【安価】ダンガンロンパ・アドバンス【オリジナル】 (281)
・オリジナルのキャラクターでコロシアイを行います。
・原作とは世界観が異なっていますが、もしかしたらネタバレがあるかもしれません。
・目標は少しずつでも毎日更新。
まずはキャラクターの才能を16人分募集します。
1人2個までです。
16人分集まったら締め切りますが、>>1の判断で不採用が出た場合は再度募集します。
ではお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504855322
聖職者
小説家
プロボウラー
庶務
振興委員
ハイジャック
採用(一部名称の変更有り)
超高校級のアルバイター
超高校級の蔵書家
超高校級のレスラー
超高校級の書道家
超高校級の紙芝居師
超高校級の配達員
超高校級の聖職者
超高校級の小説家
超高校級のボウラー
超高校級の庶務
超高校級の植物学者
超高校級のハイジャック犯
超高校級の密売人
超高校級の傭兵
あと2人募集します。
男子
超高校級のアルバイター
超高校級のレスラー
超高校級の紙芝居師
超高校級の配達員
超高校級の小説家
超高校級のハイジャック犯
超高校級の密売人
超高校級のフィギュアスケーター
女子
超高校級の蔵書家
超高校級の書道家
超高校級の聖職者
超高校級のボウラー
超高校級の庶務
超高校級の植物学者
超高校級の傭兵
超高校級の催眠術師
以上16人を採用しました。
次に主人公を決めます。
上の16人分の中から主人公に相応しいと思う才能を一つ選んでください。
安価↓1~3までの中で最もコンマの高いものを採用します。
聖職者
庶務
主人公は超高校級の聖職者に決まりました。
では主人公の名前とキーワードを募集します。
1人1つずつ書いてください。
キーワードはなるべく1単語でお願いします。
17:40まで募集して集まった中から>>1が選びます。
荼枳尼 鳳天 (ダキニ ホウテン)
キーワードは深海
フェリシア・カーティス (Felicia-Curtis)
強運
天使 真理亜(あまつか まりあ)
天涯孤独
鳳 優那 (おおとりゆうな)
慈愛
【超高校級の聖職者】
名前:フェリシア・カーティス(Felicia=Curtis)
キーワード:『慈愛』『深海』『天涯孤独』
以上で決定です。
次は他の超高校級達をいっぺんに決めていきます。
才能と名前とキーワードを1つずつ書いて下さい。
何人分でもあげてOKです。
とりあえず18:30まで募集します。足りなかったら延長。
並木 崇 (なみき たかし)
器用貧乏
>>30
超高校級のアルバイター
並木 崇
器用貧乏
催眠術師
ユーリ・ゲイラー
ハイジャック犯
空賀 隼人(くが はやと)
スリルジャンキー
>>32です
キーワード忘れてました
せっかくなので「忘却」で
密売人
数奇屋橋 京平(すきやばし きょうへい)
浪費家
催眠術師
夢原 蕩子(ゆめはら とうこ)
眠たげ
傭兵
赤沙 紅葉 (あかしゃくれは)
外見も内面も子供
配達員
日渡 達也(ひわたり たつや)
コミュ充
庶務
鍋島 直枝(なべしま なおえ)
ネコミミ
ボウラー
京極 都(きょうごく みやこ)
筋肉質
超高校級の密売人
路 景雷 (ルゥ ジンレイ)
狡猾
超高校級の蔵書家
本城 文架 (ほんじょう もか)
世故に長ける
植物学者
化野 銀吾(あだしの ぎんご)
いつも眠たげ
小説家
文月 帝(ふみづき みかど)
病弱
傭兵
鬼車 薫(おにぐるま かおる)
鷹の目
紙芝居師
絵合 ヒカル(えあわせ ひかる)
ずぼら
庶務
太宰府 伊織(だざいふ いおり)
超高校級の不幸
紙芝居師
相楽 謡児(さがら ようじ)
子供好き
蔵書家
橘 閑 (たちばなしずか)
感情が薄い
傭兵
羅 黎沙(ルオ リーシャ)
ミステリアス
すみませんがもう少し募集時間を延長します。
とりあえず19時を目安に。
よろしくお願いします。
取り敢えず決まったのあったら発表して
残り埋めてけば?
数少なめなのを追加で書けばいいのかな?
書道家
垣原 寧々子 (かきはらねねこ)
奥ゆかしい
説明不足で申し訳ありません。
現状、候補がひとつしか出ていない配達員、ハイジャック犯、フィギュアスケーター、ボウラーを特に募集します。
また、それ以外の物も一応まだ受け付けております。特にキーワードが足りないのでキーワードだけでもあげてもらえるとありがたいです。
よろしくお願いします。
募集時間は19:30までとします。
レスラー
武志 克己(たけし かつき)
清濁併せ呑む
小説家
鳴海 誠司(なるみ せいじ)
洞察力が高い
フィギュアスケーター
碓氷 志弦(うすい しづる)
中性的
ボウラー
鞠宮 仁美(まりみや ひとみ)
強気
植物学者
木梨 翠(きなし みどり)
お姉さん気質
庶務
平 さつき(たいら ー)
オールラウンダー
フィギュアスケーター
松永 優雅(まつなが ゆうが)
ズボラ
キーワード(指定無し)
被虐趣味
恋愛体質
トラウマ
実直
元ヤン
配達員
戸馳 明起 (とばせ あおき)
愛嬌者
フィギュアスケーター
氷上 寒 (ひかみ さぶ)
控え目
ボウラー
十木 柱 (とおぎ ささえ)
冷静沈着
ハイジャック犯
両角 空 (もろずみそら)
リアリスト
ありがとうございます。
募集を締め切ります。
まとめるのに時間がかかるので少々待ってください。
男子
【超高校級のアルバイター】
名前:並木 崇(ナミキ タカシ)
キーワード:『連勤術師』『器用貧乏』『子分気質』
【超高校級のレスラー】
名前:岩藤 益五郎(ガンドウ マスゴロウ)
キーワード:『家庭的』『頭脳明晰』『清濁併呑』
【超高校級の紙芝居師】
名前:絵合 ヒカル(エアワセ ヒカル)
キーワード:『弁論術』『ズボラ』『子供好き』
【超高校級の配達員】
名前:戸馳 明起(トバセ アオキ)
キーワード:『コミュ充』『愛嬌』『明朗快活』
【超高校級の小説家】
名前:冬芽 凉水(フユメ リョウスイ)
キーワード:『病弱』『引き籠もり』『洞察力』
【超高校級のハイジャック犯】
名前:空賀 隼人(クガ ハヤト)
キーワード:『スリルジャンキー』『毒舌』『傲慢』
【超高校級の密売人】
名前:路 景雷(ルゥ ジンレイ)
キーワード:『浪費家』『狡猾』『トラウマ』
【超高校級のフィギュアスケーター】
名前:北見 青真(キタミ セイマ)
キーワード:『中性的』『ストイック』『控え目』
女子
【超高校級の蔵書家】
名前:本城 文架(ホンジョウ モカ)
キーワード:『世故』『薄い感情』『被虐趣味』
【超高校級の書道家】
名前:白墨 桜(シラスミ サクラ)
キーワード:『純粋無垢』『奥ゆかしい』『元ヤン』
【超高校級のボウラー】
名前:鞠宮 仁美(マリミヤ ヒトミ)
キーワード:『姉御肌』『強気』『柔軟性』
【超高校級の庶務】
名前:平 さつき(タイラ サツキ)
キーワード:『ネコミミ』『不幸』『万能型』
【超高校級の植物学者】
名前:江森 千草(エモリチグサ)
キーワード:『無口』『眠たげ』『素直クール』
【超高校級の傭兵】
名前:赤沙 紅葉(アカシャ クレハ)
キーワード:『子供っぽい』『鷹の目』『ミステリアス』
【超高校級の催眠術師】
名前:夢原 蕩子(ユメハラ トウコ)
キーワード:『忘却』『救世主妄想』『スケベ』
お待たせしました。
以上の名前、キーワードで決定です。
最後にコロシアイの舞台を募集します。安価↓1~5くらいまでの中から>>1が選びます。
総合病院
総合商業モール
舞台はゴーストタウンに決定しましたた。
安価での作成は以上です。ありがとうございました。
プロローグの開始は明日からです。
よろしくお願いします。
乙
おつ
それでは今からプロローグを始めます。
よろしくお願いします。
───寒い。
───寒い。
嗚呼、私は何処にいるのでしょう。
冷たくて……暗くて……それに何だか息苦しくて。
呼吸をしようと口を大きく開けても、水が流れ込んで上手く出来ません。
……水?
フェリシア「ガハッ! ゴホッゴホッ……ッ!!」
手足を激しく上下させ、なんとか水面に顔を出します。
フェリシア「……こ、ここは……?」
大きな“水槽”のようなものから身を乗り出した私には、そう呟くことしか出来ませんでした。
【ダンガンロンパ・アドバンス】
プロローグ『受胎せし女神のカケラ』
水浸しのまま、床に身体を打ちつけるように這い出た私は、周囲を見渡します。
レンガ造りの壁に囲まれた部屋。
埃っぽい空気で満ちた室内には、先程まで私が沈んでいた大きな“水槽”と幾つかの怪しげな機器がありました。
フェリシア「大昔の研究施設?のようですけど……どうして私、こんな所に居るんでしょうか?」
フェリシア「…………うーん、昨晩は確かいつものように教会で寝ていたはずなんですけど……」
いくら記憶を遡っても、こんな場所にいる理由は見つかりません。
フェリシア「とにかくここを出ないとですよね。誰か事情が分かる人がいるかも、しれませんし……ふぁ……ふぁ……」
フェリシア「…………はくちゅッ!」
フェリシア「……そ、そう言えば私、服を着てないんでした」
フェリシア「何処かに何か羽織れるものでもあればいいんですが」
そう考えて近くを探ると、カゴに畳まれて入れられた服を見つけます。
フェリシア「これ、私の服じゃないですか……! 良かった、ちゃんと用意してくれてたんですね」
私はいそいそと私用の聖職着に腕を通します。
これでようやく外に出られますね!
