【モバマスSS】です
――――プロダクション、敷地内カフェ
ワイワイガヤガヤ
「うっま……え、なにこれ……うまい!」「もうだめだ……落ちた……」
「疲れたなぁ……なんかすげえ怖そうな人いたし……」「結果楽しみだな」
ワイワイガヤガヤ
李衣菜「今日は妙に人が多いなぁ……空席全然なさそうだし、どうしたんだろう?」キョロキョロ
李衣菜(しかも店員さんの姿も見えないし……相談しようと思ってたけど、これは無理っぽいかも)ションボリ
李衣菜「しょうがない、とりあえず今日は――」
ダダダダッ!!
李衣菜「うん?」
菜々「お、おまたせしましたー!」ズサーッ
李衣菜「うわっ菜々ちゃん!?」
菜々「ぜぇぜぇ……おっほん、お客様お待たせして大変申し訳ありませんでした。席のご用意ができまし……あれ?」キョトン
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菜々「どうして李衣菜ちゃんがここに?」
李衣菜「いやちょっと相談が……そ、それはともかく、今日はまたカフェがどうしてこんなことに?」
菜々「それがですね、今日接客を担当する予定だった方達が突然事故に巻き込まれたり、ご家族が急病になられたとかで……」
李衣菜「出られなくなったってことですか? でもだったら他の店員さんに代わりに出てもらうことだって」
菜々「本来はそうなんですが、どうも上手く調整がいってないみたいで、それでナナが急遽」
「店員さーん! 注文いいですかー!」「ウサミーンこっちもー!!」
菜々「はぁいただいまー!! そ、そういうわけなのでちょっといってきまーす!」タタッ
李衣菜「あっ菜々ちゃん!」
菜々「お話はあとでー!! ――お待たせしましたー♪ ご注文をどうぞっ!!」バタバタ
李衣菜「……とんでもなく忙しそうだ……けど、ほんとどうしてこんな……」
カランカラン タタタッ
ちひろ「菜々ちゃんごめんなさい! 可能性がありそうな人に全員聞いてみましたが、やっぱり今日はだめみたいです!」ドンッ
李衣菜「あたっ!?」
ちひろ「あ、あら李衣菜ちゃん? ぶつかってごめんなさい、ちょっと慌ててたもので……」
李衣菜「っつつ。い、いえ大丈夫です。それより、ちひろさんがそんなに慌ててるなんて珍しいですね、なにがあったんですか?」
ちひろ「えぇ。実は今日プロダクションのいくつかの部門で大規模なオーディションが開催されていまして……これなのですが」ピラッ
李衣菜「予定表ですか? ――うわっ、アイドル部門以外ほとんど全部の所でやってるじゃないですか!?」
ちひろ「ええ。それでオーディションに来られた方々の昼食会場をこのカフェに指定したのですが……」
李衣菜「もしかして、さっき菜々ちゃんが言ってた店員さんの調整が上手く行ってないのがかなり問題に……?」
ちひろ「はい……今日のために万全の勤務体制を整えたつもりがお恥ずかしながら……」ガックリ
ちひろ「でもまさかホールスタッフの方達がここまで集中的に出勤不可になるなんて……はぁ」
李衣菜「つまり、菜々ちゃんが今忙しそうにしてるのは」
ちひろ「もうホールスタッフに臨時で入っていただけそうなのが菜々さんだけだったので……」
李衣菜「そうだったんですか……」
ちひろ「一応念のため古い記録もあたってみましたが、今日はやはりこのまま菜々さんに動いてもらうしか……」
李衣菜「さ、さすがにこの人数を菜々ちゃん一人は無理じゃないですか……? だって現に」
ワイワイガヤガヤ
「店員さん料理まだですかー?」「こっちは注文お願いしまーす!」
