触手「転生先が触手とか詰んでね?」(290)

触手「う……うぅ……? まぶしっ……えっ? なに? ここどこ?」

触手「あれ? たしか俺……居酒屋で飲んで、それから……思い出せねぇ」

触手「……ここ、洞窟? いやまさかそん……??????」

触手「……なんだよ、これ」

触手「待て、まてまてまてまて? は? ひょっとしてこれ……おれの、うで……ぁ……ぁぁあ」

ううううううおおぁぁああぁああああぁぁあああああああああああああ

小一時間後

触手「」 チーン

触手(目が覚めたら触手になってるとか、どこぞの小説かよ……笑えねぇ)

触手(何で俺がこんな目に……ようやっと独立して、これからだって時に……こんなのって)

触手「……よそう、考えてても応えなんて出やしない」

触手(少なくとも、小一時間のた打ち回って全身が痛むって事は夢じゃないってことなんだろう)

触手「なら、ここでじっとしてても話が進まない……なんかしら行動しないことにはな」

触手「しっかし……どうしたもんだかなぁコレ」

触手「天井の穴の他はヒト一人通れるかどうかって割れ目が一つきり、か」

触手「……割れ目の先、見るからに真っ暗なんだよなぁ」

触手「天井の穴まで壁をよじ登るのは……壁が脆くて無理っぽいな」

触手「………………いくしかない、か」

触手「………はぁ、はぁ、はぁ」

触手「くっそ、段々と割れ目が狭くなってきてやがる」

触手「明かりが無いってのに、何でか辺りがどうなってるか分かるし」

触手「元の身体のままだったら途中で動けなくなってたかもだな」

触手「でも、流石にこれ以上狭くなると、通れ……な……っ!」 ズリュッ

触手「で、でれ……った! ふい~……ギリギリだったな~」

触手「……うおぉ、なんだこれ壁がぼんやり光ってやがる」

触手「ヒカリゴケってヤツか? は~……なかなか幻想的じゃねぇの」

触手「………おっと! 見とれてる場合じゃなかったな」

触手「せっかく広い道に出たんだ、ドンドン先に進んd」 ドクン

触手「……? なんだ、この……微妙にソワソワするような……?」

触手(焦燥感? いや、不快な感じとは違う……これは、むしろ)

触手「……ん?」 ピクッ

触手(あっちの方から、なにかの……気配、か?)

触手「……………いってみるか」 ウゾッ

触手(間違いない、進むごとに感覚が強くなってく)

触手(もう間違いない、この先に……何かがいる!)

触手(何か、何かってなんだ? こんな得体の知れない場所にいる何かって、そんなの)

触手(マトモなものの訳が無い、それこそ得体の知れない生き物に決まってる!)

ソレガ ドウシタ

触手(……そうだよ、今の俺はなんだ? 触手だぞ? そもそも俺そのものがマトモとは程遠い)

触手(それに、何もかもが分からない状態でこんな洞窟を右往左往するなんて、それこそ最悪だ)

触手(この先で何があったとしても、これ以上状況が悪くなるなんて早々ない筈だ……だったら)

触手「いくっきゃない、だろ」

触手(……鬼が出るか、蛇が出るか……っ)

大鬼「グゥゥルァァアァア!!」 ブォン! ブォン!

大蛇「シャギャァァアァア!!」 ギュリッギギッ

触手「」

ドゴォ! ドォォン! バガァァン!

触手「」 ソー...ソロソロ

触手(ふっざけんな! 鬼も蛇も出るとか! 大盤振る舞いかよ! バカなの!? そんなサービス精神いらんわ! )

...ドォォン...ズゥゥゥ...ン...

触手「……やべぇよ……マジでなんなのここ……ハゲる……って髪なかったわ……死にたい」

触手(状況は、さっきと変わってない……変わってはいないけども)

触手「とても破滅的な現状に、既に撤退も挽回も不可能な段階で気づいてしまった……みたいな」

触手「い、いかん! まだだ!まだ挫けるには早すぎる! ネガティヴ禁止! ポジティブに、ポジティブに!」

触手(少なくとも、ここが安心安全な場所じゃなくって、あんなバケモノといつ出くわしてもおかしくない危険地帯って事はハッキリした)

触手(って言うか、ガチの鬼やら鬼と張り合うような大蛇がいるって……薄々そうじゃないかと思ってはいたけど、ここは)

触手「……異世界、ってことか?」

...カラッ

触手「……っ!」 ササッ

...ザリッ...ザリッ...

触手(物音がしたから咄嗟に隠れたけど……この足音、もしかして)

冒険者×2「「……」」

触手(……あ……あぁぁ! ヒトだ……鎧やら武器やら身に付けてはいるけど、間違いない! 人間だ!)

触手(助かった! あの人達なら出口も知ってるはずだ! 事情を話せば一緒に連れて行ってくr)

冒険者1「……! ~~~~っ! ~~! ~~~!!」 ダダッ

冒険者「~~! ……~~~~~~~~~……」 キィィン

触手(……? なんだ? 急に慌ただしく……!?)

大蠍「ギキィィィィィイィィイィ」 ギシギシ

触手(ま、またバケモノ! まずい、あの人達が危n)

>>20
冒険者→冒険者2

冒険者2「~~~……~~~~!!」 キキンッ!

冒険者1「~~~~~~っ!!」 ザシュッ!

触手(んなっ!? いま、デカイ氷が……それに、あんな固そうな甲羅をザックリと)

大蠍「ギ……ギィィイィィ」 ギシシ

触手(あっという間に……倒しちまった)

冒険者1「~~……~~~?」

冒険者2「~~~~……~~」

冒険者1「…………~~」 ハァ

触手(あんなのが出てきて倒した後でも何てことなさそうだし……とんでも無いな)

触手(でもまぁ、大鬼やら大蛇やらがいる世界ならあの位は普通……って事なのか?)

冒険者2「~~~、~~~」

冒険者1「~~~……~~」

ザッザッザッ

触手(ってマズイ! ボーッとしてたら行っちまう! 今はとにかく声をかけて後のことはそれからだっ!) シュルルッ

触手「あ、あの~! そこの人達! お~い! ちょっと~~!!」 ウネウネ

冒険者2「……~~……~~~~!!」 ザザッ

冒険者1「~~~? ~~……~~~~!?」 ズザザッ

触手「……ん?」 ウネリ

冒険者2「~~~~~~~!! ~~~! ~~~~!」 キョロキョロ

冒険者1「~~~~! ~~~~~~!!」 ジャキンッ!

触手(あ、あれ? なんかメッチャ警戒されてね? えっ、なんで? ……待てよ? ひょっとして)

冒険者1「……~~……~~~~?」 ザリッ

触手「……つかぬ事を伺いますが……言葉、通じて……無かったり、して……?」 ウネウネウネ

冒険者2「……~~……」 ブツブツ

触手(……ヤバイ、これは完全にやらかしたっぽい) ダラダラ

触手(落ち着け、慌てたらお終いだ……冷静に、冷静に現状を分析するんだ、俺)

触手(現状は……人間の冒険者? らしき二人と接触……言葉は通じない、相手は警戒体制、そして俺の姿は触手……)

触手(はい、完全に触手型モンスター冒険者達に討伐されるの図ですね本当にありがとうございます)

冒険者2「~~……~~~~~~!!」 キィィィィッ‼︎

触手「ちょっ! まっ! やめっ! イヤァァァァァ!!?」 ウゾリウゾウゾ

ズドドドドドドッ‼︎

触手「ひっ! ひぎゃああぁああ!!? つ氷柱がっ! メッチャクチャに降ってっ!?い、いってぇぇっ!!?」 ビタンビタン

触手(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!! 氷柱ヤバイ! いってぇ! しかも、なんか刺さったところから、凍って!?)

冒険者1「~~~~!! ~~! ~~~~~~~!!」 ダダッ

触手「ひっ!? く、来るなっ! わ、ワアァァァァアァアァァ!!?」 ビチチッ...ブチィッ!

冒険者1「~~~! ~~! ~~~~!!」 ブォン!

触手「わ、わ、わああぁぁっ!? 」

触手(う、腕が!? 腕が千切れた!? 痛い痛い痛い! で、でもっ)

冒険者2「~~!? ~~! ……~~~~!!」 キィィッ...ギキンッ!

触手(ひぃぃっ!? 逃げろ! 逃げろ逃げろ逃げろ! じゃないと、死……死ぃぃぃ!!) ゾゾゾゾゾッ

・・・

触手「はぁ、はぁ……はぁ……っ」 グテッ

触手「な……何とか逃げられた……よな?」

触手「くそっ……まさか問答無用で殺されかけるなんて……いや」

触手(いまの俺の見た目じゃ、仕方無いって事か……はぁ、マジでキツイなこれは)

触手(それにしても……通じなかったとは言え、あんな問答無用で殺しに来なくても良くないか?)

触手(こんな見るからにヒョロっちい触手相手だってのに、あんな警戒して……って、アレ?)

触手(そう言えば……思い返して見ると、大蠍が出た時より俺が出てった時の方が慌ててる感じがした様な)

触手(なんか周りをメッチャ見回してたし、剣を持ってた方の人もなかなか俺に近寄ろうとしなかったし)

触手「……なんでだ?」

触手(こんな見るからに弱そうな奴を相手に警戒する理由……)

触手(ひょっとして、毒でも持ってたり……いや、それを言ったら蠍だって持ってるか)

触手(他に思いつくのは、そうだな……仲間がいるかもしれないとか、あまりこの辺りで見かけないモンスターだった、とか?)

触手(ん~……いや、これ……考えた所で実際のところは分からんし、そもそも解決のしようが無いような)

触手「……今後も、人を見つけた所で助けてもらえる可能性は無いと思った方が良さそうかぁ……うぅぅ」

触手(見た事も無い場所で、嘘みたいな化け物が彷徨く中、人に助けも求められない状況でサバイバルなう……か)

触手(うん、うん……これ、無理でしょ?)

触手(いままでは運良く他のモンスターに見つからずに来れたけど、そんな幸運がいつ迄も続く訳ないし)

触手(見つかったら間違いなく……いや、見つからなかったとしても、それでどうなんだ?)

触手(食事……この体で、何をどうやって食うんだ? 草とかならまぁ……でも、生き物だったら……?)

触手(まさか、あんなデカイのしか居ないってことは無い……と、思いたいけど……)

触手(他にも、水とか……できれば安全に休めるところも……あ)

触手「最初に目が覚めた場所……っ! あそこなら、食べ物はともかく少なくとも安全に過ごせ……」

触手(…………どっちから来たか……分からないね)

触手「…………んっあぁあぁああぁあ~~~~!! くんふるぉぉおおぉあぁああぁ!!」 ビッッタンビッタン

・・・

触手「はぁ……はぁっ……はぁぁぁ……いかん、なんかもう……ホントもう……ぬぅあぁぁぁああ」

触手「…………ダメだ……奇声をあげた所で、話が進まない……やめよう、うん……うん?」

触手(なんだろう、何か忘れてるような…………あっ!)

触手「腕! さっき、ズタズタに千切れた、腕が……痛くない」

触手(どころか、これ……少しだけど、再生してきてないか? まだそんなに時間も経ってないってのに)

触手(トンデモない再生力だ……これなら、少しケガした位なら何とか) スクンッ

触手(んっ? なんだこの感じ……ん? ……ソワソワするような……って、ひょっとして)

触手「空腹感、か? 変な感じだ……体が違うと感覚も違うって事かな」

触手(でもそうか……体を治すにも栄養は必要か……そうなるといよいよ食事をなんとかしないとだなぁ)

触手(よし、そうと決まれば! まずは何か食べれそうな物を探すか……洞窟だけど、壁の光る苔とか後は……虫とかかなぁ)

触手(……苔からいってみるか?……いやでも、メッチャ明るく光ってる物を食べるのに抵抗あるな)

触手(……食べられるものだったら他の生き物も食べるはずだし……他の生き物が食べてたら、試してみるか)

触手(そうなると、やっぱり虫とかかぁ……いや、贅沢を言ってられる状況じゃないんだけどね)

触手「さて、そしたら……虫、虫……虫がいるって言ったら、岩の裏とか……こういう隙間、と……うっわぁ」 スルルッ...ウジャウジャ

触手(適当に腕を突っ込んだ隙間にこんだけいるとか……オェッ) ウジャラウジャラ

触手(これを……コレを食うのか……ムカデだかゲジだかもよく分からん虫を……) ウジャ...ウジャ...

触手(……………………よし!) ウジャ......

触手「男は度胸! 食ったら……あれ?」

触手(……無くなってる……え? 逃げられた? いや、ガッチリ捕まえてたし辺りにも……ん?)

触手(空腹感が少し……無くなってるマシになってね?)

触手「これってつまり……無意識の内に、食べちゃった系?」

触手(いやいやいや……えっ? マジで? 食ってる感ゼロだったんだけど……この体だとそういうもんなの?)

