殺人鬼「またオレなんか殺っちゃいました?」 (27)

殺人鬼「ヒ~ッヒッヒッヒッヒ!」

殺人鬼「このクソ野郎! よくもオレの愛する少女に抱きついたな!?」

殺人鬼「この少女に近づく男はみんなこうなるんだ!」

グシャッ! グシャッ! グチャッ!





少女「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

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警部「そこまでだ!」バッ

殺人鬼「!」

警部「今日こそ捕まえてやるぞ、殺人鬼!」

殺人鬼「またオレなんか殺っちゃいました?」

警部「おのれぇ……ふざけやがって! 全員でかかれぇっ!」

刑事「はいっ!」

ワァッ!!!

殺人鬼「……」スッ



警部「消えた!?」

刑事「あっ、これは……!」

刑事「警部、ヤツはマンホールから逃げたようです!」

警部「くそっ、またしても逃げられたか!」

警部「大丈夫ですか、お嬢さん!」

少女「は、はい……」ガタガタ…

少女「あの殺人鬼、私と彼氏が抱き合ってたら、急に襲いかかってきて……彼を斧でミンチに……」

警部「警戒してたにもかかわらず、恋人を守れませんでした。申し訳ありません」

少女「必ず捕まえて下さい! あのストーカー殺人鬼を!」

警部「分かっています……警察の威信にかけても必ず!」

警部「君、今日から彼女をつきっきりで保護してあげてくれ」

刑事「分かりました」

刑事「またしても恋人を失ってしまいましたね」

少女「はい……これで四人目です」

少女「私は孤独になる運命なのかしら。次はきっと私は殺されるんだわ!」

刑事「そんなことはありません。この私が必ず守ってみせます!」

少女「……ありがとう」

刑事「…………!」キュンッ

数日後――

殺人鬼「ヒャッヒャッヒャ!」

殺人鬼「このクソ刑事が! オレの愛する少女といい仲になりやがって! 抱きつきやがって!」

グシャッ! グチャッ! ゴチャッ!





少女「ああ……け、刑事さんが……! 殺人鬼の手でミンチに……!」

警部「貴様ァ~! よくもオレの部下を!」

殺人鬼「またオレなんか殺っちゃいました?」

警部「許せん! 今日という今日こそは必ず捕まえてみせる!」

警部「逃がすなぁ!」

ワァッ!!!

殺人鬼「無駄だ! お前らにオレを捕まえることはできない!」スッ…

警部「――くそっ、またしても消えた!」

警部「いつもいつも、的確な逃走経路を用意しやがって……!」

少女「また逃げられてしまったのですか……」

警部「申し訳ありません……!」

少女「いえ……」

【探偵事務所】


警部「――これで犠牲者は五人になる!」

警部「これ以上、死人を出すわけにはいかない! なんとしても次の犯行は食い止めねば!」

警部「だからもはや手段を選んではいられんのだ! 頼む、協力してくれ!」

探偵「少女につきまとい、その恋人をミンチにして殺すストーカー殺人鬼ですか……」

探偵「いいでしょう、俺が捕えてみせましょう」

探偵「ただし、事件についてある程度の情報はいただかなくてはね」

警部「それはもちろんだ」

探偵「まず、少女ってのはどういう子なんです?」

警部「ごく普通の文学少女さ。愛用の万年筆片手に小説家を目指しているとのことだ」

探偵「ほう」

警部「次に被害者の殺され方は?」

警部「巨大な斧で滅多打ちだ。死体はどれもグチャグチャでまともに検死もできんよ」

警部「だが……一人だけきちんとした死因が割り出せた」

警部「死因は首筋への鋭い一撃だった。おそらく斧の刃が刺さったのだろう」

探偵「なるほど」

探偵「分かりました……でしたら次は俺が“少女の恋人”になりましょう」

警部「オトリになるということか!? それは危険すぎる!」

探偵「危険を冒さねば、この殺人鬼は捕えられませんよ。ま、俺が死なないことを祈って下さい」

探偵「……というわけで、今日から俺があなたの恋人兼ボディガードになります」

探偵「よろしく」

少女「よろしくお願いします」

少女「だけど、あの……絶対に死なないで下さいね」

探偵「大丈夫です、これでも俺はしぶといですから。修羅場も多少はくぐってますしね」

少女「はい……」

【少女のアパート】


探偵「ほう、この若さで一人暮らしなんですか」

少女「ええ……私は天涯孤独の身で……」

探偵「兄弟もいらっしゃらないのですか?」

少女「私を可愛がってくれた兄がいましたが……今は生き別れて……どこにいるのやら……」

探偵「…………」

探偵「おおっ、本棚には本がぎっしりですね」

探偵「本がお好きなんですか」

少女「ええ、小説を書いたりもしてます」

探偵「どれどれ……」

探偵(あれは、美人女将が客の男と無理心中を図る話……)

