男「夏の怖い話かぁ」 (22)

男「あーーーくそ暑ちぃな!ずっと日照り続きで嫌になるぜ」

8月の真っ盛り。
大学の校内を5人の男がまとまって歩いている。
同じ学部の同級生だがスタイルも背格好もバラバラのちぐはぐメンバーだ。

雌男「ほ、ほんとだね。僕は肌が弱いから日焼けが心配、かな」

困ったような表情で笑うのは雌男。
華奢で低身長、肩まであるセミロングの髪と言われなければ女にしか見えない。
体毛も薄い真っ白の肌で確かに陽射しに弱そうである。


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肉男「はっはっはっ、夏らしくていいじゃないか、俺の身体もこんがり焼けて夏の太陽を堪能しているぞ、なぁ?」ガシッ

男「うぉっ、肩を組むな!汗でベタベタして気持ち悪い!」

笑顔で肩を組んできたのは肉男だ。
身長180cm、体重90kg、体脂肪率10%のゴリゴリの体育会系である。
赤銅色に焼けた肌に真っ白なタンクトップが眩しい、いや暑苦しい。

熊男「ハァハァ・・・ボクは暑いのは苦手だな・・・」

男くさいひげ面を汗だくにしながら息を切らしている、この山男のようなのは熊男。
短髪角刈りでヒゲ、胸毛、腕毛、すね毛と全身の体毛が濃いずんぐりした太めの体系で、見るからに暑いのが苦手そうである。

虫男「お前ら二人とも暑苦しーんだよ。汗ダラダラでハァハァしやがって」

30度を超えるこの猛暑の中でも涼しげな顔をしているのは虫男。
2m近い長身ながら体重は60kg程度とガリガリで、その細長い手足はどことなくナナフシを連想させる。

男「お前と雌男の長袖もけっこう暑苦しいぞ」

雌男「だから僕は肌が弱いんだってば」

虫男「別に俺は暑くねーし。ほら触ってみるか?冷てーだろ」ペトッ

男「確かに手は冷たくて気持ちいいけど、俺の顔を両手で包む必要なくね?」

肉男「君たち三人はもう少し日に焼けたらどうだい?特に雌男と虫男、そんなんだから二人とも病人みたいに真っ白なんだぞ」ぺろっ

男「おい、服捲るなよ。一年中タンクトップ姿の肉男もどうかと思うぞ?」

虫男「そんな薄着になりたくねーよ。汗だくで薄着のゴリマッチョとデブとかひでぇ絵面じゃねーか」

肉男「俺はゴリマではないよ、スマート細マッチョさ」キラッ

熊男「ボクはデブじゃないよ、ぽっちゃり愛され系さ」テヘッ

男「自分の姿鏡で見て来いよお前ら・・・」

雌男「自己覚知って大事だよね・・・」

炎天下の中、軽口を叩き合いながらだるそうに一同は歩く。

熊男「しかし本当に暑いねぇ・・・男クンは体調大丈夫かい?気分が悪くなったら遠慮なく頼ってくれていいんだよ」ハァハァ

男「おい、近い近い吐息がかかる!大丈夫だから!平気だから!くっつくな!」

肉男「フゥ、暑いのも嫌いじゃない・・・とはいえやはり涼を求めたくなるな」

虫男「まぁなー」

雌男「ぼ、僕はさ、みんなで一緒に、海とか、行ってみたいなぁ」上目

男「ねぇ、俺の服の裾を掴みながら上目遣いで見つめてくるの止めて?」

熊男「ボクも一緒にイキたいなぁ」

男「なぁ、俺の肩抱きながら間近で見つめるのも止めて?」

虫男「熊男が海に行くならもっと痩せてからだろ」

肉男「君はもっと筋肉付けてからだな」

男「海は定番だよな。でも俺らは女友達のアテもないし、男だけで海行ったってなぁ」溜息

雌男「・・・」ジー
肉男「・・・」ジー
熊男「・・・」ジー
虫男「・・・」ジー
女っ気のない境遇になんとも言えない虚しさを感じたのだろうか、みな一様に黙ってしまう。
しかしなんとなく自分に視線が集まっているように感じるのは気のせいだろうか。

虫男「なぁ、お前ら忘れてないか?夏の納涼と言えばもう一つ・・・怪談話があるじゃないか」ギュッ

突然なにかを思いついたように、怪しい笑みを浮かべた虫男が口を開いた

男「なぁ、なんで背後に密着して肩つかんでんの?」

雌男「あー・・・虫男君は心霊物とかホラー好きでよく観てるもんね。・・・僕は苦手だけど・・・」

肉男「・・・いや、いいんじゃないか一部屋に集まって怖い話ってのも。なぁ?」チラッ

熊男「!」

雌男「!」

男「?」

熊男「・・・ああ、そうだね。うんうん、ボクもいいと思うな怖い話」

雌男「・・・う、うん!やっぱり僕もやりたいかも」

肉男の意味深な目配せを受け途端に二人が賛同する。

男「おお?みんななんか乗り気だな。よっしゃじゃあマジでやっちゃうか!」

虫男「あぁ、なら今週末に俺の部屋で怪談話ということでいいな?」

雌男「うん、僕ちゃんと準備してから行くね」ドキドキ

男「ん?なんか準備が必要なものってあるか?」

雌男は潤んだ瞳で男を見つめ

熊男「ボクもしっかりお手入れしていかなくちゃ」

男「手入れ?なんのだよ?」

熊男はうっとりとした表情で息を吐き

肉男「ああ、滾る、滾るなぁ!俺の筋肉たちも喜んでいるぞぉ!」ビクンビクン

男「おいおい、体動かす会じゃないからな。涼もうってのにヒートアップするなよ」ハハハ

肉男は興奮を抑えられないといった様子で筋肉を震わせ

虫男「当日、楽しみだなぁオイ・・・」クククク

男「おう、そうだな。ちびるくらい怖い話考えてきてやるぜ!」

虫男はそれはそれは楽しそうに怪しげな笑みを浮かべていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・

続きはまた後日。

男「あー、けっこう飲んだなぁ」

怪談の当日。
大学の金曜日の講義が終わった後、男たちは虫男の部屋に集まり夕方から飲み会を開いていた。

熊男「ほら男クン、もう一本ビールどうぞ?」

肉男「こっちに焼酎もあるぞ」

男「おいおい、これ以上飲ませるなって。足腰立たなくなっちまうだろ」

虫男「ハハハ・・・。あんまり飲ませ過ぎんなよ、  ・・・まだまだこれからなんだから」

雌男「ふふふ、僕も酔ってきちゃった」

男「おっと、寄っかかってくるなよ。大丈夫か?」

頬を桜色に染めた雌男がコテンと肩に頭を預けてくる。

熊男「ボクも酔っちゃった・・・」

男「オイ、やめろ、いや止めてくださいマジで」

いつの間にか胸元を大きくはだけ、逞しい胸毛を露出させた熊男も反対側からもたれかかってくる。

肉男「いやー暑いなぁ。クーラー効いているのかいこの部屋は?」

男「肉男の熱が室温上げてんじゃないの?つか見苦しいから服着てくれよ」

すでに焼酎のビンを一本空けている肉男は上裸でピチピチのビキニパンツ一枚の格好だ。

涼しい部屋のはずなのにとても暑苦しい。


虫男「・・・そろそろか」

いい感じにみんなが出来上がってきた頃、部屋の隅でちびちびと酒を飲んでいた虫男がおもむろに口を開く。

虫男「さて、酔いも回ってきたところでいよいよ怪談話に移ろうじゃねぇか」

男「ああ、そういやそういう趣旨だったな」

虫男「じゃあ打合わせ通り肉男から言っていいぜ」

男「ん?打合せ?おいおいお前らそんなことしてたのかよ」

熊男「まぁまぁ、大したことじゃないから気にしないで男クン」

雌男「ふふふ、でっかいサプライズがあるからさ」

若干不機嫌になった男をなだめるといよいよ怪談が始まる。

肉男「よーしじゃあまず俺からだね」

男「おう、とびきり怖いのを頼むぜ」

そう言うと肉男はスッと立ち上がり、真っ直ぐ男を見据える。
その顔は真剣そのもの、自己主張の激しい筋肉のせいもあり迫力がある。
そして軽く息を吸うととんでもないことを言ってのけた。

肉男「男よ、実は俺さ、



    ホモ、なんだ」

男「!」

男「ッハ・・・ハハハハ!マジかよーそりゃ怖えーwwww確かにそれっぽい見た目してるもんなーwwww」

雌男「・・・」

男「ハハハwww」

熊男「・・・」

男「ハハハ・・・」

虫男「・・・」


男「・・・」

男「え・・・マジで?」

肉男「ああ、引かれないかと心配でずっと言い出せなかったんだ」ズイッ

男「あー・・・いやー、人にはいろんな愛の形があるからな。俺は別にいいと思うよ、うん」

肉男「そうか。そう言ってくれると信じていた、嬉しいよ、男」ズズイッ

男「お、おう」

身を乗り出してきた肉男に対し若干距離を取りながら言葉を返す。
てっきり冗談かと思ったが一切ふざけた様子は感じられない。。
いつもより一回り膨らんでいるように感じるその肉体から放たれる覇気は尋常ではなく、まるで仁王像を前にしたように圧倒されてしまう。