「すいません、お水を……」「ウサミンの働く姿が見れるなんてオーディション受けに来て良かった……」
ワイワイガヤガヤ
菜々「ひぇぇぇ……! えーとえーと、つぎは、つぎは……」グルグル
李衣菜「……そろそろ菜々ちゃん限界っぽいですよ?」
ちひろ「うぅ……全てのオーディションが終わるまでまだ時間がありますし、その間はこれがずっと続くことを考えると」
李衣菜「まず間違いない菜々ちゃん倒れますよね……」
ちひろ「しかしプロダクション内カフェのスタッフとはいえ職員となる人間は、ちゃんと素性調査をする必要がありますし」ブツブツ
ちひろ「急に新しいスタッフを入れてもついていけないでしょうし……しかし経験者が軒並み出勤不可とあっては」ブツブツ
ちひろ「私もこの後また情報操作をしなくてはならない以上手伝えませんし……なにか、なにか手は……」ブツブツ
ちひろ「うーん……うーん……」
李衣菜「ちひろさんが本当に悩んでる……あの、この後から来る人達にはカフェの利用をやめてもらうっていうのは駄目なんですか?」
ちひろ「それも手では……でもそうなると今日のために普段より多めに注文した材料にかけた資金が無駄……しかし菜々さんが……」
李衣菜「……あんまりいい手じゃなさそうか……あっ、じゃあ私が今からホールスタッフとして手伝うってのはどうですか?」
ちひろ「……えっ?」キョトン
李衣菜「私、前にバリスタのお仕事をしてから、その感覚を忘れないためにここで時々お手伝いさせてもらってるんですよ」
ちひろ「そう、なんですか……? そういえば、そんな報告もあったような……」
李衣菜「それに接客に関してもMasque:Radeのメンバーでここに集まる時はよくやってますから、大丈夫だと思います」
ちひろ「ですが李衣菜ちゃんは今日お仕事もレッスンもお休みでしたよね? それを……」
李衣菜「菜々ちゃんがあんなに大変そうなのは見過ごせませんって! もしちひろさんがいいっていうなら、今からでも入りますから!」
ちひろ「うーん……李衣菜ちゃんの接客ですか……まだ部外者の方に菜々さんが接客しているだけでもすでに勿体無いのに……」
李衣菜「だめですか?」
ちひろ「……状況的には仕方ありませんね。分かりました、李衣菜ちゃん、臨時のホールスタッフをお願いしてもよろしいですか?」
李衣菜「任せてくださいよ! それじゃあすぐに着替えて――」
ちひろ「あ、少し待って下さい。その前に、今日の報酬としてお給料への上乗せの他になにかしてほしいことはありますか?」
李衣菜「してほしいこと、ですか?」
ちひろ「はい。アイドルの方に無理なお願いをするのですから、私のほうでもそれに見合った対価をだしませんと」
李衣菜「大げさな気もしますけど…………うんっ、だったら一つお願いというか、許可してほしいことがあるんですけど」
ちひろ「許可ですか?」
李衣菜「はいっ! 実はですね――」ゴニョゴニョ
ちひろ「――はぁ、それは構いませんが。いいんですか? もっと大きな要望でも受け付けますが」
李衣菜「これくらいでいいんです! それじゃあちひろさんから許可を貰ったので私はこれから接客用に着替えてきます!」タタッ
ちひろ「あっ! ……ほんと、欲がないってのも困り者ですね。けど、よろしくお願いしますね、李衣菜ちゃん」
――――数分後
ワイワイガヤガヤ
「店員さーん!」「料理がまだこない……」
「ウサミンこっち向いてー!」「オーディション受かってるかなあ……」
ワイワイガヤガヤ
菜々(あぅぅ、やっぱりナナ一人じゃもうカバーしきれません……! 人がこれ以上増えたら……!)
