モバP「ありすー、俺のありすー」 (64)
半年前
ありす「……」
モバP「あれ、聞こえなかったのか、俺のありす」
ありす「……なんですか、それ」
モバP「なんですかって……自分の名前じゃないか」
ありす「……あの、さっき言いましたよね、苗字で呼んでくださいって」
モバP「ははは、言われたな」
ありす「しかもなんですか、『俺の』ありすって……本当に気持ち悪いんですけど」
モバP「俺の担当するアイドルなんだから俺のありすで間違っていないだろ?」
ありす「……それってセクハラですよね?」
モバP「マジで? まあ、俺とありすの仲ならOKじゃないか」
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ありす「いえ、さっき会ったばかりですので……本当にやめてください、あと名前で呼ぶのも」
モバP「なんだつまらない……あ、営業の時間だ、ちひろさーん! 出てきますんで後よろしくお願いしますね!」
バタン
ありす「……何なんですか、あの人、すごく不愉快なんですが」
ちひろ「……ごめんなさい、ああいう人なの、根は良い人だから、ね?」
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「……」
モバP「ありすー、無視するなよー」
ありす「……」
モバP「ありす? 俺のありす、もしかして聞こえてないのか?」
ありす「……」
モバP「おい、ありすこの野郎、無視するな、この野郎……ってこのネタはありすじゃわからないか」
ありす「……」
モバP「お、もうこんな時間だ、俺のありす、レッスンに行くぞ!」
ありす「……」
モバP「……まずいですよ、ちひろさん、ありすが反抗期です」
ありす「……」
ちひろ「……ありすちゃん、本当にごめんね、こんなプロデューサーで」
ありす「……千川さん、この事務所辞めたいんですけど」
ちひろ「ご、ごめんね、後でちゃんと言ってきかせるから」
モバP「ありすー、俺のありす」
ありす「……」カキカキ
モバP「何やっているんだ? お、宿題か、うん、勉強することはいいことだ」
ありす「……」カキカキ
モバP「どれどれ……分数かー、懐かしいな、そうだ俺が勉強を見てやるよ」
ありす「……」カキカキ
モバP「ふむふむ、すごいじゃないか、だいたい正解だ、全部じゃないけど」
ありす「……」ピクッ
モバP「ここが違う、おいしいな、約分をミスってる」
ありす「……」ハッ、ゴシゴシ、カキカキ
モバP「そうそう……そうだな、20分の12は5分の3だよな、さすがは俺のありす、正解だ」
ありす「……」イライラ
モバP「お、どうした、貧乏ゆすりか? やめとけ、それって癖になっちゃうんだ」
ありす「……」イライラ
ちひろ「プ、プロデューサーさん! ご飯食べに行きましょう! 今すぐに!」
モバP「え? でも俺、食べてきちゃいましたよ」
ちひろ「じゃあ私に奢って下さい! ほら、外に出る!」
モバP「え、ちょっとなに言ってるんですか、服を引っ張らないで下さいよ」
ありす「フンフーン……」
モバP「おや、鼻歌とはご機嫌だな、俺のありす」
ありす「あ……」プイ
モバP「でもその気持ちはわかるよ、オーディションが上手くいったら嬉しいよな」
ありす「……」
モバP「それもこれも全部ありすの実力だ、日頃から真面目にレッスンしている証だな、さすがは俺のありす!」
ありす「……」
モバP「そうだ、今日は何か飯でも食いに行くか? なんでも奢ってるよ」
ありす「……」
モバP「うーん、とりあえず駅前のデパートのレストランコーナーに行くか? あそこは美味い店がたくさんあるし」
ありす「……」
モバP「ありすはなにが食べたい? 何でもいいぞ? 寿司に焼肉に中華に……」
ありす「……いい加減に……」
ちひろ「……そうですね、行きましょうか、私と一緒に」
モバP「え、ちょっと、ちひろさん!?」
ちひろ「本当にごめんね、橘さん、ここにお金置いておくからこれで好きなもの食べて」
モバP「服は引っ張らないでくださいってば、一張羅なんですから……」
ちひろ「いいから来なさい!」
バタン……
ありす「……」
ちひろ「もう本当に空気呼んでくださいよ」モグモグ
モバP「はあ……」
ちひろ「あの明らかに怒ってますオーラをプロデューサーさんは感じないんですか?」モグモグ
モバP「あれって怒っていたんですかねえ」
ちひろ「いつもと同じ雰囲気だったじゃないですか、せっかく仕事に成功して本人がやりがいを感じてきたのに」モグモグ
