「内容が薄い」と言われたが。
まあ認めよう。
これも薄い。
第1作 【モバマス時代劇】本田未央「憎悪剣 辻車」
第2作 【モバマス時代劇】木村夏樹「美城剣法帖」_
第3作【モバマス時代劇】一ノ瀬志希「及川藩御家騒動」
第4作【モバマス時代劇】桐生つかさ「杉のれん」
第5作【モバマス時代劇】ヘレン「エヴァーポップ ネヴァーダイ」
読み切り
【デレマス時代劇】速水奏「狂愛剣 鬼蛭」
【デレマス時代劇】市原仁奈「友情剣 下弦の月」
【デレマス時代劇】池袋晶葉「活人剣 我者髑髏」
【デレマス時代劇】塩見周子「おのろけ豆」
【デレマス時代劇】三村かな子「食い意地将軍」
【デレマス時代劇】二宮飛鳥「阿呆の一生」
【デレマス時代劇】緒方智絵里「三村様の通り道」
【デレマス時代劇】大原みちる「麦餅の母」
【デレマス時代劇】キャシー・グラハム「亜墨利加女」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496643804
夕暮れみたいな髪の色。
瞳はきれいな海の色。
親に捨てられ15年。
浅草の、お武家に拾われ15年。
寂しい思いはしなかった。
高めの小鼻と長い足。
けれど心は、江戸ものだ。
細かいことは気にしない。
喧嘩っ早いが、引きも早い。
そして時々涙もろい。
お侍だが、べらんめえ。
なんだかちぐはぐで、面白い。
キャシー・グラハム15歳。
キャシーの名前は親が決めた。
籠に名前が付けてあった。
名までつけた、赤子をよそに捨てるとは。
武家の主人が、哀れなキャシーを引き取った。
そんなこともあったから。
キャシーはちっと捻くれで。
喧嘩早いし手も早い。
体格(がたい)がいいから、勝ちが増える。
そんでどんどん友達(だち)が増える。
生傷だらけの友達が増える。
ある日キャシーに声がある。
横須賀にくる米人の警護をやれだ、なんだ。
理由(わけ)はキャシーの見た目で腕ではない。
腹は立ったがしょうがない。
1日10両。2刻で2両。
2両もあれば孝行できる。
10両あれば興業できる。
キャシーはこいつを引き受けた。
横須賀港で女が2人。
亜墨利加女とキャシーで2人。
キャシーが話せると思ったか、
なにかぼそぼそ言っている。
ぼそぼそうるせえ、話しかけるな。
キャシーは少し苛立った。
けれども、母ちゃん。 そうも思った。
いやいやそんなはずはない。
子を捨て15の実の親。
キャシーはぶすっと顔をしかめた。
通訳連れて、キャシーは浅草を案内した。
亜墨利加女は、楽しいんだか
楽しくないんだかぶすっとしている。
なんでえこっちが親切に教えてやってるのに。
やがてキャシーもぶすっと黙る。
腹は立ったが殴るわけにもいかぬ。
ぶすっとした2人に挟まれて、
通訳の女は肩身がせまい。
みんな口を聞かずにぶらぶらしてた。
すると突然亜墨利加女。
キャシーにビスケを差し出した。
私ゃ小鳥か。ふざけるな。
しかしかじると、わりに美味い。
乳脂の香りが奥深い。
美味いと言うのが悔しくて。
小さくなった通訳に
「有難いが口に合わない」。そう言った。
言われた方の亜墨利加女。
やっこの顔は、仏頂面のそのまんま。
十字の飾りを下げながら、仏頂面ときたもんだ。
なんでえなんだ、つまんねえ。
キャシーはそっぽでつまらんねえ。
夕餉の時間。飯の時間。
なんでかキャシーと亜墨利加女。
2人が一緒の席ときた。
やめろい飯が不味くなる。
口に出せば角が立つ。
しかし黙ると角が生える。
頭を抱えて料理を待った。
夕餉の時間は酉の刻。酉の刻に牛が出る。
キャシーはうへぇと舌が出る。
亜墨利加女がこっちを見てる。
キャシーはえいやと牛を食う。
割に美味くて透かしを食う。
自分の分を平らげて、なんだか妙に腹がたつ。
亜墨利加女がこっち見てる。
だからなんだか腹が立つ。
ついでにさらに腹が空く。
すると一枚、牛の肉。
亜墨利加女の牛の肉。
私ゃ犬か。ふざけるな。
キャシーの口には牛の肉。
鶏を食わずに酉の刻。
牛を食ったら丑の刻。
寝間にはキャシーが側に立つ。
亜墨利加女の側に立つ。
「年はいくつだ」。通訳女。
仏頂面の亜墨利加女。
めんどっちいと思ったが、
「今年で15になりました」。
そしたら、「そうか」。それで終わり。
なんだ、ますます気にくわねえ。
キャシーは腹を立てながら、襖を弱く引っかいた。
翌日、女を見送った。
「さヨなら。キャシー」。そう言った。
亜墨利加女がそう言った。
名前なんて教えたか。
潮の香りが、随分しみた。
おしまい。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません