アルミン「僕たち、親友だよね?」(256)

これ需要あるかな?

現代パロディもの

104期生は高校生でクラスメイト。巨人とかいない。舞台は日本のどこか
話はちょいと暗め
endがまだ決まってないので、完結には少し時間がかかるかも

眩しい。
 
 カーテンの隙間から夕焼けが差し込んでいる。
 
 浅い眠りから覚めた僕は、ゆっくりと首をまわした。 

 ベッドの下に置かれている本。

 脱ぎ捨てたシャツや下着が目に飛び込んでくる。
 
 ここは僕の部屋。
 
 床に敷かれている布団に僕は横たわっていた。

 僕は裸のまま寝ていた。

 隣には、裸の少女が、小さな寝息を立てて眠っていた。思わず、白い肌に凝視してしまう。
 
 空気を吸い込むと、むせ返るような体臭が鼻を刺激した。
 
 そして、僕のベッドには。

エレン「ほら、さっさとイケよ。アニ」

アニ「ふっ、うっ…ああっ! 」

 僕の親友が、僕の彼女を犯していた。

エレン「おいおい、お前、感じ過ぎじゃねえか? 」

仰向けになったエレンに、アニが馬乗りになっている。

下半身は密着し、アニの裸体が僕には丸見えだった。

アニ「そ、そんなことっ……ああっ! 」


エレン「お前さ、分かってる?」

アニ「な、なにが…」

エレン「お前、彼氏が寝てる側で、元カレとセックスしてるんだぜ?」

アニは僕を凝視して、口を塞ぐ。

だが、エレンの執拗な攻めは止まらない。

アニの口から声が漏れ始める。

アニ「あんたが、誘ったからじゃないか……もとはと言えば、あんたが、アルミンの部屋で、クリスタとおっ始めるから……あんっ!」

エレン「なあんだ、聞こえないなぁ……アニ」

ここからエレンの顔は見えない。

けれど、悪戯めいた声色からエレンの表情は容易に想像がつく。

エレン「お前、正常位が好きだったよな。キスしながら、おっぱい揉まれながら、ガンガン突かれるのが」

そう言うと、エレンは下半身が結合したままアニを押し倒し、騎乗位から正常位にシフトする。

エレンはアニに覆い被さる。

ずるりと、布団とともにアニのパーカーが落ちた。

エレン「舌を出せ」

くちゅくちゅと音が聞こえる。

エレン「ーん、あっ……アルミンじゃ優しすぎて、感じられないんだろ? アニはマゾだからな」

エレン「今だけ互いのカレカノ忘れて、昔に戻ろうぜ?手探りでエッチしてたときにみたいな、ウブな気持ちでさ」


アニは、無言で受け入れる。

僕は一言も声が出せなかった。

再び、ベッドが激しく軋む。

エレン「俺はお前の可愛い声が好きなんだよ」




二人は深く息を吸っては止め、大きく吐き出し、腰を無心に降り続ける。

耳を塞ぎたくなる。

エレン「膣内に出すぜ」

アニ「あっ、あっ、あっ……え?ちょっと、待って!それだけは」

エレンはアニを強く抱きしめると、腰をアニの恥部に強く打ち付ける。

アニ「あっ!…んくっ!んああああっ!!」

エレンはペニスを引き抜くと、天井を向いて笑った。

エレン「あー、出た出た。久しぶりにこんなに出たぜ。アニのまんこは最高だ」

アニ「っ!」

エレン「痛っ!」

アニ「バカ!バカバカバカッ!」

エレン「い、痛っ!おいやめろバカ!お前の蹴りは洒落になんねえんだよ!」

アニ「バカはどっちだい!」

エレン「ったく……わぁーったよ。股開け、アニ。気が乗らねえけど、クンニのついで精子掻き出してやる」

アニ「止めろっ!」

アニは叫びに近い声で、一際強いキックをエレンにはなつ。

両腕でガードしたエレンは、

エレン「つまんねぇ……」

と舌打ちした。



エレンは裸のベッドから降りると、僕を跨いで、クリスタの頬を叩く。

寝ぼけたままのクリスタが瞼を開ける。

クリスタ「んー、おはよう、エレンー」

エレン「クリスタ、一緒に風呂入ろうぜ」

クリスタ「……んー、えー」

エレンはクリスタの手を強引に引っぱる。

エレン「アニ。アルミンが起きたら、風呂借りてるって言っておいてくれ」

二人は裸のまま、僕の部屋を出た。

どかん、と凄い勢いでドアに枕が投げつけられた。

アニ「あんのバカ……!こんなに出しやがって……!」

アニはパーカを羽織ると、ティッシュを手にとり、股間を一心に拭いている。


アルミン「アニ……」

僕の声に、アニはぎょっとする。

アニ「アルミン……起きてたの?」

アルミン「……うん、ついさっき」

アニ「アルミン、これは……」

僕は力無く笑った。

アルミン「エレンの誘い、断ればよかったね。乱交しようなんて、僕が馬鹿だったよ……」

アルミン「僕とアニ、エレンとクリスタが付き合ってて……四人とも仲の良い友達同士だからって……やっていいことと悪いことがある」

アルミン「ねえ、アニ」


アニ「……なんだい」




アルミン「僕たち、別れよう。限界だ」

アルミン「最近のエレンを見てたら、こうなるって、僕たち、わかってたのに」

アルミン「アニはさ、エレンがまだ好きなんでしょ?」

アルミン「変わってしまったエレンが心配で心配で……たまらないんだよね」

アニはうつむいたまま、何も言わなかった。

肯定だ。

二ヶ月だけど、アニは僕の彼女だった。

互いに初めてではなかったから、気兼ねなく体を重ねたことも多々ある。

別れ話を切り出したことに後悔は無い。

でも、ショックだ。

アニ「……アルミン、あんたも随分と変わったよ」

アニ「その聡明な頭を、悪いことにも使うようになった」

アニ「あんただろ?ユミルをはめたのは」

僕は答えなかった。

アニに話す気もなければ、義務も無い。

アルミン「エレンが、クリスタに気があるって言ったからね。手伝ってあげただけさ。まさかあんなことになるなんて思いもしなかったけど」

アルミン「でも、ユミルよりもエレンを選んだのは、クリスタだよ?」

アニ「……そうかい」

アニ「あんたは最後まで、心に壁を張っていた。私に、胸に潜む闇を打ち明けてほしかった」

アルミン「それはエレンに対しても同じことを思ってた……でしょ? 」

アニ「ったく。アルミンにはいつも敵わないね。おたくら、ホモかい?」

アルミン「親友だよ」

アニ「やり直せるさ。アルミンなら。私たちはまだ子供だ。……けど」


アニはカーテンの隙間から差し込む夕日を見つめながら、言った。



アニ「エレンは……もう駄目だね……」

いつ見ても思う。

憂いを帯びたアニの横顔は美しい。

だから僕は、彼女を好きになったのかもしれない。



アルミン「アニは……優しいね」

アニは何も答えてくれなかった。

アニは散らばった自分の服をかき集めて着直すと、髪をゴムでまとめあげる。

アニ「アルミン。明日からは、ただのクラスメイトだ」




着替えた僕とアニは部屋を出た。

階段を降りて、僕は洗面台に向かう。

アニが階段の途中でぴたりと足を止める。

僕も顔を洗いながら、耳に入ってくる嬌声を無視できなかった。
風呂場から、クリスタの喘ぎ声が聞こえてくる。

数時間前。

エレンは僕の部屋で、彼女であるクリスタを気絶させるまで、犯し抜いた。

僕もエレンとクリスタの行為を見ながら、彼女のアニとセックスを始めてしまった。

僕が寝静まった後、エレンはアニを抱き、再び、クリスタを抱いていた。

僕とアニは顔を見合わせる。

アニは心底付き合ってられないと言わんばかりの顔で「風呂は家で入るから」と言い、早々と玄関から出て行った。






玄関先で、学生服姿のクリスタがお辞儀する。

クリスタ「ごめんね、アルミン。お風呂まで借りちゃって」

アルミン「いいよ。別に。今日は親が居ないし」
僕は親友とその彼女を玄関で見送った。

冷房の効いた室内と違い、外は蒸し熱い。

エレン「邪魔したな」

エレンはしわだらけのシャツの襟を整え、鞄を肩に乗せる。

アルミン「ねぇ、エレン」

エレン「ん?」



アルミン「アニとは……別れたよ」



エレンは一瞬、大きく目を見開いた。

エレン「そうか」

と一言。

エレン「なら、次は誰が良い?」

アルミン「……は?」

エレン「3組のペトラ先輩とかどうだ?」

エレン「あの人、リヴァイ先輩に一途すぎてまだ処女だぜ?ちょと落として、磨いたら良い女になりそうだろ?クリスタの時の貸しがあるからな。今度は俺がお膳立てしてやるよ」

