財前葵(美味しい物が食べたい)(29)
財前宅・脱衣所……
葵「…………」←バスタオル1枚
体重計「」ドン☆
葵「…………」ゴクリ
葵「…………」スッ
葵「…………」
葵「…………」プルプル
葵(増えてるーーー!!)ガーン
葵(惨い! この前測った時よりも『ピィー(※プライバシー保護の為に隠させて頂きます)』も太っている!?)
葵(いくら何でもいっちゃい過ぎだよ、私! なぜ? どうしてこんな事に!?)
葵ちゃんが最近食べた物一覧
・ファミチキと玉子のサンド
・蜂蜜とバターたっぷりの焼いたチーズ蒸しパン
・手作りクリスピーサンド
・カップ麺&そのスープで作った茶碗蒸し
葵(身に覚えがあり過ぎてやばい!)
葵(これだけカロリーが高い物をよくぞ並べたと言わんばかりだわ。これはいけない、おデブまっしぐらのライナップ)
葵(そういえば最初の頃は運動で何とかカロリーを消費しようとしていたけど、最近はそれもサボり気味だったわね)
葵(おまけに昨日、夕方にコンビニでいももちを買って食べてしまった……あれはあかんわ。揚げたお餅の中にみたらし餡とか反則やで、ファミマさん)orz
葵「…………」orz
葵「……このままでは駄目だわ」ムクッ
葵(現実の私がどんなに太ってもブルーエンジェルの活動に影響は無い……だけど女の子としてはやはり太るというのは避けたいものだ)
葵(そして何よりも……お兄様に太っていると思われているのは絶対に嫌!)
葵「決めたわ、お兄様! 葵はダイエットします! そしてあの頃の身体を取り戻します!!」グッ
翌朝……
葵「よし、準備完了」フンス←ジャージ姿
ロボット『葵、チャン。朝ゴハン食ベナイノデスカ?』
葵「ええ、ダイエット中だから。朝は豆乳だけで十分よ」
ロボット『チャント食ベナイト身体ニ悪イデスヨ?』
葵「残念だけど私はこのダイエットに全てを懸けてるの。それじゃあランニングして来るから留守番お願い」ノシ
ロボット『カシコマリマシタ。気ヲツケテイッテラッシャイマセ』ノシ
…………
葵「えっほ! えっほ!」
葵(ダイエットの基本は食事制限と適度な運動。とくにランニングは効果的と聞いた)
葵(今は緊急事態だし、多少無理してでも頑張らないと)
葵(やるわよ、葵! 現実でもブルーエンジェルのスタイルを手に入れてみせる! 一部分は悲しい事に無理そうだけど!!)エイエイオー
数分後……
葵「はぁ……はぁ……」
葵(暑い! 暑過ぎる!!)
葵(そうだった、今は真夏だった。おまけにこのジャージ、勢いで着て来たけどどあんまり通気性良くないし……うぅ、最悪だわ)
葵「もっと涼しい時間に走るべきだったかも……あっ」
自販機「」
葵「と、とりあえず水分を……!」
葵(でもここで水分なんて取ったら今まで走った分が無駄に……でも……)
ぐにゃ~~
葵「……はれ?」
葵(何だか目の前が歪んで……あれ? あれれ?)
葵「何で……どうして……あわわ~」フラフラ
葵(駄目、もう一歩も動けない……ど、どうしよう?)