男「み、みんなは驚いてないけど知ってたのか?」

熊男「うん」

虫男「ああ」

雌男「うん・・・知ってたっていうかさ、実は、



    僕達みんなホモなんだ」

男「えっ・・・は・・・?」

虫男「そのままの流れでお前も言っちまいな」

雌男「あ、次に話するのは僕でいいんだっけ?わかったよ」

男「ちょっ・・・待――」

あまりのことに頭の整理ができていない男にさらなる問題発言が追撃を加える。

雌男「僕ね・・・



    ずっと君のことが好きだったんだ」

男「!!」

男「あ、ああ、おう、ありがとう、でも気持ちは嬉しいが・・・」

視線を外さず瞬きもせず真っ直ぐこちらを見据える目にさっきまでの酔いの回った様子は感じられない。
自分より一回りも小さい体躯なのに気圧されてしまい尻餅をついたまま後ずさる。

雌男「ね、君は僕のことどう思っているの?君の口から聞きたいな」

そう言って雌男は猫のように四つん這いで近寄ってくる。

男「あ、いや、可愛いと思う時もあるけどお前は男なわけで、俺にそういう趣味は・・・」

雌男「ふふふ・・・、可愛いって言ってくれるんだ嬉しいな」

スッと手を伸ばしてくる雌男。
身の危険を感じ慌てて男は立ち上がる。

男「あーー、そうだ。そういえばさっきからトイレ行きたかったんだよなー、ちょっと一回席を外さs――」

熊男「じゃあ次はボクの番だね」

そのまま部屋を出ようと振り返ると、すでに扉の前には分厚い肉の壁が立ち塞がっていた。

男「く、熊男・・・。悪いけど俺トイレに行きたいから・・・」

熊男「男クン、ボクね、男の人が好きなのもそうなんだけど・・・



    ス〇トロも好きなんだ」

男「」絶句

冷汗が止まらない。
熊男は普段の軟弱な雰囲気とは変わってその全身からは野趣溢れる獣臭さが立ち上っており、文字通り熊のような迫力で静かに前に一歩踏み出す。

熊男「ボクは一向に構わないからここでしちゃっていいよ。なんならボクがのn」

男「待て、それ以上は止めてくれ」

立て続けのことに硬直してしまっていたが、慌てて我に返る。
もう耐えられないと、今度こそはっきりと男はみんなから距離をとる。

男「な、なんだよ!みんなホモだったのかよ!どうりでみんな彼女いないし女の話題振ってもノリが悪かったわけだよ!」

まるで肉食獣の群れに囲まれているような恐怖と混乱からつい大声を出してしまう。
気の置けぬ中だと思っていたのに、みんなこんな秘密があったなんて――

男「・・・ん?・・・みん、な?」

そういえば。
まだ一人発言していない奴がいる。
嫌な予感がして振り返ると、部屋の隅にいたはずの虫男がゆっくりと立ち上がっていた。

虫男「最後は俺だな・・・」

男「い、イヤもういい。もう十分怖い話は堪能したから――」

虫男「ああ、そういや元は怪談話って口実だったか。実はな今日この怪談話するっていうのはただのでまかせでよ、本当は俺たちのことをよく知ってもらおうと思って計画したんだ」

ゆらりと立ち上がった虫男の目はすでに捕食者のそれである。
無害なナナフシだと思っていた虫男のイメージは獲物を確実に捕らえる狡猾なカマキリへと変わっていた。

男「お、お前らみんなして俺を嵌めたんだな!」

虫男「おいおい違うぜ、なに言ってんだ。ハメるのは



    今からじゃねぇか」

さも当然といった様子で虫男が近づいてくる。
窓側には肉男と雌男、扉側には熊男と虫男。
狭い部屋の中に逃げ場は、無い。

男「ヒッ」

虫男「さあ」

雌男「たっぷりと」

肉男「未知の世界を」

熊男「教えてあげるよ♡」

目を爛々と光らせた男たちがゆっくりと近づいてくる。
その彼らの股間は一様に―――


男「ひっ、ヒイイイイィィィ!!!おいっ・・・止めろこっち来んn・・・アッ―」


あ あ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ・ ・ ・

夜の帳の中、男の叫び声が長く長く響いた。
その後男がどうなったのか、語る者は誰もいない。
ただ秋になってから大学構内で仲良く手をつないで歩く5人組の姿が見られるようになったとかならないとか・・・


めでたしめでたし?

以上です。

お目汚し失礼しました。

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