貧乏穂乃果≪このままじゃ、穂乃果倒れちゃう≫(98)


 穂乃果(25)「あ。海未ちゃん、ことりちゃん。久しぶり~」ゲッソリ

 ことうみ「「!?」」


 海未(24)「ほ、穂乃果・・・・・・?」

 ことり(25)「穂乃果ちゃん・・・・・・?」

 穂乃果「いやー何年ぶりだろ? 花陽ちゃんたちが大学を卒業するときにみんなで集まって以来だから、2年ぶりかな?」フラフラ

 海未「え、ええ・・・・・・そうですね。いや、そうではなく」

 穂乃果「二人とも元気そうでよかったぁ」

 ことり「穂乃果ちゃんは全然元気そうじゃないよぉ」ウルウル


 海未「そうです、それです。髪はバサバサで顔はやつれて、しかもその服、音ノ木のジャージじゃないですか・・・・・・。一体何があったというんですか?」

 穂乃果「え? あ~・・・・・・。まぁ話せば長くなるんだけど、ちょっとお金を稼がなきゃいけないというか、忙しいというか・・・・・・」

 海未「お金? そんなになってまで稼がなきゃならないなんて・・・・・・?」

 ことり「・・・・・・借金?」

 穂乃果「っ!」ビクッ

 海未「そうなのですか!?」

 穂乃果「ち、違うよ! あ、いや、違わないんだけど・・・・・・」


 ことり「そもそもこんな所でどうしたの? しかもこんな夜中に・・・・・・」

 穂乃果「穂乃果は家に帰る途中だけど・・・・・・。それだったら二人もどうしたのさ?」

 海未「ことりとは晩ご飯を一緒に食べて、散歩でもしようとブラついていたんです。穂乃果も誘おうとしたんですが、連絡がつかなかったので。・・・・・・家? 穂むらはこの辺じゃありませんが?」

 穂乃果「あぅ・・・・・・。えっと、その、穂むらはなくなったというか、潰れちゃったというか・・・・・・」

 ことり「潰れた!?」

 海未「穂むらがですか!?」

 穂乃果「ちょ、ちょっと二人とも! 声が大きいよぉ」


 海未「あ、すみません。しかし、潰れたとは穏やかじゃありませんね」

 ことり「なにがあったの? 穂乃果ちゃん」

 穂乃果「う、ん・・・・・・。じゃあ話すから、そこの公園にでも・・・・・・」




 海未「それで? 一体どうしたというんですか? 借金とは? 穂むらが潰れた理由は? 何故そこまでボロボロなのですか?」

 穂乃果「ちょちょちょ、一気に質問しすぎだよぉ」

 ことり「海未ちゃん、焦らないでね? はい、お茶だよ、穂乃果ちゃん」

 海未「す、すみません」

 穂乃果「ありがと、ことりちゃん」

 ことり「うん。ゆっくりでいいからね? 話したくないことは話さなくてもいいから。でも私も海未ちゃんも穂乃果ちゃんが心配なの。それだけは分かってね?」

 穂乃果「うん、話すよ、全部。えっとね、ことりちゃんがさっき言った通り、今ね、穂乃果借金があるんだ」


 ことり「えっと・・・・・・いくらぐらい?」

 穂乃果「んーと、大体800万くらい?」

 海未「800万!? どうしてそんなに?」


 穂乃果「うん、穂むらの仕入先に昔から付き合ってたところがあったんだけど、事業が上手くいかなくなって借入れをしたんだって。でも小さな会社だったから銀行からは借りられなくて、色々探してやっと見つけたみたいなの。
 それでお父さんがね、保証人になったんだ。昔からの顔馴染みだったし、経営を立て直す目処も付いてたからって。お母さんも賛成してた。
 けどそれが・・・・・・所謂闇金ってやつで、気付いたときにはもう手遅れ。とんでもない利子がのしかかって、会社の運営どころじゃなくなって倒産。それで保証人になったお父さんのところにも・・・・・・。
 最初はなんとか返済しようとやりくりしてたんだけど、利子分を返すのがやっとで借金は一向に減らなかった。お父さんもお母さんもすごく悩んで、話し合って、決断したみたい。お父さんは穂乃果たちに土下座までして、説明して、穂乃果と雪穂も納得した上で・・・・・・穂むらと土地を売ったの。
 返済し切ることは出来なかったけど、それでも結構減らすことはできたんだ。お父さんもお母さんも和菓子職人で手に職は付いてたから、仕事はすぐに見つかった。そっからはまた、返済地獄。辛かったよ。穂乃果は働いていたからいいけど、雪穂はまだ大学生だったし、大学辞めて働くって言う雪穂をなんとか説得してさ。しなくていいって言ったのにバイト何個も掛け持ちして、この間卒業したんだ。ホント自慢の妹だよ。
 でもそんな生活が嫌になって、絶えられなくなって・・・・・・だから、穂乃果は家族を捨てたんだ」


 海未「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・ほ、穂乃、果・・・・・・」

 ことり「えっと、捨てたって言うのはどういうことなの?」

 穂乃果「そのままの意味だよ。穂乃果は今一人暮らしで、お父さんともお母さんとも雪穂とも、もうずっと会ってない」

 海未「・・・・・・・・・・・・」

 ことり「・・・・・・借金は?」

 穂乃果「え?」

 ことり「穂乃果ちゃんはさっき、自分に借金があるって言ったよね? 800万円も。それって今の話の借金とは別のもの? それとも・・・・・・」

 穂乃果「別・・・・・・別だよ。決まってんじゃん。これは穂乃果が自分で作った借金なの。だから穂乃果が返さなくちゃならないの」


 海未「嘘・・・・・・ですね」

 ことり「うん」

 穂乃果「う、嘘じゃないよ・・・・・・!」

 海未「いえ、嘘です。何年あなたの幼馴染やってると思っているんですか? 分からないはずないでしょう」

 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」

 ことり「ねぇ、穂乃果ちゃん? ちゃんと話して、ね? お願い」

 穂乃果「・・・・・・ことりちゃんさっき、話したくないことは話さなくていいって言ってなかった?」

 ことり「うん。だから、お願い」

 海未「私からもお願いします」


 穂乃果「・・・・・・ずるいよ、二人とも・・・・・・。・・・・・・うん、今穂乃果が抱えてる借金は、今話した元々お父さんの、もっと言えば仕入先の会社のものだよ」

 海未「それを何故穂乃果が? ご家族と会っていないというのは?」

 穂乃果「頼み込みに行ったんだ。お金を貸してくれた、その・・・・・・"ヤ"の付く人たちのところに」

 海未「まさか・・・・・・一人で!?」

 ことり「危ないよぉ」

 穂乃果「うん、今から考えればすっごい無謀なことをしたなって思うよ。でもその時は無我夢中で、とにかく事務所に乗り込んで、借金は穂乃果が絶対返すから、もうお父さんたちを苦しめるのはやめてって」

