鞠莉「ダイヤの知らないダイヤのはなし」 (34)




ダイヤ「鞠莉さん?食後のお風呂ですが私がお先に頂いてよろしいですか?」

鞠莉「ん?全然OK!ゆっくり浸かってていいわよ!」ゴロゴロ

ダイヤ「鞠莉さんに根っこが生える前には上がりますわね。それでは。」

鞠莉「いってらっしゃ~い♪」フリフリ

~~~

鞠莉「ふふ…ダイヤと同居してるのねぇ…あのダイヤと…」ニヤニヤ

鞠莉「高1の時の私じゃ想像もしなかったろうなぁ…、留学してる時の私もだけどね♪」

鞠莉「ダイヤったら…あんなに私のこと好きなくせに無自覚だったのよね…、ほんと硬度10って感じよ…」ポワポワーオ




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…あれは、私たちが3人でAqoursをやってた後の話なんだけどね?

そうよ、私が留学してるときのコト。この前ダイヤに覚えてるかって聞いたらそういえばそんなことも…って言われちゃったの。ひどいわよねぇ?


鞠莉「…うん、うん分かってるわ、そんなに心配しなくていいから…、電話の回数も減らしてくれると嬉しいわね。」

鞠莉「うん、それじゃ。」ブチッ

鞠莉「はぁ……、パパったら週に何回電話かけてきたら気が済むのよ…、別に一人でなんとかできてるのに…」


私は日本を旅立って、パパたちと一緒に暮らすっていう手もあったの。でも、心の整理もつかないままこっちに来ちゃって。…二人を見返してやろう、一人でも立派に何もかも出来るからって、あの頃迷惑を掛けちゃった私とは違うんだっていつか知ってもらうために、一人で暮らすことにしたの。



鞠莉「まぁ…言葉で困ることもないし、資金繰りに困ることもないから親のおかげで楽してると言えば楽してるんだけどね。」

鞠莉「…ダイヤ…、果南…どうしてるかな。」

鞠莉「あー頭が重い…、今日は寝ようかな…」



起きてから体が重くて…、私初めて向こうで風邪引いちゃったの。ずっと寝込まなきゃいけないけど…一人だから治療も全部一人でやらなきゃいけない…

はずだったんだけどね?


鞠莉「ん…、なにこれ…体が重っ…」

鞠莉「はぁぁ風邪かぁ…、昨日電話で大丈夫って言った手前パパに人を呼んでもらうわけにはいかないのよね…」

鞠莉「…?メール来てる。」

鞠莉「パパから…、『しばらくの間、そっちに人が来るから部屋は綺麗にしておくんだぞ』って…誰なのかを言えってもんでしょ…はぁ…」

鞠莉「…ちょうどよく風邪も引いてるし適当に理由つけて帰ってもらおう…」




ジリリリリリリ


鞠莉「噂をすれば…I'll coming...」ノソノソ

ガチャ

鞠莉「ハーイstranger…「こんにちは、鞠莉さん。」


鞠莉「…え」


「あら…見たところ重い風邪のようですわね、無理に起こさせて申し訳ありません。」



鞠莉「…んで…」

「?どうしました?」

鞠莉「っなんでダイヤがここにいるのよっ!!?」

ダイヤ「何故と言われましても…私が来たいから来ただけで…」

鞠莉「なんでっ…なんでよぉ!!!うわぁぁぁぁん!!!」

ダイヤ「ちょっと、玄関で崩れ落ちるのはやめなさいな…、とりあえず中へ…」






~~~

鞠莉「…そういえば、果南は?」

ダイヤ「果南さんは…、ついてくるつもりだったのですが、ダイビングショップを経営しているおじい様が怪我をなさったようで、その代わりにと内浦にとどまっています。」

鞠莉「正直会いたくなかったから丁度よかったかもね…」

ダイヤ「…」

ダイヤ「…では、私も鞠莉さんの風邪が快方に向かい次第帰ることにいたしますわ。会いたくなかったでしょうし。」

鞠莉「…そうね。」

鞠莉(…今二人と会って話しても関係は修復出来なさそうだもの…)