???「――おい、大丈夫か?」
葵「ふえ?」
…………
公園……
葵「ごくごくごく!!」←スポーツドリンク飲んでる
遊作「もう1本飲むか?」
葵「あ、ありがとう……あ、お金」
遊作「後でいい。それより何であんな事をしてた?」
葵「え?」
遊作「この炎天下でランニングなんて正直まともじゃない。冗談抜きで下手したら死ぬぞ」
葵「えっと、それは……」
遊作「もしかしてダイエットか?」
葵「ちょ! 何で……いや、その!?///」アワアワ
遊作「1つ、明らかに慣れていないランニングを君が始めた事。2つ、女子が運動を急に始める理由は大抵ダイエットである事」
葵「えっと、その……///」
遊作「3つ、図星を突かれて慌てるその姿……以上、3つの理由から推測した。正解か?」
葵「べ、別にいいでしょう。貴方には関係の無い事なんだから」プイッ
遊作「確かにそうだな。だが1つ忠告させて貰うなら無理なダイエットは止めた方が良いぞ」
葵「…………」
遊作「こんな事で身体を壊したら大変だ」
葵「こんな事とか言わないで!!」キッ
遊作「…………」
葵「助けてくれた事には感謝してる。だけど何も知らないのに勝手に『こんな事』とか……言って欲しく無い」
葵(お兄様に、尊敬するあの人に太ってるなんて思われたくない……)
遊作「確かに事情も知らずに口を出すのは失礼だったな……悪かった、謝る」
葵「……私の方こそ大きな声を上げてごめんなさい」
遊作「だが俺が通り掛からなかったら君は危なかった。それは事実だ」
葵「…………」
遊作「もしあの場で君が倒れていたら、君の家族は酷く心配するんじゃないだろうか?」
葵「…………」
遊作「事情は知らない。だが君には大事な家族が居る事を俺は知っている……君の無理なダイエットは家族を心配させる事よりも大切な事なのか?」
葵「…………」
遊作「…………」
葵「私は……」
……ぐぅ~~~♪(お腹の虫)
遊作&葵「…………」
葵「!?///」ボン☆
遊作「……食事もちゃんと取ってないのか?」
葵「あの、その……///」カァー
葵(何で? どうして? このタイミングでお腹が鳴るのよ!?)ウエーン
遊作「ふむ……少し待ってろ」
…………
5分後……
遊作「ほら、食べろよ」
葵「これは……ホットドッグ?」
遊作「知り合いが近くで店を開いてるんだ。事情を話したら無料(タダ)でくれた」
葵「…………」
遊作「受け取らないのか? 味は保障するぞ?」
葵「その……ダイエット中、だし」
遊作「確かにこれはダイエット中に食べる物ではないかもな……仕方ない、じゃあこれは俺が食べよう」
葵「え!?」
遊作「……食べるか?」
葵「まあせっかく作ってくれたんだし……貰います///」
葵(まさかダイエット中にホットドッグ食べる事になるなんて)
葵(でも流石にそろそろ限界だし……ちょっとぐらいなら良いよね?)
葵「い、いただきます」
葵「…………」
葵「…………」パクッ
葵「…………」モグモグ
葵「!?」カンコーン☆
葵(美味しい……このホットドッグ、とても美味しい!)
葵(具はソーセージとシャキシャキのレタス、味付けはケチャップとマスタード……シンプルだけどそれが良いわ)
葵(空腹だから余計に美味しく感じるのもあるのだろうけど、それを抜きにしてもこれは中々のものね)
葵(まさにシンプル・イズ・ベスト! そんな言葉がピッタリなホットドッグだわ)
葵「こんな美味しいホットドッグ食べたの初めてかも」モグモグ
遊作「それは良かった。ちなみに紙も美味いぞ」
葵「えっ、嘘? 食べれるの?」ハムハム
遊作「冗談だ」
葵「ちょ、早く言いなさいよ! 少し噛んじゃったじゃない!!///」
遊作「悪かった。まさか信じるとは思わなかったから」クスッ
葵「あ」
遊作「ん、どうした?」
葵「え? いや、何でも……」
遊作「早く食べろ。冷めるぞ」
葵「う、うん……」モグモグ
葵(この人が笑ったとこ、初めて見たかも……あんな風に笑うんだ)
葵(やだ、何でちょっとドキドキしているのよ、私……相手はお兄様じゃないんだから///)ドキドキ
遊作「?」
葵(そ、それよりも今はホットドッグだわ。ホットドッグに集中しましょう!)
葵(そういえば最近は何かをそのまま食べず、少し工夫して食べるのが多かった気がする。あれはあれで美味しいのだけども……たまにはそのままの形で食べるのも良いわね)
葵(何と言うか王道って感じだわ。やはり王道は良い物ね)
葵(ああ、見えるわ! 夢と希望のサーキットが……今回は何時もよりさらに大物ゲストの予感!!)
~~~葵ちゃんの脳内映像~~~
ロッテリア~♪(BGM:熱き決闘者たち)
ヒトデ頭の王様「遂に……俺のターン!!」ドン☆
ヒトデ頭の王様「いくぜ! 俺はフィールドの2体のモンスターを生け贄に捧げ……現れよ! 俺の最強の僕、ブラック・マジシャン!!」
ブラック・マジシャン「ファラオーーーー!!!」←ファラオ・ガチ勢
ヒトデ頭の王様「葵、この世にはもっと美味しい食べ物がたくさんある! 俺達の戦いはまだ終わらない!!」
ヒトデ頭の王様「さあ、明日に向かって……黒・魔・導(ブラック・マジック)!!!」
ドゴオオオオオオオオン!!!