触手「噛んだり飲み込んだりした感も無かったし、そもそもどうやって……もう一度、やってみよう」スルルッ

触手(よ、よし! 捕まえた! って言うかこの隙間ドンだけ虫いるんだよ、ちょっと怖いわ) ウジャラウジャラ

触手(さっきは掴んでる内にいつの間にか食べてたっぽいけど……う~~ん) ウジャラウジャラ

触手(やっぱり、ただ掴んでるだけだ……じゃあさっきは何で……) ウジャラウジャラ

触手(……待てよ? 確かさっきは食べる事を考えてたよな……その違いか? なら……) ウジャラウジャラ

触手(俺は、コイツらを……"食べる"……っ!?) グワッ! バクンッ

触手「うぉっ!? お……お~……なるほど、掴んだ腕がそのまま口の役目もするのか……どおりで」ウネウネ

触手(こうして意識してみると、"食べてる"感じもする……味はよく分からんけど、特に嫌な感じもない)

触手(飲み込んだものが腹に溜まる……ってのとは違うか? 一つになるって感じのが近いかも)

触手(この感じは嫌じゃない……いや、むしろ……悪くない)

触手(……なんだろう、この後に及んで、今更だけど……)

触手「俺……ホントに人間じゃなくなっちゃったんだなぁ」

・・・

触手「ふぅ……ようやく人心地ついたって感じだな」

触手(結構食ったけど虫がいなくなる気配すらないし、洞窟全体がこんな感じなら食料の心配は取り敢えず平気そうだな)

触手(食べてる間に千切れてた腕も治った……に留まらず、いつの間にか2、3本増えてるし)

触手(なんと言うか、この環境で生きる上ではこの上なく便利な体だよな)

触手「そもそも、元の体じゃ目が覚めた場所から出られないで餓死してたろうし……嘆いたところで仕方ない、よな」

触手(しっかし、割と長いこと居座ってたってのに虫以外の生き物は全然通りかからないな)

触手(一応は身を隠せつつ逃げ道が確保できそうなところをと思って逃げ込んだ所ではあるけど)

触手「歩き回ってた時はやたら見かけたのに、こんなになんの気配も無いってことあるのか?」

触手(それとも、たまたまそういう安全地帯だったとか? ……分からん)

触手(でも、それなら敢えて移動しなくても、しばらくここにいるのもありか?)

触手(食事の仕方は分かったけど、この体なら出来るってことが他にも色々と有るかもだし……それを試してみるってのも悪くは) ソワワッ

触手「……? なんだ、この感じ……空腹感? いや、少し違う……なんと言うかコレは」

触手(……美味そうな匂いを嗅いだ時の感じに近い……か?)

触手「そう言えば、この体って鼻とか無いけど呼吸とかどうなって……いや、それは後にして……あっちの方、か?」 ウゾウゾ

触手(この道の感じ、さっき来た方とは違うっぽいな)

触手(少しだけど上に向かって登っていってる感じが……おっ? 視界が開けて……っと!?)

触手「危なっ! いきなり崖かよ! ……下までは随分と……っていうか洞窟ってこんな広い空間もある物なのか?」

触手(苔のお陰で視界もソコソコあるし眺めはかなり良いんだけど……こういう広い場所は何となく落ち着かないな)

触手(下に降りるにしても、この高さから落ちたりしたら流石に無事とはいかなさそうだし別の道を……ん? あっちの岩陰に何か)

大百足「……」 ギチギチギチ

触手(う、お……? 結構距離あるけど、デカイよなアレ……だけど、もしかして) ソワワッ

触手「さっきの感じ、ひょっとしてアイツから……え~……いやいやいや」

触手(確かにサイズ感以外はさっきまで食べてた虫とほぼ同じだけど……それにしたって虫だぞ?)

触手「多少は食い慣れた感こそあれ、幾らなんでも美味そうってことは無いだろ」

触手(この感じの正体を確かめたくはあるし……何とかして別の道を探して……ん?)

大百足「……!!」 ギチチチッ!

触手(なんだ? 動きが早く……何か獲物でもも見つけたの……は?)

女の子「……っ! ~~~っ……~~~~!」 ズリ...ズリ...

触手「おいおいおい、えっ? 女の子、だよな? は? なんで? って、ちょっと待てよ、待て待て待てっ!?」

触手(あの百足、女の子の事に向かって……それにあの子、みた感じさっきの人達と違って武器っぽいのを持ってない!)

触手「あのままじゃ、間違いなく……っ!」

触手(ど、どうする!? あの大百足の速さからして、女の子が逃げ切れるとは思えない!)

触手(誰か助けを呼んで……って! そんな都合よく人がいるわけ無いだろ! それに、居たとしてどうやって説明……それに、そんな時間ない!)

触手(俺、か? 俺がやるしか無いのか? でも、あんな所までどうやって? それに、あんなデカイのを相手にどうやって!?)

女の子「~~~~っ! ~~~~!! ~~~~~~!!!」

大百足「……ッシィィィイィィ!!」 ギチギチギチチッ

触手「!?」

触手(あ……あぁぁ!! 知るか! 考えたって分かんねぇことばっかだ! だけど、だけど……っ!!)

触手「体が人間じゃなくっなったって……心まで人でなしになってたまるかってんだよぉぉぉおぉぉあああああぁぁぁぁあ!!」 ンバッ!

触手(う……うぉあぁあぁああぁ!? 跳んじまったぁぁ!! お、落ち! 落ちるぅぅ!! ) ギュオッ! ビチッ!

触手「ぬおわぁぁっ!? んおっ!? う……うおぉぉっ!!? 」 バチッ! キュリッ! ギュオンッ!

触手「うおっ!? うおおぉぉっ!? んぎゃあぁぁっ!!」 グインッ! フワッ...ズゴロロロ

触手(ううう、腕がっ!腕が崖の取っ掛かりを掴んで? す、スゲェ!! あんな高さから降りたのにっ!!)

触手(よ、よし!よし!! 何はともあれかなりショートカットできたはず! これなら!)

...キャアァァァァァァ!!...

触手「!!」

触手(ヤバイもう時間が! くそっ方向は……アッチか!? 間に合え~~っ!) ズゾゾゾッ

触手(くそっ! 上から見て思ってたよりも広い! それに高低差も! チクショウ! 方向が間違ってたとか無しだぞ!!)

ドゴォォン!! ガララララッ!

触手(っ! 近いっ! そっちか!!)

触手「っ! この岩の向こう側、にっ!! ……っ!?」

女の子「」 クタッ

大百足「……キシィィィ」 ギチギチ

触手(女の子が倒れて……い、いや! 大百足と距離がある! まだ死んでるとは限らない! )

触手(だけど……だけど、待ってくれよアレ……遠目に見てたより、ずっと……デカイ!!)

大百足「……」 ギチチッ

触手(さっきの大蠍と同じ……いや、下手したらコイツのが……)

触手(こんなデカブツを……どうしろってんだよ!)

大百足「……シイィィィッ」 ギギッ

触手(マズイ! 女の子の方に! くそっ……やるしか、ねぇ……やるしかねぇんだ!!)

触手「こなくそぉぉぉっ!! やったらああぁぁぁ!!!」 ンバッ! ギュルルルッ!

触手(よ、よし! 後ろから胴体を掴んだ! ……これで!……これ、で……ここからどうすれば?)

大百足「シイイッ!? シ……イィィィィイイィ!!!」 ギュオッ!!

触手「ん、なっ!? わ、わ、わ……のォワアァァァァアァ!!?」 グンッブンッグワッ

触手(な、何だってんだ!? め、メチャクチャに暴れやがる! 俺を、引き剥がそうってのか!?)

ドガン!ズガガッ!ゴガァンッ!!

大百足「キキイイイィイイィイイ!!」 ギチチチチチッ!!

触手「うおおぉっおっお!? ぐかっ!? ぎ……がああぁっっ!!?」

触手(地面も岩もお構い無しのなりふり構わず、かよっ! くっ、ヤバイこのままじゃ、弾き飛ばされ……っ)

女の子「」

触手(……今更、引き下がれるかよ! クソォッ!! 何とか、何とかするんだよくそっくそっくそぉっ!!)

触手(でもどうすりゃ良い! コイツ、岩に体当たりしてもビクともしてねぇし! 力も強いし、動きも……っ)

触手(ああぁ!! せめて何か武器があれば! そうすりゃ、さっきの人みたいに硬い甲羅が有ろうが貫いて、それで……)

触手(………………硬い、甲羅? なら、ひょっとして)

大百足「キィイィィシィィィイィィィィイイィッ!!」 ブオンッ!ガガガガッ!!

触手「んおわぁあぁあああ!!?」

触手(それしか、無いのか? チャンスは一度、失敗したらそれこそ……だけど……やるしか、ない!!) シュルルルッ! パッ

大百足「!!」 ギチチチチチッ‼︎

触手「いでっ!? あだっ! んがぐっ!?」 ゴロゴロゴロ

触手「くぅぅ……いってぇ……けど、腕は千切れて……ない!!」 グググッ

触手(さて、どうする? 背中に張り付いてたのは剥がれたぞ? そうしたらどうする? さっきの得物を食べるか?)

触手(いいや! 食事をする無防備な状態を、こんな所で晒す訳がない)

触手(ここで、アイツが逃げるなら、それはそれで良い……けど、多分……トドメを、刺しに……っ!)

大百足「……キィイィィシィィィイィィィィイイィッ!!!」 ギチチチチチィィッ

触手(来た! 真っ正面! 体当たり? 違う!!)

大百足「!!」 グワッ

触手(あの大顎で俺を、?み殺す!! だけど、それを!)

触手「待ってたんだよぉぉっ!! うぅわああああぁあぁあぁ!!!」 ギュオオッ!!

大百足「ギシイィィィイイィイ!!」 ガツンッ!!

触手「ぎっ!? がっ……アアアァァアアァアァ!!?」

触手(イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイアアアァァアアァアァ!!!)

触手「こ……っの! "食う"のは……俺の方だああぁあああぁぁぁ!!!」 ドクンッ

大百足「」 ズモモモモモッ!...パアァァンッ!!

触手「んどわあああぁああ!!?」 ガラガガガガッ!

触手「………………い……ってぇ……は、はは……いってぇ……ははははっ」 ヘタッ

・・・

触手「……っ……あ~……シンドイ」 グデリ

触手(硬い甲羅はどうにもなら無さそうだったけど、内側からなら何とかなるかもってほとんど博打な思いつきだったけど)

触手「何とかは、なったかな……っ、ヤバイ全身ボロボロだ」

触手(……噛みちぎられないようにほぼ全部の腕を口にぶち込んだからな……それでも、残った本数のが少ないんだから本当にギリギリだったな)

触手「そうだ、女の子を……っ、あ、うおっ?」 ヨテテ

触手(ヤバ……体の動きが鈍いし……感覚も、無くなって……これってマズッ) ズクンッ

触手(ぁ……? なんだ? からだが……? ぃ……し、き……ぅ)

・・・

触手「…………ん……ん?」

触手「あれ……おれ、なにして……ここ、は……ん? ……おおぉっ!!?」

触手(な、な……何だこりゃあ!? コレ……あの大百足の、残骸……か?)

触手(この状況……俺は気を失ってた……ってことだよな? 気を失ってる間に何が……)

触手「あんだけデカかった大百足がほとんど無くなってやがる……千切れた足が何本か落ちてるくらいとか」

触手(これは……誰かが持っていった……? いや、それにしたって、あんなデカイのどうやって……ん?)

触手「体が痛く……ない……って言うか、怪我が無くなっ……んんんっ?」

触手(あれ? 気のせいじゃなきゃ……俺の体……明らかに、デカくなってない?)

触手「腕の本数もメチャクチャ増えてるし、微妙に色合いも赤黒く……何と言うか……さっきの百足の色っぽくなってる、よな」

触手(この状況から考えられるのは……要するに、あの百足を俺が全部……)

触手「って……ああっ! そうだ、そんな事をノンビリ考えてる場合じゃ……っ!」

触手(え~っと、 気を失う前に見た時は確か……そう! あっちの岩陰にっ!)

女の子「」 クタッ

触手「い、いた……良かっ……いや、安心するのはまだ早いっ」

触手(呼吸は、ある! けど、意識は無いみたいだな……パッと見で出血は無さそ……ん? これ、は……何だ頭に何か) ツンッ

女の子「」 ピクン

触手(これ……頭に刺さって…………いや、刺さってると言うより……生えてる?)

触手(それに……俺自身の体が変わってサイズ感が狂ってるのかとも思ったけど……何だかこの子……デカくね?)

女の子「」 ヒクッ

触手「顔立ちとか頭身は子どもだけど……うん、間違いない……身長は多分、大人と変わらない位だな」

触手(頭に角っぽいものが生えてて、デカイ体の、女の子、か……ひょっとして、この子って人間じゃなくて……鬼、だったり)

・・・

触手「よ、いっ……しょ! と……ふぅ~……こ、この辺りなら大丈夫、かな?」 グググッ...ソッ

女の子「」 ...クテッ

触手(まだ目が覚めない、か……あの場にあまり長居したくなかったから、碌な確認もできなかったけど)

触手(この窪み、少し高いところに入口があるから通路からはあまり見えなさそうな感じだし、多少は安全……だと思う)

触手(まぁ、この状況じゃ出来ることなんて限られるけど……やれるだけの事は、やっておきたいよな) スッ

触手(先ずは……頭だな、これだけ目を覚まさないとなると強く打った可能性もあるし)

触手(……多少時間も経ったけど流血は無い……頭のは、やっぱり角だよな……まぁ、いまソレは置いとくとして)

触手(視診じゃこれが限度だし……次は触診、なんだけど……)

触手(この体になって、色々と元の体と感覚が違ってる訳で……果たしてマトモに触診出来るだろうか)

触手(触診してるつもりで、いつの間にか食べちゃってたりなんか……いやいやいや、流石にそれは無い!)

触手(ここまで運ぶ間だって、問題なかったんだ……生き物なら何でもかんでも手当たり次第にって事はない)

触手(今までの経験からして、"食べる"事を意識してさえいなければ大丈夫な筈)

触手「……念の為、これは触診だって事を常に思い続けておこう」

触手(…………よし!)

触手「さっき倒れてた時の感じからして……ぶつけてるなら、多分このあたr……ふおおぉぉっ!?」 ソッ...チリリッ!

触手(お、お……ふおおぉぉぉおぉっ!!? な、のん……なんだあぁぁぁあ!!?) キィィィィィッ

触手(なんだ、この感覚っ!? さ、触ってる所から流れ込んでくるコレは……この子の、体の状態か!?)

触手(後頭部は軽い打撲、脳の損傷なし、気絶は恐怖による一時的な失神、右前腕の尺骨に軽度の亀裂、右足関節は捻挫、その他、全身に軽度の擦過傷多数、軽度の空腹状態、自律神経の乱れあり)

触手(す……スゲェ! ほんの少し触っただけで全身の状態が隈なく分かりやがる!! 骨やら脳やらの状態までバッチリとかレントゲンやエコーどころか下手すりゃCTも要らないじゃん!!)

触手「こ、これは便利すぎるだろ……! うっわ~! この体に初めて有り難みを感じたわ!」

触手(い、いかんいかん!! こうして今の状態が分かったんだ、なら……次は処置をしないとだ)

触手「頭の方は大丈夫な訳だし先ずは腕の処置をして、それから……」

・・・

触手「……ふぅ、これで応急処置は完了っと」

触手(この子が持ってた荷物の中に救急キットっぽいのがあって助かった……最悪、この子の服を破くなりしないとダメかと)

触手(添え木にはさっきの大百足の足を活用……うん、何となくで持ってきたけど良い仕事するじゃないの)

触手(足の捻挫は少し腫れてるし、水場なりが有ったら冷やしておきたい所だな)

触手(満足な治療とは言えないけど……いま出来るのはこんな所か)

触手「さて、と……応急処置な終わったとなると、目を逸らしていた問題について考えなきゃ……かぁ」

触手(即ち……この子、これからどうしよう) ズーン

触手(あの場で見捨てるなんて選択はあり得なかった、それは間違いじゃないし後悔していない)

触手(だけど……あの時はしょうがなかったとは言え、"その後"の事をまるで考えてなかったよなぁ)

触手(差し当たって、この子に命の危険はない……でも、それだけだ)

触手(右腕のヒビに足の捻挫……とてもじゃないけど、あんな化け物が彷徨く場所を歩き回れるとは思えない)

触手(かと言って、ずっと身を潜めているのも現実的じゃない……化け物もだけど、この子は"空腹"を感じてたみたいだ)

触手(救急キットと一緒に食べ物らしいものも有ったけど、この子の体のサイズからして量はほんの僅かだ)

触手(怪我の事もあるし、栄養はしっかり摂るべきなんだけど……う~ん)

女の子「……っ」 モゾッ

触手(……虫、か? 虫……いや、虫だぞ? 女の子に……いや、もし鬼なら平気だったり? ……いや、どうだぁ?)

女の子「……~~」 ムクッ

触手(何か食糧になりそうなものを確保する……って言っても今のところまともに食えそうな生き物なんか……あ)

女の子「~~……~~? ……?」 キョロキョ...

触手「キミ! 気が付いたんだね! あ~~、良かっt」 ウゾウゾ

女の子「ッ!? ッ……ヤアァアァアアアァアァッッ!!!」

触手「ひっ!? ちょっ! ま、待て! 落ち着いっ!! あまり大きな声を出さn」 ワタワタ

女の子「~~~~~!! ~~! ~~~! ヤアァアァアア!!」

触手「っぐ、わわわかった! 近づかない! 近づかないから! だから静かに、頼むから!! マジでっ」 ゾザザッ

・・・

触手(参った……こいつは、ホントに参ったぞ) ソローッ

女の子「~~……ッ……~~~……ッ」 ヒック...ヒック

触手(宥めようにも近づくとメチャクチャに泣き叫ぶから、下手に近付けないし)

触手(離れたところからコミュニケーション取ろうにも、やっぱり言葉は通じないし)

触手(かと言って姿が見えないようにすると、無理に立ち上がって逃げようとするから目も話せないし)

触手(それに何より……予想はしてたけど……してはいたんだけども)

触手(あの、表情……言葉がわからなくたって、それこそ一目瞭然だ)

触手(……怯え、恐怖、忌避、拒絶、嫌悪……)

触手「人間じゃなくたっていい……せめて、もう少し……マトモな見た目の生き物、だったらなぁ」 ウゾリ

触手(……嘆いてみたところで、状況が良くなるわけじゃない……なら、いますべきは……)

触手「あの子と、何とかしてコミュニケーションを取らないとだ……その為には、まず……」

触手「……」 ソローッ

女の子「……ッ」 グスッ

触手(さっきより少しは落ち着いてくれたかな……さて)

触手「は……はろ~」 ウネウネ

女の子「ッ!」 ビクッ

触手「……あ~……ナイストゥ~ミ~チュ~……なんて」

女の子「……ッ」 フルフル

触手「え~っと……に~はお? ナマステ~……グ~テン、タ~ク?」

女の子「ッ……」 カタカタ

触手(う~……日本語がダメでも外国語なら或いは、なんて思ったけど……やっぱダメそうだな)

触手(まぁ、万が一に通じたとして、俺の語学力じゃ会話できないことに変わりはないんだけども)

触手(それでも、せめて俺が意思疎通可能な存在だって事を分かってもらえれば、コミュニケーションの可能性も見えそうなんだけど)

触手「まぁ言葉が通じないってのは予想通りだ、となれば次は……」 ウゾウゾ

触手(落ちてる石で、壁をこう……ガリガリっと……くっ、結構固いな……このっ) ガリッ...ガリリッ

女の子「……ッ…………?」 チラッ

触手(ここを、こう……あ~! くそっ! 自分の絵心のなさが憎いっ) ガリガリ...ガリッ

女の子「…………」

触手(……よ、よし……取り敢えず、これで……) ガリガリ

触手(ふぅ……思いつく限り色々と描いてはみたけど……画力も合間って子どもの落書き帳っぽいな)

触手(だけど相手も子どもなんだし、このくらいの方が親しみを感じて貰える可能性も……流石にそれは望みすぎだけども)

触手「何はともあれ、コレをあの子に見て貰わないことには……って、あれ?」

女の子「…………」 ジィーッ

触手(め……メッチャ見てる!)

触手「あ……あははは~……」 フリフリ

女の子「ッ……!」 ビクッ

触手「あ……っと、そっか……この体じゃ手を振っても威嚇してるみたいに見える、か?」

触手(とは言え、さっきの反応は悪くなかったんじゃないか? このぶんなら何とかなるか……?)

......キュルルゥ......

触手「ん? いまのは……何かの生き物の鳴き声……か?」

女の子「……ッ」 モジッ

触手「……いまのって、キミのお腹の音?」 ウネウネ

女の子「……ッ……」 ジリッ

触手(……話しかけても警戒されるだけ、か……でも、そうか……食べ物なぁ)

触手(虫ならそれこそすぐにでも確保できるけど、いまはまだそのタイミングでは無いな)

触手(むしろ、あの子の持ってた食糧が尽きるまでに何とかして食べれそうなものを手に入れないと)

触手(……その為には) ウネリ

触手「え~っと……ここら辺に引いておけば……よし」 ガリガリガリガリ

触手「お、お~い?……ホラ、こっち見て、こっちこっち」 デチデチ

女の子「……ッ……?」 ジッ

触手「よし、え~っとだな? キミはこの線より、そっち! こっちの方には、来ない! お~け~?」 ウネウネデチデチ

女の子「…………?」

触手(言葉は通じなくてもジェスチャーを交えれば多少はと思ったんだけど……やっぱり無理かな?)

触手(とは言え、現状じゃこれが精一杯……後は、できるだけ早く戻ってくる位しかないか)

触手「本当に、頼むから……大人しく待っててくれよ?」 ウネリ

女の子「……」 フイッ

触手「……それじゃあ、行きますか」 ウゾウゾ

触手(まぁケガしてる訳だし、あまり無茶な事はしない……筈)

触手(迷ったりしない為にも、あまり遠くまで行かないで済めば良いんだけど) ウゴウゴ

・・・

触手(参ったなこりゃ……まともに食べれそうな奴どころか生き物に全く出くわさない)

触手(あまりあっち行ってこっち行っては、したくないんだけどなぁ……ぶっちゃけいまの時点でもかなり記憶が際どい)

触手「あの子のことも気掛かりだし、一旦あそこまで戻っておくか」

触手(この調子じゃ、虫を食べてもらうって話も最終手段とか言ってられないかもだなぁ)

触手(あの百足の時みたいに気配なりが分かれば……と言うか、あの時は何で分かったんだ? 空腹だったから、とか?)

触手(敢えて腹を減らして、またあの感覚で獲物を探すとか? ……でも上手くいく保障も無いしなぁ)

触手(そもそも、俺の方だってわざと空腹になっていられる余裕なんて……ん?)

キィッ キィッ キィッ キィッ キィッ

触手(なんだ? 騒がしいな……いや待て、この方向……それにコレって……まさかっ!) ウゴゴゴッ

キィッ! キィッ キキィッ! キキィッ キィッ! キィッ! キィッ! キキィッ!!

触手(なんて数の声だ! クソッ! 頼む……間に合ってくれっ!!)

大群蝙蝠「キィッ! キィッ キキィッ! キキィッ キィッ! キィッ! キィッ! キキィッ!!
」 バサバサバサ

触手「っ! なん……って数だよ、どこから湧いて来やがった……!」

女の子「~~~~ッ!!」 バタバタ

触手(げっ!? あの子まさか、あのケガであの窪みから降りたのか!? ザッと見ても10mは有ったのにっ)

触手(あぁもう! そんなこと考えてる場合かよっ! 兎に角、あいつらを追っ払わないと!!)

触手「おらぁぁぁぁぁっ! その子から、離れやがれぇぇぇぇぇっ!!」 ブンッ! ブォンッ!!

大群蝙蝠「キィッ!! キィッ キキィッ キキィッ!! キィッ! キィッ キキィッ キィッ! キキィッ!」 バサバサバサササッ!!

触手(量に怯むな! 一匹一匹は、精々が小型犬……って、コウモリの割にはデケェっての!!)

女の子「~~~~~~~~ッ」 ジタバタ

触手「~~っ! こ、な……くそぉぉぉぉ!!」 ググッ...シュバババッ!!

触手(落ちろ! 落ちろ!! ……落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ!落ちろよぉぉぉぉ!!)

大群蝙蝠「キィッ!? キィッ! キキィッ!? キィッ! キィッ! キィッ! キキィッ!!
」 バササササササッ!

触手「はぁ、はぁっ、はぁ……追っ払えたか」

蝙蝠「」 ピクピク

触手(何匹かをはたき落した後は割とあっさり逃げてってくれて助かった……けど)

女の子「~~ッ、~~~~」 グスッ...ヒック...

触手(……あんな大量の蝙蝠に襲いかかられたんだ、無理もないよな)

触手(全身キズだらけだし、化膿しない様に手当てしないと……だけど)

スルルッ...ソッ

女の子「ッ! …………?」

触手「……怖かったよな、もう大丈夫だからな」 ナデナデ

女の子「…………」

・・・

触手(……これは、どういう事なんだろうか)

女の子「…………」 ジィーッ

触手(やけにこっちをジロジロ見てくる……窪みに運んでる間も含めて抵抗する感じが全くなかったし)

触手(もしかして、少しだけど……警戒心が薄れてきてるのか? それなら……)

触手「あ、あ~……悪いけどちょっと良いかい?」 ウネウネ

女の子「……ッ」 ビクッ

触手(……いや、まぁ……気味悪い見た目は変わってないし軽く驚く位は、うん……怯えてる感じはかなり減ってるし、うん)

触手「気を取り直して……いまから、触るけど、キズを、見るだけだから、安心、して」 ウネウネクネクネウネリネリ

女の子「……?」 ヒキッ

触手(ジェスチャーを交えて見たけど、逆効果だなこりゃ……メッチャ顔が引き攣ってる)

触手「だけど、放って置くわけにもいかないからな……ホント、大丈夫だから、頼むからジッとしててくれよぉ」 ソロソロ

女の子「…………ッ」 ギュッ

触手(……もう少し……あと、ちょっと……っ、触れ、た!) ピトッ...キィィィィッ

女の子「~~~ッ!?」 ゾワワッ! ベチッ!!

触手「あだっ!? ご、ごめん! ビックリさせちゃったか? 大丈夫、大丈夫だから!」 ウネウネウネ

女の子「~~ッ、~~……~~~……~~?」 オロオロ

触手(な、なんだ? 触られ所……だけじゃない、身体中を触って確かめ始めたぞ?)

女の子「…………~~、~~~……」 ホッ

触手(……落ち着いた、か? なんだか慌ててる感じがしてたけど何だったんだ?)