 海未「そ、それで・・・・・・?」


 穂乃果「最初は門前払いだったんだけど、何回も行ってるうちに・・・・・・若頭? って呼ばれてる人のところに通されたんだ。んでね、こちらの条件を飲めば希望通りにしてやるって」

 ことり「条件って?」

 穂乃果「借金を完済するまで、穂乃果の人生をもらうって。言う通りに働いていればいいけど、文句を言ったり逃げ出したりしたら家族四人とも海外に売り飛ばすって」

 海未「そんなの犯罪じゃないですか! というか闇金の時点で警察に相談するべきだったのです!」

 穂乃果「相談したよっ! 何度も何度もっっ!!」

 海未「っ!?」ビクッ

 穂乃果「あっ、ごめ・・・・・・」

 ことり「穂乃果ちゃん落ち着いて? 海未ちゃんも冷静に、ね?」


 海未「は、はい・・・・・・。すみません穂乃果、軽率な発言でした」

 穂乃果「ううん、穂乃果こそごめんね。大声出しちゃって」

 海未「いえ、大丈夫です・・・・・・」

 ことり「警察には相談したんだ? 対応はしてもらえなかったの?」

 穂乃果「なんか民事不介入だとか、直接的な被害がないと動けないとか・・・・・・。結局、横暴な取立てを注意することしかできかった」

 海未「そんな・・・・・・」

 穂乃果「それで話を戻すけど、穂乃果はその条件を飲んであの人たちの言いなりになることにしたの」

 ことり「ほ、穂乃果ちゃぁん・・・・・・」


 穂乃果「それからおよそ一年間、あの人たちのお店で働いてるの。お給料なんて出ないし、勤めてた会社も続けられないから辞めちゃって。バイトでなんとか生活費を捻出してる状況なんだ」

 海未「お店とは、どんなお店なのですか?」

 穂乃果「ごめん。流石にそれは言いたくない」

 海未「そ、そうですか・・・・・・。ご家族と会っていないというのは? 別々に生活しているのですか?」

 穂乃果「それも条件の一つで、家族とは離れて暮らせ、というか一切連絡を取るなって。多分、夜逃げされるのを防ぐためなんじゃないかな」

 ことり「そんなのって、酷い・・・・・・!」

 穂乃果「でも、そんな条件なくても、穂乃果はもう会わせる顔がないよ。時々様子を見に行ってるけど三人とも元気そうだから、そこは安心してる」


 海未「え? 連絡を取ってはいけないのでは・・・・・・?」

 穂乃果「遠くから見る分には別にいいってさ。ついこの間、穂むらほどじゃないけど小さなお店を開いてたよ。すごいよね。一年足らずでお店を出しちゃうんだもん。借金の取立てがなくなったから、きっと平穏な毎日に戻ってるはずだよ」

 ことり「穂乃果ちゃんは・・・・・・。穂乃果ちゃんは、それでいいの?」

 穂乃果「いいも何も、いいに決まってるよ。だって穂乃果が望んで選んだんだもん。お父さんと、お母さんと、雪穂が幸せ、なら・・・・・・それで、ぇぐ・・・・・・いいもん・・・・・・ぐす・・・・・・」ポロポロ

 海未「穂乃果・・・・・・」

 穂乃果「忘れちゃったかなぁ、穂乃果のこと・・・・・・ぅぐ。お父さん、お母さん、雪穂ぉ・・・・・・うぅ、会いたい・・・・・・ぐすっ、会いたいよぉ・・・・・・! みんなに会いたい! うわぁああぁ!」ボロボロ


 海未「穂乃果!」ギュッ!

 ことり「穂乃果ちゃん!」ギュッ!

 穂乃果「うああぁぁああぁんっ! やだよ! このまま忘れられちゃうの、穂乃果やだよぉ! ひぐっ、やだ、ぅえ、やだぁ・・・・・・」クタッ

 海未「穂乃果!? どうしたのです、穂乃果!」ユサユサ!

 ことり「落ち着いて海未ちゃん。疲れて寝ちゃっただけみたい。緊張の糸が切れちゃったんじゃないかな」

 海未「そ、そうみたいですね。しかし・・・・・・」

 ことり「うん、このまま放っておけないよね」

 海未「勿論です。なんとかしなければ」

 ことり「最近冷えてきたし、ここに置いてったら風邪ひいちゃうもんね」

 海未「いえ、そういうことではなく・・・・・・」





 穂乃果「ぅん・・・・・・? はぇ?」パチッ

 ???「あら、目が覚めた?」

 穂乃果「ふぁ・・・・・・? えり、ちゃん? あれ、ほのか・・・・・・あれ!?」ガバッ

 絵里(25)「ちょっと、起きてから急に動いたら身体に毒よ?」

 穂乃果「なんで絵里ちゃんが!? いや、そんなことより今何時!?」

 ???「9時を過ぎたとこやよ」

 穂乃果「希ちゃん!?」

 希(26)「やっほー、穂乃果ちゃん。久しぶりやね」

 穂乃果「あ、久しぶりー・・・・・・じゃなくて! 9時!? どうしよ! 8時半からバイトのシフトが入ってるのに!」


 絵里「あ、それなら心配いらないわ。さっき店長さんから電話があって、体調不良だから今日はお休みするって伝えておいたから」

 穂乃果「え、あ・・・・・・そうなんだ。ありがと・・・・・・っていうかどうして二人が!?」

 ???「朝っぱらから騒がしいわねぇ」

 穂乃果「にこちゃん!」

 にこ(26)「おはよう、穂乃果。ご飯できてるわよ」

 穂乃果「あ、おはよー・・・・・・じゃなくって! さっきから穂乃果叫びっぱなしだよ! どうして三人がここにいるのさ!? っていうかまさか他にもいる!?」

 絵里「落ち着いて穂乃果。まだ三人しかいないわ」

 穂乃果「まだってなに!? 後から来るの!? 今日同窓会だっけ!?」


 にこ「いいから、その辺の説明もするから朝食済ませちゃいなさい」

 希「そうやね、今日は行くところもあるし」

 穂乃果「行くところ?」キョトン


 ピンポーン


 希「おっ、来たみたいやね」

 穂乃果「あ、希ちゃん。穂乃果が出るよ?」

 絵里「穂乃果は座ってていいわよ。多分凛たちだろうから」


 にこ「あんたはにこにー特製朝ごはんを食べてなさい」

 穂乃果「う、うん」


 ピンポーンピンポーン!