どなたかいらっしゃるといいのですが……
□■□■□■□
古ぼけたレンガ造りの廃屋から出ると、そこは薄暗い街並が続いていました。
まるで街全体を霧が包み込んでいるようで、少し不気味です。
???「あれ、まだ人がいたのね」
フェリシア「……!」
振り返ると、そこには小さな女の子。
深紅の髪を二つに結っていて、子供らしさが垣間見えます。
ですが、その鋭い眼光からは、幼さの中に潜む強い意思を感じました。
フェリシア「あれ? あなた一人なんですか? 親御さんはどうしたんですか?」
???「は?」
フェリシア「あ、もしかして迷子なんですか!? それは困りましたね……実は私も似たようなものなんですけど」
???「ねぇ、ちょっと!」
フェリシア「ですが困っている少女を見捨てる訳には行きません! 安心してくださいね、お姉ちゃんが必ずお母さん達の所に連れて行ってあげますからね!」
???「い、いい加減……私を子供扱いすんなっ!!」
赤沙「私は赤沙紅葉! こう見えても16歳だし、大人なんだから!」
赤沙「次に子供扱いしたら、あんた殺したげるわ!」
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被験者番号:0001
【超高校級の傭兵】赤沙 紅葉(アカシャ クレハ)
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フェリシア「ええっ!? お、同い歳なんですか!?」
赤沙「そうよっ! 何か文句あるの?」
小さな胸を張ってこちらを睨む赤沙さん。
でも、どう見ても同い歳には思えませし、ただの可愛らしくて幼い少女にしか見えないんですけど……
フェリシア「そ、そんな事って……! 一体私達の身に何が起こってるんですか?」
赤沙「私だって知らないわよ!」
赤沙「兎に角! 他の連中も手分けして街を探索してるから、フェリシアも手伝いなさいよね」
フェリシア「そ、そうですね。状況はよく分かりませんが……分かりました! 私も探索を手伝います!」
赤沙「ある程度探したら、向こうにある大きな広場に集合よ」
赤沙「じゃ、頑張ってね」スタスタ…
フェリシア「はいっ………………」テクテク…
ミス
>>109の前にこっち
フェリシア「あっ、申し遅れました。私はフェリシア・カーティスと言います」
フェリシア「あの赤沙さんはここが何処かご存じですか? 実は私、迷子になってしまっていて……」
赤沙「……フェリシア、あんた記憶はある?」
フェリシア「えっ?」
赤沙「ここに来るまでの記憶よ。どうやってここまで来たか覚えてる?」
フェリシア「そ、それがその、何も覚えてなくて」
赤沙「でしょうね。あんた以外の皆もそうだから」
フェリシア「……皆? 他にも私と同じような人がいるんですか?」
赤沙「そ。私とフェリシアを含めて全部で16人ね。まあ、まだ増える可能性はあるけど」
赤沙「その16人の誰一人として、どうしてこの街に居るのかを覚えてないのよ」
赤沙「………………」スタスタスタ…
フェリシア「………………」テクテクテク…
赤沙「………………」スタスタ…ピタッ
フェリシア「………………?」テクテク…ピタッ
赤沙「……何でついてくんの?」
フェリシア「ええっ!? 駄目でしたか!?」
赤沙「駄目よ! 一緒じゃ効率悪いでしょ!?」
フェリシア「でも、小さな子を1人にするのは聖職者として出来ないといいますか……」
赤沙「だから子供扱いすんなって言ってんの! あんた殺したげるわ!」
フェリシア「それにほら、やっぱり私も1人だと心細いですし、赤沙さんと一緒がいいんです!」
フェリシア「だ、駄目……ですか?」
赤沙「…………はぁ、もういいわ。好きにして」
呆れたようなため息をこぼすと、赤沙さんはとぼとぼと歩き始めます。
フェリシア「あっ、待ってください!」
私は慌てて彼女の後を追うのでした。
現在地:廃虚街
《行き先選択肢》
レストラン
宿屋
商店街
教会
???
ネフティス・キャッスル
果ての淵
安価↓1
□■□■□■□
フェリシア「わっ、と……!」
前を行く赤沙さんが不意に立ち止まり、私は思わずぶつかりそうになります。
フェリシア「どうしたんですか? 赤沙さん」
赤沙「まずは、フェリシアにも見せておくべきかなって思ったの」
赤沙「この先の景色をね」
フェリシア「この先ですか? えっと───」
私は赤沙さんの視線の先へと目をやります。
そこには────何もありませんでした。
そう、文字通り何も無かったのです。
あるべきはずの地面が、景色が、世界が、何ひとつとして見当たらないのです。
フェリシア「こ、これは…………が、崖ですか!? でも全然向こう側の景色が見えません! こ、こんな場所なんて……あるんですかっ!?」
赤沙「あるんだからあるのよ。困った事に途方もない大きさの断崖絶壁らしいわ」
赤沙「まるで無駄に予算をかけたハリウッド映画みたいでしょ? でも…………現実なのよね、これ」
フェリシア「な、何で赤沙さんはそんなに落ち着いてるんですか!? こんな……こんな場所に居るのに」
赤沙「始めは私だって驚いたわよ! でも、いつまでも悲観してたってしょうがないでしょ?」
赤沙「今は少しでも手掛かりを見つけて、ここから帰る方法を見つけるなきゃならないんだから!」
フェリシア「そ、それはそうですけど……」
???「因みに、この大きな崖は街全体を囲うようにあるから、単純に歩いて出るのは無理みたいだゼ」
フェリシア「そんな……じゃあ一体どうすれば……!」
???「記憶喪失に集団誘拐、さらに断崖絶壁に囲まれた街……ケケケ、まさに崖っぷちの状況って訳か、笑えるゼ」
フェリシア「全然笑えないですよ…………っ、あれ?」
???「あン?」
フェリシア「…………えっと、ところであなたはどちら様でしょうか?」
???「おおっと、自己紹介がまだだったゼ。失礼失礼」
???「オレは路景雷。ちょいと汚い仕事をしてるだけのしがない高校生だゼ、ケケケ」
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被験者番号:0015
【超高校級の密売人】路 景雷(ルゥ ジンレイ)
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路さんと名乗るその男の人は細身の体で、全体的に黒っぽい衣装に身を包んでいて、どこか怪しげな印象がありました。
フェリシア「ルゥさんですか……もしやご出身は中国だったりするんですか?」
路「いや、親が中国人ってだけで生まれも育ちも日本。オレは立派な日本男児だゼ? ケケケ……なんてな」
フェリシア「なら私の同じような物ですね! 私も物心つく前に日本に居ましたから」
フェリシア「共通点がある人がいると何故だか安心しますよね」
路「そうかァ? アンタ、結構な変わりモンだな」
フェリシア「この方も私たちと同じ記憶喪失で気づいたらこの街に居た人なんですか?」
赤沙「そうよ。フェリシアが目覚める前に既に1度会って事情は聞いたわ」
路「ケケケ……ま、そういうことで。よろしく頼むゼ、フェリシア嬢ちゃん」
怪しく口元を歪めると、路さんは品定めをするような目付きで私を見つめるのでした。
路「おっと、忘れる所だったゼ」
路「オレ達と同じく記憶喪失の奴なら、もう一人そっちにいるゼ。フェリシア嬢ちゃんは挨拶しといたらいいんじゃないか」
路さんが指差す先を辿ると、崖の淵ギリギリの所の小岩に腰掛ける、1人の男の人の姿がありました。
???「……………………」
フェリシア「あの方は何をしているのでしょう? あんなところに座っていたら危ないじゃないですか」
路「なんでも体調が悪いらしくて風に当たりたいんだと…………ケケケ、フェリシア嬢ちゃんに負けず劣らずの変わりモンだゼ」
フェリシア「わ、私は変わり者じゃありませんって!」
赤沙「いーや、あんたは変わり者でしょ」
フェリシア「むっ、高校生のくせに小学生にしか見えやい赤沙さんには言われたくないです!」
フェリシア「と、とにかく体調の悪い方をあんな場所には放っておけません! 私声をかけてきます!」
タッタッタッ…
私は小走りで崖先にいるブレザー姿の男の子の元へ向かいます。
フェリシア「あの、具合が悪いと聞きましたが大丈夫ですか? もし良ければ私が看病を……」
???「…………少し、静かにしてくれないか」
フェリシア「えっ?」
???「五月蝿いのは嫌いだ。その理由は構想に集中出来ないからだ」
フチなし眼鏡のフレームを指でクイッと押し上げながら、彼は無機質な声でそう告げました。
フェリシア「お、お邪魔でしたか、ごめんなさい……えっと、何をなさってるんですか?」
???「それを教える事はない。その理由は僕が構想中である事は既に言ったからだ」
フェリシア「は、はぁ……」
???「キミの要件は理解っている。僕の事が知りたいんだろ?」
冬芽「僕の名は冬芽凉水。名前ぐらいは聞いたことがあるはずだ」
冬芽「その理由は僕が新進気鋭の小説家だからだ」
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被験者番号:0011
【超高校級の小説家】冬芽 凉水(フユメ リョウスイ)
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フェリシア「冬芽さんは小説家さんなんですか……すみません。私、娯楽には少々疎いもので」
冬芽「娯楽? 僕の小説が娯楽だって? ふっ……言ってくれる」
フェリシア「あっ、いや、そういう意味で言った訳じゃないんです! 気分を害されたのでしたら、謝りますから……」
冬芽「別に僕は怒ってなどいない。決して怒ってなどいない」
冬芽「その理由は僕の思考回路は至って冷静に働いているからだ」
その言葉に反して、冬芽さんは明らかに不機嫌そうな目つきで私を睨みつけます。
冬芽「兎も角、早く立ち去ってくれないか? 僕は忙しいんだ」
フェリシア「は、はぁ……では、失礼します」
冬芽さんに追い出させるように、私はその場をそそくさと離れます。
路「ケケケ、どうだった? 冬芽少年は」
フェリシア「な、中々、変わった人でしたね……」
赤沙「フェリシアにまで変わり者認定されるなんて、相当ね」
路「ケケケ……違いないゼ」
赤沙「じゃ、自己紹介も済んだんだし、次行くわよ! あんまり時間かけてらんないしね!」スタスタスタ…
フェリシア「あっ! だから、待ってくださいってば!」タッタッタッ…
□■□■□■□
フェリシア「BISTRO『La Cène』……ここはレストランですかね」
私は古ぼけた看板を見上げて、そこにある文字を読み上げました。
赤沙「でしょうね。でも客とか店員とか全く見当たらないわ」
フェリシア「無人のレストラン……ここも廃屋でしょうか」
ギィ、と軋む音を鳴らしながら扉を開いて中に入ると、二人の女の子がこちらを向きます。
???「むむっ(☆∀☆) 何やら可愛い女の子が来たようデス!」
???「……………………そう?」
???「あっ、勿論一番可愛いのはチーちゃんデスよ♡~(>᎑<`๑)」