強がりじゃない。

エレンは本気で言っている。

聞いてられなかった僕は思わず声を上げてしまった。

アルミン「エレンっ!」

僕の大声に、クリスタの肩がびくりと震える。

アルミン「もうこれ以上、やめよう!他の人だけじゃない。自分自身を苦しめるだけだ!」

アルミン「僕たちがどんなに賢くなっても、どんなに強くなっても、もうミカサはっ……」





僕の言葉はそこで止まった。


アルミン「……がっ!」


エレンの太い腕が、僕の喉を掴んでいた。

ぎりぎりと、締まる。

太い腕力と凄まじい握力だった。

高校だけではなく、この近辺で、喧嘩に関してエレンの右に出る者はいなかった。

小学生のときから、アニの実家であるキックボクシングジムに通っていたエレンは、高度な格闘術を身につけていた。

クリスタに近づいた不良たちを一人で半殺しにした経験もあるほどだ。

エレン「……なあ、アルミン。それだけは言わない約束だろ」

僕の親友は優しい声で問いかける。

でも、目は笑っていなかった。

息が苦しくなり、意識が朦朧とし始めていた。


クリスタ「二人とも!どうしたの!?」


女神のおかげで、エレンの腕から僕は解放される。

エレンは何事も無かったように、彼氏の顔でクリスタに声をかける。

エレン「アルミン、アニと別れたんだと」


クリスタ「え、ええっ!?だ、だって、さっきまで」

その切り替えの早さに、僕は寒気がした。


エレンはクリスタの華奢な体に寄りかかる。

エレン「今日、クリスタの家に泊まってもいいか?」

エレン「クリスタの手料理が食べたくなった。もちろん、一番食いたいのはクリスタだけどな」

玄関前で、深い口づけを交わすエレンとクリスタ。

クリスタ「んっ……ふぅ。ちょ、ちょっと。家まで待っててよエレン――っ……」

エレンの手はスカートをめくり上げ、パンツの中に侵入していた。

僕は目眩を覚えた。


アニの言う通りかもしれない。



もう、エレンは……





変わってしまったんだ。

バイトに遅れるんで、ここで一旦きります
続きは今日の深夜から


あんまり重い展開にはしないつもりです
ちょいと生々しいかもしれませんが

朝っぱらからすげえ爛れてるけど面白い
あとここは速報と違って文字が変換されたりはしないからsagaはいらないよ

ただいま

NTRは無い?と思う

ちょっと更新が遅いかもしれないけどご容赦を

>>24
ご指摘ありがとうございます

ーーー
ーー




私立双剣高等学校。
 
山の麓に建てられた中高一貫校の学び舎で、バスで約30分の距離。
 
地元では偏差値の高い部類に入る学校だった。

僕は中学一年からこの双剣に入り、今年で高校二年生になる。

ミーナ「ねえねえ、アルミン」

自分の席で本を読んでいる僕に、クラスメイトのミーナ・カロライナがノートを持って近づいてきた。

ミーナ「ここ教えてくれる?今日の数学の授業で当てられそうなんだ」

僕はミーナのノートを見ると、要点を絞った解説を口頭で加えた。

ミーナ「ありがとう、アルミン。流石はトップね」

アルミン「あはは、どうも」

時間は午前8時を過ぎたあたり。

運動部の生徒たちが朝練を終える時間帯でもあり、教室は徐々に騒がしくなる。

僕は教室の前方を眺めた。

アニは涼しい顔で最前列の席で頬杖をついている。

昨日の日曜日に、アニと別れてから声がかけづらい。

あれから携帯で連絡もしていなかった。



恋愛は勉強と同じで日々の積み重ねが大事だ。

どんなに落ち込んでも、こまかなやりとりを疎かにしてはいけないことは十分に分かっていたはずだった。

僕は自分が思っていた以上に、アニが好きだったようだ。

ふと、振り向いたアニと一瞬目が合う。

思わず、僕は目を伏せてしまう。

小さくため息をついたアニが席を立ったときだった。

一人の生徒が教室に入ってきた。

教室の騒めきが、すこし静かになった。

エレン「よう」

僕の親友が登校してきた。

僕は笑顔で答える。

アルミン「おはよう」

でも、誰もエレンに挨拶しない。

驚くことは無かった。

これが、見慣れた教室の光景だった。

エレン「……なんだよ、ミーナ」

ミーナの態度は僕のときと違って一変していた。

エレンを強い眼差しで睨みつけている。

ミーナ「その頬の傷、また、どこかで喧嘩でもやったんじゃない?」

エレンはぷっと吹き出した。

エレン「ヤッてる最中に引っ掻かれただけだよ」

その言葉に、ミーナの顔がみるみるうちに真っ赤になった。

ミーナ「……最低っ!」

と吐き捨てると、席に戻った。

僕が親友の下品な言動に謝ったが、

ミーナ「なんでアルミンが謝るの?いくら幼馴染みといってもね。限度があるわ。親友との付き合い方、考えた方が良いわよ」

と突っぱねられた。

今日、エレンはクリスタの家から登校している。

おそらく学校に来るまで、いちゃついていたのだろう。

時間ギリギリに入室したクリスタは、化粧室で顔を直してきたみたいだった。

エレンとクリスタの交際を知っているのは、僕とアニだけだ。



朝のホームルームが始まり、キース先生が教壇に立つ。

エレンは欠伸をしながら、机に突っ伏す。

誰も咎める者はいなかった。

1限目が始まる数分の時間に、ジャンがエレンの机に腰掛けた。

ジャン「学校一の不良が遅刻せずに来るなんてな。今日は雨でも降るんじゃねえか」

本音を堂々と言うジャンの存在は、いつも鬱陶しく感じられるが、時には、皆の代弁者として救われることもある。

クラスメイトの意識はジャンとエレンの二人の会話に向けられている。


しまった、僕は内心焦っていた。

眉間に青筋を立て、エレンはジャンを睨みつける。

ジャン「おいおい。人を殺しそうな目つきで睨むなよ」

エレン「……言いてぇことがあるなら、さっさと言えよ」




ジャン「さっさとこの教室から失せろ。テメェがいるだけで空気が淀むんだよ」



売られた喧嘩を買ったエレンの行動は早かった。


立ち上がったエレンは、強烈な右ストレートをジャンの鳩尾に突き刺した。

エレン「また失禁するまで殴られたいか?馬面野郎」



ジャン「……うごっ!」



エレン「女も抱いたことも無いクソ童貞野郎が、いっぱしのこと語ってんじゃねえぞ」

エレンは獰猛な笑みを浮かべ、膝をついたジャンを見下していた。

エレン「力も頭も顔も女も……すべて俺に負けた。勝ってるところと言えば、その生意気な口ぐらいか?」

ジャンは答えない。

答えられなかった。

口の端から泡が漏れているジャンは腹を抑えて、うずくまっていたのだ。

数人の女子生徒が男子の喧嘩を見て、小さな悲鳴をあげる。

ミーナは教室を出て、先生を呼びに行った。

エレンはジャンの頭部を狙って、容赦なく右足を振り上げる。

アルミン(マズい――!)

トドメをさすつもりだ。

僕は席を立ち上がった。



ライナー「おい、そこまでにしておけよ。エレン」



屈強な体を持つクラスメイト、ライナー・ブラウンが二人の仲裁に入る。

腕を掴まれたエレンは、ライナーを一瞥すると、舌打ちした。

僕は胸に穴が空くような、悲しい気持ちになる。


中学の頃、エレンとライナーは兄弟のように仲が良かったのに――


エレン「そういや、ライナー。お前よぉ…確か」

エレンは卑しい笑みを口元にニヤニヤと浮かべ、クリスタに意味有りげな視線を送った。

クリスタは、はっとした表情になって、小さく頷いた。

アルミン(――もしかして!)

