美嘉「すれ違いラヴァーズ」 (18)

モバP「なに、今日は大掃除中?お前なあ、先週も同じこと言ってたぞ……いや絶対言ってたって!ああ、ホントホント。ったく、どんだけ綺麗好きなんだよ。社会人になってもそういう潔癖症なとこ全然変わってないよな。まっ、俺もそう大差ないけど……ん、俺?心配すんなって、休みの日にはちゃんとやってるから。で、ちなみに今どこ掃除してるんだ。ああ、網戸かあ………あれ面倒だよなあ。外すのは簡単だけど、掃除終わってから付け直すのがやたらダルいんだよ────」



美嘉「お疲れー、プロデューサー!」

モバP「おう、お疲れ。今ちょっと電話中でさ……」

美嘉「仕事関係の話?忙しそうなら出直すけど」

モバP「いや、大学の頃のツレ。すぐ終わるから、そこにかけて待っててくれ」

美嘉「オッケー、じゃあここで待ってるね」

モバP「悪いな、わざわざ来てもらったのに」

美嘉「平気平気。気にしないで」



モバP「で、なんの話だったっけ。そうそう、でさあ────」


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美嘉(最近忙しかったから、こうしてPをゆっくり間近で見るのも久しぶりな気がする)

美嘉(そういえば、今事務所にはアタシとPしかいないんだっけ)

美嘉(………………)

美嘉(きりっとした目に、シャープなフェイスライン。鼻筋も綺麗に通ってるし、なにより笑顔が良いよね。はあ、電話をしてる横顔にも見蕩れちゃうなあ)

美嘉(大学の友達だって言ってたけど、なんの話してるんだろ)



モバP「だから、そういうときは思いっきり嵌めてやればいいんだよ!」


美嘉「────ふぇっ!!??」


モバP「遠慮せずに力づくでねじ込め!がしがし突っ込んでたら、そのうちいい感じで嵌まるから。ん、そういうのは向いてないって?でもさ、入れたいのなら多少は強引にいかないとしょうがねえだろ。ああ、俺はいつもそんな感じだよ」


美嘉(ハメる!?ねじ込む!?カリスマギャルが近くにいるのに、なに言っちゃってんの、この人!?)


モバP「入った?おう、そりゃ良かったな。じゃ、今担当の子がいるから、そろそろ切るぞ」

美嘉(…………入ったんだ。電話で実況することかな、それ)

モバP「ホントごめん。かなり話がはずんじゃって、止めるに止められなかったんだ」

美嘉「うぇっ!?べ、べべ、別にいいよ、これぐらい」

モバP「そうか。そう言ってもらえると、こっちもありがたい」

美嘉「あ、あのさ!」

モバP「ん?どうした」

美嘉「……今話してた人って、大学の友達だよね」

モバP「そうだけど、なにか気になることでもあるのか」

美嘉「いや、その……えっと……」

モバP「なんだよ。もったい振ってないで、言ってみろって」


美嘉「その……Pは、強引なのが好きなの?」



モバP「ああ、だってそっちの方が楽にぶちこめるし、スッキリするじゃん」



美嘉「あば、あばばばばばばばばば────」

モバP「っておい、どうした美嘉!しっかりしろ!」

美嘉(ふぁあああああああ!!Pが、アタシのPがああああああ!!お互い初体験で結ばれる予定だったのにぃぃいいいいいい!!)

モバP「気をしっかり持て!ほら、ひっひっふー、ひっひっふー」

美嘉「ひっひっふー、ひっひっふー」

モバP「ちっとは落ち着いてきたか?」

美嘉「……多少は」

モバP「なら良いんだ。急に白目剥いて発狂し始めたときは、流石の俺も驚いたぜ」

美嘉「お願いだから忘れて……マジでお願い、後生だから」

モバP「わ、わかった。誰にも喋らないって約束するよ」


美嘉(うわあ、めっちゃ引かれてるぅ。心なしか大股一歩分ぐらい距離が広がってるぅ。アタシのパーソナルスペースから全力撤退されてるぅ)

美嘉(まあ、見知った子がいきなり白目剥いたら引きもするよね、普通)

美嘉(………………)

美嘉(そう、普通に考えれば──これはピンチ。でも、それを乗り越えてこそのカリスマ!!)