カランカラン
「あの、昼食ここで食べれるって聞いてきたんですが……」「すごいいっぱいいるけど大丈夫かな?」
菜々(そ、そんなー!? え、えと、とりあえず、次することは、次するべきことは……!)アワワワ
李衣菜「――はい! オーディションを終えられた方ですね? 席にご案内させていただきます!」
菜々「……へ?」
「良かった、ここで合ってた」「……というか、この店員さんどこかで見覚えが……」
李衣菜「どうぞこちらへ――では、ご注文がお決まりになりましたらまたお呼び下さい。お水はセルフサービスとなっております!」
「ありがとう」「……えっ、まって、え、あの人まさか……!」
菜々「……ちょ、ちょっと李衣菜ちゃん!?」グイッ
李衣菜「ととっ……! ど、どうしたの菜々ちゃん?」
菜々「どうしたもこうしたもないですよ! どうして李衣菜ちゃんまで接客に……」
李衣菜「菜々ちゃんが大変そうだったから手伝いたくって。迷惑だった?」
菜々「め、迷惑だなんて……むしろ感謝しかありませんよぉ~!! ありがとう李衣菜ちゃんっ! ナナ……もう壊れるかと」グスッ
李衣菜「もう菜々ちゃんも大げさだって。とりあえずここから二人で一緒に頑張ろっ! 多分まだまだ」
カランカラン
「や、やっと終わった……怖かったよぉ……」「呼吸止まるかと思った……」
「チンピラみたいな人がいたんだけど……」「子役の子かと思ったらあれでプロダクションの人って……」
ゾロゾロゾロゾロ
李衣菜「……まだまだいっぱい来るみたいだからさ」
菜々「……ウサミンパワー、もちますように!!」
――――4時間後
「ごちそうさまでした」
李衣菜・菜々「「ありがとうございましたー!!」」
カランカラン
李衣菜「……ふぅ……菜々ちゃん」
菜々「李衣菜ちゃん……!」
李衣菜・菜々「「終わったーっ♪」」ドサッ
菜々「……つ、疲れました……ナナはもう働けません……」グデーッ
李衣菜「会話を聞いてた限りさっきの人達でオーディションを受けに来てた人は終わりみたいだね。はぁー何人来てたんだろう……」
菜々「もう思い出したくもありません……ナナ、次からはちひろさんから頼まれてもこんなこと引き受けないようにします……」
李衣菜「それがいいや……ところで菜々ちゃん、休憩に入ったほうがいいんじゃ?」
菜々「いいんですか? 今日はディナーが取りやめになったとはいっても、18時までは営業することになってるんですよ?」
李衣菜「菜々ちゃんもうくたくたでしょ? 私は途中から入った分まだ余裕あるから! だからほら休んで休んで!」ニコッ
菜々「でも……」
李衣菜「ここって正直ランチとディナーのとき以外はほとんどお客さんいないし一人でも大丈夫! 私にまかせてよ!」
菜々「うぅ……李衣菜ちゃんの優しさが骨身に染みる……! なら、1時間だけ休憩させてもらいますね?」
李衣菜「うん、ゆっくり休んで」
菜々「うんしょ……っと……それじゃあ李衣菜ちゃん、またあとで……」ヨロヨロ
李衣菜(ほんとに疲れてたんだなぁ、フラフラしてたよ菜々ちゃん。まぁ、あれだけの人数を相手にしたら流石にね)クラッ
李衣菜「っと、へへっ……私も人のこと言えないか……! でも、よっと!」トンッ
李衣菜「ここで弱音を吐いたらロックじゃないぜ! さーってと、菜々ちゃんが戻ってくるまで軽く準備でもするかっ!」キュッ
李衣菜(お客さんは来ないだろうし、あとはのんびりやって過ごせば……上手くすればみくちゃんがロケから帰ってくる時に)
カランカラン
李衣菜「……へ?」
凛「……あれ?」
奈緒「李衣菜なにしてるんだここで」
加蓮「その制服着てるってことは」
李衣菜「……あー、えと」
加蓮「……ちょっと、私達お客さんなんだけど? 李衣菜?」
李衣菜「あーはい、うんっ……いらっしゃいませ! 三名様ですか?」
加蓮「みてのとーり」
李衣菜「では空いている好きな席にご自由におすわり下さい。今メニューをお持ちしますね!」
加蓮「よろしい♪」ウンウン
奈緒「なんでそんな偉そうなんだよ加蓮……」
加蓮「だって李衣菜が店員だからだもーん♪」
凛「とりあえず適当に座ろうか……けどほんと、どうして李衣菜がここで店員を……」
