ほたる「始球式」智絵里「アンド」朋「野球観戦!」 (54)


~事務所~


藤居朋「ほたるちゃん、遅いわね……」

緒方智絵里「はい……」

朋「常務に呼ばれてからけっこう経つけど……」

智絵里「退職金の交渉中でしょうか……?」

朋「なんでクビ前提で話を進めるの?」



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前作
緒方智絵里「祝・朋さん」白菊ほたる「生誕祭!」



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ガチャ

白菊ほたる「戻りました」

朋「あっ、ウワサをすればなんとやらね。おかえり~」

智絵里「送別会はいつにする?」

朋「だからクビじゃないってば!」

ほたる「告別式……?」

朋「聞き間違いが不穏ね!?」

智絵里「ご祝儀包まなきゃ……」

朋「告別式は香典でしょ!? ……いや死んでないけど!」

ほたる「智絵里さんよりは長生きしたいですね」

智絵里「ほたるちゃんなんて明日にも不慮の事故に巻き込まれるかもしれないのに……?」

ほたる「巻き込まれた隣の友人だけ不幸にも……というパターンも」

朋「もうやめて!!!」


朋「なんで顔を合わせると煽り合いしちゃうの!」プンプン

智絵里「ご、ごめんなさいっ。つい魔が刺して……」

ほたる「智絵里さんはいつも魔が刺したような行動ばかりですよね」

智絵里「ほたるちゃんもその植木鉢の破片を刺したような顔、やめたほうがいいと思うよ?」

朋「言ってるそばから!」


朋「はい! この話題終わり!」

智絵里「引き分けにしておいてあげるねっ」

ほたる「年上を立てるのも大切な仕事ですからね……」

朋「戦ってないと死んじゃうの?」

智絵里「そういえば、常務とはどんなお話をしたの?」

朋「そうそう、それよそれ!」

ほたる「ふふっ……嬉しいお話でしたよ」

朋「お! なになに?」

ほたる「はい、とあるプロ野球チームが、私に公認サポーターのオファーを出してくださって、その面談だったんです」

朋「へえ! プロ野球チームからって凄いじゃない!」

智絵里「不運の象徴であるほたるちゃんを公認……!?」

朋「智絵里ちゃん」

ほたる「いえ、私も正直、そう思いました。スポーツに運って凄く重要だと思うんですけど、大丈夫なんですかって」

朋「ま、まあ、確かに……」

ほたる「そうしたら」

『ウチは毎年ケガ人ばかりで、今年もダントツ最下位です。ツイてないどころか、何か憑いてるレベルですよ。ですから、白菊さんをサポーターとして、いっそ運の悪さをオーバーフローとかできないかな……と思いまして』

ほたる「と」

朋「馬鹿じゃないの?」


ほたる「それと」

『我々としては、白菊さんの運の悪さよりも、その不運を乗り越える強さに注目しています』

ほたる「とも言ってくださって……」

朋「なるほどね……! それは確かに!」

智絵里「というか、ケガは運ではなくてチームとしての管理不足だと思うんですが……」

朋(……何も言えない)

ほたる「"早速明日から植木鉢を頭突きで割るトレーニングをさせよう!"とも仰ってました」

朋「悪いけどその人クビにした方がいいわよ」


ほたる「シーズンはもう少しで終わってしまうので主な活動は今年のオフからですが、なんと、明日の試合で始球式をさせていただけることになったんです……!」

朋「へー! すごいわね!」

智絵里「頑張ってね!」

ほたる「はい……! テレビでも中継するようなので、よかったら見てくださいね」

朋「もちろんよ! あ、練習とかする? ちょうど倉庫にグローブとボールあったはずだし!」

智絵里「いいですねっ」

ほたる「ふ、藤居ー、野球しようぜー……!」

朋「ほたるちゃん?」


~公園~


朋「じゃ、いくわよほたるちゃーん!」

ほたる「どうぞー」

朋「今日の投擲運はバッチリだったんだから! ストライク決めてみせるわ!」

ほたる(使い道が少なそうな占いですね……)