~~~~~~~~~~~~~~~
葵(…………)
葵(……貴重なコメント、ありがとうございました)
葵(でもちょっと……打ち切りっぽくも聞こえます)
葵(…………)
…………
葵「ごめんなさい、色々迷惑掛けちゃって……」
遊作「気にするな、俺が勝手にやった事だ……それでダイエットは続けるのか?」
葵「あ、うん」
遊作「ならしばらくの間、間食を控えろ。運動も軽くでいい」
葵「え?」
遊作「それだけでも今の君なら大分効果があるはずだ。それじゃあな」ノシ
葵「ちょ、ちょっと……行っちゃった」
葵(あ、そういえばジュース代も返してない。どうしよう? 今から追いかけて……)
晃「――葵?」
葵「お兄様!?」
晃「どうしてこんな所に? それにその恰好は何だ?」
葵「これは、その、ちょっと運動していて、あの!?///」アタフタ
葵(うぅ、最悪。こんなダサい恰好の時にお兄様と会うなんて……)
晃「ふむ……やはり何だか丸くなった、お前」
葵「!?」
葵(ああ、やっぱり……お兄様には私が太って……見え……)ガクブル
晃「しかし良い事だ。リンク・ヴレインズだけでなく、現実世界でも自分を出せる様になったのならこんなに嬉しい事は無い」
葵「……え?」
晃「ん、どうした? 鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして?」
葵「あの、お兄様? 私が丸くなったというのは……」
晃「ああ、こう言っては何だがお前は昔から真面目過ぎる所があったからな。だが今のお前は表情がコロコロ変わるし、心なしか以前より穏やかになった気がする」
葵「つまり雰囲気が丸くなったという意味で、私が太って見えるという訳はないんですね?」
晃「おい、妹でも流石に女性にそういう事は言わないぞ。それに葵は別に太ってはいないだろう?」
葵「…………」
晃「?」
葵「(´;ω;`)ブワッ」
晃「!?」
…………
遊作「…………」トコトコ
Ai『――どうした、お前にしては随分と世話を焼いたじゃないか。もしかしてあの娘に惚れてるのか?』ニヤニヤ
遊作「妙な勘繰りは寄せ。単なる気まぐれだ」
Ai『決まるぐれねぇ~。まあそういう事にしておいてやるよ、遊作お兄ちゃん♪』
遊作「何だ、その気色の悪い呼称は?」
Ai『ん、家族っぽくない?』
遊作「誰が家族だ。消すぞ」
Ai『お前のそういう発言、声のトーンが本気に聞こえるから怖いんだよなぁ~』
…………
数日後、財前宅・脱衣所……
葵「…………」←バスタオル1枚
体重計「」ドン☆
葵「…………」ゴクリ
葵「…………」スッ
葵「…………」
葵「…………」プルプル
葵(勝った! 勝ったわ、お兄様ぁーーー!!)コロンビア
葵(お兄様の発言は私の勘違いだったけど、体重が増えていたのは事実)
葵(でもその問題も今解決した。見事、体重を元の数値に戻したわ)
葵(しかし間食を控えただけでここまで効果が出るなんて……本当、今回は彼にお世話になりっぱなしだったわね)
葵「藤木遊作君、か……」ボソッ
葵「…………」
葵「……そろそろ服を着ましょう。夏場でも流石にこの恰好は不味いし」ゴソゴソ
…………
葵(さて、体重は元に戻ったけど油断しない様にしないと。気を抜いたらまた太っちゃうし)
葵「あ、そろそろニュースの時間ね。兄さん出てないかな?」ピッ
TV『という訳で本日は美味しいラーメン特集! この店の味噌ラーメンがまた絶品で……』
葵「…………」ピッ
TV『ここに麺つゆとごま油を混ぜたタレに漬けたサーモンがあります。これを熱々のご飯の上に乗せて……』
葵「…………」ピッ
TV『このチョコ入りマシュマロはパンと相性抜群! トーストに乗せて焼くだけであっという間に……』
葵「…………」
葵「…………」
葵(美味しい物が食べたい)
<おわり>
今回でこのシリーズはおしまいです。
今回読んでくれた人も今まで読んでくれた人もありがとうございました。
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