美嘉(逆に考えるんだ、『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ)

美嘉「実はアタシもさ──」

モバP「お、おう」


美嘉「強引な方が好きだったりするんだよね」


モバP「………………」


美嘉(\(^o^)/オワタァァアアアアアア!!くぅ~振られましたwシンデレラの魔法もこれにて終了です!!)

美嘉(せっかくさりげなくアピールしてきたのに、こんな形でPのストライクゾーンからアウトオブ眼中になっちゃうなんて……あんまりだよ)


モバP「そうか、美嘉も強引にする派なんだな!やっぱり嵌めるのは力任せが一番だぜ!」


美嘉(なんか知らないけど助かったぁぁあ!!)

美嘉(チャンス、チャンス!乗るしかない、このビッグウェーブに!)

美嘉(そういえば莉嘉の読んでた雑誌に、『大人の男は経験豊富な女性を好む』って書いてた記憶が……)

美嘉(よし!ここは適当にでっちあげてでも経験豊富な振りして、Pに猛アピールしよう!)

美嘉「ま、まあアタシはどっちかというとハメるんじゃなくてハメられる派かな」

モバP「嵌められるぅ!?嵌めるんじゃなくて!?」

美嘉「も、もちろん!アタシ、結構経験豊富な方だから!」

モバP「そんなにいっぱい嵌められるの!?枠に嵌められるのに経験とかいる!?ていうかどうやったら嵌れるのか逆に教えてほしいんだけど!!」

美嘉「しょうがないなあ……Pがそこまで言うなら教えてあげてもいいよ」

モバP「おう、是非教えてくれ。今度飲み行くとき話のネタにするから」

美嘉「えっとね、ハメられるのに一番大事なものは────」

モバP「ものは?」


美嘉「…………愛、かな」


モバP「愛ぃ!?そんな不確かなもので嵌れるの!?」

美嘉「むしろ愛がないとダメ!ハメられないしハマれない!」

モバP「嵌めるのにも愛いるぅ!?もしかして俺、やり方間違ってたのか!!」

美嘉「────っ!!そ、そうだよ!Pも今度ハメるときは愛を持たなきゃ」

モバP「そ、そうか……わかった、できる限りやってみる」


美嘉(よっしゃああああああー!!!!言質取ったああああああ!!)

美嘉(これでアタシのときは優しくしてもらえりゅぅぅうう!!)

モバP「愛かあ……物は大切にしろってことなのかな……ん?あっちゃー、ごめん美嘉。また電話だ。しかも今度は営業先のお得意さん」

美嘉「仕事の話?」

モバP「多分な。打ち合わせは済んでるから、話自体はすぐ終わると思うんだが……」

美嘉「いいよ。アタシ、ちょっとお手洗いに行こうと思ってたから」

モバP「何度もすまん」

美嘉「いいっていいって。アタシとPの仲じゃん」

モバP「そう言ってもらえると助かるよ」

美嘉「んじゃ、ごゆっくりー」

モバP「またあとで!」


美嘉(今日はやたらと電話多いなあ……)

美嘉(せっかくPと二人っきりなのに、これじゃ台無し)

美嘉(Pを狙ってるアイドルも結構多いって聞くし、もたもたしてたら置いてけぼりにされちゃうかも)

美嘉(アタシも恥ずかしがってばかりじゃなくて、積極的にいかなきゃ!)

モバP「お疲れ様です。え、いやいやこちらこそ。その節はお世話になりました。ええ、ええ……あーいいですねえ。でもあの店、最近人気だから中々座れないんですよ……えっ、ホントですか!?なら前回の撮影メンバーで打ち上げしましょうよ。はい、パーッとやりましょうよ、パーッと!ここ数日熱くなってきましたからね。多分メチャクチャうまく感じますよ、きっと。ええ、もちろん最初は定番のアレで────」



美嘉「P、電話終わっ──」



モバP「やっぱり最初は生が一番!ギンギンになったやつをグイッといくのが、やっぱ最高ですね!」



美嘉「────ファッ!!??」



美嘉(な、なな、なな菜々菜々菜々菜々ァァ!!)