???「……………………ふーん」
???「あぁん、素っ気ないデス! でも、そこが好き(♡>艸<)」
片方の女の子は無口で大人しそうというか、淡白な様子ですが、もう一方はテンションが高く表情豊かな様子。
何だか対称的な二人ですね。
フェリシア「あなた方も私と同じ、記憶喪失の人なんですよね?」
???「はいっ、そうデスよ(*´・∀・)ノ 私もチーちゃんもこのレストランを探索中なんデス! ね、チーちゃん?」
???「……………………まあ、そうかも」
フェリシア「私はフェリシア・カーティスと言います。よろしくお願いしますね」
夢原「これはご丁寧にどうも(*'∀'*) 私は夢原蕩子というものデス!」
夢原「ちなみに稀代の超絶凄腕催眠術師、ミラクル☆トーコとはこの私の事なんデスよ☆\\ ٩( 'ω' )و //☆」
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被験者番号:0014
【超高校級の催眠術師】夢原 蕩子(ユメハラ トウコ)
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フェリシア「催眠術師? それはまた珍しいご職業ですね」
夢原「ふふふふ♪(●´艸`) 私の催眠術はスゴいデスよ~!」
夢原「機会があれば今度フェリシアちゃんを催眠術でオス犬の真似をするメス猫の真似をさせて見せまショウ(・ω<)-☆」
フェリシア「単に犬の真似じゃダメなんですか……」
フェリシア「それで、そちらの方は?」
???「…………………………わたし?」
夢原「あ! チーちゃんはとても凄いんデスよ( •́৮•)ノ なんと高名な植物学者さんらしくて、すごく頭がいいんデス!」
夢原「しかも可愛いデスし、おっぱいも大きいデスしლ(´ڡ`ლ)グェッヘッヘッ」
???「………………………………」
???「…………………………はぁ、もういいから」
何とも言えない表情でため息をついた彼女は、あとは自分でやると言いたげな様子で夢原さんを制します。
江森「…………………………江森千草」
江森「……………………あのひとの言ったとおり、植物学者をしてる」
江森「…………………………まあ、よろしく」
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被験者番号:0003
【超高校級の植物学者】江森 千草(エモリ チグサ)
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フェリシア「あの、お二人はもしかしてココに来る前からお知り合いだったんですか?」
江森「…………………………ちがうけど」
フェリシア「そうなんですか? 余りに仲が良さそうに見えたもので」
江森「……………………べつに仲良くない」
夢原「いつ知り合ったかなんて問題じゃないんデスo(`・ω´・+o) !」
夢原「私のチーちゃんへの愛は時間さえも超越するんデス(≧∇≦)」
江森「……………………割とめいわく」
フェリシア「あ、あはは……そ、そうですか」
うーん、この二人、なかなか前途多難そうですね。
しばらく2人と話していると、バタン、と奥の扉が開き赤沙さんが現れます。
赤沙「フェリシア、無駄話は終わった?」
フェリシア「赤沙さん! 無駄話ってそんな言い方……」
赤沙「あんた達が喋ってる間に、このレストランについて色々調べてみたわ」
赤沙「ここ外見の古臭さの割に中は結構、綺麗みたい。まるで少し前まで誰かが使ってたみたいにね」
フェリシア「前は私達以外に人が居たんでしょうか……」
赤沙「奥のキッチンも問題なく使えるみたいよ、ガスも水道も通ってるのね」
江森「………………ちなみに部屋の明かりもつくから、電気もあるかも」
夢原「これで真っ暗な夜でも1人彷徨う心配は要らないデスね(っ´ω`c)」
江森「……………………誰かさんに襲われる心配はいるかも」
赤沙「あと地下に食料庫があったわ。中は缶詰とかばかりだけど、しばらくは食べるものには困らなさそうね」
フェリシア「それは良かったです」
夢原「食料庫に大量に謎のお肉があるんデスけど、あれ食べて大丈夫なんでショウか(´・ω・)?」
江森「……………………あれ、なんか臭い」
赤沙「腐ってるかもしれないし、口にしないのが賢明よ」
赤沙「さてと、ここはこれぐらいで良いでしょ。ほら、さっさと次行くわよ、フェリシア!」
フェリシア「そうですね……ではまた後で会いましょう!」
夢原「はーいヾ(^▽^*))) お互い探索がんばりまショウ٩( •̀ω•́ )ﻭ」
江森「……………………くぁ~……ねむい」
ブンブンと手を振る夢原さんと、あくびをする江森さんを残して、私達はレストランを後にしました。
□■□■□■□
次に私達が訪れたのはレストランの近くにある大きな家屋。
入口近くに『INN』と書かれた看板が立てられていました。
フェリシア「宿屋、ですか。ここは比較的寂れてない建物ですね」
赤沙「レストランに宿屋……ここで暮らせってこと? 案外、致せり尽くせりじゃない」
フェリシア「こんな状況じゃ嬉しくありませんけど……」
赤沙「ま、無いよりマシよ」
そう言って、赤沙さんはずかずかと宿屋内に入っていき、私もその後に続きます。
今夜はここまでです。
宿屋の中は、まず正面に受付がありました。
木製のカウンターの上に宿帳や内線電話などが乗っています。
左手に通路が伸びていて、両側に扉が並んでいるのが見えます。
恐らくあちらが客室になっているのでしょう。
???「おっ、赤沙ちゃん! ……と、あれ? そっちは新顔?」
全身にアクセサリーの類いをつけている、少し軽薄そうな少年が声をかけてきました。
赤沙「そ。探索の途中で見つけたの」
フェリシア「はじめまして、フェリシア・カーティスと申します。よろしくお願いしますね」
???「ふむふむ……フェリシアちゃんかぁ。へへっ、マックス可愛い娘じゃん!」
戸馳「俺は戸馳明起! 趣味と特技は走る事! 足の速さに自信あり! ちなみに仕事は配達員!」
戸馳「てな感じで、マックスよろしくぅ!!」
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被験者番号:0009
【超高校級の配達員】戸馳 明起(トバセ アオキ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フェリシア「配達員……というとお手紙などを運ぶお仕事をされてるんですか?」
戸馳「そうそう! ま、手紙だけじゃくて色んなものを配達してるんだけど!」
戸馳「バイク便より速いって評判なんだ! どう? マックスすごくない?」
フェリシア「バイクより? まあ、それは凄いですね!」
戸馳「へっへ~、でしょ?」
赤沙「ほらそこ、無駄なお喋りしてないで、ちゃんと働きなさいよ!」
戸馳「あちゃー、怒られちゃった。赤沙ちゃんはマックス厳しい!」
フェリシア「でも、あんなに小さいのに随分としっかりした子で……凄いですよ」
赤沙「だーかーらー! 子供扱いすんなって言ってるでしょ!? あんた殺したげるわよ!」
鬼の形相でこちらを睨む赤沙さんに従い、私と扉馳さんはおずおずと奥の客室のある通路に向かいました。
一つ一つ扉を見て回り、私はあることに気がつきました。
フェリシア「ここの客室、16部屋あるんですね」
確か赤沙さんが、この街にいるのは私を含めて16人だと言っていたはず。
フェリシア「じゃあ、今いる16人で全員ということなのでしょうか?」
フェリシア「じゃあ、今いる16人で全員ということなのでしょうか?」
今まで会ってきた人達から見るに、同年代ということ以外、特に共通点があるようには思えないのですが。
むしろ皆さん特徴的の人柄な方が多いような気すらします。
そんな事を考えながら、私は何気なく一つの扉を開きました。
すると────
ガチャッ
???「わぉっ!?」ピョコン
フェリシア「きゃっ!?」
いきなり目の前に人の顔が現れ、私はとっさに声が出てしまいます。
向こうも丁度部屋を出ようとしていたようで、危うくぶつかってしまう所でした。
若干ミス
ですが、一体この16人がなんだと言うんでしょうか。
今まで会ってきた人達から見るに、同年代ということ以外、特に共通点があるようには思えないのですが。
むしろ皆さん特徴的の人柄な方が多いような気すらします。
そんな事を考えながら、私は何気なく一つの扉を開きました。
すると────
ガチャッ
???「わぉっ!?」ピョコン
フェリシア「きゃっ!?」
いきなり目の前に人の顔が現れ、私はとっさに声が出てしまいます。
向こうも丁度部屋を出ようとしていたようで、危うくぶつかってしまう所でした。
???「あー、びっくりした……大丈夫? 怪我はないない……かな?」ピョコ
フェリシア「いえ、大丈夫です! ごめんなさい……急に扉を開けてしまって」
???「ううん、気にしないで。これも私の運の悪さが招いた事だし」
???「私、昔からツイてなくって……あはは」
???「あ、ゴメンね。私ったら、すぐに愚痴っぽくなっちゃって……」
はぁ、という溜め息をこぼして、苦笑いを浮かべる彼女。
何やら、普段から苦労されている方みたいです。
???「そう言えば、あなたと会うのは初めてだよね? 名前とか聞いてもいい……かな?」ピョコッ
フェリシア「あ、はい! 私はフェリシア・カーティスと申します」
???「フェリシアちゃん、フェリシアちゃん……うん覚えたよ」
平「私は平さつきって名前だよ。こんな状況だけど、仲良くしようね」ピョコン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者番号:0008
【超高校級の庶務】平 さつき(タイラ サツキ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
平さんは丁寧にお辞儀で挨拶をしてくれます。
フェリシア「…………………………」ジー
平「……? どうしたのかな、フェリシアちゃん?」ピョコ
フェリシア「あ、あの先程から気になっていたんですけど」
私はさっきから目の前でピョコピョコと動いている“それ”を指さして言います。
フェリシア「えっと、そ、その頭に着けている猫の耳のようなものは一体何なんでしょう?」
平「えっ? ああ、これ? あはは……やっぱり変だよね」
平「私みたいな陰気臭い娘が、こんなもの付けてるなんておこがましいよね……」ピョコッ
フェリシア「ま、また動きました! どういう仕組みかわかりませんが、可愛いですね!」
平「え?」
フェリシア「こんなに可愛い髪飾りがあったなんて……世界はまだまだ広いんですね」
平「えっ? えっ? フェリシアちゃんは変だって思わないのかな?」
フェリシア「どこが変なんですか? むしろ凄く似合っていて私、興奮を抑えきれませんっ!」
平「初めて似合ってるって言われた……えへへ、嬉しいな」
フェリシア「あ、あの! 触ってもいいですか? いいですよね!」フンフン!
