橘ありす「銀色のドレス」 (81)
ありす「橘……橘ありすです。橘と呼んでください」
モバP(この感触、如月千早か?……渋谷凛?)
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事務所:デスク周辺
モバP「橘、ね。ふーん……?」
ありす「……私の名前が、何か?」ギロッ!
モバP「いや?可愛らしくていい名前じゃないか。ヨーロッパの児童文学の主人公みたいで、素敵だと思うぜ?」
モバP「まっ、名前みた時にハーフちゃんかを疑ったのは間違い無いけどな」
ありす(児童文学……児童文学……児童文学……児童文学……)エコー
ありす「ありすが……」
モバP「ン……?どうしたんだ、あり、いや橘」
ちひろ「新しく入った子ですか?はじめまして、私は千川ちひろで……」
ありす「ありすが!」ババンッ!
モバP「なに!?」
ありす「ありすが!日本人の名前で……何が悪いんですか!?私は日本人です!」ジリジリジリジリ
ちひろ「ええっ?ありすちゃん!?落ち着いてくださいって!」ガシッ コチョコチョ
ありす「もがっ、あひひ!?よっ、世の中には言っていいことと悪いことが、ひゃんっ」
モバP「ありす。俺が何を言ったっていうんだ?」
ありす「だから!それがぁ……うぇひゃぁ!?」ジタバタジタバタ
ちひろ「暴れないで、暴れないで、ありすちゃん!」
モバP「……ありすはちゃんと落ち着いてくれたし、あの後反省して謝ってくれた」
モバP「ただ、散らかった机は始末書じゃすまんかな……」
デデデデッデーデーデデデデンッ
961ありす
ありす「いきなりステージですか」
モバP「汚名挽回のチャンスが来たわけだ」
ありす「返上では?」スッスッ
モバP「どっちでもいい。小さなハコとは言え初舞台だ……得意を伸ばすということで、ボイトレを中心に行う。いいな?」
ありす「どっちでもいくありません……挽回は取り戻してますし、汚名は返さなきゃいけないものです」
モバP「そうだな?お前の初舞台には、上からも期待がかかっている」
モバP「まっ、肩に力を入れ過ぎるな。気楽に行け」
ありす「……プロデューサーは、私の話をちゃんと聞いてますか?」
モバP「もちろんだ。タブレット、便利そうだな?」
ありす「待ってください。私が言いたいのは……」
モバP「じゃ、俺は資料に戻るから。レッスン場への移動までは休憩だから、それまではパンフでも読んでてくれ」
モバP「今は学校の体操着のままだが、ジャージをすぐ買うことになる。決めておけ」スタスタスタスタ
ありす「……待ってください!こんな話ばかりしてるから、大人は……!」
モバP「大人?ありすは不思議なことばかり言うな」ハハッ
ありす(ありす……不思議……児童文学……こども……!)エコー
ありす「人の名前を茶化して! それは一番、人間が人間に対して、やっちゃいけないことなのに! 」
モバP「ン……? 」
ちひろ「ああっ!あり、橘ちゃん、また!?」コチョコチョ
ありす「うぇひゃひにひ!? わか、みんなにはわかるは、あひゃにゃ!? 」
モバP「……ちひろさん、いつもすみません」
ちひろ「Pさんも、慣れてくださいね……」
モバP「橘呼びは、気がついたら出来なくなってしまいます。寂しいですよ、自分の名前が嫌いなんて……」
すみません、推奨BGMは忘れてください……私のミスです
デデデデッデーデーデデデデンッ!