美嘉(今ナマって言ったよね!今ナマって言ったよね!)

美嘉(最初はナマ……ギンギンをグイッと……最初はナマ……ギンギンをグイッと……)


モバP「あっ、美嘉。戻って来てたのか。あのさ、この前の営業先の人が──」

美嘉「くぁwせdrftgyふじこlp」

モバP「っておい、美嘉!なんかまたいい感じにバグってるぞ!」

美嘉「大丈夫大丈夫。最初はグイッとナマをギンギンにするんでしょ。うん、知ってる知ってるアタシはカリスマだからなんでも知ってるんだナマをグイッといくぐらい余裕に決まってる大丈夫大丈夫平気平気」

モバP「目の焦点が合ってねえ!」

美嘉「うん、ハートはデコラず伝えるからね。仕方ないね。サイダーだね」

モバP「なに一人でTOKIMEKIエスカレートしてんだよ!頼むからしっかりしてくれ!」

美嘉「はっ!?アタシ、今なにかとてつもないこと口走っちゃったような気が……」

モバP「色々と手遅れだ。事務所にいるのが俺だけなのが唯一の救いだな」

美嘉「あわ、あわわわわわわ…………」

美嘉(ヤっちゃったあああああああああ!!!!)

美嘉(ヤッてないけどヤッちゃったあああああああああ!!!!)

美嘉(どうしよ、どうしよ……もうこれ言い訳のしようもないじゃん)

美嘉(挙動不審の変人以外のなにものでもないよ)

美嘉(アタシ、これじゃお嫁にいけない)

美嘉(………………)

美嘉(こうなったら最終手段!)

美嘉(かくなる上は!責任を取ってもらうしか!ないッ!!)


美嘉「プロデューサー!」

モバP「は、はい!」

美嘉「プ、プロデューサー!」

モバP「…………?」


美嘉「プロデューサーはさ、や、やっぱり……ナマが好きなの?」

モバP「ああ、大好きだよ。最初は生以外考えられない」


美嘉「そ、そそ、そっか……Pも男の人だから、つけたりしない方が……いいんだよね」

モバP「つける?ああ、つけてもらうぐらいなら自分で出した方が気も楽だしな」

美嘉「自分で出すの!?」

モバP「そりゃ、俺も一応は社会人の端くれだぞ。一緒に楽しんだあとにつけるのはカッコ悪いだろ」

美嘉「そうなんだ……アタシ、そういう経験全然ないから……普通のやり方とかよくわかんない」

モバP「当たり前だ。あったら小一時間説教してやる」

美嘉「……やっぱりPってアタシたちのこと、ちゃんと心配してくれてるんだ」

モバP「なに言ってるんだ、俺はお前のプロデューサーだぞ。担当アイドルの心配しないプロデューサーがどこにいるんだ」

美嘉「そっか、そうだよね。アタシのプロデューサーだもんね。ふひ、ふひひ……」

モバP「……美嘉。今日のお前、なんか変だぞ」

美嘉「そ、そそ、そんなことないよ!いつも通りの健康体って感じ」

モバP「ホントか?体調悪いなら、このあと病院に行くか?」

美嘉「平気だってば!どこも悪くないから!」

モバP「そうか?ならいいんだが……体調悪くなったら早めに連絡しろよ。すぐ病院連れて行ってやるから」

美嘉「……うん、ありがと。あのさ、一つ……聞いてもいいかな」

モバP「ああ、俺が答えられる範囲でなら、なんでも答えるよ」

美嘉(Pの想い……確かに受け取ったよ)

美嘉(だから、だから──)

美嘉(もうゴールしてもいいよね)


美嘉「アタシが大人になったら──してくれる?」

モバP「するって、なにを?」

美嘉「その……さっき言ってたみたいに、ナマで……」



モバP「もちろん。思いっきり盛大にしてやるよ、最初は生でな」



美嘉(決まったぁぁぁああああああああ!!!!)

美嘉(Pのゴールにシュゥゥゥーッ!!)

美嘉(超!エキサイティング!!)


美嘉「……不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」

モバP「よろしくって、なにを?」

美嘉「えっ?」

モバP「えっ?」



美嘉「……あれっ?」


終劇

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