【艦これ】加賀「あなたが好き」 瑞鶴「」 (362)
――工廠――
明石「なるほど。私が瑞鶴のために極秘で作った惚れ薬を」
明石「提督に飲ませるつもりが、間違って加賀さんの手に渡っちゃって」
明石「こうなったと」
加賀「好き」ギュッ
瑞鶴「何とかしてくださいお願いします」ペコリ
明石「何とかって言ってもなー。その惚れ薬の効き目、いつ切れるか分かんないし」
瑞鶴「お願いします。マジこれ耐えられない」
瑞鶴「何とかバレずにここまで来れたけど、他の艦娘に見られたら……」ゾクッ
瑞鶴「提督にも見られたら……!」ゾゾゾゾ
加賀「寒いの瑞鶴? 私が温めてあげる」
瑞鶴「やめて!! このトリハダはあんたが原因だから!!」
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明石「元はといえばあなたの責任でしょ」
瑞鶴「……はい。その通りですごめんなさい」
明石「仕方ないなぁ、とりあえず無効化する薬を作ってみるから」
明石「それまで何とか誤魔化して」
瑞鶴「どうやって!? 薬はいつ完成するの!?」
明石「加賀さんと相談しなさい。薬は最低でも3日はかかるわ」
瑞鶴「3日!?」
明石「惚れ薬の1週間に比べたら早い方よ。それに正規の仕事をやりながら頑張るのよ?」
瑞鶴「うう……あ、ありがとうございます……」
明石「まあがんばって」
瑞鶴「……」
――――
瑞鶴「ね、ねえ加賀……さん。くっつくのやめてくれない?」
加賀「嫌」
瑞鶴「なんで?」
加賀「大好きな瑞鶴と片時も離れたくないの」
瑞鶴(ひぃぃぃっ……!)ゾゾゾゾ
瑞鶴(加賀ってこんな性格だっけ? 薬の効果ヤバいなぁ)
瑞鶴(しっかしなー……何とかして言い聞かせないと)
瑞鶴「あのさ。私のことが好きなら、言うこと聞いてほしいな」
加賀「……いいわ。ただし条件がある」
瑞鶴「条件?」
加賀「キスして」
瑞鶴「」
瑞鶴「ごめん何て?」
加賀「キス、して」
瑞鶴「耳元で囁かないでぇ!!」ゾゾゾゾ
瑞鶴「それは無理!! もっと他にないの!?」
加賀「どうしてもダメ?」
瑞鶴「っ!?」
瑞鶴(か、可愛く首を傾げるとか……普段の加賀なら絶対ありえない)
瑞鶴「ダメ!! っていうか」
瑞鶴「これだけは言っとく。私は加賀さんのこと好きじゃないからね」
加賀「!!」ガーン
瑞鶴「だからその……恋人のやり取りとかできないし」
瑞鶴「求められても困るっていうか。ほら、そもそも女同士じゃん!」
加賀「酷いわ」
瑞鶴「へ?」
加賀「私……本当にあなたのことが好きなのに」ポロポロ
加賀「そんな言い方しなくても」ポロポロ
瑞鶴(涙!?)
瑞鶴「泣かなくてもいいでしょ! えっと、その……」
瑞鶴「好きじゃないっていうのは、つまり性の対象として見れないってことで」
瑞鶴「そういう方向の加賀さんの気持ちには応えられないってだけであって」
瑞鶴「人としては尊敬してるし……だ、大好きだから!!」
瑞鶴(意味不明ー! ってかホント何言ってんの私!!)カァァ
加賀「分かってる」グスン
加賀「ごめんなさい、ショックで自然と涙が零れてしまって」
加賀「もう大丈夫だから」
瑞鶴「そ、そう? ならいいけど」
加賀「……ねえ瑞鶴」
瑞鶴「?」
加賀「3日間だけ、というのはダメかしら」
瑞鶴「何が?」
加賀「恋人の関係」
瑞鶴「いや……あのね」
加賀「大丈夫、そういう気持ちがないことは理解したわ。それに」
加賀「この感情が薬品によって作られた偽物だということも」
瑞鶴「……」
加賀「でも恋をするということが、こんなにも素晴らしいなんて思いもしなかったの」
加賀「だから、せめてこの胸の高鳴りが無くなるまででいいから……」
瑞鶴「付き合ってくれって?」
加賀「ダメかしら」
瑞鶴(ダメ)
瑞鶴(って即答したいけど……そんな純情な瞳で見つめられるとなぁ)
瑞鶴「……」
瑞鶴「……ごっこ程度でいいなら」
加賀「え」
瑞鶴「その、キスとかディープな方向に発展しなくて」
瑞鶴「子供がやるような『恋人ごっこ』でいいなら」
加賀「受け入れてくれるの?」
瑞鶴「くれぐれも本気にならないでね」
瑞鶴「あと、他の艦娘の前ではいつも通りの態度で接すること!」
加賀「ええ、分かった……!」パァァ
瑞鶴(ホント誰だこれ。あのクールな加賀とは思えない)
瑞鶴(でも何とか説得に成功した……)
瑞鶴「あっ、そういやそろそろお昼ご飯だっけ」
加賀「そうね。食堂へ行きましょうか」
瑞鶴「加賀さん、さっそくお願いね」
加賀「え?」
瑞鶴「いつもみたいにクールな態度で私を見下すような言動をすること。いい?」
加賀「見下すって……瑞鶴にそんなことできるかしら」
瑞鶴「いや元々やってたからね? 過去の自分に習うだけでいいの」
加賀「心苦しいけど分かったわ」
瑞鶴(大丈夫かな)
スタスタ
――食堂――
ワイワイ ガヤガヤ
翔鶴「あら瑞鶴! 加賀さんと一緒にいたの?」
瑞鶴「う、うん」
赤城「珍しいわね、2人が並んで座るなんて」
瑞鶴「午後からの演習について話したいことがあって。ね?」
加賀「そうね」
赤城「ますます珍しい」ジー
瑞鶴「あはは……」
瑞鶴「全く! こうなるから別々に座ろうって言ったのに!」ヒソヒソ
加賀「でも、どうしても瑞鶴の隣に座りたかったの」ヒソヒソ
瑞鶴「うっ」ゾゾゾゾ
翔鶴「私たちも一緒にいいかしら」スッ
瑞鶴「うん! もちろん!」
加賀「……。私は瑞鶴と2人きりで…」
瑞鶴「さあさあさあ!! 赤城さんもどうぞどうぞ!!」
赤城「え、ええ」スッ
瑞鶴「余計なこと言わないで」ヒソヒソ
加賀「ごめんなさい、つい」ヒソヒソ
赤城「内緒話までするなんて、どうしたの? 仲良くなったの?」
瑞鶴「へ?」
翔鶴「それが本当ならとっても嬉しいわ! どうなの瑞鶴?」
瑞鶴「そんなことないって! ねえ加賀!? 私たちの仲が良いだなんて、天と地がひっくり返ってもありえないし!」
加賀「!」ズキッ
加賀「……」ウルウル
赤城「加賀さん? どうしました?」
瑞鶴(ちょっと、そんな切なげな目でこっち見ないでよぉ)アセアセ
加賀「……いえ」コホン
加賀「そうね。そこの五航戦の言うとおり」
加賀「仲がいいなんてありえない話。演習の話し合いというのも仕方なくよ」
瑞鶴「ほら! そういうことだから勘違いしないでね!」
翔鶴「……でも」
翔鶴「やっぱり仲がいいように見えるわ」ニコッ
瑞鶴「ぐっ……」
瑞鶴(うう、もう手遅れか)
赤城「そうね。いつも通りね」フフ
瑞鶴「……は?」
瑞鶴「いつも通りってどういうことですか!?」ガタッ
赤城「よく言うでしょ? 喧嘩するほど仲がいいって」
翔鶴「そうやっていがみ合ってるけど、2人のフィーリングはバッチリあってると思うわ」
瑞鶴「な!?」
加賀「」ピクッ
加賀「この娘とフィーリングがバッチリ? 冗談でもやめてくれるかしら」
瑞鶴(おっ! いいわよ加賀、その調子その調子!)
加賀「とっても不快だわ」ニコニコ
瑞鶴(笑顔!?)
瑞鶴(感情隠しきれてないってー! あーもうどうしたら!)
翔鶴「ご、ごめんなさい」アセアセ
赤城「この話はやめましょうか!」アセアセ
瑞鶴(あれ? 焦ってる)
瑞鶴(あ、そっか。ひょっとして2人には、加賀がすごく怒ってるように見える?)
瑞鶴(普段クールなのに急に笑顔になったから、笑顔で怒りを隠してるみたいな感じに)
瑞鶴(でも……)
加賀「瑞鶴瑞鶴」ツンツン
瑞鶴「?」
加賀「私たち、フィーリングバッチリだって」ヒソヒソ
瑞鶴「……うん」
加賀「さすがに気分が高翌揚するわ」
瑞鶴「そっすか」
瑞鶴(これが真実っていう)
――演習――
ドーン! ドーン!
瑞鶴「くっ、相手の駆逐艦もやるじゃない!」
翔鶴「一航戦のお2人も素晴らしい動きよ。勉強になるわ」
瑞鶴「言ってる場合!?」
加賀(瑞鶴と一緒の艦隊がよかった)シュン
赤城「五航戦の娘たち成長してますね。嬉しいわ」
加賀(もし砲撃が瑞鶴に当たって怪我でもしたら……)ソワソワ
赤城「私たちも負けていられませんね、加賀さん」
加賀「そうね」バシュバシュ
加賀「あっ」
翔鶴「――瑞鶴! 上よ!」
瑞鶴「!!」
ヒューーン
瑞鶴(爆撃!? やばっ、避けられない!)
加賀「危ない瑞鶴!!」ササッ
瑞鶴「!?!?」
ドーーーン!!
赤城「加賀さん!?」
翔鶴「自分で放った攻撃を自分で!?」
加賀「怪我はない?」プスプス
瑞鶴「う、うん……おかげさまで……」
ヒソヒソ ザワザワ
瑞鶴(ってマズイ! 不審がられてる! 何か理由を考えないと……えっと)
瑞鶴「あれ? 加賀、その艤装ちょっとおかしくない!?」
加賀「え」
瑞鶴「あーやっぱりおかしい! 壊れてる! なーんだ、操縦がきかなかったのね!」
瑞鶴「私を庇うなんて加賀らしくないもんね! びっくりしたー!」
エー ナーンダ ソウイウコトカー オドロイタワー
瑞鶴(よし! なんとかごまかせた!)
加賀「……」シュン
瑞鶴(だから、そうやって肩落とすのやめてほしいんだけど……)
――――――
――――
――
――演習後・間宮――
瑞鶴(はぁ……またあんな事されたら、いよいよ本格的に怪しまれる)
加賀「ねえ瑞鶴」
瑞鶴「なに加賀さん」
加賀「お願いがあるの。ここに間宮パフェがあるでしょう」
瑞鶴「加賀さんが頼んだやつね」
加賀「ええ。頼んだはいいけど、こんな量1人で食べきれるか不安で」
瑞鶴「いつもはその4倍サイズを食べてるでしょ」
加賀「だから、あなたも協力してくれないかしら」
瑞鶴(無視か)
瑞鶴「りょーかい。食べきれなくなったらちょうだい」
加賀「……違うの」
瑞鶴「?」
加賀「私が食べた後じゃなくて、その……」モジモジ
加賀「もう、じれったいわ」
スッ
加賀「はい」
瑞鶴「なんでアイスを掬ったスプーンをこっちに向けるの」
加賀「食べさせたいの」
瑞鶴「は?」
加賀「あーんして食べさせたいの」
瑞鶴「なっ!? 絶対に嫌っ!」カァァ
加賀「でも、これくらいは『ごっこ遊び』のうちに入るでしょう」
瑞鶴「まあそうかもだけど」
加賀「お願い」ウルウル
瑞鶴「……はぁ。分かった……」キョロキョロ
瑞鶴(ちょうど人もいないし今がチャンスかな)
加賀「嬉しい。ありがとう」
瑞鶴「いいから早くして」
加賀「はい、あーん」
瑞鶴「……アーン」パクッ
加賀「どう、おいしい?」
瑞鶴「うん」モグモグ
瑞鶴(め……めっちゃ恥ずかしいっ!!)
加賀「そう」
加賀「よかった」ニコッ
瑞鶴「! ……」
瑞鶴(加賀って、こんな笑顔作れるんだ)
瑞鶴(いつも感情が死んでるのかってくらい仏頂面だから、すごく驚き)
瑞鶴(私の前で見せないだけなのかもしれないけど)
加賀「さあ瑞鶴、もう一口」スッ
瑞鶴「……仕方ないなぁ」
加賀「あーん」
瑞鶴(っていうか、ホントに誰も見てないよね?)
瑞鶴(奥から間宮さんとか出てきたらヤバイんだけど……)チラッ
青葉「」
瑞鶴「」
加賀「瑞鶴、口を閉じないと行儀が悪いわ」
瑞鶴「」タラー
加賀「ほらアイスが垂れてるじゃない。拭いてあげる」フキフキ
青葉「」
瑞鶴「」
加賀「瑞鶴? 本当にどうしたの?」
青葉「……あ……あ……」
青葉「青葉……なーんにも見てませんから……はは……」
加賀「あら青葉さん」
青葉「へへっ、何も見てませんよー……何も……」ジリジリ
瑞鶴「加賀さん、ちょっと待ってて」
加賀「?」
青葉「何も見てませんからぁぁぁ!!」
スタタタッ
瑞鶴「ネズミを引っ捕えるから」
加賀「ネズミ?」
――――
青葉(うっひょおおおお!! これは大大大スクープですよ!!)
