真姫「凛が休み……?」花陽「うん、そうなの……」 (23)

―教室―


真姫「珍しいわね……。どうしたのかしら」

花陽「んっとね、熱出しちゃったみたいで……」

花陽「朝いつも通り迎えに行こうと思ったんだけど、うつるといけないから来ないでって」

真姫「そう……。ちょっと心配ね。昨日まで元気だったのに」

真姫「最近は雨が降ったかと思えば次の日には猛暑だったりして、気温の変化が激しかったし……それでかしら」

花陽「もしかしたらそうかも。凛ちゃんいつも薄着だからなぁ……」

真姫「夏こそ体を冷やさないように気をつけなきゃいけないってのに……まったく、しょうがないわね」

花陽「あはは……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503148950

真姫「ところで、花陽はどうするの?」

花陽「? どうするって?」

真姫「お見舞い行くんでしょ? 今日の練習どうするかとか……色々あるでしょ」

花陽「あっ、そっか……そうだね。どうしよっか……」

真姫「私としては、今日は練習休んで授業終わったらすぐにお見舞い行くんでもいいと思うわ」

真姫「でも、次のライブが近いのも事実よ。ただでさえ時間が無いのに、それを削るのは厳しいんじゃないかしら」

花陽「うーん……どうしよう……」

花陽「でもやっぱり凛ちゃんのことも心配だよぉ……」

真姫「……まぁ花陽ならそう言うと思ったわ。海未と絵里には私から話しておくから、授業が終わったらすぐに行くのよ。いいわね?」

花陽「え、真姫ちゃんは……?」

真姫「私のことより凛のことでしょ。花陽が行った方が安心すると思うし……」

真姫「私は、その……そういうの慣れてないから」

花陽「……」








―部室―


海未・絵里「「行きなさい」」

真姫「え……でも……」

海未「でも、じゃないでしょう。あなたは友人よりライブが大事なんですか?」

絵里「海未の言う通りよ。友人が熱を出して寝込んでるっていうのに……」

絵里「いい? 真姫。あとどれくらい凛と一緒に居られるかわからないのよ?」

絵里「卒業と同時に疎遠になっちゃって、それっきり……なんてことは珍しくないの」

絵里「ふと思い出したときに、『そういえば凛が熱を出した時にお見舞いすら行かなかったな……』なんて考えて後悔したくないでしょ?」

絵里「そういうちょっとした後悔の積み重ねが後々尾を引くことになるの。わかったらさっさと行きなさい」

絵里「……凛と一緒に居られるのは今だけかも知れないのよ」

真姫「わ、わかったわ」

真姫「……練習、出られなくてごめんね」

海未「気にしなくていいですよ。凛のこと、よろしくお願いしますね」












―昇降口―


真姫「待って、花陽……!」

花陽「真姫ちゃん……!?」

真姫「はぁっ……はぁっ……。やっと追いついた……」

真姫「私も行くわ。ちょっと靴に履き替えるから待ってくれる?」

花陽「うん……。でも、どうして急に?」

真姫「えっと……その、考えが変わったのよ」

真姫(本当は海未と絵里に説得されたからだけど)

花陽「そうなんだ。……でも良かった。きっと凛ちゃん喜ぶよ」

真姫「そうかしら……。私が行ってもあんまり役に立てる事が無いと思うんだけど」

花陽「そんなことないよ。真姫ちゃんが来てくれるってだけでも凛ちゃんは嬉しいはずだよ」

真姫「そ、そう……?」

花陽「そうだよ。真姫ちゃんだって……例えば私と凛ちゃんがお見舞いに来たらどう思う?」

花陽「私と凛ちゃんだけじゃなくて、µ'sの皆も来たら?」

真姫「……嬉しい、かも」

花陽「でしょ? それと一緒だよ」

真姫「なるほど……」

―通学路―


真姫「何か買ってく?」

花陽「そうだなぁ……やっぱり食べやすいものがいいんじゃない? プリンとか」

真姫「ヨーグルトとか?」

花陽「そうそう。それと、熱で汗かいてると思うから何か冷たい飲み物が必要かな」

真姫「そうね……。そうすると、やっぱりポカリスエット辺りになるのかしら」

花陽「いいと思うよ。定番だし」

真姫「あとは果物とか……りんごかバナナね。お見舞いならこれ、って感じよね」

花陽「ふふふ、そうだね」

真姫「……何で笑ってるの?」

花陽「え? ああ……真姫ちゃんもなんだかんだで凛ちゃんのこと大事に想ってるんだなって」

花陽「そうやってお見舞いの品を真面目に考えてくれるところとか」

花陽「慣れてないと言いつつこうして着いてきてくれるところとか」

花陽「……なんだかちょっと妬けちゃうなぁ」

真姫「わっ、私は別にそんなんじゃ……!///」カァァ

花陽「はいはい」フフフ

―凛の家―


凛(……暇だにゃ)

凛(かよちん、お見舞い来るって言ってたけど)

凛(本当に来てくれるのかな……)

凛(もうすぐライブだし、練習が忙しくて終わってからしか来れないってことも十分ありえるにゃ)

凛(たかが熱だしね)

凛(凛のことでかよちんの練習時間を奪うのは……良くないと思う)

凛(……でも)

凛(寂しいにゃ……)

凛(どうしようもなく寂しいにゃ……)

凛(頭も痛いし、ぼーっとするし……おまけに咳も出る)

凛(一人でいるのは辛いよ……)グスッ

凛(……もうこんな時間か)

凛(今日の授業が終わってからもう結構時間経つし……来るならそろそろだと思うんだけど)


ピンポーン


凛「!」

凛「もしかして、来た……!?」


バタバタ


凛(ああ、足元がふらつくにゃ……。でも、早く会いたい……! 1秒でも早く……!)