Pが呼ぶ声
レッスン場:マイクルーム
ありす「_____!♪」
トレーナー「そうだ!なかなかどうして、良い声を出せてる!今回はここまで!」
ありす「ありがとうございました!」
レッスン場:休憩室
モバP「お疲れ様だ。圧倒されたぞ」
ありす「はあっ、はあっ……プロデューサー? 来ていたんですか」フウッ
モバP「これから送迎だしな。タオルとスポドリ。忘れてたぞ」
ありす「……必要無かったから、置いていったんです」
IDがずっと変わっておりましたが、>>1です
モバP「必要になったら使えばいい。しかし、思った以上に攻撃的な歌い方なんだな? 」
ありす「そういう訳でもありません……ただ、必死でやってるだけです」チュー……
モバP(飲んでるし)「何度も言うが、肩に力を入れすぎるなよ? 完璧にやるより、いつミスが起きても取り戻せるようにしておくんだ」
ありす「プロならミスを起こさないものでは? 」
モバP「それは、マインドセットに過ぎない」
ありす「私だって、今はプロの一人です……! 」
モバP「これから初舞台の小娘が、よくもまあそう言える。車、乗るぞ? 」
ありす「待ってください。私は子どもじゃありません、訂正してください」
モバP「そういう事にいちいち拘泥するから……ちなみに、ここにはちひろさんより怖い人がいるから。気をつけろよ? 」
??「あの膨らみ……乳タイプだとでも言うの? 」
ありす「……わかりました」
デデデデッデーデーデデデデンッ!新しい絆
車内:移動中
モバP「しかし、その小さなガタイで、良くもあんなシャウトが出来るものだ」
ありす「背は関係無いでしょう? 」
モバP「それもそうか……ただ、もっと優しい歌い方をすると思ってたからな」
ありす「そんなの、偏見です」
モバP「そうだな。ただ……俺にはお前が、力量以上のパフォーマンスをしようとしてる様に見える」
ありす「プロなら、常に全力であるべきです」
モバP「その意気や良し。だが、その生真面目さにとり殺されるなよ」
ありす「……生真面目さに? 」
モバP「そうだ。俺はお前の担当だ、どんな細かな相談にだって乗るぞ」
ありす「……必要ありません」
モバP「カウンセラーにかかれなくて潰れていく人間は、皆そう言う」
モバP「お前の相談をする事だって、給与明細に入ってるんだ。頼って文句は言わん」
ありす「……プロデューサーは、自分の名前は嫌いですか? 」
モバP「嫌った事は無い。その物言いは、つまり?」
ありす「大人になったって、私は不思議の国のアリスを求められるんです。日本人らしくなくって、著しく子どもっぽいと言う前提で……見られるんです」
モバP「……ふむ」
ありす「……だから私は……日本人だって、子どもなんかじゃないって言う、証左が欲しかったんです」
モバP「うん、うん」
ありす「だから……それで……」
モバP(ありすは堰を切ったように、自分の思っていた事を独白した。名前が嫌いで、でもミステリ趣味は洋書由来で、ゲームの名前はAliceで統一してたり、親に家に学校に…々気付いたら、ありすの家の前についていた)
デデデデッデーデーデデデデンッ!
パスタすすって
橘邸:玄関前
モバP「……明かりが灯いて無い? 」
ありす「両親は共働きなんです。だから、この時間に家にいないことはままあります」
モバP(ナーバスな子だと思ってたが……いや……)
モバP「そうか。食事は大丈夫か? 」
ありす「外食用の予算なら、渡されてます」
モバP「栄養は大丈夫なのか? 外食は知らない内に好きなものを取り過ぎて、栄養を偏らせてしまう」
ありす「好きなものばかり食べるなんて、子どもじゃないんですから……」
モバP「お前はバス代いくらなの?」
ありす「そう言う、世間体の話をしてるんじゃありません……! 」
モバP「……今日は俺に作らせてもらう。台所と冷蔵庫借りるぞ?補填は後でする」
ありす「……怒られますよ? と言うか、Pさんは料理が出来るんですか」
モバP「大人料金を払ってるしな? ……それに、俺は始末書千本切りのプロデューサーなんだ」
ありす「説明になってません」
モバP「アイドルに栄養管理を覚えてもらうのが先だ。お前が開けてくれないと、入れないんだが」
ありす「……美味しくなかったら、怒りますよ」ガチャッ
モバP「善処する」オジャマイタシマース
橘家:キッチン
モバP「パスタ、ニンニク、オリーブオイル、小松菜、ブイヨン少々にアンチョビー、おっ白ワインがあるじゃないか。レモンもある」
モバP「これでだいたい揃ったな。オリーブオイルを弱火で温め、その中に薄切りにんにく三欠け分と輪切りの鷹の爪を放り込む」トントントントントントントントン! バッ! ジリジリ……
ありす「……随分早く、香りが立つんですね」
モバP「薄切りにすると、そこが早くなる。きつね色になるまで炒める人もいるが……俺は、透明になる程度で良いと思う」ジリジリ……ジリジリ……
ありす「宗派があるんですか? 」
モバP「小難しい言葉を……たっぷりと塩を入れたボウル、もう沸騰してるな? に、パスタを入れる」ギュ……パァッ!ストトン!
ありす「タイマーはセットしてます」ピッピッピッピッピッピッピッ!
モバP「袋に書いてある数字のマイナス1分ほどが、丁度いいんだ」ピッ!……ピッピッピッピッピッピッ!
ありす「ベストタイミングとは、書いてありますけど」
モバP「袋が指定してる時間は、茹で上げた時に最適な硬さなんだ。皿に入れる時間を考慮すると、少し短くなる」
モバP「アーリオオーリオのソースに、一口大に切った小松菜とアンチョビ半分を入れる」ジワァ……
ありす「早くありませんか? 」
モバP「好みだろうけど、俺はくたくたになった小松菜が好きなんだ……しっかり熱が通って甘みの出た小松菜ほど、美味しいものは無いと思ってる」
モバP「素のペペロンチーノは絶望のパスタとしか言えないものだが、ここに野菜や魚介類を放り込んで行けば、有る程度栄養価も良いものになっていく。緊急避難的ではあるが、覚えて損の無い料理だ」
モバP「もっと言うなら、冷蔵庫の中で余ってるものなら何を入れてもいい。塩分を控えて佃煮各種を混ぜていれると、具だくさんで幸せな味になる」
ありす「そろそろ出来ますね」ピピッピピッピピッピッ!
モバP「タイマーありがとう。ここからは時間との勝負だ」
モバP茹で汁をお玉一杯ソースに足して、パスタをフライパンに手早く入れる。ここで、白ワインを贅沢に入れる」ビシャア!ザッザッザッ!トクトクトクトク……
ありす「小学生にアルコール?」
モバP「加熱すれば飛ぶ。強火で一気に加熱し、ソースの中で茹でるくらいのつもりにする」グルグルグルグル……ジュワワワワワワワ!
モバP「後は火を弱めて、レモン、バジル・オリーブオイルを少々ずつ加えて混ぜて完成だ。タンパク質が足りてないから、飲み物は牛乳にしよう」
モバP「盛り合わせて……お待たせ。小松菜のペペロンチーノだ」コトッ
ありす「いただきます」クルクル……パクッ
モバP「……」ゴクッ
ありす「……! 」ズルズル、ズルズル!
モバP「クレイジーソルトとタバスコ、どっちを使いたい? 」
ありす「両方ください……! 」モグモグ
ありす「……ごちそうさまでした」
モバP「お粗末様でした。イチゴジャムとヨーグルトも貸してもらった」コトッ
ありす「ミントの葉、ですかスイスイパクパク
モバP「飾りと思ったら、これが結構馬鹿にならない」
ありす「美味しかったです……Pさん、何をしてるんですか? 」ゴチソウサマデシタ
モバP「今回使った材料の費用の計算」オソマツサマデシタ
ありす「ああ……」
モバP「じゃ、食器を洗ったら帰らせてもらう。今日はゆっくり休むんだぞ。おやすみ」
ありす「……はい。おやすみなさい! 」
モバP(ありすのストレスを緩和してやれるのは、今は俺たちしかいないようだ。いつか彼女が自分の名前が好きになれる……その時を、待とう)
デデデデッデーデーデデデデンッ!
ステージの中
LIVE会場:舞台裏
モバP「はい、はい、え? わかりました、追加ですね、練習はさせております。はい、大丈夫です。ありがとうございました……」ピッ
モバP「……上層部は無理難題をおっしゃる」
ありす「ついに本格的にアイドルデビューですね……えへへ」
モバP「ドレスはよく似合っている。ただ……一曲、追加できるか?」
モバP「プログラムの変更は間に合うが、お前の体力が心配だ」
ありす「……大丈夫です。人の体力の限界って、私たちが思ってるより強いですから」
モバP「……頼りがいの有ることを、言ってくれる……! 曲はこれだ」ペラッ
モバP「あくまでのびのびと……リラックスをして歌って欲しい。任されてくれるな?」
ありす「むしろ、歌いたいです……見てください、いいですね!? 」タッタッタッタッタッ……
モバP「……いいですね? 」
ちひろ「いいですね……始まりますよ! 」
LIVE会場:ステージ
ありす「……はじめまして! 私は橘……ありすです! 」
ありす「今日は、私の初舞台に来てくれて、ありがとうございます! 」
ありす「まだ至らない身ですが……精一杯、歌います! 」
LIVE会場:舞台裏
AD「音楽、入ります! 」カチッ
推奨BGM:『銀色ドレス』歌:森口博子
LIVE会場:ステージ
ありす「……『僕を見つめてた 蒼い瞳♪ ある日突然に 消えてしまう♪』」
ありす「『こんど出会えれば 間違わない♪ 良い日であったと 抱き合うだろう♪』」
イイゾー!ガンバッテー!
ありす(心を張りすぎるんじゃなくて……力を抜いて、もっと、のびのびと! )
ありす「『ドレス来て 明日に向かう心を♪ 』
アリスー!オマエハオレノ……アメリアー!シャベルナァァァァ!モウヤメヨウヨ
ありす「『いつまでも 暖めておくわ♪』」
ありす(ストレスをのせるんじゃなくて、恩返しの心をのせるように、歌えれば……! )
ありす「……『いのち生まれてときの流れにのる♪』」
「『銀色のドレスを まとって♪』」
LIVE会場:舞台裏
アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!……
モバP「ありす! 酸素、ドリンクにタオル! 最高だった! 」バッ!