青葉(間宮さんにインタビューして帰ろうと思ったら、あの犬猿の仲の2人が!!)
青葉(パフェを食べさせ合ってるなんてぇぇぇぇぇぇ!!)キャー!
青葉(表ではいがみ合ってても裏では恋人!? ラブラブ!? イチャイチャ!?)
青葉(どんな見出しにしようかなぁー! 記事作るのが楽しみ…)
ガシッ
青葉「ぐえっ!?」
青葉「ちょっと! 誰か知らないけど急に人の首根っこを掴むなんて…」
瑞鶴「コ ン ニ チ ハ」
青葉「!?!?!?!?!?」ビクッ
青葉「あ……はは、どーも瑞鶴さん……」
瑞鶴「間宮で何をしてたのかな?」
青葉「な、何って、間宮さんにインタビューですよ」
瑞鶴「そう」
瑞鶴「で、帰ろうとしたら見てしまったと」
青葉「……」
瑞鶴「私たちを」
青葉「ナンノコトデスカ」
瑞鶴「言い逃れすんな」
青葉「イイノガレ? ナニヲ?」
瑞鶴「こ、このぉ……! 言っておくけど!」
瑞鶴「あれは好きでやってるわけじゃないの、仕方なくやってるの!」
青葉「食べさせ合いをですか」
瑞鶴「そ、そう! 理由はちょっと言えないけど……」
瑞鶴「とにかく記事にしたらあんたを許さないからね?」グイッ
青葉「ぐえっ……で、でもスクープ魂が騒いじゃいますよ! 言って欲しくないなら理由を聞かせてください!」
瑞鶴「だからそれは…」
青葉「納得できる理由があるなら心の奥にしまっておきます」
瑞鶴「……ダメ。言えない」
瑞鶴(言ったら私が提督を好きなこともバレちゃうし)
青葉「へー、じゃあやっぱり瑞鶴さんと加賀さんは、お付き合いを…」
瑞鶴「違うったら!! あんたも知ってるでしょ? 私とあいつは犬猿の仲!」
瑞鶴「私はあいつのことが大っ嫌いだし、あいつも私のことが大っ嫌い!! これが事実なの!!」
青葉「な、なるほど……ん? 加賀さん?」
瑞鶴「!?」
加賀「……」
瑞鶴(いつの間に! 待っててって言ったのに……てか、今の聞かれて……)
加賀「……」
スタタタッ
瑞鶴「あ、ちょっと! もーなんでこんなにタイミングが……!」
グイッ
青葉「ぐへぇ!? く、苦しいですぅ!」
瑞鶴「いい? 今回のこと少しでも喋ったら、その時は覚悟して」
青葉「分かりました! 分かりましたから離してください!」
瑞鶴「よし」パッ
瑞鶴「えっと、加賀が走って行った方向は……」
スタタタッ
青葉「げほげほ……死ぬかと思った」
青葉「しかし一体どんな理由があるんでしょう。うー、めちゃくちゃ気になる」
――海辺――
瑞鶴「見つけた! 待って加賀さん!」
加賀「」スタタタッ
瑞鶴「待ってったら!!」ガシッ
加賀「……」
瑞鶴「話を聞いてよ! さっきのは…」
加賀「分かってる」
瑞鶴「……?」
加賀「あれが瑞鶴の本心なのよね。分かってるわ」
加賀「ごめんなさい、私もフォローしないといけなかったのに」
瑞鶴「ち……違うって」
瑞鶴「あれは、青葉に広められると困るから……」
加賀「そうね。私と仲良くしているなんて広まったら、瑞鶴にとても迷惑だもの」
加賀「それに薬の効果が切れた時の私にも」
瑞鶴「……あの、さ」
瑞鶴「大嫌いってのは言い過ぎた。ごめんね」
加賀「……」
瑞鶴「ねえ、こっち見てよ。しっかり向き合って話を…」グイッ
瑞鶴「……!」
加賀「っ……」
瑞鶴「……ごめん……泣くほど傷つけちゃうなんて……」
加賀「もうやめましょう」
瑞鶴「え」
加賀「恋人ごっこ。このまま続けたら変な噂が立ってしまうから」
加賀「瑞鶴、ありがとう。私のワガママに付き合ってくれて」ニコッ
瑞鶴「……」
加賀「明石さんが薬を作ってくれるまで、大人しくしてるから」
加賀「それじゃあこれで」
瑞鶴「…………」
瑞鶴「待って」ガシッ
加賀「――!?」
ギュッ
加賀「ず、瑞鶴……何をして……!」
加賀「今すぐ離れて。こんなとこ誰かに見られたら」
瑞鶴「約束したじゃない」
加賀「……?」
瑞鶴「薬の効果が無くなるまでは、私たちは恋人同士だから」
瑞鶴「だからそんな悲しい顔しないで」
加賀「……瑞鶴……」
瑞鶴「人がいない場所でなら何だってしてあげるから」
瑞鶴「だからさっきみたいに笑って。ね」
加賀「いいの……?」
瑞鶴「うん」
加賀「……ありがとう……」
瑞鶴「……」
瑞鶴(私、何やってるんだろ)
瑞鶴(このまま離れたら解決したのに。もう周りを気にしなくていいのに)
瑞鶴(なんでこんなこと……)
――加賀の部屋――
瑞鶴「ねえ、加賀さん」
加賀「何?」
瑞鶴「どうして私をここに連れて来たの」
加賀「どうしてって」
加賀「人のいない場所でなら、何だってしてくれるんでしょう?」
瑞鶴「……いやいや」
瑞鶴「いやいやいや、あのね。確かにそうは言ったけど」
瑞鶴「そういうことは範囲外っていうかさ」
加賀「え……」ズキッ
瑞鶴(また悲しそうな顔! こればっかりは勘弁して!)
瑞鶴「だ、だってそうでしょ! 私たち女同士だし! そもそも最初に約束して…」
加賀「女同士で何が悪いの?」
瑞鶴「な、何がって……そりゃ色々と……!」ゴニョゴニョ
加賀「座ってお茶を飲むだけなのに」
瑞鶴「へ?」
加賀「?」キョトン
瑞鶴「ああ……なるほど、なるほどね。それならそうと早く言ってよ」コホン
加賀「そこに座って。準備するから」
瑞鶴「あ、はい」スッ
書き溜めが尽きる…
また溜まったら更新します
瑞鶴がさん付けしてしまうのは
加賀の態度がいつもと打って変わり、優しくなっているので呼び捨てしづらいのと
そうなった原因が自分にあって、多少なりとも後ろめたさを感じてるから、という理由です
自分の中では以前の加賀の印象が残っているので、そのまま呼び捨てにしてます
少しですが更新します
瑞鶴(ふー焦ったー。私たちが男女だったら完全にそういうシチュだし)
瑞鶴(っていうか加賀の部屋、初めて入ったけど綺麗に掃除されてる)
瑞鶴(らしいっちゃらしいけど、予想通りすぎてつまんないなぁ)
――――
加賀「……」ニコニコ
瑞鶴「……」ズズズ
加賀「……」ニコニコ
瑞鶴「あの、気になるんだけど」
加賀「え?」
瑞鶴「さっきから嬉しそうに、ずーっと私の顔ばっか見て」ズズズ
加賀「ごめんなさい。嫌だったかしら」
瑞鶴「嫌っていうか不思議に思った。顔に何かついてる?」
加賀「いいえ。ただ、つい見てしまうのよ。瑞鶴がとても可愛くて魅力的だから」
瑞鶴「ぶっ!? ごほっ、げほっ!」
加賀「大丈夫!? タオルを持ってくるわ!」スタタッ
瑞鶴(さ、サラっとなんてセリフを……!)
加賀「持ってきたわ。拭いてあげる」フキフキ
瑞鶴「自分でやるからいいって! ありがとね」
ゴシゴシ
瑞鶴「うわー、これ落ちるかなぁ」
加賀「抹茶なんて出さなければよかったわね」シュン
瑞鶴「加賀さんのせいじゃないから」ゴシゴシ
瑞鶴(せいだけど)
加賀「……仕方ないわね」
加賀「脱いで、瑞鶴」
瑞鶴「は?」
加賀「このままじゃシミになってしまうわ。早めに対処すれば大丈夫だから」グイグイ
瑞鶴「ちょっ、引っ張らないで! このくらい平気だって!」
加賀「ダメよ。鳳翔さんにも迷惑をかけてしまうわ」
瑞鶴「うう……」
加賀「代わりに私が着ていた服を貸すから」
瑞鶴「……」
――――
瑞鶴「着ていた服って、今の服と全く同じじゃん」
瑞鶴「まさかこれ何着も持ってるの? 私服もこれ?」
瑞鶴「まあいいや、さっさと着替えよ」ヌギ
加賀「終わった?」ヒョコッ
瑞鶴「うわあ!?」ササッ
瑞鶴「まだ!! いいって言うまで顔出さないで!!」
加賀「分かった」スッ
瑞鶴「ったく」ヌギヌギ
瑞鶴(にしても、加賀の服を着ることになるなんて思いもしなかった)
瑞鶴(洗濯して乾くまで外に出れないなぁ)ハァ
――――
瑞鶴「ふぅ、着終わった」
加賀「そう」ヒョコッ
加賀「っ!! ……瑞鶴」
瑞鶴「?」
加賀「とっても可愛いっ」ギュッ
瑞鶴「わっ、ちょっと!?」
加賀「こんなに似合うなんてビックリよ」ムギュー
瑞鶴「分かったから離して! 苦しい!」
加賀「ご、ごめんなさい」パッ
瑞鶴「ぜぇ……ぜぇ……」
瑞鶴(胸で窒息死するかと思った)
加賀「でも本当に似合ってるわ。これからの普段着に一着どうかしら?」
瑞鶴「はは……き、気持ちだけもらっとく」
瑞鶴(そんなに似合ってる? 自分じゃ違和感しかないんだけど)
加賀「……ねえ瑞鶴、もう一回抱きしめてもいいかしら。可愛すぎるわ」
瑞鶴「は?」
加賀「お願い」ジリジリ
瑞鶴「や、やめて。お願いだから抑えて」
加賀「一回だけよ、本当一回だけ」ジリジリ
瑞鶴「詰め寄らないでよ! 怖いんだけど!?」ススス
加賀「人のいない場所でなら何だってしてくれるんでしょう」
瑞鶴「言ったけども!! 言ったけどもこういうのはちょっと……!!」
ガッ
加賀「あっ」
瑞鶴「!?」
バフッ
瑞鶴「…………」
加賀「…………」
瑞鶴「……加賀、さん……? 何で急にベッドに押し倒して……」
加賀「ち、違うのよ。床の出っ張りに躓いてしまったの」
瑞鶴「ああ、そういうことか。ビックリしたー」
加賀「……」
瑞鶴「……あのさ」
瑞鶴「早くどいてくれないかなーなんて。あはは……」
加賀「瑞鶴」
瑞鶴「なに」
加賀「どうしても……ダメ?」
瑞鶴「なにが」
加賀「……」
瑞鶴「……ダメ」
瑞鶴「絶っ対にダメ。最初に釘を刺したでしょ? これはごっこ遊びだって」
加賀「でも……」
瑞鶴「早くどいて」
加賀「お願い、キスだけでも」
瑞鶴「だからダメだって! もしキスの一歩を許したら、加賀さん暴走してその先まで…」
加賀「大丈夫。しない自信があるわ」
瑞鶴「キスしない約束を破ろうとしてるのに!?」
加賀「一生のお願いよ。口と口を軽く合わせるだけでいいの」
瑞鶴「ダメ」
加賀「ちょん、でいいの。ちょん、よ」
瑞鶴「何度お願いしてもダメなものはダメ」
加賀「聞いて瑞鶴。ほんの数秒キスしてくれたら、もうこれ以上は求めないわ」
瑞鶴「いい加減にして」
加賀「分かった、キスの明確な時間を設定しましょう。3秒はどうかしら」
瑞鶴「ここぞとばかりに食い下がるなぁ!? 何を言っても私の意思は変わらないから!!」
加賀「でも……胸が苦しいの。あなたをどうにかしてしまいたい気持ちが、ふつふつと……」
瑞鶴「!? ちょっ、それマズいっ……! やめて! どいてったら!」ジタバタ
加賀「痛っ! わ、分かったわ。どくから抵抗はやめて」
瑞鶴「早く離れてぇ!」ジタバタ
加賀「分かったわ瑞鶴、だから落ち着いて…」
ドスッ
加賀「ぐふっ……!?」
瑞鶴「あ」
加賀(肘が……鳩尾に……)
瑞鶴「ご、ごめん。やりすぎた」
加賀「」フラッ…
瑞鶴「へ?」
チュッ
瑞鶴「――――ッ!?!?」
瑞鶴「――ぷはっ! い、いやぁ!!」ドンッ
加賀「」ゴロン
瑞鶴「はぁ……はぁ……!」ドキドキ
瑞鶴「……わ……」ドキドキ
瑞鶴「私の……ファーストキス……!!」カァァ…
瑞鶴「初めてが……嘘でしょ? こんな事故で……!」
また書いたら投下します
少し更新します
パシャッ パシャッ
瑞鶴「!!」
青葉(シャッターチャーンス!)パシャパシャッ
瑞鶴(あいつ!! 窓の外で盗撮を……!!)
