翔太郎「学園艦?」フィリップ「ゾクゾクするね」 (101)
・ガルパンと仮面ライダーW
・どちらか未見でもわかるように書くつもり
このスレは
【特撮×ガルパン】切り札は戦車!? これが友情の電撃戦です! - SSまとめ速報
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それではパンツァーフォー!
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俺は左翔太郎。
極めてハードボイルドな探偵だ。
そしてここは風都、大小の風車がところどころで回る、風の街。
俺はいい風が吹くこの街が好きだ。
だがその日の風は、どこか違う匂いを運んできた。
フィリップ「ねえ翔太郎、学園艦っていう船のこと、知らないだろう?」
その日も相棒のフィリップは唐突だった。
こいつもいろいろなことを経験してだいぶ人間らしくなったが、『検索』にハマると以前と少しも変わらなくなっちまう。
新しく知ったことを俺が知らないもんだと決めつけるところも、変わらない。
翔太郎「久々だなあそれ、知ってるぞ。ほらー、アレだ! でっかくてー、甲板の上に街がある」
亜樹子「私の小学校の時の友達も、学園艦に乗った子いたなあ」
鳴海、もとい照井亜樹子、遺憾ながら俺の雇い主で、それなりに有能な所長サマ。
数々の事件を共に乗り越えて、俺達とは深い絆でつながれている。
まあ、喧嘩はするけど……
フィリップ「わざわざ巨大な船を作ってその上で生活する非合理性、とても興味深い!」
翔太郎「あーあー、こうなったフィリップは止まらねえんだよなあ」
亜樹子「良いじゃない、最近はガイアメモリの事件も減ってきてるし」
翔太郎「おい亜樹子。俺達の仕事はガイアメモリだけじゃないんだぞ」
亜樹子「はいはい、それじゃペット探し、行ってみよう!」
こうして、俺は事務所の定収入源になっているペット探しに出かけることになった。
ったく、ハードボイルドにはほど遠いぜ。
翔太郎「ペット探しなんてハードボイルドじゃねえよなあ」
街を歩きながらぼやく俺の頭に、柔らかいと固いの中間くらいの物体が振り下ろされる。
翔太郎「痛てっ!」
振り返ると亜樹子が緑色のスリッパを振り抜いて、鬼の形相をしていた。
スリッパに書かれた文字は『得意分野じゃろ!』
残念なことに否定できない。
亜樹子「文句言わない! 立派な収入源なんですからね!」
翔太郎「わぁってるよ、探せば良いんだろ探せば……っと、悪い」
??「あ、こちらこそすみません」
よそ見をしていた俺は、肩口に軽い衝撃を感じて立ち止まる。
そこには見慣れない制服を着た女子学生の姿があった。
肩口で切りそろえた茶髪はさらさらと風に揺れて、憂いを帯びた瞳は下がった目尻から零れ落ちてしまいそうだった。
翔太郎「! いいんですよお嬢さん、見たところこの街にはない学校の制服を着ているようだが……」
緑色のラインが入った純白のセーラー服は、俺の見立てでは風都どころか近隣の学校でもない。
翔太郎「なにかお困りの際はこの私。私立探偵、左(ひだり)翔太郎にお申し付けください」
??「あ、はい……」
亜樹子「鼻の下伸ばしちゃってまぁ」
翔太郎「伸ばしてませんー」
??「あ、あの、一つお尋ねしても良いでしょうか」
翔太郎「なんでしょう?」
西住みほ「風都ホテルってどこにあるんでしょう……?」
この少女との出会いが風都を巻き込む大事件に発展していくとは、この時の俺は夢にも思わなかったのだ。
♪WBX W-Boiled Extreme
仮面ライダーW CROSSOVER GuP/これが友情の電撃戦です!
翔太郎「ここが風都ホテルですよ。お嬢さん」
みほ「本当に、ありがとうございました! あの、依頼料とか」
亜樹子「いーのいーの! 道案内なんてこの街の人間なら誰でもすることだからね!」
みほ「……はい!」
異邦の女学生は頭を下げるとホテルに駆け込んでいった。
ホテルには『歓迎 大洗女子学園御一行様』の立て看板。
修学旅行か、楽しんでいってほしいもんだ。
翔太郎「美しい子だった」
亜樹子「やらしー」
翔太郎「そういうんじゃねえよ!」
亜樹子「今のうちに竜くんに、ロリコン性犯罪者がいますって連絡しておこうかしら」
翔太郎「てめ、洒落にならねえからやめろ!」
竜くんというのは照井竜という、風都警察署の刑事だ。
階級は警視正、年は俺と変わらないくらいだが……ま、エリートってやつだな。
名字で察したかも知れないが亜樹子の旦那で、俺達とはただの探偵と警察以上の協力関係にある。
だがとんでもないカタブツなのでロリコン性犯罪者などと伝えれば最後、勘違いだとわかるまで取調室にぶち込まれることは想像に難くない。
翔太郎たちが去った後、風都ホテルでは二人の少女が西住みほを待ち構えていた。
沙織「あ、みぽりん! どこ行ってたの! 心配したんだからね」
武部沙織、社交的なイマドキの女子高生である。
料理と美容の事ばかり考えている一方で『戦車道』のポジションは通信手。
アマチュア無線の免許を取った努力家でもある。
みほ「沙織さん、ごめんなさい。ケータイの電池切れちゃって地図も見れなくて」
沙織「そうだったの! 無事に着けてよかったよぉ」
みほ「うん。親切な探偵さんに案内してもらえたから」
みほは翔太郎に渡された名刺を差し出した。
沙織「探偵? なになに、鳴海探偵事務所、左翔太郎。なんかすごそうだね!」
麻子「おい沙織、そのへんにしてやれ。西住さん困ってるだろ」
冷泉麻子、常に眠そうにしているが学年主席の天才である。
物覚えがよく『戦車道』のポジションは操縦手。
どんな戦車もマニュアルを読んだだけで動かせる脅威のドライブテクニックを有する。
沙織「麻子! わかったわよ。じゃ部屋に行こっ」
みほ「うん。修学旅行かあ、どんなお部屋かなあ」
