ココア「ラビットハウスにテレビ取材?」 (17)


ある日、ラビットハウスにて……、


ココア「今日もお店は静かで過ごしやすいねぇ~」

チノ「それは繁盛してないからです」

ティッピー「はぁ……客が来ないのぉ~」

リゼ「ココア、一応仕事中なんだからダラダラするなよ」

チリリリーーン♪

ココア「あっ、お店の電話が鳴ってるよ」

チノ「お客さんからでしょうか」

リゼ「私が出よう」

ガチャ

リゼ「はい、こちらラビットハウスです」


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???『あっ、もしもし。こちらはテレビ局のスタッフですけど』

リゼ「え、テレビ局のスタッフ?」

ココア「テレビだって!?」

チノ「テレビ局から電話、まさかうちに取材の申し込みじゃ!」

ティッピー「なん……じゃと……」

スタッフ『実はうちの番組でラビットハウスさんのことを取り上げたくて、それで今度取材に伺いたいのですが』

リゼ「えっと、責任者に伝えますので少々お待ちください」


リゼ「テレビ局から取材したいって話が来てたぞ」

ココア「すごいじゃんチノちゃん! これでラビットハウスも人気有名店の仲間入りだね!」

チノ「騒がないでくださいココアさん。まるで取材を受ける気満々じゃないですか」

ココア「え、受けないの? テレビで放送されたら宣伝になってお客さんたくさん来るんじゃないかな」

チノ「それは、そうですけど……」

ココア「いいじゃんいいじゃんーー! ねぇリゼちゃん、オファー受けようよ」

リゼ「お前が決めるなよ! それはこの店のオーナーであるチノと親父さんが決めることであってだな」

チノ「ええーーい、黙っとれ小娘どもッ!!」

ココア「うわっ、ティッピーが急に怒鳴り始めた!」

チノ「おじい……ティッピー、少し落ち着いてください」

ティッピー「ええい、リゼ、電話をよこせ!」

リゼ「うわっ、ちょっと!」

スタッフ『あ、もしもし、オーナーの方ですか? 是非とも今度うちの番組に____』

ティッピー「ええい、誰がテレビの取材など許すか、この青二才がぁぁーー!!」

ココア「ティッピー、すごい気迫!」

リゼ「なんだか並々ならない執念を感じるぞ!」

チノ「おじいちゃん……」

スタッフ『ええ……あの、せめてお話だけでも』

ティッピー「ふざけたことを吐かすな! わしゃテレビなんぞ出たくないわい! わかったらもう二度とオファーなんぞするでないわい!!」


ガチャッ


ココア「あ、切っちゃった」

リゼ「こんなティッピー初めて見たぞ……」

チノ「おじいちゃん……」

ティッピー「今日は気分が悪い、もう店仕舞いじゃ」

ココア「え、でもまだお店は開店したばかりだよ」

ティッピー「そんなの知らん! こんなんで商売やってられん! 今日はもう閉店じゃ、バータイムも休みじゃわい!」

バタンッ

ココア「行っちゃった」

リゼ「ただテレビ局からオファーがあったっていうだけなのに、どうしてあそこまで怒るんだ」

チノ「ティッピー……」

ココア「ねえチノちゃん、チノちゃんなら何か知ってるよね?」

リゼ「何か心当たりはないか?」

チノ「……そうですね。これ以上隠しても仕方がありません」

ココア「何か知ってるんだね!」

リゼ「一体何があったんだ!」

チノ「あれは、私がまだ小さい頃の話です。その頃はおじいちゃんはまだ生きていて、この店でマスターをしていました」

ココア「亡くなったおじいさんがまだ生きていた頃の話だね」

リゼ「生前のマスターと一体何が関係してるんだ?」


チノ「私もまだ小さくてその頃をよく覚えてなくて。聞いた話なんですが、おじいちゃんは当時あるテレビ局から依頼されてテレビに出たことがあるんです」