加蓮「アイドルよりこういうお仕事への適性のほうが高いって判明して配置換えされたとか?」
※渋谷凛
http://i.imgur.com/SsygIpX.jpg
※神谷奈緒
http://i.imgur.com/ZxnMxUL.jpg
※北条加蓮
http://i.imgur.com/SqNGUtF.jpg
奈緒「んなわけあるかっ! ……ない、よな……?」
凛「まぁ、さっきの切り替えの仕方なんかかなりしっかりしてたもんね。似合ってた」
李衣菜「へへっ、そう言って貰えるなら嬉しいなっ!」
凛「あ、戻ってきた」
李衣菜「はい、こちらメニューになります。ただいまの時間はケーキセットか、期間限定のかき氷がオススメとなっております」
加蓮「……ふふっ」プルプル
李衣菜「もう加蓮ちゃん笑わないでよ!」
加蓮「ごめんごめん! あんまりにも切り替え上手いからつい……っ♪」
李衣菜「Masque:Radeメンバーで集まった時に一番そういうこと気にさせるようにしたの加蓮ちゃんのくせに……」
奈緒「……なにやってんだよ加蓮」
加蓮「いいもんでしょ?」
奈緒「…………それは、まぁ」
凛「分からなくもないかな」
李衣菜「なにがいいのかさっぱり分からないけど私からも聞いていい? 三人でここに来るのって珍しい気がするけどどうしたの?」
凛「うん、まぁ単純なことなんだけど」
奈緒「プロダクションの近くにあるファミレスやジャンクフードの店にしばらく行けなくなっちゃてな」
李衣菜「それはまたどうして?」
凛「ここのところ期末試験の勉強を三人でするためにファミレスとかで長く居座ってたのが不味かったみたいでさ……」
加蓮「ええっと……あった、ほらこれ」スッ
李衣菜「なになに……『トライアドプリムスの三人をファミレスで見かけちまったぜ!』『ハンバーガー屋で駄弁ってたの目撃』」ツー
李衣菜「『TPの三人と会える確率が高い店の住所は』……これホントに?」
奈緒「完全に行動範囲がバレちゃったらしくてプロデューサーさんに怒られちゃってさー……それでしばらく外食禁止になったって訳」
凛「より正確にいうと、このカフェ以外の店では長時間居座るな、だけどね」
加蓮「私のポテト……ジャンクフード……」グスッ
李衣菜「そういうことだったんだ……まぁでも、これだけ書き込みあって写真や動画が撮られてないだけでもよかったんじゃない?」
奈緒「いや、実は写真とかも撮られてたっぽいんだけど……そういうのは優先的にちひろさんが削除してくれたらしくて」
李衣菜「……あぁ、じゃあさっきのしばらく外食禁止は、ちひろさんのお仕事が終わるまでってことか」
凛「だろうね。まぁそれまでは大人しくここでレッスン後のんびりしたりするよ」
加蓮「李衣菜もいるなら弄って暇が潰せるもんね♪」
李衣菜「え、私がここにいるのは今日は偶然だから、そんなこと期待されても……」
加蓮「えぇー!? そんなこと言わずに! ね?」
李衣菜「無茶苦茶だなぁ」
奈緒「というか李衣菜はほんとになんでここにいるんだ? バイト始めた……って感じでもないし」
李衣菜「ほら、今日プロダクションでオーディションいっぱいやってたでしょ?」
凛「……そういえば、見慣れない人達が結構出入りしてたような」
李衣菜「その人達がここで昼食取ることになってたんだけど、ホールスタッフさんが色んな理由で来れなくなっちゃったらしくて」
加蓮「まさか、その人達の代わりに李衣菜が接客したってこと?」
李衣菜「うん、菜々ちゃんと一緒にね!」
加蓮「……ふーん……菜々ちゃんとね……そっか」
奈緒「というか李衣菜って妙に面倒事に巻き込まれる場所に居合わせるよな、なにかの才能なのか?」
李衣菜「あんまりあっても困る才能な気がするけど……まぁいいや。それより、ご注文はお決まりですか?」ニコッ
凛「…………いきなり接客モードにならないでよ、びっくりするから」
李衣菜「ご、ごめん。でもほら、私今は一応ホールスタッフだからちゃんとお仕事もしないとねって!」
加蓮「はいはい。じゃあ私は……カフェオレをアイスでお願い」
李衣菜「アイスカフェオレが一つ……あれ? 加蓮ちゃん他には?」