ライナーは、学園一の美少女であるクリスタに恋慕していることは周知の事実。

エレンがやろうとしていることに、僕は気付いてしまった。

背筋に寒気が走る。

今のクリスタは、エレンに犬のように従順だ。


クリスタが戸惑うような目をして、頬を染め、席をゆっくり立つのを見て、僕は叫んだ。

アルミン「やめろよエレン!」

クラスメイトたちの視線が一斉に僕に集まった。

だが、そんなことはどうでもいい。

アルミン「これ以上はやめるんだ!エレン!次は停学じゃ済まないよ!」

エレンは僕を睨んだ。

だが、すぐ笑顔になって。



エレン「わかった。アルミンがいうなら、止めるよ」



エレンはクリスタに目配せすると、彼女を席に戻らせた。

最悪の事態は避けられた。

エレンは、ライナーの目の前で、クリスタとのディープキスを見せつけるつもりだった。

校内で、どこでもセックスをしている二人だ。

もしかしたら、それ以上のことを皆の前でやってしまうかもしれなかった。

エレンは自分の席から鞄を取り上げると、

エレン「……あーあ、なんか白けちまった。キース先生には早退したって誰か言っておいてくれよ。じゃあな」

手を振って、堂々と学校をサボってしまった。

エレンが教室を出た後。

腹をおさえているジャンを、友人のマルコが介抱している。

近くにいる女子がジャンに気にかけないのは、彼に対する人望の現れでもあるだろう。

ベルトルト「人って変わってしまうんだね。正義感が人一倍強かったエレンがあんな……」

ライナー「エレンの後を追うのはよせ。ベルトルト」

ベルトルト「ライナー……」

ライナー「あいつは強いヤツだ。また、立ち直れるはずだ」

ベルトルト「でも……」

ライナー「今は待つしか無い。大切な人を喪う苦しみは……俺たちも知っている」

ライナーとベルトルトはそれ以上何も言わず、席に着いた。


マルコ「ジャ、ジャン!駄目だよ!うわっ!」

ジャン「くそっ…くそがっ!」

嘔吐をこらえているジャンは、床に拳を何度も叩き付けていた。

ーーー
ーー



中学の頃。

エレンはクラスの中心的人物だった。

思慮足らずで喧嘩っ早いところもあったけど、率直な意見や、まっ

すぐすぎる情熱は、皆の心を動かす原動力になっていた。




しかし、今は、学校きっての問題児。

喧嘩の実力は学校一。

ラグビー部キャプテンのライナーですら手が付けらない。

成績は、僕に次いで学年2位の優等生。

エレンは、学校で最も扱いに困る問題児に成り果てていた。

僕は、教室の隅に位置する机を見た。


机には、花が添えられている。








ミカサは、死んだ。



不幸な、交通事故だった。

そして、僕とエレンは、






ミカサを死に追いやった者たちを、皆殺しにしたのだ――

今日の更新、ここまで
ラストは決まりました
明日は書き溜めて、一気に完結するまで投稿する予定です

すまん
終電逃して今帰宅した
投稿再開する

それともうひとつ謝ることがある

今日中に終わらない。書いてるうちに、話が長くなった。ごめんなさい

ーーー
ーー





世界は残酷だ。

 
そんなこと、前からわかりきっていた。




だが、わかっていたつもりになっていただけだった。

 


世界が残酷なことを身に沁みて理解したのは、ほんの一年前だった。

ーーー
ーー



 学校を抜け出した俺は、定期券を使ってバスに乗り、遊び場が多い都会に出向く。


 俺はバスを降りて、駅前の交番の前を素通りしていく。


 平日の昼間から学生服姿のガキが遊び回っていても、警察はバンカケしない。


 そんな学生はどこにでもいるからだ。


 真面目に学校に通っている学生から見れば、昼から遊んでいるガキは皆不良に見えるかもしれないが、その大多数は不良でも何でもない。

 
 勉強の競争社会に早々に見切りをつけて、高い意識を持って、役者や歌手を目指して積極的に活動しているやつらもいる。 


 中には、不良漫画のテンプレみたいに援交や万引きなど、犯罪に手を染めている不良もいることはいるが、それは本当にごく一部だ。


 大半のやつらはそんな度胸も頭も無い。


 やつらは、ただ単に、仲間とつるんでカラオケ行ったりして時間を潰したほうが、学校で寝て過ごすより、よっぽど有意義だと思っているだけだ。

俺はカラオケがあまり好きじゃなかった。

昔から、考えるより体を動かすほうが好きだ。
 
俺が通っているジムは夕方から開く。

双剣学園に入学し、中学受験で鈍った体を鍛え直すため、ジムに入ったのがきっかけだった。

今年で四年目になる。

実際、学校より真面目に通っていた。

アニの両親はそのジムの経営者で、同級生で、かつ、元カノのアニとはそこで知り合った。

中学の頃は格闘技の初心者だった俺も、今ではジュニア大会の出場条件も満たし、ジムでも指折りの実力者だ。

体力には自信がある。

俺は時間潰しに、午前中から空いているバッティングセンターに向かった。

野球の素人も一年打てばそれなりの腕はつく。

5ゲーム中、すなわち125球中、一回はホームランが出るようになった俺は、タダ券を使用してバッティングがプレイできる。

医者の息子だが、お小遣いは並の高校生と変わらない。

いかに安く遊ぶことが出来るか、高校生なら誰もが直面する悩みだろう。

いい汗を流した後、うんざりした顔のカウンターのおっちゃんから、ホームラン景品のタダ券をもらうと、俺はバッティングセンターを出た。

時間は、昼を過ぎていた。


リーマン相手に販売されている売店で、300円弁当を買う。

コンビニ弁当より安くて旨くて、栄養バランスもいい。

昼飯をファーストフードで500円以上も使う高校生を俺は理解できなかった。



公園で食べていると、いちゃついている不細工な学生のカップルが目についた。

その光景は、前にクラスが一緒だったハンナとフランツを思い起こさせる。


視線を外して食事に熱中していると、


エレン「……ん?」


このあたりでは見かけない人物を見つけた。

俺は無意識に、邪悪な笑みを浮かべていた。


バカップルの行為を見せつけられて丁度ムラムラしてきたところだ。


携帯を操作する。

授業は午後まであるが、関係ない。





あいつは俺の犬だ。



何があっても、必ず来る。


プラスチックの弁当箱をゴミ箱に捨て、ペットボトルのアクエリを飲み干すと、俺はそいつの後をつけていった。

ゲームセンター。


実は、昼時にサボり学生はあまりいない。

ゲーセンは最近規制が厳しく、学生服姿だと補導されることが多いからだ。

だから、昼間からゲーセンにくるときは私服が暗黙のルール。



俺は更衣室で学生服からプリントシャツとハーフパンツに着替える。

こういうとき、学生靴が革靴でなくて白いシューズで本当に助かった。

革靴じゃあ、ダサすぎるだろう?




俺は、パンチングマシーンに夢中になっているクラスメイトに声をかけた。


エレン「よお。こんなとこでなにしてんだ?」

黒のプリントシャツをラフに着こなしたクラスメイトは、驚いた顔で俺を見た。


エレン「よう、ユミル」


ユミル「……テメエ。なんでこんなところに」


エレン「不登校気味の同級生を心配することが、なにかいけないんですかぁ?」



ユミル「……っ!」



ドシンッ!とパンチングマシンが揺れた。


素人のくせに、構えがしっかりしてる。

ユミルはデイリーの最高得点を叩き出した。

俺は乾いた拍手を送る。

ユミルはグローブを投げ捨てるように外した。


ユミル「何のようだ……チーハン野郎」


エレン「くっははは。なつかしいな、そのあだ名。お前と一緒でサボリだよバカ」

ユミル「……そうかよ」

ユミルは俺を無視して通り過ぎようとする。

エレン「おい待てよ。冷てえな」

腕を掴んだが、乱暴に振りほどかれた。

ユミル「触んな」

敵意を向けられるが、俺はちっとも怖くもない。

エレン「おいおい。ストレスはお肌に大敵だぜ。そばかすが増えてますますブスになっちまうぞ?」

ガンッ!と、ユミルは近くにあったゲーム機を蹴飛ばした。

大きな音に、数人の客が俺たちに振り返る。

目を血走らせたユミルが俺の胸ぐらをつかんだ。

ユミル「おい、テメェ殴られてえか?あアッ!」

殴られそうになっても、俺は笑いが止まらなかった。


ユミルは、俺を殴ることが絶対に出来ない。


こいつは、顔や態度とは裏腹に、感情をよく制御できていて、常識というものがよくわかっている。


くっははは。


ほらな。


だから、お前は殴れない。


ユミルの表情が怒りから絶望へと変わる瞬間を、俺は間近で見ることができた。




クリスタ「ユ、ミル……?」



ユミル「ク、クリスタ……!」

ユミルは俺から手を離すと、あからさまに狼狽した。

クリスタ「ユミル……ひさしぶり」

ユミル「ああ……久しぶりだな、クリスタ」

二人の様子を俺は黙って眺めていた。

ユミル「元気に……してたか?それより、クリスタはどうしてここにいるんだよ?まだ、学校のはず、だろ?も、もしかして私に会いにきた……とか?」


だんだん笑顔を滲ませるユミルを見て、黒い感情が胸の内からどっと噴き出す。


俺はクリスタの小さな肩を抱き寄せると、


エレン「何言ってんだよ。ユミル」


クリスタの柔らかい唇を強引に奪った。

クリスタ「んぅ……!」


ユミル「なっ……!」


言葉を失ったユミルを無視して、俺は舌をクリスタの口内にねじ込んだ。

最初は戸惑っていたクリスタだったが、俺の熱い口づけを受け入れ、舌を絡ませてきた。

流石は俺の犬だ。



エレン「んっ……」


クリスタ「むふっ……れあ……あ、ん」



ディープキスに満足した俺は、唾液をクリスタに飲ませ、ゆっくりと唇を離した。

エレン「俺ら、付き合ってるんだ。もちろん、知ってるよな?俺たちが付き合うきっかけを作ってくれたのは、お前じゃないか」

俺は口端を吊り上げ、皮肉たっぷりに言ってやった。

ユミルは顔面から血の気が引いている。


噛んでいる下唇が、わずかに震えていた。

エレン「おい。なんとか言えよ。ユミル。祝福の言葉ひとつくらいいいだろうがよ」

ユミルは両手の拳を握りしめ、うつむく。

ユミルは必死に怒りを堪えている。



だが、そんな反応は予想通りすぎてつまらなかった。


だから、俺は犬に命令した。

エレン「おい、クリスタ。パンツ脱げよ」





クリスタ「……え?」

ユミル「……は?エレン。お前、今なんつった?」

エレン「テメェじゃねえよ。クリスタだよ」

クリスタ「え?…え、え?」

エレン「聞き間違いじゃないぜ?パンツを脱げ」

翡翠のように輝く瞳が、恐怖と羞恥に揺れている。


クリスタ「え?…へ?……こ、こで?」


エレン「ああ、今ここでだ」


ユミル「お、お前……クリスタに、何を…させる気だよ?」



俺は再び『命令』した。

エレン「今ここで、脱げ」



エレン「もしかして……俺の言うことが聞けねえのか?」


俺が睨むと、クリスタは怯えた表情で、周囲を確認した後、こくんと頷く。



ユミル「お、おい……やめろよ」



クリスタはユミルも静止も聞かず、するすると、白いショーツを下ろす。


クリスタ「……きゃっ!」


脱いでいる途中、ショーツが革靴に引っかかり、クリスタは転んでしまった。

ユミルと俺には、はっきりと見えた。


スカートがめくれ、クリスタの恥部が眼前に晒されたのだ。

しゃがみ込んでしまったクリスタを尻目に、俺はショーツを拾い上げた。

いつも履いているモノだった。

鼻を近づける。

ツンとしたアンモニアの臭いが、ほのかにする。



ユミル「クリ、スタ……お前……」



クリスタは学校でSNSを確認して、30度を超える熱い外を走ってここまで来たのだ。


ショーツは汗でぐっしょりと湿っていた。


それを、ユミルの手元に放り投げてやる。


俺は鼻歌とともに言ってやる。



エレン「ハッピーバースデー、ユミル♪」

これがプレゼントだ。

今日はユミルの誕生日でも何でも無い。

ただ、ノリで言ってみただけだ。

最近、英語の通信教育にハマっていたので、ネイティブ風な発音で言ってみたくなったのだ。

Attack on Titan

みたいに

Happy Birthday!とな


ユミルはショーツを握りしめたまま、呆然と立ち尽くしていた。


俺はクリスタの手を引き、



エレン「これで『あのとき』のことは、チャラにしてやるよ。じゃあな」



と言い捨て、ユミルの前から立ち去った。

今日はここまで
更新遅れてごめんなさい

今日は時間があるので、今日の深夜はもう少し進められるかも


この作品には元ネタがあります
海外の小説
知ってる人、いるかな?

ガチクズエレンに胸くそ悪い思いをしている人もいるかもしれませんが、そこはご容赦を
ちゃんと理由はあるので

大変遅れてすみません!
リアルのほうで時間を取られてました(コミケじゃないよ)
今から続きを投下します!

俺はクリスタとともにプリクラに入る。

クリスタ「や、やめてよ。エレン……」

ほんの悪戯のつもりだったが、抑えようの無いくらい、欲望が高まっているのを感じていた。

プリクラに金を投入し、数々のフォントやアクセサリーを適当に選んだ。

俺はパンツのファスナーを下ろし、いきり勃った肉棒を露出させた。

驚くクリスタ。

クリスタ「えっ!……あっ!んっ、ふぅ!」

キスをしながら、俺はクリスタの小さなクリトリスをいじった。

体は嘘をつけない。

恐怖感や緊張感で男の性器が縮むように、女の性器も固く引き締まる。

公然の場で性器を晒したクリスタは極度に怯えていた。

幸い、目撃者はいなかったが、クリスタのことだ。

クリスタの魔性に惹かれて、ウジムシのように沸き上がる男はどこにでも発生する。

そして、その魔性にやられているのは、そのウジムシたちだけじゃなかった。

俺はクリスタの両足を開脚させ、小さな体を軽々と持ち上げる。

クリスタ「やめて、エレン……」

画面には、股を大きく開き、金色の陰毛が生え揃った恥部が映し出されている。

シャッターのカウントダウンが始まった。

俺は汗にまみれたクリスタのうなじに舌を這わせた。

エレン「エロい声だしやがってよ。3、2、1…ほらっ!」

シャッター音が鳴る。

同時に、ペニスを挿入した。

クリスタ「うあっ…あああっ!」

クリスタの体が弓なりに反り返り、俺は腰を突き上げていく。

甘い声を塞ぐため、唇を重ねる。

舌を締め付け、強く吸い上げ、くすぐってやる。さらに、上口蓋や、歯の裏、頬の裏まで。

懸命に痛みに耐えている様子がいじらしい。

エレン「可愛いよ。俺のクリスタ」

耳元で愛を囁いてやると、急に、膣内の摩擦係数が少なくなった。

クリスタが愛液を分泌し始めたのだ。

苦痛と屈従の後には、必ず最上の快感が得られる。

エレン「そんなに悲しむなよ。クリスタ。パンツは俺があとで買ってやるからさ。今は楽しもうぜ」

調教してきた甲斐があった。

自分自分の手で女が劇的に変わっていくのを見ることこそ、恋愛の醍醐味だろう。

そう実感できる瞬間だった。

さらに深く突き入れてやる。

クリスタはまるで電流に打たれたようにのけぞった。

必死になって保っていた思考能力は、どこかへ消し飛んでしまっていた。

壁に手をやり、後背位からピストン運動に回転を加えながら、愛犬にするように、クリスタの頭を優しく撫でてやる。

クリスタ「あっあっあっ……いっ、いく」

エレン「今日は確か、安全な日だったよな?」

エレンが何をするかに気付き、クリスタが「だ、だめっ!」と叫んだときには、エレンは獣のように激しく動いて、クリスタの膣内に射精していた。





いつの間にか、プリクラの撮影は終了していた。

どれもクリスタの裸体が丸見えで、他人に見せる機会は無さそうな画像ばかり。

セックスで額に滲んだ汗を手で拭い、プリクラを出ると、

エレン「……なんだ、まだいたのか」

うんざり顔で、俺はユミルの硬直した顔を見返す。

狂気を孕んだ瞳。

だが、皮膚は毛穴が開いて土気色で、エネルギーを使い果たしたように、身体全体が萎んで見える。

ユミルは俺を睨みつつも、反抗の意思はすでに失せていることを知った。

俺が通り過ぎようとした途端、ユミルは膝をつき、頭を床につけた。

ユミル「頼む……!」

周囲がぎょっとした。

ユミル「クリスタをこれ以上、傷つけないでくれ!」

着替え終えて出てきたクリスタも、ユミルを見て、目を丸くしている。

ユミル「一年前、私は取り返しのつかないことをした。いくら誤っても謝りきれるもんじゃねえことはわかってる。けど、お願いだ。私はどうなってもいい。だから、クリスタだけは……っ!」

クリスタ「ユ、ユミル。お願い……やめて」

ユミル「クリスタ。もうこんなことはやめてくれ。お前が罪悪感を感じる必要は無いんだ。だから……」

クリスタ「……っ。私は、大丈夫、だから……」

ユミル「クリ、スタ……」

エレン「……付き合ってられねぇ。行くぞ、クリスタ」

ユミル「ま、待ってくれ!エレン!」

ユミルは懇願するような弱々しい声で、俺の左足にしがみつく。

バランスを失った俺は、体勢を崩した。

そして、



ガツッ!