モバP「いやあ、さっきのはあんまり怒っているようにはみえなかったもので」
ちひろ「いつもそうやって怒らせているんですよ、フォローしている身にもなって下さい」モグモグ
モバP「ははは、いつもありがとうございます、俺が仕事が出来ているのはちひろさんのおかげですよ」
ちひろ「……まあ、わかってくれてればいいんですよ」モグモグ
モバP「日頃の感謝の印にここは俺が奢りますよ、じゃんじゃん食べてください」
ちひろ「はい、最初からそのつもりでしたから」モグモグ
モバP「ははは、そうみたいですね」
五カ月前
モバP「ありすー、俺のありす」
ありす「……それ、やめてくださいって言いましたよね?」
モバP「うん、覚えているよ」
ありす「……もうやめる気はないんですか?」
モバP「いやあ、こうなれば根競べだと思って」
ありす「……プロデューサーがそう呼ぶのを止めるか、私がアイドルを辞めるかの根競べですか?」
モバP「ははは、ありすは面白いことを言うなあ……」
ちひろ「……ちょっとプロデューサーさん、いいですか?」
モバP「何ですか?」
ちひろ「さっき出された交通費、先月の分ですよね?」
モバP「ええ、そうですよ」
ちひろ「……はあ、前も言いましたよね、そういうのはやめてくださいって」
モバP「言われましたっけ」
ひろ「とぼけないで下さい……とにかく、締日をまたいだら経費で落とせませんから」
モバP「え、じゃあ俺の5000円は?」
ちひろ「……今回は出します、でも次はありませんよ」
モバP「ありがとうございます、さすがちひろさ……」
ちひろ「プロデューサーさん」
モバP「はい?」
ちひろ「あなたは社会人ですよね?」
モバP「そ、そうですね」
ちひろ「いい加減、常識的な行動をして下さい、いろんな意味で」
モバP「はい……」
ちひろ「私はこの事務所の事務員であって、あなたの不始末を処理する係じゃありません」
モバP「ええ……」
ちひろ「……私は仕事に戻りますけど、二度目はありませんからね」
モバP「はい……すみませんでした」
ありす「……」
モバP「……ははは、やっちまったよ、ありす」
ありす「……プロデューサーの自業自得じゃないですか?」
モバP「そうなんだよなあ……でも終わっちまったことだし仕方ない、今日のお仕事を頑張って取り返すか!」
ありす「……」ジー
モバP「……うん? どうした?」
ありす「プロデューサーって基本的にそのテンションですね」
モバP「ああ、そうだな」
ありす「……ヘコむことってないんですか?」
モバP「あるよ、さっきもヘコんでたじゃないか」
ありす「怒られてる時だけでしたよね、もう持ち直しましたし」
モバP「ああ、俺って昔から立ち直り早いんだ、あんまりクヨクヨするの好きじゃないし」
ありす「……人付き合いの方もそんな感じなんですか? 空気も読めないし、人のことなんて気にしない感じで」
モバP「空気を読めないことは認めるよ、でも人の事は気にしているつもりだけどなあ」
ありす「私に嫌がらせをしているじゃないですか」
モバP「それは、ほら、愛情の裏返しだと思ってくれよ、俺は誰よりもありすと仲良くなりたいんだ」
ありす「……」
モバP「あ、今、俺の事を気持ち悪いって思っただろ? いいさいいさ、人にどう思われようと俺は気にしないんだからな」
ありす「……」
ありす「……」
モバP「おお、ありす、飛行船が飛んでる、珍しいな」
ありす「……」
モバP「あれって、どうやって飛んでいるんだろうなあ、いつみても不思議だ」
ありす「……」
モバP「あ、そうだ、ご飯食べてないだろ? どこかで食べないか?」
ありす「……プロデューサー」
モバP「うん? 何か食べたいものである?」
ありす「……お仕事の事、言わないんですか?」
モバP「お仕事の事って?」
ありす「私が失敗しちゃったことです」
モバP「失敗? ああ、今日の撮影のことか、失敗するのはよくあることさ、気にするなよ」
ありす「……ごめんなさい、あの仕事はプロデューサーが取ってきてくれたやつですよね?」
モバP「まあそうだな」
ありす「……怒らないんですか、私が失敗したのに」
モバP「怒らないよ」
ありす「……何でですか?」
モバP「何でって……うーん、そもそもありすはなんで失敗したと思う?」
ありす「それは……緊張しちゃって、どうすればいいのかわからなくなって……」
モバP「なるほどな、ありすが失敗したのは緊張が原因、と」