青葉「バレた! 撤退!」サササッ
瑞鶴「待てこらっ!! 逃がすかぁぁぁぁ!!」ガラッ
スタタタッ
加賀「う……うぐ……」ピクッ
加賀「あ……あまりの痛みで、動けなかった、わ……」ハァ ハァ
加賀「ご、ごめんなさい瑞鶴。今のは私も予想外というか……」アタフタ
加賀「あら? 瑞鶴はどこ?」キョロキョロ
――――
青葉(うっひょおおおおおお!! 諦めきれず隠れて様子を伺ってたら!)
青葉(お揃いの服を着て、なんとベッドでkissまで!!!!)
青葉(やっぱりお付き合いしてたんですねぇぇぇ!! お2人には性別の壁なんて関係ないんですねぇぇぇぇぇぇ!!)キャー!
青葉(一体どこまで仲が進展してるのか気になるところですが!)
青葉(今はこのデジカメに収めた超貴重な写真を、安全な場所へ…)
ガシッ
青葉「ぐふっ!?」
青葉「ちょっと! 走ってる人の首根っこを掴むのは危険…」
瑞鶴「アオバワレェェェェェ」ゴゴゴゴゴ
青葉「!!!!!!!」ビクッ
青葉「え、えへへ……また会いましたねー……」
瑞鶴「中庭で何してたのかな」
青葉「……」
瑞鶴「手に持ってるカメラで何を撮ったのかな」
青葉「野鳥です」
瑞鶴「貸して」パシッ
青葉「あ!」
瑞鶴「……やっぱり」ピッピッピ
瑞鶴「加賀の部屋を盗撮してたのね」
青葉「……」
瑞鶴(キスのとこもしっかり撮ってあるし!!)カァァ
青葉「……あのー」
青葉「ハッキリ聞きますけど、お付き合いしてるんですよね?」
瑞鶴「してない!!」
青葉「でも、そこに写ってるじゃないですか」
青葉「動かぬ証拠が」
瑞鶴「これはアクシデントなの!! 加賀がつまづいて、私を巻き込んでベッドに倒れたの!!」
青葉「ほうほう。で、イイ雰囲気になってキスを?」カキカキ
瑞鶴「違うしメモんな!!」パシッ
青葉「けど加賀さんは瑞鶴さんに迫ってましたよね?」
瑞鶴(くっ、そこまで見てたのか)
瑞鶴「あれはその……あれよ」
瑞鶴「キスを迫ったんじゃなくて、倒れたついでに敵に捕まった際の抜け出し方を教えてもらってたのよ」
瑞鶴「ほら、私ジタバタしてたでしょ? 力が強くてなかなか上手くいかなくて」
青葉「へー」
瑞鶴「それで何とかしようともがいてたら、肘が鳩尾に当たっちゃって」
瑞鶴「おかげで加賀が倒れてきて……く、口と口が偶然……」
青葉「へー」
瑞鶴(ダメだこいつ、全然信じようとしてない!)
瑞鶴「と、とにかく誤解されると嫌だから、この写真は消すからね」
青葉「えっ!?」
瑞鶴「そもそも盗撮でしょうが! 存在してはならないデータなの! 削除削除っと」ピッピッピ
青葉「うわぁぁ!! やめてください! 酷いですよー!」グイグイ
瑞鶴「酷いのはどっちだ!!」
スタスタ
加賀「何を騒いでるの?」
瑞鶴・青葉「!」
青葉「瑞鶴さんが私の写真を消そうとしてるんです!」
瑞鶴「あんたねぇ……! 無断で人を撮っておいて!」
加賀「貸しなさい」スッ
瑞鶴・青葉「あっ」
ピッピッピ
加賀「……はぁ」
加賀「いい青葉さん? 恐らく瑞鶴も同じことを言ったと思うけど」
加賀「これはあなたが思うような場面ではないわ。私たちは訓練をしてたのよ」
青葉「……」
加賀「この娘が演習で、あまりにも鈍い動きをしてたから」
加賀「私の部屋に呼んで喝を入れていたの。そしたら……」
青葉「つまづいて転び、2人で倒れ込んで、いい機会だから拘束を抜け出す訓練を?」
加賀「そこまで喋ったのね。その通りよ」
青葉「作り話としか考えられません!」
加賀「本当のことなのだから仕方ないわ」
青葉「でも、いつもはあんなに仲の悪いお2人が」
青葉「一緒の部屋で2人きりになって訓練するなんて……」
加賀「私も考え方を変えたのよ。五航戦には鎮守府のために強くなってもらわないといけないし」
加賀「そのためには、嫌いな相手と仲良くすることも必要だと思ったから」
青葉「……」
加賀「そういうことだから、瑞鶴。早く部屋で続きを始めましょう」
加賀「私も暇じゃないのよ。少しの時間も無駄にせずに技を吸収しなさい」
瑞鶴「え……あ、うん……」スタスタ
青葉「待ってください! じゃあ瑞鶴さんが加賀さんの服を着てるのは!?」
加賀「そこは見てなかったのね。この娘、私がせっかく淹れたお茶をこぼしたのよ」
加賀「服が汚れて、放っておくとシミがついてしまうから、洗濯中だけ仕方なく私の服を貸しているの」
青葉「……なるほど」
加賀「もういいかしら。はい、カメラは返すわ」スッ
加賀「スクープを求めてあちこち動き回るのはいいけど、少しは自重しなさいね」スタスタ
瑞鶴「……」スタスタ
青葉「んー……本当に私の思い過ごしなのかなぁ。でもパフェの件もあるしなぁ」
青葉「もうちょっと探ってみようかな、お2人には内緒で。その前にこの写真をパソコンに……あれ?」ピッピッピ
青葉「け、消されてる!? 嘘でしょぉぉぉ!?」ガーン
――――
瑞鶴「……」スタスタ
加賀「……」スタスタ
瑞鶴・加賀「あの」
瑞鶴「! な、なに?」
加賀「いえ、瑞鶴から話して」
瑞鶴「それじゃあ……」
瑞鶴「青葉の誤解を解くの、手伝ってくれてありがとね」
加賀「当然よ。あれは事故なのだから」
瑞鶴「……」
加賀「いえ……そもそも私が求めなければ、こんなことにはなっていなかったわね……」
加賀「本当にごめんなさい」ペコリ
瑞鶴「頭まで下げなくても」
ここまでで
土日にまた更新予定です
あと今更の注意喚起ですが、百合注意です、すみません
瑞鶴が同人拾った人だろうか
とりあえず待ってる
>>67
別人です、調べてみたらすごく面白かった…
加賀「いいえ、下げるべきよ。瑞鶴の唇を奪ってしまった罪は重いわ」
加賀「下げても足りないくらいね。何か罪滅ぼしをさせて欲しい」
瑞鶴「いいって。もう過ぎたことだし」
加賀「でも……」
瑞鶴「そりゃキスしたって事実は、事故とはいえ……ちょっとショックだけどさ……」
瑞鶴「まだ大人のキスじゃなくて良かったなーって、割り切れると思うから」
加賀「……」
瑞鶴「っていうか」
瑞鶴「じ、実は急すぎて、キスした時のことよく覚えてないんだよね!」アハハ
瑞鶴「加賀さんも、私の肘が鳩尾に入ってそれどころじゃなかったでしょ?」
加賀「え? ……ええ」
瑞鶴「だよね! あ、そうだ。あれは無かったことにしない?」
瑞鶴「ベッドに倒れたけど、私たちはすぐに起き上がった。何もなかった」
加賀「……」
瑞鶴「どう?」
加賀「瑞鶴がそう思ってくれるなら、それでいいわ」
瑞鶴「決まりね! 何もなかったのよ、うん! 何も!」
加賀「……」
瑞鶴「よし! じゃあもうこの話はやめにしよう! 早く加賀さんの部屋に行こ?」
瑞鶴「この格好が他の艦娘に見つかったら厄介だし」
加賀「……そうね」
――――――
――――
――
――加賀の部屋――
瑞鶴「おー、しっかり乾いてる!」
加賀「シミもできなくて良かったわ」
瑞鶴「加賀さんが対処してくれたおかげだね! ありがと!」
瑞鶴「それと……ごめんね」ペコリ
加賀「いいのよ。洗濯は日常の一部だし、そのついでだったから」
瑞鶴「あ、うん……お茶の事もそうなんだけど」
瑞鶴「鳩尾、大丈夫? 痛くない?」
加賀「もう平気よ。あれから時間も経ってるけど何ともないわ」
瑞鶴「そっか、良かった。かなり強く入っちゃったし、大きな怪我に繋がったら大変だもん」
瑞鶴「それじゃ、そろそろ夕食の時間だし、また明日ね!」
加賀「え? 食べないの?」
瑞鶴「なんか食欲がなくてさ。さっさとお風呂に入って寝よっかなって」
加賀「!!」
加賀「……私も」
瑞鶴「?」
加賀「私も一緒に入るわ。お風呂に」キリッ
瑞鶴「……」ジー
加賀「じ、冗談よ。そんな目で見ないで」
瑞鶴「はぁ……全く」
加賀「けど大丈夫なの? 食欲がないって、もしかして風邪を…」スタスタ
瑞鶴「っ!!」
瑞鶴「ち、近寄らないで!」ササッ
加賀「えっ」
瑞鶴「あ……ご、ごめん! とりあえずそういうことだからっ! またね!」
スタタタッ
加賀「……瑞鶴」
――――
翔鶴「本当に行かないの?」
瑞鶴「うん」
翔鶴「今日の夕食は瑞鶴の大好物らしいわ」
瑞鶴「お腹空いてないの」
翔鶴「そう……分かった。鳳翔さんには話をしておくから」
瑞鶴「ありがと」
ガチャ
パタン
瑞鶴(……食べる気なんて起きないよ)ハァ
瑞鶴(あー、もう何なの……これ)ドキドキ
瑞鶴(ドキドキがずっと収まらない……)ドキドキ
加賀『けど大丈夫なの? 食欲がないって、もしかして風邪を…』
瑞鶴『っ!! ち、近寄らないで!』
瑞鶴(絶対おかしいって……! あの時、加賀さんが近づいたら余計に胸が……!)ドキドキ
瑞鶴(うー……)ドキドキ
『チュッ』
瑞鶴(って何であのキスが思い浮かぶのっ!?)カァァ
瑞鶴(……いや、まあそれが原因だしね……)
瑞鶴(事故とはいえ……覚えてないわけないじゃない、あんな思いっきり……)
瑞鶴(あれ? てか私、何で今……加賀のことを普通に加賀さんって……)
瑞鶴(建前呼びに引っ張られてる……?)