 希「はいはい、今出るよー」ガチャ

 凛(23)「おっはよう、穂乃果ちゃ・・・・・・希ちゃん!? あれ!? 間違えて希ちゃん家に来ちゃった!?」

 真姫(24)「んなわけないでしょ。絵里たちが先に行ってるって海未が言ってたじゃない」

 花陽(23)「何回も呼び鈴押したら迷惑だよぉ」


 希「三人とも相変わらずそうやね。海未ちゃんたちは?」

 凛「なんか用事があるとかで途中で分かれたにゃ」

 花陽「後からすぐ来るそうですよ」

 希「そかそか。立ち話もなんやし、上がってってな」

 真姫「だから希の家じゃないでしょ」


 穂乃果「ひぐっ・・・・・・ぐすっ、うぅ・・・・・・ぇぐ・・・・・・」ポロポロ

 絵里「あの・・・・・・穂乃果?」オロオロ

 にこ「・・・・・・・・・・・・」



 凛「」

 花陽「」

 真姫「」

 希「あらら」


 凛「にゃーっ! 絵里ちゃん、にこちゃん! なにやってるの! 穂乃果ちゃん泣かせちゃダメにゃー!!」

 絵里「ち、違うのよ凛。私たちが何かしたわけじゃないのよ」

 真姫「言い訳とか見苦しいわよ、絵里」カミノケクルクル

 絵里「い、言い訳じゃないわよぉ」

 花陽「絵里ちゃん! めっ、ですよ!」

 絵里「花陽まで!?」

 のぞりんまき(((怒り方が可愛い)))


 にこ「ホントになにもしてないわよ。朝ごはん食べ始めたら急に泣き出したのよ」

 凛「これ、にこちゃんが作ったの?」

 にこ「そうよ」

 真姫「美味しくなかったんじゃないの?」

 にこ「失礼ね! 料理の腕は落ちてないわよ!」

 花陽「泣きながら凄い勢いで食べてるし、美味しいんじゃないかな?」

 穂乃果「おいしい・・・・・・おいしいよぉ・・・・・・」ポロポロ

 絵里「ならどうしてそんなに泣いてるの?」


 穂乃果「久しぶりに・・・・・・こんなに美味しいご飯・・・・・・いつもは節約のために食パンの耳とか、もやしとか・・・・・・」

 六人「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 穂乃果「あったかいご飯、美味しいおかず・・・・・・うぅ、にこちゃん・・・・・・ありがとぉ・・・・・・」ポロポロ

 凛「にゃー! ほのかちゃーん!」ギューッ!

 花陽「ほのかちゃぁ~ん」モギュッ!

 真姫「どうして二人まで泣いてるのよ」グスッ

 絵里「穂乃果・・・・・・」ナデナデ

 希「辛かったんやね・・・・・・」ナデナデ


 にこ「凛と花陽は抱きつかない食事の邪魔でしょ。真姫ちゃんは自分も泣いてるし、絵里と希は頭撫ですぎて髪の毛ぐちゃぐちゃになってるじゃない。あとで誰が梳くと思ってるのよ」

 穂乃果「にこちゃんが梳いてくれるの・・・・・・?」グスッ

 にこ「し、仕方ないでしょ! 女の子は身だしなみに気を付けなきゃいけないの! 穂乃果、今のあんたは不合格よ! わたしがバッチリどこに出しても恥ずかしくないようにしてあげるから覚悟なさい!」

 凛「照れ隠しにゃ」

 花陽「照れ隠しです」

 真姫「照れ隠しね」

 絵里「照れ隠しだわ」

 希「照れ隠しやん?」

 にこ「う、う、うるさーい!!」



 海未「うるさいのはにこの方です。何を騒いでいるのですか。外にダダ漏れですよ?」ガチャッ

 ことり「みんなが揃うと賑やかだね~」ニコニコ


 希「二人ともおかえりー。用事は大丈夫なん?」

 海未「ただいま戻りました。はい、お待たせして申し訳ありません」

 ことり「みんなも、急に呼び出してごめんなさい」ペコリ

 凛「そんなの全然気にしてないにゃ」

 花陽「はいっ、仲間の緊急事態に駆けつけるのは当然です!」

 絵里「それにしたって凄いわね。昨晩に海未たちから連絡があって、次の日の朝には全員集合しちゃうんだから」


 希「絆の力やん?」

 真姫「別に、たまたま予定がなかっただけだし」

 にこ「・・・・・・照れ隠し?」

 真姫「なっ、ち・・・・・・違うわよ!」カアァ

 凛「照れ隠しにゃ」

 花陽「照れ隠しです」

 真姫「照れ隠しね」

 絵里「照れ隠しだわ」

 希「照れ隠しやん?」

 海未「照れ隠しですか」

 ことり「照れ隠しだねぇ」

 真姫「だから違うってば! 違うんだからぁー!!」


 続きは明日にでも。

 というか読んでくれる人はいるのかなぁ。
 あ、間違えた。いるのかなん?





 穂乃果「それで、みんなどうしたの?」

 海未「そうですね。そろそろ説明しなくてはなりませんね」

 にこ「いえ、その前にすることがあるわ」

 ことり「すること?」

 絵里「そうね、優先すべきことがあるわね」

 凛「そ、それは・・・・・・?」

 希「それは~・・・・・・」

 花陽「それは・・・・・・!」



 のぞにこえり「「「お風呂よ(や)!!」」」



 真姫「・・・・・・お風呂?」

 にこ「そうよ! 身だしなみの基本!」

 花陽「確かに、穂乃果ちゃんちょっと臭うかも・・・・・・」

 穂乃果「ええっ!?」ガーン!