ありす「……はい」
モバP「うん、それだったらやっぱり俺が怒ることはないな」
ありす「……どういうことですか?」
モバP「さっきも言ったけど、緊張するなんてよくあることなんだ……もしこの失敗の原因がやる気なかった、とかなら怒るけど、ありすは精一杯頑張ろうとしてくれたのなら、褒めることはあっても怒ることはしないさ」
ありす「……」
モバP「それに俺の仕事はじゃんじゃんありすに仕事を持ってきてありすをスーパーアイドルにすることだから、たった一個の仕事をミスしたって挽回のチャンスはいくらでもある」
ありす「……」
モバP「それと前にも言ったと思うけど、俺って人にどう思われようと気にしないから、ありすも俺の取ってきた仕事だからって気にせずにノビノビやってくれよ」
ありす「……プロデューサー……」
モバP「ははは、なんだか説教くさいことを言ったらますます腹が減ってきたな、飯食おうぜ、飯」
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「……プロデューサー、いい加減にしてください」
ちひろ(……また、この男は……人の話聞いてないのかしら、まったく仕方ないなあ、もう)
ちひろ「……プロデュー……」
ありす「『俺の』ってつけないで下さいって言ってるでしょう?」
ちひろ「……え?」
モバP「ははは、すまんすまん」
ありす「本当に人の話聞かないんですね」
モバP「よく言われるよ……とりあえず、次のオーディションの日程決まったし、ミーティングな……ちひろさん、会議室使えますか?」
ちひろ「え、あ……空いてますけど……」
モバP「それじゃあ借りますね……ありす、会議室だ」
ありす「わかりました、宿題をきりの良いところで終わらせるので先に行っててください」
モバP「オッケー、先に行ってるな」
ちひろ「……あの、橘さん?」
ありす「なんですか?」
ちひろ「今さっき……下の名前で呼ばれていたけど?」
ありす「ああ、あれですか、何度言っても呼び続けるのでもう気にしないことしました」
ちひろ「気にしないって……」
ありす「ただ、さすがに『俺の』はダメです、セクハラですし、他の人が聞けば勘違いするかもしれません」
ちひろ「……そうなの、ところで私もありすちゃんって呼んでいいかしら?」
ありす「え? ………………まあ、千川さんが呼びたいのならどうぞ」
ちひら「いや、うん、なんでもないわ……」
四か月前
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「……聞こえてますよ」カキカキ
モバP「お、勉強中だったのか……」
ありす「こういう時じゃないと宿題を片づけられませんから……それで何ですか?」
モバP「この前のオーディションの結果がきたぞー」
ありす「結果はどうですか?」
モバP「ふふふ、どうだったと思う?」
ありす「そう言うの面倒くさいのでとっとと言ってください」
モバP「なんだよ、つまらないな……合格だよ」
ありす「そうですか」
モバP「あれ? クール過ぎないか? 俺なんてテンション上がりまくってるぞ、今日は寿司を食おう、寿司を」
ありす「プロデューサー、あなたは自分の言った言葉も忘れたんですか?」
モバP「俺の言ったこと? なんか言ったっけ?」
ありす「じゃんじゃん仕事を持ってくる、とか言っていたじゃないですか、その中のたかがオーディションを1つ合格しただけで喜んだりはしません」
モバP「……なるほど、これは一本取られた……それなら寿司を食うのは無しだな、勉強の邪魔して悪かった」
ありす「いいえ、それとこれとは別問題です、プロデューサーさんは私にご飯をご馳走しなければいけません」
モバP「え、そうなのか?」
ありす「そうなんです、早く行きますよ」
モバP「勉強は良いのか? きりの良いところまで終わるのを待ってるよ」
ありす「別にいいんです、何度も言わせないでください、早く行きますよ」
モバP「あ、ああ……それじゃあちひろさん、留守番をお願いしますね」
ちひろ「あ、はい……わかりました」
バタン
ちひろ(……ありすちゃん、完全に『俺の』を受け入れているわね、というか……)
ちひろ「……私がいるのわかっていたなら、誘ってくれてもいいじゃないですか」
モバP「ただいま戻りました!」
ちひろ「お帰りなさい、プロデューサーさん」
モバP「いやあ、今日もたくさん営業してきましたよ」
ちひろ「ご苦労様です、スタドリ、今なら一本無料にしちゃいますよ」
