【ナナシスSS】 episode. Le☆S☆Ca - 艶聞月夜 - (19)

Tokyo 7th シスターズのSSです。字の文あります。
作中ユニット、Le☆S☆CaのCDにあるドラマパート、レスカ、温泉に行く。の巻 で入浴後3人はすぐに寝たことになっていましたが寝ていなかったことを想像したSSです。

出来るだけ小説版の空気に近づけましたがキャラが崩れてたりしたらすいません。



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「……ねぇ、起きてる?」

美味しい夕食に舌鼓を打ち、気持ちのいい露天風呂を存分に堪能してからしばらく。
自動販売機で見つけて、思わず揃って3人して顔を見合わせてからクスクスと笑いあってしまったレモンスカッシュを一人1本買って。

甘酸っぱく、少しほろ苦い爽やかな自分たちの名を冠するそれを飲みつつ、温泉上がりの火照った体を冷ました後に部屋へ戻ると、お布団が綺麗に3つ、川の字に敷かれていた。

TVをつけて、また取り留めのないおしゃべりをしたり、ナナスタの他のメンバーともホロコンでメールをして今日のことを話したりして。

一息ついたところでレナが「それじゃあそろそろ寝よっか」、と切り出したので就寝の準備を3人して整える。

先ほど買った、3人とも飲みきれなかったレモンスカッシュは冷蔵庫にしまって、歯磨き、スキンケア、お手洗いなどを済ませる。

準備も整い、電気を消すところではホノカが「ウチ、真っ暗だと寝れんたい……」と少し顔を赤らめて恥ずかしそうに告白するので豆電球をつけることに。

いつも全部消して寝てるキョーコは少し不満げだったが、「そういえば、前に泊まった時もそうだったわね」、としぶしぶながら納得していた。


寝る場所は、怖がりそうなホノカを真ん中に置いて、左右の布団へキョーコとレナが入る。

頬をちょこっと膨らませながら「ウチ、そこまで子供じゃなか」なんて言ってたけど、自分でも暗闇が怖いことを告白した後だったからか説得力に欠けると思ったのか声は大人しめだった。

