高垣楓「幸せのばーすでい♪」 (29)




「「乾杯っ♪」」




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藤原肇「楓さん、誕生日おめでとうございます」

楓「ありがとう、肇ちゃん。たまには二人きりのお祝いというのも良いわね」

肇「いつもの大人組のみなさんはお仕事ですしね。でも……」

楓「でも?」


肇「せっかくの誕生日なのに、お祝いするのが私一人で良かったのでしょうか?未成年ですからお酒だって一緒に飲めませんし……」

楓「そのことなら気にしないで。美優さんや瑞樹さんたちには昨日のうちに今日の分までいっぱいお祝いして頂けましたから。むしろ肇ちゃんと、ってことに意味が……」

肇「私が……なんですか?」

楓「いえ、肇ちゃんなら一番甘やかしてくれそうかな、って思って」


肇「……プロデューサーさんに言いつけちゃいますよ?一回りも年下の人間に甘えようとする人がいるって」

楓「冗談なのに……肇ちゃんはいけずです」

肇「そんなお姫様みたいなこと言い方してもダメです……あっ、楓さん、グラス空いてますよ、お注ぎしましょうか?」

楓「あら、ありがとう。ふふっ、やっぱり肇ちゃんは優しいわね♪」


肇「……っは!これは、その……」

楓「いつでもこういう気遣いが出来るところも肇ちゃんの良いところなんだから、気にしすぎちゃダメよ?」

肇「うぅ……なんでいつの間にか私が諭されているんでしょうか……」


楓「それにしても、いつもは美優さんや志乃さんと飲んでるからこうして若い子にお酌をしてもらえるのって新鮮ね♪」

肇「若い子って……楓さんだってお若いですよ」

楓「あら、もしかして口説かれてる?肇ちゃんったら大胆……」

肇「もうっ、どうしてそうなるんですか……もしかして、もう酔ってます?」


楓「ふふっ、私はまだまだ大丈夫。大人だけで集まってる時はこのくらいのペースじゃ済まない事も多いですし」

肇「色々とすごそうですね……」

肇(ということは素面でここまで振り回されてたのでしょうか……)


楓「でもすごく楽しいのは間違いないのよ?肇ちゃんが二十歳になって参加できるようになるのが今から楽しみなくらい♪」

肇「そ、その時はお手柔らかにお願いしますね……?」

楓「うふふ、どうかしら♪」

肇「もうっ、楓さん!」



ポーン…… ポーン……


肇「あっ、もうこんな時間なんですね。そろそろ帰らないと……」

楓「帰っちゃうんですか?」

肇「帰っちゃうも何も、寮の門限がありますから……寮母さんに怒られてしまいます」

楓「寮母さんには私からお願いしてあるから大丈夫よ」

肇「一応電話で確認してみますね……」

楓「むぅ……本当なのに……」


肇「……本当でした」

肇(寮母さん、ずいぶん明るい調子だったけどなんだったんだろう……?)

楓「むぅ……」

肇「楓さん?」


楓「肇ちゃんが私のことを信用してくれなかったから、とてもショックです……」

肇「そ、それはその……ごめんなさい」

楓「お酌をしてくれたら許してあげます」

肇「はいどうぞ……って、あれ?」

楓「んー♪肇ちゃんが注いでくれるお酒はまた格別です♪肇ちゃんはこういうしっかりしてるところがあるから私も安心して酔えます♪」

肇「楓さんっ!もう知りませんっ!」


楓「あらあら……ごめんね、肇ちゃん」

肇「知りませんったら知りませんっ」

楓「では……どうしたら許してくれますか?」

肇「……私にジュースを注いでくれたら許してあげます」

楓「それでは肇ちゃん、どうか私のお酌でお許しを……」


肇「んー、美味しい♪ふふっ、お返しです♪」

楓「これは一本取られちゃったわね」

肇「これに懲りたら冗談も程々にしてくださいね?」

楓「さて、どうしようかしら……」

肇「楓さんっ!」

楓「ふふっ、冗談です♪」

肇「言ってるそばからじゃないですか……」


楓「そうそう、お酌といえば……肇ちゃんずいぶんお酌に慣れてるみたいだけど、どこかで練習でもしてたのかしら?」

肇「練習というほどのものではないですけど、実家ではよくおじいちゃんにお酌をしてあげてました」

楓「なるほど、どうりで……」

肇「おじいちゃんは焼酎派で、お酒を美味しそうに飲むおじいちゃんの姿も好きでした」

楓「焼酎も美味しいですからね、私もしょっちゅう飲んでます」

肇「もう、話の腰を折らないでください……」

楓「あら、ごめんね」


肇「肇が注ぐ酒が一番美味い、だなんて言って私も嬉しくなってお猪口が空になる度にお酌をしてあげてました」

楓(お猪口でちょこっと……いや、我慢我慢……)

肇「でも、お酒をいっぱい飲みたいって口実もあったみたいで、肇をダシにするんじゃありません、ってお母さんやおばあちゃんによく怒られてました。ふふっ……」


楓「肇ちゃんがお酌してくれるといつもより美味しく感じるものね。わかるわ、その気持ち」

楓(それこそ一杯じゃ済まないくらい、ね)

肇「あまり自覚はないですけど、そういうものでしょうか?」

楓「肇ちゃんは美味しそうにお酒を飲むおじいさんの姿が好きって言ってたわよね?その時、おじいさんは肇ちゃんのことも見てたと思うの」

肇「私をですか?」


楓「ええ。おじいさんを見てる肇ちゃん、きっと良い表情をしていたのでしょうね。そんな肇ちゃんを見ながら飲むお酒は美味しかったに違いないわ」

肇「そういえばお酒を飲んでる時のおじいちゃん……いつも優しい顔をしてました」

楓「でしょう?それに、お酒には人を素直にしてくれる力もあるんです。お酒を飲んでる時の表情がいつも優しいということは、それだけ肇ちゃんのことが大好きなんだと思います。肇ちゃんと同じように……」

肇「おじいちゃん……」


肇「そういえば、こんな約束もしてました。私が大人になったら一緒にお酒を飲もうって」

楓「あら、それは素敵な約束ね」

肇「もしその時が来たら……お酒は楓さんに選んでもらいましょうか?」

楓「ふふっ、とびっきり美味しいお酒を選んであげるわね♪」

肇「はいっ!」

楓「ええ。おじいさんを見てる肇ちゃん、きっと良い表情をしていたのでしょうね。そんな肇ちゃんを見ながら飲むお酒は美味しかったに違いないわ」

肇「そういえばお酒を飲んでる時のおじいちゃん……いつも優しい顔をしてました」

楓「でしょう?それに、お酒には人を素直にしてくれる力もあるんです。お酒を飲んでる時の表情がいつも優しいということは、それだけ肇ちゃんのことが大好きなんだと思います。肇ちゃんと同じように……」

肇「おじいちゃん……」

>>18はミスです、すみません


肇「そういえば、こんな約束もしてました。私が大人になったら一緒にお酒を飲もうって」

楓「あら、それは素敵な約束ね」

肇「もしその時が来たら……お酒は楓さんに選んでもらいましょうか?」

楓「ふふっ、とびっきり美味しいお酒を選んであげるわね♪」

肇「はいっ!」



ポーン…… ポーン……


肇「あっ、もう日付も変わって……」

楓「肇ちゃん肇ちゃん」

肇「なんですか?」



楓「肇ちゃん、誕生日おめでとう」

肇「えっ?……あっ!」


楓「連続バースデーで幸せな時間を延ばーすでい……なんて、本当は肇ちゃんに一番最初におめでとうを言ってあげたかったんです。せっかく誕生日がお隣だから……ね?」

肇「楓さん……」



ピロリン♪ ピロリン♪


肇「あっ、事務所のみんなからメール……誕生日おめでとうって」

楓「ふふっ……人気者ね、肇ちゃん」

肇「はい……こんなにたくさんのお祝いを頂いて……とても幸せです」


楓「お祝いといえばもちろん……はい、プレゼント♪」

肇「ありがとうございます。わぁ……素敵なグラス……」

楓「うふふ、肇ちゃんのお眼鏡にかなって嬉しいわ。それでは、早速そのグラスに一仕事してもらいましょうか」

肇「えっ?あっ……はいっ♪」

楓「えー、こほん。改めて肇ちゃん、誕生日おめでとう」




「「乾杯っ♪」」


以上です

楓さんも肇ちゃんも誕生日おめでとう!
この二人が会話をする日が今から楽しみです

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