ココア「そうなんだ! 初耳だよ」

リゼ「そんなことがあったのか……」

チノ「お店の経営も厳しくて、当時おじいちゃんは苦渋の決断の末出演を快諾したと聞います。テレビに出れば店の宣伝にもなりますから」

ココア「なるほど、確かにそうだね」

リゼ「ひょっとして、そのときに何かあったのか?」

チノ「ええ、悪夢はそのとき起こりました……」

ここからはチノも話でしか聞いたことがない当時のお話____、


ジジイ「ふう、やっぱりテレビに出るのは気乗りしないのぉ……」

ジジイ「しかし、今更断るのもそれはそれで後味が悪い。ここで大衆受けすればうちの店も大繁盛間違いなしじゃ」

スタッフ「あ、ラビットハウスのマスターさんですね。この度はよろしくお願いします」

ジジイ「うむ、よろしく頼む」

ジジイ(随分と若いスタッフじゃな、こんなんで大丈夫だろうか)

ジジイ「んで、今回わしに何か面白いことをしろと言うんじゃな?」

スタッフ「ええ、実はうちの番組では全国のお年寄りたちが何か凄いことをやる姿をお届けするってコンセプトなんですよ」

ジジイ「はぁ……そんなので本当にウケるのかのぉ?」

スタッフ「有名になりたいんでしょ?だったら派手に行かないと」

ジジイ「うーん……」

ジジイ(いや、わし自身が有名になりたいというより、店の宣伝になればと思って話を聞きに来たんじゃがの)

ジジイ「んで、わしにしてほしいことはなんじゃ?」

スタッフ「ええ、マスターさんには火渡りをしたもらいたいんです」

ジジイ「なんじゃと!?」

スタッフ「ええ、燃え盛る火の道を歩いてもらいたいんですよ」

ジジイ「んなことしたら大火傷、最悪死んでしまうではないか!」

スタッフ「確かにリスキーですが、成功すればあなたは一躍スーパースターですよ」

ジジイ「なんじゃと……」

ジジイ(スーパースターになれば当然知名度が上がる。そうすれば店の名も広まり客が増える……!)

ジジイ「……本当に、成功すればわしの名は広まるんじゃな?」

スタッフ「ええ、そりゃ~もう」ニヤニヤ

ジジイ「……いいじゃろう」


そして撮影当日、


ジジイ「やれやれ、まさかこんなことになるとはの」

ジジイ「しかし、これも店を繁盛させるためじゃ! このチャンス、逃す理由がわしにはないぞ!」

ジジイ「聞けば、火渡りと言っても少し燃えとる程度らしいしな」

スタッフ「それではマスターさん、よろしくお願いしまーす!」

ジジイ「うむっ」


メラメラメラ……ボォォォーーーー!!


ジジイ「って、なんじゃこりぁーーーーーーーー!!」

スタッフ「何って、これが渡っていただく火の道ですけど」

ジジイ「話が違うじゃないか! めっちゃメラメラ燃え盛っとるし、こんなの裸足で渡ったら大火傷間違いなしじゃわい!」

スタッフ「普通に少し燃えたところを渡ってもちっとも面白くなんてないんですよ。テレビってものにはね、演出が必要なんですよ」

ジジイ「ぐぬぬっ、自分がわからないからって偉そうに……! 誰がこんな火の中を歩くか! わしは帰らせてもらうぞ」

スタッフ「あれれ~~~~? まさか今更怖気付いたんですか~~wwwwww」

ジジイ「なんじゃと?」イライラ

スタッフ「これじゃせっかく撮影のためにいろいろと用意したのに台無しだなぁ……。あーあ、こんな貧乏で意気地なしな老人のために時間を無駄にしちゃったよ……」

ジジイ「貴様!」


スタッフ「知ってますよぉ~~。マスターさんはラビットハウスっていう小さな喫茶店を経営してるけど客が全然入らないから今回我々のオファーを受けたってことを。でも残念だな、あなたにはここまで来て勇気がない。あなたが火の海に飛び込む前にお店が火の車ですねぇ~~www」