『それじゃあ、おやすみなさい』

3人の声が揃った挨拶の後、静けさが訪れる。

それからしばらくして、切り出したのがキョーコの一言だった。


「……うん、起きてるよ」

「ウチも~」

「まあ、何があるってわけじゃないんだけど。……こういうときって、何か寝れないのよね。修学旅行の時とかもそうだけど」

「あー、確かにね。ついつい話をしたくなっちゃうというか」

うんうん、と暗闇の中でも分かるくらいにホノカが頷く。

「秘密にしてることとか、そういうの話しちゃったりするんよねえ」

「そうそう。たとえばコイバナ、とかね。ねぇ、キョーコ」

こちらも見えなくともニヤリとしているのが分かるような声色でレナが問いかける。

「な、なんでコイバナで私なのよ」


「いやぁ、だって。ねぇ?」

「だって、なによ……」

「キョーコ、分かりやすいからさ」

「……支配人さんのコト」

ホノカが、少し躊躇いがちにその名を出した途端。

「は、はあぁ!?なんで私がアイツのこと好きみたいになってるのよ!」

「キョーコちゃん、しぃー……」

少し大きめの部屋とはいえ、夜中の旅館なので他のお客さんにも迷惑となってしまうとキョーコはすぐに理解して、しまった、とばかりにすぐに口元に手をやる。


しかし、致命的な一言を放ってしまったことをレナが見逃すわけもなく、話を続けていく。

「あれ?でも、ホノカは支配人のこと、だけしか言ってないけど?」

「だ、だって!コイバナなんて言われた後に出てきたらそう思うじゃない!」

さっきとは違い、キョーコが小声ながら語気を強めたように話す。

「でも、キョーコちゃん、ほんとは好きなんでしょ?支配人さんのこと」

「ち、違うわよ。あんなやつのこと、別に、好きなんて……。というか、コイバナならレナにだってあるじゃない!ラブレター貰ってたんだから」

「うぇっ!?いやいや、あれはもう私が断って終わった話だから!」

「たしか、陸上部の先輩さんって言ってたよね」

「そうよ!本当に終わったのかしら」

「レナちゃん、あの後ってその先輩さんとはどうなったん?」

「んー、別に今まで通りに戻ったカンジかな。部活とかでは普通に話するし、アイドル活動の方にも来てくれてるし。そうそう、この前のライブも来てくれて、良かったよ、って」


ここぞとばかりに切り替えしてきたキョーコに押され気味だったレナだったが、ホノカの柔らかい質問で少し落ち着きを取り戻したのか、小気味よく答えを並べていく。

それでもキョーコはまだ納得いかないのか、軽くぼやき続けているが、それに対し、ホノカが優しくたしなめる。

「キョーコちゃん、だめだよ?あんまりレナちゃんのこと疑ってばっかりじゃ」

「うっ。わ、分かってるわよ。ちょっと言い過ぎちゃったみたい。悪かったわね、レナ」

「んーん。別にいいよ。私だって、キョーコの支配人さんとの恋愛事情は気になるしね」

「レーナー!」

あはは、と笑いながらごめんごめんと謝るレナ。
そいうえば、と続けて夜目にも慣れ始めたのか、自分の隣で寝ているホノカの方を見て再び話を切り出す。

「ホノカってそういう相手いないの?ホノカ自身は奥手っぽいけど、アイドル始めて男の人から言い寄られる、みたいのとかさ」


「ううう、ウチ!?ウチは全然、前にお泊りした時も言ったけどそんなのなかよ?」

「相変わらず慌てすぎよ、ホノカは……」

「うーん、でも、どうなんだろ。……支配人とかは?」

ピクッ、とキョーコが反応したのがレナからは相変わらず仰向けに寝転んでいるホノカ越しに見えた。

「し、支配人さん!?確かに優しい人だし、誠実でカッコいい人とは思うけど、別に好きとか、彼女になりたいとか、そういうんじゃなかぁ……」

最後になるにつれ口をもごもごとさせながら答えるホノカ。

「別にカッコよくはないでしょ、アイツは。まあ、確かに人がいいのはあると思うけど」

ゴロ、とキョーコも寝返りを打ってホノカの方を向くようにしながら返事をする。


それに、ふーん、とレナがまた面白そうに合槌をうちながらこちらを向いたキョーコに視線をくばせながら続ける。

「でもさ、ホノカにドラマの仕事が来た時の練習で彼氏役を指名したのも、支配人だったよねえ」

「あぁ、私たちがホノカの練習役をした時、最初に頼んだのはアイツにだったわね……」

「あ、あれは、他に頼める男の人がいなかったからって言ったと!」

「それに、私とキョーコでユメノを追い返したあと、支配人さんと二人きりになったでしょ?あの時とかなにかあったんじゃない?」

ホノカが段々と恥ずかしさが限界に近づいてきたのか、掛布団の裾をギュッと掴んで口元まで被せて隠れるようにし、キョーコも気になって仕方ないのかホノカへ目線を逸らしたり合わせたりしている。

