少女「モンスター娘との日常」 (11)
私の朝は、鳥の鳴き声で始まる。
「ギャアギャア!ギャアギャア!」
少女「んうぅ、もう朝……」
少女「はいはい、今ご飯あげるから鳴きやんでね……」
「ギャアギャア!ギャッギャッ!」
少女「んー?エサあげてるのにまだ鳴いてる」
少女「……もしかして」
私は、家を飛び出る。
近所の家々から、私の家と同じように鳥の鳴き声が聞こえる。
ギャーギャー!
ギャーギャーギャー!
少女「やっぱり、他のハーピー達も騒いでる、これは……」
女「これは、大型モン娘が来る前兆ね」
少女「近所のお姉さん……」
女「私は、車を用意してくるわ、貴女は武器をお願い」
少女「は、はい!」
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私は、家に戻って武器をまとめる。
刀剣の類は大型種には役に立たない、遠距離攻撃出来る武器がいいだろう。
弓は苦手だから、銃器、理想を言えば大型火器。
可能な限りの武器を集めた段階で、町内放送が鳴り始める。
「対空警報、対空警報、現在、ドラゴン娘が超高速で町に接近中」
「自警団員はただちに迎撃準備を整えよ」
「繰り返す」
外から、車のクラクションの音がする。
私は装備品が入ったカバンを持ちあげ、外に飛び出そうとして。
少し躊躇する。
少女「んー、やっぱりコレも持って行こう」
私は、それを掴むと懐に差し込んだ。
今から、10年前。
この世界に「モンスター娘」が現れた。
彼女達は、人間ではなかった。
空想上の生物と人間を重ね合わせたかのような生物だった。
当初は、平和的なやり取りが行われた。
彼女達は数が少なかったし、何より私たち人間と意思疎通できたからだ。
異種族とのファーストコンタクトに、私達の世界は興奮した。
彼女達は何処から来たのか。
何をしに来たのか。
何より彼女達が操る奇妙な能力は何なのか。
それを知りたがる人間は多かった。
だから、交流をした。
半月も経たないうちに、彼女達の目的は知れ渡った。
そして、戦争が始まった。
彼女達の目的は、簡単だった。
繁殖だ。
繁殖の為に、この世界を訪れたのだ。
彼女達は、人間の雄を捕まえて、強制的に繁殖をおこなうのだ。
そして、その行為に、人間の雄は耐える事が出来ない。
その事実が判明した段階で、彼女達は敵になった。
世界は、彼女達を駆逐しようとした。
だが、間に合わなかった。
その段階で、彼女達の数は膨大な量に膨れ上がっていたからだ。
男達は、減って行った。
急速に減って行った。
それはモンスター娘の襲撃によるものばかりではなかった。
男の一部が(人間にも関わらず!)自ら、モンスター娘の元へ赴くケースが多々見受けられたのだ。
性欲って怖い。
そんな理由もあって。
それはもう、凄い勢いで男はいなくなっていった。
現在、この国に存在する男はほんの僅かだ。
その全ては、堅牢なシェルターが備え付けられた首都に保護されている。
つまり、端的に言うと、私の町には男が存在しない。
男が存在しない以上、モンスター娘が襲ってくる事は少ないのだが……。
何事にも、例外と言う物はあるようで。
家の前には、トラックが用意してあった。
近所のお姉さんが管理している対大型モン娘用の改造車だ。
私が乗りこむと同時に、トラックは轟音をあげて走り出す。
少女「ドラゴン娘らしいですね!今どの辺に居るんでしょう!」
女「町の中央に着地したわ、何とか説得できるといいんだけど」
トラックはスピードを緩めないままカーブを曲がり、町の中央を目差す。
その先に、炎が見えた。
建物が燃えている。
その建物の向こうに……。
少女「ああ、説得とか言ってる場合じゃないみたいですねぇ」
女「私達が急いだ甲斐があったじゃない」
そこに立っていたのは、女性だった。
美しい外見と豊満な身体を持つ、女性だった。
その女性には、尻尾が生えていた。
角が、牙が生えていた。
そして何より、巨大だった。
身長は恐らく10m程度。
尻尾も含めると20mに達するだろうか。
そんな巨大な女性……ドラゴン娘が。
口から炎を吐き、建物を破壊していた。
ドラゴン娘の咆哮が町に響く。
「■■■■■!」
少女「ああ、もう、言葉も話せないほど狂乱してますね」
少女「やっぱり、あれでしょうか、発情期なのに繁殖相手がいないので怒り狂ってるとかなんでしょうか」
女「他の自警団の姿は見えないわね……けど、待ってもいられないわ」
女「私達で、始めてしまいましょう」
少女「えぇー、このトラックだけで行けるかなぁ……」
女「運転はするから、射撃はよろしくね」
少女「はぁい……」
炎と建物の残骸を避け、トラックはドラゴン娘の死角に回り込む。
彼女は、目の前の建物を破壊するのに夢中で周囲が見えていない。
今なら容易く、打ち込む事が出来るだろう。
トラックの荷台が解放され、中に設置された武器が露出する。
私は素早く武器の操作レバーを動かし、ドラゴン娘に照準を合わせた。
少女「準備はオーケーです、踏ん張ってくださいね、お姉さん」
女「まあ、努力はするわ」
スイッチを押すと、トラックは凄まじい爆音と衝撃に襲われた。
私は、操作レバーにしがみつき、それに耐える。
大型のモンスター娘は、その存在自体が脅威だ。
彼女が少し歩くだけで、人間は死ぬ。
つまり、動きを封じなければ話にならない。
では、どうやって動きを封じるのか。
その答えがこれだ。
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