ウルトラマンX 【輝く銀河の彼方から】 (66)


※ウルトラマンXのSSです

※最終回後という設定です

※オリジナルのサイバーカードとフォームが登場します


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497334787


―――オペレーションベースX

チアキ「エリアK-3より通信です! 気温が45度を超え、熱中症の患者が続出しているようです」

タケル「エリアS-1から、黄泉比良坂の石がひとりでに転がっているとの通信が入っています!」

チアキ「隊長、エリアH-1より通信。遂に気温が氷点下になったようです。吹雪も観測されているとか」

神木「……どうなっているんだ」

 八月のある日のこと。Xioの基地オペレーションベースXの司令室には朝からひっきりなしに通信が入ってきていた。
 そしてそんな通信音の嵐を掻き消すような悲鳴が部屋に響いた。

マモル「ぎゃああああああーーー!!」

グルマン「ぐわあああああああーーー!!」

ルイ「きゃあああああーーー!!」

 隊員たちが一斉に司令室の入り口に顔を向ける。息を切らしながらラボチームの三人が駆け込んできた。


神木「どうした!」

マモル「た、たたた、た、た、隊長……! た、たた、たたたたた、た、た、大変です……!!」

ハヤト「何があったんだ。ちょっと落ち着け」

グルマン「世界の終わりかと思った……恐らく全宇宙でも最も悍ましいだろう存在を我々の目は捉えてしまった……」

神木「どういうことなんだ。ちゃんとわかるように話してくれ」

ルイ「ラボにね……こんなサイズの……」

 そう言ってルイは、身体の前に1メートルくらいの幅を示した。

ルイ「こんなサイズの……ゴキちゃんが……」

ワタル「何ぃ?! そんなアホな――」

ルイ「本当だよ! 今、ダイくんが――」

 言い終える前に、汗まみれの大地が部屋に入ってきた。


ワタル「大地……とんでもないサイズのGが出たって……」

大地「本当です。捕獲しました」

アスナ「捕獲!?」

大地「もしかしたらうちでやっている研究が何らかの影響をもたらした可能性があります。調べてあげないと」

 部屋の中が静まり返った。大地は不思議そうに小首を傾げた。

大地「持ってきますか? 虫かごに入れておきましたけど……」

橘「い、いや! そ、それはいいわ。ところで――」

 副隊長の橘は激しく首を振って、乱れた前髪を決まり悪げに整えながらモニターを指した。

大地「これは……どうしたんですか? 世界規模で異常が起きているんですか」

神木「そうだ。今朝からずっと通信が入ってきている。日本だけでなく世界中でそうなっているらしい」


橘「おかげでXioは今てんてこまいよ」

ルイ「もしかしたら超巨大ゴキちゃんもそれの一種……?」

ハヤト「博士。何か分かりませんか?」

グルマン「うーむ……まだ材料が足りなさすぎるな。今の時点では何とも言えん」

アスナ「エックスは? 何か心当たりはない?」

エックス『いや。私も博士と同意見だ』

橘「幸いなことに、出動するほどの大事は報告されてないけれど」

 そう言った途端、またも通信音が鳴り響いた。それを受けたチアキの顔色がさっと変わった。

チアキ「隊長! エリアT-S3に怪獣が出現!」

神木「何……! 監視衛星からの映像を!」

チアキ「了解!」


大地「こいつは……」

 モニターに表示されていたのは全身を黒に包んだ怪獣だった。
 頭に二本の角を生やし、頭部や胸部に黄色の発光体が存在している。その正体は一目でわかった。タイプG、“宇宙恐竜”ゼットンだ。

神木「警戒レベルフェイズ3! 都市防衛指令発令!」

橘「周辺の住人に避難指示を!」

神木「厄介な相手だが、こちらにはデータがある。各自、十分に注意を払い交戦せよ! Xio、出動!」

全員「了解!」


―――エリアT-S3

 エリアT-S3――東京都品川区。建物が密集する市街地をゼットンは闊歩していた。

ゼットン「ゼットーーン……」

 顔の発光体から放たれた火球がビルや家屋を破壊し炎上させていく。
 地上は阿鼻叫喚、人々が一目散に逃げている。ゼットンが彼らに顔を向けた時だった。


ハヤト「ファントン光子砲、発射!」

 飛来したスカイマスケッティの光弾がゼットンに命中した。
 すれ違って飛び去る機体を向くゼットンだが、また別方向から攻撃が加えられた。

ワタル「食らえ! レッドキング徹甲弾!」

 ワタルが乗るランドマスケッティがゼットンの隙を伺っていたのだ。
 すかさず連射したが、ゼットンの周囲にバリアーが張られ防がれた。

ワタル「チッ……」


大地「エックス、ユナイトだ!」

エックス『よし、いくぞっ!』

 一方、大地はアスナに連れられてジオアラミスで現場に到着していた。
 車から降り、エクスデバイザーをエックスモードに変形させる。出現したスパークドールズをリードし、デバイスを掲げ上げた。

『ウルトラマンエックスと ユナイトします』

大地「――エックスーーーーーっ!!!」

エックス「イーーッ、サァーーッ!!!」

『エックス ユナイテッド!』


『サイバーゼットンアーマー アクティブ!』

大地『ゼットントルネード!!』

 迸る光の中から姿を現したエックスはゼットンアーマーを身に纏い、バリアーを展開しながらゼットンに突進した。
 ゼットンシャッター同士がぶつかり合う。

エックス「イィッ、サァァッ!!」

 しかし、勢いをつけて突進したエックスの方が勝った。ゼットンのバリアーが破られ、突き飛ばされる。

ワタル「ハヤト、一斉攻撃だ!」

ハヤト「おう!」

 この好機を逃さず、地上と空からゼットンに攻撃の雨を降らす。

ゼットン「ピポポポポポ……」

 息をつかせぬ攻撃でゼットンはバリアーを張ることもテレポートで逃れることもできない。
 エックスが金色に光るカラータイマーに腕を翳す。身体を大きく捻ると足元に青白い電光が帯びる。

エックス「「ザナディウム――――」」

 しかし、エックスが光線を放とうとしたその時だった。


―――オペレーションベースX

タケル「これは……!」

神木「どうした」

タケル「エリアT-S3上空に強力なエネルギー反応をキャッチ!」

神木「!」

チアキ「この反応は……データベースに記録があります!」

橘「何なの?!」

チアキ「ダ……ダークサンダーエナジー。グリーザが放つエネルギーです……」

 その言葉に司令室は凍り付いた。


―――エリアT-S3

エックス『何……!?』

 光線を放とうとしていたエックスが動きを止める。
 上空に突然、暗雲が現れたからだ。その黒雲は渦を巻き、中心から稲妻のようなエネルギーを落とす。

エックス「――グッ!」

 衝撃波が飛ぶ。稲妻はエックスの目の前にいるゼットンを呑み込んだ。
 ゼットンが唸り声を上げながらその姿を変えていく。体が巨大化し、発光体の数が増える。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

エックス「……!」


ワタル「マジかよ……」

アスナ「どうして今になってダークサンダーエナジーが……!?」

ハヤト「まさか……!」


EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

エックス「! ハァッ、セァァッ!」

 こちらに歩んでくるEXゼットンを見てエックスは我に返った。
 走って勢いをつけ、アーマーのガントレットで殴りつける。しかし――

エックス「セアッ……!?」

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 EXゼットンは微動だにしなかった。続けて何度か打撃を加えるがびくともしない。
 逆にEXゼットンがエックスの横っ面をはたいた。重い衝撃が頭を揺らす。

エックス「デアッ……!」


EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 エックスが怯んでいるところに火球を放つ。
 至近距離から放たれたそれを躱すことができず、爆発でエックスが吹き飛ばされる。

エックス「グッ……デアァッ……!」


神木『ワタル、ハヤト、アスナ! エックスを援護しろ!』

ハヤト「了解! キングジョーデストレイ砲、発射!」

 空中のスカイマスケッティが背後からサイバーキングジョーの力を込めたビーム砲を放つ。
 後頭部に直撃し、火花が散る。だが――EXゼットンは全く動じない。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 振り向いたEXゼットンが思わぬ行動に出る。背中に羽が展開され、宙に躍り出たのだ。

ハヤト「なっ……! ――くっ!」

 急いでEXゼットンから逃れようとするが、標的はしっかりと定められていた。
 空中で放たれる火球の数々。間一髪で躱し続けるスカイマスケッティ。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

ハヤト「!」

 だが、EXゼットンの飛行速度が上回った。追いつかれ、振り下ろされた腕に機体が撥ね飛ばされた。

ハヤト「うわああああああああ!!!」


ワタル「ハヤト!」

ハヤト「すまん、戦線離脱する……っ!」

 墜落寸前、スカイマスケッティからジオアトスが分離するのが見えて、ワタルはほっと息をついた。
 しかし次の瞬間には表情は険しくなっていた。サイバーゼットンのカードをデバイスにセットする。

ワタル「サイバーカード、リミッター解除!」

『リミッター解除します 危険です、危険です、危険です』

ワタル「食らえッ、ゼットンレールキャノン!! トラアアアアアイ!!」

 空中のEXゼットンに向けてレールキャノンを放つ。しかし命中の寸前、その姿が突如消失した。

ワタル「! ――しまった!」

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 EXゼットンはテレポートしていた。地上に降り、ランドマスケッティに顔を向ける。

アスナ「ワタル、早く離脱して!」

ワタル「くそっ……!」

 だがリミッター解除の負荷により機体が応えない。コックピットには迫りくるEXゼットンの姿が。

アスナ「まずい……! ゴモラ、力を貸して!」


『リアライズ!』

サイバーゴモラ「ギャアオオオオオン!!!」

 リアライズしたサイバーゴモラがEXゼットンの前に立ちふさがる。
 猛然と突進し、前転して尻尾を叩きつける。しかし少々怯むだけでほとんどダメージになっている様子はなかった。

EXゼットン「ピポポポポポポポポ」

 放たれた火球が命中し、サイバーゴモラが後ずさりさせられる。
 両腕を顔の前に構え、連発された火球を防ぐ。しかし――EXゼットンはまたしても姿を消した。

アスナ「……!」

 テレポートでサイバーゴモラの背後に回り込む。ゴモラは振り向こうとするが、

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 EXゼットンが火球を放ったのが先だった。
 一撃受けるともう次への対処ができない。なされるがまま続く三発を受け、サイバーゴモラは消滅した。


エックス「グッ……!!」

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

エックス『大地。さっきのエネルギーは……何故かはわからないが、ダークサンダーエナジーと見て間違いない』

大地『そうみたいだな。だとしたら――』

『ウルトラマンエックス パワーアップ』

エックス・大地『『いくぞ! エクシード――――エーーーックス!!』

 エクスラッガーで描いたXの光がエックスに重なり、新たな姿に生まれ変わらせる。
 虹色の巨人、エクシードエックスに。

エックス『『エクシード――――エクスラッシュ!!』』

 エクスラッガーを手にEXゼットンに突撃する。
 この技でダークサンダーエナジーを祓えば普通のゼットンに戻るはずだ。だが――

EXゼットン「ゼェェットォォォォン」

大地『ぐぅっ……!? ぐああああっ!!』

 EXゼットンが張ったゼットンシャッターを破ることができず、エックスは撥ね返された。
 地面に倒されるエックス。そのカラータイマーが赤く点滅し始めた。


エックス『なんて奴だ……!』

EXゼットン「ピポポポポポポポポ」

 EXゼットンがシャッターを解除する。その顔の発光体の前にエネルギーが溜められる。
 先程までとは比べ物にならないほど強力な火球が来る。そう予測できるが、対抗手段がない。

エックス「……!!」

 エックスだけではない。地上ではアスナもワタルもハヤトも、息を呑んでそれを見詰めている。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

 頭部を覆い尽くさんほどに巨大化した火球をEXゼットンが放つ――
 ――そう思われた、その瞬間。

「サァァッ!!」

 虚空を裂く金色の光線。それがEXゼットンの頭部に命中する。
 火球が爆発し、EXゼットンが炎に呑みこまれる。その呻き声を掻き消す轟音が鳴り響く。

大地『え……?』

アスナ「なに……?」

 全員の視線がその方向に向けられる。
 腕を十字に組む銀色の巨人――それが宙に浮かんでいた。


―――オペレーションベースX

チアキ「新たなタイプA……ウルトラマン……!?」

グルマン「あれは……!」

橘「知っているんですか、博士」

グルマン「うむ。あれは勇士司令部のウルトラマン――ウルトラマンネオス!」

神木「ウルトラマン……ネオス……」

グルマン「彼が来たということは……。成程、分かったぞ。今朝から発生している異常現象の原因が!」


―――エリアT-S3

大地『あなたは……』

ネオス「…………」

 ネオスは頷き、エックスに手を差し伸べた。彼に腕を引かれて立ち上がる。
 再び爆炎の方を振り向くネオス。すると炎が掻き消され、その中からEXゼットンが姿を現した。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン…………」

ネオス「テヤァッ!」

エックス「ハア――セエアッ!」

 二人揃ってファイティングポーズをとる。EXゼットンが火球を放ったのと同時に駆け出した。


エックス「セエヤッ!」

 エックスは前転して火球を躱し、

ネオス「テヤアッ!」

 ネオスは勢いよくジャンプしてそれを躱した。
 そのまま空中から飛び蹴りを食らわせ、エックスが続いてアッパーを叩き込む。

EXゼットン「ゼェェットォォォォン」

 反撃とばかりに腕を叩きつけようとするが、ネオスは機敏な動きでそれを止めた。

エックス『――Xクロスチョップ!』

 その隙にエックスが技を繰り出す。Xを描くように二度チョップを振り下ろし、

エックス・ネオス「「セヤァッ!」」

 両者共にEXゼットンの胸を蹴り飛ばした。頑丈なEXゼットンでも流石に応えたのか、よろよろと後ずさりをする。
 その隙にネオスはエックスにアイコンタクトを送っていた。その意図を理解し、エックスもまた頷く。


エックス『エクシードエクスラッシュ!』

 エクスラッガーの切っ先を地面に突き立てると、三者を包む光のトンネルが形成された。
 これでテレポートされても逃すことはない。

ネオス「セヤアッ!」

 ネオスが駆け出す。絶えず両手から光弾を放ち続ける。EXゼットンはその場にとどまり、腕を構えてそれを吸収する。

ネオス「――テヤアァ!」

 EXゼットンの目の前まで来たところで――ネオスは地面を蹴り、飛び上がった。
 その後ろには剣を構え飛行するエックスの姿が。ネオスの突進に隠れて攻撃の準備をしていたのだ。

エックス「ハアアッ!! セアアッ!!」

 今度は防がれることなく、エクスラッガーの刃がEXゼットンを切り裂いた。
 復路でもう一撃加え、元の場所に戻ると、ネオスがその横に降り立った。

ゼットン「ゼットーン……」

 ダークサンダーエナジーが払われ、EXゼットンが元のゼットンに戻った。
 通常の姿に戻ったエックスが体を捻る。ネオスは両手を握りしめ、そのまま腕を十字に組む。


エックス「「――ザナディウム光線!!!」」

ネオス「セヤアアッ!!」

 エックスとネオス、両者共に腕をクロスさせる。
 ザナディウム光線とマグニウム光線、二条の光線が突き進み、グロッキーとなったゼットンを捉える。

ゼットン「ゼ ッ ト ーー ン…………」

 低い断末魔を上げながら、ゼットンは背中から倒れた。
 蒼白い波動と共に爆発が起こる。その中に光が集い、ゼットンがスパークドールズに圧縮された。

 ・
 ・
 ・

―――オペレーションベースX

カグラ「僕は勇士司令部所属のウルトラマンネオス。M78星雲光の国より参りました」

 オペレーションベースXの司令室。
 ラボチーム含めた隊員全員が集まり、揃って目を丸くしていた。


橘「えっと。つまりあなたはウルトラマンで、地球人に擬態しているということ?」

カグラ「はい。僕がある地球で活動していたとき一体化していた青年の姿を借りています。この姿のときは『カグラ・ゲンキ』と呼んでください」

大地「さっきは助けてもらってありがとうございます。危ない所でした」

カグラ「ああ。――でも、これからもっと大変なことが起こる」

大地「え……? あっ、そうか」

グルマン「うむ。ダークサンダーエナジーのことだな」

エックス『ダークサンダーエナジーが発生したということは……考えたくないことだが、グリーザが復活したということだ』

ワタル「だけど今になってどうして」

カグラ「それは、今この地球を包んでいる『ダークマター』という未知の物質のせいだ」

ワタル「ダークマター……?」


カグラ「宇宙には未知の星間物質、ダークマターが漂っている。その濃度が特に高い地帯を『アンバランスゾーン』と呼び、今この地球はその場所を通過している」

グルマン「そう! それゆえに現在この地球は何が起こってもおかしくはないという事態に見舞われているのだ」

マモル「そうか。今朝からひっきりなしに起きていた異常現象の事件は……」

アスナ「アンバランスゾーン……ダークマターの影響ってこと、か」

カグラ「その通り。そして厄介なことに、ある宇宙人がこれを利用しようとしている」

ハヤト「ある宇宙人?」

カグラ「我々の調査によれば、奴の名はゼットン星人リビュー。さっきのゼットンも奴が放ったものだ」

エックス『そいつはダークマターの影響でグリーザが復活したことを知った。そしてダークサンダーエナジーを利用するためにこの地球へ来て、手始めにゼットンを放った……そういうことですね?』

カグラ「間違いないと思う。奴は現在、この地球上に潜伏している。恐らく東京都からさほど離れていないところに。円盤が飛んでいたら見つけていたはずだから」

 そう言ってカグラは神木の顔を見た。神木は頷き、隊員たちの顔を見渡した。


神木「アスナ、ワタル、ハヤトの三人は付近を調査。ただし星人に気取られぬよう、充分に警戒して動け」

三人「「「了解!」」」

カグラ「僕も手伝います。きっと力になれると思うから」

神木「助かります。三人に同行して調査をお願いします」

カグラ「了解」

神木「ラボチームはグリーザが完全に復活を果たした時に備え対抗策を考えてくれ」

大地・マモル「「了解!」」
ルイ「ガッテンテン!」

グルマン「よーっし行くぞ! 時間はそう無い、急がねば!」

ルイ「あ~……でもあのゴキちゃんがいるラボに戻るのちょっと嫌だなぁ……」


―――エリアT-TM1

 捜索組はアスナ・カグラ、ワタル・ハヤトの組に分かれて行動していた。
 カグラの頼みで街を一望できる丘に登った。しかし彼はそれを見ようとはせず、逆に目を閉じて、じっと佇んでいた。

アスナ「……?」

カグラ「……………………」

アスナ「……あの……」

カグラ「見つけた」

アスナ「えっ……えっ?」

 カグラは瞼を上げ、ある場所を指さした。アスナが目を細める。辛うじて町はずれに廃工場らしきものが見える。

カグラ「あの地下に空洞があって研究施設になっているようだ。そういう建物だというデータはありますか?」

 アスナはデバイスで調べてみたが、正真正銘ただの廃工場のようだった。

アスナ「いや、そういうデータはないみたい。ってことはリビューがそこに潜伏してる可能性があるってことね。早速突入を……」

カグラ「いや、待って」

 そう言うとカグラはしゃがみこみ、地面に手を当て、再び目を閉じた。


カグラ「……何か巨大なエネルギーを感じる。まるで怪獣のような……でもサイズ自体は大きくないみたいだ」

アスナ「……。あっ、スパークドールズ!」

カグラ「成程、怪獣の巨体だと気付かれる恐れがあるからスパークドールズのまま研究をしているのか」

アスナ「町はずれではあるけど、あそこから怪獣を放たれたら町に被害が出る……」

カグラ「前もって住人たちに避難指示を出した方がいいですね。でもそうしたら、星人に気取られる……」

アスナ「うぅん……面倒ね」

 ・
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 ・

―――オペレーションベースX、ラボ

 基地のラボでは大地、ルイ、マモル、グルマン博士の四人がしかめっ面でモニターを眺めていた。
 流れている映像はグリーザが基地を襲撃した時のもの。だがすぐにカメラが壊されたため、多くのデータは残されていない。

