P「新田美波…、よし、この娘に決めた!」 (74)
ある日のこと 346プロダクション前にて
今西部長「ああ、そこの君ちょっといいかな?」
P「ん?俺ですか」
今西部長「ああ、君のことだよ」
今西部長「いやぁ君、実にいい目をしてるねぇ」
P「え、目…ですか?」
今西部長「ああ、とてもいい目だ。うん、私はピーンときたよ」
P「は、はぁ…?」
今西部長「どうだね君、突然の申し出ではあるんだが…」
今西部長「アイドルのプロデュース、やってみないかね?」
P「…は?」
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~~~~~
それから何日か経った後…
346プロダクション 22階 事務所
今西部長「…と、いうわけでだ」
今西部長「君には、この中から一人のアイドルを選んでプロデュースしてもらうよ」
P「はぁ、えっと…、選ぶのは誰でもいいんですか?」
今西部長「ああ、もちろんだとも」
今西部長「このリストの中から、君が一番可能性を感じた子を一人選び、プロデューサーとしてプロデュースしてほしいんだ」
P「な、なるほど…」
P「それにしても、たくさんいますねぇ…」
今西部長「ああ、我が346プロダクションは、業界内でもトップクラスの大手プロダクションだ」
今西部長「規模が大きい分、所属するアイドルの数も多い、というわけだね」
今西部長「まぁ、どの娘も魅力的で迷うとは思うが…」
今西部長「これから君と苦楽を共にする、いわばパートナーを選ぶわけだからね、ゆっくり選ぶといいよ」
P「うーん、そうですねぇ…」
P(ほう、三村かな子…、17歳、身長153cm、バスト…90…!?)
P(す、すごいなぁ…、最近の女子高生は…、うーむ…)
P(…いかんいかん、どうも俺は、困ったときは胸の大きさで選んでしまう悪い癖が…)
今西部長「どうだね?なかなかの粒ぞろいだろう?」
P「え、ええ…、そうですね」
今西部長「悩むだろうが、こういうのはフィーリングも大事だと思うよ」
P「フィーリング…?」
今西部長「ああ、まあ理由は抜きにして、直感で選ぶということだ」
今西部長「この世界だと、案外その直感が大事だったりするんだよ」
P「な、なるほど…」
P(うーん、直感かぁ…、確かに俺、あんまり難しく考えるの得意じゃないしなぁ)
P(…………)
P(…よし、この娘なんて良いんじゃないかな?なんだか清楚そうだし、いかにもなお姉さんキャラって感じだ)
P「今西部長、決まりました」
今西部長「お、どの娘にしたんだい?」
P「えっとですね…」
~~~~~
事務所横の休憩室
P「…ふう、まさか俺がアイドルのプロデュースをすることになるとは」
P「まあ、給料もそんなに悪くないみたいだし、あと営業職もそこまで嫌いじゃないからなぁ」
P「もしかすると、俺にとっての天職だったりして?」
P「……それにしても」
ペラッ
P「ふむ、今日から、この娘が仕事のパートナーになるわけか…」
P「新田美波…、19歳。現在は大学に通いながらアイドル活動を続けている…と」
P「大学ではラクロス部に所属していて、学業の成績も優秀」
P「しかも実家が資産家で、裕福な家庭の中お嬢様として育てられた…と。は~、すごいなぁ」
P「一般庶民の家に生まれた上に、高卒の俺には想像がつかない世界だが…」
P「違う世界で生きているからこそ、お互いにとっていい刺激を与えられるような関係性になるんじゃ…?」
P「ははっ、なーんてな」
コンコンッ
P(お、きたか)
P「どうぞ、入ってください」
ガチャッ
「失礼しまーす」
P「どうも、俺はこれから君のプロデュースをする…」
P「………ん?」
李衣菜「…………」
P「……えっと、誰かな君は?」
李衣菜「…え?多田、多田李衣菜…だけど」
P「た、多田…?」
P「えっと、新田さん…じゃなくて?」
李衣菜「はぁ?おにーさん、誰かと勘違いしてない?」
P(う、うーん…、これは…)
P「す、すまん!ちょっと、ちょーっとだけ待っててもらえるかな?」
李衣菜「え?ちょ、ちょっと…」
~~~~~
事務所
P「うーむ、と言って休憩室に残してきてしまったものの…」
P「一体どういうことなんだ?俺が選んだのは新田さんだったはずじゃ…?」
「あ、おはようございます。プロデューサーさん」
P「あ、おはようございます。…えーっと、千川さん」
ちひろ「あ、名前覚えてくれてるんですね?嬉しいなぁ」
ちひろ「でも、昨日も言いましたけど、ちひろでいいですよ」
P「いやぁ、まだ会ったばかりなのでそれはちょっと抵抗が…」
P「あ、そういえば千川さん。今西部長どこにいるか分かりますか?」
ちひろ「部長ですか?えっと、今会議室で会議してると思いますけど…」
P「げっ、会議ですか…」
P(うーん困ったぞ…、早急に確認したい案件なんだが、だからといって会議抜けてもらう訳にもいかないし…)
ちひろ「あの、なにかお困りですか?」
P「え?ええ…、その~…」
P「実は、隣の休憩室で、今日から担当するアイドルの娘を待っていたんですけど…」
ちひろ「ああ、今日からだったんですね」
P「ええ、それで、さっきアイドルの娘が部屋に来たんですけど…」
P「どうも、俺が選んだアイドルと違う娘が来てるみたいで…」
ちひろ「えっ、そうなんですか?」
P「は、はい…」
ちひろ「えっと、よければ、私が確認しましょうか?」
P「あ、お願いしてもいいですか?」
カタカタカタッ……
ちひろ「……えーっと、プロデューサーさんの担当アイドルは…、あ、あった」
ちひろ「えっと、多田李衣菜ちゃん…、ってなってますね」
P「…へ?」
~~~~~
その後
今西部長「いやぁ、誠に申し訳ない」
今西部長「どうもこちらの手続きミスで、君の担当が新田君ではなく、多田君となっていたようだ」
P「は、はぁ…」
今西部長「いやー悪いことをしたね」
今西部長「すぐに変更手続きを済ませて、元々の担当である新田君を呼んでこよう」
P「は、はい」
P(…ふう、ちょっと焦ったけど、まあこういうこともあるんだな)
今西部長「…と、言いたいところなんだが」
P「え…?な、なんですか?」
今西部長「君が担当するはずだった、新田美波君…」
今西部長「…実は、もう担当が決まっちゃっててね」
P「え、えー!?」
今西部長「いや本当にすまない、なんて言って詫びればいいのか…」
今西部長「君に渡した名簿の中に、新田君の名前も載っていたよね?」
P「え、ええ…」
今西部長「…いや実は彼女、君が来る前日に他のプロデューサーがプロデュースすることが既に決まっていてね」
今西部長「それについて、私もうっかり失念したまま話を進めてしまった。本当に申し訳ない」
P「そ、そんな…」
P(そ、それじゃあ一体、俺の担当の娘はどうなるんだ…?)
今西部長「せっかく君が直感で選んだ娘だというのに、すまないことをしたね」
P「い、いえ…」
今西部長「詫びて済むことではないんだが…」
今西部長「代わり…というわけではないんだが、もう一度名簿の中から、好きな娘を選び直してくれても構わない」
P「え?」
今西部長「こちらの都合で、勝手に担当を決めてしまったようだからね」
今西部長「せめてもの謝罪の気持ちとして、もう一度、自分の目で確かめてアイドルを決めてくれたまえ」
P「は、はぁ…?」
~~~~~
P(うーん、とは言ったものの…)
P(まぁ、別に…、新田さんを選んだのも直感だしなぁ…)
P(悪く言っちゃえば、適当に選んだっていうフシもないとは言い切れなかったわけだし)
P(ここは気持ちを切り替えて、新しくアイドルを選び直せばいいじゃないか)
P(なんせアイドルの娘はこんなにたくさんいるんだ、今さら運命の出会いなんて信じる年齢でもないし…)
P(ぱぱっと決めて、さっさと仕事始めちゃおう)
P「…って、あれ」
今西部長「ん?決まったのかね?」
P「…あー!」
今西部長「え、ど…どうしたんだいきなり?」
P「しまった…、多田さん、休憩室で待たせたままだった!」
今西部長「え…、そ、それはまずいねぇ」
~~~~~
再び休憩室
ガチャッ!