朋「やっ!」ポーン

ほたる「わわっ、ナイスボールです……!」パシッ

智絵里「アアアアイイイッッッ!!!」

朋「うるさい」

智絵里「これが普通なのかと……」

朋「特例中の特例だから」


ほたる「智絵里さん、投げますね」

智絵里「うんっ」

ほたる「えいっ」ポーン

朋「おー、いい感じじゃない!」

智絵里「はわわわわ」ポロッ

朋「あら、こぼしちゃった。どんまーい!」

智絵里「え、えっと、な、投げますっ」

朋「ばっちこーい!」

智絵里「え、ええい……!」ポイッ

ポテッ コロコロ……

朋「……」

ほたる「……」

智絵里「あ、あれ? も、もう一回ですっ」トコトコ ヒョイッ

智絵里「えいっ!」ポイッ

ポテッ コロコロ……

朋「……」

ほたる「……」

智絵里「と、飛ばない……」グスッ

朋(かっわいい!!!!!)
ほたる(かわいい……!!!)


~智絵里ちゃんは見学になりました~


智絵里「かっとばせー、ほ・た・る!」

朋「見学に回った途端うるさいわね!?」

ほたる「照れ隠しでしょうね」

智絵里「ほ、ほたるちゃん!」

ほたる「レッスンの時や、私と戦う時はキレのある動きなんですが……」

朋「アイドルが普通に"私と戦う時は"とか言うのやめない?」

ほたる「智絵里さんに投擲武器がないとわかったのは大きな収穫ですね」

朋「なんて反応すればいいの」


朋「でも、こうやってレッスン以外で体を動かすのも、たまにはいいわね!」ポーン

ほたる「気持ちいいですね……」ポーン

智絵里「つ、次は混ざってみせます……!」

朋「ふふっ、期待してるわね」ポーン

姫川友紀「ほらほらー! もっと下半身を使って投げなきゃ! 手だけじゃ強いボールは投げれないよー!!」

朋「うわっ!?」


ほたる「ゆ、友紀さん……!?」

朋「いつの間に……」

友紀「聞いたよほたるちゃん! 始球式のお仕事するんだって!?」

ほたる「は、はい……」

友紀「もー、我が事務所の誇る野球アイドル、姫川友紀に相談してくれないなんて水臭いじゃん!」

ほたる「はあ……」

友紀「ほらほら、智絵里ちゃんも教えてあげるよ!」

智絵里「ありがとうございますっ。ちなみに、キャッツの今シーズンはどうだったんですか?」

朋「あっ!」

友紀「ぐはぁ!!!!!」

朋「友紀ちゃん!!!」

ほたる「だ、大丈夫ですか……?」

友紀「……ごめん、帰るね」ズーン

朋「テンションの落差」


朋「もう! ダメでしょ智絵里ちゃん!」

智絵里「ごめんなさい……」ニコニコ

朋「セリフと表情が全く合ってないし!」

智絵里「も、もうすっかり秋ですね……」

朋「話題の逸らし方が下手すぎるでしょ!」

ほたる「あ、でもトンボも飛んでますね。確かに秋です……」

朋「あ、ホントね……。昔はよく追いかけたもんだけど……」

スッ

ほたる(あ、智絵里さんの頭にトンボが……)

