穂乃果「…相談があるの」 (18)
短めで。
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屋上
海未「はい! ワンツースリーフォー」
海未「穂乃果! タイミング遅れてます!」
穂乃果「はい!」
海未「凛は早すぎ! もっと回りを見て!」
凛「はいにゃ!」
海未「はい。今日はここまでにしましょう。厳しい練習お疲れさま」
穂乃果「はぁ~ん…今日も疲れたぁ~」
海未「近くライブも控えているので練習が厳しくなるのも仕方ないですね」
穂乃果「そうだね。いや~、楽しみだ!」
花陽「わ、私はちょっと緊張するなぁ。どんなお客さんが来るかもわからないし好意的に受け入れてくれるかなぁ」
ことり「そうだねぇ。初めての会場だしどんな感じになるかも未知数でちょっと怖いね」
にこ「なに言ってるのよ。どんな舞台でも輝く強さを持ってなきゃダメ」
海未「私たちは私たちの今できることをやるしかないです」
絵里「海未のいうとおりよ。今目の前の課題を乗り越えてこそよ」
希「まあ未知数のところに一か八かで賭けて成長するってところもあるし」
穂乃果「私たちはとにかく全力でやってみるしかないよ!」
真姫「穂乃果のことばがすべてね。もうこの話は終わり。着替えにいきましょう」
凛「真姫ちゃん? 一緒に帰らないの?」
真姫「ちょっとまだ学校に用があるから残るわ」
花陽「付き合うよ?」
真姫「気にしなくていいわ。さようなら」
凛「うん。また明日ね」
花陽「ばいばい」
穂乃果「………」
海未「穂乃果?」
穂乃果「私もちょっと学校に用があるから先帰ってて!」タッ
海未「穂乃果! …もう」
ことり「しかたないよ。帰ろう?」
海未「まったく! 人の話を聞かないんだから…」
音楽室
真姫「ちょっと新曲で気になる箇所があるのよね」
ポロロン
ガラッ
真姫「? だれよこんな時間に」
穂乃果「真姫ちゃん…ちょっと…いい?…」
真姫「穂乃果じゃない」
真姫「なによいったい」
穂乃果「…相談があるの」
真姫「穂乃果にしてはめずらしく殊勝な態度。なにか深刻な事態でも発生したの?」
真姫「でもそれだとしてなんで私なんかに相談するの?」
穂乃果「相談したい内容は他でもない──」
真姫「」ゴクンッ…
穂乃果「穂乃果って人気ないよね?」
真姫「……」
真姫「はい?」
穂乃果「穂乃果って人気ないよね?」
真姫「いやだから分かりやすく言い換えてよ」
穂乃果「…ことばのまんまだよ?」ポカーン
穂乃果「いったい穂乃果のことばのなにがわからないのかわからないよ」
真姫「今の場合私の方がバカみたいな態度は許さないわよ。バカなのはあんたの方だからね」
穂乃果「えぇ。よくわからないけど怒ってるみたいだからなんかごめんね」
真姫「…もういいから本題を進めて?」
穂乃果「穂乃果って人気ないよね?」
真姫「ああああ!! あんたはでき損ないのAIか!!」
穂乃果「大声出すのはやめてよぉ。それに‘えーあい’ってなに?」
真姫「メンドくさいからその質問には答えないわ」
真姫「わかった。私から質問しましょう」
穂乃果「え? うん。よくわかんないけどどうぞ?」
真姫「」イライラ
真姫「……」ハァ
真姫(なんで私が苦労して落ち着かないといけないのかしら)
真姫「えーと、まずひとつ目の質問」
真姫「穂乃果は自分が人気のないことに悩んでいる」
穂乃果「そのとおり!」
真姫「自分にはファンが少ないと感じている?」
穂乃果「イエスイエス!!」
真姫「なんでそう思ったの?」
穂乃果「う~ん…いっぱいあるんだけどどれも小さいことなんだよねぇ」
真姫「ひとつでもいいから言いなさいよ」
穂乃果「う~ん…まず思いつくのはあれかなぁ…?」
真姫「うん。だからあれじゃわからないでしょ?」
穂乃果「? いまから言うじゃん。みんなはよく街中でもサインして! とか写真とって! とかあるのに穂乃果は少ない、というかないに等しい」
真姫「なるほどね…」
真姫「まあアイドルとしてはありがちというか切実な悩みよね」
穂乃果「アイドルじゃなくてスクールアイドルだよ?」
真姫(はい無視無視)
真姫「他には?」
穂乃果「う~ん…学校でも海未ちゃんやことりちゃんは他の生徒からかわいいだのかっこいいだの褒められるのに穂乃果にはなーんにもない!」
穂乃果「まるで穂乃果が見えてないみたい…」
真姫「なるほど…」
真姫「他には?」
穂乃果「ネットの掲示板とかでもさ」
真姫「あんまりそういうのは見ない方がいいわよ」
真姫(匿名なんてロクなやついないし)
穂乃果「でも今はネット時代だよ!? 不可避じゃん!!」
穂乃果「それに穂乃果たちのことなにか言われてるなら気になるし」
穂乃果「褒められてるかなぁとか期待しちゃうじゃん!!」
真姫「…まぁ、わからなくはないわね」
真姫「それで掲示板を見た結果はどうなの??」
穂乃果「そりゃ穂乃果を褒めてくれる人もいたよ?」
穂乃果「嬉しくて」
穂乃果「ありがちなものでも軽いものでも何回も見直して」
穂乃果「スクールアイドルやっててよかった! って」
穂乃果「これからもがんばるぞ! って熱く思ったよ?」
真姫「うん。それで?」
穂乃果「…でも他のメンバーに比べたら圧倒的に少ない」