ダイヤ「ときに、鞠莉さん。」

鞠莉「なに?」

ダイヤ「私がここへ来た理由、分かります?」

鞠莉「さぁ…パパに呼ばれたんじゃないの?」

ダイヤ「いえ、来たのは私自身の意思ですわ、その手段として鞠莉さんのお父様に掛け合いましたの。」

鞠莉「…じゃあ分からないわ、頭も回らないし。」

ダイヤ「それもそうですわね、その話はまた後程にして朝食にしましょう。きっとまともな料理もしていなかったのでは?」

鞠莉「失礼するわね…、ちゃんとレトルトくらい作れてるわよ!」

ダイヤ「…おかゆでも作ってさしあげますわ。」

鞠莉「……ありがと。」






~~~


ダイヤ「ほら、思った通り荒れ果てたキッチンで…、鞠莉さんの食生活が危ぶまれますわね…。」ハァ

ダイヤ「とりあえず持ってきた米を仕掛けて…と。」

ダイヤ「……片付けでもしてさしあげますか。」

~~~



鞠莉「なんでダイヤがここに来たんだろ…」

鞠莉「嬉しくないわけじゃないけど…会いたくないのもホントのコトっていうか…」

鞠莉「弱ってる私を見せたくない…のかな。」

鞠莉「はぁ…風邪引いてると変な思考になるから嫌なのよね……」



ダイヤ「鞠莉さーーん、これはさすがに捨てていいんじゃありませんの?期限の切れた菓子パンなんて…」

鞠莉「え?それは勿体無いことしちゃったわね…、ってなんで片付け始めてるの!?」

ダイヤ「なんでって…!こんなに汚いキッチンでまともな料理が出来ると思っていますの!!?日本で暮らしていた時くらいには綺麗に…!」

鞠莉「私はその環境で落ち着いてたの!勝手に触らないでよ……!」

ダイヤ「貴女に栄養のある食べやすい料理を作ろうとしているんです!貴女を想って作ろうとしているんですから聞き入れませんの!?」

鞠莉「えっ、私を想うって…」ピクッ





ダイヤ「全く鞠莉さんはいつもいつも…」クドクド

鞠莉「それって…、そんなわけないか、硬度10がね…」

鞠莉「私の気持ちも気づかないくせに…」ボソッ

ダイヤ「とにかく!病人の鞠莉さんは私に任せて眠っていなさい?分かりましたか?」

鞠莉「うん分かった分かった。ありがとね。……はぁ…」



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ダイヤ「さ、出来ましたわよ、おかゆだと物足りないでしょうから…卵を溶いて、ねぎを入れて雑炊のようにしましたけど食べられますか?」

鞠莉「…食べる。」

ダイヤ「私の気持ちがこもった逸品ですわ、ご賞味あれ。」

鞠莉(また思わせぶりなこと…)

鞠莉「……。うん、おいしいよ。」

ダイヤ「ふふっ、よかった。」ニコッ


ダイヤってばずるいよね、私の想いも知らないでさ、私の大好きな笑顔を見せてくるの、私のしてほしいことしてくれるの、ダイヤにそういう気がないって分かってるのに…心が痛むばかりでほんとずるいんだから……






鞠莉「…っなんなのよ…」

ダイヤ「ん?どうかしました?」

鞠莉「ううん…なんでもないよ。」

ダイヤ「そうですか…、あ、今日はちゃんと安静にしてくださいな、面倒は私が見ますので。無理に動き回ったら承知しませんよ?」

鞠莉「……」

ダイヤ「元気に…なってくださいね。」

鞠莉「ありがと。」

ダイヤ「私の大切な人なのですから、厳しめに面倒見ますわよ?」フフッ


鞠莉「またそういうこと……」



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私は昔からダイヤが大好きだった。初めて会った時の、果南の陰に隠れてた可愛くて、守ってあげたくなるお嬢様だった時から。

一緒にいられてる環境に満足して…それ以上を望むことは無かった。手弱女なお嬢様が未来を背負って立つ凛々しい名家の娘に育っていくところを近くで見られたから、そのままでよかったの。