 花陽「あっ、ごめんなさ――」

 凛「穂乃果ちゃんくっさいにゃー!」

 穂乃果「身も蓋もない!?」


 絵里「という訳だから、みんなで銭湯に行くわよ!」

 ことり「なんで銭湯?」

 希「このアパートにお風呂がないからや!」

 穂乃果「事実だけどあんまり大声で言わないで!?」

 花陽「タオルとかはどうするんですか?」

 にこ「途中のスーパーで買えばいいわ。シャンプーとか石鹸とかも」

 ことり「みんなでお風呂か~♪ なんか楽しみだねっ」

 海未「そんな呑気な・・・・・・」


 凛「ほらほら海未ちゃん! 早く行っくにゃあー!」グイグイ

 海未「分かりましたからそんなに引っ張らないでください」

 真姫「なんだってそんなこと・・・・・・」

 希「ええやん、ええやん。久しぶりに集まったんやし、裸のお付き合いも大切やろ?」

 真姫「そうかも知れないけど・・・・・・」


 ワイワイゾロゾロ・・・・・・



 穂乃果「・・・・・・結局みんなは何しに来たのさ!?」





 ことり「はぁ~・・・・・・。いいお湯だねぇ・・・・・・」ダルーン

 花陽「生き返りますぅ・・・・・・」ダルーン

 希「昼間からお風呂とか、贅沢やわぁ・・・・・・」ダルーン



 穂乃果「ちょっとにこちゃん!? 頭くらい自分で洗えるよ!」

 にこ「いいから大人しくしなさいよ! このにこにーが洗髪してあげるって言ってんだからありがたく思いなさい!」



 真姫「向こうは騒がしいわね」

 絵里「にこのお世話好きをいい感じに刺激するからね、今の穂乃果は」

 海未「他のお客様もいるのに・・・・・・。ちょっと注意してきます」ザバッ

 凛「凛も凛もー♪」

 真姫「・・・・・・凛は遊びに行っただけね」

 絵里「あんまり暴れると怪我をするかも知れないし・・・・・・私も行って来るわ」ザバッ

 希「ウチもウチもー♪」

 花陽「希ちゃんまで!?」


 ことり「なんか楽しそうだね! ことりも行くぅ~♪」

 真姫「ちょっとちょっと、結局ほとんど集まっちゃってるじゃない」

 花陽「うーん。凛ちゃんが心配だし、花陽も行くね?」ザバッ

 真姫「ちょ、花陽!? ・・・・・・・・・・・・。しょ、しょうがないわね! 私も行ってあげる! 仕方なくよ、仕方なく!」ブツブツ




 穂乃果「もぉー、にこちゃんってば強引なんだから・・・・・・」~♪

 にこ「鼻歌出てるわよ」ワシャワシャ

 海未「お二人とも!」

 穂乃果「およ? 海未ちゃん? ・・・・・・あたっ、泡! 泡が目に!」

 にこ「なにしてんのよ・・・・・・」

 海未「他のお客様もいるのです! 静かにしてください!」

 穂乃果「ちょ、待って!? お説教は眼球の激痛が治まってからにして!?」


 凛「穂乃果ちゃん大丈夫?」

 にこ「あ、凛ちょどいいところに。ちょっと穂乃果の右腕洗ってくんない?」

 凛「右腕?」

 にこ「そうよ。海未は左腕」

 海未「え、な・・・・・・なんですか?」

 にこ「あんまり時間もかけてらんないでしょ。三人がかりで綺麗にするわよ」

 絵里「ちょっと三人とも? あんまり暴れて怪我だけはしないでよ?」

 にこ「あ、絵里。あんたは背中やって」

 絵里「え? え?」


 希「ウチはー?」

 にこ「じゃあ左足」

 ことり「なら私は右足だねっ♪」

 花陽「えっと・・・・・・どういう状況?」

 真姫「なんでみんなして穂乃果に群がってるのよ」

 にこ「二人は首筋からお腹にかけて洗ってあげて。いいわね?」

 まきぱな「「あ、はい」」

 穂乃果「ちょちょちょ!? なになに何でみんなで穂乃果のことくすぐるの!? ひっ!? ちょ、脇やだ脇やだ! ひゃ!? 太ももむにむにしてるの誰!? ていうか顔を洗わせて目が開かない! やっ、だめ、そんなとこ・・・・・・あっ、わき腹だめっ、ひぅ!? 首筋弱いからぁ・・・・・・んっ、あっ、全身、びんかんになるっ、やら、やらぁ!」//////