探偵(あっちは女殺し屋のシリーズ物……)

探偵(あの作品は女神が魔王を退治するファンタジー小説……)

探偵「…………」

探偵(これは……もしかすると……)

一週間後――

少女「今日のデートも楽しかったです!」

探偵「こちらこそ」

少女「あなたと出会ってからの一週間は、まるで夢のようでした」

探偵「仮初の仲とはいえ、そういわれると光栄ですよ」

少女「あのう、よろしければあっちの公園で一休みしません?」

探偵「そうしましょうか」

【公園】


少女「あの……私、あなたのこと、好きになっちゃったみたい」

少女「抱いて……私を抱きしめて……ぎゅうっと……」

探偵「はい、喜んで」スッ…

少女「…………」ニヤッ

探偵「……なーんてな。その手は食わないぞ」

少女「!?」

探偵「こうやって男に自分を抱き締めさせてから――」

探偵「その万年筆で、俺の延髄をひと刺しして殺そうってんだろうが、残念だったな」

少女「ぐ……!?」

少女「貴様……見抜いていたのか! 私の本性を!」

探偵「ああ……なにしろお前の本棚にあった小説……」

探偵「全部、女が男を殺す内容が含まれてるやつだったからな」

探偵「あれでお前の狂った性癖が読めたんだよ」

少女「ちいっ! ――オイ、兄貴! ヘボ兄貴! 出てこい! コイツを始末するの手伝え!」

警部「無駄だ! 今日という今日こそ捕まえたぞ!」ガシッ

殺人鬼「ぐ……!」

警部「探偵君のアドバイス通りに潜んでいたかいがあった!」





少女「なぁにやってやがんだ、このバカ兄貴がァ!」

探偵「やはり、前もって兄の脱出経路を用意した場所へ、お前が男を誘導してたんだな……」

殺人鬼「あうう……」

警部「この殺人鬼……いざ捕えてみるとこうも大人しくなるとは……」

警部「これはどういうことなんだ?」

探偵「つまり、“真の殺人鬼”はこの少女だったということです」

探偵「そっちの殺人鬼は、ストーカーなんかじゃなくこの少女の兄」

探偵「妹が一撃で殺した死体を、妹が殺したと分からないように斧でミンチにしてただけに過ぎません」

探偵「全ては妹を悲劇のヒロインにするためにね」

探偵「さて、終わりにしようか、殺人鬼」

少女「うぐ……」

探偵「お前は親しくなった男を殺さずにいられないという性癖を持つようになった」

探偵「しかし、そのまま実行したのでは、すぐ捕まってしまう」

探偵「そこで生き別れた兄を探し出し、こう頼んだんだ」

探偵「“自分がペンで突き殺した男の死体をグチャグチャにして、罪を全部ひっかぶってくれ”」

探偵「“ちゃんと捕まらないようにしてやるから”ってね」

探偵「こんなこと頼む方もイカれてるが、引き受ける方もイカれてやがる」

探偵「まったく……歪みに歪んだ恐るべき兄妹愛だよ」

少女「ぐ……」

殺人鬼「もうダメだよオレたち……これ以上は殺れない……終わりにしよう……」

少女「イヤだ!」

少女「アタシはもっともっと殺すんだ! もっともっともっとォォォォォ!!!」

少女「アタシのペンで死ねえええええっ!」シュッ

探偵「はぁっ!」ガシッ グイッ

ドザァッ!

少女「ぐはぁ……!」

探偵「さあ、手錠を!」

警部「おう!」ガチャッ

少女「くそっ! くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」ジタバタ

殺人鬼「うぅぅ……」シクシク

警部「また君に助けられてしまったな。お手柄だった」

探偵「……どうも」



少女「クソがァァァァァ!!!」

殺人鬼「役に立たずの兄貴でごめんよ……」



探偵(かよわい少女と鬼畜な殺人鬼の正体は、鬼畜な妹とかよわい兄貴だった――ってことか)










― 終 ―

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