麻子「特に変わったところのないちょっとばかし高級なホテルの部屋って感じだ」
沙織「麻子!」
みほ「あはは……」
翔太郎「ただいまー」
俺と亜樹子は道案内を終えてからペット探しもきちんと行い、事務所へと帰ってきた。
足を踏み入れるなり相棒のフィリップが、口角を釣り上げた笑顔で近寄ってくる。
フィリップ「遅かったね翔太郎。学園艦と言うのは本当にすごいよ! これを考えた人間は天才か悪魔のどちらかだね」
翔太郎「またずっと『検索』してたのかよ。しょうがねえなあ」
フィリップは脳内に『地球の本棚』というデータベースを持っている。
この『本棚』には地球の記憶、つまり地球上で起きたことならば歴史的な事実から個人的な悩みまですべてが記録されている、らしい。
しかしすべての情報をフィリップが把握しているわけではないので、知りたいことがある時はその都度『検索』をかける必要があるわけだ。
インターネットと一緒だな。
そしてフィリップには、一度検索を始めると関連することを調べ尽くすまで止まらない悪癖があるのだ。
亜樹子「なんだかこのやり取りも懐かしいね」
翔太郎「……ああ、そうだな」
フィリップ「ところで翔太郎。今学園艦が風都に来ているみたいだから、見に行かないか」
翔太郎「ああ?」
それは意外な誘いだった。
以前のフィリップは脳内で検索するとそれで満足し、興味を失ってしまうことが多かったからだ。
俺たちは愛用のバイク、ハードボイルダーに相乗りして風都の港湾部へと向かう。
少し生臭い、塩を含んだ風が体にまとわりつくようだった。
翔太郎「ほぉー、こいつはすげえな」
学園艦は想像以上のスケールだった。
フィリップ「この大きさ、作るだけでも大変だ。それを維持し、生活の基盤にしているんだから驚愕に値するよ」
翔太郎「でも、何だって二隻も来てるんだ?」
フィリップ「閲覧したデータによるとこちらの小さいほうが県立大洗女子学園。向こうの大きい方が黒森峰女学園」
翔太郎「ほうほう……あ、さっきの子」
俺は風都ホテルの入り口に立てかけられた看板を思い出していた。
フィリップ「何か心当たりが?」
翔太郎「ああ、さっき大洗女子学園の子を風都ホテルまで案内したんだ」
フィリップ「なるほど、だからペット探しにしては帰りが遅かったのかい」
翔太郎「まあな。修学旅行みたいだったから、すぐ送り届けられて良かったよ」
フィリップ「修学旅行? なんだいそれは」
翔太郎「あー、なんていうか、同じ学校の仲間で旅行するんだよ。観光地巡って、夜はマクラ投げてな」
フィリップ「それはおかしい。翔太郎の言葉が本当なら何も学を修めていない」
翔太郎「それは名前だけっつーか」
俺とフィリップが話していると、突然大きな破壊音が聞こえてきた。
フィリップ「翔太郎!」
翔太郎「ああ、ただ事じゃないな。行くぜ!」
翔太郎とフィリップが駆け出した頃、大洗女子学園の生徒二人
――秋山優花里と五十鈴華は追い詰められていた。
ホテルで待つことを選んだ沙織と麻子と対象的に、二人は外に出て西住みほを探すことを選んだ。
結構人気のない場所も探した。
その結果がこれなのだから、不幸としか言えない。
秋山優花里「あわわ、五十鈴殿、行き止まりですぅ!」
ドーパント「モウ、逃ゲラレナイ」
五十鈴華「あなたは何者です? どうしてわたくしたちを狙うのです!」
ドーパント「答エテヤル義理ハナイ」
華「指先から火花……?」
優花里「もうダメです、お父さん、お母さん、西住殿、皆さん……」
翔太郎「そこまでだ!」
フィリップ「やはり、ドーパントだったようだね」
翔太郎「ああ、間一髪ってとこみたいだな。フィリップ!」
切り札のベルト、ダブルドライバーを装着すると、フィリップの腹部にも同じものが出現する。
俺は漆黒のガイアメモリを右手に持ちスイッチを入れる。
メモリに秘められた力が開放され『ジョーカー!』の叫び声が再生された。
フィリップ「ああ、翔太郎」
かたやフィリップは鮮緑色のメモリ、サイクロンのスイッチを左手で起動させた。
『サイクロン!』の音声とともに俺たちは肩を前に出し、メモリを構える。
俺の右腕とフィリップの左腕が、Wの文字を形作った。
「「変身!」」
フィリップがドライバーの右スロットにサイクロンメモリを差し込む。
すると鮮緑色のメモリはフィリップの意識を孕んだまま俺のベルトに転送される。
それを確認した俺はジョーカーメモリを左スロットに差し込んで、ドライバーを起動させた。
『サイクロン! ジョーカー!』
仮面ライダーダブル「さあ、お前の罪を数えろ」
ここまで
期待ありがとうございます
前スレからは、タイトルの変更と地の文での描写を追加しています
雑談・感想ご自由にお願いします
俺の変身が完了すると同時に、フィリップの体が路面に倒れ込む。
代わりに立ち上がるのは潮風にマフラーをたなびかせる漆黒と鮮緑のライダー、仮面ライダーWだ。
フィリップと俺は今、文字通り一心同体になっている。
ドーパント「ナンダ、オマエラ?」
W「俺達は、二人で一人の仮面ライダーだ」
華「まあ! かっこいいです……」
優花里「五十鈴殿、結構余裕ありますね」
何やら喋っている少女たちに外傷が無いのは見て取れた。
ドライバーに挿入されたのは素早さに優れるサイクロンと格闘戦に特化したジョーカー。
仮面ライダーWの基本フォームであり、俺たちがもっとも得意とするスタイルだ。
W「行くぜ。はぁっ!」
ドーパント「ヌゥン!」
格闘センスと風の力を引き出したハイキックを、謎のドーパントが左前腕で受ける。
その時、俺の半身を痺れるような刺激が襲った。
W(翔太郎)「何だ今の、毒か?」
W(フィリップ)「相手の能力がわからない。接触は避けたほうが良さそうだ」
W(翔太郎)「よーし、それなら」
俺はジョーカーメモリをスロットから引き抜くと青いメモリのスイッチを入れる。