「いってーッ!」

不良の頭に、バッグを振り下ろしてしまった。

直撃した金髪の男が頭をかかえてうずくまる。

タンクトップを着たスキンヘッドの男が、俺にくってかかった。

「なにしてんだよこのクソガキ」

「……すいません」

これは、俺に非があった。だから素直に謝ることにした。

「なんだその小さい声は。誠意が足りてねえぞ」

もう一人の柄シャツを着た男が、俺の背後から迫る。

エレン「……どうすれば、許してくれるんですか?」

二人の男は敵意を剥き出しにし、俺を取り囲むように、ぐるりと回る。

「それくらいテメェの頭で考えたらどうですか?あ?お前、もしかしてぶっ殺されたいの?」

臭い息を吐きかけてきた。

これは面倒なことになった。

ユミルとクリスタに、目配せする。

エレン「僕は逃げませんので、とりあえず、話はゲーセンの外でしましょうか?」

と、出来る限り丁寧な言葉で、不良三人を誘導することに成功した。





電車が走行する音が、定期的に聞こえてくる。太陽は、じりじりとアスファルトを焼き、蝉の声が響き渡っていた。

「いっ……ひっ!」

金髪の男は、右腕があらぬ方向に曲がっていた。

「ぐ……ぶぐぅ…ごぼっ!」

スキンヘッドの男は、仰向けに血を吐いて倒れている。

「やめて、やめてくれ」

柄シャツには、血と汗がぽたぽたと付着していた。

不良の喉元には、万能ナイフが迫っていた。

エレンの持ち物ではない。

不良が所持している凶器であり、エレンの腕力によって、柄を握りしめている両手が押し返されていたのだ。

エレン「お前さぁ……」

キズ一つないエレンは、冷たい目で反問した。

エレン「ぶっ殺すって言ったよな?お前、人殺したことあんの?」

「ひっ!ひっ…ひっ……」

淡々と、鋭利な刃が首に近づいていく。

エレン「ナイフを持ってるテメェの姿は俺が携帯におさめた。警察に訴えたら、お前らのほうが終わりだ」

スキンヘッドの男に対しては、喉を蹴り潰しただけではなく、鼻と歯をへし折ってしまった。

実際は正当防衛ではなく、過剰防衛と取られてしまう可能性があったが、法律に疎そうな馬鹿で助かったと、エレンは内心でほくそ笑む。

大抵の不良は弱い。

運動部に所属して、日々体を鍛えている学生のほうが、喧嘩は、はるかに強いのだ。

見た目だけの不良は、格闘技を嗜んでいるエレンの敵ではなかった。
エレンは左フックで不良の顎(チン)を強打する。

不良はがくりと頭を下げ、気を失った。

ナイフを拾い上げ、遠くに投げ捨てる。

一方的な暴行。

もはや、喧嘩ですらなかった。

後ろで見守っていたユミルとクリスタに近づく。

エレン「てめぇのせいで、余計なことしちまっただろうが」

擦り剥けた手の甲に、エレンは唾を付ける。

ユミル「……私は、何をすればいい」

クリスタが持っていた俺の鞄からタオルを取り出し、額の汗を拭き取る。

見回すと、ある建物が目に入った。

エレン「じゃあ、お前の奢りで休憩でもしようぜ。俺もクリスタも、汗かいちまったしな」

俺が指差した方向を見て、ユミルは愕然とした。



エレン「クリスタのためなら、何でも出来るんだろ?」



本能を刺激されるような暴力の後には、必ず強い性欲が湧き出てくるものだ。

新たな雌の味に舌鼓を打ちながら、俺は下卑た笑みを浮かべた。


ーーー
ーー





初恋だった。

けれど、僕はこの恋が実ってほしいとは思わなかった。

だって、彼女には好きな人がいた。

彼女が大好きな人は、僕が大好きな親友でもあった。

だから、僕は恋心をひた隠しにしていた。

大好きな二人を近くで見つめていた。

二人は、互いに強く想い合っていた。

僕が入る隙は最初から無かった。

近くて、遠い心の距離。

でも、それは彼女にとっても、そうだったし、僕の親友にとってもそうだった。

二人の関係はちょっと特殊だったから。

初恋の人と僕の親友の、甘酸っぱい恋を、僕は影から応援していた。

僕はそれだけで満足していた。

充実していた。

それが、僕にとって、ありふれた日常で。

かけがえの無い日々だったから。



ーーー
ーー






ふと、目が覚める。

懐かしい夢を見た。

勉強の途中で眠りこけてしまった僕は、机で寝てしまっていたようだ。

教科書のうえに、ぽつぽつと水滴の痕がある。

僕は泣いてしまったのだろうか。

アルミン「……はは、僕は、なんて女々しいんだろう」

あの日々は、もう戻ってこないんだ。

そう思うと、涙腺が緩みかけた。

部屋は真っ暗。

照明をつけると、同時に、充電していた携帯が震えた。

表示された名前を見て、少し躊躇ったが、数コール後に、着信ボタンをタッチする。

アルミン「……もしもし。アニ」

アニ『もしもし、アルミンかい?エレンが来ない』

アルミン「は?」

アニ「あいつ、何があってもジムには必ず定刻通りに来るんだ。なのに、今日は連絡すら無い」

学校をサボることはあっても、エレンがジムをサボったことは無かったはずだ。

SNSで早速メッセージを送ってみたが、当然のごとく、返信は無い。

アニとエレンの居場所を話し合っていると、

アルミン「僕たち、やり直せるかな?」

つい、こんなことを言ってしまった。

アニ『それは、私とアンタの関係?それとも、エレンのこと?』

アルミン「全部だよ」

アニ『またあの話を蒸し返す気?無理だね』

アニ『覆水は盆に返らず。ってやつだ。ミカサは死んだ。エレンは変わった。アンタも変わった……そして』

アルミン「アニも変わった、でしょ?」

アニ『……よくわかったね。私の言いたいこと』

アルミン「元恋人だからね」

アニ『そうだったね』

アルミン「話はそれだけ、じゃ無いよね?」

アニ『……まったく。アンタに敵わないよ』

電話の向こうで、苦笑しているアニの表情が頭に浮かぶ。

だからこそ、次の言葉も容易に想像できた。

アニ『教えないよ。そんな気分じゃなくなった』

アルミン「あはは、残念だな」

アニ『アルミン。ひとつ忠告しておいてあげる。アンタの聡明すぎる頭脳は、あまりひけらかさないほうがいい』

アルミン「うん。わかった。ありがとう、アニ。じゃあ僕もアニに忠告するよ」

アニ『……なんだい?』

アルミン「エレンにあまり体を許さない方がいいよ」

これは嫉妬だ。

僕はアニの恋慕を断ち切ろうと思った。

アニ『……』

アルミン「最近のエレン、クリスタを弄んで色々と変な遊びを覚えてるんだ。クリスタの疲れようを見ると、僕にも想像つかないことをやってる可能性がある。だから……」

ぶつり、と電話は切られてしまった。

ーーー
ーー





双剣学園の中等部、3-1教室は、いつも賑やかだった。

学生には期末テストが返却され、室内は奇妙な盛り上がりを見せていた。

その中でも、特に騒がしい生徒たちがいる。

いつも僕たちは騒がしかった。

エレン「ちっくしょー!」

親友が机で頭を抱えている。

ミカサ「20点差。私の勝ち」

赤いマフラーを巻いた幼馴染みの同級生が、エレンに抑揚の無い声で言った。

ジャン「なんでテメェが俺より成績良いんだよ!」

エレン「うるせぇジャン!俺はこんなところでつまずいてられねぇんだよ!俺は医学部に入って、医者になって、父さんの後を継がなくちゃならないんだ!」

ジャン「んだとコラ!俺は路傍の石かコラ!」

サシャ「言い得て妙ですね。その例え」モグモグ

ジャン「万年赤点のてめぇこそちっとは危機感持ちやがれ!つか、授業中に普通にあんぱん食ってんじゃねえぞ!」

コニー「おいサシャ!それ俺の昼飯だっつーの!」

ユミル「ちっ……数学で大問一題まるまる落としちまったぜ」

クリスタ「ユミルにしては珍しいね」