 穂乃果「ひ、酷い目に合った・・・・・・」グッタリ

 海未「今思い返してみれば、なんと破廉恥なことを・・・・・・」///

 穂乃果「・・・・・・ねぇ、ことりちゃん」

 ことり「なぁに、穂乃果ちゃん」

 穂乃果「右足の太もも何度もふにふにしてたのってことりちゃん?」

 ことり「違うよ?」

 穂乃果「え、でも右足はことりちゃんが洗ってくれてたんじゃ・・・・・・」

 ことり「違うよ?」

 穂乃果「そ、そう?」


 にこ「そろそろ温まったし上がるわよ」ザバッ

 絵里「そうね。逆上せてもしょうがないし」

 花陽「なんだかんだ、楽しかったね」ニコニコ

 穂乃果「穂乃果はなんだか疲れたよ」

 希「でもサッパリしたやん?」

 穂乃果「そうだけど」

 凛「はいっ、穂乃果ちゃん!」スッ

 穂乃果「ん、コーヒー牛乳?」


 凛「うん! やっぱりお風呂上りはこれだよねー!」ゴキュゴキュ

 穂乃果「え、あ、ごめん凛ちゃん。持ち合わせがないから後で・・・・・・」

 凛「いいよいいよ。ここは凛の奢りだにゃ!」

 穂乃果「え、でも・・・・・・」

 凛「遠慮は無用にゃ! それ飲んで笑顔になってね、穂乃果ちゃん!」ニカッ

 穂乃果「り、凛ちゃん・・・・・・」ウルウル

 絵里「なになに? コーヒー牛乳奢ってくれるの?」

 凛「え?」


 希「おーい、みんなー。凛ちゃんがコーヒー牛乳奢ってくれるってー」

 凛「え、え!?」

 にこ「全員に奢るなんて太っ腹ねぇ」

 凛「ちょ、ちが・・・・・・!」

 海未「よいのですか? 凛」

 凛「いやいやいや! よくないにゃ!」

 花陽「凛ちゃん、ご馳走様♪」

 凛「かよちん!?」

 ことり「私はトロピカル牛乳がいいな~」

 凛「ダメだよことりちゃん!」

 真姫「だそうよ、ことり。コーヒー牛乳で我慢しとけば?」

 凛「ダメってそういう意味じゃないにゃ!?」

 穂乃果「あははははっ! みんなといると、楽しいし美味しいなぁ!」ゴキュゴキュ





 海未「では改めて、本題に入りましょう」

 穂乃果「やっとだね。朝から混乱しっぱなしだから疲れたよ」

 海未「まず、勝手ながら穂乃果の現状は昨晩のうちにみんなに話しました。申し訳ありません」ペコリ

 ことり「ごめんね、穂乃果ちゃん」ペコリ

 穂乃果「なんとなく分かってたから、それはいいよ」

 海未「ありがとうございます」

 絵里「大変だったみたいね、穂乃果」

 希「よく一人で耐えてたね。お疲れさまやん」


 穂乃果「二人とも、ありがとう」

 凛「穂乃果ちゃん可哀想にゃあ・・・・・・」

 花陽「穂乃果ちゃん・・・・・・」

 真姫「一人で全部抱え込むなんて、成長がないわよ」

 穂乃果「うん、その通りだよ」

 にこ「はいはい、色々言いたい事はあるだろうけど話進まないから。海未、続きお願い」

 海未「分かりました。その前に確認したいのですが、頼んだものは用意できましたか?」


 にこ「勿論よ」

 希「バッチリやん?」

 絵里「大丈夫よ」

 凛「なんとかしたにゃ!」

 花陽「頑張りました」

 真姫「当たり前でしょ」

 穂乃果「え? え? なんの話?」

 海未「これから説明します。穂乃果の現状を話した後、満場一致で助けたいという結論に至りました」

 穂乃果「え、助けるって・・・・・・? え?」

 海未「落ち着いてください。大切な仲間が苦しんでいるんです。当然じゃないですか」


 穂乃果「み、みんな・・・・・・」ウルウル

 海未「穂乃果だって、誰かが困っていたら無条件で助けるでしょう? ですので――」ゴソゴソ

 ことのぞにこえりまきりんぱな「」ゴソゴソ

 穂乃果「?」

 海未「――これは、遠慮なく受け取ってください」ドンッ

 ことのぞにこえりまきりんぱな「」ドドンッ



 100万円×8束「」



 穂乃果「      」ポカン

 海未「一人100万ずつ、計800万あります。これで借金を完済できるのではないでしょうか」

 穂乃果「・・・・・・え、ちょ・・・・・・・・・・・・え・・・・・・?」

 ことり「それにしても、本当に一晩で100万円用意できるなんてね」

 絵里「社会人になってもう4年目だしね。それくらいの貯金はあるわ」

 希「特にお金のかかる趣味もあるわけじゃないしねー」

 にこ「にこにーの力なら余裕にこっ」

 凛「ちょうど車を買おうと貯金しててよかったにゃー」

 花陽「大学生のときのバイト代が手付かずだったので、大丈夫でしたっ」


 真姫「実を言うとちょっとギリギリだったんだけど、なんとかしたわ」

 にこ「えー? 真姫ちゃんはー? 100万どころか1000万だってすぐ用意できるんじゃないのー?」

 真姫「私はまだ学生で、このお金は正真正銘、私のお金よ!」

 ことり「あ、そっか。医大生だもんね?」

 真姫「そうよ。一応塾講師のバイトもしてるんだけど、勉強する時間も考えると思うようには稼げないわね。忙しくて使う暇がなかったのが幸いしたわ」

 海未「そうだったんですか・・・・・・。ありがとうございます、真姫」ペコッ

 真姫「お礼を言われることじゃないわよ。あなたにも、穂乃果にもね。海未がさっき言ってたでしょ。当然のことなのよ、これくらい」

 海未「真姫・・・・・・」ジーン

 ことり「真姫ちゃん・・・・・・」ジーン


 穂乃果「はっ。今ちょっと意識飛んでたよ! 頭の処理が追いつかないよ!」

 絵里「そういうわけだから、これ持って向かうわよ!」

 穂乃果「処理が追いついてないって言ったよね!? ちょっと待ってよ勝手に話進めないで!」

 にこ「落ち着きなさいよ。絵里も慌てすぎ」

 穂乃果「あ、ごめん」

 絵里「私の方こそ、ごめんなさい。ちゃんと説明しなきゃね」

 海未「では、続きを。穂乃果の混乱も尤もですが、なにも不思議な話ではないのですよ? 借金という形でお金に困り、生活の苦しい仲間がいる。ならばお金を持ち寄り一括返済してしまおうと。その思考は、少なくとも私の中では自然であり突飛なものではありません。そして同じ考えの仲間があと7人いた。それだけのことです」


 穂乃果「それだけって・・・・・・」

 ことり「ホントは、私と海未ちゃんで全額用意できればよかったんだけど・・・・・・」

 希「それこそ水臭いやん。誰かが立ち止まってしまったら他の4人が前から引っ張り、残りの4人が後ろから押す。そうやって進んできたやん?」

 凛「そーだっけ? 結構みんなで立ち止まってたりしたような・・・・・・」

 花陽「いいところだから少し黙ろ?」ニコッ

 穂乃果「ちょ、だからちょっと待ってよ! いきなりこんな大金渡されて、借金を返せなんて・・・・・・あれは元々穂乃果たちの借金で、みんなとは関係ないじゃん!」

 真姫「関係あるわよ」

 穂乃果「ないよ!?」


 にこ「あるの。いえ、仮になかったとしても、それこそ関係ないわ」

 穂乃果「な、なに・・・・・・?」

 絵里「繰り返すようだけど、仲間が苦しんでいるのよ? 昨晩あなた、家族に会いたいって泣いたそうじゃない」

 穂乃果「ぅぐ・・・・・・海未ちゃあん!」ジトッ

 海未「何故私だけなのですか!」

 ことり「まぁまぁ」

 花陽「大好きな家族に会えないなんて悲しすぎます!」

 凛「誰の借金とかどうだっていいにゃ! 凛たちは穂乃果ちゃんを助けたい! それだけだよ!」

 穂乃果「で、でも・・・・・・っ!」


 ことり「穂乃果ちゃん。私ね、ちょっと怒ってるんだよ?」

 穂乃果「へ? ことり、ちゃん・・・・・・?」

 ことり「どうして私たちに相談してくれなかったの? 確かに穂乃果ちゃん家の借金は直接的には無関係かも知れないけど、それでも何か一言でも相談して欲しかった。私や海未ちゃんを頼って欲しかった」

 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」

 ことり「そんなに頼りない? 心磨り減らしてボロボロになって、それでやっと差し伸べられた救いの手を、私たちの思いを、穂乃果ちゃんは受け取ってくれないの?」ウルウル

 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」

 海未「穂乃果、もう我慢しなくていいんです。1人で荷を負う必要なんてないんです。1人で背負うには重過ぎる荷でも、9人で分け合えばなんてことありません。お願いします、穂乃果。私たちにも、背負わせてください」ポロポロ