智絵里「?」


朋「智絵里ちゃん動かないで! そのまま!」

智絵里「えっ?」

朋「そのままねー……こっち見てー……」グルグルグルグル

智絵里「……」

朋「……えい! ……あぁ~、もうちょっとグルグルしなきゃだったかな~」

ほたる「惜しかったですね」

朋「あー、残念……。智絵里ちゃんは目回してたのに」

智絵里「ま……まわしてないですよ?」グルグル

朋「回ってるわよね?」

智絵里「まわってない……です」グルグル

ほたる「回ってるように見えますが……」

智絵里「もうっ! いい加減にしないと怒るよほたるちゃんっ!」グルグル

ほたる「智絵里さんはどうして木に向かって怒ってるんですか?」

朋「ごめんってば」


~始球式当日・事務所~


朋「ほたるちゃんの始球式、いよいよね!」

智絵里「はいっ。わくわくしますね」

朋「テレビ中継のある試合でラッキーだったわ!」

『それではこれより、始球式を行います』

『本日の始球式を務めますのは、現在、その可愛さと不運にめげない姿勢から空前絶後の大ブレイク。老若男女誰しもが認める世界一のパーフェクトアイドル、白菊ほたるさんです』

朋「紹介のハードルが高すぎる」

ほたる『すみません……すみません……』ペコペコ

智絵里「すごい頭下げながら入ってきちゃいましたね……」

ワー!!!! ワー!!!!!

朋「で、でも歓声はすごい!」

智絵里「……」ドヤッ

朋「なんで智絵里ちゃんがドヤ顔してるの」


『では、よろしくお願いいたします』

ほたる『はい、いきます……』

朋「……」ドキドキ

智絵里「乱闘になったらほたるちゃん有利ですが……」

朋「乱闘にはならないし有利取ってるのもおかしいから」

ほたる『えいっ』ポーン

朋「おお! ナイスボールね!」

智絵里「大丈夫そうですね」

カキーン!!!!!

朋智絵里「「打たれた!!!!」」


朋「なんで!? これ始球式よね!?」

たまたま上空を飛んでいたハトさん『ぐわああああ!!!』バシーン

朋「うぇぇぇぇ!?」

智絵里「は、ハトさーん!!!!!」

朋「確かにビックリだけどそんなにハトに感情移入するかな!?」

ヒューーーー……

智絵里「ぼ、ボールが落ちてきて……」

ほたる『え?』

ゴン!!!!!!