平「それは良いけど……鼻息荒いよ? フェリシアちゃん」
私は平さんの許可をもらい、フワフワの猫耳を心ゆくまで堪能するのでした。
満足してから、再開した客室の探索で、私は机の上に置かれたものを見つけました。
フェリシア「あ、これ客室の鍵ですかね?」
平「うん……『8号室』って書いてあるしこの部屋ので間違いないよ」
フェリシア「良かったです、鍵がついてない部屋なんて物騒で泊まれませんからね」
平「泊まる……やっぱりここに泊まらなきゃならないのかな? 私、本当は早く帰らないといけないんだけど」
フェリシア「うーん、今、私達の身に何が起きているのか分からないですからね……早く帰る方法が見つかればいいんですが」
平「そうだよね……うん! その為にもまずはこの宿屋
の探索を頑張らなきゃ、だよね?」
フェリシア「そうですね、頑張りましょう!」
そうやって私達は互いに励まし合いながら探索を続けたのです。
□■□■□■□
しばらく宿屋内の探索をした後、平さん達と別れ、私は赤沙さんと共に次の場所へ向かいました。
フェリシア「ここは、沢山の建物が並んでいますね」
赤沙「そこは服屋、あそこは雑貨屋、こっちは電器屋、向こうのは本屋……色んな店が並んでる、ここは商店街なのね」
赤沙「ま、どれも寂れてて品揃えはあんまり良くないみたいだけど」
私達が着いたのは、これまた廃れた商店街。
私は試しに一つのお店に入ってみます。
フェリシア「ふむふむ、けん玉、トランプ、すごろくにビデオゲーム……ここはもしかして───」
???「もしかせんでも玩具屋じゃのう」
フェリシア「わっ! あ、アナタはこのお店の人でしょうか!?」
???「じゃはははっ! 何言うよん? ウチはお前さん達と同んなじ記憶喪失の高校生じゃ」
今夜はここまでです。
若干修正
□■□■□■□
しばらく宿屋内の探索をした後、平さん達と別れ、私は赤沙さんと共に次の場所へ向かいました。
フェリシア「ここは、沢山の建物が並んでいますね」
赤沙「そこは服屋、あそこは雑貨屋、こっちは電器屋、向こうのは本屋……色んな店が並んでる。ここは商店街なのね」
赤沙「ま、どれも寂れてて品揃えはあんまり良くないみたいだけど」
私達が訪れたのは、これまた廃れた商店街。
私は試しに一つのお店に入ってみます。
フェリシア「ふむふむ、けん玉、トランプ、すごろくにビデオゲーム……ここはもしかして───」
???「もしかせんでも玩具屋じゃのう」
フェリシア「わっ! あ、アナタはこのお店の人でしょうか!?」
???「じゃはははっ! 何言うよん? ワシはお前さん達と同んなじ記憶喪失の高校生じゃ」
ボサボサの髪に無精髭、変な気崩しをした和柄の服装。
ぱっと見た感じ、赤沙さんとは別の意味で同年代には見えませんでした。
???「そうだ、お前さんとは挨拶がまだじゃったのう」
絵合「ワシは絵合ヒカル、紙芝居師なんてのをしとる者じゃ。よろしゅう頼む」
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被験者番号:0002
【超高校級の紙芝居師】絵合 ヒカル(エアワセ ヒカル)
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ポリポリとあご髭を掻きながら、絵合さんは右手を差し出し握手を求めます。
それに応じて、私も挨拶を返します。
フェリシア「私はフェリシア・カーティスと申します。こちらこそよろしくお願いします、絵合さん」
絵合「その格好、さてはフェリシアはシスターって奴かのう?」
フェリシア「正確には聖職者なので少し違いますが……まあ、そんな感じと思ってくれて構いませんよ」
フェリシア「紙芝居師……と言うのは、あの昔よく公園などで見かけたという……?」
絵合「そうそう! まあ、最近はめっきり減ってしもうたけれどのう」
絵合「ワシは子供の喜ぶ顔がめっぽう好きじゃけぇ、紙芝居師をやっとるんじゃ」
フェリシア「それは素晴らしいことですね! 私も人の幸せの為に聖職者をしているので、その気持ち分かります」
フェリシア「やっぱり子供の笑顔って良いですよね。心が救われる気がします」
赤沙「誰よッ!? 今、私のことを子供扱いした奴は!!」バッ!!!
フェリシア「誰も赤沙さんの話はしてないですよっ!」
というか、外に居たはずなのになんで聞こえてるんですか!?
地獄耳ですかっ!?
絵合「じゃっはっはっはっ! 赤沙は元気じゃのう! やっぱり子供は元気が一番じゃ!」
赤沙「絵合~ッ……あんた、覚悟しときなさいよ! いつか絶対殺したげるわよ!」
フェリシア「まあまあ、落ち着いてください赤沙さん」
私は怒りに我を忘れている赤沙さんを何とか宥めて、玩具屋を後にし、違う店に入ってみることにしました。
玩具屋の斜向かいのお店。
そこは商店街の中でも一層古めかしい佇まいをしている、古本屋のようでした。
赤沙「ここはまた、随分汚いわね……」
フェリシア「ですが色んな本が置いてありますよ? もしかしたら、ここが何処かを知る手がかりがあるかもしれません」
赤沙「はぁー……私、活字って苦手なのよね。ここはフェリシアに任せるわ」
???「『本をよく読むことで自分を成長させていきなさい。本は著者がとても苦労して身に付けたことを、たやすく手に入れさせてくれるのだ』」
辟易とした顔で本屋から出ていこうとする赤沙さんの背中に声がかけられます。
赤沙「……?」
???「ソクラテスの言葉でございます。無理にとは言いませんが、本を読むことで赤沙さんも成長できるのではないかと存じます」
赤沙「ふんっ、余計なお世話よ」
フェリシア「えっと、あなたも私達と同じ記憶喪失の方でしょうか?」
???「ニーチェ曰く、『自己について多くを語ることは、自己を隠す一つの手段でもあり得る』」
???「ですが私達はこれから協力していうことする間柄……隠し事はせず、簡潔に自己紹介を致しましょう」
本城「私は本城文架……珍しいかも知れませんが、文に十字架の架と書いて読み方はモカでございます」
本城「何卒よろしくお願い致します」
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被験者番号:0012
【超高校級の蔵書家】本城 文架(ホンジョウ モカ)
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涼しげな表情のまま、本城さんは綺麗な角度でお辞儀をします。
さらり、と流れる長髪は艶やかに澄んでいて、とても綺麗です。
フェリシア「あ、私はフェリシア・カーティスと申します。こちらこそよろしくお願いしますね本城さん!」
本城「トルストイ曰く『信仰は人生の力である』」
本城「フェリシアさんは聖職に携わる方とお見受け致します。貴女の信仰は貴女自身の人生をより力強くしてることでしょう」
本城「この先、何が起ころうとも……」
フェリシア「は、はぁ。…………?」
本城さんは私の目をのぞき込み、そう語ります。
彼女の目は私より先にあるどこかを見ているようで、何だか不思議な色をしていました。
本城「して、フェリシアさんは確か……ここが何処かを調べようとしていたのでございましたね」
本城「ですが残念な事に、この古本屋にはそのような情報の載った書物は無いようでございます」
フェリシア「ええっ? そうなんですか?」
本城「はい。先程全ての書物を拝読致しましたが、その殆どが現実的な情報の少ない物語や詩集などで占められてございました」
赤沙「あんた……ホントにここの本全部読んだの!? 何冊あると思ってんの!?」
本城「私は本の収集を趣味としていまして、この程度の冊数ならばものの数時間で読破可能でございます」
赤沙「し、信じらんない……うっ、想像しただけで目眩がしてくるわ……」
フェリシア「でも、手がかりが無いのは残念ですね……」
本城「『できると思えばできる、できないと思えばできない。これは、ゆるぎない絶対的な法則である』」
本城「パブロ・ピカソの言葉です。きっと手がかりは見つかるでしょう、貴女と私がそれを諦めない限りは」
フェリシア「……! ですよね」
フェリシア「よーし、私も頑張りますよ! そうと決まれば行きましょう赤沙さん!」
赤沙「はいはい、分かったから腕引っ張らないで!」
慣れない活字に目を回す赤沙さんを連れて、私は次の場所へ探索へ向かうのでした。
□■□■□■□
フェリシア「さて、次はあそこですね! 早速、探索頑張りましょう!」
赤沙「随分、張り切ってるわね」
フェリシア「本城さんはいいことを言いますね。諦めない限りは手がかりは見つかるんです……だから赤沙さんも、ね?」
赤沙「あんた簡単に影響されすぎでしょ……」
呆れる赤沙さんを置いて、私は街の端に離れて建っている一つの建物に近づきます。
フェリシア「あっ、ここってもしかして……」
ステンドグラスの窓。
屋根の上の十字架。
入口付近に置かれた天使像。
フェリシア「どう見ても教会じゃないですか!」
私は嬉々として教会の扉を開き、中に足を踏み入れます。
???「────あ゙? 何だテメェ……」
教会の中には男の人が一人。
その男は、あろう事か我が主を象った石像を倒し、その台座の上に無造作に足を投げ出して座っていたのです。
フェリシア「あ、ああ、あああぁああぁっ!!! な、なな、何をしてるんですか!?」
???「あ゙あ゙? チッ、うるせぇ女だな……」
フェリシア「神聖な物なんですから、ぞんざいに扱うと罰が当たりますよ!」
???「うるせぇっつってんだろ!! おい女……あまり俺をイライラさせるな」ギロッ
男は機嫌が悪いのか髪をムシャクシャと掻き毟り、私を睨んできました。
今夜はここまでです。
遅くなってしまったので今夜はお休みです。
明日、長めにやります。
フェリシア「そこから降りてください! あなたが降りたら私も静かにしますよ!」
???「チッ、生意気な女め……」スッ
やっと台座から降りてくれたと思ったら、その男はこちらに歩み寄ってきます。
──────懐から折り畳み式のナイフを取り出しながら。
フェリシア「えっ!?」
???「俺をイライラさせたテメェが悪いんだからなぁ……」
嗜虐的な笑を薄く浮かべる男は、手に持ったナイフを振り上げて、私の頭上に─────
フェリシア「きゃぁあああっ!!」
そして、そのまま勢いよく振り下ろして─────
───────キィンッ!!!!