 穂乃果「海未ちゃん・・・・・・」


 希「あとは穂乃果ちゃん次第や。ウチらの気持ちは全部話した。このお金を受け取るか突き返すか、自分の胸によく聞いてみて?」

 穂乃果「穂乃果、穂乃果は・・・・・・」

 8人「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」ゴクッ

 穂乃果「・・・・・・うん、受け取るよ! みんなの気持ち! だけど絶対、ぜーったい返すからね! 何年かかっても、お金と感謝の気持ちはいつか必ず返すから!」

 海未「ええ、待っていますよ。何年でも」ポロポロ

 ことり「うんっ、慌てなくていいからね!」ポロポロ

 凛「よぉーしそれじゃあ、ヤーさんのところに行っくにゃー!」

 穂乃果「え? みんなも行くの?」


 真姫「当たり前でしょ? 穂乃果一人じゃ心配だもの」

 穂乃果「それどういう意味!?」

 花陽「割とそのままの意味だと思うけど・・・・・・」アハハ

 穂乃果「花陽ちゃんまで!?」

 にこ「いいからホラ、こっち来なさい穂乃果。髪を梳いてあげるわ」

 穂乃果「あ、ホントにやってくれるんだ///」テレテレ

 希「にこっち優しいやん」キシシ

 凛「あーっ、穂乃果ちゃんいいなーっ! ね、ね! 次凛もやって!」

 絵里「いいわね。じゃあその次は私もお願い」


 花陽「なら花陽も・・・・・・」

 希「ほならウチも頼もうかな? 真姫ちゃんは?」

 真姫「わ、私は別にいいわよ」

 ことり「じゃあ私の次が真姫ちゃんだね♪」

 真姫「いいって言ってるでしょ!?」

 海未「では私が最後ですか。よろしくお願いします、にこ」

 にこ「って、なんで順番に整髪することになってんのよ!」スッスッ

 穂乃果「にこちゃん気持ちいい~♪」


 なんかグダグダで読みづらくてスミマセン。

 コメ付けてくれた方ありがとうございます。

 多分明日で終われると思います。





 若頭「よォ、久しぶりだな穂乃果」

 幹部「てめぇなにゾロゾロと連れて来てんじゃ! 保育園の引率かゴラァ!」

 穂乃果「」ビクッ

 若頭「やめぇや。堅気のネェちゃん脅すもんじゃねェぜ」

 幹部「へい」

 若頭「それで、一体なんの用事だ? こっちも暇なわけじゃねェんだよ。え?」ギロッ

 穂乃果「」ガタガタブルブル

 海未「・・・・・・僭越ながら、私の方から説明させて頂きます」


 若頭「ネェちゃん、話する前に名ァ名乗れや。最低限の礼儀ってもんだぜ」

 海未「失礼しました。私、園田 海未と申します。穂乃果の古くからの友人で、今日は若頭さんにお話とお願いがあって参りました。大人数で押しかけたこと、お許しください」ペコリ

 若頭「ほう、それで?」

 海未「単刀直入に申し上げます。穂乃果の借金、本日にて清算させて頂きます!」ドンッ!

 ことのぞにこえりまきりんぱな「」ドドンッ!


 100万円×8束「」


 若頭「・・・・・・・・・・・・」

 海未「800万円あります。穂乃果から残りの借金はそのくらいだと聞きました。足りない分は追加で出します」


 若頭「・・・・・・ふっ」

 海未「・・・・・・どうか、しましたか?」

 若頭「穂乃果よォ、お前算数苦手だろ」

 穂乃果「え、え・・・・・・?」

 若頭「おい、台帳持ってこい」

 幹部「へい」

 若頭「足りないんですよ、園田さん。1万や2万じゃない、100万円ほどね」

 海未「な・・・・・・っ!?」

 穂乃果「うそ・・・・・・」


 幹部「アニキ、台帳です」

 若頭「ウチはこういうのキッチリしてるんです。後で揉めるのはお互い嫌でしょう?」バサッ

 海未「は、拝見します!」バッ

 絵里「どう? 海未?」

 若頭「もしよければ電卓貸しますぜ?」

 海未「いえ、結構、です・・・・・・」

 ことり「どうなの? 海未ちゃあん」

 海未「確かに、残債はあと912万3768円・・・・・・でした」

 凛「そんな・・・・・・」


 にこ「でもそれって違法な金利が上乗せされてるんでしょ?」ボソボソ

 海未「確かにその通りですが、今それを言ったところで解決はしないでしょう。穂乃果も何度も警察に相談したみたいですし」ボソボソ

 希「元々それは承知の上で返済するつもりやったし、言っても事態は悪化するだけやん?」ボソボソ

 絵里「とりあえず今日のところは800万を渡して、残りは後日にするのが妥当じゃないかしら」ボソボソ

 海未「そうですね、そうしましょう」ボソボソ

 若頭「相談は終わりましたかい?」

 海未「はい。仰るとおり112万円ほど足りないので、今日は800万円をお渡しします。残りは後日改めてという形でよろしいですか?」


 幹部「なにいっちょ前に提案してんだ、あ"あ!? 優秀な営業マンかゴラァ!」

 若頭「・・・・・・おい」ポン

 幹部「へい?」

 若頭「やめろっつっただろうが、あ?」ドゴッ

 花陽「ひっ・・・・・・!」ビクッ

 幹部「す、すんません! アニキ!」

 若頭「あとちょいちょい例えツッコミ入れてんのはなんだ? マイブームか?」バキッ

 幹部「うぎゃ!」

 ことり「あ・・・・・・あ・・・・・・」ガタガタ

 若頭「すいませんね、あとできつく言っとくんで」

 海未「え、ええ・・・・・・」


 若頭「話を戻しますがね、園田さん。そいつぁお受けできませんね」

 海未「何故、でしょうか」

 若頭「こちらにも収支の計画ってモンがありましてね、そちらの都合だけで金を持ってきたり残りはあとに回したり、困るんですわ」

 絵里「でもそんなの、それこそそちらの都合じゃない!」

 若頭「名ァ名乗れっつっただろうが。なァ、ネェちゃんよォ」ギロッ

 絵里「・・・・・・・・・・・・っ!」ビクッ

 海未「絵里、ここは私が。若頭さん、無理なお願いをしているのは承知しております。ですが、このままでは穂乃果が疲労で倒れてしまいます。どうか、一括返済の機会を与えてはもらえないでしょうか」

 若頭「穂乃果は、テメェはどうなってもいいから家族を解放してくれとここに来た。こちらもそれを承諾して契約したんですよ。その時点で穂乃果の人生はこちらのものだ」

 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」


 若頭「まァあと5年くらいすりゃあ借金もチャラになるでしょう。その間に穂乃果がぶっ倒れるようなことがあれば、ウチと懇意にしてる医者のとこに連れてくんで安心してください。治療費は借金に上乗せすることになりますがね」

 海未「そこをどうか、お願いします! 穂乃果は既に身も心もボロボロです。家族にも会えず一人で全てを背負って、その重圧に押し潰されそうになっています。若頭さんの器量で、一度だけでもチャンスを! お願いします!」ペコ!

 ことのぞにこえりまきりんぱな「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」ペコリ!

 若頭「穂乃果、テメェはどうなんだ? 最初の契約ブン投げて逃げようってのか?」

 穂乃果「ほ、穂乃果は・・・・・・」



 『私たちの思いを、穂乃果ちゃんは受け取ってくれないの?』

 『凛たちは穂乃果ちゃんを助けたい! それだけだよ!』

 『ウチらの気持ちは全部話した』

 『仲間の緊急事態に駆けつけるのは当然です!』

 『1人で荷を負う必要なんてないんです。1人で背負うには重過ぎる荷でも、9人で分け合えばなんてことありません』



 穂乃果「穂乃果は、もうこんな生活いやだ! お父さんやお母さん、雪穂に会いたい! お願いします!」ペコ!

 若頭「・・・・・・はぁ、ガキのワガママってのは時間が経つと変わるからいけねェや」

 幹部「どうしやすか、アニキ」

 若頭「・・・・・・・・・・・・。いいでしょう。認めますよ、園田さん」

 海未「ほ、本当ですか!」

 若頭「ええ。ただし、条件があります」

 海未「条件、ですか?」

 若頭「そちらのワガママ押し付けるんだ、当然でしょう」

 海未「・・・・・・条件、とは?」


 若頭「そちらの穂乃果のお友達8人の中から・・・・・・ああ、穂乃果の妹でもいいな。誰か1人、ウチの店で働いてもらいます」

 海未「なっ・・・・・・!?」

 若頭「穂乃果が借金を完済すりゃあ店で働く必要もないでしょう。その穴埋めですよ。借金の落とし前じゃありませんから、期間は1年で結構です」

 海未「そ、そのお店というのは・・・・・・?」

 若頭「ここじゃ言えませんなァ。働けば分かりますよ」ニヤリ

 穂乃果「ま、待って! 借金を返したあと、穂乃果があと1年働くから! それでいいよね!?」

 若頭「いや、ダメだ。もうお前は信用ならねェ。また辞めたいだ何だと抜かされちゃ敵わねェからな」

 穂乃果「そんな・・・・・・」


 海未「・・・・・・分かりました。私が働きましょう」

 穂乃果「海未ちゃん!?」

 ことり「ダメだよ海未ちゃん! わた、私が働くから!」

 にこ「なに勝手に話進めてんのよ!」

 希「そうやで。ここはウチが働くのが最良やん?」

 絵里「希、少し黙ってて。みんなも落ち着きなさい」

 8人「「「「「「「「・・・・・・っ」」」」」」」」

 絵里「若頭さん」

 若頭「あン?」ギロッ

 絵里「先ほどは失礼致しました。絢瀬 絵里と申します。少々よろしいですか?」

 若頭「・・・・・・なんでしょうか?」


 絵里「台帳を見させて頂いた限り、国が定める金利の上限を大幅に超えていることが分かります」

 若頭「それが?」

 絵里「穂乃果は約1年間あなた方のお店で働き、その間の給与は発生しておりません」

 若頭「それで?」

 絵里「これはどちらも法律違反です。が、それで警察に駆け込んだところで恐らく解決はしないでしょう」

 若頭「でしょうな」

 絵里「しかし、それでもそちらにとって何かしら厄介な事態になることには違いありません」

 若頭「絢瀬さん。そいつぁひょっとして、我々を脅しているんですかい?」

 絵里「滅相もありません。そもそもこの程度で動揺させられるとは思っておりません」


 若頭「シンプルにいきましょうや。つまり何が言いたいんです?」

 絵里「便宜を図って頂きたいのです。誰か1人じゃない、私たちは全員で終わりにしたいんです。もう誰か1人に、荷を負わせるなんてことしたくないんです」

 海未「絵里・・・・・・」

 絵里「もうこれで、終わりにしませんか。違法な金利の借金を完済して、それで穂乃果を開放してはもらえませんか。もう、充分ではありませんか」

 若頭「またワガママですか。いい加減にしてもらえませんかね。こっちだって善意で商売してるわけじゃあないんですよ」

 絵里「承知しております。ですが、私たちも伊達や酔狂でここにいる訳ではありません。仲間を、大切な人を傷つけるような相手に屈するつもりはありません」

 若頭「ナマ言ってんじゃねぇぞこのガキャ! テメェら今すぐ海の藻屑にしてやろうか!? あ"!?」ダンッ!

 絵里「・・・・・・・・・・・・」


 穂乃果「絵里ちゃん・・・・・・」ハラハラ

 幹部「アニキ、落ち着いて」

 若頭「ほう、ワシの恫喝に動じんか・・・・・・。ええ度胸じゃのう、ネェちゃん」

 絵里「ありがとうございます」

 若頭「ふん、いいだろう。10分だ。10分で残りの金を用意できたら解放してやる」

 絵里「10分・・・・・・!」

 若頭「こっちも忙しいんですよ、絢瀬さん。最大限譲歩したつもりですぜ?」

 海未「みんなで出し合いましょう! 私はあと30万くらいならすぐに用意できます!」


 凛「り、凛はもうお金ないにゃ・・・・・・」

 花陽「私も・・・・・・」

 真姫「ごめん・・・・・・」

 ことり「気にしないで? 私はすぐに用意できるのは20万くらいかなぁ」

 絵里「くっ、給料日前であと精々15万がいいところだわ」

 希「ウチもや。これで4人合わせて80万。あと32万・・・・・・」

 にこ「・・・・・・20万ちょいくらいが精一杯だわ。30万は・・・・・・ごめん、厳しい」

 海未「あと12万・・・・・・!!」

 絵里「時間がないわ! とりあえず用意できる人はATMに行ってお金を下ろす! 足りない分は動きながら考えましょう!」



 穂乃果「もういいよっ!!」



 海未「穂乃果!?」

 穂乃果「もう充分だよ、みんな。穂乃果のためにここまでしてくれて、すごく・・・・・・すっごく嬉しかった」

 にこ「何言ってんのよ! あと少し、もう少しじゃない!」

 絵里「諦めちゃだめよ!」

 希「とにかく、動かんことには変わらん! 早ぉお金下ろさな!」

 穂乃果「いいってば! もうこれ以上、みんなに迷惑かけたくないっ!!」

 ことり「迷惑なんかじゃないよっ。あと112万だよ!? それを用意できれば穂乃果ちゃんは自由なんだよ!?」







 ???「あと112万でいいんですね?」



 凛「だ、誰にゃ!?」

 花陽「というか、どこから?」

 真姫「普通に入り口よ」


 雪穂「お久しぶりです、みなさん! そして、お姉ちゃん!」


 穂乃果「雪穂!?」

 ほのママ「あら、思った以上に元気そうでよかったわ」

 穂乃果「お母さん!?」

 ほのパパ「・・・・・・・・・・・・」

 穂乃果「お父さん!」


 絵里「ど、どうして穂乃果のご家族の方が・・・・・・?」

 海未「私が連絡したんです。ここから出てすぐ再会してもらおうと」

 ことり「海未ちゃんの粋な計らいだね♪」

 雪穂「お姉ちゃん、よかった・・・・・・。ほんっ、とうに・・・・・・ぐすっ、よがっだぁ・・・・・・!」ボロボロ

 穂乃果「え、ちょ、雪穂!?」ワタワタ

 ほのママ「はいはい、感動の再会を邪魔したくはないけど、済ませること済ませてからにしましょう?」

 海未「も、もしかしてお金をご用意されたのですか?」

 ほのママ「当然よ、海未ちゃん。なんたって穂乃果は私たちの大事な大事な家族なんですもの」

 ことり「穂乃果ちゃんのママさん・・・・・・!」ウルウル


 ほのママ「さ、確か112万だったわね? とりあえず100万と・・・・・・」ポン

 希「これで900万!」

 ほのママ「ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、いつ、むぅ、なな・・・・・・。はい、12万」パサッ

