和久井留美「私の想いを受け止めて」 (19)

「結婚しましょう」

「私は好きよ、プロデューサーくんのこと」

「他の誰よりも好き。他の何よりも大好き。貴方のことを愛しているの」

「結婚するなら貴方がいい。結ばれて、支え合いながら時を重ねて……これから先の未来を寄り添う相手は、貴方じゃないと嫌なのよ」

「だから、ね?」

「しましょう。私と、結婚」

「私のことを、貴方の妻として選んでちょうだい……?」


 淡く灯る間接照明の光だけが広がる部屋の中で私は呟く。

 外から差し込んでくる光はもうなく、かすかな波もないただひたすらな静寂に包まれた深い夜。そんな夜の部屋の中、私はベッドの上へと身体を寝かせて言葉を零す。

 腕の中に抱きながら。苦しくなってしまうくらいにぎゅっと胸を押し付けて、それを深く抱き締めながら。


「愛しているの」

「私を導いてくれた。私を輝かせてくれた。私を今の私にしてくれた。そんな貴方を愛してる」

「貴方は私にとってかけがえのない唯一なの。……私は、貴方にとってのそれにはなれないのかしら……?」


 囁くようにそっと。けれど溢れて止まらない想いの限りを余さず込めて。

 一つ、一つ。目を閉じて、贈る言葉へとまっすぐ想いを集中させて。目には映らない愛おしい相手の表情を頭の中へ描きながら、言葉の一つずつを大事に大事に確かめるようにして口に出す。

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「貴方に望まれるなら私は全部をあげられる」

「この唇も、この胸も、この身体の全部も。……この、何も纏わず無防備に晒した裸の全部も」

「身体。心。私が貴方にあげられるものなら、どんなものでもあげられる」


 ちゅ、と。部屋中へ高く響く誘うようなキスの音。触れ合わせるわけではなく唇を鳴らし震わせて、そうして紡ぐ誘惑のためのキス。

 贈る言葉と重ねながら何度も何度もそれを注ぐ。そしてむにゅり、むにゅりと擦り付く。

 裸のままの姿で。それがしっかり伝わるよう……私のこの姿で頭の中をいっぱいにしてもらえるよう、私のこの身体を意識してもらえるよう、たっぷりと熱を込めて囁く声。


「だから、ほら」

「私としましょう、結婚を。私と貴方で結婚しましょう」

「ねえ、プロデューサーくん……」

「……」

「…………」

「…………ふふ。……ああ、なんて」

「こんなふうに言ったら、重たい女だ、なんて思われてしまうのかしら」

「それとも優しいあの人になら受け入れてもらえるのかしら」

「ねえ、あなたはどう思う?」

 囁く声を普段通りの調子へ戻して。それまでプロデューサーくんへと向けていたその声を、今度は目の前のそれへと向け直す。

 胸へ押し付けられながら強く深く抱き締められて、そうして裸の私と重なったそれ。猫のぬいぐるみ。いつかプロデューサーくんから贈ってもらった、大切な宝物へと声を注ぐ。


「きっと好意を抱いてもらえてはいると思うの」

「好きだ、って思われて。それに異性としても見てくれてはいる」

「私があの人へ想うのとは違うかもしれない。こんなに好きでこんなに恋しくて、こんなにも愛おしく想っている私のそれとは同じじゃないのかもしれない」

「でも異性として見て、異性として好きでいてくれている。それはきっと、そのはずだと思うのよ」


 何も介さずそのまま空気に晒されて、けれど冷えることなく火照ってむしろ熱いくらいの私の身体。抱き締めたふわふわの感触へそれを擦り付け、同じく熱い吐息を言葉と共に外へと漏らす。

 両腕をいっぱいに開いてやっと抱き締められるような、丸々と大きいそれをぎゅっと抱く。そうしていつも夢の中でプロデューサーくんを抱くときのように強く深く力を込めて、プロデューサーくんへと届くよう溢れる想いのすべてを尽くして語りかける。

「私からの贈り物を大切に持っていてくれる。どんなに些細なものも……この前贈った造花の花束だって、部屋へ置いて大切にしてくれている」

「私が『預かっていて。いつか貴方が望んでくれた時で構わない。その時二人で出しに行きましょう』なんて冗談を言うふうにしながら渡した婚姻届。それを捨てずにデスクへしまっているのも知っている」

「私の何気ない仕草を目で追っている。わざと無防備に開け放った私の姿に照れて焦って、無自覚を装いながら少し過剰なスキンシップを取れば可愛く顔を赤くして」

「恋は人を盲目にする、なんてふうにも言うけれど。それでもきっとあれは本当。盲目な私からも間違えずに見えてしまうくらい、彼は私を好きでいてくれている。好きだと思ってもらえているっていうそれは本当のはず」

「どんな『好き』かは分からないけれど、でも、好きだっていうそのことは」


 その時々……内心「流石にこれは受け止めてもらえないかしら」なんて思いながら渡したハナミズキの造花、それを嬉しそうな表情で受け取ってくれたときのこと。恥ずかしさに焼かれながらも胸元を開けて強調してみせる私を、そんな私のほうがなんだかおかしくなってしまうくらいに照れながら赤くなってくれたときのこと。その時々のいろいろな姿を頭の中で思い返して、その姿にまた改めて昂りながら言葉を重ねる。

 熱く燃えて、抑えられず溢れ出るままぐっしょりと濡らされて、そうして昂っていく心と身体。止めることのできないそれをもういっそ止めるのではなく後押ししながら、声を小さく震わせて。


「あなたも知っていると思うけれど、あなたをくれた彼はとってもまっすぐな人だもの。嘘を吐かないでいてくれる。真剣にありのままでいてくれる。そんな人」

「まっすぐで分かりやすい。……本当、分かりやすい」

「……ふふ。でも、そこに関しては私も同じね。好意を隠せない。溢れさせて抑えられない。分かりやすい、っていうそのことに関しては私もそっくり。……もし結ばれることができたなら、そのときには似た者夫婦なんて言われてしまうのかしらね」

 微笑む声を小さく漏らす。

 頭の中へ二人の姿……これまで何度となく描いてきたそれ、夫婦として結ばれた私とプロデューサーくんの姿をまた改めて思い描きながら笑みを零して、それは消さずに映したまま続きの言葉。


「何度も何度も触れ合いを求めて、冗談めかしているとはいえ婚姻届なんて渡してみたりして。すること為すこと何もかもに目を奪われて、彼への想いを他の何よりも優先してしまっていて。……分かりやすいというか、それ以上の何かというか」