???「あ゙?」
フェリシア「……えっ?」
ナイフは私にあたる直前で弾き飛ばされ、床を転がります。
赤沙「───はぁ、まったく危ないわね」
フェリシア「あ、赤沙さんっ!!」
ナイフを弾き飛ばしたのは赤沙さんでした。
彼女は私と男の間に現れ、手刀でナイフを弾いたのです。
フェリシア「あ、ありがとうございます、赤沙さん!」
赤沙「フェリシア。あの男には近づいちゃダメだから、気を付けなさい」
フェリシア「え? あの人は一体どなたなんですか?」
赤沙「あんた知らないの? 少し前にニュースをやってたじゃない」
フェリシア「す、すみません……私、世間に疎くって」
赤沙「あの男……空賀隼人はヒノマル航空881便ハイジャック事件の主犯格」
赤沙「そして約100人のも犠牲者を出した、最低最悪の凶悪犯罪者よ」
空賀「はっ……うるせぇチビ女だ……」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者番号:0006
【超高校級のハイジャック犯】空賀 隼人(クガ ハヤト)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フェリシア「き、凶悪犯罪者……ですか!?」
赤沙「そ。まあ少し前に警察に捕まって今は監獄にいる、はずなんだけど……」
空賀「チッ、興醒めだ……勝手に死んどけゴミ女共」
その場にペッと唾を吐き捨て、空賀という男は荒々しく教会を出ていきます。
フェリシア「……で、でもどうしてそんな人までこの街にいるんですか?」
赤沙「さあね、私にもわからないわよ」
赤沙「そもそも死刑判決はほぼ確定的って言われてる空賀が外に出られるはずもないのに……」
フェリシア「も、もしかして……あの空賀って人が私達をここに攫った犯人なんじゃ……」
赤沙「その可能性は高いかもしれないわね」
私は空賀という男が出ていった後の扉を見つめます。
ただでさえ記憶喪失で知らない場所にいて、さらに断崖絶壁に囲まれ帰り道も分からないっていうのに……
この上、凶悪犯罪者まで居るなんて……
考えれば考えるほど不安になってしまいます。
フェリシア「それにしても赤沙さんは凄いですね。あんな怖い人相手に勇敢に立ち向かって、私を助けてくれましたし」
赤沙「ふ、ふん! 大した事じゃないわよっ」
フェリシア「それにナイフを手で弾くなんて芸当……ただの子供にはできませんよ!」
赤沙「だから、子供扱いするなって言ってんでしょ……!」
フェリシア「ふふっ、冗談ですよ冗談」
赤沙「あんた、私をからかうのもいい加減にしなさい……殺したげるわよ!」
フェリシア「でも凄いっていうのは本当ですよ」
フェリシア「赤沙さん、もしかして武道でも習ってらっしゃるんですか? 体さばきが妙に決まっているというか……」
赤沙「……………………」
赤沙「…………別に大した事はしてないわよ」
赤沙「ほらっ! ぼさっとしてないで次行くわよ次!」タッタッタッ
フェリシア「あっ、待ってください赤沙さん!」
今一瞬だけ、赤沙さんの顔が冷たくなった気がしたのですが……どうしたんでしょう?
もしかして聞いてはいけないことを聞いてしまったのでしょうか?
私は少しだけ遅れて、赤沙さんの後を追うのでした。
□■□■□■□
???「うぬぅ……ここは何の建物であろうか?」
???「うーん、さっぱりね!」
とある大きな建物の前で2人の男女が会話をしているのを見つけました。
2人の体格は対称的。
片や筋骨隆々の大柄な男性、片や赤沙さんにも負けず劣らず背の低い女性です。
フェリシア「あの、どうかされたんですか?」
???「ぬ? ああ、また一人仲間が見つかったのだな」
フェリシア「あっ、はい! 申し遅れました、私はフェリシア・カーティスです。よろしくお願いします」
???「うぬ。これは礼儀正しきおなごであるな」
岩藤「私の名は岩藤益五郎。プロのレスラーをしている者だ」
岩藤「よろしく頼むぞ、フェリシア殿」ニッ
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被験者番号:0004
【超高校級のレスラー】岩藤 益五郎(ガンドウ マスゴロウ)
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ガタイの良さと厳つい顔つきから野蛮な人なのかと思ってしまいましたが、どうやら岩藤さんはそうでは無いようですね。
屈強な肉体に似合わぬ優しげな笑顔からは、彼の穏やかさと知的な雰囲気が感じ取れます。
???「あっ、アタイにもフェリシアちゃんに挨拶させてよ!」
岩藤さんと自己紹介をしていると、隣の女性も気さくそうな笑顔で会話に入ってきます。
鞠宮「アタイは鞠宮仁美! 岩藤がプロのレスラーならアタイはプロのボウラーさ!」
鞠宮「何か困った事があったら、ドーンとお姉さんに任せなさいな!」
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被験者番号:0013
【超高校級のボウラー】鞠宮 仁美(マリミヤ ヒトミ)
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鞠宮さんは握り拳で、その小柄な体躯に似合わぬ豊満な胸を叩いて頼もしさを誇示します。
フェリシア「ふふっ、はい! もしもの時はよろしくお願いしますね鞠宮さん」
赤沙「……ふん、ならこの街から帰れなくて困ってるのを何とかしなさいよ」
鞠宮「あははっ、ゴメンね赤沙ちゃん。お姉さんにも出来ないことはあるのさ」
フェリシア「もう、無理を言って鞠宮さんを困らせちゃ……めっ、ですよ? 赤沙さん!」
赤沙「……また! …………はぁ、もういいわ」
フェリシア「それで岩藤さん達は何を話しているんですか?」
岩藤「ぬぅ、この建物の事なのだが……」
そう言って岩藤さんは目の前の大きな円錐状の建造物を指さします。
鞠宮「これがねぇ、どこにも入口が見当たらないの! それで、どうしたものかと困ってた所なのよさ」
フェリシア「入口がない……ですか?」
私は改めてその建物を見つめます。
今までのレンガ造り等の古めかしい家屋と違い、妙に新しい感じの造りになっています。
窓も付いてないようで、中の様子を伺いみることは叶いません。
鞠宮「岩藤の全力パンチなら壁に穴あけられるんじゃないかい?」
岩藤「ふぬ、それはまあ、できるかもしれぬが……中に何が有るか分からぬ以上、無闇なことはせぬ方が良かろうな」
フェリシア「で、できるにはできるんですか……あ、あははは……」
私達がそんな風に話していると、建物の壁を見て回っていてた赤沙さんが、ふいに声を上げました。
赤沙「ねえ、そこの壁に何が書いてない?」
フェリシア「えっ? ホントですか!?」
赤沙さんが指さした壁に近づき目を凝らします。
すると、薄らとですが、文字のようなものが読めるではないですか。
岩藤「埃や土汚れ等で見えにくくなっていたのだな……これを見つけるとは赤沙殿のお手柄であるな」
フェリシア「凄いじゃないですか、赤沙さん!」
赤沙「ふんっ、それ程でもないわよ」
鞠宮「それで、なんて書いてあるのよさ?」
フェリシア「えーっと…………」
私は壁を凝視して、書かれている文字を読み上げます。
『Ultimate Laboratory Building 1』
鞠宮「あるてめっと? らぼ? それはなんて意味なのさ? 頭の悪いお姉さんにも分かりやすく教えてよ!」
岩藤「ふぬ……直訳すれば『究極の研究室棟』と言った所か」
フェリシア「“究極”とは一体何を示すんでしょうか? ここだけ他の建物と違いますし、何かあるのは間違いないと思うんですが……」
赤沙「1……ってことは第一研究室棟って感じ? もしかして、第二や第三もあるの?」
岩藤「いや、このような建物はコレ一つしか見ておらぬが……」
鞠宮「はえ~、皆頭良いのねぇ。お姉さんついて行けないわ」
ふと、建物の周囲を見渡した私はあることに気がつきます。
フェリシア「ここ、この建物の隣、何も有りませんね。ただ広い土地が余ってます……」