朋「ほたるちゃん!!!」

ポーン

智絵里「は、跳ねたボールが」

ほたる『いたた……』パシッ

智絵里「ほたるちゃんのグラブの中に……!」

ほたる『……???』

朋「ピタゴラスイッチか何か?」


審判『アウトー!』

観客『ワー!!!!!』

朋「そもそも打ってるのがおかしいんだからね!?」

実況『さあ先発の白菊、先頭バッターを打ち取りました』

解説『トリックプレーでしたね』

朋「ほたるちゃん先発ピッチャーなの!?」

ほたる『???』

智絵里「困惑するほたるちゃん、カワイイなぁ……」

朋「本人に言ってあげて?」


実況『……というのは冗談なので、白菊さんはここでマウンドを降ります』

朋「当たり前でしょ……」

実況『来季からの公認サポーター就任が内定している白菊さんに、ファンから熱い声援がかけられていますね』

智絵里「藁にもすがりたいとはこのことでしょうか……」

朋「そういうこと言わないの……あ、ごめん、あたしこの後予定あるんだった。先に失礼するね!」

智絵里「はいっ。わたしはせっかくなので、少し試合を見ようかと思います」

朋「おっけ、じゃね!」

智絵里「お疲れ様ですっ!」


~翌日・事務所~

ガチャ

朋「おっはよ~、あ、智絵里ちゃん、昨日の試合ってどうなったの?」

智絵里「0-17で負けました」

朋「ラグビーかな」


朋「そ、それは……なんというか……」

智絵里「でも、怪我人はいなかったんですよ?」

朋「求められるハードルが最低限すぎない?」

ガチャ

ほたる「お疲れ様です」

朋「あ、ほたるちゃん。昨日はお疲れ様!」

ほたる「初球のストレートが甘く入ってしまいました……」

朋「なんで先発投手みたいな目線でコメント残してるの」

智絵里「監督の評価が下がった 智絵里の評価が下がった やる気が下がった」

朋「そんなパワプロの試合後みたいな」


ほたる「ところで朋さん、智絵里さん、今日の夜は空いていますか?」

朋「夜?」

智絵里「ま、まだそういうのは早いと思うし3人でなんて……///」

朋「どういう早とちりしてるの?」

ほたる「昨日の始球式の後に、チケットをいただいたんです。もうシーズンも終わりで余ってるらしくて」

朋「へー! じゃ、現地観戦ってこと?」

ほたる「はい。せっかくの機会ですし、ぜひ」

朋「いいわね! あたしは行けるわよ!」

智絵里「わたしも大丈夫ですっ」

ほたる「では、お仕事が終わったら向かいましょうか」

朋「おっけ! ……あれ、今日の仕事って場所どこだっけ?」

智絵里「武道館でライブです」

朋「それ忘れるようならアイドル辞めたほうがいいでしょあたし」

智絵里「す、すみません、正しくは新宿駅で政治家に野次を飛ばすお仕事です」

朋「智絵里ちゃん、ちょっと攻めすぎじゃない?」


~17:00・球場前~


朋「とうちゃく!」

智絵里「ちょうどいい時間ですね」

ほたる「試合開始は18時なので、少しグッズショップでも見ましょうか」

朋「いいわね~」

ほたる「あ、せっかくなので何か、お揃いのものでも買いませんか……?」

朋「うんうん、あたしもそう言おうと思ってたのよ!」

智絵里「あっ、このペンギンさ……じゃなくてツバメさんのTシャツ、かわいいですっ!」

朋「絶対わざとでしょ」


ほたる「うーん……」

朋「あ! キャップとかどうかな! 変装がてら!」

智絵里「確かに……、朋さんが気づかれたら野球なんてそっちのけでみんな見てしまいますからね……」

ほたる「選手が逆にサインを欲しがってしまうかもしれませんからね……」

朋「急に持ち上げるわよね」


ほたる「でも、公認サポーターの私はともかく、おふたりにもこのチームを応援してもらうことになりますが……」

朋「なーに言ってるの!」

智絵里「そうだよほたるちゃん?」

朋「もともと野球なんて全然見てなかったし、この機会に贔屓チームを作るのもいいきっかけよ!」

智絵里「それに、弱いチームは応援してあげなきゃですよねっ!」

朋「あたしたちのパワーで来年こそ優勝させようじゃない!」

ほたる「あ、ありがとうございます……」

朋「じゃ、決まりね。キャップ買っちゃお!」

智絵里「はいっ。いくらですか?」

朋「大丈夫よ!」バーン

ほたる「え?」

朋「こう見えても最年長なんだから! 帽子の1つや2つくらいあたしが買ってあげ(うわ意外に帽子って高いのね待って今サイフにいくら入ってたっけいやでもさっき下ろしたとこだしチケット代もタダならむしろ余裕はあるから大丈夫よね夜だから観戦後にどこか食べ行くとかもないだろうしうんうんなんとかなりそうね)る!」