ジジイ「ええーい、言わせておけば……この若造が! バカにするでないわ! こんな火の道、すぐに通ってやるわい!」

スタッフ「……ふふっ」ニヤリッ

ジジイ「わしをバカにしたことを後悔させてやる」

スタッフ「え、マジで歩くんですか。別に嫌ならやめてもいいんですよ。まあ、歩くとかいって火の横っちょ歩いたりしてwww」

ジジイ「見とれ、おりゃぁぁぁーーーーーーーー!!!」



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チノ「と、おじいちゃんは無謀にもその火の道を歩いたんです」

ココア「そんなぁ……」

リゼ「なんてことを……!」



チノ「その後おじいちゃんは案の定大火傷を負い、撮影のあとスタッフによって自宅まで送り届けられたらしいんですが、その時点で足に大火傷を負っていたことはスタッフの人もわかっていたはずなんです」

ココア「ひどい! おじいさんを病院へ連れて行かないでそのまま放置するなんて!」

リゼ「最低だな……」

チノ「その後おじいちゃんは体調を崩し倒れていたところを運良く見かけた人が救急車を呼んで病院へ搬送したんですが、火傷による重症の他にも胃に穴が複数開いたり、肺に水が溜まったり、臓器も不全に陥ったり……」

ココア「そんなぁ……」

リゼ「それで、そのあとおじいさんは?」

チノ「何度も手術を受けたのですが一向に回復する兆しもなく、ついには一度も退院することなくそのまま病院で帰らぬ人となりました」

ココア「なんてことを……そんなのあんまりだよ!」

チノ「おじいちゃんの火傷を不審に思った病院の人が警察に連絡して捜査が行われたようですが、自傷事故として処理されたようです」

リゼ「事故じゃなくて事件じゃないか! 警察は何をしてたんだ!」

チノ「テレビ局は警察にそんなロケはしたいないと伝えて、それを警察が鵜呑みにしたようです」

リゼ「ふざけてるだろ、そんなの!」

ココア「そうだよ、天国のおじいさんが報われないよ!」

チノ「……私も、このことを初めて聞かされた時はショックでした。でもその時にはおじいちゃんはもう……」

ココア「そんなことがあったんだね……」

リゼ「チノも辛かったろうに……」

チノ「ティッピーがあんなになってまでテレビを嫌うのは、亡くなったおじいちゃんがテレビによって酷い目にあったからです。もちろん私も、雑誌の取材なら構いませんが、テレビの取材は正直嫌です……」

ココア「そうだったんだね」


リゼ「それで、このことは世間には伝わっているのか?」

チノ「いいえ、そのテレビ局は自分たちの落ち度を認めようともしませんし、それに随分と前のことですから……」

ココア「そんなの酷いよ! 許せないよ!」

チノ「そそのかされて火を渡ったおじいちゃんも悪いかもしれません。けど、おじいちゃんに大火傷を負わせてそのまま何もせずに放置したテレビ局を許すことはできません!」

リゼ「ちなみに、おじいさんの治療費はどうなったんだ?」

チノ「当初はテレビ局側が負担するとのことでしたが、血胸は一円を支払われていません。公費で賄われました」

リゼ「聞けば聞くほど酷い話だな」

ココア「今の話を聞くとテレビを避けるのも無理ないね」



青山「…………あのぉ」

リゼ「あ、青山さん!」

チノ「いらっしゃいませ」

青山「お取り込み中申し訳ないのですが、今日はお店は?」

ココア「ごめんなさい青山さん、実は今日はいろいろと事情があってお店はお休みに」

チノ「……いえ、せっかくいらしてくれたんだし、青山さんは常連さんですから特別に」

青山「本当ですか。それじゃ、コーヒーを一杯ください」

リゼ「いいのか、チノ?」

チノ「ええ、ティッピーも青山さんなら許してくれるはずです」

ココア「よし、それじゃ青山さんのために最高のコーヒーを用意するよ!」

チノ「コーヒーを煎れるのは私です」

リゼ「やれやれ……」









青山「………………マスター」




その後、青山ブルーマウンテンは小説家からノンフィクションライターへ転向したのだった。




終わり

須賀家弘世家神代家「此処が噂のチノちゃんが居るコーヒー店」

コンゴウ「ブラック紅茶を頂こう」

金剛「紅茶が飲みたいね」

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