コンコン
加賀「瑞鶴」
瑞鶴「!!」
加賀「心配だからお見舞いに来たわ。入ってもいいかしら」
瑞鶴「ダ、ダメ!! 来ないで!!」
加賀「え……」
瑞鶴「あ、違っ……! えっと、すっごく調子が悪いから、ゆっくり寝かせて欲しいの!」
瑞鶴「大きい声出してごめんね」
加賀「そ、そう……そういうことなら」
加賀「また明日会いましょう。お大事に」
スタスタ
瑞鶴「……」
ドキドキドキ
ドキドキドキドキ
瑞鶴「……~~~~っ!!」
瑞鶴「あーーもぉーー!! 何なのこれ!!」ジタバタ
――翌朝・食堂――
瑞鶴「……」ボー
瑞鶴(結局ほとんど眠れなかった)
翔鶴「ねえ瑞鶴、やっぱり診察室に行ったほうがいいわ」
瑞鶴「だから大丈夫だって」
翔鶴「でも顔色が悪いし……」
瑞鶴「ちょっと寝不足なだけだから。心配してくれてありがとね」
スタスタ
赤城「おはようございます、翔鶴さん、瑞鶴さん」ニコッ
瑞鶴「!」
翔鶴「おはようございます」ペコリ
ここまでで
毎日少しずつ更新します
加賀「……」
翔鶴「加賀さんも、おはようございます」ペコリ
加賀「ええ、おはよう」スタスタ
加賀「もう体は大丈夫なの?」
瑞鶴「っ!」ビクッ
サササッ
加賀「ず、瑞鶴?」
翔鶴「酷いわ瑞鶴、加賀さんが心配してくれてるのに距離を取るなんて!」
瑞鶴「っ……」ドキドキ
加賀「……!」ピコーン
加賀「本当、気まぐれで心配したのが馬鹿みたいね」シレッ
瑞鶴「!」
加賀「そうよ、ほんの少しだけど心配していたのよ。それなのに」
加賀「あなたはいつも通りの態度を貫くのね。よく分かったわ」
瑞鶴「い……いや……」
加賀「まあ、それだけ機敏に動けるなら演習も大丈夫そうね。覚悟しておきなさい」
瑞鶴「……」
加賀「……?」
加賀「どうしたの瑞鶴、あなたの番よ」ヒソヒソ
瑞鶴「へ?」
加賀「仲が悪いところを見せないとダメでしょう」ヒソヒソ
瑞鶴「あ……」
瑞鶴「ふ……ふん! 望むところよ! 今日こそ、そのすました顔を泣き顔に変えてやるんだから!」
翔鶴「瑞鶴! もう!」
加賀「泣くのはあなたの方よ」
赤城「あはは……また喧嘩が……」
――――
瑞鶴「……」スタスタ
加賀「待って瑞鶴」スタタタッ
加賀「様子が変よ? どうしたの?」
瑞鶴「……」
加賀「もしかして私の演技、どこかおかしかったかしら」
加賀「反省するわ。もっとキツく当たった方が…」
瑞鶴「違う」
加賀「え?」
瑞鶴「……おかしいのは私の方……」ボソッ
加賀「?」
瑞鶴「何でもない。ごめんね、ちょっと考え事してたの」
瑞鶴「それより、そろそろ演習だっけ? 準備しないとね」
加賀「え、ええ」
――演習後――
瑞鶴「……」ボー
翔鶴「――く、――いかく……」
翔鶴「瑞鶴っ! 聞いてるの?」
瑞鶴「!! え、何?」
翔鶴「聞いてなかったのね……私はあなたが心配なのよ」
翔鶴「一体どうしたの? 演習の時もずっと『心ここにあらず』だったでしょう」
翔鶴「そんな様子じゃ、出撃なんて到底無理よ」
瑞鶴「ごめん……」
翔鶴「体調が悪いの?」
瑞鶴「ううん」
翔鶴「じゃあ何か悩みごと? 私でよければ相談して?」
瑞鶴「だ、大丈夫だよ。もう平気だから」
スタスタ
加賀「お疲れ様」
瑞鶴「……!」
翔鶴「加賀さん、お疲れ様です」
加賀「あなた、とても良い動きだったわ。着実に腕を上げているわね」
翔鶴「本当ですか!?」
加賀「ええ、出撃でも頼りにしてる」
加賀「けど問題はこの娘ね」
瑞鶴「……」
翔鶴「やっぱりお気づきですよね。悩みがあるみたいなんですけど」
瑞鶴「だから、大丈夫だってば」
加賀「……翔鶴、外してもらえるかしら」
加賀「この娘には説教が必要よ」
翔鶴「そんな……」
瑞鶴「心配しないで翔鶴姉、私は大丈夫だよ」
翔鶴「……」
スタスタ
加賀「……」
瑞鶴「……」
加賀「翔鶴に言ったこと、嘘じゃないわ」
加賀「あんな隙だらけで海域に行ってみなさい。良い的になって轟沈してしまう」
瑞鶴「分かってるよ」
加賀「本当にどうしてしまったの? 朝からずっとよ」
瑞鶴「分かってる! 自分でも自分が変だってことくらい!」
加賀「? どういうこと?」
瑞鶴(それが分かったら、こんなに悩んでないし……)
加賀「瑞鶴、私はとても心配なのよ」
加賀「翔鶴も言ったように、何かあるなら相談して?」
瑞鶴「……悩みの原因ならハッキリしてるけど」
加賀「教えて」ニコッ
瑞鶴「加賀さん」
加賀「え」
瑞鶴「原因は加賀さん」
加賀「えっと……私、何かしてしまった?」
瑞鶴「したじゃない! 昨日……!」
『チュッ』
瑞鶴「……!!」カァァ
加賀「昨日、なに?」
瑞鶴「な、何でもない!」スタスタ
加賀「どこに行くの!?」
瑞鶴「決めてない!」
加賀「待って瑞鶴!」ガシッ
瑞鶴「や! 放してよ!」グイグイ
加賀「何かしてしまったのなら謝るわ!」グイッ
瑞鶴「!!」
瑞鶴(か、顔が……近……)ドキドキ
加賀「……ひょっとして」
加賀「昨日のキ…」
瑞鶴「ちちち違う!! そそそそれじゃないから!! 決して!!」アタフタ
ここまでで
毎日22時くらいに投下します
加賀「すごく分かりやすいわね」
瑞鶴「違うったら! っていうか無かったことにしようって言ったでしょ!?」
加賀「でも悩みの原因なんでしょう?」
瑞鶴「……」
加賀「やっぱりあれが瑞鶴の心を傷つけてしまったのね」
加賀「本当に、本当にごめんなさい。どう償えばいいのか」
瑞鶴「いいよ、償いなんて」
瑞鶴「傷ついたとかじゃないと思うし」
加賀「じゃあ何なの」
瑞鶴「そこで悩んでるの。な、何ていうか」
瑞鶴「加賀さんの顔を見ると……」ドキドキ
加賀「?」
瑞鶴「……やっぱり何でもない」
加賀「言いかけてやめるのは無しよ。気になるじゃない」
加賀「話して? あなたの力になりたいのよ」ギュッ
瑞鶴「っ!」ドキッ
瑞鶴「手を握らないで!!」ササッ
加賀「えっ」
瑞鶴「あ……い、今のは加賀さんが嫌だったからとか、そういうんじゃなくて」
瑞鶴「ただ急に握られてビックリしただけで」
加賀「そ、そう……」
瑞鶴「……」
加賀「……私、あなたと距離を置くことにするわ」
瑞鶴「へ?」
加賀「悩みの原因が私なら、離れれば解決になるかもしれない」
加賀「これ以上あなたを苦しませたくないもの」
瑞鶴「な、何でそうなるの? 言ったじゃん、私別に傷ついてないし!」
加賀「そうだったとしても、私が瑞鶴を悩ませてる原因であることには違いないんでしょう?」
瑞鶴「……だからと言って、加賀さんが離れれば良いってわけじゃ……」
加賀「やってみないと分からないわ」
瑞鶴「分かるよ!!」
加賀「!」
瑞鶴「それだけは分かる! 離れても絶対に解決にはならないから!」
加賀「……私はあなたがどういう悩みをかかえているのか、ますます分からなくなってきたわ」
瑞鶴(……私も、我ながら何言ってんだろ……)
加賀「……ふふ」
瑞鶴「な、何で笑うの?」
加賀「ごめんなさい。ホッとしたのよ」
加賀「だって私、瑞鶴と離れたくないから」
瑞鶴「っ……!」
加賀「もし受け入れられていたら、部屋に篭って泣いていたかもしれないわ」
瑞鶴「提案しなけりゃ良かったじゃん」
加賀「そうね。でも、瑞鶴のためなら何だってできるから」ニコッ
瑞鶴「……!!」
瑞鶴(よく平気な顔でそんなこと……!)カァァ
加賀「! そうだわ、今思い出した」
瑞鶴「どうしたの?」
加賀「実は今日、間宮さんに注文しておいたデザートを受け取りに行く予定なのよ」
加賀「そろそろ時間なの」
瑞鶴「そうなんだ。行っといでよ、私のことはもういいからさ」
加賀「……お願いがあるのだけれど、いいかしら」
瑞鶴「私に?」
加賀「ええ。私の部屋で待っててもらえる?」
瑞鶴「は?」
加賀「あなたと一緒に食べたいと思って、特製に作ってもらったデザートなのよ」
加賀「頭を悩ませているとは知らず、昨日お願いしてしまって……嫌なら断ってくれて構わないから」
瑞鶴「……いいよ」
加賀「ほ、本当に?」パァァ
瑞鶴「ちょうど甘い物食べたかったところだし」
瑞鶴「加賀さんの部屋で待ってればいいんだよね?」
加賀「ええ、鍵は渡しておくから」スッ
加賀「それじゃ」スタタタッ
瑞鶴(って、どうして引き受けたの私)
瑞鶴(また昨日みたいになるかもしれないのに……まあ加賀さんの様子見る限り大丈夫そうだけど)
瑞鶴(……ん? っていうか『私と一緒に食べたいと思って特製に作ってもらった』って)
瑞鶴(もしかして加賀さん、間宮さんに関係を……!?)
――加賀の部屋――
加賀「お待たせしたわね」ガチャ
瑞鶴「加賀さん!!」
加賀「!? どうしたの?」
瑞鶴「そのデザート、間宮さんに話をして作ってもらったんだよね!?」
瑞鶴「私との間にあったこと…」
加賀「ああ、大丈夫よ。このケーキを見てもらえば分かるわ」
瑞鶴「……デカくない?」
加賀「そうかしら」
瑞鶴「普通のホールケーキの3倍はあるでしょ」
加賀「特製だから当然よ」パカッ
瑞鶴「!」
瑞鶴「見る限り、普通のショートケーキだね」
加賀「でしょう。間宮さんには『私一人で食べる分』と説明したから」
加賀「瑞鶴と私の顔が描いてあるとか、そんなことはないわ」
瑞鶴(それでこのサイズか)
瑞鶴「美味しそうだけど、特製感はなくない?」
加賀「形よりも質よ。このケーキを作る材料は全て最高級の物を使っているの」
瑞鶴「へぇー」
瑞鶴(そう言われると、なんか特製感が出てくるかも)
ここまでで
提督は犠牲になったのだ…百合の犠牲にな
今日の更新は0時になります
加賀「もう少し待ってて、今お茶を用意するから」
瑞鶴「うん」
瑞鶴(と、ケーキを頂く前に)スタスタ
ガラッ
瑞鶴(よし、青葉はいない。また隠し撮りなんてされたら、たまらないからね)
ピシャッ
瑞鶴「……ふぅ」
瑞鶴「……」ドキドキ
瑞鶴(なんか、落ち着いてきたら変に緊張してきた……なんで?)ドキドキ
――――
パクッ
瑞鶴「……」モグモグ
加賀「どう?」
瑞鶴「美味しい」
瑞鶴「めちゃくちゃ美味しい! こんなの生まれて初めて食べたかも!」キラキラ
加賀「ふふ、良かった」
瑞鶴「加賀さんも早く食べて! ほっぺた落ちるから!」ニコニコ
加賀「……」ジー
瑞鶴「? 私の顔にクリームついてる?」
加賀「いいえ。はしゃぐ瑞鶴が狂おしいほど可愛くて、思わず凝視してしまったの」
瑞鶴「っ!」
瑞鶴(またこの人は……!)
加賀「クリームまでついていたら悶え殺されていたわ……危なかった」
瑞鶴「そんなわけないでしょ」
加賀「食べる前に心を落ち着けるわ」スー ハー
加賀「では、いただきます」
パクッ
加賀「本当ね。すごく美味しい」モグモグ
瑞鶴「でしょ? さすが特製って感じだよね。こんな美味しい物食べさせてくれてありがとう」
加賀「喜んでもらえて何よりよ」
加賀「……はい、あーん」スッ
瑞鶴「!?」
瑞鶴「き、急に何」
加賀「何って、恒例の食べさせ合いよ」
瑞鶴「『当然でしょ?』みたいな顔しないでよ……」
加賀「当然よ、だって恋人なんだから。昨日も受け入れてくれたじゃない」
加賀「ほらもう一度、あーん」スッ
瑞鶴「うぅ……」ドキドキ
瑞鶴「あ、あーん」
パクッ
瑞鶴「……」モグモグ
加賀「どうかしら」
瑞鶴「うん……美味しい……」カァァ
加賀「ッ……!!」
加賀「ダメよ私!!」パァンッ!