ありす「大丈夫です……マイクを交換します」バシッ
モバP「する気、なのか? 」
ありす「何ででしょうか……してみたいんです」
モバP「そうか……ありすって名前、今でも嫌いか? 」
ありす「……わかりません。でも」
ありす「いつか、好きになります。自分の名前にします」
モバP「……わかった。明日は休みにして、ちひろさんも呼んでご飯食べに行こう! アンコール、行ってこい! 」
ありす「はいっ! 」タッタッタッタッタッタッ……
ちひろ「……Pさんの奢りですよね? 」
モバP「金払ってばかりになっちゃってますよ、俺……いい顔ですよね? アイドル橘ありすは、俺が育てたんです」
ちひろ「自分の手柄みたいに、男じみた理屈ばかり……」
モバP「ニヤニヤ笑いながら、言うことですか、それ? アンコール始まりますよ! 」
LIVE会場:ステージ
ありす「みなさん、アンコールありがとうございます! 次の曲は……」
モバP(この日のLIVEは、規模と比較すれば大成功だろう)
モバP(これだけでありすが吹っ切れる訳では無かったが……それでも、ストレスを受け流し、あるいは自分で癒す方法を掴むきっかけにはなったと思う)
モバP(さて、これからもっと忙しくしてやるぞ)
おわり
LIVEっぽい演出や富野節の再現は、難しいものですね。
題名の元ネタはZガンダムの挿入歌「銀色ドレス」です。本当は副題に合わせてタイトルコールをしたかったのですが……失敗でした……
意味不明な文章や、ご都合な展開が多々あったことを、何卒ご容赦ください。
拙い作品に最後まで付き合っていただき、本当にありがとうございました。
おまけ
デデデデッデーデーデデデデンッ!
ソースかける
事務所:給湯室
ありす「ちひろさん、料理をしてみたのですが……試食をして貰っていいですか? 」
ちひろ「いいわよ?えっと……えっ!? 」
イチゴパスタ「コノDVDハミレタモノデハナイノデ、カッテハイケマセン!」ズゴゴゴゴゴ……
ありす「Pさんに教わった技術の集大成です……私の得意を、好物を全面に出してみました! 」フンスッ!
イチゴパスタ「キガクルイソウダ……コレデムショイキダ」ズモモモモモモモッ!
ちひろ(せっ、背筋がフリーズしてる……私がプレッシャーされてるとでも言うの!? )
ありす「……パスタが伸びないうちに、どうぞ! 」ニコッ!
ちひろ「ひっ!? いただきます! 」(あの笑顔を前にして、皿を捨てるなんて! あああああっ! )
モバP「ただいま戻りましたー……ありす? 」
ありす「Pさん……ちひろさんが、倒れるほどの美味ですよ」スッ
イチゴパスタ「ソンナノヤスヒコクンニキイテクダサイ」ズドドドドドドドッ!
モバP「えっ……? 」
ありす「……ふふふっ、ふふふふふ……」
モバP「ありす! 」
ありす「……いちご、いちご。皆いちごを使いましょう。多く、もっとたくさん。クリームとあまおうを擦りあって、イタリアンといちごがとろけ合うまで加熱するんです」
モバP「(ゲテモノ食は)やめないか! 」
ありす「ふふふ……いちご、いちご。皆さんをいちご好きにしてみせましょう。そうですね、料理特番が望ましいです。聞き慣れた音楽が終わって、皆が慣れた手つきでソースを作ったところで、私がいちごを流します。そうして、皆がいちごの美味しさを覚えるんです。いずれはプロダクションのアイドル全員もいちご好きにしてみせます。辛党面をしたPaPティマスさんもです。
その次は業界中の人達です。出会ったばかりの人達でも、いちご料理を振る舞い合うんです。例えそれが新人でも、大御所であっても、男性同士であっても、女性同士であっても。いちご単品に飽きてしまったらいちごパスタをすすり、空腹になったらいちご大福を食べてみる。そうして延々繰り返すんです、いちご料理を。いちご、いちご。いちご、いちご、いちご、いちご、いちごいちごいちごいちごいちごいちごいちご……」
モバP「……ちひろさん、聞こえますか、ちひろさん。ありすが、橘ありすが……! 」
ちひろ「……こらっ、はしゃぎすぎよ……」
fin
終わりです。HTMLの以来を出してきます
依頼、出して来ました。
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