女の子「………………」 ジィィーッ

触手(かと思えばまたこっちを……気になるけど、当初の目的を済ませないとな)

触手(一瞬だったけど必要な情報は読み取れたし、ケガに関しては直ちに危険ってことは無さそうで安心した)

触手(だけど、やっぱり消毒と化膿止め位はしておきたい所だな……救急キットにそれっぽいのが有ればそれを……)

触手(それに、無理にしたせいで足の状態が少し悪くなってた……キズの洗浄と水分補給も合わせて水場も探さないと)

触手(となると、順序としては包帯の巻き直し、水場探し、キズの洗浄、水分補給、足の冷却、かな……あ、いやその前に)

触手「これに関して、確認しておかないとだよなぁ……うぇ」 ゴゾリ...ベチョ

女の子「……? ……ッ」

蝙蝠「」

触手(予想外とはいえ、やっとこさ見つけた生き物……虫に比べれば、まだ……いや、でもなぁ)

触手「でも確認は必要だ……え~っと……よし、それじゃあコレで」 ガリガリガリッ

女の子「……?」

触手(全部を絵で伝えるのは俺の画力じゃ無理だけど、絵とジェスチャーと併せてなら) ガリガリッ

触手「……これで、どうだ? 口に見えるかな……ちょっと牙でも足しとくか?」 ガリガリ

女の子「……」 ジッ

触手「よしっ、それじゃあ……蝙蝠を指して、絵を指して、この子を……」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「……?」 キョトン

触手「もう一度……コレが、これで、こう」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「…………」 ジィーッ

触手「…………」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「………………!」 ハッ

触手(おっ……おぉっ? この反応は……もしかして)

女の子「……」 スィッ...スィッ...スッ

触手(絵を指して、蝙蝠を指して、自分を指した……これは……これは……っ)

触手「ぃよっしゃぉぁぁぁああぁあぁぁあ!! 通じた! 通じたあぁあぁぁ!!」 ウネウネウネネッ!!

女の子「!?」 ビクーンッ

触手「ははははぁっ!! あ、ゴメンゴメン! 脅かしちゃったよな! いっやぁ~俺としたことが何をこんな……あ~、バッカみてぇ」 ウネネッ

触手「こんなバカみたいにはしゃいだのいつぶりだ……? ははは……はぁ……なんか、泣きそ……涙とか出ねぇけど」 ウネリ

女の子「…………」 ジッ

触手「おっと、話の途中だったな! あ~……文字はアレだけど、図形……◯くらいなら、どうだ?」 ガリリッ...トントンッ

女の子「! …………」

触手(ん? なんだ? 何か、考え込んでる……?)

女の子「……~~~、~~……~~~……」 スィッ...スィッ...ブツブツ

触手(蝙蝠を指して、口を指した、それで……? 指を立てて、なんだ?)

女の子「……~~~、~~~……~~!」 ...シュボッ!

触手「う、うおおっ!!?」 ズゾゾゾッ

女の子「……」 キョトン

触手(び……ビックリしたぁぁ……火の魔法、か……この世界じゃ子どもでも魔法が使えるものなのか?)

女の子「……~~~?」 ソローッ

触手「あ……こ、コホン! 大丈夫、大丈夫! 怖くない、怖くないハハハハ」 ブンブン

触手(あんな指先大の火の魔法に激しくビビるとか……流石にちょっとなぁ……はぁ)

女の子「…………」 ジィーッ

触手「あ、あ~……気を取り直して……」 ウゾウゾ

触手(いまの魔法、俺のことを脅かそうとしてやったんじゃ無いはず……となると、このタイミングで見せたのは)

触手「…………! 火が使える、だから……焼けば食べれるって事か?」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「! ~~!」 コクコクッ

触手(おおっ! 合ってた! そうかそうか、まぁ確かに生のままって訳にはいかないよな普通は)

触手(考えてみたら、この体になってその辺の問題を丸っとスルー出来たのも運が良かったって言えるかもだ)

女の子「……ッ、~~……」 ...フッ

触手「ん? あれ、火が消えて……どうしたんだ? 焼いて食べないのか?」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「……~~」 フルフル

触手(顔を横に……さっき頷いてたのからしても、その辺りの意味は俺の思ってるのと同じはず……ならなんで)

触手(……そう言えば、さっきより少し表情に疲れが……あ、もしかして火を出すのにも体力を使うって事か?)

触手(指先に小さな火を灯すので体力を消耗するなら、あの蝙蝠を丸焼きにする火力は出せそうに無いなぁ)

触手(となると、火を燃やすための薪なりが無いと難しいか……洞窟にそんなもんあるかなぁ)

触手「まぁ探してみる他ないか……この蝙蝠どうすっかな、ここ涼しいし2、3日ぐらいなら保つかな」 グチッ

女の子「……~~~?」 スッ...スッ...スッ

触手(なんだ? 蝙蝠、口、俺……あ~……俺が蝙蝠を食べないのかって事かな?)

触手「まぁ今はそこまで腹減ってないし……この辺にいる虫で十分だよ……っと」 ...ウジャラウジャラ...バクンッ

女の子「…………」 ジッ

触手(あれ? ワサついてる虫を丸呑みとかドン引きされるかと思いきや、案外動じないな)

女の子「………………」 チョンチョン

触手「ん? 割れ目……なに? もう一回やれって事かな? ……ほいよっと」 ウジャラウジャラ

女の子「……~~~……~~」 ...チョンッ スッ

触手(……? コイツを下に? ……これ見た目からしてあの大百足のミニチュア……まんま百足な訳だけど、どうする気だ?)

女の子「……~~~~」 ゴソゴソッ...チャキッ

触手(石ころと……包丁? いや、包丁と言うよりナイフか? 何でそんな物を……まさか)

女の子「……~~~」 スッ...

触手(……左腕で石を振りかぶって)

女の子「……ッ!」 ブンッ! グシャッ!!

触手(うぉぉぉ!……え? 潰した百足の頭をナイフで切り取って……これって……マジでか? マジなのか?)

女の子「………………ッ!」 ......アグッ

触手(く……食ったぁぁぁっ!? な、生で……生でいったぞあの子)

触手(い、いや待て? ひょっとすると、この世界じゃ割と虫を食べるのも普通だったりするのかも?)

女の子「ッ……~~ッ……ッ」 ウプッ...オプッ

触手(いや、メッチャ吐きそうな顔してるし違うっぽいな)

触手(でも、わざわざ俺に虫を捕まえさせた上で何種類かいる虫の中からアレを選んだって事は、だ)

触手(あの百足が食べられる虫だって知ってた……って事になるのか?)

女の子「ッ……~~~~~ッ」 ...ゴクン

触手(おぉぉ……完食したよ、スゲェなこの子)

女の子「…………………」 ...チラッ

触手(微妙に顔から血の気が引いてる辺り、割とマジで嫌だったんだろうに……?)

女の子「……」 チョンチョン

触手「…………えっ、まだ食うの!?」 ウネネーン!

・・・

女の子「……」 グッタリ

触手(……結局、全部で5匹は食べたか……途中から目が虚ろになってたから少し心配だったけど)

触手(荷物の中に食料があるって忘れてるのかと思ったけど、そういう感じでも無いし……ん?)

女の子「……」 スッ...スッ...スッ

触手「……? これは……俺があの蝙蝠を食べろ、ってことなのか?」

触手(確かにこの蝙蝠を焼く手段がない現状、食べられない蝙蝠を放置しておいても腐るだけ)

触手(それに、この場所も安全じゃない……いつ迄も留まっていられない以上、移動する上での荷物は少ない方が良い)

触手「そう考えると俺がアレを食べておくのが無難か……よし」 ウネッ...ウネッ...ウネッ

女の子「……!」 ジッ

触手「俺が、蝙蝠を、食べる、っと……んで、あ~」 ウネリ

女の子「……?」

触手(……さっき俺が考えたようなことをこの子が考えた上で、俺に蝙蝠を食べろって言ったのかは分からない)

触手(ひょっとしたら、何かもっと別の理由があるのかもしれない………………だけど)

触手「……ありがとうな」 ウネッ...ナデナデ

女の子「……!」

触手(こんな姿の俺を気遣おうとしてくれている……そう思えるだけで、俺は……)

触手(……救われたのは、俺の方だ)

女の子「………………」 ソッ...キュッ

触手「……! あ、っと! スマン! 急に頭なんか触って悪かった! すぐ退け……?」

女の子「……ッ、~~~……~~?」 ポロポロ

触手「えっ、な……泣いて……なん、で?」

女の子「……ッ……~~~……ッ……」 ...ギュウッ

・・・

女の子「」 スゥ...スゥ...

触手(……よし、手当て終了……っと)

触手(慎重にやってるとは言え、包帯巻き直されてても起きる気配は全く無しか)

触手(まぁ、極限状態の連続だった訳だし無理もない……か)

触手(しっかし、アレだな……離してくれる気配も全く無いとはなぁ)

女の子「」...ギュウッ

触手(……ほんのちょっと前までの怯え様が嘘みたいな寝顔だ)

触手(正直に言って悪い気は……いや、自分のとは言え小さな女の子が触手を抱きしめて寝てるってのは非常に目に優しくない光景だな)

触手(……なんて言いながら、抱かれるがままにしてる辺り俺って……何だかなぁ……)

触手(いやいやいや、この状況なら普通だよな? むしろ変に意識する方がおかしい筈だ、そうだ、そうに違いない、うん)

女の子「」 ...モゾ...スゥ...スゥ

触手「…………はぁ」 ウネリ

『……ッ、~~~……~~?』

触手(あの時、この子は……なんて言ってたんだろうなぁ)

触手(あの涙は、どんな気持ちで……どんな意味が……)

触手「……何だかなぁ」

触手(…………俺も少し、疲れたな……あの大きさの蝙蝠をまるまる食べて腹もいい感じに膨れたし)

触手(……少しだけ……眠……)

・・・

触手「……ぅ……っと、寝ちゃってたか……いま何時……って、そうか時計なんて無……あれ?」

触手(…………………あの子が、いない?)

触手(まさか逃げ……いや、荷物が置いてある……他の生き物に? いや、それは流石に気がつく筈)

触手(それじゃあ一体どうして………………………………ぁ)

触手(…………………………まさか、おれ……が?) ゾクッ

触手(違う、ちがう……ちがうちがうちがうちがうちがうちがう!!)

触手(そんなはずない! ありえない! そんなことが、あっていいはずがない!!)

触手(じゃああのこは!? あのこはどこにいったんだ!! どうしてかってにいなくなった!!?)

触手(どうしたらいい? どうやって、なにを? なんで どこに どんな? あ、あああ、あああああ)

触手( たのむ だれか お し え て く れ !!) リィィィィッ

触手(!! なん……い、ま……あの、岩のかげ……っ!!) ウグリュッ!

女の子「!?」 ビクッ!

触手「……っ…………よ、よか……なん……ほん」 プルプル

女の子「?? ……? ……???」

触手(良かったああぁぁぁああっ! なんだよ!岩陰にいただけかよ! あ~もうほんっと良かったぁぁぁ)

触手(マジで、本気で、寝てる間に食べちゃったのかと……あ~もうホント心臓に悪い!!)

触手(はぁぁ~……ったく、何でまたこんな所に隠れるみたい……に……?)

女の子「……」 モジモジ

触手(……俺が寝てた所から少し離れた岩陰……この子がいるのは俺からはちょうど死角になって見えない所)

女の子「…………」 チラッ...モジモジ

触手(それに、しゃがみ込んで隠れてるのかと思ったけど……よくよく見ればズボンがずり下ろして……これって)

女の子「…………~~~……~~」 ゴニョゴニョ

触手「……し、失礼しました」 スルル

・・・

触手「……」 ウネウネ

女の子「……」 ソワソワ

触手(……き……気まずい……昨日とはまた違った感じで気まずい)

触手(いや、結果的に覗き?になったのは、まぁ……悪いとは思うけど別に子ども相手だし、そこはそれほど)

触手(だけど、少しトイレに行くのに離れたってだけであんなに取り乱したっていうのが……うぁぁぁぁ)

触手(お前は起きて母親がいないことに気づいた時の子どもかっ! っての……ぅぅぅぅ)

触手(とはいえ、何事もなかったから良かったけど、想像したみたいなことに今後もならない、とは言い切れない訳で)

触手(……俺が寝る時はあの子に触れないようにしよう) ウネネ

触手(……それはそれとして、さっきのアレは何だったんだ?)

触手(完全に俺から見えない位置にいたあの子が、あの一瞬だけハッキリとそこにいるように見えた)

触手(いや、見えたって言うと少し違う……か? うまく言えないな)

触手(……考えてても分かる訳じゃなし、ここはもう一回試してみた方が早いかもだな)

触手(あの時は……確かこう……いや、違うか? こんな感じに、こうだったかな?) ...ィィ

触手(あ、今のが近かったな……やっぱりこう……うん、こんな感じに……っ) ...リィィィッ

触手(おっ、おっ? ……おぉぉぉっ!? 何だこれ! スゴイぞ!!) リィィィィッ

触手(苔の光が届いてない所とか死角になってて見えない所までこう……しっかり感じとれる!!) リィィィィッ

触手(不思議な感覚だ……でも何でこんなこと急にできるようになったんだ?)

触手(元々できたけど、それに気付いてなかっただけとか? ……あり得るけど何かしっくりこないな)

触手(……! そういえば、ムカデを食った後で体の色が変わってたよな? 今は……あの時より少し、黒っぽい)

触手(これは……もしかして、蝙蝠を食べた影響って事なのか?)

触手(だとしたら、あの感覚……エコーロケーションって事か?)

触手(いやいやまさか、そんな蝙蝠を食ったからって、そう簡単に身に着く訳が)

触手(……無い、とは言い切れないか……魔法なんてものがあって俺みたいな生き物?がいる世界だもんなぁ)

触手(まぁその辺りは、それこそ考えたところで仕方がない……か)

触手(エコーロケーションっぽいことが出来るようになった、それは紛れも無い事実なんだし)

触手(それに何より、これを上手く使えるようになれば洞窟の探索がもう少し楽になるかも)

触手「よし! それじゃあ早速、探索に出発しy……ん?」 ウネッ

女の子「……」 チョンチョン

触手「あ……っと、俺としたことが考え事に夢中になってこの子の事すっかり……えっと、どうしたのかな?」 ウネウネ

女の子「~~、~~~……~~~~?」 スッ...ピッ

触手「俺を指差してから、通路の方を……あぁ、探索に行くのかって事かな? なら……◯っと」 ガリガリガリ

女の子「…………~~~」 スッ...カリカリカリカリ

触手(ん? 岩に何か描いて……これは、この子と……グネグネした線が沢山……ひょっとして俺か?)

女の子「……~~~、~~~~?」 ギュッ

触手(んん? この子と俺が手を繋いで……矢印、これは……まさか、探索に連れてけって事か!?)

・・・

触手「……ゆっくり、慎重に……っと! ふぅ……大丈夫、かな?」 ウネネッ

女の子「~~~」 キュッ

触手(よし、大丈夫そうだな……いや~、怪我人を抱えて探索とか無茶だと思ったけど案外なんとかなるもんだ)

触手(昨日の食事でまた腕が増えたってのもあるけど、この子自身が掴まってくれるのも大きいかもだな)

触手(多少は慎重に動く必要はあるけど、この子一人を置いて探索するより気持ちにずっと余裕がある)

触手「っと、分かれ道か……よし、それじゃあこっちに」 ウネウネ

女の子「~~、~~~~~?」 チョイチョイ

触手「ん? 何か……あっと、そうだったそうだった忘れてた……こうして、っと」 ガリガリガリ

触手(通り道やら分かれ道やら、小まめに印をつけて歩く……こんな少しの工夫で探索の安心感が全然違う)

触手(ほんと、昨日は迷うのが怖くておっかなビックリだったけど……この調子ならガンガン進めそうだ)

触手「こんな単純な事に気付けなかったってのは、いい歳した大人として少し恥ずかしいけどな」 ウネリ

女の子「……?」

触手(な~んて言ってばかりもいられない、反省するなら何より行動すべしってね……お?)

女の子「!」

触手「これは……光苔が少なくて視界が効かないけど、かなり広い空間に出たっぽいな」

触手(丁度いい、ここまでの道中で繰り返しやってる内に段々とコツみたいなのも掴めてきた所だし)

触手「今の全力でどの位までエコーで探れるのか、試してみようじゃないの……っ!」 ...リィィィィィィッ!!

......ィィィィィッ

触手(……思ってた以上に、かなり広いみたいだな……辛うじて天井の高さは分かるけど)

触手(……ダメだ、もう少し進んでみないと……あれ?) リィィィィッ

触手(今チラッと、岩とかモンスターじゃ無いっぽい何かが……こっちの方だな)

触手(よし、もう一度……っ! やっぱり間違いない、このシルエットは人だ!) リィィィィッ

触手(こっちの……アレだ! あの岩陰に! お、落ち着け? 脅かさないように、先ずはそ~っと…………?)

触手(……っ、ここまでの道中を考えれば、出くわさなかった事の方が不思議だったのかもしれないけど)

触手(白骨死体……明らかに人間だよなこれ……クソッ、落ち着け、落ち着け落ち着け!)

触手(どデカイ鬼に蛇に蠍に百足に魔法だぞ? そんなのを見てきて今更、死体の一つや二つで……っ)

女の子「? ……ッ! 」

触手(っ! い、いけない! こんなモノ、子どもが見るべきじゃn)

女の子「……~~」 ...スッ

触手(えっ……死体に向かって……これは、もしかして……お祈りか何かをしている感じ、なのか?)

女の子「……」

触手(……そう、だよな……怯えるより何より、そうするべきだよな……参ったな、俺なんかよりよっぽど……)

女の子「……~~~?」 スクッ...ゴソゴソゴソ

触手(…………えっ…………えぇぇ~~っ!?)

触手(お、おいおいおい……今の今までお祈りしてた死体の荷物を……動きに一切の躊躇がなかったぞ)

女の子「~~……~~、~~」 ...ゴソゴソ...ヒョイ...ゴソゴソ

触手(……動きに迷いも淀みもない……ひょっとして、この世界じゃ死体を漁るのって普通の事なのか?)

触手(子どもが白骨死体を見つけてお祈りからの死体漁りが普通って……もしそうなら、どんだけ世紀末な世界なんだここは)

触手(いやでも、それにしたってあんまりにも行動に迷いが無さ過ぎるよう……な……)

女の子「……」 ゴソゴソゴソゴソ

触手(……違う、普通の事とか迷いがないとかそう言うんじゃない……生きるために必死なだけ、なんだな)

触手(何か手伝う……のは、無理そうだな……仕方ない他にも何かないか……ん?) リィィィィッ

触手(あっちの方、何だか反響の仕方が他と違うような……何だろう) ウゾウゾ

触手(……心なしか、空気が少し冷たくなって来たような……それに岩の表面がやけに滑る)

触手(それにしても、こんなに湿気っぽいんだし、もっと苔が生えてても良さそうなのになぁ……寒さのせいか?)

触手(……っと、反響が変だったのはこの辺りか……あれ?) チャプッ

触手(この感触、冷たさ……これは、水だ!!) パチャチャ

触手(よし! よしっ!! これで一番の問題が何とかなりそうだ)

触手(って、待てよ? ひょっとして、この反響の違うのって全部水なのか? だとしたら、かなりの広さなんじゃ)

触手(そうなってくると、魚とかの食べれそうな生き物がいたりするかも……!) リィィィィッ

触手(お……おぉぉ!? いるぞ……明らかに魚って感じの影がチラホラと……しかも割と大きい)

触手(位置的にも、これくらいなら腕を伸ばして捕まえられそうだ)

触手(そうと決まれば早速……万全を期してあともう少s……っ) ゾクッ

触手(な、なんだ? この感じ……何処からか見られてる、ような? どこから? いや、それより) ゾクゾクッ

触手(……悪寒が、止まらないっ……何なんだ? どうして急に……分からない、分からないけど早くここから)

......ャァァァッ......

触手「っ!? いま、聞こえたの……あの子の、ひめ……っ!!」 ズオッ!

触手(俺の……馬鹿野郎!! どうして、どうしてあの子の傍を離れた!? どうして……クソォッ!!)

触手(頼む、頼むから……無事でいてくれっ!!) グバッ

女の子「~~~~~~~!」 モガモガモガ!!

緑小鬼1「~~~! ~~~~!!」 グイグイ

緑小鬼2「~~~~~!」 バタバタ

触手(な……何だあいつら!? 一体どこから? いや、今はとにかくあの子をっ) ググッ

緑小鬼3、4「~~……! ~~~!」 ワタワタ

触手(っ! 気付かれた! だけど、この距離ならすぐに捕m) ...ッ、ドスッ!

触手「っ!? なっ、これ……弓矢、か?」

触手(いってぇ……けど、コレくらいなら我慢できない程じゃな……いぃっ!!?) ズクンッ

触手「がっ!? い、いってぇぇぇっ!!? 」 ザワワワッ

触手(何だこれ!? 痛みが、傷口からドンドン拡がってっ……ヤバイヤバイヤバイッ……!)

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~~!!」」」」 ガシィィッ! ダダダダッ!!

女の子「~~~!! ~~~~!! ~~~~~~!」

触手(っあ、ま、待っ……あの子、連れてかれ……~~~あぁぁぁっ!!) ギチッ...ブチブチブチィ!!

緑小鬼1、2、3、4「……? ~~~~!?」

触手(ってぇぇ……けどっ……いける!!) グググッ

触手「待ち……やがれぇぇぇ!!」 ウゴゴゴッ

触手(細道に逃げ込まれたらアウトだ! ここにいる間に何としても、追い付いてみせる!)

緑小鬼1「~~! ~~~~!!」 ギリリッ...バシュッ!

触手「ってぇぇっ!? ……んの、くらいでぇぇ!!」 ブチブチィ

緑小鬼2「~~~!? ~~~~!」

女の子「~~~! ~~~~~~!!」 バタバタ

触手(よ、よし! このままいけば、逃げ込まれる前に追い付……!?)

緑小鬼3「~~!! ~~~……~~~~~!! 」 ドスッ!

女の子「……ッ!」 カハッ

触手(アイツ、暴れるあの子を……殴りつけ……っ)

触手「……クソ野郎どもがアァァァァッ!!」 ズギュルッ!

緑小鬼4「~~ッ!? ~~~~!!?」

緑小鬼1「……ッ、~~~!!」 バッ! チャキッ

触手(1匹離れてこっちに? 持ってるのは短刀? 俺を足止めしようってか! 上等だ!!)

触手「そこを! どきやがれぇぇぇ!!!」 シュバッギュルルルッ

緑小鬼1「~~~~!!」 ズバッ! ズシャシャッ!!

触手「っぎぃ!? っあがあぁぁぁぁっ!!? なに、くそぉぉぉっ!!」

触手(この短刀も、さっきの矢と同じか!? 痛え!! け、どっ……!)

触手「俺を止めたきゃ! その4倍持って来やがれぇぇっ!!」 ギュオォォッ ガシッ ガシッ!

緑小鬼1「……ッ!?」 グルンッ

触手「オォォオオォォッ! ぶっ飛べぇぇえぇっ!!」 ゴウッ! ビュオッ!

緑小鬼2「……? ~~!? ~~~~!!?」

緑小鬼3、4「~~? ……~~~~~!?」

ドゴラガシャーーッ!!

触手「……っはぁ、はぁ……追い、ついたぞ……っ!?」

緑小鬼1、2、3、4「「「「……~~ッ!」」」」 ジャキッ、ジャキキッ

触手「そうかよ……どうあってもその子を連れてこうってんだな……なら」 ググッ

触手(アイツらの短刀が全部同じ物なら……いや、だとしても)

触手「テメェら! 骨の一本や二本は覚悟しやがれぇぇぇっ!!」 グオォッ!

緑小鬼1、2、3、4「「「「!!?」」」」

触手「!? なっ……どう、して?」

女の子「……ッ」

触手「どうして、キミが……そいつらを、庇って……?」

触手「そいつらは、キミのことを攫おうとして……その上……なのにっ」

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~! ~~! ~~~~!!」」」」 ワタワタ

触手(……? なんだ? あいつら何を慌てて)

女の子「~~~……~~~~」 ソッ...ギュッ

触手(うおっ? なんだ? 急に俺の腕なんか掴んで何を)

緑小鬼1、2、3、4「「「「!!?」」」」 ビクーン

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~!! ~~~!? ~~~~!」」」」 ワーワーギャーギャー

触手(んなっ!? どうしたってんだこいつら……急に騒ぎだして)

女の子「~~~、~~~~……~~~~」 キュッ

緑小鬼1「~~!? ~~~~! ~~~~~!!」 ブンブンッ

緑小鬼2「~~~! ~~! ~~~~~!?」 オロオロ

触手(まるでこの子に俺から離れろって言ってるみたいに……いや、待て……まさか、ひょっとして)

緑小鬼3「……~~~、~~~~~!」 ジャキッ

緑小鬼4「~~~!! ~~! ~~~~~~!」 ワタタッ

女の子「~~~、~~~? ~~~~」

触手(俺に向ける視線とこの子に向ける視線の違い……それにさっきからのやり取り)

触手「キミは……こいつらと知り合い、なのか?」

触手(それじゃあ、つまり……なんだ? さっきのは攫おうとしたんじゃなくて、俺からこの子を……助けようと?)

触手(何だよそれ……だとしたら、俺は? 俺は……何を、しようとしてた?)

触手(この子を助けようとしてる彼らに、俺は……お、俺は……なんて事をしようとしてっ?) サァァッ

触手「っあ、あの! 俺! 勝手な早とちりで……あんたらに、酷いことをっ」 ユラッ

緑小鬼1、2、3、4「「「「!!」」」」 ジャキッ!

触手「っ! ま、待ってくれ! 俺は、違っ」 ウネネッ

女の子「~~! ~~~!! ~~~、~~~~~!」 バッ

触手(あぁ、ウソだろ?……この子は、自分が助けられることだけ考えてれば良いってのに、まさか……俺を、一緒に?)

触手(だけど、一体どうして? 俺は確かにこの子を助けはした……だけど、こんな見るからに化け物な俺のことを何故そうまで?)

緑小鬼1「~……~~~! ~~~~、~~~~~!」 ザリッ

緑小鬼3「~~~~~!? ~~! ~~~~、~~~~!?」 ブンブンッ

触手(今度はあちらの仲間内で揉め始めた……状況からして、俺を連れて行くかどうかっぽいけど……何だろう)

触手(それだけにしては、何だかやけに焦って見えるような……まるで、一刻も早くここから)

..........カタタッ.......

触手(……? なんだ? いまなにk…………っ!?) ゾワワワッ

女の子「……? ~~~~?」

緑小鬼2「~~~、~~~! ~~~~……~~~~ッ」 キョロキョロ

......タタッ...カタタタッ...

...ゴゴ...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

触手(なんだ、これ? なんだこれ、ナんだこれなんダこレなんだコれなンだこれ!?) フルフルフル

触手(なに……何か? 近づい、て? くる、いや来てる! こっちに、ハヤいもうすぐ……そこに!!) ガタガタガタ

..........ザパァァァァァ...ァァァ.......

緑小鬼4「…………~~……~~~~」 ヘナ

女の子「……~~、~~……?」 サァァ

巨水龍「…………ッ、コアアアアアアァァアアァアァア!!」 キィーーーーーンッ!!