瑞鶴「!?」ビクッ
瑞鶴「加賀さん……なんで自分を叩いたの……?」ススス
加賀「引かないで。か、喝を入れたのよ……危うく瑞鶴を襲いそうになったから」
瑞鶴「え」
加賀「安心して。もう悪い私は消し飛んだわ、恐らく」
瑞鶴「恐らく!? 怖いんだけど!!」
加賀「大丈夫だから怯えないで……」
加賀「けど何というか……コホン。昨日と比べて、今日の瑞鶴は可愛すぎるわね」
瑞鶴「は!? と、唐突に何言って……!」カァァ
加賀「ほら、そうやってすぐに顔を真っ赤にするでしょう」
加賀「思えば今朝も……こういうの何ていうのかしら」
加賀「そう、しおらしいのよ」
瑞鶴「しおらしい?」
加賀「まさしくその通り。しおらしいから心にグッと来るのね」
加賀「一体どうしたの? 昨日とは様子が……あっ」
加賀「ひょっとして瑞鶴の悩みと関係があるのかしら」
瑞鶴「!」
加賀「昨日のあれが原因って言ってたわよね? それで瑞鶴はこんなにしおらしくなってしまった」
瑞鶴「……!」
加賀「となると、考えられるのは……」
瑞鶴「待って!!」
加賀「!?」
加賀「ビックリしたわ」
瑞鶴「ご、ごめん。私のことはいいからケーキ食べようよ!」
瑞鶴「今度はこっちから食べさせてあげるね! はいあーん!」
加賀「!!!」
加賀「……あーん」パクッ
モグモグ
瑞鶴「どう?」
加賀「幸せよ」
加賀「こんなに幸せでいいのかしら。瑞鶴に食べさせてもらえるなんて」
瑞鶴「あはは、大げさだって!」
加賀「もう一口いいかしら」
瑞鶴「もちろん! その前に今食べてるの飲み込んでね!」
加賀「ええ」モグモグ
瑞鶴(…………)
――――
加賀・瑞鶴「ごちそうさまでした」
加賀「美味しかったわね」
瑞鶴「うん……でも食べ過ぎじゃない? 夕飯食べられるの?」
加賀「もちろんよ。デザートは別腹って、よく言うじゃない」グッ
瑞鶴(とはいえこの量をほとんど……)
加賀「さて、次は何をしようかしら」
瑞鶴「次?」
加賀「せっかくだし何かして遊びましょう。今日はもう演習出撃はないでしょう?」
瑞鶴「まあ……」
加賀「ダメ?」
瑞鶴「ダメじゃないけど、何するの」
加賀「それを考えるのも遊びの一つよ。遊びはすでに始まってるわ」
瑞鶴「ふふっ、何それ」クスクス
加賀「あ」
瑞鶴「?」
加賀「また見られたわ。瑞鶴の笑顔」
加賀「今までずっと、怒ったり慌てた表情しか見られなかったから」
瑞鶴「そうだっけ。結構笑ってたと思うけど」
加賀「笑いにも種類があるでしょう。純粋な笑顔は、ケーキを食べた時と今ので2回目よ。とても貴重」
瑞鶴(……確かに私って、加賀さんの前で面白おかしいのが理由で笑ったことなかったかも)
加賀「やっぱり素敵ね」
瑞鶴「へ?」
加賀「瑞鶴の表情よ。怒った顔も困った顔も、真っ赤になった顔も魅力的だけど」
加賀「やっぱり1番は笑顔だと思うわ」ニコッ
瑞鶴「ぐっ……!」
瑞鶴(恥ずかしいセリフを、よくもまあスラスラと……)カァァ
加賀「さて、何をしようかしら。遊ぶ道具はトランプくらいしかないけど」
瑞鶴「え? トランプ持ってるの?」
加賀「持ち主は赤城さんよ。二航戦の娘たちを含めた4人で遊ぶのよ」
瑞鶴「あー、なるほど……じゃあ神経衰弱でもやる?」
瑞鶴「あとはポーカーとか、スピードとかあるけど」
加賀「どれも楽しそうね。ちょっと待ってて、トランプを取ってくるわ」
スタスタ
また明日に
今日と同じ時間になると思います
加賀「アメリカから取り寄せたのよトランプ中々隙が無くて大変だったたみたいだけど」
トランプ「ンーッ!ンーッ!」口にテープ
瑞鶴(……楽しそう、かぁ)
瑞鶴(大勢いたら盛り上がるんだろうけど、2人だとどうなるかな)
瑞鶴(つまらなくなって、途中でやめそうだなー……)
加賀「持ってきたわ」スタスタ
瑞鶴「オッケー、じゃあ私がカードきるね」
加賀「瑞鶴、提案があるわ。神経衰弱をやりましょう」
加賀「記憶力を鍛えるのにも役立つと思うから」
瑞鶴「加賀さんらしい理由だね。いいよ」
瑞鶴(数分後には違う遊びを考えてそうだけど)シャッ シャッ
――数十分後――
加賀「これとこれ」スッ
瑞鶴「うわぁぁぁちょっと! また取られたぁぁぁ!」
加賀「まだまだね」フフッ
瑞鶴「むー……! まだまだこれから!」
加賀「残念ながら、まだ私の番よ」
加賀「行くわ! あれとそれ! それとこれ!」スッ スッ
瑞鶴「ずっと加賀さんのターン!!」ガーン
加賀「――ふぅ、つい熱くなってしまった」
瑞鶴「そこそこ楽しかったね。正直、すぐに飽きると思ってたんだけど」
瑞鶴「ってか加賀さん強すぎ……どんどんカードが無くなっていくんだもん」
加賀「記憶力には自信があるの」クスッ
瑞鶴「むー……」プクー
加賀「……ね、ねえ瑞鶴。お願いがあるのだけれど」
瑞鶴「?」
加賀「あまり可愛い仕草をしないでもらえるかしら。理性がもたないわ」
瑞鶴「可愛い仕草?」
加賀「ジト目で頬を膨らませるなんて、襲ってくださいと言ってるようなものよ」
瑞鶴「いやそれ加賀さんの心の問題でしょ」
加賀「あと、ゲームに夢中になりすぎて前かがみになるのもやめて」
加賀「鎖骨が丸見えで意識してしまうわ」
瑞鶴「まるで男の人みたいな着眼点!? 鎖骨なら別にいいでしょ!!」
コンコン
翔鶴「加賀さん、いらっしゃいますか?」
瑞鶴「! 翔鶴姉だ」
加賀「ちょっと待ってて」スッ
瑞鶴「待って……! 私がここにいることは……」
加賀「もちろん秘密にする」スタスタ
ガチャ
加賀「何か用?」
翔鶴「あ、こんにちは。実は瑞鶴を探しているんですけど」
翔鶴「どこにも見当たらないんです。心当たりはありませんか?」
加賀「知らないわね」
翔鶴「そうですか……どこに行ったのかしら」
加賀「何か用事があるの?」
翔鶴「はい。実はこれから、一週間後の作戦について話し合う予定で」
瑞鶴(あっ……!)
加賀「そんな大事なことを。あの娘、すっぽかすつもりね」
翔鶴「ただ忘れてるだけだと思います。見かけたら伝言をお願いできますか?」
翔鶴「すぐに私のところに来て欲しいって」
加賀「分かった。ついでにキツく言いつけておくわ」
翔鶴「で、伝言だけでいいですから!」
パタンッ
加賀「……ということらしいわ」スタスタ
瑞鶴「うわーバカだ私、すっかり忘れてたよ。ごめんね翔鶴姉……」
加賀「その言葉、翔鶴に直接言ってあげて」
瑞鶴「そうする。ごめんね加賀さん、遊んでたのに」
加賀「いいのよ。ケーキを食べるついでだったし、私が引き止めたのが悪いわ」
瑞鶴「そんなことないって。ケーキすっごく美味しかったし、神経衰弱も楽しかったよ!」
瑞鶴「ありがとね!」ニコッ
加賀「っ……」
ギュッ
瑞鶴「へ?」ドキッ
加賀「ごめんなさい。我慢できなかった」
加賀「もうちょっとだけ抱きしめさせて」ギュー
瑞鶴「……」
加賀「……ありがとう。ごめんなさい」パッ
瑞鶴「え……あ、うん……」
加賀「もうこんなことしないから」
瑞鶴「うん……そ、それじゃ……!」スタスタ
加賀「……」
ガチャ
パタン
瑞鶴(び……ビックリした……!)
瑞鶴(何するのかと思ったら、抱きついてくるなんて)
瑞鶴(……)
瑞鶴(……加賀さんのぬくもり、まだ残ってる……)ドキドキ
瑞鶴(って何気持ち悪いこと言ってんの!? どうかしてるって私……!)
瑞鶴(で……でも……)
加賀『昨日のあれが原因って言ってたわよね? それで瑞鶴はこんなにしおらしくなってしまった』
加賀『となると、考えられるのは……』
瑞鶴(考えられるのは、一つしかないよね)
瑞鶴(やっぱりそういうことなのかな……私って……)
瑞鶴(……ううん、違う)
瑞鶴(違う! 絶対に違う! そんなわけないでしょ、だって女同士だし!)
瑞鶴(きっとキスが衝撃的すぎて未だに引きずってるだけよ!)
瑞鶴(だって私が……私が好きなのは、一人だけなんだから)
――――
翔鶴「――こんな感じの段取りだから、頭に入れておいてね」
瑞鶴「……」ボー
翔鶴「瑞鶴? 聞いてるの?」
瑞鶴「えっ!? えっと……」
翔鶴「はぁ、まだボーッとしてるのね。加賀さんにお説教されただろうから、あまり言いたくはないのだけど」
翔鶴「そんな調子だと危険よ? とても演習はおろか出撃なんてさせられないわ」
瑞鶴「……ごめんなさい」
ここまでで
明後日からは22時に更新できると思います
日跨ぎ更新になります…
翔鶴「……。やっぱり私には言えない悩みなの?」
瑞鶴「うん」
翔鶴「気が向いたら声をかけてね。いつでも相談に乗るから」ナデナデ
瑞鶴「……うん」
翔鶴「あ、そうだわ! これから二航戦の2人と間宮に行くんだけど、瑞鶴もどう?」
翔鶴「一緒に美味しい物を食べましょう!」
瑞鶴「せっかくのお誘いだけど、私今お腹空いてなくて」
翔鶴「そ、そうなの……」
瑞鶴「また今度一緒に行こ。私から誘うね」
翔鶴「ええ、楽しみにしてるわ」
――鎮守府廊下――
瑞鶴(はぁ……気分転換に散歩でも、と思ったけど)
瑞鶴(ダメだー。頭の中が一杯でどうにも……)
提督「瑞鶴」
瑞鶴「!!」ビクッ
提督「ちょうどいいところに」スタスタ
瑞鶴(提督……)
提督「実は手伝って欲しい事があるんだ。これから用事は?」
瑞鶴「無い。いいよ、手伝う」
提督「助かるよ。ついて来てくれ」スタスタ
瑞鶴「……」スタスタ
――――
瑞鶴「うわ、何ここ……埃だらけ」
提督「色んな資料が保管されてるんだ。ここのところ忙しくて掃除をしていなかったからな」
瑞鶴「提督がしてるの? 私たちに任せればいいのに」
提督「お前たちは遠征に演習、出撃といった重要な仕事があるだろ」
提督「こういうのは俺がやるべき仕事だ」
瑞鶴「でも、提督だって書類片付けたり鎮守府の運用したりで忙しいでしょ」
瑞鶴「妖精さんに任せたら? 中庭で遊んでるとこ見かけるし」
提督「なるほど……いい考えかもしれないな。頼んでみよう」
瑞鶴(掃除してる最中に鬼ごっことか始めそうだけど)
瑞鶴「で、私に手伝って欲しいことって?」
提督「ああ、実は……秘伝のレシピを探し出して欲しいんだ」
瑞鶴「は?」
提督「昔、軍で凄く美味しいと評判だった料理があって」
提督「そのレシピがここにあるらしいんだが1人じゃキツくてな」
提督「ほとんどの棚は調べ終わったが見つからなかった。そこで、最後にこの大きな棚を一緒に調べて欲しいんだ」
瑞鶴「かなりデカいね……いいけど、何でそんなもの探してるの」
提督「鳳翔と間宮にお願いされたんだ。どうしても作ってみたいと」
瑞鶴「ふーん……分かった。私も食べてみたいし」
提督「頼むよ。俺は右から調べる」
瑞鶴「私は左からね、オッケー」
提督「えーっと……」キョロキョロ
瑞鶴(……お人好しっていうか何ていうか)
瑞鶴(人から頼みごとされたら必ず引き受けちゃうんだから)
瑞鶴(まあ、そこが素敵なところなんだけど)チラッ
提督「これも違うか」
瑞鶴(……)
瑞鶴(……何でだろう)
瑞鶴(やっぱり私、変だ……おかしくなっちゃった……)
瑞鶴(普段なら緊張でこんなにスラスラ話せなかったし)
瑞鶴(部屋に2人きりなんて良いシチュエーション、絶対モノにしてやるって意気込むのに)
瑞鶴(……攻めようって思わない……)
瑞鶴(カッコイイとは思うけど)チラッ
提督「……? どうかしたか?」
瑞鶴「あ、ううん。何でもない」
瑞鶴(今のだって、目が合ったら顔真っ赤にして慌てるはず)
瑞鶴(胸が……あんまりドキドキしないっていうか……)
瑞鶴(おかしい、こんなの絶対におかしい)
瑞鶴(私、提督のことが好きなのに。好きで好きでたまらないはずなのに)
瑞鶴(……心に一番に思い浮かぶ顔は……)
提督「おっ、これか」
瑞鶴「え?」
提督「どうやら時間を消費せずに済んだようだ。今見つけたよ」スッ
提督「まさか内容と一致しないカバーをかけられていたとは」
瑞鶴「えーっと、手伝いは終わり?」
提督「だな。ありがとう瑞鶴、お礼に間宮で何か奢らせてくれ」
瑞鶴「!」
提督「お前、確かクリームあんみつが好きだったろう」
瑞鶴「…………」
瑞鶴「……いいや」
提督「え?」
瑞鶴「大したことしてないし、それに」
瑞鶴「私、今お腹が一杯だから」
提督「一杯って、何か食べたのか?」
瑞鶴「うん……美味しい物をね。ごめんね」
提督「いや、いいんだ。じゃあまた日を改めて誘おう」
瑞鶴「うん」
瑞鶴「……」
瑞鶴「…………」
――夕方・食堂――
ワイワイ
赤城「ここ、空いてますか?」
翔鶴「はい」
赤城「失礼しますね」スッ
加賀「……」
翔鶴「加賀さんも、どうぞ座ってください」
瑞鶴「……」モグモグ
加賀「そうさせてもらうわ。赤城さんの隣に…」
瑞鶴「ここ」ポンポン
加賀「……!」
瑞鶴「私の隣に来たら? 空いてるし」
加賀「ず……瑞鶴……?」
ここまでで
読んでくださってありがとうございます
加賀・翔鶴・赤城「……」
瑞鶴「な、何でみんな驚いてるの」
赤城「それは……」
翔鶴「だって……」
加賀「どういう心境の変化かしら。あなたが私を隣に招くなんて」
瑞鶴「別に。強いて言うなら」
瑞鶴「仕事上の関係っていうの? 建前でも仲良くした方が、出撃の時に連携で良い結果を産むことになるかもしれないじゃん」
瑞鶴「私も子供じゃないし、あんたと少しは仲良くしてあげてもいいかなって思っただけ」
加賀「……」
翔鶴「瑞鶴……偉いわ!」ギュッ
瑞鶴「うわっ!? ちょっと、テーブルを越えて抱きつかないで!」
赤城「待ちわびていた日が来たわね!」グッ