『トリガー!』の音声と共に射手の記憶が開放され、ジョーカーの抜けた穴を塞いだ。
『サイクロン! トリガー!』
W「こいつでどうだ!」
メタリックブルーに染まった右半身に付属する銃、トリガーマグナムから風の弾丸を連射する。
細かい狙いはつけにくいが、サイクロントリガーの銃撃は速射性に優れる。
点ではなく面を制圧する乱雑な銃撃がドーパントに着弾する。
ドーパント「アー、グゥアア!」
W(フィリップ)「効いているようだ」
W(翔太郎)「よーしフィリップ、このままメモリブレイクだ」
W(フィリップ)「了解だ」
右半身をコントロールするフィリップが、サイクロンメモリを引き抜いてスイッチをひと押しする。
『サイクロン!』の音声が鳴り、トリガーマグナムのスロットにサイクロンメモリの装填が完了した。
『サイクロン! マキシマムドライブ!』
W「トリガー、エアロバスター!」
ドーパント「アアアアアアア!」
風の力を最大限に発揮した銃撃が二発、三発と連続して敵を貫く。
ドーパントは爆散した。
華「やりました!」
優花里「我々は見ていただけですが……」
俺たちは変身を解除し、被害者の女学生二人から話を聞くことにした。
翔太郎「ふぅ……おっと、お嬢さんがた。お怪我はありませんか?」
優花里「え、ええ」
フィリップ「やれやれ、ばっちり見られちゃったねえ、変身」
翔太郎「まあ緊急事態だ、仕方ねえだろ」
Wのことを知るのは、俺たちの協力者の中でも少しの人間に限られている。
ミュージアムとの戦いが終わって少し気が抜けていたかもしれないな。
華「あら、怪物が爆発した跡からどなたか……」
優花里「あの制服! 黒森峰ですよ!」
翔太郎「黒森峰? って、確か」
フィリップ「風都に来ている学園艦、その一隻の名前だね」
ここで俺は見覚えのある緑ラインのセーラー服に気がついた。
翔太郎「ああ! それにお前らよく見たら、大洗女子学園の生徒か!」
華「はい」
優花里「そうです。あの、お兄さんたちは、いったい……?」
翔太郎「お兄さん……!」
おじさんと呼ばれる境地に差し掛かっている俺にとって、お兄さんと呼ばれることはステータスだ。
男ならいつまでもお兄さんでいたい、そういうもんだ。
フィリップ「僕たちは、二人で一人の探偵さ」
翔太郎「そんでもって風都を守る仮面ライダーなんだけど……一応秘密で頼むわ」
華「わかりました」
優花里「それに、こんなこと誰も信じませんし」
翔太郎「まぁ一般的にはそうか。なんにせよあとは警察の出番だな」
俺は知り合いの刑事、刃野幹夫(じんのみきお)に電話をかけた。
翔太郎たちと別れ、刃野刑事に保護された二人は風都警察署に移動した。
そこでは亜樹子の夫である照井竜(てるいりゅう)が任意の事情聴取を進めていた。
照井「なるほど、二人で自由行動をしていたら突然現れたドーパントに襲われた……」
真倉「照井課長! 身元引受人が来ました」
照井「ご苦労」
杏「大洗女子学園生徒会長の角谷杏(かどたにあんず)です。この度はうちの生徒がご迷惑を……」
照井「いや、彼女たちは純粋な被害者だ。聴取も済んだし、風都を楽しんでいってくれ。刃野刑事」
刃野「はい?」
照井「ドーパントが絡んでいる。仮面ライダーが倒したようだが油断はできない。パトロールを増やして対応してくれ」
刃野「了解!」
俊敏な動作で刃野が部屋を出て行く。
華と優花里も杏に連れられて取調室を後にした。
杏「五十鈴ちゃん、秋山ちゃん、大丈夫だったぁ?」
華「ええ、仮面ライダーさんに助けていただきましたので」
優花里「すごかったですよね、仮面ライダー!」
杏「ドーパントも仮面ライダーもいるんだねえ。都市伝説だと思ってたよ」
華「戦いが見れてある意味ラッキーでしょうか」
優花里「五十鈴殿は肝が太すぎますぅ!」
風都以外では都市伝説として語られるドーパント、そして仮面ライダー。
それはここ風都では紛れもなく現実で、日常なのだった。
照井「さて、こうしてはいられんな……」
照井が事務所を訪ねてきたのは、少し経ってからだった。
照井「左、依頼だ」
翔太郎「おう照井、そろそろ来る頃だと思ってたぜ」
亜樹子「竜くん、ドーパントが出たって聞いたけど……」
照井「ああ、そのことについてだが、現場に落ちていたこいつを見てほしい」
翔太郎「これは……!」
照井がビニール袋に入れて差し出したのは、ミュージアム製の外骨格がついたメモリとは違っていた。
紫色の半透明なメモリにBの文字が刻印されている。
フィリップ「僕たちのメモリにそっくりということは、T2ガイアメモリかい?」
照井「ああ。以前大道克己(だいどうかつみ)一派が使っていたものと同様の可能性が高い」
翔太郎「マキシマムドライブが直撃してメモリブレイクされてないし、T2ガイアメモリだろうな」
フィリップがスイッチを押すと『ブリッツ!』という音声が再生された。
フィリップ「へえ、ブリッツねえ」
照井「そこでお前たちに依頼だ。このガイアメモリの出どころを突き止めてほしい」
亜樹子「まっかせて! いつも通りチャチャっとやっちゃうから!」
翔太郎「調べるのは俺!」
フィリップ「新たな事件の香り、ゾクゾクするね」
照井「ああ、厄介なことにならなければいいが」
ブリッツという見たことのないメモリと、二つの巨大艦船。
しばらく平穏だった風都はどうなってしまうのだろう。
事務所の風見鶏が、その回転翼を忙しく回していた。
杏「たっだいま~」
優花里「た、ただ今戻りました……」
華「お腹が空きましたね」
桃「会長、おかえりなさい! おい五十鈴、秋山! お前たち校名に傷がつくようなことを」
柚子「桃ちゃん、おちついて」
桃「桃ちゃんって言うな!」
風都ホテルに戻ってきた杏たちを、同じく生徒会役員の河嶋桃と小山柚子が出迎えた。
杏「まあまあ、五十鈴ちゃんも秋山ちゃんも被害者だったわけだから」
そこに『戦車道』の後輩たちも心配してやってくる。
梓「先輩、大丈夫でしたか?」
優季「チカンさんですかぁ~?」
桂利奈「仮面ライダーってほんと!?」
あゆみ「そんなのどうでもいいって」
桂利奈「よくない!」
あや「えぇ~」
紗希「……」
杏「小山、みんなを集めよう」
柚子「わかりました」
このままでは修学旅行の円滑な実施が不可能だと判断した杏は、
まず身内とも言える『戦車道』履修者に事情を説明し現状を打破しようと考えていた。
『戦車道』のメンバーは大洗女子学園の廃校を阻止した歴戦の猛者である。
全校での修学旅行という思い切ったイベントも、黒森峰学園とのエキシビションマッチを風都で行うことが条件だった。
戦車道に縁のない風都の人々も、高校生ナンバーワンチームの実力を楽しみにしているのだ。
桃「みんな、くつろいでいたところすまない。先程五十鈴と秋山がドーパントと呼ばれる怪人に襲われた」
柚子「この町ではドーパントはよく出るそうなんだけど、それに変身してたのが黒森峰の子だったの」
桃「彼女は戦車道チームの一員だそうだ」
ドーパントはガイアメモリの怪人である。
翔太郎やフィリップも使用しているガイアメモリを人体に直接差し込むことで、ガイアメモリの力を使用する怪人となる。
仮面ライダーと大きく異なるのは、メモリの力に精神が侵されて正常な思考ができなくなることだ。
かつて風都には『ミュージアム』というガイアメモリを製造販売する組織が存在した。
翔太郎たちの奮闘で『ミュージアム』は崩壊したが、依然として風都ではガイアメモリ犯罪が起きている。
照井竜率いる超常犯罪捜査課も、ガイアメモリを専門で扱う部署である。
そど子「ちょっと、そんな危ない町になんで連れてきたのよ!」
典子「黒森峰の子って、どういうことですか!」
歴戦の戦車道チームの生徒たちとはいえ、普段は普通の女子高生だ。
平常心でいられるわけもない。
それでも杏は話をしなければならなかった。
杏「落ち着いてくれ!」
みほ「……続けてください」
杏「ありがとう、西住ちゃん」
西住みほは、翔太郎の受け取った気弱という印象とは裏腹に戦車道チームを率いる隊長である。
生徒会長の杏とはまた別の面で、生徒たちに一目置かれる存在だ。
桃「オホン、知っての通り修学旅行の最終日に黒森峰と合同の戦車道の試合を行うことになっている。
しかし事件が起きている以上通常通りの開催は困難だ」
柚子「試合の中止にとどまらず、修学旅行自体を中止して航海に戻るべきという意見も学園艦からは出ています」
沙織「そんなぁ!」
華「あらあら」
優花里「私の両親も普段の寄港とは違うからと楽しみにしていたんですが……」
杏「だけど私個人としては中止しないほうが良いと思っている」
ナカジマ「でもどうすれば」
杏「それはこれから考える」
おのおの意見を言い始める生徒たち、杏はその様子を見渡していた。
麻子「事件の全容をつかめないまま船を出したら、犯人を乗せて海に出ることにもなりかねない」
沙織「それもそうよねえ」
左衛門佐「大坂の陣」
おりょう「鳥羽伏見の戦い」
エルヴィン「イタリア戦線」
カエサル「トロイア戦争だろう」
歴女s「それだぁ!」
桃「うるさいぞ、お前たち!」
みほ「待ってください」
沙織「みぽりん?」
みほ「ひとつ、心当たりがあります」
杏「……へぇ」
翌日、みほは優花里と二人で黒森峰の学園艦に乗り込んだ。
みほは一人で行くつもりだったのだが、途中まででもいいから付き添うと優花里が譲らなかったのだ。
優花里「西住殿、ここからは一人で行かれるということですが、大丈夫なんですか?」
みほ「制服は去年のを着てきたし、多分大丈夫」
優花里「多分なんですね……」
みほ「ここに来るのも久しぶりだけど、まさかこんなことで来ることになるとは思わなかったな」
優花里「まあ、そうですよねえ。私もドーパントに襲われた時はびっくりしましたし」
みほ「ドーパント。ガイアメモリの怪人……」
優花里「風都では多いそうですが、私達を襲った方も観光中に手に入れたのでしょうか」
みほ「どうだろう」
みほは優花里から目をそらした。
そこに思いがけない人物が現れる。
翔太郎「おっ、面白そうな話してんじゃねえか。お兄さんとも話さない?」
優花里「あなたは!」
みほ「探偵さん……?」
翔太郎「二人してどうしたんだ? っていうかお前ら知り合いか」
優花里「ええ。そうですけれど」
みほ「あれ、優花里さんも探偵さんのこと知ってるの?」
優花里「え、ええ少し」
仮面ライダーのことは秘密にしなければ、と優花里は考えている。
翔太郎「まぁいいや。俺は仕事があるから行くぜ。何やってんだか知らねえが、危ないことはすんじゃねえぞ」
優花里「あ、はい! 探偵さんもお気をつけて」
翔太郎「おう」
翔太郎はあれよという間に去っていってしまい、二人も道行きを急いだ。
思いがけない再会があったが、俺の目的はガイアメモリ製造工場を突き止めることだ。
フィリップの『検索』に頼るまでもなく、俺自身の調査で学園艦が怪しいことは突き止めた。
協力者の風都イレギュラーズたちを中心とした地道な聞き込み調査だ。
なにより『ミュージアム』亡き今、ガイアメモリ流通のルートはかなり限定される。
事件発生と同じタイミングで風都にやってきた巨大建造物を疑うのは当然だ。
翔太郎「マンホールから簡単に降りてこられたのは良いが、まるで迷路だな」
フィリップ(電話)『ルートは既に検索済みさ。安心すると良い』
翔太郎「ああ、頼りにしてるぜ。相棒」
フィリップの『検索』で黒森峰学園の船内に用途不明の空間があることが判明している。
頼りになることこの上ないナビに従って俺はスニーキングを開始した。
翔太郎「ここか……」
??「そこまでにしてもらおうか」