ベルトルト「と言っても、ユミルは平均点大幅に上回ってるだろう?」

ライナー「おいアニ、お前の答案見せろよ」

アニ「……蹴られたいの?」

中学で出会った僕たちはすぐに意気投合し、その友情は今でも続いている。

まるで前世で何かしらの因果があったように、僕たちの結びつきは堅く強かった。

総合成績の1位は僕。

2位はミカサ。

3位はマルコ。

そして、エレンは5位。

12教科1200点満点中、数点差でジャンは6位だ。

ちなみに、入学以来、僕たちが成績上位を独占していた。時間が立つに連れ、順位の変動は少なくなってくる。

僕が1位で、次席のミカサは固定。

入学当初、補欠合格だったエレンは中の下の成績だったが、徐々に成績を伸ばし、今では上位10番以内の常連となっていた。





双剣学園に入学してすぐ、エレンの母親、カルラさんは病死した。

エレンとは幼稚園から一緒だった僕も、よくお世話になった。

カルラさんは、ミカサが尊敬する人でもあった。

顔がエレンに似て、優しいお母さんだったが、元々体の弱い人だった。

死に間際。カルラさんに、父グリシャが経営する病院の後を継いで欲しいとエレンは頼まれたらしい。

それからエレンは、勉強に必死に打ち込むようになったのだ。

後日、恥もプライドも捨てて僕に頭を下げてきた幼馴染みに、僕は惜しげも無く、勉強のノウハウを教えた。




これは持論だが、勉強にはロジックがある。

成績を伸ばすためには、まず、勉強に対する興味や意欲が必要不可欠だ。

人一倍思い込みが激しいエレンは、高い目的意識を獲得したことで、これをまずクリアしていた。

あとは、無駄な勉強に力を入れないように、僕が修正してやればいいだけだった。

勉強は基礎さえしっかり学んでいれば、偏差値50以上、つまり、上位に食い込むことができる。

基礎とは教科書。

参考書はまったくもって不要だ。

教科書の内容を正確に頭に叩き込むこと。

ほぼ丸暗記するまで覚え込むのだ。

短期間で全教科は不可能なので、とりあえず、興味のある科目だけを重点的にやり、他の教科は一切無視し、取り組むように指示した。

一ヶ月後。

期末テストでは、興味のあった科目は満点で、他の教科は赤点ギリギリと両極端の点数を取った。

総合成績は中の下。

結果は前よりも下がってしまった。

だが、エレンは僕に不平不満を言わなかった。

むしろ、感謝してくれた。

僕が教えたかったことは、時間をかければ、低い点数は簡単に上がるということだ。

ラピッド・ラーニング。集中力が高い人は、まんべんなく物事をこなすよりも、一点集中型のほうが効果がある。

猪突猛進型のエレンにはもってこいの勉強法だった。

また、エレンに、やればできるという自信を僕は持たせたかったのだ。

一教科でもいい。

学内で一番になる教科を持つと、自信がわく。

一番になった自信や快感を知り得ると、また一番を取りたくなる。

一番を取り続けると、他の教科も一番に出来ないかと欲が湧いてくる。

その過程で得たノウハウを他の教科に応用できないかと頭をひねり出す。

自発的に、ストレスもなく勉強が出来るようになると、あとは放っておくだけで成績は上がっていくのだ。

国語の読解能力は、数学の文章問題に応用が利く。

数学の合理的思考は、数学の元となる物理に応用が利く。

そうやって、あらゆる教科で得たノウハウが補完的に、また、強化し合い、知識が多角的に結びついていく。





ある有名な講師が、ユニークなことを言っていた。


偏差値とは、ゲームのレベルに似ている、と。

レベル5からレベル6に上げるとき、経験値は100でいいとする。

しかし、レベル6からレベル7に上げるときは、経験値は100では足りない。

レベル50からレベル51に上げるとなると、それこそ膨大な経験値が必要になってくる。

つまりはこういうことだ。

偏差値40と41の差と、70と71の差は、はるかに違うものだと。

偏差値50以下の学生はそもそも勉強さえしていないので、基礎さえ身につければ、簡単に追い抜くことが出来る。

しかし、偏差値60、70になってくると話は別だ。

ライバルの勉強量は、偏差値50以下の人間よりはるかに勝っている。

それを追い抜くためにさらに勉強をしても、伸びは最初と比べ、数字に現れなくなってくる。

これは勉強を疎かにしているのではなく、単に追い抜く層の壁が厚くなっているだけなのだ。

100番から20番にたどり着く努力よりも、20番から10番にたどり着く努力の方がはるかに難しい。

その上に行くための努力は、『さらに』ということ。


だからこそ、同じ教室にいても、学生たちが見える世界は一人一人違っているのだ。


エレンは中学3年間の弛まぬ努力で、その層をぐんぐんとぶち破ってきたのだ。

僕は幼馴染みとして、とても誇らしかった。






教室でジャンとエレンのじゃれあいを端目に、僕はミカサに声をかける。

アルミン「ねえミカサ。エレンは今回のテスト、すごく頑張ったと思うんだ」

ミカサ「グリシャおじさんがエレンにつきっきりで教えてくれた」

アルミン「ああ、そうか。グリシャさん、医学部出身だもんね。勉強は得意中の得意か」

ミカサ「エレンは今、頑張ってる。今のエレンは、とても格好いい」

僕もそう思うよ。ミカサ。喧嘩早いところが、玉にキズだけど。

ミカサ「私は嬉しい反面、悲しい」

アルミン「どうしてだい?」

ミカサ「……うるさいハエが増えたから」

アルミン「……そういうことか」

つい最近、エレンに一目惚れした後輩が、エレンに告白しようとしていた。

偶然、事前に知った僕はミカサとともに告白を阻止した。

主には、ミカサという彼女がいるということを友達伝手に教えただけど。

これで、ミカサの恋心にさらに燃え盛った。

エレンだって年頃だ。

家にエロ本だってある。


知識が豊富でむっつりだった僕は、小学生から異性に興味を持っていたのに。エレンが精通して、エロ本をライナーから入手したのはほんの数ヶ月前。

エレンの精神年齢は本当に子供だった。

けれど、そんなエレンを、僕もミカサも、みんな大好きだった。

ちなみに、エロ本の隠し場所は僕もミカサも知っている。

知らないのは当の本人だけだ。

ミカサには、性癖までばっちり把握されている。

幼馴染みのミカサに、ちょっとした恐怖を覚えた瞬間でもあった。

ジャン「ふごっ!って、テメェ、ボクシングのフック使うのは反則だろ!」

エレン「アニ、キックも使ってもいいか?」

アニ「……喧嘩じゃないからね。別にいいよ」

ジャン「ちょい待て!許可すんなアニ!って、痛っ!」

マルコ「駄目だよジャン!本気になっちゃ!エレンはアニと同じくらい強いんだから!」

コニー「いいぞ!もっとやれー!」

正直なところ、僕は二人の恋が進展しないことに苛立ちを覚えていた。

僕だって思春期真っ盛りの中学生だ。

これ以上近くで見ていたら、自分の気持ちを抑えきれそうになかった。


エレンに恋心を抱いているのは、ミカサだけじゃないのだ。

アニ・レオンハート。

毎日のようにエレンはジムに通い、アニと一緒に汗を流している。

仲がいいことは、一目瞭然だ。

彼女が悪い人でないことは、僕も知っている。エレンが信頼していることも知っている。

だが、いつの間にか、色々と理由をつけてエレンと二人でデートのように遊びにいったりしていたのだ。

それがミカサに発覚したときのことは、今でも思い出したくもない!


最近、クリスタも怪しいとミカサは言っていた。

決め手は無いが、ユミルのエレンに対する冷たい態度など、いくつか状況証拠が揃っている。

もし、我らが女神がエレンのことを好きだったら……

ああ、想像もしたくない!