瑞鶴「赤城さんも、すごい喜びよう」ハハ…
加賀「……あなたもようやく成長したのね」
加賀「隣、失礼するわね」スッ
瑞鶴「う、うん」
加賀「……」
翔鶴「ふふ、こうして2人が並んでる姿を見ると嬉しくなってしまうわ」ニコニコ
赤城「この勢いで本物の仲良しになってくれたらいいのに」ニコニコ
瑞鶴「ははは……」
加賀「瑞鶴、瑞鶴」ヒソヒソ
瑞鶴「ん?」
加賀「どういうつもり? 皆の前では、いつものように仲悪く見せるんじゃなかったの?」
瑞鶴「んー、まあ」
瑞鶴「こうやって言っといた方が、2人でいるとこ見られても言い訳しやすいでしょ」
瑞鶴「青葉に盗撮された時みたいに慌てる必要もないし」
青葉「……」ジー
加賀「確かにそうね」
瑞鶴「何かマズかった?」
加賀「いいえ、むしろ嬉しいわ。周りを気にせず一緒にいられるなんて」
青葉「……」ジー
加賀「……!!」
加賀「青葉さん、いつの間に」
瑞鶴「えっ」
青葉「あ、どーも」
瑞鶴「どーもってあんた……! 今の聞いてた!?」
青葉「え? 何ですか?」
加賀「しらを切らないで。今、私たちの会話を……」
青葉「何か話してたんですか?」
瑞鶴「すぐ後ろにいたくせに!」
青葉「怒らないで! 本当に知りませんよ! ただ、今日の夕飯は何を頼もうかなって考えてて」
青葉「瑞鶴さんが食べてるお魚料理か、加賀さんが食べてるお肉料理か」
青葉「どっちも美味しそうなんですよね。困りました」ウーン
瑞鶴「怪しい……」
青葉「疑いが晴れないか……まあ私の背負う宿命かな」
青葉「っていうか、聞かれたらマズいことでも話してたんですか?」ニヤニヤ
瑞鶴「……!」ドキッ
加賀「そんなことはないわ」
青葉「そうですか。でもこんなところで内緒話はやめた方がいいですよ」
青葉「下手すれば誰かに聞かれちゃいますからね!」
瑞鶴「……」
加賀「そうね、気をつける」
青葉「ではこれで! お魚料理にしよっと♪」スタスタ
加賀「……大丈夫かしら」
瑞鶴「分かんない。実は全部聞いてて嘘をついてる可能性が……」
翔鶴「あの」
瑞鶴・加賀「!!」
翔鶴「青葉ちゃんに詰め寄ってましたけど、2人で秘密のお話を?」
加賀「秘密というほどではないわ。今日あった演習について確認したいことがあったの」
瑞鶴「そうそう! 大したことない会話だったんだけど、青葉の聞き耳立てる癖に腹が立ったのよ」
赤城「ああ……青葉さんは情報という情報を手中に収めようとしますからね」
瑞鶴「プライバシーの侵害ってやつね。許せない」
翔鶴「でも、瑞鶴と加賀さんのご飯を眺めてただけなんでしょう?」
瑞鶴「……」
加賀「本当にそうならいいのだけれど……」
――夕食後――
瑞鶴「ねえ加賀さん」
加賀「何かしら」
瑞鶴「えっとさ……明日、私たち休みでしょ」
瑞鶴「もしよければなんだけど、2人で本土へ遊びに行かない?」
加賀「……」
瑞鶴「加賀さん?」
加賀「そ……それはつまり……」
加賀「デートの誘い!?」
瑞鶴「ちょっ、声がデカいって!」
加賀「ごめんなさい。取り乱してしまったわ」
加賀「でもデートよね? そうでしょう?」
瑞鶴「グイグイ来るね。まあ……デート、だね」カァァ
加賀「嬉しい、飛び上がるくらい嬉しいわ」
加賀「けど急に何で?」
瑞鶴「……ほら、明後日からは元の関係に戻っちゃうでしょ?」
加賀「あ……」
瑞鶴「例の薬が完成するしさ。だから、その前にもっと恋人っぽいことした……させてあげようかなって」
加賀「瑞鶴……」
瑞鶴「ど、どうかな」
加賀「断るわけがないわ。しましょう、デート」ニコッ
瑞鶴「よかった! じゃあ明日の朝10時くらいに玄関集合ね」
瑞鶴「赤城さんや他のみんなには、『仲を深めるため買い物に行く』って言っといて」
加賀「いいの? デートと思われないかしら」
瑞鶴「大丈夫でしょ、まだ仲が悪いで通ってるだろうし」
瑞鶴「嫌そうな空気を作ってれば問題ないよ」
加賀「そんな演技できるかしら。楽しみすぎてワクワクしてしまうかも」
瑞鶴「そこは頑張ってよ」アハハ
ここまでで
明日は多めに投下したい
16時頃に投下します
翔鶴「瑞鶴、先に部屋に行ってるからね」
瑞鶴「あっ、待って! もう終わったから!」
瑞鶴「それじゃ、また明日ね」
加賀「ええ」
スタタタッ
翔鶴「加賀さんと何を話してたの?」
瑞鶴「色々と。っていうか何で笑顔?」
翔鶴「あなたと加賀さんが仲良くしてるからよ」
瑞鶴「そんなに嬉しいの」
翔鶴「とってもね」
瑞鶴(……この様子じゃ、明日一緒に買い物行くなんて言ったら……)
赤城「加賀さん、お待たせしました! デザートのプリンをお持ち帰りして…」
赤城「どうしたんです? すごく嬉しそうですけど」
加賀「気のせいよ」
赤城「でも、顔に出てますよ」
加賀「気のせい」
赤城「そうですか……?」
――翌朝――
翔鶴「……」ニコニコ
瑞鶴「よし、こんなもんかな」
翔鶴「……」ニコニコ
瑞鶴「……さっきから、満面の笑みで私を見つめるのやめてくれない?」
翔鶴「だって、加賀さんと一緒にお買い物だなんて」
瑞鶴「昨日も言ったでしょ? これは『仕方なく』なんだから!」
翔鶴「うふ、分かってるわ」
瑞鶴「じゃあ行ってくるから。夜までには帰ってくると思う」ガチャ
翔鶴「行ってらっしゃーい!」
スタスタ
瑞鶴「そろそろ10時だけど……もう来てるかな?」
――鎮守府玄関――
瑞鶴「……」キョロキョロ
加賀「おはよう」
瑞鶴「……おはよう」キョロキョロ
加賀「どうしたの?」
瑞鶴「他に誰もいないか確認したの」ススス…
瑞鶴「っていうか加賀さん……ちゃんと私服持ってたんだね」
加賀「ああ、これは赤城さんに貸してもらったのよ」
加賀「いつもの格好だと目立ってしまうからって」
瑞鶴「だね。私も人目につくの覚悟してたんだけど」
瑞鶴「似合ってるよ」ニコッ
加賀「ありがとう。瑞鶴も抱きしめたくなるくらい可愛いわ。天使が舞い降りたかと思ってビックリした」
瑞鶴「はは……褒めてくれるのは嬉しいけど、やめてね」
加賀「そろそろ10時ね。ちょっと早いけど行きましょうか」
瑞鶴「うん。そういえば加賀さん、何分前に来たの?」
加賀「30分前」
瑞鶴「早くない?」
加賀「楽しみすぎて気持ちが抑えきれなかったの」
瑞鶴「……赤城さんの前で嫌そうな顔できた?」
加賀「努力はしたわ」
瑞鶴「めっちゃ不安なんだけど……」
スタスタ
青葉「……」コソコソ
青葉「……」スタタタッ
――――――――
――――――
――――
ワイワイ ガヤガヤ
加賀「久々にここへ来たわ」
瑞鶴「加賀さん、休日はほとんど鎮守府で過ごしてるもんね」
加賀「瑞鶴はよく来るんでしょう」
瑞鶴「うん。翔鶴姉や二航戦、軽空母の娘たちと遊びに」
瑞鶴「ってか何で知ってるの?」
加賀「その娘たちから話を聞くのよ。今日はどこへ行って何を食べたとか」
加賀「ところで、これからどこへ?」
瑞鶴「一応プランみたいなのは考えてるんだ。お昼までまだ時間あるし」
瑞鶴「艦娘のみんなに言い訳したように、買い物でもしようかなって」
加賀「いいわね」
瑞鶴「何見る? 服? それとも…」
加賀「行き先は瑞鶴に任せるわ。あまり詳しくないから」
瑞鶴「オッケー、じゃあ行こっか」
――――
瑞鶴「わー、これ可愛いー!」
加賀「ワンピース?」
瑞鶴「暑くなってきたし、新しいの買おうかなって思ってたんだよね」
瑞鶴「でも……高いなぁ」ピラッ
加賀「試着してみたら?」
瑞鶴「んー、いいや。着ちゃうと余計に欲しくなっちゃうし」
瑞鶴「それよりこの服、加賀さんに似合いそう!」スッ
加賀「……派手ね」
瑞鶴「もっと落ち着いたのが好き? じゃあこれは?」スッ
加賀「可愛すぎるわ」
瑞鶴「そうかな、これを着た加賀さん見てみたいけどなー」
加賀「……瑞鶴がそう言うなら、着てみる」スッ
瑞鶴「いいの? ありがと、待ってるね」
スタスタ
――――
加賀「……」
瑞鶴「……」
加賀「ど、どうかしら」
瑞鶴「……可愛い!」
加賀「本当?」
瑞鶴「めっちゃ似合ってる! 予想以上!」
加賀「嬉しい、けど……恥ずかしいわね……スカートが短すぎるし……」カァァ
瑞鶴(いつも着てる服と変わらないと思うけど)
加賀「着替えるわ」
瑞鶴「えー、もったいないなー」
――――
加賀「次は何を見るの?」
瑞鶴「こうやって歩きながら、目に止まった店に入ればいいよ」
瑞鶴「あ! あそこの雑貨屋さん入ってみない?」
加賀「面白そうね。行きましょう」
カランカラン
瑞鶴「……ヘンテコな物が置いてあるね」
加賀「しっ、店員さんに聞こえるわ」
瑞鶴「あ」
瑞鶴「加賀さん、これかけてみて」スッ
加賀「? 大きなサングラスね」
瑞鶴「早く早く!」
スチャッ
加賀「似合うかしら」
瑞鶴「ぷっ!」
加賀「ず、瑞鶴?」
瑞鶴「ごめんっ……なんか加賀さんがそれかけてると面白っ……!」プルプル
加賀「……」
加賀「ポーズも決めてみるわ」キリッ
瑞鶴「ぶふっ!? や、やめてっ……! 笑うとお店に迷惑かけちゃうから……!」プルプル
――――
加賀「これ、素敵ね」
瑞鶴「本当だ。マグカップ? ネコのようなイヌのような」
加賀「何だっていいわ。とても可愛い」
瑞鶴「気に入ったんなら買っちゃえば? 値段もそれなりだし」
一時中断します、19時くらいにまた始めます
加賀「……やめておく」
瑞鶴「どうして?」
加賀「デートは始まったばかりなのに、手荷物になってしまうわ」
瑞鶴「そんなことか。鎮守府に送ってもらえばいいじゃん」
加賀「え?」
瑞鶴「私たちも普段、何か買ったらそうしてるよ? 提督に無駄使いするなよって釘刺されるけど」ハハ…
瑞鶴「店員さんに頼めば手続きしてもらえると思うからさ」
加賀「それなら……買おうかしら」
瑞鶴「オッケー! 聞いてくるね!」スタスタ
――――
カランカラン アリガトウゴザイマシター
加賀「待ち遠しいわ」ワクワク
瑞鶴「よっぽど気に入ったんだね」
加賀「早くあれでお茶を飲みたい」
瑞鶴(コーヒーじゃないんだ。まあそこは個人の自由だけど)
加賀「……!!」ピタッ
瑞鶴「加賀さん、どうかした?」
加賀「……」ジー
瑞鶴(一体何を見て……)チラッ
瑞鶴(……ゲーセンか)
加賀「ねえ瑞鶴、提案があるのだけれど」
瑞鶴「遊びたいの?」
加賀「……」コクリ
瑞鶴「いいよ。入ろっか」
――――
ウィーン ガヤガヤ フルコンボダドン!
加賀「騒がしいわね」
瑞鶴「そりゃゲーセンだし」
加賀「……」キョロキョロ
瑞鶴「何探してるの?」
加賀「ゲームセンターといえば、あれよ」
瑞鶴「あれと言われても……クレーンゲームとか?」
加賀「! そうね、それもお約束の1つよ」
瑞鶴(お約束……?)
加賀「あったわ。まずはクレーンゲームね」スタスタ
チャリン
瑞鶴「ぬいぐるみかー。加賀さん、どれ欲しいの?」
加賀「……瑞鶴は」
瑞鶴「?」
加賀「瑞鶴はどれが欲しい? とってあげるわ」キリッ
瑞鶴(ああ、お約束ってこういうことか)
瑞鶴「んーと、じゃあ……あのアザラシのぬいぐるみ」
加賀「任せて」ウィーン
瑞鶴(っていうか加賀さん、クレーンゲームやったこと……)
ウィーン
スカッ
加賀「……」
瑞鶴(無いよね)
加賀「もう一度」チャリン
瑞鶴「無理しないでいいからね」
加賀「任せて」ウィーン
ウィーン
キャッチ
瑞鶴「お!」
加賀「……」ウィーン
ポテンッ
瑞鶴「あー惜しい!」
加賀「なるほど。ぬいぐるみ本体を掴むと難しそうね」
加賀「あの輪っかに引っ掛ければいけるかしら」チャリン
瑞鶴(出撃の時によく見る真顔でクレーンゲームの考察してる)
ウィーン ウィーン
キャッチ
瑞鶴「すごっ! 綺麗に輪っかに……!」
加賀「……」ウィーン
ガシャンッ
加賀「ふぅ、とれた」ヒョイッ
瑞鶴「加賀さんすごーい! クレーンゲーム初めてでしょ?」
加賀「そうね。でもコツを掴めば難しくはないわ」
加賀「はい、これ」スッ
瑞鶴「ありがとう! わー可愛い……」ギュッ
瑞鶴「大切にするね!」ニコッ
加賀「っ!!」ドキッ
ブハッ
瑞鶴「加賀さん!? 鼻血が吹き出したけど!!」
加賀「そ、そのようね」
加賀「たぶん瑞鶴の可愛さを直視したせいよ」
瑞鶴「バカなこと言ってないの! ぬいぐるみ持ってて!」スッ
瑞鶴「ティッシュティッシュ……あった!」
――――
加賀「助かったわ」
瑞鶴「はぁ……服に血はつかなかった?」
加賀「大丈夫よ。それより瑞鶴、私思い出したの」
瑞鶴「何を」
加賀「プリクラよ。せっかくゲームセンターに来たのだから、プリクラを撮らないと」
瑞鶴「ああ、なるほどね。鼻にティッシュ詰めたままでいいの?」
加賀「問題ないわ、もう止まったから」スッ
瑞鶴「ちょっ……っと? 本当だ止まってる」
加賀「やっぱり、瑞鶴の可愛さを直視したことによる一時的な鼻血だったのよ」
瑞鶴「それもういいから! 止まったなら良かったよ」
加賀「さあ、プリクラを撮りましょう」スタスタ
瑞鶴「分かったってば。全く、どれだけ楽しみにしてるの」フフ
――――
チャリン
瑞鶴「えっと、コースは……それと仕上がり……」
加賀「何をしているの?」
瑞鶴「プリクラの設定だよ。あ、背景は何にする?」
加賀「背景?」
瑞鶴「プリクラの背景。色々あるけど」
加賀「ハートはあるかしら」
瑞鶴「あるよ」
加賀「ハートがいい」
瑞鶴「……分かった」
瑞鶴(ま、まあカップルだしね。あとはテキトーに)
瑞鶴「よし! 加賀さん、撮影始まるからここに入って!」
加賀「もう?」
瑞鶴「もう! 早く!」
イクヨー!
サン ニー イチ パシャッ
――――
瑞鶴「あははっ、加賀さん焦りすぎだってこの顔!」
加賀「仕方ないわ……変顔してなんて急に言われても無理よ」
瑞鶴「このハニワみたいなポーズも面白いし」クスクス
加賀「もう触れないで」カァァ
加賀「というか、目が大きくなっているのは気のせいかしら」
瑞鶴「プリクラってこういうもんだよ。私たちの撮ったやつ、見たことない?」
加賀「無いわね」
瑞鶴「そっか、今度見せてあげるよ! みんな面白い顔してるから」
加賀「……」
加賀「できれば今日がいいわ」
瑞鶴「今日? でも、疲れてすぐ寝ちゃうかも」
加賀「今日しかダメなのよ。だって明日になったら……」
瑞鶴「……あ……」
加賀「……」
瑞鶴「そうだよね……明日になったら、加賀さん……」
加賀「ごめんなさい。せっかくのデートなのに、気落ちしてしまうようなこと」
瑞鶴「ううん、私こそごめんね」
瑞鶴「まだ時間はあるんだし、もっと色んなとこ見て回ろ?」
加賀「……そうね。楽しまなきゃ」
瑞鶴「……」
瑞鶴(そういえば、もし明日加賀さんが元に戻ったら)
瑞鶴(記憶はどうなるんだろ。この3日間のこと覚えてるのかな)
また明日投下します
――2時間後――
瑞鶴「お腹が空いてきたなぁ。そろそろご飯食べない?」
加賀「そうね」
瑞鶴「加賀さんは何か食べたい物ある?」
加賀「私のことはいいわ。瑞鶴のオススメの……場所で……」ピタッ
瑞鶴「本当? じゃあこの近くに美味しいパスタのお店があるんだけど、そこに……あれ?」
加賀「……」ジー
瑞鶴「加賀さん、何を見て……」スタスタ
『挑戦者求む! 巨大ラーメン! 30分以内に完食すれば無料!』
瑞鶴「……」
加賀「……はっ!」ピクッ
加賀「な、何でもないわ。パスタのお店? 楽しみね、行きましょう」
グゥゥゥゥゥ…
加賀「!! 違うのよ、今のは時刻を告げるお腹の音で……!」カァァ
瑞鶴「ここにしよっか」クスッ
加賀「いいえ、瑞鶴のオススメのお店にしましょう」
瑞鶴「でも食べたいんでしょ? ラーメン」
加賀「いいえ」
瑞鶴「よだれ垂れてるよ」
加賀「……」
瑞鶴「ほら、入ろ。私もここで一度食べてみたかったし」
瑞鶴「ね?」
加賀「……」
――――
瑞鶴「へー、結構オシャレ」キョロキョロ
加賀「ごめんなさい。私のワガママで」
瑞鶴「いいって、そんなに落ち込まないで」
加賀「でもデートでラーメン屋は……」
瑞鶴「まあ確かにゆっくりお喋りとかはできないけど、後でカフェに寄ればいくらでもできるし」
瑞鶴「今は美味しい物を堪能しよ!」
加賀「瑞鶴……」
店員「お待たせしました、こちら特製醤油ラーメンです」スッ
瑞鶴「きた! すっごい美味しそー!」キラキラ
加賀「いい匂いね。チャーシューも肉厚で…」
店員&店員「「お待たせしましたー! こちら巨大ラーメンになります!」」
瑞鶴(え、2人がかりで?)
ドンッ!
瑞鶴「でかっ!?」
店員「これから30分以内に完食すれば無料です。準備はいいですか?」ニヤリ
加賀「ええ」
店員「よーい……スタート!」
加賀「いただきます」スッ
瑞鶴「まさかこんなに大きいなんて……大丈夫なの?」
加賀「私のことはいいから、自分のを食べて」
瑞鶴「うん。いただきます」スッ
瑞鶴「ズズッ……んー! 美味しい!」
加賀「箸がどんどん進むわね」ズズズ
加賀「ネギはシャキシャキ、チャーシューはとろける」モグモグ
加賀「極上のスープにコシのある麺、どれをとっても一級品よ」
瑞鶴(解説してる余裕あるのかな)
――――
カランッ
加賀「ごちそうさまでした」フゥ
瑞鶴「……」
店員「……」
加賀「何分経ったかしら」
店員「えっ……あ、20分です……」
加賀「チャレンジはクリア?」
店員「そうですね……おめでとうございます……」ブルブル
加賀「こんな美味しい物を食べることができて無料なんて、驚きだわ」
瑞鶴「あはは……店員さんたちは加賀さんに驚いてると思うよ」
加賀「毎日通いたいくらいね」
店員「!!」
――――
アリガトウゴザイマシター
瑞鶴「にしても加賀さん、普通のペースで黙々と食べてたね」
瑞鶴「大食いってもっとバクバクいくものだと」
加賀「あなたも言ってたでしょう。美味しい物は堪能しないと」
瑞鶴「そうなんだけどさ。まあ加賀さんだからできるのかな」
瑞鶴「……あ!」
加賀「?」
瑞鶴「ごめん加賀さん、ちょっと寄りたいところあるんだけどいいかな」
加賀「ええ、もちろんよ」
――パーツショップ――
加賀「ここは……」
瑞鶴「デートで行くような場所じゃないよね」
加賀「何か買う予定なの?」
瑞鶴「うん。明石さんに迷惑かけちゃったから」
瑞鶴「欲しがってた部品をいくつかプレゼントしようと思って」
加賀「きっと喜ぶわ」
瑞鶴「せめてもの償いだから、喜んで欲しいとかじゃないんだけどね」ハハ…
瑞鶴「ちょっと待っててね。これ終わったら良いところへ案内するから」
加賀「良いところ?」
瑞鶴「着いてからのお楽しみだよ」
加賀「……?」
――水族館――
瑞鶴「ここ!」
加賀「水族館……行ったことないわ」
瑞鶴「魚の泳ぐ姿がすごく綺麗なんだよ。あとね、ペンギンショーのペンギンが超可愛いのー!」キャー
加賀「……果たして瑞鶴に叶うのかしら……」ボソッ
瑞鶴「え? 今なんて言ったの?」
加賀「何でもないわ。私もワクワクしてきた、早く入りましょう」
瑞鶴「うん!」
スタスタ
加賀「……綺麗ね。本当に」ボー
瑞鶴「でしょ? 魚の群れ、ずっと見ていたくなるよね」
瑞鶴「あ、見て見て! カワウソ!」
瑞鶴「はー、可愛すぎでしょマジで……抱っこしてみたいなぁ……」
加賀「……私は瑞鶴を抱っこしてみたい」ボソッ
ここまでで
読んでくださってありがとうございます
瑞鶴「ね、加賀さんもそう思うでしょ?」
加賀「えっ。ええ……そうね」
加賀「この子なんて、お腹を見せて眠ってる」
瑞鶴「もう可愛さ凶器だよね。そういえば、翔鶴姉もカワウソにメロメロだったなぁ」
瑞鶴「顔を緩ませて、『離れたくない! ずっとここにいるわ!』なんて言ってさ」クスクス
加賀「簡単に想像できるわ」フフフ
――――
係員「それでは、成功したら拍手をお願いしますね!」
係員「ペンギンさんの滑り台でーす!」
スイー
瑞鶴「か、可愛いすぎる……」パチパチパチ
係員「次はハードルを飛び越えまーす」
ピョンピョン
係員「はいよくできましたー!」
瑞鶴「可愛いー! すごーい!」パチパチパチ
加賀「上手ね」
瑞鶴「ねー! それにピョコピョコ歩いてるのがもう……!」
加賀「たまらなく可愛いわ」
瑞鶴「言葉にならないくらいにね! あー抱っこしてみたい」
加賀「ふふ」
――――
――2時間後・カフェ――
瑞鶴「ふー……楽しかったね」
加賀「ええ、とっても」
瑞鶴「カワウソとペンギンの可愛さが頭から離れない」ハァ…
加賀「……」
加賀「瑞鶴、誘ってくれてありがとう」
瑞鶴「うん、喜んでもらえて良かったよ。あの水族館すごく人気だから、加賀さんにも…」
加賀「水族館もそうだけど、デートに誘ってくれたことにお礼を言いたいの」
加賀「こんなに素敵な時間を過ごせるなんて、もう死んでもいいわ」
瑞鶴「そ、そんな大げさな……」
コソコソ
青葉「……」ジー
瑞鶴「ん?」
青葉「!!」ビクッ
サササッ
瑞鶴「……」
加賀「どうしたの?」
瑞鶴「いや……何でもない。私の気のせい」
瑞鶴「それより、まだまだ時間はあるんだからたっぷり楽しもう!」
加賀「まだ何か予定があるの?」
瑞鶴「予定ってほどじゃないけど、この近くに展望台があってね」
瑞鶴「そこから見る夕日がめちゃくちゃ綺麗なんだ。加賀さんに見せたいと思って」
加賀「夕日……見てみたいわ。でもまだ時間があるわね」
瑞鶴「うん。だからそれまでブラブラして、色んなこと見ながらお喋りしようかなって」
瑞鶴「景色の良い場所がたくさんあるから」
加賀「いいわね。賛成よ」
瑞鶴「それじゃ、これ飲んだら行こっか」
加賀「……」
加賀「瑞鶴、頼みがあるの」
瑞鶴「なに?」
加賀「そのカプチーノ、一口くれないかしら」
瑞鶴「……これストローなんだけど」
加賀「知ってるわ」
瑞鶴「……」
加賀「……ごめんなさい。調子に乗ってしまった」
加賀「間接的とはいえキスだものね、許して」
瑞鶴「はい」スッ
加賀「!」
瑞鶴「別に気にしないよ」ニコッ
加賀「……ありがとう」
青葉「……」ジー
――――
――――――
――――――――
――夕方・展望台――
瑞鶴「加賀さん、早く早く!」
加賀「今行くわ」スタスタ
加賀「……! 凄い……海が夕日でオレンジ色に染まってる」
瑞鶴「鎮守府から見る夕日もいいけど、ここのも良いでしょ」
加賀「素晴らしいわ。見とれてしまう」
瑞鶴「……」チラッ
加賀「……」
瑞鶴(……加賀さん、綺麗……)ドキドキ
加賀「よかった」
瑞鶴「え?」
加賀「最後に瑞鶴とデートできてよかった」
加賀「色んな場所に行って、楽しく会話して」
加賀「こんな美しい景色を眺めることができて、よかった」
瑞鶴「……」
加賀「本当にありがとう。私のワガママを最後まで聞いてくれて」
瑞鶴「ワガママ?」
加賀「恋人ごっこに付き合ってくれたでしょう」
瑞鶴「それは……もともと私が原因でこうなったんだし」
加賀「……瑞鶴にとっては罪滅ぼしかもしれないけど」
加賀「それでも、夢のような時間だったわ」ニコッ
瑞鶴「……」
瑞鶴(その通り)
瑞鶴(全ては私が悪い。こんなことになった原因は私)
瑞鶴(恋人ごっこに付き合ったのも、後ろめたい気持ちがあったからだし)
ここまでで
また明日に投下します
瑞鶴(……でも)
瑞鶴(恋人として一緒に過ごしてるうちに、気持ちがどんどん……)
加賀「涼しい風ね。カモメも気持ちよさそうに飛んでる」
瑞鶴「そうだね」
瑞鶴(最初は気のせいだと思ったけど、あのキスが頭から離れなくなって。ずっと悩んで)
瑞鶴(モヤモヤをはっきりさせようって、加賀さんをデートに誘って)
瑞鶴(そしたら……時間を忘れるくらい楽しかった)
瑞鶴(もっと近づきたくなって、色んなこと話して)
加賀「夕日が沈んでいくわ」
瑞鶴「うん」
瑞鶴(加賀さんを見るたび、胸がキュッってなって)
瑞鶴(……これ、そういうことだよね……?)