「どんなに鈍感な彼とはいえ、私に好意を抱かれていることくらいは気付いているはず。……きっと、あなたがここへ来るよりもずっと前から気付いていたはず」

「本当に分かりやすい。我ながら呆れるくらい」


 無垢な瞳を向けてくる腕の中のそれへ語りかける。

 ぽつりぽつり。プロデューサーくんから貰ったこの子を通して、プロデューサーくんへまで届けるように。

「…………ああ」


 言いながら思い描いていた姿、想像の中で自分の隣へ立つプロデューサーくん。その姿を描きながらそれへと意識を注いでいたら、だんだんと想いが溢れてきてしまった。

 会いたい。触れたい。感じたい。直接は叶わなくても、声を聞くだけでも構わない。本物のプロデューサーくんがほしい。そんな想いがだんだんと、どんどんと。


「さっきお別れを言ったばかりなのにね。二人してなかなか切るタイミングを見付けられず、何度も何度も『おやすみなさい』を言い合って……」

「ふふ……ああ、プロデューサーくん……」


 呟く。

 唇をふわふわの顔の中へと埋めて、そして呟く。込み上げてくる恋しさや愛おしさをいっぱいに込めて「プロデューサーくん……プロデューサーくん……」と何度も名前を。


「もう眠ってしまったかしら」

「明日も早いし……もし眠っているのなら、またしてしまうのは迷惑よね……」

 少し前。三十分ほど前まで話していた私たち。

 明日から向かう地方での仕事についての話。仕事の内容や日程の確認、それから少しのとりとめもない雑談。十分をいくらか超えるくらいの電話での会話。

 もう一度話したい。何か話題があるわけではないけれど、それでもあの声を聞いていたい。そんな想いが湧き上がってきて、つい枕元の携帯へ手が伸びる。


「……昔は携帯なんてむしろ避けていたのだけどね」


 今の私になる前、まだプロデューサーくんと出会えていなかった頃の私は携帯電話が好きではなかった。

 来るのは仕事の電話やメールばかり。たまにそうでないものが来たかと思えば苛立ちを煽るような迷惑メール。好きどころか嫌いで、常に持ってなんていたくなかった。

 なのに今ではこんな……電話やメールの着信を楽しみにして、常に肌身離さず持っている。着信を知らせる音や震えに気付く度、外から見ると滑稽なくらいに胸を高鳴らせてしまっている。


「プロデューサーくん……」


 プロデューサーくんと出会っていろいろなものを変えられた私だけど、これもその一つだな、と改めて実感する。

 嫌いだったもの。無関心だったもの。そんなたくさんが、今ではプロデューサーくんのおかげでかけがえのない好きに変わっている。

「…………」

「…………電話は、駄目よね」

「きっと切れなくなる。こんなにプロデューサーくんへの想いに溺れてしまっている今、もう一度あの声を聞いたりしたら……今度は、もうやめられなくなってしまいそうだもの」


 少し悩んで、結論。

 画面に映った最後、押せば繋がる最後のそれを数秒眺めて……けれど押すのは思い止まる。想いを堪えて我慢して、画面を別へ切り替える。


「話すのは我慢」

「…………」

「……ええ、我慢。……今は、ええ。私の声が届くなら……贈れるのなら、それで」


 数秒の操作の後、目当ての画面へ辿り着く。

 電話とメールと、それからもう一つ。プロデューサーくんと繋がれるLINEの画面。

 仕事関係の話をするときに使うメールと違って、ここでは少し砕けた会話。仕事仲間ではなくて友人同士でするような、そんな話を交わす場所。


「…………ん」


 そこへ打つ。文字を打ち、そして送る。

 べつになんでもない。本当にただ送っただけ。一文「さっき言い忘れていたから……今日もお疲れさま。明日もよろしくね。……ごめんなさい、それだけよ。おやすみなさい」とそれだけ。

「……ふふ」

「本当、もう駄目ね。こんな……どうにもならないくらい、プロデューサーくんに染められて」

「自分でも不思議になるくらい。こんなに好きになってこんなに恋しく感じて、こんなにも愛おしく想ってしまうなんて……」

「……ああ、もう」

「好き……大好き……愛してるのよ、プロデューサーくん…………」


 囁く声で繰り返す。誘うような淫らな声。こんな声が出せるのか、と自分でも驚いてしまうような媚びた声で「好き……好きよ……大好きなの……」と。

 この声を聞いていてくれているプロデューサーくんの姿を想像しながら、そんな彼へと向けて何度も尽くす。


「……」

「…………ああ、だけど」


 繰り返して、何度も何度も『好き』を重ねて。そうしてしばらく時を送ってから変える。

 プロデューサーくんから目の前の子へ。囁き声を普段通りの声へ変えて、私に抱かれたこの子へと送るようにして言葉を口に。


「だけど、どうしましょう。こんな、どうにもならないくらいどうしようもなく好きなのに……こうして溢れさせてしまうくらいに大好きなのに……」

「なのに……それなのに……二人きりだなんて……。仕事でのこと、プロデューサーとアイドルの関係で……それはそうだけど、でも……他に誰もいない二人きりで、地方へなんて」