エレンとミカサに秘密にしているけど、僕だって告白されたことはある。

でも「好きな人がいるから」と言って、丁重に断り続けていた。

僕はミカサが好きだから。

友達としてじゃなく、一人の女として。

この初恋が散るのを見届けてから、僕は新たな恋に向き合うことを決めていた。

これが、僕のかけがえの無い日常。








そして、事件は起きた。

それも、最悪のタイミングで。

最低の結果で。

僕たちの歯車はこの日を境に、狂い始めた。

今日はこれまでです。

更新遅れて済みませんでした。

明日も更新します

お久しぶりです。
更新遅れてすみません!
里帰りで、実家のPCから書き込もうと思ったのですが、解約されていてネットが繋がってませんでした
スマホで書き溜めた分を今から投下します

書けば書くほど長引いていますが、もう後半です

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恋なんて、くっだんねえもんだと思ってた。

けれど、こんな簡単に色んな初めてが奪われて、処女が簡単に散らされて……私は思い知った。

私も、恋に恋をしていた、ただの女子高生だったのだ、と。




私の純血を穢した男が、口笛を吹きながら風呂から上がってくる。

口笛の合間に、英語の歌詞を口ずさむ。

私は気付いた。

これはクリスタが好きな曲だ。


エレン「んあ?もう起きてたのか、ユミル。気分はどうだ?」


ユミル「……最悪だよクソ野郎」





クリスタを含む私とエレンは、ラブホテルの一室にいる。

休憩代は、バイトしている身とはいえ、諭吉を手放さなきゃならない痛い出費だった。

そして、心にも体にも痛い体験を味わされた。

エレン「まあまあ、イケるようになるまで徐々に慣らしていこうぜ?クリスタもイッたのは四回目だったし」

湯上がりのエレンは私の隣に図々しく座った。

バスタオルに裸を隠した私は、ティッシュで鼻を噛むふりをして、潤んだ目元を拭った。

くそっ。

胸にこみ上げてくる感情が抑えきれない。

エレン「3Pはやっぱり疲れるなぁ。男としてはこの上ない贅沢なシチュエーションだけどよぉ。もう精子がからっからだぜ」

シーツが乱れたダブルベッドでは、裸のクリスタが寝息を立てて眠っている。

汗で前髪が張り付いたクリスタの顔を眺めながら、私は乾いた喉を潤すため、コップの水を一気に飲み干した。




つい数十分前まで、私とクリスタはエレンに弄ばれていた。


それが、エレンを不用意な喧嘩に巻き込んだ私の『代償』だった。

いつ果てるとも無く、執拗に、エレンは私の体を嬲り続けた。

その後に、私に見せつけるように、クリスタを犯した。

どんな乱暴な扱いにも、クリスタは吐息交じりの喘ぎでエレンの行為に応える。

クリスタの声色から感じられる健気な愛情が、私の心の柔らかい部分をズタズタに引き裂いた。

絶望と快楽が入り交じった混沌の渦中で、私はされるがまま犯され、貫かれた。

エレン「ユミルの肌、きれいだよな」

筋肉質の右手で私を引き寄せたエレンは、首筋に舌を這わせる。

ユミル「っ!やめろ。もう終わっただろうが!」

私は強い力でエレンをつき放した。

腹立たしいことに、こいつの女を扱うテクは本物だった。

自慰よりも強烈な快楽を、未経験の私の体に教え込んだのだ。

生々しい人肌の温もりが直に伝わる。

クリスタの滑らかな肌とは違う、男らしい固い肌。

お互い風呂に入ったおかげで、同じシャンプーの匂いが鼻腔を刺激する。

エレン「キスぐらいで恥ずかしがるなよ。ユミル。俺はまだまだ、女を見る目が無いって気付かされたぜ」

ユミル「……ああ?」

エレン「女としての素材は悪くない。むしろ、原石と言って良い。磨けばモテるぜ?お前」

と、耳元で囁いた。

ユミル(……こいつ)

腰に回した手をはたくと、エレンはそれ以上私に近づこうとはしなかった。

私は再び高まりそうになる性欲を抑え、女体を熟知しているエレンの手から早く逃れたかった。





私はただ、エレンとクリスタの仲をぶっ壊そうとしていただけだった。

クリスタがエレンに近づく前に、ちょっとした悪戯をしてやったつもりだった。

悪意はあったが、悪気は無かった。

それが、取り返しのつかない事態を招いたんだ。

様々な要因が重なり、誰も予想しえなかった結末を迎えてしまった。




ミカサが死んでから、エレンの落胆はハンパじゃなかった。

ミカサを失ったエレンを、私たちは皆で出来る限りフォローしていた。

特に、エレンに好意を寄せていたアニとクリスタは、手取り足取りと甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