ほたる「すごい間が空いてましたけど」


~球場内~


朋「えっと……席は……」キョロキョロ

智絵里「あのあたりでしょうか?」

朋「一塁側内野席Sだから……そうみたいね……、あ、ここの3席だわ」

ほたる「私は朋さんの右側で」スッ

智絵里「私は朋さんの左側で」スッ

朋「こういう時だけめちゃくちゃ息ぴったりよね」


朋「あと40分くらい?」

ほたる「ですね」

朋「あ、そういえばお弁当とか買ってなかったわ!」

智絵里「まだ開始には間に合いますし、買いにいきますか?」

朋「そうしよっか」

ほたる「では、私は荷物を見てますね」

朋「ありがとほたるちゃん、何か食べたいものある?」

ほたる「期限が切れてなければなんでも大丈夫です」

朋「大丈夫の範囲が広すぎるわよ」


朋「こうして見ると、球場の中も結構広いのねー」トコトコ

智絵里「こういう場所はテレビにも映らないですからね。わたしも初めて歩きます……」トコトコ

朋「ご飯とかもいろいろ売ってるし、こういうのを目当てに来る人もいるのかな」トコトコ

智絵里「球場内のご飯を紹介するガイドブックもあるみたいですよ?」トコトコ

朋「へー! そうなんだ!」トコトコ

智絵里「あ、このお弁当、美味しそうじゃないですか?」

朋「ホントだ! これにしよっか?」

智絵里「はいっ。いくらですか?」

朋「大丈夫よ!」バーン

智絵里「あ、900円ですね。ちょうど払えます」

朋「言~わ~せ~て~!」

智絵里(駄々をこねる朋さんもかわいいなぁ……)


朋「ほたるちゃーん、買ってきたわよ……あれ?」

智絵里「?」


チャラ男A「ねえねえ、キミ、1人?www」

チャラ男B「俺たちと一緒に見ない?www」

ほたる「……」


朋「あっ!」

智絵里「ナンパでしょうか……?」

朋「ま、待っててほたるちゃん!」

智絵里「いえ、少し見ていましょう」

朋「で、でも」

智絵里「巻き込まれるかもしれませんよ?」

朋「へ?」


チャラ男A「さっきから見てたんだけど、女の子3人でしょ? 寂しくない?」

チャラ男B「そうそう、あ、でも他の2人はイマイチだったかなwww」

ほたる「……」

チャラ男A「無視しないでよ~www」

ほたる「……球場は野球を見る場所です」

チャラ男A「え?」

カキーン ヒュー……

ガン!!!!!!!

チャラ男A「ぐあっ!!!」

チャラ男B「タッちゃん!!!」

『現在、打撃練習中です。打球の行方にご注意ください』

チャラ男A「な、何が起き」ヨロッ

ほたる「……立ち上がるんですね」ゴゴゴゴゴゴゴ

カキーン ヒュー……

ガン!!!!!!!

チャラ男A「ぐわっ!!!」

チャラ男B「タッちゃん!!!」

『現在、打撃練習中です。打球の行方にご注意ください』

チャラ男A「こ、こんな連続でファールボールが来るなんてありえな」ヨロッ

ほたる「……しぶとい」ゴゴゴゴゴゴゴ

カキーン ヒュー……

ガン!!!!!!!

チャラ男A「がはっ!!!」

チャラ男B「体力自慢で近所では有名な野球小僧だったのに高校2年の時に肩を故障して野球の道を諦めたけどまだ未練があってこうして球場に足を運んでしまうタッちゃん!!!」

朋(モブにしておくにはもったいないエピソード持ってるわね!?)

チャラ男AB「「お、覚えてろ!!!」」タタタタ

ほたる「不幸にもずっとグラウンドを見ていたので、顔どころか存在も覚えられなかったですね……」


朋「ほ、ほたるちゃん、ただいま。お、お弁当買ってきたよ……」

ほたる「あ、おかえりなさい。すいません、使い走りのようなことをさせてしまって」

朋「だ、大丈夫だけど……」

智絵里「ほたるちゃん、何かあった?」

ほたる「いえ? 特に何もありませんでしたよ」

智絵里「それならよかったですね!」

朋「う、うん……?」


朋「ええと、じゃあ気を取り直して、そろそろ試合が……あ、飲み物も買わなきゃ」

智絵里「とりあえず生でいいですか?」

朋「全員もれなく買えないわよ」

ほたる「バレたらクビは免れないですね」

智絵里「ほたるちゃんが飲めって……無理やり……」

朋「仲間を売る練習やめて」


~18:00~


『プレイボール!』


朋「始まった!」

智絵里「勝てるといいですね」

ほたる「はい、今日こそは」

カキーン!!!!!

ホームラン!!!!!

朋「……」

智絵里「……」

ほたる「……」

3人(打たれた……)


朋「ま、まあまだ1点だし」

ほたる「こ、ここからですよね」

カキーン!!!!!

ホームラン!!!!!

朋「……」

智絵里「……」

ほたる「……」

3人(2者連続……)


~1回ウラ~


朋「結局初回に3点も取られちゃった……」

智絵里「まあ、まだ初回ですし……」

ビュッ!!! カーン!!!

朋「でも、こうして見ると速いわね! ボールが!」

ほたる「はい……それに当てるのもすごいです……」

智絵里「でもこれはファールですね……」

朋「こ、こっち来てない!?」

智絵里「き、来てます!」

ほたる「え?」ゴツン!!!!!!!

朋「1回ウラからほたるちゃん!!!」


『ファウルボールにご注意ください』

ほたる「いたた……」

朋「いや顔面直撃してたでしょ……」

ほたる「さっき3発当てたので、最低でもあと2発ですね……」ボソッ

朋「何か言った?」

ほたる「い、いえ」

朋「気をつけてね?」

ほたる「大丈夫です」ゴツン!!!!!!!

朋「言ってるそばから!!!!!」


『ファウルボールにご注意ください』

ほたる「いたた……」

朋「だからなんでその程度で済むの……」

ほたる「鍛えてますから」ゴツン!!!!!!!

朋「ちょっとは休ませて!!!!!」

『ファウルボールがよく当たる少女にご注意ください』

朋「もはや周りへの注意喚起になってるし!!!」


~5回ウラ~


朋「最初の3点から動かないわね……」

ほたる「惜しいシーンはあったんですが……」

智絵里「運もない感じですね……」チラッ

朋「ほたるちゃんをチラ見しない」

カキーン!

朋「おー! 打った! ツーベースね!」

智絵里「かっこいいですっ」

朋「あの選手、さっきも打ってたような……」

ほたる「はい、チームきっての強打者ですから」

朋「あ、そうなんだ」

智絵里「ちなみに逮捕歴はないです」

朋「まったく必要ない情報をありがとう」


ほたる「このチームはこの人と、次の4番の外国人選手が打てるかどうかに懸かってますね」

朋「あー、この人も打ちそうな風格してるわね~」

ほたる「ホームラン王を取ったこともあるみたいです」

朋「へ~」

智絵里「ちなみに逮捕歴は」

朋「逮捕歴はもういいから!」

智絵里「あります」

朋「あるの!?」


~9回ウラ~


朋「ああ……、あれよあれよと最終回……」

智絵里「なかなか試合が動かないですね……」

朋「で、でも、"野球は9回から"ってよく言うらしいし……」

智絵里「はい、頑張ってほしいです……」

朋「ほたるちゃんも来年に向けて、勝った姿を目に焼き付けたいわよね?」

ほたる「……」コックリ コックリ

智絵里「……ほたるちゃん?」

ほたる「はい……」コックリ コックリ

朋「あー、もう9時も回ってるからね……」

智絵里「疲れちゃったのかな……?」

朋「ほたるちゃん、あたしの肩、使っていいよ?」

ほたる「ふぁい……」ポスッ

智絵里「!」

朋「ふふっ……かわいいなあ……」

智絵里「わ、わたしも眠くなってきました!」

朋「宣言するものじゃなくない?」


カキーン

朋「あら、ヒット」

カキーン

智絵里「連打ですっ」

カキーン

朋「わ、止まんないわね!」

智絵里「あっという間に満塁に……」

朋「ほ、ほたるちゃん! やっぱ起きて! いいとこだから!」

ほたる「あと5分……」ムニャムニャ

朋「そんなテンプレみたいな寝言言ってないで!」


ほたる「うーん……うーん……」ムニャムニャ

智絵里「う、うなされてますね」

ほたる「ダメです……私と三人四脚なんて……」ムニャムニャ

朋「何の話?」

ほたる「脚がなくなります……」ムニャムニャ

朋「どんなアクシデントが起きたらそうなるの」

ほたる「うーん……うーん……」ムニャムニャ

智絵里「だ、大丈夫……?」

ほたる「朋さん……ウエディングドレス、とても似合って……ううう……」グスグス

朋「なんか泣き始めたわよ!?」


朋「ほたるちゃーん、今いいとこだから起き」

カキーン!!!!!

朋「!」

智絵里「!」

朋「打った!」

智絵里「いい打球ですっ!」

ワーワー!!!!!

朋智絵里「「は……」」

朋智絵里「「入ったー!!!」」


朋「こ、これって……」

智絵里「はいっ、逆転サヨナラ満塁ホームランです!」

朋「すごーい!!! 見に来てよか……あ」

ほたる「すぅ……すぅ……」

智絵里「ほたるちゃんが眠った瞬間からでしたね……」

朋「ま、まあ……ドンマイ?」

ほたる「……ふわぁ」

朋「あ、起きた」

ほたる「あ、す、すいませんっ! あの……なんだか盛り上がってますが……?」

朋「……」

智絵里「……」

ほたる「ど、どうしてそんな哀れんだ目で見るんですか……?」

朋智絵里「「ほたるちゃん……」」ポンッ

ほたる「え、ええ???」


朋「あ、ヒーローインタビューやってるわね」

ほたる「へ? ヒーロー? 勝ったんですか?」

智絵里「そろそろ帰りましょうか?」

ほたる「あのう」

朋「そうしよっか。説明は帰り道でね」

ほたる「は、はあ……」

『最後に、本日のヒーローより観客席に、サインボールの投げ入れを行います』

朋「あら、そんなのあるんだ」

智絵里「今回はこれが直撃するオチですねっ」

朋「智絵里ちゃん」

ほたる「飛んでくることがわかっているなら、避けることくらいはできます……」

朋「無駄にかっこいいわね……」


ポーン

朋「って、この角度じゃこっちには来ないかな」

智絵里「もうちょっと上のほうですね。残念です……」

朋「残念ではないから」

ほたる「では、帰りましょう」

朋「うん、そうしましょ……」

偶然上空を飛んでいたハトさん「ぐわああああ!!!」バシーン

朋「またなの!?!?」

智絵里「は、ハトさーん!!!!!」

朋「智絵里ちゃんハトに優しすぎない!?」

ヒューーーー……

朋「お、落ちてきた! ほたるちゃん、避けて!」

ほたる(ウエディングドレス着た朋さん……キレイだったな……)ポワワ

朋「ダメだ多分関係ないこと考えてる!!!」


ゴン!!!!!!!!!!!


朋「ほたるちゃん!!!!!」



おわり



後で試合の顛末を聞いたほたる「私が全試合見に行ってずっと寝てればいいのでは……?」

朋「ほたるちゃん」



おわり



過去作


神谷奈緒「憎めない常務とアーニャの誕生日」

池袋晶葉「アンズロイドと」安部菜々「私たちの事務所」

ちひろ「モバマス契約更改その4!」本田未央「ひさしぶりっ!」


などもよろしくお願いします


極めてどうでもいい豆知識

千枝「今回の智絵里さんのように、腕力が無くて物を遠くへ飛ばせない。そんな人ばかり集まって、それが危機になる状況がありました」

唯「大戦末期のドイツの国民突撃隊だね」

千枝「召集されたのは子どもか、お年寄りの方ばかりでした。なので手榴弾も遠くへ飛ばせません」

唯「そこで一度は生産性に欠けるとして作っていなかった、柄付き手榴弾(シュティールハントグラナーテ)の再生産だよ」

千枝「これなら遠くへ投げられます……残念ながら敗戦までは、ほんのわずかな期間しかなかったことですが」

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