ペパロニ「ドゥーチェ、このというブラックボックスアトラクションで最も大切なのは──『ルール』を守ることっす」
アンチョビ「ルール?」
ペパロニ「そう、お客さん自らがきちんとルールを守ること……これが絶対の条件でありかつ──このアトラクションの最大のキモっす」
アンチョビ「ほうほう」
ペパロニ「第一のルール。お客さん達はこの三畳一間のこの部屋に入ったら──絶対にこの耳栓をはずしちゃいけません」
アンチョビ「耳栓」
ペパロニ「特殊カーボンでできた、遮断率100%のすげー耳栓です」
アンチョビ「100%か、すごいな」
ペパロニ「試しにつけてみます?」
アンチョビ「うん」
きゅぽきゅぽ
アンチョビ『……うわ、変な感じだ……。ごぉぉぉっていう耳鳴りと、時々、自分の心臓の鼓動みたいな音と──ペパロニ、なんか喋ってくれ』
ペパロニ「 」
アンチョビ『おおお、全然聞こえないぞー』
ペパロニ「 」
アンチョビ『口がパクパクしてるだけでさっぱりわからない。自分の声は聞こえるのに、変な感じだなぁ』
ペパロニ「 」
アンチョビ『……ん? あぁ、耳栓をはずせっていうジェスチャーか』
……きゅぽん
ペパロニ「どーっすか、ぜんぜん聞こえないでしょ」
アンチョビ「うん! すごいなこれは!」
ペパロニ「でしょー? そしてですね、さらに──部屋の中を真っ暗にするっす! おーい、カルパッチョ」
<『はいはーい』
カチ!
アンチョビ「わぁっ、真っ暗だ……わ、わ、自分の手さえ見えない。ぺ、ペパロニ? そこにいるか?」
ペパロニ「いるっすよぉ。目の前っす」
アンチョビ「そうか……ひゃぁっ、こら! 私の腰を触るな! 」
ペパロニ「えへへへぇ」
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アンチョビ「もー……。だけどすごいな、真っ暗だ……不思議な感じだ」
ペパロニ「でしょー。そしてですね、この状態で、さぁ、耳栓をするっす。ただし──灯りが付くまで絶対に耳背を外しちゃだめっすよ」
アンチョビ「む……。なんか、ちょっと怖くなってきた」
ペパロニ「さぁさぁ耳栓を」
アンチョビ「よ、よし……」
──きゅむきゅむ
アンチョビ「──────。」
アンチョビ(──うわっ、これ……なんだこれ……。暗闇で──頭の中の音だけがごぉぉぉってなんだか──深い海の底に突き落とされたみたいな。)
アンチョビ(……。)
アンチョビ(……。)
アンチョビ(……ッ、ぺ、ペパロニ! いるか! そこにいるのか? どこだペパロニ!)
ぎゅっ
アンチョビ(……あっ、これペパロニの腕か……よかった。)
アンチョビ(ちょっとだけほっとした……)
アンチョビ(……。)
アンチョビ(……。)
アンチョビ(……なぁ、おい、もういいぞ。灯りをつけてくれ)
アンチョビ(おい、おいってば、おーい!)
アンチョビ(カルパッチョ、聞いてるのか、電気をつけてくれ! おーい! カルパッチョぉ!!)
──んぱっ(明りがついた)
アンチョビ「ふはぁ!」
きゅぽんっ
アンチョビ「はー……はー」
ペパロニ「さすがドゥーチェっす、よく最後まで耳栓を外さずに我慢できましたね」
アンチョビ「うーん、これは……すごいな……こんな感覚初めてだ」
ペパロニ「まー、いいとこ1分っすね」
アンチョビ「うん……そうだな……」
ペパロニ「一組、500円で2分。けっこう回転率いいっす」
アンチョビ「ふむふむ……なかなかいいんじゃないか。よし、今度の学園祭の戦車道チームの出し物は決まりだな」
ペパロニ「おっけーっす! ──って、あ、肝心な事を、まだ説明してなかった」
アンチョビ「ん?」
ペパロニ「大事なのは──ルールっす、さっきも言った通り」
アンチョビ「うん。」
ペパロニ「第二ルール……これはもっとも大切なルールっす」
アンチョビ「ほう」
ペパロニ「『この中で起こったことは──二人だけの秘密!」
アンチョビ「二人だけの秘密……?」
ペパロニ「そうです、この部屋の中でおこったことは絶対だれにも話さない──もっと言えば、外にでたらお互いに忘れる! そーいう気持ちが、アトラクションのわくわくを高めてくれるんです!」
アンチョビ「ふぅん……?」
──────────。
ワイワイわいわい……ガヤガヤガヤガヤ
<「はぁー、すっごくドキドキした……」「500円は高いと思ったけど──でもなんか面白かったねぇ、あとでもっかいこよっかぁ」
ペパロニ「ありあとあんしたぁ~、またおまちしてまぁ~す!」
アンチョビ「うん……なかなかの盛況だな!」
ペパロニ「楽しんでもらえてるみたいで嬉しいっすね。」
アンチョビ「だな」
まほ「──安西」
アンチョビ「お、西住」
まほ「ブラックボックス、か──面白そうな事を考えるな、お前達は」
ペパロニ「へへー」
アンチョビ「だろう、西住もどうだ」
まほ「どうする──エリカ?」
エリカ「え、私は……はい、隊長が入られるのでしたら、お供しますが」
まほ「そうか、では二人だ。頼む」
アンチョビ「おうよ」
ペパロニ「まいどあり~」
チャリーン♪
ペパロニ「ではでは~、当アトラクションには大切なルールがありまして──」
まほ「ルール……?」
まほ「──ほう、二人だけの秘密……か。だそうだぞ、エリカ」
エリカ「はぁ」
ペパロニ「ちなみにカメラの心配も大丈夫っすよ。真っ暗で映らないんで──」
──────。
ペパロニ「それでは、いってらっしゃいませ~」
まほ「ふ……少し、ワクワクするな」
エリカ「まぁ、そうですね」
とことことことこ……
ペパロニ「……黒森峰の副隊長さん、相変わらずぶっきらぼうな人っすねぇ」
アンチョビ「黒森峰っぽいなぁ」
~2分後~
ペパロニ「──はぁい、お疲れ様! お楽しみいただけましたか~?」
アンチョビ「お疲れ~……って……ん?」
まほ「──なかなか面白かったな、エリカ」
エリカ「……っ、は……はい……。っ……」
まほ「……ふふ……」
アンチョビ「……??」
ペパロニ(姉さん、姉さん、副隊長の人なんか顔が赤いっす。息も乱れてる)
アンチョビ(うん……)
アンチョビ「なぁ、もし暗闇で気分が悪くなったのなら──」
エリカ「っ……だ、大丈夫、……」
アンチョビ「本当か……?」
まほ「ところで安西、改めて確認しておくが──」
アンチョビ「え? あ なんだ?」
まほ「中で起こったことは二人だけの秘密でかつ、お互いに忘れよう──それがルール、だな?」
アンチョビ「え、うん、そうだけど」
まほ「だ、そうだ。……いいな、エリカ?」
エリカ「そのっ……は、はい、隊長……」
まほ「──では、私達は行くよ、また会おう安斎。」
アンチョビ「お、おう……」
すたすたすたすた……
アンチョビ「……。」
ペパロニ「……。」
アンチョビ「……中で何が起こってたんだ……」
ペパロニ「んー……確認してみます?」
アンチョビ「へ?」
ペパロニ「録画データがあるはずですけど」
アンチョビ「は!? お前、さっき、カメラはないっていってたじゃないか!」
ペパロニ「赤外線カメラとかは予算的に準備できなかったんすけどぉ──整備課の連中に、サーモグラフィーを借りたっす。」
アンチョビ「サーモグラフィー!」
ペパロニ「一応は中のことチェックしとかないと、お客さんが倒れたりしたらまずいですし……だからカルパッチョがチェックしてます」
アンチョビ「カルパッチョのやつ姿が見えないと思ってたら……うー、だけど、これ、お客さん達には秘密だぞ……? 撮影はしてないって建前なんだから……」
ぺパロニ「わかってますよ。おぉーい、受付頼む、私達はちょっと用事だ」
モブ子「はーい」
アンチョビ「うー、いいのかなぁ……」
──────。
ペパロニ「さっきの動画データーは──あったこれだ、」
カチカチ(クリック)
ペパロニ「お……二人が入ってきた」
アンチョビ「こーゆー感じの画面、わたし映画でみたことがある」
ペパロニ「『プレデター』っすね」
アンチョビ「それだ」
ペパロニ「精度があんまりよくないカメラだから、余計にそれっぽいんすよ」
アンチョビ「けど意外と二人とも、目が見えないわりに動きがしっかりしてるなぁ」
ペパロニ「んにゃ、この時はまだ部屋の明かりがついてますから」
アンチョビ「あそっか」
ペパロニ「二人が部屋の中央について──はい、今、電気消えたと思います」
アンチョビ「お……あはは、二人とも、手の平を顔の前に持っていってる。私と一緒だ」
ペパロニ「やっぱ皆やっちゃうっすよねー」
アンチョビ「んー……エリカのほうは、なんだかソワソワしてるな。キョロキョロ周りをみてるっぽいな」
ペパロニ「隊長さんは──腕をおろして、なんかジッとしてますね。……すげー、ぜんぜん動揺してない……」
アンチョビ「やるなぁ西住」
ペパロニ「そいで……んと、今のところはあんまり変化ないっすねぇ」
アンチョビ「そうだなぁ」
ペパロニ「副隊長さんは相変わらずもぞもぞしてて、隊長さんはじーっとしてて……」
アンチョビ「このままなはずはないんだけど──あ」
ペパロニ「お」
アンチョビ「西住が、急に、エリカの頭のほうに腕を……。……。……ん? 何やってるんだ、これ?」
ペパロニ「これは──頭をなでなでしてるんじゃないっすか……?」
アンチョビ「はぁー? ……いやでもたしかに、そんな感じだ……。何やってんだ西住」
ペパロニ「副隊長さん、すっごい戸惑ってるっぽいっす、動きが、おどおどしてる──と思ったら、あ、だんだん動きが小さくなっていって──。……あきらめたというか、受け入れたというか」
アンチョビ「西住は──お構いなしにひたすらなでなでだな。」
ペパロニ「……。黒森峰って……意外と、仲良しなんすねぇ……」
アンチョビ「だなぁ……」
──────。
タイトル間違えた……後ほど立て直します。
ごめんなさい。
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