「我慢、できるのかしら……」


 明日からの自分を想像しながらそう漏らす。

 仕事。それは分かっている。けれど二人きり。自分とプロデューサーくんだけ。二泊三日で同じ宿。

 それを改めて確かめて、そしてたまらなくなってしまう。初めてこの話を聞いたときのようにドキドキと、熱く濡れた身体を震わせてたまらなくなってしまう。

「向こうにいる間は全部が一緒。過ごす時間も空間も、何もかもがプロデューサーくんと一緒」

「……それは部屋は別だけど。……別。でもすぐ隣で」

「壁一枚を隔てただけ。傍。近く」

「……」

「…………」

「…………ああ、それに」

「プロデューサーくん、鍵はいったいどうするのかしらね」


 ぽつりと呟く。

 目の前の子へ向けるようにして。質問を投げかけるように。ぽつりと。


「意外と自分に関しては無頓着というか抜けているところもあるし、掛けるのを忘れたりしてしまうのかしら」

「それとも部屋へ別れる前、私と別れてしまう前に落としてしまったりするのかしら」

「…………」

「…………そんなことされたら、駄目よね。きっと駄目。止まれない」

「きっと、する。部屋へ入って抱き付いて、そうしてきっと求めてしまう」

「もし、プロデューサーくんが鍵をそんなふうにしてしまったら」


 強引に求めてしまって、その求めを抑えられずにいる私。半ば襲いかかるようにして、押し倒すようにして……そうしてプロデューサーくんと結ばれる自分の姿を幻視する。

 そんな頭の中の光景に胸が震える。お腹の奥がずくん、と疼く。手足の先まで甘く痺れる。

 そんな光景、頭の中で描くそんな想像に……そんなそれを言葉にして口に出すことで、たまらなく昂ってしまう。

「ああ……」


 届いただろうか。届いたのなら、聞いてもらえるのだろうか。

 プロデューサーくんへ向けて呟いた言葉。その行く末、それを受けて叶うのかもしれない明日の未来を想って吐息が漏れた。焼けるように熱い、溶けてしまったかのように濡れきった、濃い吐息。

 音だけではなく、その熱さや濡れた感触までもが届いてしまいそうな濃い吐息を深く深く漏らして出して。それから言う。また目の前の子へ向けて。


「ねえ、あなたはどう思う?」

「明日のこと。私はプロデューサーくんと結ばれることができるのかしら」


 ちらり、と横。

 放さずに持っていた携帯の画面。暗い室内を眩しく照らすその画面を見ながら静かにそっと語りかける。

「楽しみね」

「ええ……本当に、楽しみ」


 笑みながら言う。

 画面を見てぐにい、と。浮かべた私でも自覚できるような、少し歪んだそんな笑み。

 携帯の画面。そこへ浮かぶ既読の文字。それを見て。


「……ふふ」

「私はどっちでも構わない。前に婚姻届を渡したときのように、私はプロデューサーくんへ委ねているから」

「今じゃなくてもいい。結ばれるのは……いつか、望んでくれたときでいい」

「それは本当。嘘のない本心だから」

「……でも」

「でも、楽しみにしてしまうのは止められない。期待してしまうのは、どうしてもやめられないものね」

「楽しみよ。……ふふ。明日が楽しみ」


 言葉を尽くす。

 目の前の子へ向けて。……目の前の子の、その頭の辺りへ付けられたそれ。小さな黒い、マイクへ向けて。

「明日はしっかり準備しておかないといけないわね。いろいろと」

「見られてもいいような……ううん、プロデューサーくんへ見せるための下着を着けて。それから袖が長くて首元も隠せるような上着も用意して……」

「それにあれも。……ふふ、子供はまだ早いものね」


 自分で発する言葉にだんだんと興奮が高まってしまうのを感じながら、けれど止めずに送り出す。

 プロデューサーくんへ向けて。マイクの向こう。今も私のこの声を聞いていてくれるプロデューサーくんへ。


「プロデューサーくんが見せてくれた夢。アイドルは、私にとっても大切な夢だもの。今はまだこの夢を見続けていたい」

「……」

「……まあでも」

「それでも、もしプロデューサーくんがそれを望んでくれたなら……そのときは、それを選んでしまうのでしょうけど」


 普段言えないようなこと。本当は秘めておかなければいけないようなこと。それを伝えるため、いつからか始めてしまったこの時。

 確かニュースか何かで盗撮や盗聴の被害を受けたアイドルの話を聞いたのがきっかけだった。それを聞いた私は「可哀想。酷い。許せない」そんなふうに思うのと同時に「羨ましい」なんて思ってしまった。