加蓮「今日はいいよ。さっきの話だと忙しかったんでしょ? だから今日は李衣菜の淹れた飲み物だけで許してあげる、優しいでしょ♪」
李衣菜「もー、気を使ってくれなくていいのに……でもありがとっ。凛ちゃんと奈緒ちゃんは?」
奈緒「えーっと……じゃあアタシは加蓮と同じアイスカフェオレと……ショートケーキのセットで」
李衣菜「ショートケーキセット一つ……」カキカキ
凛「かき氷あるんだっけ?」
李衣菜「うん、いい氷使ってるし、かき氷機もかなり性能高い奴だからオススメ!」
凛「じゃあ私はかき氷、味はブルーハワイで」
李衣菜「かき氷ブルーハワイ味……っと。では品物を用意してきますのでお待ち下さい」タタッ
奈緒「……やっぱりちょっとドキっとするよな李衣菜の接客状態」
凛「横にメイド服姿の奈緒が並べばバランスよくなるんじゃない?」
奈緒「そうそうアタシが『ご主人様、ご注文はどうされますかー♪』ってや……らないからなッ!?」カァァ///
凛「惜しかった」
加蓮「録画が間に合わなかった……」ガックリ
奈緒「あぶなかった……」
加蓮「まぁ奈緒の可愛い姿はまたの機会にして、とりあえず今はあっちを撮らないとね」ゴソゴソ
奈緒「あっちって李衣菜をか?」
加蓮「そ、カウンターのとこで作業してる李衣菜をこうして撮って」パシャ パシャ
凛「……へぇ、いい感じに撮れてる」
加蓮「そしてこの画像をLINEのグループで共有して『今日限定の李衣菜店員です♪』……と」トントン
奈緒「それ誰が喜ぶんだ……?」
加蓮「プロデューサーさんとかかな。ほら、良い物見たら教えたくなるでしょ? 奈緒の寝顔とかそういうのとか」
凛「うん、私もハナコや卯月や乃々の可愛い写真が撮れたら皆にちょっと見せたくなっちゃう」
奈緒「……ちょっと待て、アタシの寝顔? まて、それプロデューサーさんに見せたのか加蓮? なぁ、なぁ!?」ユサユサ
加蓮「眼福だったって♪」
奈緒「っ~~~~///」ポカポカポカポカ
加蓮「はいはいくすぐったい……っと」ヒョイ
李衣菜「――相変わらず加蓮ちゃん達三人揃うと賑やかだよね。なにしてたの?」
凛「ちょっといいことしてた」
李衣菜「へぇー……ともかく……ご注文を品をお持ちしましたが、置いてもよろしいでしょうか?」
加蓮「待ってましたー♪」
李衣菜「では失礼します」コトッ コトッ コトッ
凛「綺麗な蒼色、いいね、このかき氷」
李衣菜「以上でご注文の品はお揃いですか?」
奈緒「大丈夫、揃ってる」
李衣菜「ではお会計の際はこちらのボードをお持ち下さい。それでは」
加蓮「どうせ暇になるんだったらこのままここで話してていいんじゃない李衣菜?」
李衣菜「だからお仕事はちゃんとしないと……それにちょっと準備することがあるから」
凛「準備ってなにを?」
李衣菜「ちょっとね。まぁみくちゃんのお仕事の状況によるから、皆に作るかどうかはお楽しみってことで♪」
――――1時間30分後
タタタタタッ!!
ドタンッ!
菜々「寝過ごしちゃいましたー! ごめんなさーい!」ゼェゼェ
李衣菜「――……あれ菜々ちゃん? ……うわっ!? もうこんな時間!?」
菜々「す、すみません李衣菜ちゃん……少し仮眠するつもりが思いの外ぐっすり眠っちゃってたみたいで……」
李衣菜「え、いやいや気にしてないから大丈夫! むしろ思った以上に『コレ』に集中出来て良かったというか……」
菜々「コレ……?」チラッ
李衣菜「わーっ! わーっ! 駄目、まだ秘密だから!!」サササッ
加蓮「そんなこと言わずにいい加減見せてよ李衣菜ー。減るもんじゃないでしょー」
李衣菜「いや食べられると減っちゃうし……」
奈緒「いくら加蓮でもそんなことはしないって……多分」
加蓮「よし、あとで私秘蔵の奈緒の恥ずかしい画像を」
奈緒「加蓮は絶対そんなことしないから大丈夫だ! だから李衣菜見せてやれって!」
李衣菜「弱み握られてるなぁ……」
凛「菜々さんおはようございます、それと騒がしくてごめん」
菜々「は、はぁ……そ、それは大丈夫ですけど……凛ちゃん達はどうしてここに? まさかお手伝いに来てくれたんですか?」
凛「うん、実は奈緒がどうしても菜々さんのようにメイド服を来て接客してみたいって」
奈緒「言ってないからな!? 言ってないからなッ!!」
凛「冗談はともかく私達は普通にお客としてここに来てるよ」
菜々「ええっ!? 李衣菜ちゃん、そんなことなら起こしに来てくれてよかったのに……」
李衣菜「私だけで対応出来る人数でしたし。言ったじゃないですか、まかせてって♪」
菜々「李衣菜ちゃん……」
加蓮「…………でも結局途中から接客せずに黙々とカウンターでなにか作ってたのは誰だったっけー?」
李衣菜「……ごめん」シュン
奈緒「まぁアタシら以外にお客来なかったし、アタシらもなにか新しいもの注文するつもりなかったからいいけど」
菜々「それで、李衣菜ちゃんは本当に一体なにを……? 今日はもうすぐ閉店になりますし……」
李衣菜「……うーん、ロケの状況によったらそろそろ電話が来るはずなんだけど……」
凛「誰の電話を待ってるの?」
李衣菜「みくちゃんだよ。昨日、電話でちょっとした約束をしたから」
加蓮「……あれ? みくだったらLINEで反応があったような……」
李衣菜「そうなの!?」
加蓮「うん――ほら『李衣菜チャン今日はカフェにいるんだ』ってメッセージが」スッ
李衣菜「ほんとだ知らなか……なつきちが『いいもの見たぜ』に智絵里ちゃんが『どうして今日がドラマのお仕事なんだろう……』」
加蓮「あっ」
李衣菜「……ねぇ加蓮ちゃん、もうちょっと画面戻してなにを共有してたのか見せてくれない? いいよね」ニコッリ
加蓮「え、えーっとその……奈緒ぉ……」
奈緒「い、いやアタシに振るなよ!? えっとだな、李衣菜、これは」
カランカラン
奈緒「良かった、お客さんだぞ!」
李衣菜「もう……はい、いらっしゃいま――」
みく「李衣菜チャン」
李衣菜「みくちゃん!? あれ、帰ってくる時は連絡入れるって言ってたのに」
みく「加蓮チャンの写真で李衣菜チャンがここにいるって知って、電話した時お仕事中だと迷惑かなって思ったから……」
李衣菜「そっか……ともかくおかえりみくちゃん」
みく「うん、ただいまにゃ」ニコッ
凛「……なんだかみく、ちょっと疲れてない?」
みく「あ、凛チャンでも分かっちゃうにゃ……?」
凛「なんとなくなんだけど……」
菜々「こう、いつものみくちゃんらしい明るさというかネコチャンっぽさに陰りがあるような……」
李衣菜「そっかやっぱり……にゃんにゃんにゃんでのロケ、みくちゃん頑張ったね」ナデナデ
みく「うん……じゃんけんで、のあにゃんが勝ったから……のあにゃんの選んだお魚料理を頑張って食べたにゃ……」
菜々「みくちゃんのお魚嫌いはかなりのものですからね……むしろ、食べたのは偉いと思います!」
加蓮「でもじゃんけんで負けちゃったのならそれは仕方ない気もするけど……?」
李衣菜「いやそれが、いつものにゃんにゃんにゃんのロケならちゃんと選択肢に肉料理や野菜料理もあるから良かったんだけど……」
みく「今回はどうしてか3択全部お魚料理になっちゃってたのにゃ……」ションボリ
奈緒「……アーニャが選んでもみく自身が選んでも、魚料理を食べるって結果は変わらなかったってことか」
みく「使ってるお魚が違うだけで、今回はとっても辛いロケだったにゃあ……」
加蓮「それで、そのことが李衣菜の準備してたものとどう繋がりがあるの?」
李衣菜「昨日、ロケで食べなきゃいけない料理のことを知ったみくちゃんから電話があってさ」ゴソゴソ
李衣菜「『お仕事頑張るから、頑張ったみくへのご褒美を作っててほしいにゃ!』って突然言われたんだよね」
みく「ちょ、李衣菜チャン! べ、別にいまここで言わなくてもいいにゃぁ……」カァァ///
菜々「自分へのご褒美を用意しておけばどんなお仕事も頑張れますもんね! ナナもこのお仕事が終わったら一杯やるって決めてて」
李衣菜「一杯やるってなにを?」ゴソゴソ
菜々「それはもちろんビー……オッホン! なんでもないでーす☆」
李衣菜「ビー……?」ガリガリガリガリ
みく「えっーっとそれはともかく李衣菜チャン! 頼んでたご褒美はなんなのにゃ!? みく待ちきれないにゃあ!」
奈緒(李衣菜の反応あれマジか)ヒソヒソ
加蓮(マジのだと思うよ李衣菜だし)ヒソヒソ