あの事件には、皆、エレンに対して強い罪悪感がある。

だからこそ、変わり果ててしまったエレンを責めることも出来ず、嫌いにもなれない。

中学時代のエレンは駆け引きも女心も知らないガキだった。

暑苦しくて。

単純で。

純粋で。

真面目で。

一途で。

二次成長が異常に遅れていたせいか、下心も無いヤツだったから、多感な時期のクリスタが数少ない男友達として気兼ねなく接していたことも理解できる。

少々捻くれた私にとっては、愛しのクリスタに近づくハエ同然の存在であって、鬱陶しくも……眩しいヤツだった。


それがいつの間にか、複数の女を弄び、二枚舌も使える狡猾な男に様変わりしていた。

大きな視野で捉えると、これも一種の成長と言えるだろうか。



高校生はガキじゃない。

社会的地位が低かろうと、生物的に肉体は大人だ。

女は子供だって産めるし、結婚も出来る。

日本から遠く離れた中東では、10歳から花嫁に行く生娘も珍しくない。



子供は、大人になる過程で、多少の『毒』を経験することはある。

人生を正攻法で生き抜いていけるヤツは限られているからだ。

エレンは、理不尽に打ち勝てる、希少なタイプの人間だと、私は思っていた。

家族を失うことは、確かに辛い経験だ。

特別な感情を抱いていたのならば、なおのこと。



しかし、エレンの変わりようには違和感を覚えていた。

要因は、他にもある。



あの事件には、『裏』があるんだ。

私が知らない『何か』が。


天使のような顔立ちと、慈愛に満ちた女神のような性格を持ち合わせたクリスタがモテない訳が無い。

案の定、ゴミ袋に群がるネズミのように、男どもがホイホイ近寄ってきた。

中学に入ると、エロい目で見てくる男たちはゴキブリのようにさらに湧いた。



クリスタ・レンズは可愛い。

美人だ。女神だ。

思春期の男どもの気持ちは知識として理解できる。

しかし、女として、感情では到底納得できない。

むしろ吐き気がする。

もちろん、男から声をかけられる機会が多かったクリスタは男を受け流す処世術に長けていたが、いちいち愛想笑いを浮かべさせる害虫は一匹でも排除すべきだ。

だから、クリスタに近寄る男どもは私が片っ端から相手にしてやった。

そのなかで唯一、下心が微塵も無く接してくるエレンを、クリスタは特別視していたのだろう。


エレン・イェーガーとミカサ・アッカーマンは恋人同士である――


真実はどうであれ、第三者の認識としては、二人の関係はカップルを通り越して『夫婦』のカテゴリーに入っていた。

ステディがいるのならば、自分が性的に見られる心配が無い、という思慮浅い考えの前提だが、彼女がいる男は、それだけで女の間では信頼を得ることが出来る。

女性と付き合えるということは、少なくとも、童貞どもより女心が理解できるヤツだと判断されるのだ。

だから、クリスタにとってエレンは数少ない男友達で、男のなかで一番話す機会が多いのは、間違いなくエレンだった。

次点でアルミン。クリスタに気があるような素振りもあったが、頭の回るヤツだ。私という騎士(ナイト)がいることを知って、真正面から告ることができるタマじゃない。

ちなみに、アルミンの本命を私は知っている。

恋愛に関して、女の観察力と勘は男を遥かに上回る。

まあ、恋愛経験のある無しによって、女とはいえ、大小の差はあるが……

だから私は、エレンよりもアルミンを信頼していた。

休日には、ミカサを含む幼馴染みの三人組や、エレンと私、クリスタの三人だけで遊びに行ったこともある。

エレンと一緒に居るとなにかと退屈しない。

エレンの幼稚さにウンザリすることもあったが、常軌を逸する真面目さには、私も感心していた。


だから、油断していた。

心身ともにおこちゃまのエレンがクリスタに恋心を抱かないと、安心しきっていた。

クリスタがエレンに好意を抱くという可能性を、なぜ考慮しなかったのだろう。

クリスタがエレンを意識し始めたきっかけは、中三の体育祭。


体育祭終盤のクラス対抗リレーで、クリスタがこけてしまい、大幅な点数差が開いてしまった。

その失点はミカサでもカバーできるものではなく、クラスの勝利は絶望的だった。

しかし、エレンは持ち前の熱血演説で、目に見えて落ち込んでいたクリスタやクラスメイトを多いに元気づけた。

エレンは男子のリレーでアンカーとして出場。

白熱した試合で、見事一位を獲り、クラスを勝利に導いた。

怒濤の逆転勝利に、観客も生徒も湧き立っていた。


クリスタの強い希望で私は渋々折れ、体育祭後のフォークダンスの相手をエレンに譲った。

そのせいで、私は相手を探すのに一苦労した挙げ句、暴走したミカサをアルミンとともに抑え、嫉妬するライナーを蹴り倒す羽目になり……ダンスどころでは無くなったのだが。



エレンとクリスタが屈託なく笑い合う様子を見て、嫌な予感が頭を過ったのは、今でも覚えている。

私はガキすぎるエレンが嫌いだった。

だが、大人になりすぎた今のエレンのほうが、私は嫌いだ。




エレンは携帯を見て、珍しく焦った様子だった。

エレン「やっべ。アニに連絡するの忘れてたわ」

脱ぎ捨てた服をかき集め、素早く着替えるエレン。テーブルに置かれたショルダーバッグを掴むと、

エレン「俺が言えた義理じゃねえが、学校には顔出せよ。俺のクリスタが悲しがってたぜ」

と言って、ホテルから早々に出て行く。

男より二次成長が早い私たち女は、確かに、男よりも精神的な成長が早い。

だから女は、同世代の男を子供だとよく馬鹿にするが、わたしはそうは思わない。

精神的な成長の糧は、ひとえに経験だ。

想像と偏見に満ちた恋愛話をする処女どもに、私は警告してやる。

女を知った男も、大人になるってことを――

ユミル「……何が『俺の』クリスタだ。クソッ!」

やり場のない怒りを、私はグラスにぶつけた。

壁に叩き付けられ、ガシャンと不快な音を立てて弾ける。

ユミル「ちくしょう。アニが駄目で、クリスタも駄目なら、もう…あいつを止められるヤツはいねえ……ちくしょうっ……!」










クリスタ「…………」

――――――
――――
――

一年前

事件7日前





ミカサ「今週の日曜日、空けておいて。絶対」

エレン「んあ?」

人に言えた義理じゃないが、こいつは言語力が乏しい。

家族の俺でも、分からないことはある。

口から棒状のアイスを取り出して、ミカサに問いかけた。

エレン「なんでだよ」

ミカサ「…分からないの?」

ミカサ「7日後は、私の両親が死んだ日」

エレン「……ああ、そうか。もう、五年も経つんだな」

ミカサ「……うん。エレンと家族になって、もう、五年経つ」

小4のときだ。

ミカサの両親は死んだ。

高速道路での交通事故。

両親は即死。

奇跡的に、ミカサは軽度の打撲で助かった。

ミカサが口数少ないのも、両親の死を目の当たりにした影響があるのだろうと俺は思っている。

身寄りの無いミカサを引き取ったのは、ミカサの両親の親友でもあった俺の親父だった。

病院を経営している親父は、もう一人の子供を養うだけの金銭的な余裕はあった。

ミカサを一目見ただけで、おふくろは同居に賛成の意を示した。

最初は親父の隠し子かと仰天したものだ。

随分となつかしい記憶だった。

エレン「お前とは、生まれたときから家族だったといつの間にか勘違いしてたよ」

ミカサ「それは嬉しい。けど、素直に喜べない」

エレン「あ?どうしてだよ?」

ミカサ「それは……」

変な沈黙があった。

ミカサの返答が一向に来ない。

耐えきれなくなった俺は、

エレン「七回忌は後、二年先だな」

と声をかける。

ミカサ「うん」

エレン「墓参り、行くか。帰りに飯でも食って帰ろうぜ」


ミカサ「……うんっ」




これが、俺が見たミカサの最後の笑顔だった。

ーーー
ーー


事件6日前



アルミン「え?……今、なんて」

夕焼けに染まる教室で、僕は一人の少女の告白を耳にする。

クリスタ「だ、だからっ!私は、その……エレンのことが、好きなの」

思わず、額に手を当て、夕暮れの空を仰いだ。


……ああ、世界は残酷だ。

我らの女神は、既に堕天していた。

アルミン「クリスタ……なんで僕に相談を?」

クリスタ「その、ユミルは絶対反対するのは目に見えてるし……エレンは誰とも付き合ってないって言ってたし、ミカサは家族だって言ってたし。なら、私にもチャンスはあるかなって……ねぇ、アルミン。私、勝率どれくらいあるのかな?」

二人きりで相談があると言われて、ハイテンションになっていた数時間前の自分を戒めたい。

アルミン「勝率って……」

僕はエレンとミカサの味方だ。

だから、僕は断腸の思いで、クリスタに嘘をつくことにする。

アルミン「うーん。多分、無いと思うよ」



クリスタ「嘘」



アルミン「……へ?」

クリスタ「私、人の嘘は簡単に見破れるの」

強い眼差しを受けてたじろく僕。

エレンの目つきを見慣れている僕には、可愛い天使にしか見えないけれど。

クリスタ「お願い。アルミン。私、本気なの」

その真剣さが、ますます僕の心を締め付けた。

アルミン「……分かったよ。クリスタ。エレンは相変わらず恋に関して無頓着だ」

クリスタ「やっぱり……そう、なんだ」

アルミン「これ以上は言えない。いくらクリスタでも……」

クリスタ「…うん。分かったわ。ありがとう。アルミン」

笑顔でお辞儀すると、小走りで教室を去るクリスタ。

……なんか、全て悟られたような気がした。





アルミン「……はあ。女神がねぇ……エレンを」

しばらく、僕は一人ぼっちの教室でメランコリーな気分に浸っていた。

エレン「いてっ!引っ張んなよ!」

ライナー「ラグビー部に来いよエレン。お前ならすぐレギュラーになれるさ。俺が保証する」

エレン「嫌だよ。むさ苦しい」

ベルトルト「ははは、エレンを取ったらアニに怒られるよ。ライナー」

仲の良いクラスメイトを連れて、エレンがやってきた。

……この純粋無垢な朴念仁を見ていると、無性に殴りたくなるのは気のせいじゃないよね。

皆の気持ちを代弁しよう。

さっさとミカサとくっつけよこの鈍感野郎!

ライナー「どうしたアルミン。そんな怖い顔して」

エレン「なんで居残りしてんだ?」

アルミン「あ、あはは。一人で自習してたんだ」

ベルトルト「流石は学年一位。感心するよ」

エレン「え?さっきまでクリスタがいなかったか?階段降りるところ見たぞ」

ライナー「……なんだと?」

クリスタという単語に敏感に反応し、ライナーが僕に近づいてくる。

アルミン「い、いやっ。たまたまだよ。クリスタは忘れ物を取りにきただけだよ」

言葉が上ずらないようにするだけで精一杯だった。

汗だくで眉間に皺を寄せた大男が鼻息を荒くしながら近づいてきたら、誰だって驚くだろう。

ライナー「そうか。そうだったか。惜しいことをしたな……ふむ」

ベルトルトが複雑な表情でライナーを見つめていた。

僕とベルトルトの意見は、おおむね一致しているはずだ。

ライナーの恋慕は昔から敵わないものだと分かりきっていたことだったが、今日の出来事は決定的だった。

クリスタはエレンのことが好きだという揺るぎない事実が発覚した。

ライナーの淡い恋は、今、終わった。
 
僕は心のなかでライナーに合掌する。



……傷は浅いほうが良い。
 
 その事実をこの場で白状し、ライナーをばっさりと斬り捨てる選択肢もあった。 

だが、ライナーはいつまでも僕たちの兄貴分でいてもらいたい。
 
仲の良い級友が恋敵に変わる愛憎劇はなんとしてでも阻止すべきだ。

ライナーの破滅の行く末を見守り、見事に玉砕した後で慰めてあげるのが、僕とベルトルト(※エレンを除く)の役割だと思った。

今日はここまでです。

事件の核心がまだ明らかにされていないので、今後の展開が読みにくいとは思いますが、最後までよろしくお願いします


元ネタはイギリスの小説です
イギリスでは映画化もドラマ化された原作小説ですが、ググってみると翻訳本も日本版DVDもありませんでした(泣)

僕はこの時間でひたすら考えた、ライナー、クリスタ、エレン、この3人をどうすればいいのかを

しかし…

僕らの女神は、そんな時間をくれなかった…

クリスタ「あっ!筆記用具忘れちゃた、あんな話しちゃったけど、もういないだろし大丈夫かな?」タッタッタッ

クリスタ「ふぅーちょっと疲れちゃった、あっライナー」ハァハァ

ライナー「よ、ようク、クリスタ(なんだ!そのハアハアは!)」

クリスタ「ん?どうしたの?」ニコォ

ライナー「くそっ我慢できねえっスマン、クリスタっ」ガバッ

クリスタ「キャッ\\」ドン

ライナー「ウホッーーーーーーーー」ブシャァ

クリスタ「」

亜留民「わっ」ガバッ

亜留民「なんだ、夢か」スースー


~end~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月15日 (火) 18:07:13   ID: T5cSlNGr

えっ

2 :  SS好きの774さん   2013年10月27日 (日) 17:51:07   ID: 409R7727

まさかの夢オチ

3 :  SS好きの774さん   2014年11月17日 (月) 04:26:09   ID: JVeotU84

おもしろかったのに途中で終わるとはもったいない…

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