マモル「これだけじゃ、何ともっすね……」

大地「そうだな……」


ルイ「そもそも~何で前回は勝てたのかな? 怪獣たちが力を貸してくれたのはわかるけど」

マモル「そこは自分も気になってたっす。『無』であるグリーザが何故突然『有』になったのか。今までは何を食べても『無』のままだったのに」

グルマン「それについては仮説がある」

大地「仮説?」

エックス『何です?』

グルマン「グリーザが『有』の存在になったのはエクスラッガーを呑み込んだからではないだろうか」

ルイ「エックスを食べちゃったとき? エクスラッガーも一緒にお腹の中に入っちゃったから、『有』に変換されたってこと?」

グルマン「うむ。エクスラッガーには『無』を『有』に変換する能力があるのではないだろうか」

エックス『「無」を「有」に……』

大地「俺たちがエクシードエックスになれるのは、つまり……『絆』という形を取らない『無』を形にしているからですか?」

グルマン「あくまでも仮説だがな。だがその力によってグリーザが『有』となり、更に怪獣との絆がハイブリッドアーマーとなった、そう考えれば辻褄が合う」

マモル「なるほど……」


 するとスピーカーからアナウンスが入った。

チアキ『ラボチームへ連絡。作戦会議を行います。司令室へ集合してください』

 席を立ち、ラボを出る四人。もう時間も遅いため、通路の明かりも絞られている。
 薄暗くて、何だか――

ルイ「幽霊が出そうだね♪」

 と、ルイが言うと、マモルが「ひっ」と声を上げた。

グルマン「何だマモル。地球の危機が迫ってるのに今さら幽霊なんかで怖がるんじゃない」

マモル「こ、怖がってなんかないっす! そもそも幽霊なんて観測者の脳の錯覚に過ぎないんす!」

大地「はは……。……ん?」

 大地が急に足を止めた。

マモル「うおっ、危ない。どうしたんすかいきなり」

 三人が大地の視線の先を見ると――


少女「…………」

 白いワンピースを纏った少女がそこにいた。長い黒髪を靡かせながら大地たちを振り返る。

ルイ「え、噂をすれば本当に幽霊!?」

マモル「ひぃぃっ!?」

大地「君、どうやってここに? 関係者以外立ち入り禁止のはずだけど」

 少女は何も言わず、じっと大地の目を見詰めていた。
 気まずいと思いながらも、大地も彼女の目を見る。まるで吸い込まれてしまいそうな黒い瞳。

少女「虚無を捉えることはできない」

大地「え?」

 突然、少女が口を開いた。微かな笑みを浮かべながら、こう続ける。

少女「でも幽霊はどうかしら。捕まえることができる?」

 その謎めいた言葉が上手く飲み込めず、大地は言葉を返すことができなかった。
 そのとき、薄暗い通路に、かっと閃光が満ちた。思わず目を閉じてしまい、次に開けたときには――

大地「…………」

 その少女は、どこにもいなくなっていた。


 ・
 ・
 ・

―――翌日、エリアT-TM1

 翌日。大地、アスナ、ハヤト、ワタル、カグラの五人がエリアT-TM1に集合していた。
 午後2時27分。周辺住民の避難も済んだところで作戦を開始した。ハヤトはスカイマスケッティ、ワタルはスペースマスケッティ、アスナはランドマスケッティに乗り込み、大地とカグラは廃工場に踏み入った。

カグラ「ここが入り口になっているみたいだ」

 カグラが超感覚で地下への入り口を見つけ出す。
 カモフラージュされて見逃してしまいそうだが、地面にドアのようなものがあった。取っ手はないため、自動で開閉する仕組みなのだろう。

エックス『住人の避難も、私たちがここに来たことも既に気付かれているはずだ。気をつけろ』

 カグラが頷くのを見て、大地はジオブラスターで入り口を壊した。


 梯子を伝って地下に降りると、内部は広大な空間になっていた。
 高い天井まで届くカプセルや巨大な機械類などが敷き詰められ、床にはコードが伸びている。
 それぞれのカプセルの中にはスパークドールズがひとつずつ浮かんでいた。

カグラ「お前がゼットン星人リビューだな」

 そして、その最奥。一番大きなカプセルの前に、ローブのような衣を纏った宇宙人が立っていた。

リビュー「……一体何をしに来た?」

カグラ「お前を止めるために」

大地「あっ、あれは……」

 リビューの背後のカプセルの中にもやはりスパークドールズがひとつ浮かんでいた。
 色や発光体が存在する点はゼットンに似ていたが、その形はまるで違っている。

エックス『ダークサンダーエナジーを使い、そのスパークドールズの怪獣を強化するつもりか』

カグラ「もうやめるんだ、ゼットン星人。お前が扱おうとしている力は余りにも危険すぎる!」

リビュー「ふん?」

大地「グリーザは町や国どころじゃない、星そのものを消滅させる恐ろしい奴だ。お前がその怪獣を使えば、完全に目を覚ましてしまうかもしれない」

エックス『見たところ、かなり強力な怪獣のようだな。そんな奴は恰好の餌になるだけだぞ!』


リビュー「それで? そんな有難い忠告をして私に何を求めているんだ?」

カグラ「大人しく投降するんだ。取り返しがつかなくなる前に。お前だって命が危ない」

リビュー「…………話にならんな」

カグラ「何?」

リビュー「我がハイパーゼットンは無敵だ。グリーザの力が強大だと言うのなら、それを取り込み更なる進化を遂げさせる!」

大地「……交渉決裂か」

 やむなくパラライザーモードのジオブラスターのトリガーを引く大地。
 だが弾は星人に届かなかった。両者の間に青白いバリアが張られていたのだ。

大地「……!」


リビュー「フフ……今解放してやる、ハイパーゼットンよ……!」

カグラ「! まずい、逃げろ!」

 リビューが機器を弄るとカプセル内にエネルギーが満ちていった。
 それがスパークドールズに流し込まれる。徐々に巨大化していくそれを見て、二人は急いで脱出した。

大地「リビューは怪獣を実体化させようとしています! 三人とも、お願いします!」

ワタル・ハヤト『『おう!』』

アスナ『こっちも準備OK!』

 廃工場から出た直後、地面が砕け、建物を壊しながら怪獣が姿を現した。
 黒々しい昆虫のようなフォルム。ゼットンの顔らしきものが見えたが、やはり姿形は全然違った。

ワタル『行くぞ、ハヤト、アスナ! 3、2、1……』

ハヤト『ハイパーエナジーシールド、作動!』

 空中のスカイマスケッティとスペースマスケッティ、そして地上のランドマスケッティが同時に光線を放つ。
 ハイパーゼットンの頭上でそれらは結ばれ、その巨体を包むドーム状のシールドになった。