男か女かもわからない無機質な声が、金属パイプがむき出しの通路に反響する。
暗がりから現れたのはコンテナ埠頭で倒したブリッツのドーパントだった。
翔太郎「お前は、ブリッツドーパント!?」
フィリップ『おかしい、ブリッツのT2メモリは照井竜が保管しているはずだ』
翔太郎「んなこといったってよ、眼の前にいるんだから仕方ねえだろ! 行くぜフィリップ!」
『トリガー!』
フィリップ『あ、ああ。わかった』
『ルナ!』
俺たちはベルトを装着するとメモリを起動させる。
事務所にいるフィリップの体から転送されたのはルナ、幻惑の記憶を秘めたメモリだ。
Wとして戦う時には、体や武装がグネグネ曲がったり増えたりする。
黄色く光るルナメモリが右スロットに出現し、俺も左スロットへトリガーメモリを叩き込む。
「「変身!」」
『ルナ! トリガー!』
ブリッツ「仮面ライダーW、か」
W(フィリップ)「僕たちの情報を持っている?」
W(翔太郎)「知ってようが知っていまいが前回瞬殺した相手だ。速攻で終わらせるぜ」
W(フィリップ)「了解した」
W「はぁっ!」
トリガーマグナムから放たれる弾丸は、サイクロンとは異なりエネルギー弾となる。
幻惑の力を秘めた弾丸は適当に連射しても自動的に標的を追尾する誘導弾だ。
ルナのよく曲がる性質と遠距離戦が主体のトリガーは相性がいい。
ブリッツ「ふん」
W(翔太郎)「こいつ!」
W(フィリップ)「前回とは違う!」
目の前のドーパントは紫電がほとばしる右手で、エネルギー弾をすべて打ち消した。
ブリッツ「お前たち、長いことドーパントと戦ってきたのに適合率も知らないのか?」
ブリッツの右手からほとばしる火花は激しさを増していく。
W(フィリップ)「触れられるのはまずい、翔太郎!」
W(翔太郎)「わかってらぁ!」
『メタル!』
俺はトリガーのメモリをメタルに換装した。
『ルナ! メタル!』
トリガーマグナムが消え、Wは鈍い輝きを放つ鋼鉄の左半身に変身する。
俺たちは背中に生成された無骨な鉄の棒、メタルシャフトを振り回し、ブリッツドーパントの迎撃を試みた。
W「おりゃあ!」
ブリッツ「遅いな」
メタルシャフトはルナの力でしなって伸びるが、鞭のような連撃をブリッツは苦もなくすり抜けてくる。
W「なにっ、う、動かねえ!」
ブリッツ「弱すぎる」
懐に潜り込まれ、頼みのメタルシャフトはガッチリと固定され、強烈な紫電を叩き込まれる。
W「ぐわあああああああ!」
ブリッツ、それは稲光を意味する。
検索すらしていなかったメモリの意味を、俺は身を持って知ることとなった。
ブリッツ「命は取らない。大人しく帰るといい」
ブリッツドーパントは踵を返してガイアメモリ工場があると思しき方向へ戻っていく。
一方の俺たちは大きすぎるダメージで変身が解除され、スチール製の通路に横たわる俺が残った。
すぐにフィリップから電話がかかってくるがスタッグフォンを開く力も無く、俺は意識を手放した。
ここまで
W表記に変えました
風都探偵の続きが早く読みたいです
訂正
>>22
誤 メタリックブルーに染まった右半身
正 メタリックブルーに染まった左半身
今後気をつけます…
翔太郎が戦闘不能になっていた頃、西住みほは黒森峰学園の内部に潜入していた。
みほ「お母さんは特別試合の調整のために監督として来ているはず」
小さくつぶやいたみほは、頑丈そうな木製の扉に手をかける。
しほ「そろそろ来る頃かと思っていたわ。みほ」
教員室と言うのは適当ではない。
そこは執務室と表現するほかない部屋だった。
室内は暖かなランプ色の光で満たされ、糖蜜をかけたようなオーク材の梁が輝いている。
重厚なデスク、厚みのある絨毯、壁に掛けられた絵画など、黒森峰における戦車道の地位の高さが伺えた。
みほ「お母さん、単刀直入に聞きます」
みほは、デスクに肘をつく母親に対峙した。
昨年まで身にまとっていた黒い制服のスカート、そのポケットから細長い棒状の物を取り出す。
みほが握りしめると『パンツァー!』という音声が執務室に響いた。
みほ「先日突然送られてきたこれ、そして黒森峰の生徒がドーパントになり私の友達を襲った事件」
嚥下し、軽く息を吐く。
みほ「お母さんが関係しているんですか」
しほ「関係しているとしたら、どうします」
みほ「止めます。力づくでも」
ここまで
今週も風都探偵面白かったですね
しほ「そう……あなたならそう言うでしょうね」
みほ「お母さん、やっぱり」
しほ「残念だわ」
いつの間にかガイアメモリを手にしているしほがスイッチを起動した瞬間、みほの意識は刈り取られる。
視界が暗転する寸前に『ジェネラル!』という音声がかろうじて耳に残った。
同時刻、秋山優花里は黒森峰の道路甲板を散策していた。
優花里「はぁ~、サンダースもすごかったですが黒森峰もさすが戦車の本場ですねえ。見どころが沢山です」
その目の前に鳥のような意匠をもつ台形の物体が、風を切って飛来する。
その物体は優花里の前でくるりと宙返りすると、緑色の光を吐き出した。
優花里「な、何なんですか」
フィリップ「やあ、キミとは一度会ったね。秋山優花里」
緑色の光がおさまったそこには、もう一人の探偵、フィリップが忽然と立っていた。
優花里「あなたは確かフィリップさん。ど、どこから?」
フィリップ「そんなことはどうでもいい。何故キミがここにいる?」
優花里「私ですか。私はその、西住殿の付き添いで」
フィリップ「西住?」
そこへ奇妙な車両が向かってくる。
前半分は古風な自動車、後ろ半分はキャタピラ駆動の荷台になっているトラックだ。
優花里「わぁ! ハーフトラック、マウルティアじゃないですか!」
フィリップ「マウルティアというのか。興味深い。検索を開始したいくらいだ……」
優花里「あ、興味あります? あれはドイツ軍を代表する軍用トラック、ブリッツを改修したハーフトラックといいまして」