鞠宮「えっ? ああ、言われてみればそうさね」
岩藤「……! 成る程、そういう事であるか」
赤沙「そっか。だから第一なのね」
鞠宮「えっ? 何なに? 何なのよさ? お姉さんにも教えてよ!」
フェリシア「ほら見てください鞠宮さん、ここ、地面に細いロープが引いてあるんですよ」
フェリシア「ほら、丁度四角く、ブロックに分けるように」
鞠宮「あっ、本当ね」
岩藤「恐らく第二、第三の研究室棟を建てる予定地だったのであろう」
フェリシア「でも何かがあって建てられなくなった……やっぱりこの街が断崖絶壁で囲まれてしまったのと関係あるんでしょうか?」
赤沙「はぁ……私達、どうやら想像よりヤバいことに巻き込まれてるみたいね」
鞠宮「ふむふむ。まあ、良く分からないけど大変みたいね」
鞠宮「でもこういう時こそ元気を出さなきゃなのよさ! ほら、お姉さんと一緒に頑張ろー!」
赤沙「ったく……お気楽なんだから」
フェリシア「でも確かに元気を出すのは大事ですよね!」
赤沙「……こっちにもお気楽バカがいたわね」
鞠宮「フェリシアちゃんは話がわかるわね~! よーし、いっちょ掛け声でもしましょっかね!」
フェリシア「はいっ!」
鞠宮「ここから帰る為に協力して頑張るぞー!! おー!!」
フェリシア「おー!!」
私と鞠宮さんは手を天高く挙げ、声を合わせます。
赤沙「はぁ……バカみたい」
岩藤「ぬははっ、まあ良いではないか。常に暗い気持ちでいるよりもな」
ひとしきり鞠宮さんと叫びあった後、私は赤沙さんと共に次の場所へ向かうのでした。
□■□■□■□
ひと通り街を見て回って、最後に街の中央にある場所へと辿り着きました。
辿り着いた、のはいいのですが……
フェリシア「えっと……」
私は立て札と目の前の建物とを何度も見比べては、首を傾げます。
フェリシア「これが、その、お城、なんですか?」
『ネフティス・キャッスル』
立て札にはそう書かれていましたが、目の前の建物はキャッスルと言うには余りにも小さくて……
赤沙「どう見ても掘っ建て小屋って感じね」
フェリシア「とりあえず中に入ってみましょうか?」
今にも壊れそうな扉をゆっくりと開け、私はその中に入ります。
中は薄暗く、嫌な臭いが立ち込めていました。
フェリシア「中も狭くて……あっ、ハシゴがありますよ!」
マンホールの様に床に丸く穴が空いていて、地下へと続く長いハシゴが伸びています。
赤沙「地下があるのね……じゃあ、キャッスルってのはもしかして……」
フェリシア「降りてみましょうか」
細いハシゴなので少し足元が不安ですが、なんとか降りられそうです。
カタン…カタン…カタン…
ある程度降りると、開けた空間に出ました。
フェリシア「あっ…………!」
そこで私はここがキャッスルと名付けられた理由を知るのでした。
今夜はここまでです。
煌々と輝くシャンデリア。
大理石の床に敷かれた真紅の絨毯。
正面に飾られた大きな肖像画には、ドレス姿の美しい女性が描かれています。
フェリシア「地下にこんな場所があったんですね」
赤沙「成る程、ここがネフティス・キャッスルって訳ね」
フェリシア「それにしても広いですね……廊下の先には部屋が沢山あるみたいですよ」
赤沙「とりあえず片っ端から調べるわよ!」
私達はネフティス・キャッスルの奥へと進んでいきます。
ガチャッ
フェリシア「…………うーん」キョロキョロ
フェリシア「ダメです。ここも空っぽですね」
赤沙「また客室? これで一体いくつ目よ……」
廊下に並ぶ扉を端から順に開けていきますが、未だ客室以外の部屋を見つけられません。
客室は簡素なベッドとクローゼットがあるシンプルな作りです。
ただ、1つ異質な点が。
どの部屋にも監視カメラとモニターが設置されているです。
まるでこの部屋の主を見張って逃さないかのように。
その後も探索を続けると客室は全部で16部屋あることが判明しました。
フェリシア「16部屋……宿屋もそうでしたが、私達の人数と一致してますね」
赤沙「私達の為に作られた……って、そんなわけないわよね」
フェリシア「……とにかく反対側の廊下も見てみましょう! あっちはどうやら客室じゃないみたいですよ」
赤沙「そうね。分からないことをいつまでも考えてても仕方ないし、探索を進めるのが先ね」
一度、肖像画のある玄関ホールまでもどり、反対側の廊下へと足を運びます。
フェリシア「まずはここですね」
ガチャッ
扉を開け、中をのぞきます。
白いクロスの掛けられた縦に長いテーブル。
古めかしさは相変わらずですが、優雅で気品溢れるその部屋は、見たところ食堂のように思えます。
フェリシア「ここは……食堂ですか」
赤沙「結構いい雰囲気だけど、わざわざ食事のたびに地下に降りるのはゴメンね」
赤沙「地上のレストランで充分でしょ」
フェリシア「あはは……確かにそうですね」
それに……ここにも監視カメラがあります。
やっぱり誰かに見張られてるかもしれない場所は、少し嫌ですね。
フェリシア「えっと、じゃあ次は隣の部屋を……」
ガチャッ
???「うあっ!? 誰っ!?」ビクッ!
私が隣の部屋に向かおうとすると、直後に扉が開かれ中から男の人が出てきました。
フェリシア「あっ、先客がいらしたんですね!」
???「な、なんだ……ぼくと同じでこの城を探索しに来た人っスか」
???「あ、いや! ビビってなんかないっスよ? ぼく度胸だけは1人前なんス!」
???「昔、山で熊に襲われた時だって、慌てず冷静に死んだフリをしたっスから!」
赤沙「それビビりすぎで気絶したってオチじゃなくて?」
???「ぎ、ぎくぅ!!」
???「な、何でバレ……じゃなくて! そんな事はどうでもいいんスよ!」
???「赤沙先輩にはしたっスけど、そっちの彼女にはまだ自己紹介してないっスよね?」
並木「ぼくは並木崇っス! ぼく、色んなバイトして結構色々出来るんで、きっとお役に立てる事もあるはずっス」
並木「よろしくおなしゃっス! 先輩!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者番号:0010
【超高校級のアルバイター】並木 崇(ナミキ タカシ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
斜め45°の綺麗なお辞儀を繰り出す並木さん。
フェリシア「あっ、私はフェリシア・カーティスと申しますけど……」
並木「カーティス先輩っスね」
フェリシア「あの、その先輩というのは……?」
並木「ぼく、基本的に人の事、先輩って呼ぶようにしてるんスよ」
並木「だってほら、何かとお世話になるかもしれないっスから」
フェリシア「でも少し恥ずかしいですよ……同年代ですし」
フェリシア「せ、せめてカーティスではなくて名前で呼んでください」
並木「そうっスか……了解っス! えっと、フェリシア先輩!」
先輩……ですか。
なんだか呼ばれ慣れてなくてむず痒い気分です。
赤沙「それで、あんたこの中見てきたんでしょ? どうだったの?」
並木「それが、この部屋スゴいっスよ!」
並木「結構広めの倉庫になってて、この世の全てを置いてきたんじゃないかってほど何でもあるんス」
並木「前にKumazonの仕分けのバイトやってた時を思い出すっスね……」
フェリシア「へぇ、倉庫ですか」
私は並木さんの背後のドアの隙間をちらっと覗き見ます。
天井まで伸びた大きな棚に、所狭しと様々な物が並べられているのが見えました。
赤沙「ま、色々揃ってるのは便利でいいわね。商店街にはろくなもの無かったし」
赤沙「この街で暮らすのにも色々物が必要でしょうし」
並木「あっ、やっぱ、ここで何日か過ごさなきゃならないんスかね?」
赤沙「どう見てもヤバい事に巻き込まれてるみたいだし、すぐには帰れないでしょうね」
フェリシア「それは困りましたね……」
並木「うあー! 明日も明後日もシフトが詰まってるんスよ! どう店長に言い訳すれば……!?」
両手で頭を抱える並木さん。
しかし、私にはしてあげられることが有りません。
フェリシア「なるべく早く帰れるよう頑張りましょう! ね?」
並木「うぅ……それしか無いっスよね」