 にこ「これで912万円!」

 花陽「あと確か・・・・・・」

 真姫「3768円ね」

 ほのママ「えっ、まだあるの?」

 海未「まぁそれくらいなら財布に入っている分でどうとでもなりますね」スッ

 ほのママ「ああ、海未ちゃんいいわよ。えっと、3000円と、700・・・・・・あら、22円しかないわ。ね、ねぇ誰か46円ないかしら?」


 にこ「25円・・・・・・。足りないわね」ショボン

 凛「40円ならあるにゃー!」

 花陽「あ、じゃあ6円は私が・・・・・・」

 幹部「ファミレスの割り勘かよ」

 若頭「次下らねぇツッコミしたらエンコ詰めさせるぞ」

 幹部「それだけは勘弁を」

 絵里「若頭さん」

 若頭「・・・・・・・・・・・・」

 絵里「10分以内に残金912万3768円、用意できました。約束、守って頂けますね?」


 若頭「・・・・・・金置いてさっさと消えな」

 海未「分かりました。どうもお騒がせ致しました。みなさん、撤収しましょう」


 ゾロゾロ



 幹部「いいんですかい?」

 若頭「一度言ったことは覆さねェよ。ガキじゃあるまいし」






 雪穂「うああああ"あ"あ"ぁぁっ! あい"だがっだ! ずっとずっと会いだがったよぉーっ!!」グスグス

 穂乃果「そ、そんなに強く抱きしめ、られたら・・・・・・苦じい、よ・・・・・・雪、穂。雪穂ぉ! 穂乃果も会いたかっだ! 寂しくて死んじゃいそうだった! ゆ"ぎほぉーっ!!!」ボロボロ

 ことり「よかった・・・・・・。ホントによかった」ポロポロ

 ほのママ「穂乃果。よく一人で頑張ったわね。私たちを、助けてくれたのよね。ありがとうね・・・・・・!」ギュッ

 穂乃果「おかあざんっ! おがあさん、おがあざんっっ!!」ボロボロ

 海未「全く、強がる割には、ぐすっ、涙脆いんですから・・・・・・」ウルウル

 凛「海未ちゃんも泣いてるにゃー」ポロポロ

 真姫「あんたもね」ポロポロ


 希「えりち大丈夫?」

 絵里「え、ええ。急に緊張の糸が途切れたというか、私ったらなんて無茶したのかしら・・・・・・」ガタガタ

 にこ「ヤーさんに喧嘩売ったようなもんだものね。無事でなによりだわ」

 花陽「で、でもっ! 穂乃果ちゃんのために臆することなく言い切った絵里ちゃん格好よかったよ!」

 絵里「ありがと花陽。穂乃果のあの姿を見られたから、頑張った甲斐があったわ」

 穂乃果「怖かったんだ! みんなに忘れられちゃったんじゃないかって! もう穂乃果のことなんか必要ないんじゃないかって! ぐすっ、例え借金を返し終わっても、帰る場所なんかなくなっぢゃったんじゃないかっで! ごわがっだんだよぉーっ!」

 ほのママ「バカね、そんなわけないじゃない。穂乃果のこと、一日だって忘れたことなんかなかったわ」ポロポロ


 雪穂「私もお母さんもお父さんも、お姉ちゃんのことが大好きなんだよ? 寂しくて死んじゃいそうだったのは私もだよ! もう絶対いなくなったりしないでよね! 約束だよ!」ギュウッ

 穂乃果「う"んっ! や"ぐそぐする"!」グスグス

 ほのパパ(CV若本 規夫)「・・・・・・穂ぅ乃果ァ」

 海未(しゃ、喋れたんですか・・・・・・)

 ことり(初めて聞いたかも・・・・・・)

 にこ(声渋っ!)

 絵里(でもイメージ通りかも)

 希(イケボやんなぁ♪)

 凛(喋り方変だにゃ)

 花陽(ていうか若本 規夫さんって・・・・・・?)

 真姫(知らない人はググりなさい)


 穂乃果「なに? お父さん・・・・・・?」グスッ

 ほのパパ(CV若本 規夫)「・・・・・・おかえり」ニッ

 穂乃果「! ただいまっ!!!」パアァ





 ほのパパ(CV若本 規夫)「穂乃果ァ! テメーまぁた漉し餡と粒餡間違えやがったな! お客さんからクレームきてん、ぞゥ!」

 穂乃果「うそっ、そんなはず・・・・・・ホントだ!?」ガーン

 ほのパパ(CV若本 規夫)「オメーよォ、常連さんだから笑って許してくれぃてるが、こいつぁとんでもねぇミスなんだぞ」

 穂乃果「うう、分かってるよー!」メソメソ

 ほのパパ(CV若本 規夫)「お前もそろそろ和菓子職人としての自覚とプる"る"あ"イドを持ちやがれィ、このすっとこどっこい」

 穂乃果「ほ、穂乃果だって頑張ってるもん!」


 ほのパパ(CV若本 規夫)「頑張んのは当たぁり前だ。職人てなぁ結果を残さなきゃならねぇんだよォ」

 穂乃果「そ、そうだけどぉ・・・・・・」

 ほのパパ(CV若本 規夫)「お友達に借りたお金はまーだまだ残ってんだぞ、分かってんのか。いくらあの子たちが、返すのはいつでもいいと言ってくれてるからってィ、借りたモンさっさと返さねぇのは人の恥だ」

 穂乃果「分かってるってば! みんなには感謝してるし、少しでも早く返さなきゃって思ってるもん!」

 ほのパパ(CV若本 規夫)「なぁらさっさと手ぇ動かせぃや。また注文入ったぞ馬車馬のように働けバカ娘ィ!」

 穂乃果「うわーん! これじゃ少し前と変わんないよーっ!!」エーン!



 絵里「とか言ってる割りには楽しいそうね」クスクス

 にこ「ま、あの地獄みたいな生活に比べたらね」

 花陽「大好きな家族と一緒なら大丈夫だよねっ」

 真姫「けど、そろそろ注文したほむまんが欲しいんだけど」

 海未「忙しそうですが、それを言い訳にしていいわけじゃありませんしね」

 ことり「穂乃果ちゃん大変だぁ~♪」

 凛「穂乃果ちゃーん! ほむまんまーだー?」

 希「早ぉ持ってきてくれんと、餓死してまうやーん?」



 穂乃果「はーい、今持ってくよーっ!! もぉー! このままじゃ穂乃果倒れちゃうよおーっ!!!」




 終わり


 ほのパパについては賛否両論あるかとは思いますが、どうか広い心で許してください(笑)

 拙いSSでしたが、楽しんでもらえたら幸いです。

 もしよろしければ過去作も読んでみてください。

 のぞにこえり≪三年生がいちゃつくだけ≫
 のぞにこえり≪三年生がいちゃつくだけ≫ - SSまとめ速報
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 お目汚し失礼しました。

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