優花里が堰を切ったように話し出す。
彼女はミリタリーマニアなのだ。
常に話相手に飢えており、トラックから出てきた銀髪の少女にも気が付かない。
エリカ「秋山優花里、ウンチク話は後にしてもらえる?」
優花里「出た! 逸見エリカ!」
エリカ「何よ! ここは私の学校なんだから出て来たっていいでしょ! ったくもう、早くこいつら引き取って帰ってちょうだい」
エリカが親指で示した荷台を二人は覗く。
フィリップ「翔太郎!」
優花里「西住殿!」
エリカ「よくわからないけど、偵察行為もほどほどになさいな。それじゃあ」
Ⅰ号戦車の履帯を回して、ハーフトラックは去っていった。
ここまで
目を覚ましてまず、体全体の鈍痛を感じた。
次に、視界を埋め尽くすのは事務所の天井であることがわかり、相棒の声が聞こえてきた。
フィリップ「翔太郎、気がついたかい!」
翔太郎「ああ、助けてくれたんだな、フィリップ」
フィリップ「いや、それは」
優花里「お兄さんは西住殿と一緒に運ばれてきたんです。私たちは受け取っただけで……」
翔太郎「なんだって?」
亜樹子「あ、みほちゃんも起きたよ!」
優花里「西住殿!」
翔太郎「何がどうなってやがんだ……」
フィリップ「翔太郎、一度状況を整理しよう」
翔太郎「ああ、そうだな」
鳴海探偵事務所には、普段あけない扉がある。
玄関を入ってすぐ左、俺愛用の帽子が所狭しと掛けられたその扉の先には
みほ「うわぁ~!」
優花里「まさしく秘密基地ですね~!」
フィリップ「ラボ、と呼んでくれたまえ」
翔太郎「はは、ちょっとしたもんだろ」
コンクリート打ちっぱなしの空間に金属製の足場が組んである。
壁面にはホワイトボードが何枚も貼られ、フィリップの自由な思索の跡が一面に広がる。
そして足場のない部屋の中央には、何やら土台のような構造物と厚みのある背丈ほどの大きなメダルが直立していた。
とまあ、今は敢えてぼかして描写することにする。
翔太郎「今回の事件の大まかな流れは……」
1.ブリッツドーパントに秋山優花里と五十鈴華が襲われる
2.ブリッツのガイアメモリはT2だった
3.黒森峰の学園艦にガイアメモリを生産している拠点がある
4.ガイアメモリ生産拠点には風都に現れたブリッツより強力なブリッツドーパントがいた
5.西住みほの母親、西住しほがドーパントに変身
翔太郎「こんなところか」
みほ「あ、その前に」
0.西住みほに『パンツァー』のT2メモリが郵送されてくる
翔太郎「なるほど」
みほ「差し出がましい真似を……」
亜樹子「いいのよ! 助かるからどんどん発言して!」
みほ「あはは、でもお母さんには一瞬でやられてしまったので、詳しいことはわからなくて」
優花里「なんだか、非日常過ぎて現実感が湧きませんね」
亜樹子「そりゃそうよねえ。私も最初は信じられなかったし!」
翔太郎「それで、『検索』はできそうか?」
フィリップ「問題ない」
フィリップは肩幅ほどに足を開き、掌を上に向けて両腕を広げたお決まりのポーズを取った。
フィリップ「検索を始めよう」
この瞬間から、フィリップは脳内に存在する『地球の本棚』に居所を移す。
俺たちにはわからないことだが、相棒曰く真っ白な空間に本棚が浮かんでいる。
そんな場所を歩いて本を読んでいるようだ。
フィリップ「キーワードは『ブリッツ』『T2ガイアメモリ』。だがこれでは前回の検索と同じだ」
翔太郎「前は工場の場所がわかればそれでよかったからな」
フィリップ「ああ。だが事態は動いている」
翔太郎「『適合率』はどうだ?」
フィリップ「やってみよう……少し変化があった。しかしまだ753件」
翔太郎「全部読むには多すぎる、か」
みほ「あの……私、気を失う前に聞こえたんです。ほんの少しですけど」
翔太郎「教えてくれ」
みほ「多分、ガイアメモリの音……『ジェネラル』って」
翔太郎「フィリップ聞こえたか。追加ワード『ジェネラル』でどうだ?」
フィリップ「もうやっている。うん、ビンゴだ。一冊に絞り込めた」
何回か更新しましたが今日はここまで
相棒が目を開く。
フィリップ「謎は全て解けた」
その頃、風都署では交通課の面々に混じって刃野刑事と真倉刑事が事務処理に追われていた。
真倉「刃野さん、これ俺たちの仕事なんすかねえ?」
刃野「仕方ねえだろ。超常犯罪捜査課は、超常犯罪が起きてない時は便利屋なんだよ」
真倉「だからって! 交通課の連中、戦車道の試合に使う許可書類、全部俺たちに丸投げですよ。もうやってらんないっすよ~」
刃野「んなこと俺に言われてもな……お。真倉、ほれ」
真倉「なんすか?」
刃野「昆布茶が切れてる! 買ってこい!」
真倉「あーもう、わかりましたよ!」
刃野「……だがこの書類、尋常じゃないなあ。指定区域住民の避難までやるってんだから」
『無制限の砲撃を許可する』
刃野「俺が心配することじゃあない、か。さーて、お仕事お仕事!」
何かを気にした様子の刃野だったがそれは一瞬で、引き続き淡々と事務処理を続けていく。
一方超常犯罪捜査課の課長である照井竜はフィリップから連絡を受け、鳴海探偵事務所に向かっていた。
照井「左の意識が戻ったのはいい。しかしブリッツのT2メモリ……」
照井の手の内には紫色のガイアメモリ。それを一瞥するとライダースジャケットのポケットに仕舞う。
照井「ここにあるのはブリッツ。左を襲ったドーパントもブリッツ、つまりブリッツのメモリは複数存在している?」
??「その通りだ。しかし数にも限りがあるので返してもらおう」
照井「なに!」
照井の眼前に稲光が落ちて、アスファルトがスパークする。
すぐさま愛用のバイクを停めヘルメットを外す。
??「今のは威嚇射撃だ。次は当てるぞ? 仮面ライダー」
照井「その電撃……お前もブリッツドーパントか」
ブリッツOL「そうだ。だが他のブリッツドーパントとはわけが違う。オーバーロードとでも言おうか」
照井「ふざけたことを!」
照井は赤いガイアメモリを天にかざす。
刻印された文字は『A』。
『アクセル!』の音声が封じられた記憶とともに流れ出し、操縦桿型のバックル『アクセルドライバー』に『加速』の記憶がチャージされた。
照井「変……身!」
バックルを中心に赤い光が照井を包み込む。
光が収まるとそこには、真っ赤な鎧を身にまとった青い瞳の仮面ライダー、アクセルが立っていた。
短くてすんません
Wオーズフォーゼ辺りは繋がってる感じもしますが、映画のときだけってことで一つ
ビルドまだ見れてない…
それではまた
>>76
誤 操縦桿型の
正 ハンドル型の
仮面ライダーアクセル「ドーパント犯罪の重要参考人として、署まで同行願おうか」
ブリッツOL「断る」
アクセル「ならば手荒になるが、文句は言うなよ!」
ブリッツOL「良いだろう」
ブリッツの両足に紫電がバチリと走る。
ブリッツOL「だが私を捉えられるかな?」
アクセル「俺に、質問するなぁ!」
アクセルは大型の片手剣『エンジンブレード』を振りかぶると、脚に力をためて大きく踏み込む。
爆音と共にアスファルトが砕け、『加速』の戦士にふさわしい高速の剣戟が振るわれた。
アクセル「はぁっ!」
ブリッツOL「ふっ」
しかしブリッツ・オーバーロードはこれを低くしゃがんで回避した。
紫電の輝きが、激しい破裂音をかき鳴らしながらブリッツの脚を包み込んでいく。
アクセル「ちぃっ!」
反撃を察したアクセルは振り抜いたエンジンブレードを咄嗟に引き戻すと、右手でグリップ、左手は剣先に添えるようにして刀身を盾にする。
ブリッツOL「徹甲弾」
敵の行動は至ってシンプルだった。
曲げた脚を伸ばして跳躍、そして引き絞った右拳でアクセルに殴り掛かる。
ただ、その一連の動作が恐ろしく速い。
ブリッツOL「はぁっ!」
アクセル「ぬぅん!」
だがアクセルもスピード自慢の戦士。辛うじて動きを捉え、刀身でのガードに成功するが
アクセル「うおおおおお!?」
ブリッツの拳から流れ出した電流が、エンジンブレードを伝ってアクセルに襲いかかる。
メタリックレッドの装甲は枷にしかならず、全身がスパークする。
アクセル「ぐっ、うああああ!」
数秒の後、チャージした電気を放出しきったブリッツは拳を引く。
アクセルは膝から崩れ落ち、所持していたブリッツメモリが路面に転がり落ちた。
ブリッツOL「装甲を徹すから徹甲弾というのだ。覚えておくと良い」
メモリを拾おうとするブリッツ・オーバーロード。
しかし仮面ライダーは両腕を突き、片膝を立て、懸命に立ち上がる。
アクセル「まだだ……」
ブリッツOL「しぶといな。私の用件はメモリの回収で君を痛めつけることではないのだが」
アクセル「お前は重要参考人から容疑者に変わった。逃がす訳にはいかない」
ブリッツOL「立つのもやっとな様子で、どうやって捕まえるんだ?」
アクセル「俺に質問するなと言っている!」
アクセルはオレンジ色のメモリを取り出す。
刻印は『E』。
エンジンブレードの刀身を、グリップ上部のヒンジを中心に折り開き、『エンジン!』の音声を起動して挿入、刀身を元に戻した。
アクセル「さあ! 振り切るぜ」
グリップのトリガーを一度引くと『スチーム!』の叫び、それに呼応してブレードの排気口から大量の蒸気が噴出する。
ブレードの向きをコントロールして蒸気を背後に流したアクセルは、爆発的な推力を得て斬りかかった。
アクセル「はあああっ!」
ブリッツOL「速い! しかも熱を持った斬撃だと……!」
敵もナックルガードで刃を受け止めるが、それに構うこと無く、がむしゃらに剣を振るい続ける。
蒸気を撒き散らしながらの連撃に、ブリッツの声から余裕が消えた。
アクセル「おおおおおおお!」
ブリッツOL「くぅっ! 鬱陶しい!」
敵の電撃がチャージされ、仮面ライダーを弾き飛ばす。
ブリッツOL「君ではブリッツの能力には勝てない。諦めてくれ」
アクセル「それを決めるのはお前じゃない」
ブリッツOL「そうか。なら力づくだな……徹甲弾」
必殺の拳を構えるブリッツに、アクセルは自然体で対峙する。
ブリッツOL「死んでも恨むな……よ!」
脚に溜めたエネルギーで神速の踏み込みを見せるドーパント。
アクセル「それを、待っていた」
仮面ライダーは片手剣のトリガーを引く。
『エレクトリック!』
ブリッツOL「はぁっ!」
アクセル「ふぅん!」
ブリッツOL「剣を拳に合わせたところで!」
ブリッツの動きに合わせたアクセルに、鎧通しの電撃が襲いかかるかに見えた。
しかし、
ブリッツOL「なに? 流れていかない、だと!」
アクセル「電気を使うのはお前だけじゃあない、ってことだ!」
機械刀のブレードに電光が走っている。
ギジメモリ『エンジン』はガイアメモリではないが、エンジンブレード専用に開発されており、様々な特殊能力を発揮できるのだ。
ブリッツOL「しかしその出力ではな」
アクセル「お前の技を弾ければそれで十分だ!」
ブリッツOL「タネが割れていればいくらでも対応はできる」
剣戟と打撃、スピードに優れた両者の戦いは激しさを増していく。
金属音と破裂音が鳴り続き、やがてどちらからともなく距離を取った。
アクセル「そろそろ終わりにするとしよう」
ブリッツOL「同感だ」
『エンジン! マキシマムドライブ!』
先に仕掛けたのは仮面ライダー。
繰り出すのはエンジンメモリを最大開放し、『A』の字に3回斬りつける必殺技だったが
ブリッツOL「徹甲……」
一撃目をかわされ、二撃目の振りかぶりに合わせて致死の拳がアクセルを襲う。
カウンター気味に入ったそのパンチは思いの外軽く、電撃の予感に身構えたが
ブリッツOL「榴弾!」
ドーパントは電流を流し込むのではなく、拳で紫電を爆ぜさせた。
仮面ライダーが吹き飛び、蓄積ダメージとマキシマムドライブの中断で変身が解除される。
路面を転がった先で顔を上げた照井の目に映ったのは、T2メモリを片手に弄ぶ怪人の姿だった。
照井「貴様、最初からそのつもりで!」
ブリッツOL「そうだ。言ったろう、私の目的は君じゃない、メモリだとな」
紫のシルエットが、踵を返す。
照井「ま、待て!」
ブリッツOL「待てと言われて待つやつがいるか?」
ブリッツ・オーバーロードは足元に稲光を煌めかせて、走り去った。
照井「ちぃっ!」
してやられた形になる。
ブリッツのメモリが何本あるか照井は知らないが、敵の戦力が増すことは明らかだ。
膝をつき、呟いた。
照井「俺に質問するな……!」
ここまで
照井の戦いが長くなってしまいましたが戦車戦もやるのでご安心ください
レス励みになっております
ありがとうございます
検索を終えたフィリップは、瞑目を解いて壁面のホワイトボードに向かう。
フィリップ「まずブリッツメモリについてだが、単なる電気のメモリではない」
翔太郎「違う? でも俺は確かにビリビリを食らったぜ」
フィリップ「落ち着きたまえ。『単なる』電気のメモリではないと言ったんだ」
亜樹子「そうよ、落ち着きが足りないのよあんたは!」
翔太郎「なんだと!?」
亜樹子「なによ!」
二人「「ぐぬぬぅ~!」」
みほ「あの、話の続きは……」
二人「「あ。」」
フィリップ「全く、キミたちのほうがよっぽど子供じゃないか」
翔太郎「そいつは失礼いたしました、もう邪魔はしねえよ」
亜樹子「ごめんなさーい」
フィリップ「そうしてくれ。さてブリッツメモリに封じられた記憶だが、『電撃戦』というようだ」
優花里「電撃戦ですか!」
翔太郎「なんだぁ? その、電撃戦ってのは」
優花里「その質問には不肖、秋山優花里がお答えしましょう!」
翔太郎「お、おう」
優花里「電撃戦の定義には諸説ありますが、狭義においては第一次世界大戦後に確立された装甲部隊を中心としたドクトリンのことを言います」
亜樹子「ドクトリン?」
優花里「ああすみません、軍事理論、指導方針のようなものだと思ってください」
亜樹子「わ、わかった」
しばらく優花里ちゃんの独擅場が続く。
彼女は明朗な声色で話しながら、ホワイトボードに読みやすい文字を散りばめる。
しかし知らない言葉だらけで俺と亜樹子はちんぷんかんぷん、本当に日本語で喋っているのか? と思ってしまうほどだった。
優花里「というわけで、戦車と大量の無線機により、敵の弱点の把握と即時撃破を可能にした画期的戦術なんです」
みほ「簡単に言うと、戦線をえいやっ! て突破して敵が混乱してる隙にボコボコにしちゃう感じです」
優花里「流石西住殿、簡潔にまとめる力も一流です!」
翔太郎「なんだかよくわからねえが、その電撃戦の記憶が重要なんだな」
我ながら間抜けなセリフに、相棒がわざとらしくため息をついた。
フィリップ「翔太郎、キミの理解力の無さには感嘆するよ」
翔太郎「俺のことは良いから! 続き!」
ほんの少しの気恥ずかしさに、俺はソフト帽をかぶり直した。
フィリップ「わかった。この電撃戦の記憶だが、僕たちが戦って感じた電気を操る能力の他に、機動力、防御力も大きく強化されるものだ」
翔太郎「確かに、ルナトリガーの誘導弾が全然通用しなかった」
亜樹子「速くて硬いって、ズルいじゃん!」
フィリップ「そう。亜樹ちゃんの言うとおりブリッツメモリは理不尽なほど強力だ。しかしその真価はどうやら戦闘力では無い」
優花里「十分兵器として強力に思えますけれど」
フィリップ「西住みほ、キミならわかるんじゃないか?」
みほ「はい。おそらくは」
翔太郎「なんなんだ、いったい」
みほちゃんは俺たちを見回すと、少し呼吸を整えて話しだした。
みほ「電撃戦の特徴として先程優花里さんが言ったこと、その一つに通信網の整備ということがあったと思います」
翔太郎「ああ、確かそう言ってたな」
みほ「通信網と言っても現代に生きている私達にその価値はわかりづらいですけれど、広い戦場で起きていることをタイムラグ無く司令部が把握できることは、とても強力です」
みほ「そしてブリッツドーパントは電撃戦の記憶を持ち電気を使うドーパント。なら通信網に相当する能力も備えていると考えられます。そうですよね、フィリップさん」
彼女の言葉に対しフィリップは大仰に頷く。
フィリップ「素晴らしい。その通りだ。そしてキミの説明は最後の一ピースをはめることで完成する」
優花里「通信網を活かすには指令を出す人物が必要。つまり指揮官……」
翔太郎「ジェネラルメモリ、か」
フィリップ「そう。西住みほの母親が持つそのメモリこそ、すべてのブリッツを統べるものに他ならない」
みほ「お母さん……」
母親がドーパント犯罪に加担している。
ショックだろう。
俺は暗い空気を気にしない風を装って、相棒に声をかける。
翔太郎「ジェネラルメモリの能力は何なんだ?」
フィリップ「ああ、それは……」
ここまで
10月2日のスピリッツは絶対買いましょう(ダイマ)
その時、俺のスタッグフォンが着信音を鳴らした。
翔太郎「照井? もしもし」
照井『ハァ、ハァ……』
翔太郎「おいどうした! 何かあったのか?」
照井『ぐっ、すまない。ブリッツメモリを奪われた。恐らく左が戦ったのと同じ相手だ』
翔太郎「なんだって!?」
照井『俺は俺で奴を追う。お前たちも、気をつけろよ』
翔太郎「追うってお前、負傷してんじゃねえのか? おい、照井!」
しかし電話はそこで切れてしまう。
亜樹子「竜くん、どうかしたの?」
翔太郎「敵にやられたらしい」
亜樹子「えっ!」
翔太郎「ま、それでも一人で追いかけるってさ。んでフィリップ、続きだが」
亜樹子「ちょっと待って!」
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