並木「トホホ、無断欠勤しない事だけは一人前のつもりだったんスけどね……」
落ち込む並木さんを励ました後、私達は次の部屋に向かいました。
今夜はここまでです。
諸事情により、今夜はお休みです。
ガチャ
フェリシア「……! この消毒液の臭いは、もしかして……」
廊下の突き当り、最後の部屋の扉を開けると、薬品の匂いが漂ってきます。
赤沙「薬品棚にベッドに……医務室ってところね」
フェリシア「これだけしっかりとした医務室があれば、多少の怪我は平気そうです!」
私はキョロキョロと見回りながら進み、医務室の奥で一人の女性を見つけました。
フェリシア「あ! あなたも私達と同じ記憶喪失の方ですね? よかったら自己紹介を──」
???「……ッ!? あ、ああ……人が来ていたのですわね。気づきませんでしたわ」
その女性は何やら医療品の入った棚を探っていたようで、私が声をかけると慌ててこちらを向きます。
フェリシア「何かお探しだったんですか?」
???「い、いえ! 何でもありませんわよ?」
???「そ、それより自己紹介でしたわね……こほん」
白墨「わたくしは日本白楼書道会師範・白墨朧の長女、白墨桜でございます。よろしくお願いしますわ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者番号:0007
【超高校級の書道家】白墨 桜(シラスミ サクラ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
紅色の袴を履いた和風美人の白墨さんは、キリッとした表情で挨拶をしてくれます。
フェリシア「あ、私はフェリシア・カーティスと申します。よろしくお願いしますね」
フェリシア「ええと、白墨さんは書道をやられる方なんですか?」
白墨「ええ、まあ……白墨家は代々書道の師範を務めてきた家ですので」
白墨「わたくしもお父様の跡を継ぎ、立派な書道家となるべく日々邁進していますわ」
そう語る白墨さんは、確かに書道家としての気風と自信に満ちているように見えます。
ですが。
フェリシア「ところで、先程は何を探していたんですか?」
白墨「そ、そ、それはどうでもいい事ですわ! 全然何も探してないんですし……!」
一瞬にして彼女の気風と自信はどこかへ行ってしまいました。
うーん、隠し事は苦手なタイプなんでしょうね……
赤沙「ねえ、もしかしてこれ? あんたが探してたのって」
白墨「えっ!? な、なな何の事かしら?」
赤沙さんが手にしていたのは、先程白墨さんが探っていた棚から出した物。
───白い衛生用マスクでした。
フェリシア「マスク!? もしかして白墨さん、どこかお体の調子が悪いんですか!?」
白墨「そうじゃ……そうじゃないですわ! ただチョット懐かしかったというか何というか……」
フェリシア「…………“懐かしい”?」
白墨「そ、そんな事よりほら、見てください! こっちの薬品棚、凄く品揃えが豊富ですわよ! ほら!」
フェリシア「は、はぁ……」
露骨な話題の変え方をする白墨さんに、私はこれ以上深く追求しない方が良いだろうと悟ります。
人の話したくない事をわざわざ聞くことはありませんしね。
私は白墨さんの言った薬品棚に目を向けます。
フェリシア「わっ、ホントに一杯ありますね。これ全部薬なんでしょうか……」
薬品棚には茶色の瓶がずらりと並べられていています。
ですが、その殆どが外国語(ドイツ語でしょうか?)で書かれており、何という薬なのかすらわかりません。
赤沙「これは鎮痛剤、こっちは睡眠薬、フェリシアが今持ってるのは風邪薬」
フェリシア「えっ、赤沙さん読めるんですか?」
赤沙「ふん、これぐらい普通よ。ていうかフェリシアは外国人の癖して日本語しか読めないの?」
フェリシア「わ、私は物心ついた時から日本育ちですから! しょうがないんですよ!」
赤沙「ふふーん、自慢じゃないけど私は20ヶ国語が読み書きできるわ」
珍しく得意げな笑顔を見せふ赤沙さんは、年相応の表情で可愛らしいです。
フェリシア「赤沙さんは子供なのに凄いですね!」
赤沙「…………あんたワザとでしょそれ。殺したげるわよ」
白墨「では、赤沙さん……この瓶に入っているのは何ですの?」
白墨さんが差し出したのは紫色のラベルが貼られた小瓶でした。
そのラベルに書かれた文字に赤沙さんは目を通します。
すると、ふいに赤沙さんの目が見開かれて。
赤沙「─────これは“毒薬”よ」
白墨「ど、毒薬!?」
フェリシア「毒薬って……それ本当なんです!?」
赤沙「嘘言ってどうすんのよ。これは正真正銘の毒、しかも非常に危険な奴ね」
白墨「ど、毒薬だって思ったら、きゅ……急に手が震えてきましたわわわわ……」ガクガク
赤沙「ちょっと! 危ないからさっさと棚に戻しときなさい!」
危なげな手つきで何とか瓶を元あった場所に戻した白墨さん。
フェリシア「それにしても、何でこんな所に毒薬があるんでしょうか」
赤沙「さあね。ま、とりあえず触らないようにしときなさいよ。素人が触ると危険なんだから」
白墨「そうですわね。もし割ってしまったら大変ですものね」
赤沙「特に白墨、あんたは気をつけなさいよ」
白墨「な、なぜ名指しで注意されるのかしら……」
医務室に毒薬がある。
その事実に私の心はひどく不安に襲われます。
何か……凄く嫌な予感がしてしまうのです。
杞憂だといいのですが……
フェリシア「───っと、これでネフティス・キャッスルの中は一通り探索し終えましたね」
赤沙「……そろそろいい時間ね。じゃ、広場に行くわよ」
フェリシア「あっ、そうでしたね、広場に集合なんでしたっけ。皆さん集まるんですよね?」
赤沙「そ。全員で探索の成果を報告し合うってわけ」
フェリシア「あれ? そういえば私まだ14人しか会ってないんですが、もう一人の方はどちらに……?」
赤沙「広場に行けば会えるでしょ。ほら、さっさと行くわよフェリシア!」スタスタスタ……
フェリシア「あっ、待ってくださいってば赤沙さん!」タッタッタッ……
赤沙さんを追いかけ、私はネフティス・キャッスルを後にし、集合場所である街の真ん中にある広場に向かいました。
今夜はここまでです。
すみませんが今夜と明日はお休みです。
明後日、長めにやります。
□■□■□■□
チョロチョロと水の流れる音は、広場の中央に置かれた噴水から聞こえるものでした。
石畳の広がる地面には薄く苔が生え、この広場もかなり年季の入った物だと教えてくれます。
フェリシア「ここが集合場所の広場……ですか」
フェリシア「まだ、他の方達はいらっしゃってないようですが…………」
私はキョロキョロと首を回して周囲を見渡します。
フェリシア「……あっ────」
そこで私は──彼に出会ったのです。
雪のように白い肌。
青みがかった綺麗な髪。
長いまつ毛の切れ長な目には紅い瞳が輝いていて。
その整った女性的な顔立ちからは、ある種の神聖性すら感じられます。
頭上から優雅に舞い降りてくる彼は、まるで空中で踊る天使のよう。
そんな彼は私の視線など気にする素振りすら見せず、くるり、と空中で体を捻って可憐に一回転すると、そのまま──────
────綺麗に噴水の水溜まりへと落ちていきました。
……ズシャァァァアアッッ!!!!
……………………………………
…………………………………………
フェリシア「って、きゃああああっ!? ひ、人が落ちましたよっ!?!?」
フェリシア「どどど、どうしましょう赤沙さん! あの方、大丈夫でしょうか!?」
赤沙「さあね」
フェリシア「わ、私! 様子を見てきますっ!」タッタッタッ
赤沙「はぁ……別に行かなくて良いのに」
私は駆け足で噴水へと近寄り、中に落ちた人に声をかけます。
フェリシア「も、もしもーし……だ、大丈夫ですかー?」
???「………………」ムクリ
???「………………平気」
何事も無かったかのような顔で、彼は起き上がりました。
フェリシア「ご無事なら良いんですけど……どうしてこんな事に?」
???「……かった」
フェリシア「えっ?」
???「噴水の中に出口が有るかと思ったけど、無かった」
フェリシア「……へ?」
何を言っているんでしょう?