カグラ「今だ、行こう!」

大地「はい!」

 カグラと大地が変身アイテムを取り出す。

『ウルトラマンエックスと ユナイトします』

大地「エックスーーーーーっ!!!」
カグラ「ウルトラマン! ネオーーーーース!!!」

 空に掲げたエクスデバイザーとエストレーラーが光を放ち、二人を包んでいく。

ネオス「――シュアッ!!」
エックス「――イーーッ、サァーーッ!!」

『エックス ユナイテッド!』

 その閃光の中から二体の巨人が姿を現し、エナジーシールドの中でハイパーゼットンと相対する。

ネオス「タアッ!」
エックス「ハアア――――セエアッ!」


タケル『エリアT-TM1上空に電磁波異常を感知! ダークサンダーエナジー、来ます!』

 上空に暗雲が渦巻き、ダークサンダーエナジーが降り注ぐ。
 しかしエナジーシールドが妨害して怪獣には届かなかった。

ハヤト「くっ……凄い衝撃だ! ワタル、アスナ、そっちは大丈夫か?!」

アスナ「まだ大丈夫……!」

ワタル「だがいつまで持ちこたえられるか……。頼むぞ……!」


Hゼットン「ゼットーーーン」

ネオス「サアッ!」
エックス「ハアァッ!」

 ハイパーゼットン向けて駆け出すエックスとネオス。
 だが相手はあまりに巨大だった。自分たちの4、5倍はある。鎌を振り回されれば近づくことすら困難になる。

ネオス「ハッ!」

 飛び上がり、側面から光輪“ネオ・スラッシュ”を放つ。しかし外殻は固く、弾き飛ばされてしまう。


Hゼットン「ゼットーーーン……」

エックス「フッ! テヤアッ!」

 ハイパーゼットンの発光体から火球が飛ぶ。
 エックスはエレキングアーマーを纏い、エレキング電撃波でそれを撃ち落とす。

Hゼットン「ゼットーーーン」

エックス「!」

 しかし空中に広がった爆煙に紛れて鎌が振るわれた。咄嗟に受け止めようとするが、そのまま撥ね飛ばされてしまう。

チアキ『ダークサンダーエナジー第二波、来ます!』

ハヤト「くぅぅっ……!!」

アスナ「エナジーシールド残量、残り62%……!」


ネオス「タァァ……!」

 ネオスが腰に手を当てる。刀を抜くような動作をすると、右腕に光の剣が形成された。

Hゼットン「ゼットーーーン」

ネオス「セアアアッ!!」

 迫りくるハイパーゼットンの鎌。ネオスが剣を振り下ろす。
 瞬間、火花が散り、宙を舞って消えていく。背中を仰け反らせるゼットン。ネオスの剣が、鎌を半ばから断ち切っていた。

エックス「ハアァッ、テヤアッ!」

 エックスも負けじと、砲身から電撃の鞭を発射する。それをゼットンの鎌に巻き付け、動きを鈍らせる。
 ネオスが飛び込み、光剣でその鎌も切断する。

Hゼットン「ゼットーーーーン……ピポポポポポポポポ」

 すると今度は火球を飛ばしてきた。ネオスは光弾“ネオス・ナックル・シェル”を連発し、それらを撃ち落とす。

『サイバーゴモラアーマー アクティブ!』

エックス「「ゴモラ振動波!!」」

 その隙を狙ってエックスが接近し、ゴモラ振動波で発光体を破壊した。


チアキ『ダークサンダーエナジー第三波、来ます!』

ワタル「チッ……! もうちょっとだっていうのに……っ!」

 黒い雷がエナジーシールドに撃ちつけられる。衝撃が機体を揺らす。
 シールド残量を示すメーターが加速度的に減っていく。

アスナ「残り32%……29、26、22……!!」

ハヤト「くそっ……!!」

タケル『ダークサンダーエナジー、第四波!』

 今まで最も広く黒雲が展開され、凝縮された稲妻が宙を駆け走る。

ネオス・エックス「「!」」

 度重なる攻撃にエナジーシールドが遂に破れる。
 突き抜けたダークサンダーエナジーが手負いのハイパーゼットンに降り注ぐ。


リビュー「遂に来たか……! ヒハハハハハハハーーー!!」

 リビューは地下に格納していた宇宙船を発進させた。
 自身を宇宙船ごと粒子分解し、ダークサンダーエナジーを浴びるハイパーゼットンと融合させる。

リビュー『これが……これがダークサンダーエナジー……! 素晴らしい!』

大地『……!』

リビュー『さあ行くぞ、ハイパーゼットンよ! 我々の力で宇宙を、この手中に収めるのだ!!』

 ハイパーゼットンの体がボロボロと崩れ落ちていく。
 そしてその内部から――新たに生まれ変わったハイパーゼットンが姿を現した。
 一転してスマートな体躯となったハイパーゼットンのイマーゴ形態。

Hゼットン「ピポポポポポポ…………」

ネオス「――サアッ!」

エックス「テエアッ!」

 敢然とネオスが駆け出す。地面を叩き、エックスもそれに続く。
 ハイパーゼットンは悠然と立ち尽くしたまま。ネオスがドロップキックを浴びせようとする。

ネオス「――!」

 ――しかし、その瞬間。ハイパーゼットンが姿を消した。


エックス「グアァッ!?」

 後ろにいたエックスが倒れる。ハイパーゼットンがテレポートし、エックスを殴りつけたのだ。

ネオス「! タアッ!」

 すぐさま振り返り、ネオ・スラッシュを投擲する。
 しかしハイパーゼットンが無造作に鎌を振ると呆気なく破壊されてしまった。そしてその姿が消える。

Hゼットン「ゼットーーーーーン」

ネオス「グッ! アァッ……!」

 ネオスの背後に回り、至近距離から火炎弾を連射した。
 防御することもできずネオスは吹き飛ばされてしまう。

リビュー『ハハハハハハ! もはやウルトラ戦士など敵ではないわぁ!』

ネオス「クッ……」

エックス「ハァァッ……」

 しかしリビューが高笑いを上げている間に、アスナたちの元に通信が入ってきていた。


チアキ『警戒してください! 監視衛星が謎の発光体をキャッチしました!』

アスナ「えっ――」

ハヤト「まさか……」

ワタル「おいおいおい……あれって……」

 スペースマスケッティが最初にそれを目視する。
 宙に浮かぶ刺々した謎の存在。それが妖しく、そして美しく輝いている。

ワタル「間違いねえ……。総員に告ぐ! 全速で退避しろ!!」

 全速力を出してその場から逃げる各マスケッティ。エックスとネオスもそれに気付いた。
 徐々に高度を下げて接近してくる発光体。反射的に二人は飛び退いた。

リビュー『ん……?』

 リビューが最後にそれに気付く。気付いた時には、もう真上に迫っていた。
 食物を消化する臓器のように蠢く存在――

 ――次の瞬間、周囲の全てが消滅した。











グリーザ「                    」










エックス『蘇ってしまった……』

大地『ああ……』

ネオス『奴が……グリーザ……!』

 消滅したのは半径2km圏。廃工場はおろか、町はずれに近い地帯の建物も呑み込まれた。
 その中心に立つグリーザの姿は、人型の第二形態になっていた。リビューの地下研究施設のスパークドールズを呑み込んだことで形を変えたのだ。

グリーザ「             」

 グリーザに向かってファイティングポーズをとる二人。
 しかしその時、グリーザの近くにハイパーゼットンが現れた。衝突の直前、咄嗟にテレポートをして逃れていたのだ。

リビュー『お前がグリーザか……。お前のおかげでハイパーゼットンは完全態となった。感謝しておこう』

ネオス『リビュー!』

リビュー『そして……お前の力もいただき、より強く進化しよう!』

エックス『よせ! 敵う相手じゃない!』


Hゼットン「ゼットーーーーン!」

 ハイパーゼットンが鎌を振り下ろす。グリーザは全く動いていない――ように見えた。

Hゼットン「ピポポポポポポ……ゼットーーーン」

 何度も何度も鎌を振り、薙ぎ、グリーザに攻撃しようとする。
 それなのに、一度たりとも攻撃が当たらない。回避行動なんてしていないように見えるのに、気付くと何故か攻撃が躱されている。

リビュー『くっ……』

 一旦テレポートして距離を取り、火球を連射する。
 するとグリーザが動き出した。幽霊のようなおぼつかなさでゆるりと接近してくる。

グリーザ「         」

 グリーザの腕がふわりと浮き、脱力したような動きで振るわれる。
 すると火球が次から次へとあらぬ方向へ弾き飛ばされる。いくら撃っても暖簾に腕押しだ。

Hゼットン「ゼットーーン」

 すぐ間近まで迫ったところで再びテレポートし、グリーザの背後に回る。
 これなら、と思って火球を放とうとしたその時――


グリーザ「   」

 グリーザの背中からビームが放たれ、一瞬の内にハイパーゼットンの胸を貫いた。

Hゼットン「ゼ……ゼットーーン……」

グリーザ「     」

 振り返ってもいないのに、いつの間にかグリーザがこちらを向いている。
 頭部らしきところから湾曲した稲妻が乱れ飛ぶ。ハイパーゼットンはそれを吸収しようとする。

リビュー『グ……グアァァァッ!? な、何故だ……何故吸収できない……!?』

 ハイパーゼットンの吸収能力はあくまで「有」を吸い込むもの。
 完全無欠に虚無的存在であるグリーザの攻撃は、いかにハイパーゼットンであろうとも吸収することは出来ない。

グリーザ「          」

 グリーザの胸の球体から青白い幽霊のような腕が飛び出す。
 それがいくつもいくつも伸び、ハイパーゼットンの身体を絡めとる。

リビュー『や……やめろ……! やめろやめろやめろ、やめろおおおおおおおおっっ!!!』


大地『……!』

 ハイパーゼットンの巨体があっという間にグリーザの胸に吸い込まれる。
 歓喜のような声を上げ、グリーザの全身が閃光を放つ。

エックス『…………』
ネオス『…………』

 二人とも言葉を失う。
 光が収まった後に立っていたのは、全身に突起を生やしたグリーザの第三形態だった。

グリーザ「□□■□□□■□□□□□□■□■□□□□□□□」

グリーザ「■■■□□□□■□□□■■□□□□□□□□■□」

グリーザ「□□□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□■」

 女性の笑い声のようにも聞こえるわけのわからない声を上げるグリーザ。
 次の標的を定めたのか、その顔はエックスとネオスに向いていた。

エックス「ハアア……セエアッ!」

ネオス「サァッ!」

 押し潰されそうな重圧を感じながらも、二人は走り出した。


グリーザ「■□■■□□□□□□□□□□□■■■■■■■■」

 グリーザの突起の先にエネルギーが集い、無数の火球が放たれる。
 二人はそれを腕で弾き、光弾で相殺し、光刃で切り裂きながら、何とか近づいていく。

エックス『大地、これは吸収したハイパーゼットンの能力だ!』

大地『つまり前にもやったみたいに、ゼットンを引き摺り出せばグリーザは弱体化するはず……!』

エックス「――セエヤッ!」

 虹色の光が纏い、エックスの姿がエクシードエックスのものに変わる。

ネオス「シュアッ!」

 まずはネオスがジャンプし、飛び蹴りを食らわせようとする。
 しかしそれは命中せず、見えない壁にぶつかったように地面に落ちてしまう。
 後転して距離を取ったネオスと入れ替わるようにエックスが突っ込む。手中にエクスラッガーを握りしめ、それをグリーザの胸に突き立てようとする。

エックス「――デアッ!?」

 しかしそれは空を切った。ハイパーゼットンのようにテレポートし、二人の背後に回ったのだ。


グリーザ「■■□□□□■□■□■□■◆◆◆◆◆■■■□◇」

 グリーザの顔から電撃が乱れ飛び、ウルトラマンたちに襲い掛かる。

ネオス「アァッ……」
エックス「グッ……!」

グリーザ「□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□■」

 かと思えばテレポートして接近し、エックスの顔を殴りつける。
 反撃しようとエクスラッガーを振るが周囲に展開されたゼットンシャッターに阻まれる。

ネオス「ハアア――セヤアッ!!」

 しかしネオスが拳を振りかぶっていた。渾身の力で叩きつけ、ゼットンシャッターを粉砕する。
 テレポートする隙を与えない。すぐさまエックスは飛び込み、逆手持ちしたエクスラッガーをグリーザに突き刺した。

