男「いやー、お互いお先真っ暗だな!」
友人「まったくだぜ! ハッハッハ!」
男「すみませーん」
店員「ご注文をお伺いいたします」
男「俺は……和風ハンバーグ定食とドリンクバーで!」
友人「じゃあオレはカルボナーラとドリンクバー」
店員「かしこまりました」
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男「あ~……食った食った」
友人「うまかったな」
友人「そろそろ会計するか?」
男「あ、ちょっと待って。トイレ行きたくなってきた」
友人「オレもだ。もよおしてきた」
男「最後だからってドリンクバーで飲みすぎたな」
友人「まったくだ。オレなんてコーヒー三杯も飲んだし」
男「ところでさ、お前ってこういう飲食店でトイレ行く時、荷物ってどうしてる?」
友人「どうしてるって?」
男「トイレまで持っていく? それとも席に置いたままにする?」
友人「置いたままにするかなぁ。だっていちいち持ってくのめんどくさいじゃん」
男「ふうん、お前はそういうタイプか」
友人「え、お前は違うの?」
男「俺はさー、ダメなんだよね」
男「今日もカバン持ってるけど、トイレに行く時は絶対に持ってっちゃう」
友人「盗まれるのが怖いってことか?」
男「そうそう!」
男「もし、トイレに行ってる間に置き引きされたら……って思うとさ」
友人「なるほどねえ……」
友人「でも、海外ならいざ知らず、ここは日本だぜ?」
友人「置き引きなんかめったに起きねえよ」
男「でも、起きない可能性はゼロじゃないだろ?」
友人「そりゃ……まぁなぁ」
男「だから、俺はトイレ行くたびに必ず荷物は持ってくようにしてるんだ」
男「万が一盗まれたら、後悔してもしきれないからな」
友人「心配する気持ちは分かるけど、飲食店で置き引きなんてそうそうできることじゃないぞ」
友人「そいつがトイレ行ってる間に荷物を盗む、会計する、店を出る、を済ませきゃいけないんだから」
友人「その間に本人が戻ってくるかもってのを考えると……オレなら怖くてやれないね」
男「先に会計するシステムの店だったらどうよ?」
友人「あ……」
男「その場合は楽勝になっちゃう。盗んでとっとと店出てきゃいいんだから」
友人「だとしても、そういうのって店員が見てるもんじゃないか?」
男「仮に店員が見てたとしても、そこでわざわざ犯人を呼び止めるような店員さんはいるかね?」
男「俺が店員だったら呼び止めないな。見て見ぬフリしちゃうと思う」
友人「どうして?」
男「ただでさえ接客で忙しいのに、余計な仕事増やしたくないし」
男「トイレ行った奴に“荷物を外に持っていっておいて”っていわれただけの人の可能性もあるし」
男「もし本当に犯人だったら、呼び止めたとたん暴力振るわれる危険性もあるし」
友人「うーん……いわれてみりゃ、オレも見て見ぬフリするかもな」
男「だろ?」
男「置き引きが成功する確率はかなり高いんだよ」
男「……」
友人「……」
友人「だけどさ……最後の最後くらい、人ってやつを信じてみたいと思わないか?」
男「それは……ある」
友人「世の中みんな盗っ人だ、と思うより、世の中みんないい人だ、と思ってみたいだろ」
男「うん……」
友人「決まりだな」
男「ああ」
友人「じゃあ、お前のそのカバンはここに置いて、二人でトイレ行こうぜ」
友人「小便なら長くても1~2分だし、置き引きされる心配もないだろうしな」
男「そうだな、連れションといくか」
友人「どっちが長く出せるか競争だ!」
男「おいおい、ガキじゃないんだから」
……
……
男「あーっ!!!」
男「ない! ない! どこにもない!」
友人「ないってまさか……」
男「俺のカバンがなくなってるんだよ! くそっ、やられた!」
友人「マジかよ……! よりによってあれを盗まれちまうなんて!」
男「店員さん!」
店員「はい?」
男「ここらへんに挙動不審の客がいなかった?」
店員「そういえば……お客様が一人、うろうろしておられましたね」
店員「会計をし終えた方だったので、てっきり忘れ物でも捜しておられるのかと……」
男「そいつだ! そいつが犯人だ!」
友人「まずいな……早く見つけないと!」
男「なにしろあのカバンの中には、爆弾が入ってるからな」
友人「人生詰んだオレたちが、どうせ死ぬなら親友同士で心中しようってこさえた爆弾がな……」
男「カバンを開けたら爆発する仕組みになってるから、急がないとまずい」
友人「まだ遠くには行ってないはずだ。すぐ店を出て、追いかけ――」
ドォン…
男&友人「あ」
【 終 】
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