「あああ、あの後は、普通にお話ししながら遊園地を回っただけやけん!特に、何もなかったとよ!」

「……怪しい」

思った以上に反応しているホノカに驚いてしまったのか、ボソッとそんな言葉がキョーコの口から洩れてしまう。


「ち、違うけんね!キョーコちゃん、何もなかったと!」

「ほんとかしら……」

「はいはい、ストーップ!ごめんごめん、ホノカからかい過ぎたよ。キョーコも、あんまりムキにならないであげて」

むっすりとした顔で訝しむキョーコの様子が目に見えるようで、自分のせいでほんの少し修羅場になっているのを悪く思ってか、仲裁に入って場を落ち着けようとするレナ。

キョーコも先ほどに続き疑りすぎたと思ったのか、素直にホノカへごめん、と謝る。
ホノカも、「ウチこそごめんね」と、謝って一息つく形になった。

それからしばらく無言のまま時間が過ぎたが、しばらくして、今度はホノカが話を切り出す。

「……あのね、キョーコちゃん、レナちゃん」

「……なに、ホノカ」

「ウチね、さっきは違うって言ったけど……」

ここで言葉を区切ってから、一息すう、と呼吸を入れて、意を決したように話す。


「ウチね、ウチ……。支配人さんのこと、ちょっと、いいなぁ、って思ってたんだ……」

「……そっか」
「……そうなの」

打ち明けられたレナとキョーコは、それでも何となく予感めいたものがあったのか、それほど強い驚きもなく受け止めることができたようで、大きく取り乱さず返答ができていた。

「うん……。でもね!今すぐお付き合いしたいとか、そういうのじゃないのはほんとうなの。それにね、キョーコちゃんもきっと、って思ってたから……。言い出せなくって……」

「……馬鹿ね。私のことは別にいいのよ。……確かに、私もあいつが。……支配人のこと、好きよ。でも別にホノカに諦めてほしいなんて思ってないわ。誰が相手だって、あいつの方から私のこと好きでたまらない、ってしてやるんだから」

いつにも増して、自信満々な様子で答えるキョーコ。

それでも、不安が入り混じった虚勢に近いことが分かるくらいには3人で過ごした時間は長くなっていて。

「……えへへ、そうだよね。ごめんね、ありがとう、キョーコちゃん」


「……なんでありがとうなのよ。全く、あんなやつのこと好きになるなんてホノカも趣味悪いんだから」

「とか言って、キョーコもそんな支配人のこと好きなんじゃん?」

「もうっ、レーナー!……そうよ、どうせ私はあいつが好きで趣味良くないわよ!」

「あはは、ごめんごめん!でもさ、やっと言ってくれた感じがあって、けっこう嬉しいかな、わたしは」

「ウチでも分かるくらいには、態度に出てたけんねえ」

「ホノカにも分かるくらい、って。……それって分からない人はいないくらいじゃない」

「うぅ、そこまで……。キョーコちゃん酷かよ……」

「まあ、ナナスタの殆ど、それこそ支配人当の本人以外にはバレバレみたいな状況でさ。いつ言ってくれるのかなー、とは思ってたわけよ」


キョーコも恥ずかしさが頂点に近づいてきたのか、仰向けからうつ伏せになって枕に顔を埋めたり足を時折ばたつかせながら答えていく。

「……伝えるの、遅くなったのは悪くは思ってるわ。でも、言いにくいじゃない。……それこそ、アイドルやってるのに」

「まあ、そうだけどねえ」

「それに、キョーコちゃんも結構奥手っぽそうだし!」

自分の評価が思った以上に、自分の核心部を突かれていたことに少し驚きつつ、もうどうにでもなれとばかりにふう、と一つため息をついて「まあ、今更否定はしないわよ」とキョーコがややもすれば投げやりに聞こえるくらいに返答する。