穂乃果「あるテーマで書かれててこれなら穂乃果も褒められるはず! って期待してても結局そんなのないまま」
穂乃果「まるで穂乃果が存在してないかのような扱い」
穂乃果「だれも穂乃果に興味を示さない」
穂乃果「穂乃果はいないほうがいいみたいなんだって……」
穂乃果「泣いていい?」ウルウル
真姫「シリアスな雰囲気はここではいらないからダメ」
穂乃果「ここってどこよ」
真姫「いないほうがいいってことはやめたいってこと?」
穂乃果「それはイヤ」
穂乃果「そもそも好きでやってることだし掲示板でとやかく言ってるよりえらいって思ってるから!」
真姫(えらいってのはよくわかんないけどまあ無視ね)
穂乃果「真姫ちゃん! 穂乃果の憂鬱な気分を消して!」
真姫「その類いなら希に言って」
穂乃果「真姫ちゃんなら穂乃果の気持ちわかるでしょ!?」
真姫「なんでよ」
穂乃果「だって人気投票でもトップになったの最後じゃない?」
真姫「うっるさいわね! そんな思考だから憂鬱になるんでしょ!?」
穂乃果「…そうなんだよね。穂乃果みたいになんにも言及されてない人を必死で探して安心しようとするんだけど」
穂乃果「むなしいだけなんだよね」
穂乃果「だって穂乃果の人気はなんにもかわんないんだもん」
真姫「まあ自己満の世界でもないしね」
穂乃果「そう。自分が楽しいからやってるの! だから誰にも文句は言わせない!──じゃあ言い訳できないんだよね」
穂乃果「だってネットにあげて舞台に立ってお客さんを呼んでるんだもん」
穂乃果「どんな出来でも文句言うなじゃわざわざ来てくれたお客さんにも申し訳ないよ」
真姫「でもさっき穂乃果言ってたわよね? 全力でやってみるしかないとか。その思考で乗りきれないの?」
穂乃果「穂乃果にだってブルーになる時期はあるの」
真姫「レバーを食べて鉄分補給ね」
穂乃果「その時期って意味じゃないの! 穂乃果は真剣なんだよ!?」
真姫「自己評価できるものではないものね」
真姫「絵とかみたいに成果が見えるわけでもないし」
真姫「歌やダンスをのばしたいならその道のプロを目指せって話になるしね」
穂乃果「そう。穂乃果がうまくできた! これならネットでも褒められるって思って見てもなーんにも言われてないこともあるし」
穂乃果「かと思えば失敗したと思ってるところが褒められてたりするし」
穂乃果「穂乃果はそこ褒められてもうれしくないよ!? って言いたい」
真姫「まあもし言えても意味ないけどね」
穂乃果「それに!」
真姫(穂乃果なんかに無視された!!)ガーン
真姫「…わ、私に相談してるんだから私の話も少しは聞いたら?…」イライラ
穂乃果「とにかくまずは穂乃果の話を聞いて! それからだよ」
真姫(なんかもやもやが残る)
穂乃果「まずさ、自分の能力がのびてるのかどうかもわかんないじゃん!」
真姫(さっきの話ね)
穂乃果「わかんなかったらもしかしたらレベルがあがらないまま低いところをうろついてるとかいう意味ないことになってるかも知れなくて!」
穂乃果「それが怖いの」
真姫「意味のあるものにしたいのね」
穂乃果「だからやってるんでしょ?」
真姫(‘意味’とかハイデッガーっぽいわね。今なら理解できそうだから今度読んでみようかしら)
穂乃果「意味といえばどれだけスクールアイドルをがんばっても役に立たないよね!」
真姫「とんでもないこと言ってきたわね」
穂乃果「だってどれだけやっても社会で役立つ知識が増えるわけではないしお金をもらえるわけでもない」
穂乃果「それならスクールアイドルやってる時間を勉強とかバイトに変えたほうが役に立つでしょ!?」
真姫「元も子もないことを」
穂乃果「それに例えばファンからの人気が欲しがったら人気のありそうな感じに私をチェンジすれば済む話って思うでしょ?」
真姫「話が前後してるわよ」
穂乃果「でもそういうチェンジするのは穂乃果ちがうって思うよ!」
真姫「止まらないわね」
穂乃果「そりゃ止まらないよ!」
真姫「急に私に返事しないでよ。逆にビックリするわ。私の話聞いてたんだって」
穂乃果「でもだって人気取りに行くなら穂乃果がやらなくても他のもっとすごい人がいるわけじゃん!?」
穂乃果「穂乃果は穂乃果がやりたいからやってるの!」
穂乃果「だったら自分のやりたいことを自分の思い描いていることをやるしかないんだよ!!」
穂乃果「それで低い評価を与えられたり反応がなかったらショックが大きいの!!」
穂乃果「穂乃果ってまちがってるのかなって」
穂乃果「どうなのかすら判断がつかない微妙な問題」
穂乃果「真姫ちゃんは穂乃果のこんな気分を晴らすことはできないんだね」
真姫「そうね」
穂乃果「でも真姫ちゃんに日頃穂乃果の感じてることを話せてよかったよ」
穂乃果「結局なんにも解決しなかったけどもう時間も遅いし一緒に帰ろうか?」
真姫「そうね」
真姫(結局私の目的である新曲の調節はできなかったけど)チラッ
穂乃果「♪」
真姫(穂乃果が幸せそうになったから良しとしましょう)
穂乃果「いろいろ聞いてくれてありがとう、真姫ちゃん!!」
おしまい
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