触手(な、ん……デカ……あ……ぅあ?) ヒククッ

触手(や……べ……からだ、うごか……な……っ) ヒクンッ

巨水龍「……コルルルゥゥゥ」 ...ズォォォッ

触手(っ! く……くるっ! に、にげな……あぁ、あぁぁぁぁあぁ) グ...ググッ......キュッ

触手「っ!」 ガバッ

巨水龍「ゴアアァァッ!!」 キュボァッ‼︎

ドバンッ‼︎ ドザパァァァァッッ

触手「うぉあぁああぁぁあぁ!!?」 ザパアァァンッ

触手(ななおななんだ!? なにがおきた!? なにをされ……っぐ!?)

触手(腕が何本も引き千切れ……っ、あの子は? あの子はっ!?)

女の子「ゲホッエホッ! ゴホッ!!」 ポタポタ

触手(よ、良かった……見た感じずぶ濡れなだけでケガは……ずぶ濡れ?)

触手(そう言えば俺も全身が濡れて……って事は、いま俺はあの龍が吐きかけた水を?……いや、待て待て待て待てっ)

触手(さっきより龍との距離がかなり離れてる……それだけ吹き飛ばされたって事は、まだ分かる)

触手(だけど……さっき立ってた辺りの岩がゴッソリ抉られてやがる! あんなのがマトモに当たったら……っ) ゾワッ

巨水龍「コォルルルォォオォォッ!!」 ゴボボボボッ

触手(ヤッバ! もう次が!? 早く逃げないと! あぁあでも、あんなのからどうやっt)

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~! ~~~~~~!!」」」」 ギャーギャー‼︎

触手(っ!? な……あいつら、いつの間にあんな遠くに)

触手(って、ちょっと待て? あいつらのいる所……あれはひょっとして通路、なのか? それじゃあ、まさか)

触手(俺を、呼んでる? コッチに来いって……事なのか?) ゾワッ

巨水龍「…………ッッ!!」 ゴボボボッ‼︎

触手(……っ、迷ってる暇は無い!) グググッ

触手「う……おぉおおぉぉおっっ!!」 ダダッ

キュババババッ‼︎

触手「ぃっぎ!? っか、あぉああぁあああぁ!?」 ゴロゴロゴロッ

触手(っあっぐぃ、ぅあぁぁ……ぃってぇぇぇぇっ!!?)

触手(なんっ、だってこんなにぃっ!? 腕が端から、擦り下ろされたみたいに……っ)

触手(くっそぉ! 今ので腕をかなりやられた!使い物になりそうな腕は……10本、か……っ)

巨水龍「コルルォオオォォオ!!」 ゴボゴボボボッ!

触手(!! ヤバイヤバイヤバイヤバイ! 動け、動け!! でないと、次は俺の腕が吹き飛ぶだけで済まない!)

触手(でもさっき全力で走ってダメだったのに、腕が減った状態で……どうやって……!) ハッ

触手(違う、俺の腕は早く走るのに向いていない……むしろ、掴んだり引き寄せる方が……なら!) シュシュッ!

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~~~!!?」」」」

巨水龍「…………ッッ!!」 ゴボバボボボッ!!

触手「おあぁぁあぁぁっ!! 間に、合えぇぇぇっ!!」 ギュチチチチッ...! ビュオッ!!

キュボボボボッッ‼︎

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~~!! ……? ……!!?」」」」 ササッ

触手「っ! ぐぅぁあっ……!」 ドカッ! ゴロロッ

女の子「ッ、~~~! ~~……~~~……!」 アタフタ

触手(3本やられ、た……っ、けど……通路に辿り、着いた!!) ギチリッ

触手(もう、少しだ! あと20mもここを進めば、あの図体じゃ追ってこれない、はず……っ!) ズリ、ズリリ

緑小鬼4「……~~、~~~?」 ワタワタ

緑小鬼3「……~~~~!」 フンッ

緑小鬼2「~~~、~~……~~~? ~~~!?」 ビクッ

緑小鬼1「~~、~~~……ッ、~~~~~~!」 ダダダッ

触手(ん? 何だ? あいつら、通路の入口の方を見るなり慌てて走り出し……んっ?)

...ゴ...ゴゴ...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

触手(地鳴り……いや、違う! これは、水の……や、ヤb)

ドザッパァアァアァア! ドドドドドドドドッ!!

触手「うあぁあぁああぁあぁああ!!?」 ゴボボボッ

緑小鬼1、2、3、4「「「「~~~~~~!!!」」」」 ガボボボボッ

女の子「~~~~……!」 ブククククッ

・・・

...ピチッピチチッ...ビチチチッ

触手「……ぅ……? お、れは……そうだ、水にながされ……っ!?」 パチャッ

触手(あの子は? あの子はどうした!? しっかり掴んでた筈なのに!! ま……まさか、俺が!?)

...ピチャッ、ピチャピチャピチャッ

女の子「……! ~~~! ~~~、~~~~!」 バチャチャ! ギュッ‼︎

触手「うぉわっ!? あ……な、なんだ先に気が付いて……は、はは……良かった……本当に……っ」 ホッ

緑小鬼1「……~~~~、~~~~」 パチャッパチャッ

触手「んなっ……! お前は……っ!!」 バチャッ

触手(くっ、マズイぞ……腕の数が減ってる現状、さっきみたいなゴリ押しは、もう……っ) ジリッ

緑小鬼1「……~~……~~~~、~~~~? ~~」 ビチチッ...ポイッ

触手「ん? なっ! お、おぉっ!?」 パシッ、ビチチチッ

触手(な、なんだ!? 何か投げてよこし……これ、魚だよな? は? ど……どういう事だ?)

女の子「~~~、~~~~~?」

緑小鬼1「…………~~、~~~~……~~~~」 ハァ

女の子「~~~! ~~~~! ~~~~~!!」 バシャンッバシャンッバシャンッ

触手(えっ? えっ?? なんだ? なんでこの子は飛び跳ねて喜んで? えっ???)

女の子「~~! ~~~……~~~~~~!」 ムンズッ、グイグイ

緑小鬼1「~~!? ~~! ~~~~~~!!」 ジタバタ

女の子「~~~! ~~~~、~~~~?」 ギュッ、クイッ

触手(んんん??? ちょ、ちょっ!? なに!? なんで、俺の腕とそいつの腕をくっ付けようと!?)

女の子「~~! ~~~~~……~~?」 ジトッ

緑小鬼1「……………………~~」 ムンズッ、ブンブン

触手(!? お、れの腕を……握って、これは……ひょっとして……握手、って事なのか?)

女の子「……~~! ~~~、~~~~~!」 ニッコリ

・・・

触手(……あれはやっぱり、仲直りの儀式って事で間違いなかったんだと思う) ヒョイッヒョイッ

触手(こっちが近づくと警戒されてる感じはするけど、それでも……) ...タシッ

緑小鬼1「…………」 パシッ

触手(服越しに肩を叩くくらいなら触っても平気だし、俺が拾ってきた魚も普通に受け取る……無言でだけど)

触手(少なくとも直ちに危険ではない、くらいには思ってもらえてる……と思いたい)

触手(それにしても、まさかこんな形で食料がまとまって手に入るとはなぁ……そこだけは、あの龍に感謝、かな?) ヒョイッ...ビチチッ

触手(……にしても、魚の種類とかよく分からんし、水が磯臭くなかったから川魚なのかなってくらいしか分からないけど) ヒョイッヒョイッ...ビチビチッ

触手(これはもしかしなくても、この体になって初めて食べるまともな物になるんじゃなかろうか) ヒョイッヒョイッヒョイッ...バクンッ

触手(……味が分からないんじゃ、魚も虫も大差ないかもだけど……気分は大事だよな、うん) ヒョイッビチッ

触手(……それにしても、アイツが魚を捌く担当って事は分かるんだけど……あの子はさっきから何してるんだ?) チラッ

女の子「……~~……~~~? ~~……~~!」 ガコガコ...ゴトッ

触手(石がコの字型に積まれて……あっ、ひょっとしてかまど……なのかな?)

触手(随分と昔に連れてかれたキャンプで、確かあんな感じのを作った記憶が……だけど、薪になりそうな物がどこにも……)

女の子「~~~、~~~……~~?」 パラパラ

触手(ん? なんだあの袋……ひょっとして、さっきの死体の荷物からとったのか?)

触手(中身は……赤い、砂? で、なんだかキラキラして宝石を粉にしたみたいにも……?)

女の子「……~~~、~~~……~~!」 ...シュボッ!

触手「う、おっ」 ビクッ

触手(び……ビックリした、いきなり炎が……前は指先に灯るくらいだったのに、今度はメッチャ燃えてる)

触手(しかも、指先じゃなくてかまどの中で……さっきの赤い砂が燃えてる、のか?)

女の子「~~~? ~~~~」 ジッ

触手(ぅ……心配そうに見られてる……我が事ながら、これくらいで心配されるってのは何とも情けないなぁ)

触手「あ~……大丈夫、平気平気! ……って、これで伝わるかな」 ブンブンッグッグッ

緑小鬼1「……~~~~~?」 ジーッ

触手(……っ!? いつの間に後ろに……って、何だ? 心なしか表情と声に呆れのニュアンスを感じるような)

女の子「~~~、~~~~~……~~?」 クスッ

触手(……何やってんだコイツ……みたいな感じか? くっ、なんか女の子の方まで苦笑気味なのが……っ)

緑小鬼1「……~~、~~~~~~……~~~」 ペチャチャチャッ

触手(ん? あぁ、そうか捌いた魚を渡しに……って、多っ!? えっ、さっき持ってった魚を全部この短時間で? 早っ)

...ジュウゥゥ

触手(おぉ……網も串も無いのにどうするのかと思ったけど……まさか落ちてる平らな石を鉄板がわりに使うとは)

触手(流石に鉄板ほどすぐ熱くはならなかったけど、美味そうな音がジワジワと……それに、この匂い)

触手(あんまり嗅いだことのない匂いだけど、イヤな感じはしない……寧ろ食欲をそそられる)

触手(調理の手際も中々だったし……これはひょっとして、期待できるかも?)

緑小鬼1「……~~~~」 ガッガッガッ

...ゴチャ

触手(……盛り付けは豪快なんだな……不思議と不味そうには見えないんだけど)

触手(……まぁ、生きてる虫の山盛りと比べたら大概の物は美味そうに見えて当然か)

触手「さてと、それじゃあ早速……?」 ウネリ

女の子「……~~~~……」 ゴニョゴニョ

触手(目を瞑って手を組んで……食前のお祈りみたいな感じかな? この世界にもそういうの有るんだな)

緑小鬼1「……ダキマッ」 ボソッ モソモソ

触手「……んんっ?」

触手(あれ? いまの……どことなく、聞きなれた響きだったような)

女の子「……~~~~~……~~! ~~~~!、」 ハグハグ

緑小鬼1「~~~、~~~~?」 ゴクン...モソモソ

触手(…………気のせい、か? )

女の子「……っ…………」 ハグハグッモグモグ

触手(結構な勢いで食べてるな……まぁ、気持ちはよく分かる)

触手(うん……とりあえず今は折角の焼き魚を頂くとしますかね、っと) ヒョイッバクッ

触手(……お? …………あれ? ……………んんん??) ピタッ

緑小鬼1「…………」 ジッ

触手(………………なんだか、思ってたのと違うな)

触手(味があんまり分からないってのは、ある意味で思った通り……それはまぁ、仕方がない)

触手(それよりもこの……食ってるのに食ってる感じが殆どしないってのは、どういう事だ?)

触手(食ってる量が少ないから? いや、でも……さっき拾いながらつまみ食いした小魚を食べた時はもっと……濃厚?)

触手(……って事は、何か? この焼き魚は味覚的な物と違う"何か"が薄いって事になる……のか?)

触手(……って事は、もしかして……!) ...ヒョイッバクンッ

触手(……やっぱり、生魚の方が食ってるって感じがする……え~……マジか~……) ズーン

触手(いや、なんだ……別に良いよ? 日本人だからね? 生魚バッチコイですよ?)

触手(でもさぁ、これって魚に限らず料理全般がこんな感じかも……って事だよね)

触手(……なんだかこの世界で生きていく上での今後の楽しみが、一つ失われたような気が…………って)

触手(…………バカだなぁ、俺は……そもそもの大前提を忘れてるじゃないか)

触手(洞窟で見かけた時点で人に殺されかける俺が、人里に行ったりしたらどうなる……料理だなんだ以前の問題じゃないか)

触手(……これはいよいよ、考えなくちゃいけないってことなのかもな……俺が今後、どうしていくのかを) ウネッ

女の子「……? ~~~~?」 キョトン

触手(……偶然の出会いではあったけど、この子がいなかったら俺はどうなってたんだろうな)

触手(見知らぬ場所で、訳の分からない状況で、人に殺されかけて)

触手(どこか、安全そうな所に引きこもってたか……もしかしたら、そのまま野垂れ死んでたかもな)

触手(少なくとも、人と関わりを持とうだなんて……考えもしなかっただろうなぁ)

触手(でも……結局そうするのが一番、誰にとっても良い選択……なんだろうな)

触手(今までの様子からしても、この子はこの洞窟に間違って迷い込んだんだと思う)

触手(そんで、この子と顔見知りって事からしてコイツと他の3、人? は捜索隊か何かなんだろう) ウネッ

緑小鬼1「……」 ジロッ

触手(……こんな洞窟で女の子一人を探そうって位なんだから、帰り道も分かってる筈だ)

触手(あの冒険者の2人組ほどじゃ無かったとは言え、アレだけ戦えるんだし、俺がいる必要も……いや、待て? そう言えば) チョンチョン

女の子「?」 モグモグ...ゴクン




・・・・・・・・

鬼娘「なになに? どうかしたの?」

触手「……」 ウネウネ...ガリガリッ

長男(……おいおいおいおい、なんてこった……まさかコイツ、絵を描いてやがるってのか?)

長男(しかも、それっぽいって程度じゃねぇ……お嬢と俺達をハッキリ描き分けてやがる)

長男(こっちの言ったことに反応できるくらいのオツムだと思ってたが……こいつぁ予想外だ)

鬼娘「え~と……私と、オジちゃんとゴブさん達? で~、それから?」

長男(参ったな……ただでさえ色々と厄介だってのに、こんなん俺らの手に負えねぇぞ)

長男(どっかで隙を見て撒いちまうか? ……いや、あの時の執着具合と機動力……お嬢を抱えた状態じゃあ厳しいな)

長男(それに何より、お嬢が抵抗するのが目に見えてる……クソッ、面倒なことになったもんだ)

触手「……」 ガリリッ...ガリリリッ

鬼娘「えぇっとオジちゃんと私、それに……ゴブ一さんかな?……を、グル~っと……?」

長男(せめて、あと一人いりゃあなぁ……だったら、多少強引にでも)

触手「……」 ガリリリッ...チョイチョイ

鬼娘「残りのゴブゴブさん達をグルッと……あ~……あ~! そっかそっか、そのこと話してなかったっけね」

長男「……どうしやした? 何か其方さんが聞きたいことでもあるってんで?」

鬼娘「うん! あのね、ゴブ一さんの弟さん達はどこいったの? って!」

長男「…………其方さんが、そう言ってるってんですかい?」

鬼娘「そうだよ! ほら、コッチが私達とゴブ一さんでしょ? それで、他のゴブさん達がクルクルでチョンチョンだから……ねっ!」 エッヘン

長男「あ~……まぁ確かに、そんな感じに見えなかぁないですねぇ」

長男(……話せるってか、そんな感じの事を言いたいんじゃねぇか、位のもんか……話が通じるって言うにゃあ微妙なところだぁな)

鬼娘「う~ん……どうしよ? みんなと逸れちゃってるって、どんな風に描いたら良いかなぁ……え~っと」 カリカリ

長男(しっかし、そこを聞いてくるか……順当っちゃ順当だが……どう出る)

鬼娘「……んっ! こんな感じかな? オジちゃん! ホラこれ、見て見て! どうかな? 分かる?」 チョンチョン

触手「……」 ウゾウゾ......クルンッ

鬼娘「マル……って事は、分かったのかな? 良かったぁ~」 ホッ

長男「……今のぁ、分かったって時の合図なんですかい?」

鬼娘「うん、そうだよ? 分かったよ~って時はマルで、分かんないって時はバッテンなの」

長男「はぁ~成る程ぉ? 因みに、そのマルやらバッテンってなぁ何なんです?」

鬼娘「前にオジちゃんに教えてもらったの! オジちゃんのいた国だと、"大丈夫"って意味と"ダメ"って意味なんだって」

長男「…………そう、ですかい」

長男(…………コイツァどうなってやがるってんだ?)

長男(まさか、本当に……いや、んな事がある訳が……あぁ、ダメだ! さっぱりだ!訳がわかりゃしねぇ!!)

長男(……しゃあねぇ、考えんのは後回しだ……どっちにしろ、俺だけじゃ手が足りやしねぇんだ) ムンズッ

鬼娘「あれ? オジちゃん焼いたお魚食べないの? いっぱい有るからもっと食べて良いんだよ?」

触手「……」 ウネウネフルフル

長男(動くのはアイツらと合流してからだ……だから、それまでは……) ガブッ...モグモグ




・・・・・・・・



.

頭にあった展開と思いついた展開で迷い中につきご容赦をば

「……はぁっ、はぁっ……っぐ……はぁっ、はぁっ」

鬱蒼と茂る森の木々。その間をすり抜け、草を掻き分け、ひたすらに走り続ける。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……! はぁっ、はぁっ!」

道無き道を駆ける。 速度は落とさない。立ち止まってしまうなんて以ての外だ 。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ! はっ、はぁっ、っっく」

脚が地面を蹴る度、左腕に走る痛みで頭の芯が焼け尽きそうだ。だが、それで良い。

「はっ、はっ、はぁっ! ふっ、ぐぁ、はっ、ひゅっ」

もう無理だ。諦めろ。楽になれ。そう訴えかけてくる身体に喝を入れるには、これ位が丁度いい。

「っは! ひゅ、あぁっ、はぁっ、ふぅっ、っは!」

少しでも長く、走らなければ。少しでも遠くまで、走らなければ。でないと。

追いつかれてしまうから。

・・・

緑小鬼1「……」 キョロキョロ...クイッ

触手「はぁ、はぁっ……ちょ、ちょっと待っ……もう少し、ゆっくり……」 グネグネ

緑小鬼「……」 ...スタタッ

触手「あっ、ちょっ! ……くぅぅ」 グテグテ

女の子「……~~~?」 ソッ

触手「あっ……だ、大丈夫! 大丈夫だから……重くない、平気平気」 ブンブン、ググッ

女の子「~~っ! ……~~~」 ...クスッ

触手(ふぅ……笑ってるって事は安心してくれたって事かな?) ホッ

触手(しっかし、歩き出してからまだそんなに経ってないってのにコレかぁ……実際、先が思いやられるなぁ)

触手(昨日魚を食べたおかげで腕も何本か再生できたけど……この子を抱えて歩くには、まだキツかったか)

触手(いやでも……万全じゃあないにしても、もう少しペースが遅ければこんな、疲れたりなんて……っ)

緑小鬼1「……」 ガリリ......サササッ

触手(……要所要所で待ってはくれてるし、この子を抱えてる俺を置き去りにするつもりは無いのは、分かる)

触手(だけど、立ち止まる度にコッチをジトーっと見つめてくるのが凄まじくプレッシャーと言うかなんと言うか)

触手(コッチは怪我人を抱えてるんだから、そこを少しは考慮くれても良さそうに思うんだけどなぁ)

触手(……でも待てよ? ひょっとして、俺がこんな風にへばってると思ってないって事もあり得る……か?)

触手(言葉が通じてないってのもあるけど、いまの俺の体じゃ傍から見てそういう変化が判り辛いってだけなのかも)

触手(それに、ここは異世界なんだし……疲れてそうな雰囲気を察してペースを落とす、ってのは日本人的な感覚過ぎるのかも)

触手(こんな状況だからこそ、意思が伝わりにくいって言い訳しないで、こっちから積極的に訴えていけば……よし!)

触手「……ふ、ふぅ……あの~、ちょっとここらで一休みとか、どうかな?」 クテッ

緑小鬼1「……?」 クイッ

触手(おっ? 様子の違いに気づいてくれてたかな? よしよし、この調子で)

触手「あ~……少し進むのが、早いから……ここらで、休憩n」 クテクテ...スカンッ!

触手「うおわっ!? ちょっ、いまの何っ!? 何か投げた!?」 ワタタッ

女の子「~~ッ!? ~~~~!」 ビクッ

緑小鬼1「…………~~」 ジロッ...クイッ

触手(うぇ~~……凄い睨まれてないかコレ……? ひょっとしなくても、怒ってらっしゃる?)

緑小鬼「…………」 クイッ!

触手(ふざけてないでサッサと歩けという圧を感じる……くっそぅ) ...グテグテ

緑小鬼1「……!」 ササッ...ピタッ

触手(日本人的とか、関係なくっ……単に容赦が無いだけっぽ……ん?) グテグテ

緑小鬼1「…………」 ...ジィッ

触手(なんだ? 急に立ち止まって……壁を睨んでる、だけ……って事はないよな?)

緑小鬼1「……~~~」 ガリガリッ...クルッ

触手(あれ? こっちに戻ってくる……! ひょっとしてやっぱり休憩することにしたとk)

緑小鬼1「……」 サササッ...ガリガリッ...サササッ

触手(……あれ? 通り過ぎて……えっ? 来た道戻ってってるけど、もしかして)

緑小鬼1「……? ~~~、~~~」 ガリガリッ...クイッ

触手(うっげ、ウソだろ? 引き返すってのか? この前の分かれ道って、出発した所のすぐ近くだったような……)

緑小鬼1「……~~~~、~~」 クイッ

女の子「……~~~~、~~~?」 アセッ

触手(くっ……この子の反応からしても戻った方が良さそうってのは分かる……分かるけども)

触手(……! そうだ、こんな時こそエコーだ! アレを使ってこの先に何があるか確認を……っ) ...キィィィィン

触手(よしよし、いい感じに先が見え……見、え……ん、んんっ? 何だコレ、どうなってるんだ?)

触手(見え方がなんだか変だ……通路全体が歪んでる? いや、って言うよりむしろ……動いてる、みたいな)

触手(…………えっ、待って? って事はもしかしてコレ……全部、虫だったり?)

触手(う……うぇぇぇ! 気持ち悪っ! ちょっ、あり得ないだろコレは! 何なんだ!? 何がどうしたらこんな大量に……うわぁ)

触手(……この世界に来てからの主な食料が虫な奴が言う事じゃないけど……こんな、壁から床から天井から虫まみれとか、流石に……)

触手(しかも一匹一匹の大きさも結構デカイな……キモいとか抜きにして、量も合わせて考えると単純に危なさそうだなぁ)

触手(となると、結局のところ引き返して別の道を行くのが一番ってことか……ぐぬぬ) ...ウゾゾゾ

緑小鬼1「…………」 フイッ...サササッ

触手(……気にくわないけど、この洞窟の進み方に関しては任せて良さそう、かな……仕方ない、いまは遅れず付いてくことに専念し……って)

触手「んなこと考えてる間にもうあんなに離れ……あ~! くそっ!!」 ウゾウゾウゾッ

・・・

触手「はぁ、ふぅ……ひぃ、へぇ……」 クテクテ

緑小鬼1「……」 ササッ...キョロキョロ...チラッ

触手(つ、つかれた……結局、あのペースで何度も行って戻って行って戻っての繰り返し、とか……そろそろ、限界) グデデッ

触手(や、ヤバイ……腕がプルプルしてきた……これ以上はマジで、マズイかも)

緑小鬼1「……~~~」 ガチャ

触手(お……おぉ? 岩に腰掛けて……って事は、ひょっとして)

触手「休んで良い……って事だよな? ……は、はぁぁぁ~~」 ...ダルーン

女の子「ッ! ~~~? ……~~~~」 オロオロ

触手(う……マズイ、完全に余裕じゃないのがバレて……あぁでも空元気を出して見せる余裕が)

女の子「……」 ソッ...ナデナデ

触手(うぐっ!? ……お、女の子に撫でられ……気遣い、なんだろうけど……大の男としては、こう……なんとも言えない情けなさが)

緑小鬼1「……~~」 ゴソゴソ...ポーン

触手「へっ? おっわ! っとと……い、いきなり食べ物を投げるとか、おまっ」 グネネッ

緑小鬼1「……」 ガブッ...モグモグモグ

触手(聞いてねぇ~~……いや、いけない……イラついてる時間がムダだ、いまは体を休めるのが最優先……っと、その前に)

触手「ハイ、どうぞ」 スッ

女の子「……? ~~~~~?」 キョトン

触手「え~っと……魚をバツ、で……虫をマル……っと、これで伝わるかな?」

触手(まともな食べ物がある内は、ちゃんと食べて欲しいしね……俺は虫を食っとけば良い訳だし)

女の子「~~~……~~~」 コクリ

触手(おっ、伝わったっぽいな……だいぶこのやり取りも慣れてきた感があるな)

触手(……この子としてるやり取りの半分くらいでもアイツとやり取りが出来ればなぁ)

緑小鬼1「……」 ガツガツ...ゴクン...ゴソゴソ

触手(……無い物ねだりしても仕方がない……こうして一緒に行動してくれてるだけでも凄い事なんだし)

触手(それに、ペース配分がキツイのはアレだけど……安全なルートの見極めに関しては確かみたいだ)

触手(……もし、他の仲間と合流できたら……その時、俺は……)

触手(…………そう言えば、魚を食べたけど何か変わったのかな?)

触手(大百足の時みたいに色が変わるでもないし、蝙蝠の時みたいに何かぎできるようになった感じもない)

触手(今までみたいに食べた物の影響があるとしたら……水の中で息ができるとか?)

触手(もしそうだとしたら、どこかで試しておきたいな……いざって時に思ってたのと全然違いましたじゃ困るもんな)

触手(って言っても、こんな洞窟の中でそう簡単に潜ったりできそうな水なんて)

......パシャッ

触手「んっ? いまの音って水の……?」

緑小鬼1「……」 ポコポコッ

触手(アレは……そっか、水を汲んで……あ、もしかしてあの水場があったから休憩を……?)

緑小鬼1「……ッ……~~~~!」 バシャバシャ

触手(あれ? なんだろう水を……叩いてる? 突然どうしたんだ?)

緑小鬼1「~~ッ、~~~~!」 ズズッ...ズブブブ

触手(……は? えっ、なんだアレもしかして……水に引きずり込まれてないか?)

女の子「……? ッ!? ~~~~~!」 アセッ

触手(っ! この子も焦ってるって事は、やっぱりヤバイことになってるのかアレは!)

緑小鬼1「~~~~! ッ! ~~~~!!」 ブンブン

触手(手を振って……なんだ? 助けてくれって事か? それとも、来るなって事なのか? あぁもう、わからん!!)

触手「まずは助けてみて、違ったなら……その時はその時だぁっ!!」 ビュルルッ、ギチッ

緑小鬼1「~~~~~~!?」 バタバタ

触手(あぁぁぁ、頼むから暴れないでくれって! ただでさえ体が小さい上に、右手側が水に引きずり込まれてて掴めそうな所が少ないんだからさぁっ) グチチチッ

女の子「~~~~! ~~~、~~~~!?」 ワタワタ、ゴソソッ

触手(? なんだ? 荷物をあさり始め……っ!? お、おぉぉ? んなっ、なんだよこの引きはっ!? ) ...ズッ

緑小鬼1「~~~~~~~~ッ!!」 ギャーギャー

触手(や、ヤバイ! 引きが強過ぎるっ……このままじゃ、俺まで水に引きずり込まれるっ!) ...ズズッ

触手(だけど、これ以上強く踏み留まろうとしたら、水に引きずり込まれるより先に、あいつの体が裂けちまう……かも) ...ズズズッ

触手「あぁもう! どうしてこうも、行く先々で厄介な事になるんだよ……っ、クソォォォ!!」

女の子「……~~~、~~~……~~!」 ...バララッ、ボウッ!

触手「う、おわあぁっ!?」 ビククッ!

触手(す……スゲェ! 水の中なのにすごい勢いで燃えてる! あっ! アレってもしかして火起こしに使ってた赤い砂か?)

触手(いや、あの時のより少し粒が大きい……ひょっとして火の勢いが強いのはそれが関係して?)

ズズッ...ジリッ

触手(っ! しめた! 引きずり込む力が弱まってきてる! これなら……っ、あと……少しで……っ!) ...ギチッ

女の子「…………ッ」 クラッ

緑小鬼1「~~~~~ッ」 ...ミシシッ

触手(っ、アイツの腕も限界か……だけど、これならギリギリで引っ張りだs) ...ググッ

女の子「……ッ、~~……ッ」 カクンッ

ボボボッ、ボッ……ボ……フシュウ

触手(っげ!? 火が、消え)

コボッ……ゴボブボボボボッ!!

触手(んなっ!? 水が、おおいかぶさっ……っ) グイッ! ポイッ

女の子「……ッ!?」 ドサッ

ザッポォォアァアアァン!!

触手(よ……よし、咄嗟だったけどあの子だけは何とか……って安心してもいられないな、コレは……っ) ...ギギギッ

触手(ただの水じゃないとは、思ってたけど……全身が、水に締め付け……られてるみたいだ……っ)

緑小鬼1「……ッ……」 モゴモゴ

触手(くっ、アイツも完全に水に呑まれて……このままじゃ俺もアイツも……っ)

触手(せめて、アイツだけでも外に!……いやダメだ、ほとんど身動きできない状態で、ここから押し出すなんて)

触手(ヤバ……圧力が増して……意識が、とお……く……?)

女の子「~~~~……~~! ~~~~~!!」 ヨロッ

触手(んなっ!? ばっ! バカ! なんでこっちに! ダメだ! 近づいたらキミまで呑まれ……)

触手(…………そうだ、ダメなんだ……ここで、あの子を逃したとしても……あの子一人じゃ、遠からず)

触手(……だってのに、俺が……こんなところで、大人しく死んでられるか!!) ゴボボボッ

触手(だけど、どうすれば良い? 水から出ようにも、こんなに締め付けられてちゃ……締め付け、られてる?)

触手(……! そうだ、そうだよ!! 俺は"締め付けられてる"! なら、この水もただの水じゃないはず……って事は……!)

触手(この水みたいなのも、多分モンスター! いまの俺はモンスターに飲み込まれてるような状態ってことになる、だったら!)

触手(内側から! 飲み干してやらぁぁぁああぁあぁ!!) ...ズオォオオォォォオッッ‼︎

......ズ......ズズッ

触手(よ……よし! 少しずつだけど、水の量が減っ……て……?) ボゴゴゴゴ

触手(な、なんだなんだ!? 周りの水が急に! わ、わ、わっ!?) ギュオオオッ!

触手「お、おわぁぁあぁっ!!?」 ボフゥゥッ‼︎ ドベチャ!

触手(なっ、何が? ……いや、もしかして……吐き出された、のか?) ベトトッ

触手(そうか、俺が内側から飲み干そうとしたもんだから堪らず……予想外だったけど、出れたなら結果オーr)

女の子「!? ~~~~! ~~~~~!!」 ワタワタッ

触手「……? えっと、何を慌てて……?」

緑小鬼1「……ッ……ッ!!」 ブクブク

触手(あ……あぁぁっ!? 忘れてたぁっ!!)

...ズプププ

触手(ん? あれ? 何だかさっきより下の方に沈んでいって……って、もしかして水場の深い方に逃げてってるってことか!?)

触手「ちょっ、まっ! ソイツも置いてけぇぇっ!! 」 シュバババッ

・・・

...リィィィィィッ

触手(周囲に生き物の反応はなし、と……この分なら追いかけられてはいなさそうだな)

触手(何とかかんとか、あの水っぽいのから引きずり出したら、あとは逃げ回るのに必死だったからなぁ)

触手(咄嗟に来た道じゃない方に突っ走ったのは確かだけど……結構坂を登ったり降ったりしたのが果たして吉と出るか凶と出るか)

女の子「……」 スゥ...スゥ...

触手(この子はこの子でグッスリか……いや、昨日今日と立て続けに色々あったもんな)

触手(……昨日の食事の後は少し血色が良くなったかと思ったけど、また少し悪くなってるな)

触手(怪我や食事不足が主な原因としても、あの魔法を使うのが負担になってるのは間違いなさそうだし)

触手(殆どモンスターと出くわさないとは言え、出くわす度にヤバい状況になってばかりじゃ消耗するばっかりだ)

触手(いっそのこと、安全そうな場所を探してしばらく安静に……いや、ダメか)

触手(絶対に安全な場所なんて確保できそうにないし、食料だって多くない……時間が経つほど消耗していくのは目に見えてる)

触手(そうなるとやっぱり、出来るだけ早く地上を目指すべきなんだろうけど……)

女の子「……」 スゥ...スゥ...

緑小鬼1「……」 ギギギギ...フヒュルルル

触手(地上……地上か……どんな所なんだろうな)

触手(流石に洞窟を出たらそこは大都会、なんて事はなさそうだけど)

触手(あの時の冒険者二人は普通の人間っぽかったけど、こっちの二人は明らかに人間じゃないし)

触手(ひょっとしたら俺みたいなのも別に珍しくなくって、あっさり受け入れてくれる可能性だって)

触手(そうだよ、あの二人組に出くわした時は意思の疎通が出来なかったけど、今度はあの子も一緒なんだ)

触手(大丈夫、今度はきっと……)

...ゴソッ

緑小鬼1「……~~……?」 ムクリ

触手「……! 意識が戻ったのか! 良かった……もし目が覚めなかったらどうしようかと」 ウネッ

緑小鬼1「!! ~~~ッ!?」 ババッ

触手「っと……ちょっ、待て待て待て! 落ち着いてくれって大丈夫だから、何もしないからホラ」 ウネウネ

緑小鬼1「……」 ジリジリ

触手(あぁ、もうくっそ……死にそうな目にあいながら助けた上に、腕の応急処置までしたってのにこの反応とか……本当に助けがいが無いというか) クテリ

触手「……まぁ何はともあれ、目が覚めたんなら良しって事にしますかね……っと」 ゴソソッ...ポイッ

緑小鬼1「~~!? ……ッ……~~~?」 パシッ...ジロジロ

触手(うん、触って診た感じ右腕側は関節やら靭帯やらを傷めてたから動かないように固定しといたけど、左手側は動かしても大丈夫そうだな)

触手「あんな状況でも荷物をちゃんと回収して来たことは褒められて然るべきだよな~、なんてね」 ...ガリガリガリ

緑小鬼1「…………?」 ジィィッ

触手「……よし! この線よりソッチ側で魚でも食いながら休んでてくれ……って伝わるかなコレで」 ガリガリ

緑小鬼1「…………」 ジロジロ

触手(う~ん……分かってるのか分かってないのか……何を考えてるのか全然わかんないんだよなぁ、コイツ)




・・・・・・



.

長男(コイツ……本当に何なんだってんだ……クソッ! サッパリ分からねぇ) ジロジロ

触手「……」 ウネウネ

長男(いや分かってる、分かっちゃいるんだ……だが……これは本当に現実だってのか?)

長男(それこそ、寝てる間に夢魔に見せられるてる悪夢だ、って方がまだあり得るってモンだ)

長男「クッソ……いっそのこと悪夢だったらどんなにかマシかってんだ」 チッ

鬼娘「……ん……? ……あ、ゴブ一さん目が覚めたんだ……良かったぁ」 ...モゾッ

長男「っ! お嬢!、面目ねぇ!! あんな、助けに来といて俺の方がお嬢に助けられっちまうだなんて……!」 ガバッ

鬼娘「そんな、謝らないで? しょうがないよ、私だってあんなのがいるなんて全然思ってなかったもん」

長男「いいや! ウーズがこの層にいるのは滅多にねぇ、だが全くねぇ訳じゃない……下層でドラゴンが暴れまわった後なら尚更だってのに俺は……っ」 ギリッ

鬼娘「それは……で、でもさ! みんなこうして助かってるんだからさ? これから気を付ければ大丈夫だって、ね?」

長男「……っ……分かりやした……このゴブ一、一命に代えてでも必ずやお嬢を……っ」

鬼娘「あぅ……本当に気にしないで欲しいんだけどなぁ……迷惑をかけてるのは、私の方なんだし」 ボソッ

長男「……ところで、つかぬ事を聞きやすが……この、腕のやつはひょっとして」

鬼娘「へ? あ、うん! オジちゃんがやったんだよ? こう、グルグル~って……途中で寝ちゃったから、どうやったかはよく覚えてないんだけど」

長男「……!そう……ですかい……いえ、それだけ分かれば充分でさぁ」

長男(どうやってんのか分からねぇが、動かそうとしなけりゃ痛みがまるで無ぇみたいだ……どうやってやがるんだか)

鬼娘「あれ? そういえばゴブ一さん、目が覚めてからオジちゃんと会った?」

長男「……あ、あぁそれなら、ついさっき会いやした……この焼き魚を投げて寄越した後は、なんか床に描いてあっちの方に行きやした」

鬼娘「描いてあっちの方に? ……ん~、それじゃあここに居てって事かなぁ」

長男「……多分でやすが……見た感じ俺もそうだと思いやした」

鬼娘「……! えへへ……そっかぁ」

長男「……なんで、そこで笑うんですかい?」

鬼娘「別に~? なんでもないよ~?」 ニヨニヨ

長男「……………」 ムスッ

鬼娘「さて……と……っふ……まだちょっと眠いし、オジちゃんが戻ってくるまでもう一休みしとこっかなぁ」 ...アフ

長男「えぇ、一度にアレだけ魔力を使ったんです……警戒はあっしがしやすんで、お嬢はしっかり休んでくだせぇ」

鬼娘「ありがと……でも、ゴブ一さんもちゃんと寝た方が良いよ? 何か来てもオジちゃんが直ぐに来てくれると思うし」

長男「……こればっかりは、性分でやして……」

鬼娘「そっか……それじゃあ、私はちょっとだけ……あ、でも一つだけ良いかな?」

長男「なんですかい? 子守唄をってんなら、ちっとばかし困りやすが」

鬼娘「ん~……それはまた今度お願いしよっかなぁ……でも、今日は違くってね……」

鬼娘「オジちゃん、ゴブ一さんを助けようって……とっても、頑張ってたから」

鬼娘「だから……そのこと……ちゃんと、お礼を……」

長男「……それは」

鬼娘「いっしょに……なかまだもん……ねぇ……」 ...スゥスゥ

長男「………………」

読んでくれてた人がいたら随分とぶりの更新で申し訳ない
今回はとりあえずここまで











・・・・・・・







.

「……あぁ、くっそぉ……最後の最後で、やらかしちまったなぁ」

ほんの数分前まで体を駆け巡っていた熱が、今はもうほとんど感じられない。

「……っ……はぁ……俺の旅はここで終わり、ってことか……呆気ないもんだ」

おまけみたいな人生、一体どこまでやれるものか。そんな風に思いたって始めた旅だった。

結果として、それなりに人の縁にも恵まれて、色んなものを見ることができたのだ。内容としては悪くなかったのは間違いない。

最後のひと時をただ一人、仄暗い穴の底で迎える事になるのは少し残念ではあるが、最悪というほどでもない。

「ただただ無為に、何の意義もなく消えていく……そんな最後じゃないだけ、充分すぎるってもんだ」

耳の奥で聞こえていた鼓動が弱まっていく、光はより遠くに、熱の溢れゆく身体は指先から冷えて固まっていくようだ。

「…………あぁ…………だけど、そう……だな……」

今までどうにかこうにか守り続けてこれた、あの子との些細な約束を、こんな形で破る事になってしまうと思うと、痛みの遠のいた胸の奥に、小さな疼きを覚える。

失われゆく熱の喪失を埋めるが如く、取り止めもなく流れる思考の隙間を縫うように。ナニカが。冷え固まりつつある身体に。ヒタリと。触れた。

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