綾「今年は二日あるらしいわね」
アリス「うん。二日目の日のことは『二の丑』っていうんだよ」
忍(土曜の牛……いったい何のことなのでしょう)
忍(はっ! そういえば、来週の土曜日は29日……語呂合わせで肉の日)
忍(肉……そうです! きっと土曜日に牛肉を食べる日のことをいっているのですね)
忍「そうですね。今度の土曜日にはお母さんに頼んで夕ご飯は焼き肉にしてもらいましょう」
アリス「へ? なんで急に土曜日の話になるの、シノ?」
綾「それにどうして焼き肉?」
忍「あれ?」
陽子「おーい、何の話してるのー?」
カレン「私も混ぜてクダサイ~」
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綾「……いやいや、土曜日の牛の日じゃなくて土用の丑なのよ」
アリス「旧暦で立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間のことを土用って言って、今では特に夏の土用のことを指す場合が多いんだ」
忍「な、なるほど」
陽子「じゃ、丑の日ってのは? 丑って干支のやつだよね?」
綾「年とは別に日にちも十二支で表すのよ。子の日から始まって丑の日、寅の日……って感じで」
カレン「では12日たったらまた子の日に戻るってことデス?」
アリス「そうだよ。土用は18日間あるから、その間に丑の日が2日間回ってくる年があって、それぞれ『一の丑』『二の丑』って呼んでいるの」
忍「な、なるへそ」シュー
アリス「シノ、大丈夫?」
カレン「シノの頭がパンクしちゃってるデス!」
忍「すみません、せっかく丁寧に説明してもらったのに……私の頭では理解できなくて」
陽子「まあ、私もよく分かってないから気にするな」
綾「難しい話はこれくらいにしておいて、土用の丑といえばやっぱりウナギよね」
カレン「Oh,eel! あのニョロニョロしたやつデスね!」
アリス「土用の丑の日にウナギを食べるっていう習慣は江戸時代に平賀源内が発案したって説が有名だよね」
忍「江戸時代って、随分古いんですね」
陽子「マジか~。てっきりバレンタインみたくスーパーとかが売り出すためにPRしてるのかと」
忍「でも何でウナギ押しになったんですか?」
綾「そういえば、どうしてかしら? 暑い時期に栄養価が高いウナギを食べて精を付けるためってよく言われるわね」
アリス「丑の日だから『う』の付く物を食べると良いっていう風習があったって説もあるよ」
アリス「うどんとか梅干しとか、シノが言ってた牛肉を食べる習慣もあったらしいけど、今じゃなくなっちゃったみたい」
陽子「へぇ~」
カレン「イギリスでもウナギ、食べるデスよ! 前に地元のウナギ料理店にいったことがありマス」
陽子「へー、向こうでも食べるんだ。やっぱ蒲焼きとか?」
アリス「蒲焼きは日本では主流だけどイギリスではあんまり見ないかな。それに食文化が変わってきて、昔ほどウナギを食べなくなってるらしいよ」
カレン「確かに頻繁に食べたりはしマセンね。私が前に食べたのはウナギのゼリー! イギリスの郷土料理デス」
陽子「え、ゼリー……? ウナギの?」
アリス「煮こごりとも言うよ。ウナギは煮込んだらコラーゲンが溶けて、冷やすと固まってゼリーみたいになるの」
忍「ゼリーというと、デザート用なんですか?」
アリス「デザートというよりはおかずかな。お酢で浸したり胡椒をかけたりして食べるよ」
綾「ところてんみたいな感じなのかしら?」
カレン「ネットに画像がありマスよ」シャッシャッ
陽子「どれどれ」
忍「ほほう」
綾「私も見せて」
陽子「うん……何か……」
綾「お、おいしそうね(棒)」
アリス「でしょ~」
忍「イギリスの料理! ステキですねっ! ぜひ味わってみたいです」
陽子「えっ」
アリス「じゃあシノ、今度、私が作ってあげるねっ」
カレン「パパに頼んで活きのいいウナギを仕入れてもらうデス!」
忍「ありがとうございます、二人とも」
アリス「ヨーコとアヤも家に呼ぶから安心してね」
カレン「イギリス料理を思う存分味わってクダサイ」
陽子「あ……うん……」
綾「あ、ありがとう……」
陽子(どうしよう……)
綾(これは絶対に食べたくないわ……!)