グリーザ「■■◆◆■■■◆■■■■■■■■■■■■■■■」

 グリーザの動きが止まる。エクスラッガーを介し、大地は吸収されたリビューに呼び掛けた。

大地『リビュー! 脱出するんだ! そう強く願えば想いは形になる!』


 エクスラッガーが粒子状になってグリーザ内部に取り込まれる。エクシードエックスの形態が解除される。

大地『リビュー! 答えてくれ!』

リビュー『…………フフ、フフフッ』

大地『……!』

 だが、意に反して聞こえてきたのはリビューの高笑いだった。

リビュー『フフフハハハハハハハ!! グリーザに呑み込まれた? 違うな、私がグリーザを呑み込んだのだ!』

リビュー『このままグリーザと共に生命を喰らい尽くし、私が全宇宙の神となるのだ!! その邪魔はさせんぞおおおおお!!!』

大地『なっ……』

グリーザ「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」

 グリーザが動き出す。胸の中から虹色の光線を吐き出し、エックスを吹き飛ばした。

エックス「グッ……グアアァッ……!!」

大地『そ……そんな……』


―――オペレーションベースX

ハヤト『エックスがエクスラッガーを突き立てましたが、効果なし……!』

神木「くっ……!」

ワタル『……ん? ちょっと待ってください! 人がいます!』

神木「何っ?」

橘「避難は済んだんじゃなかったの!?」

ワタル『そのはずなんですが……女の子みたいです』

 モニターに映像が映る。確かに作戦区域内に人影が見える。
 白いワンピースを着た、まるで幽霊のような少女。それを見てグルマンは目を丸くした。

グルマン「あれは、昨夜の……」

 そして更に驚くべき光景が映る。少女の周りに赤いオーラが纏われたのだ。
 少女の体が光に包まれ、徐々に巨大化していき――


―――エリアT-TM1

セブン21「――デュアッ!!」

大地『あ……新しいウルトラマン……!?』

 突然現れたのは赤い体躯のウルトラマンだった。
 肩回りに銀色のプロテクターを纏い、頭部には宇宙ブーメラン“ヴェルザード”を収めている。

ネオス『セブン21……!』

 二人に対し頷いてから、ウルトラセブン21はグリーザに向けてファイティングポーズをとった。

セブン21「テアッ!」

グリーザ「□□□□■■■□□■□□□□□■□□□■■■□」

 グリーザが突起の先から火球を放とうとする。しかしそれよりも先にセブン21が動いた。
 投擲されたヴェルザードが回転しながら飛び、遅れて放たれた火球を切り裂き突き進んだ。

グリーザ「□■■■□□■□■■□□■□□□□□□□□■■」

 突起のひとつに命中する。切断されたそれはくるくると宙を舞い、地面に突き刺さった。


―――オペレーションベースX

グルマン「ん……?」

 それをモニターで見ていたグルマンは、ふと昨夜のことを思い出した。

『虚無を捉えることはできない』
『でも幽霊はどうかしら。捕まえることができる?』

 少女の言った謎めいた言葉。だがあの少女がウルトラセブン21であるならば、何かしらのメッセージを伝えようとしたのだろう。
 それは何か。切断されたグリーザの突起――そして、昨夜の記憶。

グルマン「――そうか、分かったぞ!」

神木「どうした、博士」

グルマン「グリーザの倒し方だ! マモル、ルイ、ラボへ急げ! グリーザのサイバーカードを作る!」

 その言葉に、司令室にいる全員が唖然とした。


マモル「グ……グリーザのサイバーカード!? スパークドールズも無いのに無理っすよそんなの!」

ルイ「ゼロ様の時みたいに映像だけで再現しようとしても、オリジナルの性能より格段に劣っちゃうよ!? そんなんじゃグリーザには勝てっこない!」

橘「それにグリーザは『無』の存在。そんなもののサイバーカードが作れるの?!」

 口々に質問が飛ぶ。だが神木がそれを抑えた。

神木「聞かせてくれ。どうやってサイバーカードを作り、どうやってグリーザを打倒するのか」

グルマン「うむ。だが時間がない、一度で聞いてくれ。グリーザの第一・第二形態は、『我々の脳が無理に認識した形』というのは前に説明したとおりだ」

グルマン「『無理に認識する』……それはつまり『脳の錯覚』とも言い換えることができる。マモル、お前さんが昨夜言った言葉を覚えているか?」

マモル「えっ……? 幽霊は脳の錯覚って言ったことっすか?」

グルマン「そうだ。『虚無は捉えられない』、だが『幽霊は捕まえることができる』」


ルイ「――そっか! つまり!」

グルマン「察しがいいな。そう、つまり『グリーザ自体は捉えられないが、我々の錯覚なら捕まえることができる』ということだ」

神木「……どういうことだ?」

グルマン「グリーザそのもののサイバーカードを作り出すのは不可能だ。だが、我々が捉えている――錯覚している『グリーザという存在』のサイバーカードなら作り出せる」

橘「だけど、さっきルイが言ったように性能が落ちてしまうんじゃ……」

グルマン「いや、その点ならクリアできる」

神木「どうするんだ?」

グルマン「さっきグリーザの突起が弾き飛ばされたのがポイントだ」

 そう言ってグルマンは、モニターに映るエックスに視線を向けた。


―――エリアT-TM1

セブン21「ジュアッ!」

 エックスとネオスのカラータイマーが点滅し始めたのを見て、セブン21は自身のエネルギーを二人に分け与えた。
 再びカラータイマーが青い輝きを取り戻す。だが――

グリーザ「■□□□□□□■□□□□□□■■■■■□□■■」

 味方が三人になっても大勢に影響はなかった。
 セブン21が不意打ち気味に一撃食らわせたが、その後は誰一人としてグリーザに触れられてもいなかった。
 ハイパーゼットンの攻撃・防御・回避の性能を併せ持ち貪欲に全てを無に帰す。それが今のグリーザの力だった。

ワタル「くそっ、どうすれば……」

 すると、歯軋りするワタルの元に一枚のサイバーカードが転送されてきた。
 驚いて手に取る。そこに描かれてあったのは――

ワタル「は、博士!? これは!?」

グルマン『お前さんにいちいち説明している暇はない! それをすぐ大地とエックスの元に!』

ワタル「わ……わかった! 大地! エックス! 受け取れーーーっ!!」


大地『これは……グリーザのサイバーカード……!?』

グルマン『大地、エックス、よく聞け! 私の仮説は正しかった。エクスラッガーには「無」を「有」にする力がある!』

グルマン『さっきセブン21の攻撃がグリーザに命中したのがその証拠だ! お前さんたちがエクスラッガーを突き立てたことで、今のグリーザは「有」になっているんだ』

エックス『成程……だが、それとグリーザのサイバーカードに何の関係が?』

グルマン『グリーザの姿は「脳の錯覚」。つまり我々の「想い」が投影された姿と言える』

大地『そうか。だったらエクスラッガーで……』

エックス『サイバーグリーザを「作り出す」ことができる……そういうことか!?』

グルマン『左様。そのサイバーカードはまだ完成していない。お前さんたちがエクスラッガーの力を使うことで初めて完成する!』

大地『わかりました、やってみます! 行くぞエックス!』

エックス『ああ!』


『ウルトラマンエックス パワーアップ』

大地・エックス『『行くぞ! エクシード! エーーーックス!!』』

 Xを描くようにエクスラッガーを振り下ろし、宙に浮かべたサイバーカードを切る。
 エックスの体に虹色の光が纏われるのと同時に、粒子状となったサイバーカードがデバイスの中に流れ込んでいく。

『サイバーグリーザ ロードします』

 エクシードエックスの上半身に群青と紫を禍々しく混ぜ合わせた装甲が装着されていく。
 巻貝のような突起や角が伸び、ところどころに発光体が埋まって黄色く明滅するアーマー。