モバP「ありがとうございます、ちひろさんはやさしいなあ……そうだ、今日夕飯どこかに食べに行きませんか? 俺、後は内務処理なので」
ちひろ「いいですね、是非……」
ありす「……コホン」
モバP「……うん? あれ、ありす、何でいるんだ?」
ありす「私がここにいたら、マズイですか?」
モバP「いや、でも確か今日ってオフの日じゃなかったっけ?」
ありす「……オフの日に事務所に来るのはいけないことでしたか?」
モバP「いやいや、全然いいんだ……そうだ、ありすも一緒にご飯食べるか?」
ありす「いいんですか?」
モバP「ああ、もちろんだとも」
ちひろ「……プロデューサーさん、さすがに夜に遅くになっちゃいますよ、お仕事以外で帰すのを遅くするのはちょっと……」
モバP「あ、そうか……ちひろさん、もう少しかかりますもんね……ごめんな、ありす、また今度だ」
ありす「……」ピポパ、プルルル、プルルル
モバP「え、ありす、誰に電話しているんだ?」
ありす「……あ、お母さん? うん、今事務所にいる……それで今日は事務所の人たちと夕ご飯を食べるから、少し遅くなる……うん、帰りはプロデューサーに送ってもらうから……うん、それじゃあね」ピッ
ちひろ「……」
ありす「これで私は大丈夫です」
モバP「ははは、そうか、それならありすとちひろさんと三人で食べよう、ちなみにありすは何が食べたい?」
ありす「まあ、なんでもいいですけど」
モバP「うーん、そうか、それじゃあ……」
ちひろ「……」
三か月前
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「はい、何ですか?」
モバP「俺のためにお茶を持ってきてくれないかな?」
ありす「いいですよ……プロデューサーは温めがいいんですよね」
モバP「頼むなー」
ちひろ「……ありすちゃん、随分変わりましたよね」
モバP「そうですかね」
ちひろ「そうですよ、最初はセクハラだ、とか、辞める、とか言っていたのに、いつの間にかプロデューサーさんに懐いちゃっているし」
モバP「懐くって……ありすは聞き分けがいいだけですよ、俺よりも精神的に大人なんだと思います」
ちひろ「そうなんですか……」
ありす「持ってきました、プロデューサー」
モバP「おー、ありがとう、俺のありす、…………うん、美味い! ありすの淹れたお茶は格別だな」
ありす「お茶葉は同じなんですから、誰が淹れても味は同じですよ」
モバP「いやいや、俺が淹れるの比べれば断然美味いさ、これから毎日淹れてもらいたいくらいだ」
ありす「調子良いことを言って、お茶汲み係にさせようとしてますね?」
モバP「あれ、バレた?」
ありす「まったくもう……まあいいですけど」
ちひろ「……ありすちゃん、ごめんね、お茶は私が淹れておくから」
ありす「いえ、私がやるのでいいです」
ちひろ「え、でも、これって……セクハラじゃないかしら? ありすちゃんそういうの嫌なんじゃあ……」
ありす「……プロデューサーになにを言っても無駄だってわかってますから、千川さんも気にしないでください」
ちひろ「……」
ありす「……」
モバP「……」カタカタ、カタカタ
ありす「……」
モバP「……」カタカタ、タッーン
ありす「……」
モバP「よっしゃあ、終わった! あり……」
ありす「……」ピクッ
モバP「……ありあけの方でやるイベントって、いつまでしたっけ、ちひろさん」
ありす「……」スゥ
ちひろ「それってこの前言いましたよね?」
モバP「いやあ、確認ですよ、確認」
ちひろ「まったく調子いいんだから……」
ありす「……」
モバP「それじゃあこの辺で切り上げますか」
ちひろ「そうですね……それと久しぶりに一緒にご飯食べませんか?」
ありす「……」ガタッ
モバP「え? うーん、誘ってくれるのはありがたいんですが、今月は出費多かったんですよねえ……ちょっとやめときます」
ちひろ「それなら今日は私が奢りますよ、普段から結構出してもらってますし」
モバP「ははは、別にそんなの気にしなくていいですよ」
ありす「……」ソワソワ
ちひろ「……実は美味しそうな店を見つけたんですけど、ちょっと1人で行く雰囲気のお店じゃなくて……ついてきてくれませんか?」
モバP「ああ、そういうことだったんですか」
ちひろ「はい……それで、まあ付き合ってくれるのならお礼に私が出しますっていう話でして……」
モバP「それでしたら喜んで」
ありす「……」ソワソワ