ま、まさか本当にこの中に出口があると思って飛び込んだとでも言うんでしょうか……
赤沙「こいつと話しても埒が明かないわよ。こいつ真性のバカだから」
???「……? ボクは馬鹿じゃない」
赤沙「さっきからヘンテコな場所に出口をさがしては考えなしに飛び込むんだから」
赤沙「流石に崖下に飛び降りようとした時は止めたけど……ホントいい加減にしてよね」
赤沙さんの言う事が本当ならこの人は……何というか……随分、挑戦的な方なようですね。
???「でも、試さなきゃ分からない」
???「ボクは本気で出口を探してる。本気だから危険は承知の上だよ」
フェリシア「で、でも、いきなり飛び込む必要は無いですよね? 出口があるか確認してからでも……」
???「……………………!」
???「………………それは、そうかも」
まさか、気づいていなかったと言うんですか……
赤沙「ね? ただの馬鹿でしょ?」
フェリシア「あ、あははは……」
私は何とも言えない乾いた笑いで答えるしかありませんでした。
フェリシア「あれ? その膝、怪我しちゃってるじゃないですか?」
ふと彼の足を見た私は、その膝が擦りむけていて出血があることに気がつきました。
おそらく先ほどの噴水ダイブの時に怪我したんでしょう。
???「ん、ホントだ。でも大した事はない」
フェリシア「駄目ですよ! そのままにして膿んだりしたらどうするんですか!?」
フェリシア「あっ、そうだ! ちょっと待ってくださいね」
???「……?」
私はゴソゴソとポケットからある物を取り出し、目の前の彼に差し出します。
フェリシア「これ、絆創膏です。もしものことがあったらと考えて、ネフティス・キャッスルの医務室から拝借しておいたんです」
フェリシア「良かったら使ってください」ニコッ
???「……………………」
フェリシア「あ、そう言えば自己紹介すらしてませんでしたね」
フェリシア「私はフェリシア・カーティスと申します。よろしくお願いしますね!」
彼は差し出された絆創膏と、私の顔を交互に見つめてから答えます。
???「……ありがとう」
北見「ボクは北見。フィギュアスケーターの北見青真」
北見「よろしく、フェリシアさん」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者番号:0005
【超高校級のフィギュアスケーター】北見 青真(キタミ セイマ)
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そう言うと、北見さんは絆創膏を受け取ります。
表情はあまりなく、どちらかと言うと冷たいような印象を受ける北見さん。
しかも、やる事は過激というか、一見すると考えなしのような行動ばかり。
ですが、きっと本当は話せば通じる、心ある人なんでしょう。
絆創膏を持つ彼の姿を見て、私はそう思うのでした。
□■□■□■□
しばらくして、他の人達も広場に集まってきました。
フェリシア「ひぃ、ふぅ、みぃ……うん! 16人揃ったみたいですね」
赤沙「そうね、これでようやく探索の報告ができるわ」
小さく頷く赤沙紅葉さん。
絵合「じゃはははっ、にしても集まると結構な人数じゃのう」
顎鬚を撫でて笑う絵合ヒカルさん。
江森「………………そう? むしろこれしかいないんだね」
ぼそりと呟く江森千草さん。
岩藤「確かに我々しか街にいないのは異常事態であるな」
真剣な顔で腕を組む岩藤益五郎さん。
北見「ボクが調べた限り、出口も見当たらないし」
淡々と告げる北見青真さん。
空賀「………………ちっ、イライラするぜ」
一人離れて舌打ちする空賀隼人さん。
白墨「で、出口がないなんて困りますわ! わたくし早く帰らなくてはいけないのに……」
困り顔で嘆く白墨桜さん。
平「と、とにかく落ち着こ? ね? 白墨ちゃん」
笑顔でなだめる平さつきさん。
戸馳「ま、泊まる場所とかはあるみたいだしマックス大丈夫っしょ」
楽観的な態度をとる戸馳明起さん。
並木「それに向こうの城の中に、雑貨品も山ほどあったっスよ」
元気よく報告する並木崇さん。
冬芽「だが、このままという訳にもいかないだろう」
冷静に言い放つ冬芽凉水さん。
本城「そうでしょうね。私達を攫った犯人の目的も判明してございませんし」
静かに思案する本城文架さん。
鞠宮「やっぱりアタイ達は攫われたのかい? いったい誰がそんな事をしたのよさ!」
まだ見ぬ犯人に憤慨する鞠宮仁美さん。
夢原「うぅ……誘拐なんて怖いデスが、私はチーちゃんと一緒なら耐えられますデス(`・ω・´)キリッ」
隣の江森さんに抱き着く夢原蕩子さん。
路「ケケケ……慌てなくてもじきに犯人側から何かあるはずだゼ」
余裕な表情を浮かべる路景雷さん。
今夜はここまでです。
遅くなってすみません、今夜はお休みです。
16人もの人間が集まる場は、徐々に騒がしくなります。
皆さん冷静に見えますが、やはり不安や恐れがあるのでしょう。
見知らぬ廃墟街だとか、記憶喪失だとか、断崖絶壁に囲まれて帰れないだとか。
私だって恐怖で頭がどうにかなりそうなほどです。
ですが、私は聖職者です!
聖職者たるもの皆さんの心の支えとなるよう、落ち着かなくては!
その後も議論が続き、やはりと言うか、結局この帰る方法は見つかっていない事を改めて知ります。
並木「うーん、やっぱり簡単には街から出られないって事っスか」
戸馳「こうなったら決死のマックスジャンプで崖を超えるしかないって!」
夢原「そんなの絶対死んじゃうデスよッ!?Σ\(゚Д゚;)」
赤沙「そもそも断崖絶壁を超えられたとしても、ここが何処か分からないし、無事に帰れるかは疑問ね」
絵合「そうじゃのう。どう見ても、日本とは思えんしの」
平「日本じゃない……あ、海外旅行だと思えば案外楽しいかも…………って、そんなわけないよね、あはは……」
鞠宮「それで、これからどうするのさ? また探索するのかい?」
北見「今度こそ崖下に出口がないか調べよう」
フェリシア「お願いですから、それはやめてくださいね!」
岩藤「ふぬ……今は待つべきかもしれぬのだ」
本城「『待てば海路の日和あり』とも言いますが、待つべきとまで言い切る根拠はあるのでございますか?」
岩藤「これだけの人数をまとめて誘拐など、かなり大掛かりな犯罪と見て間違いない」
岩藤「ならば犯人側からの要求や主張が必ずあるはず……ならば今は待ちに徹して────」
そう、岩藤さんが言った直後。
まさに彼の言葉通りに“ソレ”が私達の前に姿を現しました。
ですが、それは私達の常識には無い、まさに非常識の権化とすら言える物だったのです。
???「うぷぷぷぷぷ……そろそろボクの出番みたい」
???「オマエラの困り顔にも飽きてきたし、いっちょ始めますか!」
何処からともなく声が聞こえます。
明るく子供のようですが、何処か不気味さが拭えない奇妙な声。
そして“ソレ”は広場の中央、噴水の先から飛び出しました。
モノクマ「ボクはモノクマ!」
モノクマ「オマエラ、超高校級の生徒を支配する学園長にして……」
モノクマ「この絶望の街『ネフティスタウン』の王様なのだ!」
冬芽「…………………………………!」
並木「…………………………えっ?」
岩藤「…………………………なっ?」
赤沙「…………………………は?」
突如現れた“ソレ”に私達は開いた口が塞がりません。
それもそのはずです。
モノクマと名乗った“ソレ”は自律して動いて喋る、クマのぬいぐるみだったのです。
夢原「ぬ、ぬぬぬ、ぬいぐるみが喋ってるデスΣ(゚Д゚ υ)!!」
絵合「なんじゃあ!? このヘンテコなタヌキは!?」
モノクマ「タヌキじゃなくてモノクマだってば!!」
平「モノクマ……ちゃんですか。えへへ、何だか可愛いかも」
江森「………………………………趣味わる」
路「ケケケ……こいつは面白くなってきたゼ」
冬芽「キミ……モノクマと言ったな」
冬芽「僕らをこんな不愉快な場所に連れてきたのはモノクマ、キミの仕業か?」
モノクマ「うぷぷぷ、さあどうだろうね?」
冬芽「何の為にこんな事をする?」
白墨「そ、そうですわ! わたくし達を閉じ込めて何をする気ですの!?」
モノクマ「えー、もう発表しちゃうの? もうちょっと焦らしてからでも……」
冬芽「早く答えた方がいい」
冬芽「その理由は僕は今、機嫌が悪いからだ」
眉間に皺を寄せ、ギロリとモノクマを睨む冬芽さん。
ですが、モノクマはそれをものともせず、あっけらかんとした口調で返します。
モノクマ「まったく、しょうがないなぁ」
モノクマ「冬芽クンはソーローで我慢できないみたいだから、早速だけど発表しちゃおっか」
モノクマ「ずばり! コロシアイ実力試験でーす!」
フェリシア「こ、コロシアイ……?」
コロシアイ……殺し合いですかっ!?
フェリシア「な、何を言ってるんですか? コロシアイなんてそんな……」
鞠宮「じょ、冗談はやめてよね! そんなふざけた事があるわけ……」
モノクマ「冗談? ふざけた事?」
モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷ……あーはっはっはっ!!」
モノクマ「ボクは本気だよ? 本気でオマエラにコロシアイをさせるつもりだよ?」
若干ミス
モノクマ「えー、今回オマエラ、超高校級の生徒達にやってもらうのは─────」
モノクマ「ずばり! コロシアイ実力試験でーす!」
フェリシア「こ、コロシアイ……?」
コロシアイ……殺し合いっ!?
フェリシア「な、何を言ってるんですか? コロシアイなんてそんな……」
鞠宮「じょ、冗談はやめてよね! そんなふざけた事があるわけ……」
モノクマ「冗談? ふざけた事?」
モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷ……あーはっはっはっ!!」
モノクマ「ボクは本気だよ? 本気でオマエラにコロシアイをさせるつもりだよ?」
怪しく光る赤い瞳は、不気味に、そして絶望的に私達を射抜きます。
ぞくっ、と背筋が悪寒が走ります。
モノクマ「ルールは簡単! 誰にも知られないように他の人を殺せばいいだけ!」
モノクマ「殺し方は自由! 刺殺でも撲殺でも斬殺でも焼殺でも轢殺でも圧殺でも絞殺でも銃殺でも毒殺でも……」
モノクマ「お好きな殺し方で、お好きなように! 殺って殺って殺りまっくちゃってくださーい!」
モノクマ「エクストリームでエキサイティングなエグザミネーション!」
モノクマ「それがこのコロシアイ実力試験なのでーす!! あーはっはっはっはっ!!」
邪悪な笑い声が広場中に響き渡ります。
それは私達に、恐怖と混乱と苛立ちをもたらしました。
戸馳「な、何だよコロシアイって!? 本気なのかよ!? マックス意味不明だって!!」
平「じょ、冗談に決まってるよね……私は信じない、信じない……」
北見「コロシアイ……まさかそれがこの街から出る方法?」
モノクマ「その通り! このコロシアイ実力試験を見事合格した生徒は、ネフティス街の外の世界に帰ることが出来るのです!」
本城「なるほど、弱肉強食……と言いたい訳でございますか」
並木「じゃ、じゃあ誰かを殺さないと家に帰れないんスかっ!?」
岩藤「皆、落ち着くのだ! まだモノクマの言うことが本当と決まったわけでは……!」
モノクマの言葉に反応し、騒ぎ始める皆さん。
そんな皆さんの横をすり抜け、私はモノクマの前に向かいます。
私はもう我慢できなかったのです。
フェリシア「…………ないで下さい」
モノクマ「ん? 何か言った? フェリシアさん」
フェリシア「ふ、ふざけないで下さい!!」
フェリシア「コロシアイなんて……そんな酷い事、私が絶対に許しませんから!!!」
今夜はここまでです。
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