凛「はーい!」


ガチャ


花陽「凛ちゃん! だいじょうb「かよちいいいいいいいいいいいいん!!!!!!!!」ガバッ

花陽「ちょ、ちょっと……凛ちゃん!?」

凛「会いたかったにゃあああああああああああ」ウワァァァァ

花陽「もう……。よしよし」

凛「寂しかったよおおおおおおおおおおおおお」グスグス

真姫「見事に弱りきってるわね……」

凛「! 真姫ちゃんも来てくれたの……!?」

真姫「そ、そうよ。それが何k「まきちゃああああああああああん!!!!!!!!!!!」ガバッ

真姫「ヴェエエエエ!?」

凛「嬉しいにゃあああああああああ」スリスリ

真姫「だー、もう!/// 近所迷惑になるからとっとと家の中入るわよ!」

凛「はーい」エヘヘ

―家の中―


凛「!」ケホッケホッ

真姫「ちょっと……大丈夫なの? 咳……」

凛「あんまり大丈夫じゃないけど大丈夫にゃ。マスクしてるし」ゴホッ

真姫「それは大丈夫って言わないのよ……。病人は大人しく寝てなさい。ちゃんと私たちで看病するから」

花陽「そうだよ凛ちゃん。凛ちゃんが元気無いままだと、私たちまで元気無くなっちゃうんだよ?」

花陽「皆凛ちゃんから元気貰ってるんだから」

凛「そっか……。じゃあ大人しくしてるにゃ」

真姫「それがいいわ。あ、花陽、おかゆ作ってくれる? 私りんご剥くから」

花陽「りょうか~い」

ショリショリ


凛「へえ……剥くの上手いんだね。何か意外にゃ」

真姫「私だってこれくらいはできるわよ。凛の方こそできるの?」

凛「凛はかよちんに料理教えてもらってるから」

真姫「ふーん……。凛も料理とかするのね」

凛「まあ……将来のためにね。かよちんとだっていつまで一緒に居られるかわからないし」

真姫「……」

凛「……でもね、凛は……本当は……」

凛「……」

真姫「……? 凛?」

凛「……zzz」

真姫「寝てるし……」

真姫「まったく……このりんごどうするのよ。痛んじゃうじゃない……」

真姫「……花陽と二人で分けますか」

花陽「おかゆできたよー。……あれ?」

凛「……zzz」スースー

真姫「さっき寝ちゃったわ。花陽が来て安心したんじゃないかしら」

花陽「そうかなぁ……ちょっと違うと思うけどなぁ」フフフ

真姫「……何か含みのある言い方ね」

花陽「まぁね。凛ちゃんのことだからかな……なんとなくわかるの」

真姫「ふーん……」

花陽「そんなことより、おかゆ食べようよ。冷めちゃうしさ」

真姫「どれだけ作ったのよ……」

花陽「凛ちゃんに2食分と、私たちが1食ずつで合計4食かな」

花陽「私たちが食べなかったら凛ちゃんが後でその分多く食べられるし、とりあえず作っとこうと思って」

真姫「なるほど……」

フーフー

パクッ


真姫「……! 美味しい……」

真姫「味も濃すぎないし、卵がふわっとしてて」

真姫「思わずほっとするような……優しい味だわ」

花陽「喜んでもらえて良かった。私はまだ、凛ちゃんみたいに美味しくできないから……」

真姫「……? 花陽が凛に料理教えてるんじゃないの?」

花陽「そうなんだけど、おかゆだけは凛ちゃんの方が美味しくできるの」

花陽「小さい頃から、私が風邪ひいたときとかに『かよちんのために』って一生懸命作ってくれてたから」

花陽「でも、何であんなに美味しくできるのかは今でもわからないままで」

花陽「他に何か特別な材料を使ってるわけでもないし……」

真姫「……」

花陽「……? 真姫ちゃん?」

真姫「花陽でも凛についてわからないことはあるのね……」

花陽「いっぱいあるよ? 凛ちゃんだって私に言わないことはあるもん」

花陽「それに、何年付き合ってもその人を完全に理解できるってことはないと思うし」

花陽「知っているつもりでいても、もしかしたら本当は何も知らないのかも知れない」

花陽「……だから多分、凛ちゃんのことはわかるけどわからないままなんだよね」

真姫「花陽……」

花陽「いつまでも凛ちゃんと一緒には居られないって知ってるのに」

花陽「いずれ凛ちゃんと離れなくちゃいけないときが来るってわかってるのに」

花陽「私はそれが怖くて仕方がない」

花陽「µ'sだって……」

真姫「……」

花陽「……ごめん、ちょっと飲み物取ってくるね」

真姫「あ、うん……」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom