたゴキブリダイスキドラゴンが、ゴキブリに襲いかかった。ゴキブリはその速さに対応しきれず、食べられてしまった。

~5000年後~

5000年の間に、人類の文明は衰退した。科学の急激な進歩によって、意思を持つ機械と人間の戦争が何度も繰り返されてきたのだ。
昔の過ちを再び引き起こさぬよう、人類は自主的に中世ヨーロッパをモデルとした生活サイクルへと切り替えていた。

少年「フン! とうッ!」

森の中で剣を振る少年がいる。彼の名は>>44。立派な勇士となるため日々の鍛錬を怠らぬ、将来有望な好漢であった。

>>44「剣だけじゃダメだ。幅広い知識に他国と上手くやるための交渉術、他にも色々なスキルがないと、勇士にはなれない」

>>44の家には商人から買った異国の本が山のように積んである。幸いにも時間は掃いて捨てるほどあったので、>>44は異国の言葉や習慣を全て頭に詰め込んだ。もはや現地の人よりも詳しいということさえあるのだ。


エアロスミス

流石に3度目の正直
今度こそまともな話にするで

エアロスミスは剣の素振りを終えると、緩やかな丘陵を登っていった。丘の上にポッカリと空いた洞穴。それこそがエアロスミスの家だ。周りを高い松の木で囲まれているので、外から家が見えることもない。

エアロスミス「あ、猪がかかってる」

丘の中腹にしかけた罠に、力尽きた猪がかかっていた。木の棒に猪の四肢を縛り付け、担いでみる。小さめの個体ゆえか、優男のエアロスミスでも運ぶことができた。

エアロスミス「よいしょっと」

洞窟についたエアロスミスは、猪を地面に下ろし、すぐに解体を始めた。皮を剥ぎ、内臓を水で洗い、脳みそを砕いて鍋に入れる。
味付けとして輪切りにしたセロリやパクチーも投げ込む。最後に塩と胡椒をひとつまみ。
猪鍋が完成した。

エアロスミス「おいしいな……猪鍋は。でも、僕だけじゃ食べきれないや。君も要るかい?」

>>50>>52

山賊A

パクパク。まっず。味付けほとんどないできそこないだ、食べられないよ。明日うちに来い。ちゃんとしたディナーをご馳走してやる

山賊A「パクパク。まっず。味付けほとんどないできそこないだ、食べられないよ。明日うちに来い。ちゃんとしたディナーをご馳走してやる」

エアロスミス「ごめんよ、やっぱり塩胡椒とセロリパクチーじゃ、肉の旨味を十分に引き出せないよね……。しっかりしないと」

冒険者にとって、料理のスキルは必須だった。何しろ唯一の楽しみと言って良いのだ。食べられない料理は、仲間の士気を大きく下げる。山賊は顔をしかめながら唾を飛ばした。

山賊A「お前は本当に料理が下手糞だな。そこだけ直したら完璧なのに。どうだ、うちに来るか? 真のディナーを味あわせてやるよ」

エアロスミス「山賊Aくん、せっかくのお誘いだけど断るよ」

山賊A「そりゃどうして」

エアロスミス「新しい本を仕入れに行かなきゃ。明日の夜に街の広場で、古文書のバーゲンセールがあるんだ」

山賊A「おいやめとけって! お前、街の連中から何て呼ばれてるか知ってるだろ?」

エアロスミス「うん、>>55だよね……」

改造車暴走野郎のうえに街宣右翼

エアロスミス「改造車暴走野郎のうえに街宣右翼、だよね……」

山賊A「そうだ。お前は数年前、ボンネットに巨大メガホンをつけたフェラーリを乗り回し、古臭い軍歌を大音量で流した」

エアロスミス「過去を掘り返すのはやめてくれ。あれは仕方なくやったことなんだ」

山賊A「確かに貴族から強要された、という経緯は知っている。だが、知るのは俺と強要した貴族だけだ。平民はお前をただの迷惑野郎としか見ていない。今街へ行けば……」

エアロスミス「もういい、帰ってくれ。勇者になる。そのためなら、僕はどんな扱いをされようと構わない。魔王を倒せば、全てがチャラなんだ」

山賊A「チャラにはならねーよ。アングラな連中が古代技術『Live Leak』を復活させて、お前の暴走動画をあげてる。もちろん違法だが、腐り切った政府や司法は裁きやしねぇ。貴族も使い物にならない」

エアロスミス「でも、僕は……」

山賊A「俺が何のために隠れ家を用意してやったと思ってんだ。動くのは俺だけでいい。俺がお前を養ってやる」

エアロスミス「ありがとう……」

山賊Aが去った後も、エアロスミスは悶々としていた。まだ自分の暴挙はデータに残っている。
保存され、拡散され、再び保存され。もはや完全に汚点を払拭することはできないだろう。
しかし、エアロスミスにとってそんなことはどうでも良かった。

エアロスミス「山の中にこそこそ隠れて、そのまま朽ち果てる人生なんて絶対に嫌だ」

エアロスミス「昨今の人々は、何でも話し合いで解決できると勘違いしてる。人間と魔族の利害が一致するはずないのに」

エアロスミス「人間か、魔族か。どちらかが滅びるまで闘いは続く。貴族も軍隊も、そのことを少しも理解しちゃいない」

エアロスミス「僕だけだ、正しい目で世界を見ているのは。だから、動かなくちゃいけない。魔族を滅ぼさなくちゃいけない」

少年は立ち上がると、剣を佩いた。街へ行き、仲間を集める。王と掛け合い、魔族を滅ぼす大義名分を得る。
事前にやるべきことをはっきりとさせておけば、全滅エンド・バッドエンドは免れるはずだ。

エアロスミス「ただ、このままで行ったら門前払いされるだろうな。そうだ、>>62に変装しよう」

シンゴジラ

~翌朝・はじまりの街~

轟音。砂煙。怒号と悲鳴。
飛び散った城壁の欠片が整然と並んだ民家を次々と破壊してゆく。
曇天の下、姿を現したのは一人の少年……ではなく、山のように巨大な二足歩行の怪物だった。
怪物は歩くだけで何もしないが、それだけで甚大な被害が出ている。

国王「なんじゃ、あれは! 背中から青い電磁波のようなものが出ておる!」

次の瞬間、怪物が蒼白い光線を放った。凄まじい衝撃波が街の家屋を木っ端微塵に撃ち砕く。空へ舞い上がる火災旋風。
地獄絵図を目にした国王は、さっそく大臣らを集め、巨大不明生物特設災害対策会議を開いた。

国王「わずか数分にして、城下町のほとんどが焼き尽くされた。避難すらままならん。将軍、どうすればあの怪物を倒せる」

将軍「そもそも、あれは魔族なのですか? 私は長年、前線基地で軍配を振り続けていましたが、あのような化け物は知りませぬ」

宰相「だが現に街を襲っておるではないか。貴殿も蒼白い光線を見ただろう。数万もの尊き命が失われた。人間に仇なす者は、全て魔族に決まっておろう」

科学者「化学班が調べたところ、体内に熱核反応があるようです。つまり、古代技術との関連性が高いでしょう。古代、核を利用した原子炉や兵器が多数、作られていたと文献には残っていますしね。さらに、先人はあの怪物を破壊の化身『GODZILLA』と呼んでいたそうです」

国王「ゴジラ……」

将軍「私の出る幕はなさそうだな」

国王「将軍、貴様には陽動の任務を与える。ゴジラを引き付け、隙を作るか城下町から追い出すのじゃ」



その後、沈黙したゴジラに化学班がバリスタやカタパルト、大砲に中距離弾道ミサイルなどありとあらゆる攻撃をしかけたが、効果はなかった。
ゴジラ自身が超耐久を誇るのもあるが、その前に何やらバリアのようなものを張っており、弾がことごとく跳ね返されてしまうのだ。
再び蒼白い光線が、燃え盛る城下町を薙ぎ払った。

科学者「あのバリア、気になりますね……」

一方、将軍はゴジラを城下町から引き離すため、陽動作戦志願兵を500人ほど集め、100人隊、10人隊と細かく分けていた。
それぞれに隊長がついており、鏑矢を用いて位置を確認し合うのである。

将軍「陽動だからといって、ただ逃げればいいというわけではない。ゴジラを挑発し、おびき寄せねばならん」

500名の決死隊を前に、将軍は語る。

将軍「生き残ることも、死ぬことも考えるな。ただ任務を遂行する、それだけを頭に入れておけ」

将軍「化学班でも手に負えなかったのだ。弓と剣しか扱えぬ我らでは、勝負にすらならないかもしれん。しかし、ここで軍が立ち上がらずして誰が民をゴジラから守る。誰が国家を守る。答えなど、決まっているだろうが」

将軍「皆の者、健闘を祈る」

将軍は馬の背にまたがると、腹を蹴った。辛うじて災厄を免れた東門から、500頭の馬が列をなして駆けてゆく。

将軍「散開せよ!」

エアロスミス(やめてくれ、僕は国王に会いに来ただけなんだ。街を破壊しようとなんてこれっぽっちも考えていない!)

身体に泥を塗っていたら、ゴジラになってしまった。
人類を魔族から救うつもりが、これはまるっきり逆ではないか。
気を緩めると、ついつい口から荷電粒子砲のようなものが放たれてしまう。

エアロスミス(ダメだ、国王にお目通りを願う状況じゃない。ひとまず洞窟に戻ろう。どうしようもないよ)

エアロスミス(……おや?)

エアロスミスは、瓦礫の間に挟まって身動きの取れない少女を見出した。
両手首に枷が嵌められており、背中には奴隷であることを示す焼き印があった。

エアロスミス(奴隷として連れてこられ、酷い扱いを受け、最期は瓦礫に潰されて死ぬ。なんて可哀想な人生なんだ)

エアロスミス(罪滅ぼしのつもりじゃないけど、ここで彼女を助ければ、ひとつの命が救われるんだ。見殺しには……できない)

エアロスミスは長い尻尾で少女の倒れている地盤ごと持ち上げた。

エアロスミス(この子を山賊のところまで連れて行こう)

ズズーン……
ズズーン……

国王「見よ、ゴジラが去ってゆくぞ! やった……人類は救われたのだ! 将軍よ、貴様に終身独裁官の座を与える!」

宰相「ちょ、ちょっと待ってください。それでは、私の立場がありません」

国王「知るか! 貴様は死刑!」

宰相「え、ええ~……」

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