ちひろ「それなら早速行きましょう、事務所閉めちゃいますね」
モバP「そうですね……ありすー、俺のありすー」
ありす「はい!」
モバP「ははは、ありすは元気いっぱいだな、ちょっと遅くなっちゃったし今日は送っていくよ」
ありす「……え?」
モバP「ちひろさん、いいですよね?」
ちひろ「あ、どうぞ……お店の場所教えるのでそこに集合しましょう」
モバP「わかりました、じゃあ行こうか、ありす」
ありす「……」
モバP「……ありす? どうした?」
ありす「……私もご一緒したいんですけど」
モバP「夕飯にか?」
ありす「はい」
ちひろ「……ごめんね、ありすちゃん、ちょっとありすちゃんには雰囲気が合わないかも」
ありす「……どういう意味ですか?」
ちひろ「お酒が出てくるお店なの、さすがに子供は連れていけないわ」
ありす「……」
モバP「ごめんな、ありす、今度は絶対にありすも一緒に連れていくようにするから」
ありす「……」
モバP「いやあ、遅くなってすみません」
ちひろ「どうしちゃったんですか、割と本気で心配しましたよ」
モバP「ありすが買いたいものがあるって言い出してそれに付き合ってました……参りましたよ、時間が時間だからお店が開いてなくて……」
ちひろ「……そうなんですか」
モバP「まあ、それはさておき、ご飯を食べましょうか」
ちひろ「……はい」
二カ月前
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「何ですか、プロデューサー」
モバP「悪いんだけど……」
ありす「お茶ですね、ご用意しますよ」
ちひろ「……」
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「今度はなんですか、プロデューサー」
モバP「明日の……」
ありす「撮影会の事でミーティングをするんですね、わかりました、会議室を片づけておきます」
ちひろ「……」
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「はいはい、あなたのありすはここにいますよ」
モバP「すまん、呼んでみただけだ」
ありす「もう、私で遊んでいるヒマがあったら仕事を早く終わらせてください、今日は夕食に連れて行ってくれる約束ですよね?」
モバP「ははは、わかったわかった」
ちひろ「……」
ちひろ(……これは懐かれているんじゃなくて、むしろ……)
モバP「すぐに終わるからちょい待ってくれ……」
ありす「私の方はいつでも準備万端ですから終わったら言ってくださいね」
ちひろ「……あの、ちなみになんですが、その夕食って私もご一緒しても……」
モバP「ああ、ちひろさんなら……」
ありす「ダメです」
モバP「え?」
ちひろ(……やっぱり)
ありす「今日は2人で食べますので千川さんはダメです」
ちひろ「……」
モバP「でも……」
ありす「それに今日のお店は千川さんだと雰囲気に合いませんから」
ちひろ(……これって完全にこの前のあてつけよね)
モバP「あれ、そんなお店なのか?」
ありす「はい、男女が2人きりでいくお店なので……それに千川さんだと年齢の方が……」
ちひろ(な!? 私だってまだ若いわよ! ……この前の私が言ったことを根に持っているのね)
モバP「まあよくわからないけどそういうことらしいです、すみません」
ちひろ「……いえいえ、お2人で楽しんできてください」
一か月前
モバP「はい、はい、ありがとうございます! はい! 今度も是非お願いします! はい!」
ちひろ「……」
モバP「それではよろしくお願いいたします、はい! 失礼します!」ピッ
ちひろ「営業先の方ですか?」
モバP「はい、ありすのことを褒めてました!」
ちひろ「嬉しそうですね」
モバP「そりゃあもう……ありすも仕事に慣れてきた感じですかね、とても良い調子です」
ちひろ「本人に伝えたらいかがですか?」
モバP「そうですね……おい、ありす」
ありす「……」
モバP「あれ……聞こえなかったのかな? おーい、ありすってば!」
ありす「……」
ちひろ(こんな大きな声出しているのに聞こえないはずない……まさか今さら名前呼びが嫌になった……?)
モバP「……? もしかしてイヤホンしているのか?」
ありす「……!」
モバP「つけてないな……」
ありす「……」
ちひろ(……プロデューサーが無遠慮に髪をかきあげても嫌がらなかったどころか、顔を真っ赤にしている……これは『無反応』を装っている?)
