スクライドお料理教室 (18)

劉鳳「腹が減ったな…」

カズマ「仕方ねぇ。何か作るとするか」

劉鳳「ふむ、いいだろう。ではまず、この具材を切ってみろ」

カズマ「誰に命令してんだ?!」

劉鳳「シェルブリッドのカズマにだ」

カズマ「けっ。やってやんよ…絶影を持つ劉鳳さんよォ!!」
トントントトトントン!


カズマ「オーケィ。刻んだぜ!今度はお前がこのキャベツを刻めッ!」

劉鳳(あの男の包丁は、ただ闇雲に振り回してるだけじゃないようだ。
具材を均等に切りそろえる技だ。前とは違う。 刻むしかないな…このキャベツをッ!)

カズマ「ところで、何を作るつもりだ?」

劉鳳「俺が言えば、お前は従うのか?」

カズマ「冗談っ!俺は『お好み焼きのカズマ』だ!それ以外の物を作るなんて出来ねぇ!」

劉鳳「なるほど。ちょうど俺もお好み焼きが食いたい所だった」

カズマ「反吐が出るぜ!…だが、乗った!作ってやるぜ…俺の……自慢の……お好み焼きィ!」

劉鳳「ちなみに今まで作ったことは?」

カズマ「無い。大体いつもかなみが作ってくれる!」

劉鳳「無謀だぞ……!?」

カズマ「出来る出来ないじゃねえ!やるんだよ!!」

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劉鳳「お前『も』お好み焼きを作ったことが無いとはな……。だが面白い。貴様の話に乗ってやる!」

シェリス「やめて劉鳳!?作ったこともない料理を作るなんて、失敗するに決まってる!大人しく外食で済ませば……」

劉鳳「女は黙ってろォォオー!!!」

シェリス「劉鳳っ………!」

カズマ「外食ねぇ?…人は一旦楽を覚えちまうとそっち側へズルズル流される。そうなってしまう自分が嫌なのさ!!」

劉鳳「見せてやる俺の信念!絶影!『柔らかなる薄力粉・だし汁』!!」

カズマ「おいジョージぃ!イカはまだか!?」

ジョージ「だってこのイカ……太いんだよ!?硬いんだよ!?暴れっぱなしなんだよー!?」

カズマ「あっちはまだ掛かりそうだ。だとしたら先にタネを作っとくか!
あと必要なのは天かす、紅生姜、卵黄くらいかねぇ」

君嶋「おいおい大事なもん忘れてんじゃねぇぞ!長イモがあんだろお好み焼きにはァア!!」

カズマ「君嶋ぁ…!!」

カズマ「シェルブリッドォォオー!!!!」

ギュルンギュルンギュルン…!

カズマ「よし、この背中でグワングワン回ってるやつに泡立て器を付けて一気に混ぜてやる!!」

君嶋(そうだ、カズマだ…。見せつけてくれ…。お前の、グワングワンしてるやつの強さを…!)

ギュルルルルルびちゃびちゃびゃァァア!?!?

劉鳳「何をしている!?タネが全部飛び散っただと…!
ええい貴様に任せたのが馬鹿だった!貸せ!ここは俺が『剛なるホイッパー・伏龍』!」

ギュルルルルルびちゃびちゃびゃァァア!?!?


劉鳳「」

カズマ「"俺が"、なんだって…?ホーリーさんよォ?」

劉鳳「おのれ愚弄するか…ッ!」


カズマ「……さぁーってと、じゃあリターンマッチと行きますかァ!シェルブリッドォォー!」

劉鳳「それはさっき失敗したばかりだぞ!?」

カズマ「俺はな。しょうがねぇ、運が悪かった、自分には混ぜれない、スーパーで買えばいい。
そんな事を言ってる奴らをゴマンと見てきた。けどよ…俺にはどうしてもそいつらが何かするとは思えねぇんだ!だから確かめるのさっ!
俺は混ぜる!絶対混ぜってやるってなぁぁァア!!!」

ギュルルルルルびちゃびちゃびゃァァア!?!?


カズマ「」

劉鳳「おい」

劉鳳「チッ!どうすればいい!?」

ジグマール隊長「これではタネを混ぜるなど出来ないな!
ホイッパーも使えない!
お好み焼きも作れない!母に申し訳ないと思わんのか!?
一歩たりとも調理できず、それでもプライドの保持に執着する!それでも……それでも私の部下だった男かー!!?」

劉鳳「隊長……。ハッ!そうか!なまじアルター能力に頼るから…普通に手で混ぜるべきだった!!」

ジグマール(そうだ劉鳳。それでこそ……)

カズマ「シェルブリッドォォオー!!!」

劉鳳「毒虫が…!なぜ頑なにアルター能力で混ぜようとする!?」

カズマ「諦める方向に行きたくねぇ!!要は飛び散る前に全部かき混ぜきればいいんだろォーがァァァアアア!!」

ギュルギュルギュルギュルルルル!!!!