李衣菜「みくちゃんはせっかちなんだから。けどそろそろ出来るからあと少しだけ待ってね」ゴソゴソ
凛「そういえばさっきからかき氷作ってる……?」
みく「えーっ、みくてっきり李衣菜チャンのハンバーグなんかが食べられると思ってたのに。ちょっと拍子抜けだにゃ……」
李衣菜「それも考えたけど暑い中でお仕事してただろうし、一応ご飯食べてきた後だろうからデザートがいいかなと思ってさ」ゴソゴソ
李衣菜「――出来た! はいみくちゃん、今日のお仕事よく頑張った! お疲れ、ご褒美だよ♪」コトッ
みく「あ……これ……!」
菜々「うわーっ、可愛いですねぇこのかき氷!」
凛(私の頼んだのとだいぶ違う……)
奈緒「フルーツたっぷりな上になんかジュレとかあるぞ……それと……」
加蓮「あの乗っかってるマシュマロの形ってもしかしなくても」
みく「ネコチャンにゃー! まさか李衣菜チャン、このかき氷って」
李衣菜「そ。前にみくちゃん、雑誌見ながら食べてみたいって言ってたでしょ。でもお仕事あってお店に行けそうにないのが残念って」
みく「だからにゃんこのかき氷を作ってくれたの? 李衣菜チャン……ありがとうにゃ……♪」
李衣菜「まぁ写真見ながら再現しただけだし、マシュマロのネコの形ももうちょっと可愛くしたかったけど……」
みく「これでも十分にゃ! ねぇ、写真撮ってもいい!?」
李衣菜「いいけどちゃんと食べてよね?」
みく「もう心配しなくてもちゃんと食べるにゃ! でもちょっとだけ……んふふ~♪」パシャパシャ
菜々「みくちゃんすっかり元気になりましたね」
李衣菜「へへっ、喜んでくれてなによりかな」
加蓮「……まさかとは思うけど、李衣菜がここで働いた理由ってこのため?」
李衣菜「まぁ、結果的にそうなったってだけだけどね。最初はかき氷機を借りられないか相談するために来ただけだし」
菜々「えっ!? そうだったんですか!?」
李衣菜「その後ちひろさんから話を聞いて、手伝ったほうがいいなって」
加蓮「またそんなお人好しなことして……」
李衣菜「でもお陰でここの道具や材料を今日だけ私用で使ってもいいってちひろさんから許可を貰えたし、結果オーライってね♪」
みく「なんか、李衣菜チャンに大変なことさせたみたいにゃ……?」モグモグ
李衣菜「そんなことないって。みくちゃんそれ美味しい?」
みく「もちろんにゃ! 可愛くて甘くて最高にゃ!」ニヘー
李衣菜「だったら今日のことは必要経費だったってことで。みくちゃんが喜んでくれたしそれで十分!」
みく「……もう」
加蓮「あーあっ、まったく、そういうとこ李衣菜らしいんだからホント」
凛「……それで、その余ったマシュマロはどうする気?」
李衣菜「これ? うーん、練習のために使った奴だから形も微妙だし……私が少しずつ食べようかなって」
みく「だったらそれを使ってみんなにも同じかき氷作ってあげればいいにゃ」
李衣菜「へっ?」
みく「そのほうがさっきからじーっと見てくる奈緒チャンだって幸せになれるにゃ!」
奈緒「はっ!? い、いや見てないぞ! アタシはそれが可愛いなんてみて」
加蓮「はいはい。でも今のみくの意見には賛成。私も欲しくなっちゃった」
凛「……私も」
李衣菜「……凛ちゃんはかき氷二個目になるんじゃ」
菜々「だったらナナと半分こしませんか? そうすればお腹を冷やす心配が減りますし!」
凛「うん、それがいいね」
李衣菜「……私が作ることは確定なの?」
加蓮「ここまで来たらあと何個か作るのも変わらないでしょ? ほら李衣菜頑張って!」
李衣菜「まったく、しょうがないなぁ……こうなったらリーナはとことんやってやるぜーっ!」
みく「李衣菜チャン楽しそう……ふふっ♪」モグモグ
――こうしてみくのご褒美用に用意したはずのかき氷を他のメンバーにも振る舞うことになった李衣菜であったが、
全員が嬉しそうにしているのを見るだけで楽しくなり、今日の苦労などすっかり忘れていくのであった。
〈終〉
たまたまお昼時に入った喫茶店での店員の様子を眺めてて思いついたネタ
この季節はやっぱりかき氷おいしい
読んでくださった方ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません