ヴィーネ「悪魔でも私らしく」 (44)


-サトートーカドー-


ヴィーネ「えーと、野菜と卵と……洗剤とティッシュもちゃんと買ったわね」

ヴィーネ「他に何か買っておいた方がいいものはあるかしら……」キョロキョロ



ヴィーネ「あ、このショートケーキ! 前から気になってたのよね」

ヴィーネ「トッピングの苺が大きくて、すごく美味しそう……」

ヴィーネ「……」

ヴィーネ「……でも、最近甘いもの食べ過ぎてるし、ちょっと控えた方がいいかしら」

ヴィーネ「うーん、迷うなー」




ポワポワポワ…




ヴィーネ「あら?」



天使ヴィーネ「ヴィネット……聞こえますかヴィネット……」


ヴィーネ「あ、私の中の天使が……」



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天使ヴィーネ「ヴィネット、そのケーキを買ってはいけません。今日は我慢して、このまま家に帰るのです」


ヴィーネ「そうよね。これ以上甘いものを食べたら太っちゃうかもしれないし」


天使ヴィーネ「分かってくれて嬉しいです」


ヴィーネ「うん……でも、こういうときって大抵、もう一人の悪魔が私のことを誘惑して……」





ヴィーネ「……」

天使ヴィーネ「……」





ヴィーネ「あれ!? 悪魔の私は!?」

天使ヴィーネ「居ませんよ」

ヴィーネ「えーーーっ!!?」



天使ヴィーネ「あなたの中に居るのは天使の私だけです」

ヴィーネ「嘘でしょ!? 私悪魔なのに!」

天使ヴィーネ「仕方ないですよ。実際居ないんですから」

ヴィーネ「なんで居ないのよ! おかしいでしょ!」

天使ヴィーネ「私に言われても……」

ヴィーネ「うぐぐ……」



天使ヴィーネ「良いではないですか。それだけ、清らかな心を持っているという証拠です」

ヴィーネ「何だろう……嬉しいけど嬉しくない」

天使ヴィーネ「そんな事ありません。これだけ綺麗な心、もっと誇るべきです」

ヴィーネ「……そうなのかしら」

天使ヴィーネ「この調子で、私と一緒にたくさん良い行いをしていきましょうね!」

ヴィーネ「う、うん……」



ヴィーネ「ってダメよ! 私は悪魔なんだから悪いことをしなくちゃ!」ブンブン

天使ヴィーネ「無理はよくありませんよ?」

ヴィーネ「うっ……で、でも、このままじゃ、私の悪魔としてのアイデンティティーがピンチなの!」

天使ヴィーネ「それでも、自分に正直に生きる事の方が大切です」

ヴィーネ「うるさい! あなたに私の何が分かるっていうのよ!」

天使ヴィーネ「いや、分かりますよ。私はあなたですから」

ヴィーネ「そうだった!」



天使ヴィーネ「素直になりましょう。そうすればきっと、幸せな日々が送れるはずです」

ヴィーネ「うぅぅ……」

天使ヴィーネ「それで、どうしますか? ケーキ、買いますか?」

ヴィーネ「……」



ヴィーネ「……今日はやめておくわ」

天使ヴィーネ「はい♪」ニコッ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-帰り道-


ヴィーネ「……」テクテク



ヴィーネ「……はあ」


ヴィーネ(結局、天使の私の言うことに従ってしまった)


ヴィーネ「……」テクテク


ヴィーネ(……やっぱり、私って悪魔に向いてないのかな)


ヴィーネ「……」テクテク


ヴィーネ「……あ、そうだ。確かそろそろ、いつも観てるドラマが始まる時間ね」

ヴィーネ「今日は録画予約してないし、急いで帰らないと」スタスタ



ヴィーネ「……あら?」





見るからに大変そうなおばあさん「ひぃ……ふぅ……」ヨタヨタ


ヴィーネ(あ、見るからに大変そうなおばあさんが目の前に!)




重そうな荷物を持っているおばあさん「はぁ……はぁ……」フラフラ


ヴィーネ(重そうな荷物を持ってる……私と一緒で、買い物の帰りなのかな)




誰かに助けて欲しそうなおばあさん「ふぅ……ふぅ……」プルプル


ヴィーネ(助けてあげたい……でも、そうしたらきっとドラマは観れなくなっちゃうわよね)


ヴィーネ「どうしよう……」




ポワポワポワ…




ヴィーネ「はっ!」



天使ヴィーネ「助けてあげましょう。ドラマより、人助けの方が大事です」


ヴィーネ「天使の私……」


天使ヴィーネ「あのおばあさんを無視して帰るなんて、そんな悪魔的行為をしてはいけません」

ヴィーネ「そうよね。私悪魔だけど」

天使ヴィーネ「心は天使ですから!」

ヴィーネ「それは喜んでいいのかしら……」

天使ヴィーネ「いいんです。ほら、早く助けに行かないと!」



今にも倒れそうなおばあさん「ひぃ……ひぃ……」グラグラ



天使ヴィーネ「あのおばあさん、今にも倒れそうですよ!」


ヴィーネ「でも、ここで助けたらまた悪魔から遠ざかって……」





「迷っているのですか? ヴィネット……」



ヴィーネ「はっ!?」




ポワポワポワ…




??ヴィーネ「それならば、私があなたを導いて差し上げましょう」


ヴィーネ「え、だ、誰?」



??ヴィーネ「私はあなたの中に住まう、もうひとりのヴィネットです」


ヴィーネ「もうひとり……?」



ヴィーネ「あっ! もしかして、悪魔の私……!?」


??ヴィーネ「悪魔? いいえ、違います。私は……」








女神ヴィーネ「女神です」

ヴィーネ「女神!!?」




女神ヴィーネ「はい。あなたの心にある慈愛の精神が、女神である私を生み出したのです」

ヴィーネ「いや、なんでここで天使の上位互換が来ちゃうのよ!! 普通逆でしょ!」

女神ヴィーネ「何を言いますか。淀みなく透き通った美しいヴィネットの心に、悪魔が付け入る隙などあろうはずがありません」

ヴィーネ「だから嬉しいけど嬉しくなーーい!!」



女神ヴィーネ「それよりヴィネット。あなたはあのおばあさんを助けるべきか、ドラマを観るべきか迷っている……そうですね?」

ヴィーネ「う、うん……そうだけど」

女神ヴィーネ「確かに、相反する2つの選択、そのどちらかを選ぶというのはとても難しいことのように思えます」

女神ヴィーネ「ですが今回の場合、ヴィネットが選ぶべき選択肢はもう既に決まっているのです」

ヴィーネ「え?」

女神ヴィーネ「簡単なことです。想像してご覧なさい」



女神ヴィーネ「あなたは『目の前のおばあさんを助ける行為』と『家でドラマを観る行為』……」

女神ヴィーネ「どちらをしたときの方が、より心が満たされるでしょうか?」

ヴィーネ「……」



ヴィーネ「……おばあさんを、助ける方」

女神ヴィーネ「そうです。それが、あなたの取るべき選択です」

ヴィーネ「で、でも! こんなの悪魔がする事じゃ……」

女神ヴィーネ「大丈夫。例え悪魔らしくないとしても、あなたの選択は何も間違っていません」

女神ヴィーネ「自分が本当にやりたい事、それに従うのはいつだって正しい事なのです」

ヴィーネ「私の……やりたい事」

女神ヴィーネ「それに、他人を助けることで満たされたい。困っている人は見過ごせない。そんな慈愛の心の持ち主が……」



女神ヴィーネ「私、月乃瀬=ヴィネット=エイプリルなのですから」ニコッ

ヴィーネ「……」








そろそろ限界なおばあさん「あぅ……はぅ……」ガタガタ


ヴィーネ「おばあさん!」


耳が遠そうなおばあさん「はぇ……?」クルッ

ヴィーネ「お荷物、重そうですね。私がお持ちしましょうか?」

申し訳なさそうなおばあさん「い、いいのかい……? こんな年寄りのために」

ヴィーネ「いいんです。困ったときはお互い様ですから」

嬉しそうなおばあさん「ほうかい、ありがとねぇ……」

ヴィーネ「いえいえ。それでは、行きましょう」












-おばあさんの家の前-


すごく嬉しそうなおばあさん「ほんと、何から何までありがとねぇ……重かったでしょう?」

ヴィーネ「いえ、これくらい平気です! おばあさんこそ、お身体は大丈夫ですか?」

元気そうなおばあさん「えぇ、お陰様でねぇ。腰の調子なんていつもより良いくらい」

ヴィーネ「そうですか。良かったです!」

お誘いをするおばあさん「それで、もし良かったら家に上がっていかないかい? 何もない家だけど、お茶菓子くらいは出せると思うから……」

ヴィーネ「ありがとうございます。でも、私はこれを家に置いてこないといけないので……お気持ちだけ頂きますね」ガサッ

残念そうなおばあさん「ほうかい。残念だねぇ……またいつでもおいでねぇ」

ヴィーネ「はい!」


家に入るおばあさん「ほんとに、ありがとねぇ……」ガラガラ

ヴィーネ「……」ヒラヒラ




ヴィーネ「……」





ヴィーネ「ヤバい! ドラマもう始まってる! 急がなきゃ!」ダッ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-翌日-


ヴィーネ「……」テクテク


ヴィーネ(なんか、最近の私どんどん悪魔からかけ離れて行ってる気がするなー……)


ヴィーネ(仕送りもずっと少ないままだし、本当にこのままでいいのかしら)


ヴィーネ「……あ。良かった、まだ収集車は来てないみたいね」


ヴィーネ「それじゃ、この辺に置いて……と」ガサッ


ヴィーネ「……あら? 掲示板に何か……」



『ボランティア募集中! ○○公園でゴミ拾いをしませんか?』



ヴィーネ「ゴミ拾いのボランティア……」



ヴィーネ「……」



ヴィーネ「いや、流石にこれはやらなくてもいいわよね。誰かが困る訳でもないし……」




ポワポワシャラポワ…




ヴィーネ「はっ!?」



天使ヴィーネ「やりましょう。レッツボランティアです」グッ


ヴィーネ「またお前か! いや私か!」



天使ヴィーネ「ゴミ拾いをして町を綺麗にする、素晴らしいではないですか」

ヴィーネ「だからってこれ以上そんなことしたら、悪魔じゃなくてただの良い人になっちゃうわよ!」

天使ヴィーネ「大丈夫です。既になってます」

ヴィーネ「身も蓋もない!」

天使ヴィーネ「だからやりましょう。ね? 公園が綺麗になったら、きっとみんな喜ぶはずです」

ヴィーネ「それは喜ぶだろうけど……でも、仕送りが更に減ったらどうするのよ! ただでさえ少ないのに!」

天使ヴィーネ「ドンマイです」グッ

ヴィーネ「適当か!」

天使ヴィーネ「たとえお金が減ったとしても、それより大切な事があると私は思うんです!」

ヴィーネ「そうかもしれないけど、生活出来なくなったら元も子もないし……」






「全く、仕方のない人ですね。ヴィネットは」


ヴィーネ「えっ?」




ポワポワポワ…




??ヴィーネ「目先の物事ばかりに囚われ、本質を見失う……なんと愚かな事でしょうか」


ヴィーネ「え、また増えるの!? ここで!?」



??ヴィーネ「仕送りは減っても構わない。ヴィネット、あなたはもっと欲を捨てるべきなのです」


ヴィーネ「だ、誰? 女神……ではなさそうだけど」


??ヴィーネ「ええ。女神ではありませんね」


ヴィーネ「それじゃあ、今度こそ悪魔の私……!?」


??ヴィーネ「いいえ、悪魔でもありません。私は……」







菩薩ヴィーネ「菩薩です」

ヴィーネ「BOSATSU!!?!?」





菩薩ヴィーネ「はい。あなたの極楽浄土のような御心が、菩薩である私を創り出したのです」

ヴィーネ「ぼさつ!? え、菩薩!? ついに宗教まで変わってるんだけど!!」

菩薩ヴィーネ「些細な事です」

ヴィーネ「ビッグイベントよ! 私にとっては!」

菩薩ヴィーネ「ヴィネットの魂は宗教の壁すら越えるほど清廉であったと、そういう事ですね」

ヴィーネ「だから複雑なんだってばその評価!」



菩薩ヴィーネ「それよりもヴィネット。あなたは仕送りの減額を気にして、ゴミ拾いのボランティアに参加出来ないと言うのですね?」

ヴィーネ「う、うん。それだけじゃないけど……」

菩薩ヴィーネ「そして、仕送りが減れば生活が出来なくなる……と」

ヴィーネ「そうよ。そうなったら私は魔界に強制送還されて……」

菩薩ヴィーネ「ですが、それは間違っています」

ヴィーネ「え?」



菩薩ヴィーネ「ヴィネット、あなたは知っているはずです。魔界からの仕送りは、『最低限生活出来る金額』を下回る事はないと」

ヴィーネ「そ、それは……」

菩薩ヴィーネ「確かに仕送りが減ることで生活は苦しくなるかもしれませんが、生活出来なくなるという事はありません」

菩薩ヴィーネ「ただ、自由に使えるお金が減るというだけで」

ヴィーネ「でもそうしたらオシャレをしたり、みんなと遊びに行ったり、そういう事が出来なくなっちゃうじゃない!」

菩薩ヴィーネ「ですから、その欲を捨てるべきだと言っているのです」ビシッ

ヴィーネ「えっ?」



菩薩ヴィーネ「いいですか? 欲望に囚われ思うように動けないというのは、とても悲しい事なのです」

ヴィーネ「いや何の話よ」

菩薩ヴィーネ「あなたは本心ではボランティアに参加したいと思っている。しかし、『仕送りの金額』という欲望に邪魔され、それが出来ずにいる……違いますか?」

ヴィーネ「私はやりたいなんて一言も……」

菩薩ヴィーネ「分かりますよ。私ですから」

ヴィーネ「……」

菩薩ヴィーネ「……ふむ、ではこうしましょう。昨日の女神を真似するようですが……」



菩薩ヴィーネ「もし仕送りの金額を気にしなくても良いならば、ヴィネットはこのボランティアに参加しますか?」

ヴィーネ「……」




ヴィーネ「……する、かも」

菩薩ヴィーネ「でしたら、あなたを縛り付けているのはその欲望ということになりますね」

ヴィーネ「……」

菩薩ヴィーネ「勘違いしないでください。私は何も、あなたに『極貧になって苦しめ』と言っている訳ではありません」

菩薩ヴィーネ「むしろ逆です。欲望に縛られない、自由な思考を持って欲しいのです」

ヴィーネ「……自由な思考?」

菩薩ヴィーネ「はい。あなたは先ほど『お金が無いとオシャレしたら友達と遊んだり出来ない』と言いましたが、本当にそうでしょうか?

ヴィーネ「え?」



菩薩ヴィーネ「オシャレをするとは、何も高い服や装飾品を買うだけではありません。古着をリサイクルしたり、自分で小物を作ったり、そういう『お金のかからないオシャレ』もあるはずです」

菩薩ヴィーネ「遊びも同じです。お金のかからない遊びなんて、いくらでも考えようがあるでしょう」

ヴィーネ「……」

菩薩ヴィーネ「それに、お金が無いからと友達の誘いを断る事になっても、無駄遣いした訳ではなく、ボランティアという善い行いの結果であるならば、あなたが責め立てられる事はないはずです」

ヴィーネ「……それでも、寂しいじゃない」

菩薩ヴィーネ「……」



菩薩ヴィーネ「まあ確かに、一度に全ての欲を捨て去るというのは難しいでしょう」

菩薩ヴィーネ「しかし、今回のボランティアに参加しただけでいきなり仕送りが最低額になる事はないと思いますし……」

菩薩ヴィーネ「全部は無理でも、欲の一部分だけ捨てる、という事なら出来るのではないですか?」

ヴィーネ「……」



菩薩ヴィーネ「それで大丈夫そうなら、少しずつボランティア等に参加する機会を増やせばいいですし、ダメならそのままでいい」

菩薩ヴィーネ「それにあなたがゴミ拾いをしたお陰で地域の方々が快く公園を利用できる……」

菩薩ヴィーネ「そう考えれば、たとえ仕送りの金額が減ったとしても、それ以上の物が得られると、そうは思いませんか?」

ヴィーネ「……」






ヴィーネ「……分かったわよ」





ヴィーネ「やればいいんでしょ。やってやるわよ! ゴミ拾い!!」


菩薩「!」




ヴィーネ「こうなったらヤケよ! 紙くずひとつ無いくらいピッカピカのキラキラにしてやるんだから! 見てなさい!」


菩薩ヴィーネ「おお! その意気です!」




ヴィーネ「うおーーー!! 仕送りなんて知ったことかーー!」ドドドドド


菩薩ヴィーネ「頑張ってください、私!」

天使ヴィーネ「ファイトです! 私!」




ヴィーネ「おりゃーーーーーー!!!!」ドドドドド





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-ガヴリール宅-








ヴィーネ「どうやったら悪魔らしくなれるか教えてください」ドゲザ


ガヴ「いや、何の話?」














ガヴ「……なるほどね。どうしても、悪い事が出来ないと」

ヴィーネ「そうなの。それで、どうやったら悪魔らしくなれるのか分からなくなっちゃって……」グスッ

ガヴ「うん。まあ、話は分かった。分かったんだけどさ……」



ガヴ「なんでそれを私に聞きに来たの?」

ヴィーネ「え?」

ガヴ「いやだってさ、私天使だよ? そういうのはサターニャに聞けばよくない?」

ヴィーネ「……だって、サターニャに聞いても上手くいかない予感しかしないし」

ガヴ「あー……うん。確かに」

ヴィーネ「その点ガヴは天使なのにぐうたらだし、不真面目だし、おおよそ天使らしくないというか」


ヴィーネ「どちらかと言えば悪魔寄りな駄目天使だから、何か良い方法を教えてくれるんじゃないかなって、そう思ったの」

ガヴ「ねえヴィーネ。もしかして私に喧嘩売ってる?」


ヴィーネ「お願い! もう頼れるのはガヴしかいないの!」ガシッ

ガヴ「えー……めんどくさ」

ヴィーネ「そんなこと言わないでよー!」ビエーン

ガヴ「はあ……」



ガヴ「……つーかさ、なんで悪魔らしくならなきゃいけないの?」

ヴィーネ「え?」



ガヴ「別にヴィーネはそのままで良くない? って私は思うんだけど」

ヴィーネ「な、なんで?」

ガヴ「んー……まあ、何となく」

ヴィーネ「そんな適当な……!」

ガヴ「ああ、適当かもね」

ヴィーネ「ガヴ!」

ガヴ「だってさ、ヴィーネはもう自分がどうすればいいかなんて分かってるんでしょ? なら私の意見なんてどうでもいいじゃん」

ヴィーネ「……え?」



ガヴ「ヴィーネの言ってる天使とか菩薩?が何の事かは分からないけどさ。悪魔らしいとか関係なく自分のやりたいことやりたいって、そういう事なんでしょ?」

ヴィーネ「えっと、その……」

ガヴ「ならそうすれば良いじゃん。ヴィーネの好きにやりなよ」

ヴィーネ「でも、それでも私は悪魔だから……」

ガヴ「少なくとも」

ガヴ「私は天使らしくはないけど私らしく生きてるつもりだし、それで後悔したことはないよ」

ヴィーネ「……」



ガヴ「確かに仕送りが減ったり天使の力が上手く使えなかったり、そういう事はあるけど、でもそれだけだ」

ガヴ「無理して天使らしく振る舞うくらいなら、私は今の生活の方がよっぽど良いと思うよ」

ガヴ「だからヴィーネもさ、悪魔らしいよりヴィーネらしいで、それでいいんじゃない?」

ヴィーネ「ガヴ……」



ガヴ「……それに、仕送りが減って大変だって言うなら、少しくらいなら助けてやるよ」

ヴィーネ「え?」

ガヴ「ヴィーネにはいつも世話になってるからな」

ヴィーネ「でもガヴだって少ないんじゃ……」

ガヴ「私はバイトやってるし、『悪魔を助けた』ってことで、それくらいは帳消しになるだろ。たぶん」

ヴィーネ「でも、悪魔を助けたりしたりしたら逆に減っちゃうかもしれないじゃない」

ガヴ「……」

ヴィーネ「そうしたら、ガヴに迷惑がかかって……」

ガヴ「だああああああ!! もううっせーな!!」

ヴィーネ「!?」



ガヴ「私は今のままのヴィーネがいいの! だから変に悪魔ぶろうとしたり、そういうのしなくていいから!」

ヴィーネ「ガ、ガヴ……?」

ガヴ「ヴィーネは今まで通り世話焼きで、おせっかいで、困ってる人が居たら助けるような優しい悪魔で、それでいいんだよ!!」

ヴィーネ「え、あ……」

ガヴ「それだけ! お終い! 帰れ!!」クルッ

ヴィーネ「……」

ガヴ「……」カァァ

ヴィーネ「……」





ヴィーネ「……」





ヴィーネ「……ガヴ」

ガヴ「……」



ヴィーネ「ガヴ」

ガヴ「……なに」






ヴィーネ「耳真っ赤よ」

ガヴ「そっち!?」




ヴィーネ「うん。すごく赤い」

ガヴ「いや、今『ありがとう』とかそういう流れだったよね!? なんで耳なの!?」

ヴィーネ「ごめん、あんまりに赤かったからつい気になって」

ガヴ「茶化すなよ!」

ヴィーネ「ごめんごめん。ありがとうガヴ」

ガヴ「ったく……最初からそう言ってよ」

ヴィーネ「ふふっ」




ヴィーネ「あのね、ガヴ」

ガヴ「……なに」

ヴィーネ「ガヴの言ったとおり、私は最初から、自分がどうしたいのか分かってたんだと思う」

ガヴ「……」

ヴィーネ「でも、自分1人じゃ本当にそれでいいのか自信が持てなくて、間違ってるかもしれないって不安で」

ヴィーネ「だから誰かに、『それでいいよ』って背中を押して欲しかったの」

ガヴ「……」

ヴィーネ「だから、えっと……」



ヴィーネ「ありがとう、ガヴ」ニコッ

ガヴ「……2回も言わなくていい」

ヴィーネ「うん。ありがとう」

ガヴ「……」











ヴィーネ「さてと! それじゃあこの部屋の掃除を始めるわよ!」

ガヴ「は?」



ヴィーネ「まずは邪魔な物を一旦どかして、と」ガサガサ

ガヴ「ちょっ! 待った待った待った!!」ガタッ

ヴィーネ「何よ」

ガヴ「いや、なんで急に掃除なんか始めるんだよ!? おかしいだろ!!」

ヴィーネ「だってこの部屋汚いじゃない」

ガヴ「それはそうだけどさ! なんでよりによって今……」

ヴィーネ「ガヴが言ってくれたんでしょ」

ガヴ「へ?」



ヴィーネ「おせっかいで世話焼きな私でいいって」

ガヴ「なっ……!」



ヴィーネ「まったく、こんな汚い部屋じゃ病気になっちゃうわよ。ちゃんとこまめに片付けないと」ガサガサ

ガヴ「え、ちょ、優しい悪魔は? ねぇ、優しい悪魔はどこへ行ったの!?」

ヴィーネ「残念。今日はお休みです」

ガヴ「カムバーック!!」

ヴィーネ「うるさい。ほら、ガヴもそっち片付けて」

ガヴ「……え。ていうか、私もやるの?」

ヴィーネ「当たり前でしょ。ガヴの部屋なんだから」

ガヴ「……」




ガヴ「えーと、私は掃除が終わるまで散歩してくるから、終わったら連絡して……」ソローリ




ザシュッ!




ガヴ「いっ!?」ビクッ




ヴィーネ「逃がさないわよ……」ゴゴゴゴゴ…

ガヴ「ちょ、タンマ! タンマ!」

ヴィーネ「ガヴも一緒にやる。いいわね?」ギラン

ガヴ「は、はい……」

ヴィーネ「あ。あと、この掃除が終わったら明日までの宿題もやるわよ」

ガヴ「はあ!?」

ヴィーネ「どうせまだやってないんでしょ?」

ガヴ「ちょ、嘘だろ!? なんで宿題まで……」

ヴィーネ「嘘じゃない。ほら、その辺のゴミ集めて」

ガヴ「……」


ヴィーネ「まったく、カップ麺のゴミとかちゃんと捨てなさいよ……」

ガヴ「……」

ヴィーネ「……ガヴ? 早くそっちを片付けて……」





ガヴ「……ーネの」プルプル

ヴィーネ「え?」





ガヴ「ヴィーネの悪魔ぁぁああああ!!!」


ヴィーネ「!?」



-おしまい-

調べたら、浜松にはもうヨーカドー無いらしいですね。


HTML化依頼出してきます。

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