穂乃花「カレンちゃん、お菓子食べる?」
カレン「あっ、ホノカ!」
穂乃花「これ、休みの日に家族で浜松に行ったときに買ったおみやげなんだけど」
カレン「これは……」
穂乃花「うなぎパイだよ」
アリス「ウナギのパイ?」
陽子「おお、あの名物の!」
穂乃花「みんなの分もあるからどうぞ」
カレン「んん~、デリシャス!」
アリス「想像していたのとはちょっと違ってけど、おいしいお菓子だね」
綾「イギリス的なウナギパイ……今なら想像がつくわ」
陽子「やっぱ日本の食べ物がいいなー、私は」
綾「ち、ちょっと陽子! イギリス料理をディスっちゃだめよ!」
陽子「え、いやいや、そんなつもりはないって!」
アリス「でぃする?」
カレン「私は日本の料理もスキー♪ 和食も洋食もそれぞれ個性があっていいと思うデス!」
アリス「私もだよ~」
綾「……そうよね。食文化も個性みたいなものよね。個性はお互い尊重しなきゃね」
陽子「うんうんっ」
綾・陽子(でもイギリスの料理はちょっと……)
忍「ありがとうございます、穂乃花ちゃん。おいしかったです」
穂乃花「どういたしまして」
穂乃花「へぇー、みんなウナギの話してたんだ」
カレン「ホノカがドヨーの日にウナギ食べるデス?」
穂乃花「んー、どうかなあ」
陽子「穂乃花んちの店は土用の丑メニューでうな重出したりするの?」
穂乃花「うちは洋食屋だからうな重は出ないよ~」
カレン「じゃあウナギゼリーを出せばいいのデス! 洋食デスよ」
穂乃花「ウナギゼリー?」
カレン「今度、私が作って来るデス。ホノカも是非味わってクザサイ」
穂乃花「え、カレンちゃんが作ってくれた料理を……私に?」
カレン「いつもお菓子をもらってるノデー。今度は私からホノカへのプレゼントデス」
穂乃花「カ、カレンちゃん……」うる
穂乃花「ありがたき幸せ……! 喜んでいただきます……!」
陽子「……」
綾「……」
陽子「穂乃花にはウナギゼリーの画像、見せないでおこう……」
綾「そうね、せっかく喜んでるし……」
忍「だいぶ日も暮れてきましたね」
アリス「そうだね。そろそろ帰ろうか」
――――
――
カレン「それでは私はここで~。みんな、夏休みをENJOYしマショウ!」
陽子「カレンもなー」
綾「夏休み……みんなと会えなくなるとちょっと寂しいわ」
陽子「そう? 今度さっそくしのの家に遊びに行くって約束したじゃん」
綾「そうだけど……やっぱり学校で、毎日会えなくなるのが寂しいっていうか」
陽子「そんなことより土用とか丑の日とかウナギの蘊蓄とか、アリスもだけど綾もいろいろ知ってて凄いなー」
綾「べ、別に詳しいっていうか、普段からいろんな本を読んだりしてたまたま知ってただけで……」
綾「って、そんなことよりって何よ! 大事なことなのに~!!」
陽子「わっ、ちょっと綾。ごめんって」
――――
――
アリス「ただいま」
忍「ただいま帰りました」
アリス「あれ……この香ばしい匂いは」
忍「アリスの匂いですか?」
アリス「って違うよ~! キッチンから漂ってくる匂いだよ~」
「二人とも、ごはん用意できてるわよー。手を洗ってきなさいね」
じゅわ~
アリス「はむっ……んんー。甘いたれがしみ渡ったあつあつのごはんと」
忍「柔らかくてぷりぷりとしたウナギの組み合わせが素晴らしいですね」
勇「なにー? 唐突な食レポ?」
母「ちょっと早いけど、たまには奮発しないとね」
アリス「ありがとう、これで今年も日本の暑い夏を乗り越えられそうだよ」
忍「アリス、ウナギの蒲焼には山椒が合うんですよ。粉山椒をかけてあげますね」ドバー
アリス「ありがとう、シノ。……はっ、はくちゅっ! けほけほッ」
忍「あ、すみません! これ胡椒でした!」
アリス「どっちにしろかけ過ぎだよ~! へくちゅっ」
――――
――
お久しぶりです。忍です
今日のアリスは土用の丑の日についていろいろ説明してくれました
アリスは本当に日本の文化に詳しいです
私ももっともっと外国の文化を知って、アリスといろんなお話がしたいです
次にイギリスに行ったら、本場のウナギゼリーを食べてみたいです
それでは、また
忍「アリス、これを英語に訳してくれませんか。エアメールで出したいので」
アリス「シノ、外国の文化と一緒に外国の言葉をしっかり勉強しようね……私も協力するから」
(終)
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