そのままでよかったって…思ってたけど。




こっちに来てから隣にいるのが当たり前だと思ってたことをすごく後悔したわ。もし私が向こう見ずでも想いを伝えてたら違う未来もあったんじゃないかとかね。

好きな気持ちを抑え込もうとしたりしたけど、やっぱりダメだった……だからね。本当はダイヤが来てくれたのすごく嬉しくて、思わず抱きつきたいくらいだった。






……なんで素直になれないかな。





―――それから、ダイヤは甲斐甲斐しく私の世話をしてくれて、結局風邪が治るまで一緒にいてくれたの。


ダイヤ「ん、平熱ですわね。これなら明日からまた学校に行けると思いますわよ。」

鞠莉「ありがと……って!ダイヤは!?学校!!」

ダイヤ「私は夏季休暇ですわ。」

鞠莉「あぁ…そっか日本は3学期制か…」

鞠莉「ダイヤと一緒にいた方が楽しいんだけどな…」

ダイヤ「そんなことを言わないでください、私も帰りづらくなってしまいますわ。」

鞠莉「ごめんごめん…なんかダイヤずっと優しかったね?病気?」

ダイヤ「失礼な…、弱った鞠莉さんに強気には出ませんわ。」






鞠莉「あはは、弱ってたかな?多分風邪のせいだよ。」

ダイヤ「というか、今も弱っていると思いますわ。」

鞠莉「えぇ?だってもう平熱だから大丈夫ってダイヤが…」

ダイヤ「精神的な話ですわ。なら聞きますが、最後に笑ったのはいつですの?」

鞠莉「えっ…」

ダイヤ「私は鞠莉さんの看病をしながら鞠莉さんのこと、ずっと見ていましたわ。でも鞠莉さんは笑顔を見せていないのです。」

鞠莉「そんな、気のせいよ~!ほら、にっこり笑ってるでしょ?」




ダイヤ「…」

鞠莉「笑って…るでしょ…?」

ダイヤ「作り笑顔は鞠莉さんには似合いませんわ。」

鞠莉「……っ」

ダイヤ「私、泣いていましたの。」

鞠莉「……?」





ダイヤ「鞠莉さんが日本を旅立ってから、鞠莉さんが隣にいるのが当たり前だと思っていたから気がついてしまったのです。」

ダイヤ「私にとって鞠莉さんが、どれだけ大切な存在だったのか…」


鞠莉(もしかして…ダイヤって…)


ダイヤ「果南さんやルビィとも違う気持ちなのですが、鞠莉さんがいなくなった時に胸に穴の開いたような気分だったのです。」


鞠莉(無自覚の好き…なの!?)



鞠莉「ねぇ、待ってダイヤ?」

ダイヤ「どうしました?」

鞠莉「それがなんでここに来た理由に…?」

ダイヤ「えっと…、とにかくそんな気持ちになって涙を流していた時ふと思ったのです。」

ダイヤ「鞠莉さんも、泣いているのではないかと。」

鞠莉「…それだけで?」

ダイヤ「それだけと言われれば…まぁ。」

鞠莉「それだけでなんで来るの!!?」




ダイヤ「鞠莉さんには、笑っていてほしいから。それだけでは不十分でしょうか?」

鞠莉「っ!」ドキッ


鞠莉(言っちゃあなんだけど、ダイヤ絶対私のこと好きよね!?)




ダイヤ「鞠莉さんは自覚がなかったのでしょうけれど、貴女の笑顔には周りの人を輝かせるような、そんな素敵な力があるのですよ?こちらの人に合わせて英語で言うなら…えっと…。」

鞠莉「"shiny"ね?」

ダイヤ「ド忘れですわ!っとにかく、そんなシャイニーなスマイルをしている鞠莉さんでいれば、いつか鞠莉さんが帰って来る時も、私や果南さんもすぐ迎えてくれるはずですから。」

鞠莉「シャイニー、ねぇ…、あ、あと私はちゃんとダイヤや果南にこんなに立派になったんだ、って見せつけられるようになるまで帰らないつもりよ。何年かかっても。」

ダイヤ「ええ、ぜひそうしてくださいな。あの頃は取り戻せないとしても、また三人で笑いたいですから…いつまでも待っていますわ。」

鞠莉「うん!」




ダイヤ「段々元気が戻ってきましたわね。…悪いですが私はそろそろお暇させてもらいますわ。」

鞠莉「ふふ、嵐のように去っていくわね…」クスクス

ダイヤ「やっといい笑顔が見られましたわ。これで心置きなく帰れます。」ニコッ

鞠莉「あ、あとねダイヤ。」

鞠莉「自覚がないのはどっちの方よ、ってだけ伝えとくわね!じゃあ、お見送りくらいしてあげるわ!」

ダイヤ「自覚…なんです?」

鞠莉「いいからいいから!!」




~~~

ダイヤ「では、短い間お世話になりました。また会える時を楽しみにしていますわ。」

鞠莉「うん、ありがと!」

鞠莉「っ…大好きよ!ダイヤ!!」

ダイヤ「…?ええ、私も好きですわ。」フフッ






―――そういって、ダイヤとの数奇な数日は終わりを迎えたの。告白も失敗ね♪


でもね、このとき決めたのよ。逃げるようにしてこっちにきたけど、私は絶対に輝いてみせる。ダイヤは取り戻せないなんて言うけど、私は私なりのやり方であの頃だって取り戻す。果南とも仲直りして、…それで!あのポンコツ石頭の、私の大好きなダイヤを絶対に射止めてやるんだって!!

ま、それからのことはイワズモガナね♪




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鞠莉「思い出すと懐かしいもんねぇ…ふふっ♪」

ダイヤ「お風呂頂きましたわ。今度銭湯に行くのもいいかも知れま…っていつまでゴロゴロしているつもりなんですの!?」

鞠莉「はーいはーい分かったわよ、シャイニ~♪」ヨイショ

ダイヤ「まったく、シャイニーなんて適当な言葉よく考えましたわね…」

鞠莉「ホント、何も覚えてないわよねぇダイヤはさ。」

ダイヤ「何を藪から棒に…?」


鞠莉「留学してた時に来てくれたでしょ?」

ダイヤ「あぁ、看病しに行っただけでしたけど。」

鞠莉「そういうとこほんとダイヤ。」




ダイヤ「馬鹿にしてますの?」

鞠莉「ううん、そういうとこも含めて好きなの♪」

ダイヤ「…っ!!…私も…好きですわ。」モジモジ

鞠莉「あらやだ、お返しまでしてくれちゃった♪嬉しいな♪」

ダイヤ「ひっかけましたわね!?鞠莉さぁぁぁん!!!」クワッ

鞠莉「無自覚なのが悪いのよ!!じゃあお風呂入っちゃうから!シャイニー!」スタコラ

ダイヤ「恥ずかしいじゃありませんかぁぁぁぁぁぁ!!!」ジタバタ





見ての通り、ダイヤは大したことしてないって思ってるんだけど、あれが私の恋のリスタートみたいなもので、ダイヤを改めて好きになった……私の大切な思い出。私だけの思い出っていうのもいいものでしょ?





ダイヤ、ありがとね。あなたがわたしに、輝きをくれたんだよ。



おしまいですわぁ……



お退屈様でした。HTML化依頼を出してきます。



過去作です。

ダイヤ「鞠莉さんったらまた服を散らかして…」
ダイヤ「鞠莉さんったらまた服を散らかして…」 - SSまとめ速報
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ダイヤ「ただいま帰りました…」鞠莉「あ、お帰りダイヤ」
ダイヤ「ただいま帰りました…」鞠莉「あ、お帰りダイヤ」 - SSまとめ速報
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鞠莉「今日は絶対ご飯!」ダイヤ「絶対パンですわ!!」
鞠莉「今日は絶対ご飯!」ダイヤ「絶対パンですわ!!」 - SSまとめ速報
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9月も元気にお過ごしください。それではまたどこかで。

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