 大好きな人に聞いてもらえる。人には聞かせられないような生活の中での音。普段は言いにくいような、言ってはいけないような言葉。それを聞いてもらえる。……それは、なんて素敵なんだろう、と。

 そう思ってしまった。思った私は、抑えられずに動いてしまった。

 プロデューサーくんから貰った大切な子へマイクを着けて。貰ったお礼として贈ったハナミズキ……「私の想いを受け取って」なんて意味を込めたその贈り物へ、マイク越しに私のすべてを受け取れる小さなスピーカーを隠して添えて。

 そしてした。最初の夜。これまで冗談めかしてしか伝えてこなかった私の想い。冗談なんて欠片もない、本当に真剣な心の底からの想い。それを伝える夜を叶えてしまった。

「ああ……どうなるのかしら……」

「明日の私とプロデューサーくんは……どう、なれるのかしら」

「私の想いは受け止めてもらえるのかしら」


 翌日のプロデューサーくんの狼狽えぶりは凄かったのを覚えている。私自身も落ち着かなくて動揺していて……けれどそんな私でも凄かった、とはっきり思えてしまうくらい慌てていて戸惑っていて。

 この夜は内緒の一時。表では言えないようなことを漏らして伝える、そんな隠さなければならない時。だからはっきりとではなく遠回しな言い方にはなってしまったけれど……それでも伝えた。これは私の望んだこと。私の想い。叶うなら受け止めてほしい、と。

 それにプロデューサーくんは応えてくれた。進んで受け止めたかったわけではないはず。それでも私を許してくれた。優しいプロデューサーくんのこと、きっと私を見捨てられなかったのだろう。拒むことで私が悲しむのを……もしかしたら思い詰めて何か起こしてしまうかもしれないのを放っておけなかったのだろう。躊躇いながらも受け止めてくれた。……プロデューサーくんならそうする。そうせずにはいられない。そう分かっていて、そこへ突け込むようにしたずるい私を。


「……ああ」


 それからは何度も何度も。それこそほとんど毎日、と言ってしまって構わないくらいに繰り返している。

 受け止めてくれるのに甘えて。溢れて止まらない想いのまま、今みたいに。

「好き……大好き……」

「誰よりも好きよ……何よりも愛してる……」


 明日から二人きり。仕事とはいえ地方へ二人。そのことに舞い上がって、普段のこの時よりも幾分か深く言葉を口にしてしまった今日。その深さの分だけ興奮も深くなって。普段にも増してたまらなくなる。

 プロデューサーくん。プロデューサーくん。プロデューサーくん。

 愛おしい彼のことしか考えられなくなってしまう。


「早く会いたいわ……会って、話して、触れたい」

「今からもう待ちきれない。明日迎えに来てくれるプロデューサーくんと会うときが、もう今から待ち遠しくて仕方ない」


 明日の朝を想像して心と身体が高揚する。

 どんな顔をしているのか。どんな様子で、どんな姿を見せてくれるのか。明日会ったその時のことを思い描いて、熱く濡れてしまうのを止められない。


「……プロデューサーくん」


 私のこれは独り言。そんな約束の中……もうほとんど守れていないようなものだけど、でもそんな約束の中で言う。

 自分の持てるすべて。綺麗な慕情も汚い淫欲も。好意を恋を愛を。プロデューサーくんへと注ぐ、私の想いのすべてを込めて。


「好きよ。大好きなの」

「結ばれたい。繋がりたい。私は貴方の一番大切な人になりたい」

「無理になんて言わないわ。貴方が望まないのならいい。まだ駄目だ、っていうならそれでいい」

「……でも」

「でも、もしも叶うなら」

「受け止めてほしい。私の想いを、プロデューサーくんに」

「……ふふ。だから」

「明日、期待して待ってるわ。貴方に叶えてもらえるのを」

「愛してる。……きっと私を受け止めてね。愛しい愛おしい、私の、プロデューサーくん……」

以上になります。

速水奏「裸で重なる一時」
速水奏「裸で重なる一時」 - SSまとめ速報
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以前に書いたものなど。もしよろしければどうぞ。

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