『サイバーグリーザアーマー アクティブ!』

エックス「――イィッ、サァァッ!!」

 エクスラッガーの力で実現したその鎧を纏い、エックスが地面を蹴った。
 低空飛行しながらグリーザ向けて突進する。

グリーザ「◇□□■□□□■◇□□□◆□■■□■■□□■■」

 だがグリーザの姿が消える。テレポート。エックスもまた一瞬にして姿を消した。

アスナ「……!?」

 上空から音が響いてきて、アスナは空を見上げた。
 グリーザとエックスがぶつかり合い、禍々しい波動が辺りに吹き荒れている。
 共に姿を消し、別の場所に現れ激突する。それが瞬く間に繰り返され、目で追うのに精一杯だ。


グリーザ「□□□□□□□■□□■■■■■■■■■■■■■」

エックス「「サイバーグリーザダブルヘリックス!!」」

 アーマーの発光部から電撃が放たれ鞭のようにしなり、グリーザが放った火球をはたき落としていく。
 だが敵に迫ろうとしたそれはグリーザの胸の中に吸い込まれてしまった。

グリーザ「■□■□■□■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 そしてそれを増幅し撃ち返す。咄嗟にテレポートして躱すが、グリーザが即座に背後に回り込んでいた。

グリーザ「■■■■■■■■■■■□□□■□□■□■□■□」

エックス「グアァッ!」

 至近距離から放たれた火球が直撃し、エックスが宙を墜ちていく。
 負けじとテレポートを発動してグリーザの正面に戻り、今度は格闘戦に持ち込もうとする。

グリーザ「□□□■□□■□□□■□□□□□□■■■◇◇□」

 だが何度も何度もテレポートを繰り返すグリーザの動きが掴めない。
 グリーザと同じスペックを有しても中身は全く違う。もはや生物的な思考など存在しないグリーザの不条理な動きは生物であるエックスに掴めるわけはなかった。


 ――ただそれは、一人でならの話だ。

ネオス「セアァッ!!」

グリーザ「◆□■◆■◆□□□□□□□■□■◇□■■■◆■」

 飛来した光弾がテレポート先のグリーザに命中する。
 続けてキックを食らわせようとするが、グリーザは瞬時に姿を消す。

セブン21「デュワッ!!」

 セブン21がヴェルザードを投げる。グリーザはまたもテレポートを発揮する。

グリーザ「□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□」

 三人を俯瞰する位置について同時に攻撃を浴びせようとする。
 しかし――

ハヤト・ワタル「「サイバーカード、リミッター解除!!」」

ハヤト「バードンフェニックスアタック!!」

ワタル「トラアアアアアアアアアアアイ!!!」

 炎に包まれたスカイマスケッティとスペースマスケッティが突っ込んできた。
 グリーザの背の突起を機体が突き抜ける。怯んだ一瞬の隙に、エックスが眼前にテレポートしていた。

エックス「オオォォォ――――シュアッ!!」

 突起から放った電撃を右腕に絡ませ、グリーザの頭部に思い切り叩きつけた。


グリーザ「■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■」

 びくびくと痙攣するような動きをしながらグリーザが墜ちていく。

アスナ「ゼットンレールキャノン、発射ッ!!」

 そこを見計らってランドマスケッティの電磁砲が火を噴く。
 空中に展開される爆発。テレポートしたグリーザが地上に現れたが、胸の発光体に傷が入っていた。

グリーザ「□□□□■■■■□□□□■■■■□□□□◆◇◇」

ネオス「ハアッ!」
セブン21「デュアッ!」
エックス「シュアッ!」

 三人のウルトラマンもまた地上に降りてくる。
 ネオスとセブン21が視線を交わし、共に必殺光線の構えをとる。

エックス『行くぞ、大地!』

大地『ああ!』

 胸の前に両腕を構えるエックス。アーマー全体からエネルギーが流れ込み、発光体が激しく明滅する。

エックス「ハアアアア――――!!」


ネオス「――テアアアアッ!!」
セブン21「――ジュアアアアッ!!」

 十字に組んだネオスの腕からネオ・マグニウム光線が、L字に組んだセブン21の腕からレジア・ショットが放たれる。


エックス「「――――サイバーグリーザダークライトニング!!!」」


 同時にエックスも必殺技を放った。紫電の渦状光線が飛び、ネオスとセブン21の光線を巻き込む。
 グリーザが張ったゼットンシャッターを突き破り、その体を捉える。

グリーザ「■■□■■■■■■■■■■□■□■■■■■■■」

グリーザ「□□□■■■■□■■■□□■■■■■■■■□■」

グリーザ「■■■■■■■■■■■■■■■□■■■■■□■」

 エコーがかかったような悲鳴がこだまする。グリーザの全身が光り、膨れ上がり、そして――


グリーザ「                       」


 無の絶叫を上げながら、グリーザは爆発の炎に呑み込まれた。


ワタル「おっしゃーー!!」

ハヤト「っし!」

 不時着したワタルとハヤトは、その汚れきった顔をほころばせて拳を突き合わせた。

アスナ「やった……」

 アスナはむしろほっとした様子で、飛び去っていくウルトラマンたちを見送っていた。


―――宇宙空間

大地『ウルトラマンネオス、ウルトラセブン21。本当にありがとうございました』

エックス『あなたたちの助けがなければ今頃どうなっていたか。感謝しています』

ネオス『いや、そんなことはない』

セブン21『グリーザを倒すことができたのは、君たちと地球人が力を結集させたからだ』

ネオス『これからもその絆を大切に、この美しい星を守り抜いていってほしい』

大地『……はい!』


ネオス『我々はいったん光の国に戻り、この件を報告してくる』

セブン21『太陽系がアンバランスゾーンを抜けるまで残り30日はあるだろうが……』

大地『大丈夫です。俺とエックスと……そして仲間たちと一緒に、何とかします』

ネオス『ありがとう。だけどこれだけは忘れないでほしい』

 そう言うとネオスは、宇宙空間に広がる星々に目を向けた。

ネオス『我々は輝く銀河の彼方から、ずっと地球を見ている』

 エックスが力強く頷くのを見て、ネオスとセブン21は飛び去っていった。
 その姿が銀河の中に消えると、エックスは言った。

エックス『さあ戻ろう。私たちの仲間の元へ』

大地『ああ!』


THE END


Mayday五月天 [ 少年他的奇幻漂流 Life of Planet ] Official Music Video
https://youtu.be/3LmjBbP-e8U

ネオスさんが懐かしくて書きました。
復習しようと思ったんですが近くのビデオ屋に置いてなかったので完全に記憶頼りです。
間違っているところがあったらすみません。

それでは読んでくださった方、ありがとうございました。

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