モバP「……どうしよう、ちひろさん、ありすが2度目の反抗期だ」
ちひろ(前回とは全然状況が違いますけどね)
ちひろ「……とりあえず、話しかけてみればいいんじゃないですか?」
モバP「うーむ……ありす、ありすちゃん」
ありす「……」
モバP「ありすたん、あーちゃん、橘さん」
ありす「……」
モバP「ぐぬぬ、担当プロデューサーを困らせるとは悪い子だな」ナデナデ
ありす「……♪」
ちひろ(頭を撫でられて見るからに上機嫌……でも決して返事はしようとしない)
モバP「ありすー、いい加減に返事をしてくれよ、俺のありすー」
ありす「なんですか、プロデューサー」
モバP「お、やっと返事をくれたか、俺を無視するなよ、ありす」
ありす「……」
モバP「うん? ありす?」
ありす「……」
モバP「反抗期に戻るの早いな、おい」
ちひろ(……ああ、そういうことなのね)
ちひろ「……プロデューサーさん、ありすちゃんは誰のモノですかね?」
モバP「え? なんに言っているんですか、ありすはファンみんなのモノですよ」
ありす「……」ムゥ
ちひろ(……そうだった、この人空気を読めなかったんだ)
モバP「ありすー、無視するなー」
ありす「……」プイッ
ちひろ「……プロデューサー、ちょっと来てください」
モバP「お、久しぶりの呼び出しですね、もしかしてまた何かやっちゃいました?」
ちひろ「現在進行形でやらかしているので早く来てください」
モバP「あ、はい……」
現在
モバP「俺のありす、お仕事お疲れ様」
ありす「はい、プロデューサー、見ててどうでしたか?」
モバP「とっても良かったよ、期待通りだ」
ありす「うふふ、プロデューサーに喜んでもらえてよかったです」
モバP「今日はこのまま直帰だ、送っていくからな」
ありす「プロデューサーも直帰ですか?」
モバP「いや、俺は事務所に戻るよ」
ありす「なら私も事務所に戻ります」
モバP「え、でもここからだとありすの家からは逆方向になっちゃうぞ」
ありす「……」
モバP「……あ、俺のありすの家からは逆方向になるぞ」
ありす「それは大丈夫です」
モバP(先月くらいから、『俺の』とつけないとありすが反応しなくなってしまった)
モバP「大丈夫って?」
ありす「今日もゲームを持ってきたので時間は潰せますから」
モバP(そしてやたらと事務所にいるようになった……いや、これはだいぶ前からだ、オフの日も普通にいるし)
モバP「時間を潰すって、ゲームは家でやった方がいいんじゃないのか? それにそもそもいつ帰るつもりだ?」
ありす「いつも通り、プロデューサーが帰る時間になったら私も帰ります」
モバP(最近の俺の日課は帰りしなにありすを家まで送っていくことだ、外でご飯を食べる時はそのまま一緒に食べてしまう事も多い、アイドルとスキンシップをとれるのは良いが酒が飲めなくなったのは少しつらい)
ピピピピ
モバP「あ、スマホが……もしもし」
ちひろ『もしもし、プロデューサーさん、撮影終わりました?』
モバP「はい、時間通りにスムーズに終わりましたよ」
ちひろ『わかりました、それならありすちゃん、帰しちゃって下さいね』
モバP「いやあ、事務所に戻りたいらしいので、これから一緒に戻りますね」
ちひろ『……やっぱりですか』
モバP「ははは、いつも通りですよ」
ちひろ『もしかして今日も一緒に夕食を食べるつもりなんですかね』
モバP「どうでしょう? まあどちらにせよ今日の飲みは延期ですね」
ちひろ『……はあ、またですか』
モバP「ははは、仕方ないですね」
ちひろ『……とりあえず、帰ってきてください』
モバP「はい、わかりました」ピッ
モバP「戻ろうか、あり……俺のありす」
ありす「はい!」
END
後日談
モバP「ありすー、俺のありすー」
ありす「……」クル
モバP「俺のありすー、こっち向けー」
ありす「……」クル
モバP「あれ? また反抗期か、参ったなあ……ちひろさーん」
ありす「……」
ちひろ「……なんですか?」
モバP「ありすがですね、目を合わせてくれないどころか、背を向かれるんですが……」
ちひろ「……またやらかしたんですね、いい加減にしてください」
モバP「いやあ、思い当たる節が全くないんですけどねえ」
ちひろ(……最近この2人の痴話喧嘩につき合わされてばかりな気がするわ、まったくもう……)チラ
ありすのタブレット『女子の憧れ—あすなろ抱き……このぬくもりは抱かれてみないとわからない』
ちひろ「……」
モバP「……ちひろさん?」
ちひろ「……もう好きにしたらいいんじゃないですか、いろんな意味で」
モバP「はあ?」
END
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