それを聞いた二人は、今ならとばかりに次々と質問を投げかけていく。

「ねぇねぇ、どうやって支配人さんとは知り合ったと?」
「好きになったキッカケとかさ、あったりするの?」

「そ、そんな一遍に聞かれても答えられないわよ!……そうね、アイツと初めて会ったのは…………」

時に笑って、時に驚いて、時にからかって。
照れながら、恥ずかしがりながら、お互いに聞いたり、聞かれたりで秘めていたことを打ち明けていくなかで、夜は更けていく。


いつの間にか布団に入り数時間が経っていたようで、話もひと段落し、ふと会話が途切れたところでホノカが思いついたようにポツリと声を出す。

「ねえキョーコちゃん、レナちゃん。もう一回温泉、行かんと?」

「いいけど、なんでまたこの時間に?」

少し苦笑いしながらレナが答える。

考えがまとまってきたのか、むしろ纏まらずに勢いにまかせてか、バッ、と飛び上がるように布団から背を起こしたホノカは、両手を小さく握りしめながら言う。

「なんか、みんなでいっぱい喋っちゃったから、一旦リセットしたくて!」

小首を傾げながら「ダメ、かな?」と二人に確認をとる。


「いーんじゃない?わたしも、ちょっと、喋りすぎたし。もう一回さっぱりしてから寝る方がいいかも」

「それもそっか。それじゃあ、さっさと準備して行っちゃうとしますか」

レナがとった音頭に、夜更けを意識したキョーコとホノカが『おー』と小さく顔の高さぐらいまで拳を突き上げて声を揃えた。

それからみんなでさっとタオルを持ってから、レナが「ちょっと先に行っといて」と二人を部屋から先に温泉へ行かせる。

特に変にも思わず、「じゃあ先に行ってるわよ」と言い残し、二人で少し眠いのかとてとてと廊下を歩き、たどり着いた脱衣所ではあっという間に浴衣をはだけて掛け湯をし、誰もいない露天風呂に入っていく。

二人に遅れることほんの数分。
露天風呂に入ってきたレナが持っていたのは。


「いやあ、お待たせー。さすがに3本持つのは手が大変だったよ」

「あら、何よレナ、気が利くじゃない」

「温泉でこういうの、なんかちょっと大人っぽいカンジするねえ」

手にあったのは、最初に温泉へ入った後に買った飲みかけのレモンスカッシュが3本。

お風呂に入りながらキョーコとホノカへ手渡し、三人で目線を合わせてから『かんぱい』とペットボトルをぶつけ合うと、ボコッと不格好な音を鳴らした。

「んー!冷たくて美味しかぁ」

「でももう気が抜けちゃってるわね。微炭酸どころか、超・微炭酸くらいよ、コレ」

「でもさ、なんかそんなところも私たちっぽかったりして」

「そうやねえ、たしかに私たち、Le☆S☆Caっぽくもあるかもしれんねえ」

「もう!二人とも何言ってるのよ!こんなヘナヘナじゃあトップアイドルなんて目指せないわよ!」


ちびちびと気の抜けた炭酸を飲みつつ、キョーコの声にも温泉の心地よさからか『はぁーい』と生返事が返ってくるだけ。

もう、と呆れながらもちょっぴり嬉しそうなキョーコを尻目に、ホノカがふと空を見上げるとそこには大きな満月があった。

「ねえねえ!見て、キョーコちゃん、レナちゃん!月がおっきいよ!」

「あら、ほんと」

「さっき入った時は気付かなかったね」

言われて2人が空を見上げ、しばらく頭上にうかぶ月を眺めながら、わずかにそよぐ風に吹かれていた。


「こうしてると、レナちゃんの高校でマットに寝転んでたこと思い出すねえ」

「あれからも、結構いろいろあったし」

「3人でユニット組んでライブも成功したわね」

寝静まった夜更けのこと。
そろそろ眠らないと、明日のこともあるのだけれど、3人ともまだ少しこうして今日を惜しんでいたかった。

「そうだ!あのね、ウチ、さっきの話で新曲のイメージが浮かんだっちゃけど!」

「え、さっきのって、部屋でしてたコイバナ?」

「あれでどんなイメージが浮かんだのよ……?」

「あのね、初恋のイメージで、あとは私たちにアイドルって道を教えてくれた支配人さんへの想いも少しだけ込めたような歌詞とかで……」

ほんの一言で、ああでもないこうでもないと、ポンポンと会話が続いて、イメージが広がっていく。

この3人でなら、もっともっと遠くまでとべる。

あの日と変わらない夜空からは、同じように微かに月の光が射し込んできていた。

以上、終わりです。
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