P「すまん!待たせた多田さん!」
李衣菜「…………」
P(う、うわぁ…、見るからに怒ってるなこれは…)
P「え、えっと…、悪かったね、待たせてしまって…」
李衣菜「……別に、待つのは得意な方なんで」
P(…あちゃ~、これはどう取りつくろえばいいものか…)
P「えっと、実は待たせてしまったのには理由が…」
李衣菜「…知ってるよ、私、本当はプロデューサーさんの担当じゃなかったんでしょ?」
P「えっ…、なんで…?」
李衣菜「まぁ、隣の部屋だったんで…、あと、割と耳良い方だから」
P(…う~む、これは非常に気まずいことになってしまったなぁ)
李衣菜「…それじゃ、私帰りますね」
P「え、帰る?」
李衣菜「レッスンあるから、…行かないと」
P「ああ、レッスン…」
李衣菜「…まぁ、分かってたんだけどさ…」ボソッ
P「え、何か言った?」
李衣菜「別に、それじゃあ」
李衣菜「…さよなら」
P「…………」
~~~~~
中庭
李衣菜「…………」
李衣菜(プロデューサー…、ねえ)
李衣菜(まぁ、こんなことだろうと思ってたけどね)
李衣菜(この事務所に所属してからしばらく経つけど…)
李衣菜(私と同じ時期に入った子がもうデビューしてたり、それどころか、私より後に入った子もどんどんデビューしたりしてるし)
李衣菜(…つまりは、そういうことなんだ)
李衣菜(私は…、誰からも…)
ヒョイッ
李衣菜「えっ…!?」
P「おお、これボン・ジョヴィかぁ、懐かしいの聴いてるなぁ」
李衣菜「ちょっ!ちょっと!ヘッドホン返してよ!」
P「あ、ああ…!すまんすまん!」
李衣菜「あれ、お兄さん、さっきの…?」
P「おう、また会ったね」
李衣菜「…あの、なんの用ですか?」
P「いや、さっきのことについて、ちゃんと謝っておきたくてさ」
P「待たせてしまって、本当に申し訳なかった」
李衣菜「べ、別にいいですよ…、気にしてないし…」
P「それと、もう一つ言っておきたいことがある」
李衣菜「…なんですか?」
P「別れ際にさよならなんてさ、水臭いこと言うなよ」
P「同じ事務所の仲間なんだから、これからもよく会うことになるだろうし…」
李衣菜「そ、そんなこと言うために、わざわざ来たんですか?」
P「いんや、俺はただ、君のレッスンの様子を見ようと探していたんだけど…」
P「いやー、レッスン場のどこ探してもいないからさ、探したよ」
P「…あれ、っていうか、レッスンは?」
李衣菜「い…今は休憩中」
P「そ、そうだったのか…」
李衣菜「…っていうか、なんで私のレッスンなんか?」
P「ん?ああ、それは…」
P「俺が、君の新しいプロデューサーになるからだよ」
李衣菜「…………」
李衣菜「…え?今、なんて?」
P「えっと、俺が君のプロデューサーになる、って話…」
李衣菜「え…えぇぇえええ!?」
李衣菜「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
李衣菜「プロデューサー、私以外の子から選び直すってさっき…!」
P「え?そんなこと言ってないけど…」
李衣菜「え…、で、でも…!」
P「…あれ、もしかして、多田さん」
P「も、もしや俺がプロデューサーになるの、嫌…とか?」
李衣菜「そ、そうじゃなくて…」
(……なんで?なんで私なんか……)
(他にもっとカッコいい人とか、可愛い子なんていくらでもいるじゃん…)
(っていうか…、なんで…今さら…)
P「あっ、今なんで私を選んだんだろうって思ってた?」
李衣菜「は、はあ!?べ、別にそんなこと全然思ってないけど!?」
P「そ、そうか、とにかくだ…」
P「俺は、君と一緒にこれから一緒に頑張りたいと思ってるんだけど」
P「君は…、多田さんは、俺でも構わないかな?」
李衣菜「……聞かせて」
P「ん?」
李衣菜「理由…、聞かせてよ」
李衣菜「なんで私を選んだのか、ちゃんと理由聞かせて」
李衣菜「そうじゃないと、納得…できない」
(…何言ってんの私?)
(せっかく、この人がプロデュースしてくれるって言ってるのに)
(デビューできるんだから、面倒くさいこと言ってないで、さっさとお願いしますって、言えばいいのに)
(っていうか、選んでもらった私が、選ぶ権利なんて…ないはずなのに…)
(私…、最低だ)
P「うーん、理由…か」
李衣菜「…………」
P「そうだなぁ、まあしいて言うなら」
P「…ロック、だったからかな?」
李衣菜「……え?」
P「うん…、そう!ロック!ロックだよ!ロック!」
李衣菜「ろ、ロック…?」
P「ああ、そのヘッドフォン」
李衣菜「え?」
P「宣材写真でも、休憩室にいたときも、それに今も!君、ずーっとヘッドフォンつけてるだろ?」
P「それってさあ、なんか…、ロックミュージシャンみたいでさ、かっこいいじゃん!」
李衣菜「…………」
P「いや~、今どきなかなかいないんじゃないか?ヘッドフォンを肌身離さずずーっと身につけてるやつっていうのも」
P「俺が学生の頃はさぁ、ロックブームだったから、結構そういう人多かったんだけどな~」
李衣菜(…………)
李衣菜(……この人……)
P「まあそんな感じだよ、選んだ理由なんて」
P「悪いね。探す間色々理由を考えてたんだけど、これくらいしか理由思いつかなくて…」
P「…えっと、げ、幻滅させちゃった…?」
李衣菜「…………」
李衣菜「……ぷ、プロデューサーは」
P「え?」
李衣菜「プロデューサーはさ、ロックとか、結構聴くの?」
P「ん?ああ、まあ最近はあんまり聴いてないけど、学生の頃はよく聴いてたなぁ」
李衣菜「ふ、ふ~ん…、た…例えば?」
P「えーっと、レッドツェッペリンとか、オアシスとか、KISSとか…、あとは~」
李衣菜(れ、れっど…なに?)
P「あ、多田さんも知ってるかな?」
李衣菜「え?ああうん…、し、知ってるけど…?」
李衣菜「レッドね!私も結構好きだな~、なんていうかさ、サウンドが重いよね~」
P「れ、レッド…?」
李衣菜「わ、私の世代はそういう風に呼んでるのっ!」
P「あ、ああ…、そうなんだ」
P「それじゃあさ、どんな曲好きなの?」
李衣菜「えっ……」
P「ん?」
李衣菜「…それは~…」
李衣菜「…そ、それは、まだ教えられないなぁ!」
P「え、えー!?」
李衣菜「まだ完全に趣味が合うかどうか分からないし?そんな状態で好きな曲とか教えるなんてロック…じゃないし?」
P「え、ええ~…」
李衣菜(…うわちゃぁ~、何言ってるんだ私…、言ってること目茶苦茶だよ~…)
李衣菜(どうしよう…、あんまり知らないのばれてないかな…?)
P「…えーっと、多田さん」
李衣菜「は、はい!?」
P「あのさ、返事を聞かせて…、いや、聴かせてもらってもいいかな!?」
P「俺と一緒にバンド…!じゃなかった、アイドル活動、やってくれないか?」
李衣菜「…………」
P「…………」
李衣菜「…ま、まぁ、この346プロじゃさ」
P「ん?」
李衣菜「私以上にロックに詳しい人もいないだろうし…?それに、ロックのなんたるかを理解してる人もいないだろうし?」
李衣菜「プロデューサーがそんなにロック好きなら、私くらいしか話題についていける人もいないだろうし…?」
P「…えーと、つまり…」
P「OK、ってことで、いいのかな?」
李衣菜「……お、OKというか」
P「そっか!OKか!」
李衣菜「えっ?」
P「これからよろしくな!多田さん」
P「一緒にロックなアイドル目指そうぜ!」
(こ、この人…、人の話を聞かないんだから…)
(ま、まぁ…、せっかくデビューのチャンスももらえたわけだし…、これでいいのかな?)
(それにしても…、この人…)
李衣菜「…リーナでいいから」
P「へ?」
李衣菜「多田さんって呼び方、なんかあんまり好きじゃないし…」
李衣菜「学校の友達もみんな、その…、だっ…リーナって呼ぶから、そう呼んでよ」
李衣菜「私とコンビ組んでくなら、それが条件」
P「……分かった」
P「だりーな!一緒に頑張ろうぜ!」
李衣菜「ちょっ…!だりーなじゃなくてリーナ!」
P「え?だってさっき…」
李衣菜「噛んだだけだから!リーナ!リーナだから!」
P「そ、そうなのか…」
李衣菜「今度だりーなって言ったら、コンビ解散だからね!?」
P「わ、わかった、気をつける」
李衣菜「…そ、それじゃあ…」
スッ
P「ん?」
李衣菜「…これからコンビ組むから…握手」
P「……ああ!」
ガシッ!
李衣菜「よ、よろしくね、プロデューサー…」
P「おう!よろしく、リーナ!」
こうして、私とプロデューサーは出会った、
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