\ジャン!/

カズマ「ハァ…ハァ……どうだい…混ぜきったぜ……アンタはどうやって混ぜるんだろぉなァ?」

劉鳳「笑わせるな。貴様に出来て、この劉鳳が出来ぬことなど存在しない!絶影ッッ!!」

ジグマール「普通に手で混ぜれば良いものを…。だがしかし、アルターを使ってタネを混ぜる劉鳳も見てみたい……。ふふふ、矛盾してるな私は」

ギュルギュルギュルギュルルルル!!!!

\ジャン!/

カズマ「やりゃあ出来るじゃねぇか」

劉鳳「フン。当然だ」

水守「でもこれでタネは完成しましたね!あとは具を入れて焼くだけ………二人とも、どうしました?」

カズマ&劉鳳「「………」」


カズマ「そういや、まだ決め残した事があったな」

劉鳳「決め残した事?」

カズマ「いやあ、ヤボ用だけどよォ」

劉鳳「ああ。…あった!確かに些細なことだ。しかし、あれが始まりでもあった!」

カズマ「理由なんかどうでもいいだろ。俺はただ、すっきりしたいだけなんだよ!」

劉鳳「俺もだ。白黒ハッキリ決めないと気に掛かる!」



《大阪と広島どちらにするか》



カズマ「うるァあああアアアアア!!!!!!」
劉鳳「カァアアアアアアアアアッ!!!!!!」

ドバキィ!! グバキィ!!



水守「お好み焼きのために戦う。そんなの、悲しすぎませんか…?」

水守「それで…、互いにボロボロになるまで戦って、それででた結論が『それぞれ自分の好きに焼けばいい』だなんて…呆れた」

カズマ「いいぜ、焼きあがったら俺のを一口くれてやる!認めさせてやる!
俺のほうが美味ぇってな!」

劉鳳「ほざくな。貴様のほうこそ、俺のお好み焼きを一口食わせて頬っぺたという頬っぺたを落としてやる!」

カズマ「上っ等!!」

劉鳳「……ところで俺たちの鉄板、周りと比べて中々焼けてないようだが大丈夫なのか?」

カズマ「あ?知らねぇよ!
周りって……おいおい、そこのテーブルの!幾ら何でもそりゃ焼き過ぎだろうが!」

橘「僕もあなたの焼き方を否定する気はありません。いや、むしろ羨ましい。
…だけど、譲れないクルッとするタイミングがあります!」

カズマ「ああそうかい。そいつぁ邪魔したな。
だが…、確かに俺らのテーブルは焼けるのが遅え」

劉鳳「つくづく気に障る男だ。だからそうだと言ったのだ」

カズマ「ウダウダ言ってても始まらねぇよ!なんだってんだ畜生…!」

クーガー「お前のテーブルに足りないもの。それは……情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりもッッ!速さが足りないッッッ!!!!」

クーガー「あと鉄板のスイッチが入ってない」

カズマ&劉鳳「「それだ!!!」」


Reckless fire そう大胆に 鉄板に火をつけろ!

無常「おやおやぁ~?どうしたんですぅ~?ひっくり返さないのですかぁ?」

カズマ「そうしたいのは山々だが、今ひっくり返したら崩れちまう!それだけは!何が何でも防がなきゃならねえ!」

無常「貴方が下手なだけなのでは~?では、手本をお見せしましょう。
貴方のこのお好み焼き、まだまだ半生状態ですがぁ。ふふふ、私にかかれば……ホワイトトリック」スッ

無常「ア~ンド ブラックジョーカー」クルりんぱ!

無常「ほら、この通りぃ」

カズマ「ぅるせぇーんだよイチイチぃ!!せっかくの楽しみを横取りしやがってこの野郎ぉぉおー!!?!
決めたぜ!お前のお好み焼きは、俺がひっくり返す!!
これが…!これだけが…!俺の!自慢の…!こぶしだああああああああ!!!!」スッ

クルり…お好み焼きグシャアア!?

無常「私の…私のお好み焼きが……ッッ!この男はなんなんですかぁぁぁ!!!?」

劉鳳「どうやら焼けたようだな?」

カズマ「悪ィな待たせちまって。そんじゃ、心置きなく俺のお好み焼きを…食らわせる!!」

劉鳳「いいだろう!完食してやる!!」

カズマ「こいつは俺のケンカだ!」
劉鳳「これは俺の戦いだ!だから…!」


カズマ「食うぜぇ!!」


 私も食べたい。なんて言えません。
 だってカズ君は、心の中でこう呟いていたから。
 かなみ、もしおまえに何かあれば「駆け付ける」
 世界中のどこからでも「お前を助けに行く」
 カズ君が好き。「わかってる、だが今は食う」
 ああ、私はもう何も言えません。
 でもお腹は空いてしまいます。
 お腹は鳴ってしまいます。
 ……涙が。



パクッ! パクッ!





カズマ&劉鳳
「「うんめぇっ!!!!」」



おしまい

ありがとうございました。

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