瑞鶴(認めなきゃいけないのかな……私……)
瑞鶴(……か、加賀さんのことが……)
加賀「瑞鶴」
瑞鶴「何?」
加賀「……今なら、誰も見てないわね」
加賀「最後のお願いがあるの」
瑞鶴「……」
加賀「あなたを抱きしめたい。この気持ちが無くなってしまう前に、もう一度だけ」
瑞鶴「……」
瑞鶴「……いいよ」
加賀「ありがとう」
ギュッ
瑞鶴「……」ドキドキ
加賀「……」ギュー
瑞鶴「……」ドキドキドキ
瑞鶴「加賀さん」
加賀「?」
瑞鶴「私ね……私……もしかしたら……」
瑞鶴「加賀さんのこと……っ」
スタスタ
加賀「!! 誰か来るわ」ササッ
瑞鶴「あ……」
男「おー! すげー綺麗!」
女「ね? 言ったでしょ?」
男「来てよかった!」
瑞鶴「……」
加賀「ごめんなさい。それで、何?」
瑞鶴「……ううん、何でもない。それよりそろそろ帰らないとね」
加賀「? そうね」
――――――――
――――――
――――
――鎮守府・工廠――
明石「こんなことしなくてもいいのにー」ニコニコ
瑞鶴「だって、ただでさえ仕事が忙しいのに私のお願いを聞いてもらって悪いし」
明石「まあ忙しいには忙しいけど、惚れ薬なんてロマンのある物を研究開発するのは」
明石「私の趣味でもあるからね」
瑞鶴「じゃあいらない?」
明石「そんなことないそんなことない! ありがたくもらっとく」アセアセ
明石「にしても、あなたたち……」
瑞鶴・加賀「?」
明石「仲が良くなったとか、街へ行ってさらに仲を深めてるとか、鎮守府で噂になってるけどいいの?」
瑞鶴「気にしないよ」
明石「いいんだ。一体どういう心境の変化?」
瑞鶴「べ、別に……」
加賀「建前でも仲良くした方が、出撃の時に連携で良い結果を産むことになるかもしれないから」
加賀「というのが、私と一緒にいる時の理由に使えるのよ」
加賀「そうよね瑞鶴?」
瑞鶴「……うん」
明石「なるほどね。でも加賀さんが元に戻ったらどうするの?」
瑞鶴「あっ、そのことで聞きたいんだけど」
瑞鶴「元に戻ったら、この3日間の記憶はどうなるの? 無くなっちゃう?」
明石「……」
瑞鶴「?」
明石「あー……そうだよね」
明石「ごめん、どうなるか私にも分からない」
瑞鶴「えっ?」
明石「相手を惚れさせる効果だけを意識して作ってたから」
明石「効果が切れたらどうなるかとか考えてなかった」
瑞鶴「無くならない可能性はあるの?」
明石「まあどちらかといえば、そっちの方が高いと思うけど」
瑞鶴「……そっか」
明石「けど、記憶が無くなれば元の加賀さんに戻っても事無きことを得るんだけどね」
明石「記憶があるままだったら、どうなるんだろう」
加賀「何も変わらない」
瑞鶴「!」
加賀「と、信じたいわ」
加賀「私はきっと、瑞鶴のことを好きでい続けてる」
明石「今の加賀さんだからそうやって言いますけどね……」
瑞鶴「……」
加賀「あ……ごめんなさい。こういう考え方、瑞鶴に迷惑よね」
瑞鶴「え。いや……」
ガチャ
赤城「加賀さーん! ここにいますか?」
明石「!」
加賀「赤城さん、どうしたの?」
赤城「よかった。実は手伝って欲しいことがあって」
加賀「……今じゃなきゃダメかしら」
赤城「はい、明日の演習の準備なんです」
加賀「……」
瑞鶴「何してるの? 早く行けばいいじゃない」
加賀「!」
ここまでで
読んでくださってありがとうございます
すみません、2時くらいの投下になりそうです
加賀「でもあなたと過ごす時間が……」ヒソヒソ
瑞鶴「演習の準備は大事でしょ。いいから手伝ってあげて」ヒソヒソ
加賀「……分かったわ、終わったらすぐに戻る」ヒソヒソ
赤城「加賀さん?」
加賀「待って、今行く」スタスタ
瑞鶴「……」
明石「瑞鶴、なんかあなた加賀さんに優しくなってない? あんなに嫌がってたのに」
瑞鶴「……明石さん、ちょっといいかな」
明石「ん?」
瑞鶴「お願いがあるんだけど」
――――
明石「無効化の薬を飲ませるのを待って欲しい?」
瑞鶴「うん」
明石「まあ飲ませるかどうかは瑞鶴次第だけど……いや」
明石「ダメ。加賀さん自身のことを考えたら、少しでも早く元通りにしてあげないと」
瑞鶴「それはそうだけど」
瑞鶴「せめてあと1週間だけでも」
明石「本当にどうしちゃったの。一昨日とはすごい違い」
瑞鶴「……」
明石「理由があるの? 教えて」
瑞鶴「……じ、実はね」モジモジ
瑞鶴「驚かないでね」
明石「内容による」
瑞鶴「ああ、じゃあ驚くと思う」
瑞鶴「実は私……加賀さんのこと、気になってるの」
明石「……」
瑞鶴「ごめん、ややこしくない言い方すると」
瑞鶴「加賀さんを、恋愛対象として……意識してるの」
明石「……」
明石「……は?」
明石「はぁぁぁぁぁぁ!?」
瑞鶴「そうなるよね。自分でも戸惑ってるんだけどさ」
明石「いや! っていうか、え!? 何!? もう一度言って!」
瑞鶴「落ち着いて……」
明石「無理でしょ! あの瑞鶴が加賀さんに……! そもそも女同士なのに……!?」
明石「冷静に考えてみて、それ本当に恋心なの? 別の感情でしょ?」
瑞鶴「私も最初そう考えたよ」
瑞鶴「でも加賀さんといると、提督と一緒にいる時と同じ気持ちになるんだ」
瑞鶴「ドキドキして……幸せで……ずっと一緒に居たいって……」モジモジ
明石(お、乙女の顔……!!)
瑞鶴「提督と会う機会もあったんだけど、その時あんまりドキドキしなくて」
明石「勘違いじゃないの」
瑞鶴「それは……分かんない」
明石「……3日間よ」
明石「たった3日間で、好きだった人を何とも思わなくなって」
明石「嫌いだった人を好きになったって?」
瑞鶴「別に嫌いでは無かったけど」
明石「あなたと加賀さんの間に一体何があったの」
瑞鶴「そ、それは……」カァァ
明石「!!」
明石「ま、まさか……!」ワナワナ
明石「しちゃったの?」
瑞鶴「は?」
明石「セック…」
瑞鶴「ばっ!? してないって!!」カァァ
明石「耐えられなくなった加賀さんに無理やり……」
瑞鶴「……襲われそうにはなった」
明石「襲われたの!?」ガーン
瑞鶴「でも一線は越えてない! これは断言できるから!」
明石「そ、そう」
瑞鶴「ただアクシデントがあってキスはしちゃったけど」
明石「キスしたの!?」ガガーン
瑞鶴「アクシデントだから!!」
明石「はー……結構踏み込んでたのね……」
瑞鶴「……」
明石「……もしかして」
明石「薬を飲ませるのを待って欲しいのは、今の加賀さんと一緒にいたいから?」
瑞鶴「あと、自分の気持ちを確かめたいから」
明石「確かめてどうするの」
瑞鶴「……」
明石「待って、コーヒー飲んでちょっと落ち着く」ゴクゴク
瑞鶴「私も飲んでいい?」
明石「ふぅ、どうぞ」トクトクトク
スッ
瑞鶴「ありがと」
明石「……瑞鶴」
明石「仮にあなたが、加賀さんのことを好きになってしまったとする」
明石「でも、あなたが好きなのは今の加賀さんであって、以前の加賀さんじゃない」
瑞鶴「……」
明石「今の加賀さんは幻だから忘れなさい」
明石「それと、あなたが原因で加賀さんに迷惑をかけたのに、それを長引かせるなんて」
明石「やってはいけないこと」
瑞鶴「……」
明石「分かってるでしょ?」
瑞鶴「……うん」
明石「薬、明日の朝に完成できるから。一緒に来てね」
瑞鶴「……」
明石「返事は?」
瑞鶴「……はい」
明石「よし」
瑞鶴「……」ゴクゴク
瑞鶴「コーヒーありがと」スッ
瑞鶴「それじゃ……」スタスタ
ガチャ
パタン
明石「はぁ……」
明石「まさかこんなことになるなんて……」
青葉「なるほど、そういうことだったんですね」
明石「!」
明石「青葉ちゃん!? 今の会話……!」
青葉「ええ聞いてました。それどころか」
青葉「一昨日から瑞鶴さんと加賀さんの様子がおかしいと感じ取り、尾行をしてました」ニヤリ
明石「さ、さすがね……」
明石「……まさか、この事を記事に……?」
青葉「うーんそうですねー。どうしよっかなー」
明石「お願いやめて! 明るみに出たら、元に戻った加賀さんや提督に怒られちゃう!」ガタガタ
青葉「提督? 怒りますかね?」
明石「無駄にお金を使うなって。前に発明でやらかしたことがあって、今度変なもの作ったら必要な分のお金しか回さないって」ブルブル
青葉「自業自得じゃないですか……」
青葉「まあ安心してください。記事にはしませんから」
明石「本当!?」
青葉「瑞鶴さんと加賀さんが本当に恋人の関係になった、とかだったら考えますけど」
青葉「薬の効果で一時的なものなんて……いや、1つの事件として公開するならいける?」
明石「青葉様!! お願いいたします!! どうかご慈悲を!!」ペコリ
ここまでで
今日から22時の予定です
0時になります、すみません
青葉「わ、分かりましたよ! 頭を上げてください。明石さんにはお世話になってますし」
明石「ありがとうございます!」
青葉「敬語もやめてください……」
青葉「でも、なんか切ないですよね」
明石「切ない?」
青葉「瑞鶴さんと加賀さんですよ。相思相愛なのに」
明石「いや、薬の効果だし、瑞鶴自身が蒔いた種だからね」
青葉「それはそうですけど」
青葉「ラブラブなお2人、これからも見ていたいなぁ」
明石「……そういう趣味が?」
青葉「趣味というか、お互い好きなのに結ばれない恋って、なんか胸に来ませんか?」
明石「来ない。っていうか、どうせネタ目的でしょ」
青葉「いえいえ、幸せになって欲しいという願いもありますよ!」
明石(も?)
青葉「おっと、もうこんな時間ですか」
青葉「実は私、これからやらねばならないことがあるので……これで失礼します」スタスタ
明石「待って! 今回のことは本当に…」
青葉「分かってますよ、一度した約束は守りますから!」ニコッ
ガチャ
パタン
明石「大丈夫かなぁ」
―夜・食堂――
瑞鶴「はぁ……」
瑞鶴(結局来なかったな。工廠の前で待ってたのに)
翔鶴「瑞鶴、加賀さんとのお買い物は楽しかった?」
瑞鶴「うん、まあそこそこ」
翔鶴「良かった! 仲は深まったみたいね」ニコニコ
瑞鶴「それは分からないけど」
翔鶴「またまたー」
スタスタ
赤城「ここの席、空いてますか?」
翔鶴「はい! どうぞ!」
加賀「……」
翔鶴「加賀さんもどうぞ」
加賀「ええ」スタスタ
加賀「ここ、座るわね」スッ
瑞鶴「……」
翔鶴「ふふ、自然に瑞鶴の隣に座るなんて」
赤城「以前の加賀さんじゃ考えられませんね」
加賀「いちいち触れないでもらえるかしら……」
赤城「恥ずかしがらなくてもいいですよ」
加賀「……何を言っても無駄ね」
スッ
加賀「ごめんなさい瑞鶴。準備が長引いてしまったの」ヒソヒソ
瑞鶴「仕方ないよ、気にしないで」ヒソヒソ
瑞鶴「それより後で話があるんだ。演習場に来てくれる? 大事な話だから」
加賀「分かったわ」
――演習場――
加賀「どうしてこんなところで?」
瑞鶴「2人きりでいても、訓練してたって言い訳できるでしょ」
瑞鶴「……」
加賀「話って、何かしら」
瑞鶴「あのね。無効化の薬、明日の朝に完成するんだって」
加賀「そう、予定通りね」
加賀「できればもっと一緒にいたかったけど」
瑞鶴「……」
加賀「ただ、あなたにとっては『ようやく』ね」
瑞鶴「え……?」
加賀「明日の朝になれば、私と仲良くしないで済むわ」
瑞鶴「そ、そんな言い方……!」
明石『あなたが好きなのは今の加賀さんであって、以前の加賀さんじゃない』
明石『今の加賀さんは幻だから忘れなさい』
瑞鶴「……そうだね」
瑞鶴「明日からはいつもの関係に戻る。喧嘩ばっかする、いつもの関係に」
加賀「……」
瑞鶴「あれ? ちょっと違うかな」
瑞鶴「もし加賀さんの記憶が残ってたら、みんなに『仲を深めてる』ってこと思い出して」
瑞鶴「少しだけ仲良くなるかな?」
加賀「どうなるのかしら」
瑞鶴「あー、でも結局怒られて仲が悪くなるかも。私のせいでこうなったんだし」
瑞鶴「記憶が無くなるなら私が事後処理できるけどね」
瑞鶴「んー……まあ後で考えればいいや」
加賀「……」
加賀「瑞鶴、最後にもう一度だけ……」ボソッ
瑞鶴「ん?」
加賀「……何でもないわ」
加賀「それで、話は終わりかしら」
瑞鶴「うん、これだけ伝えたかったの」
瑞鶴「明日の8時くらいに工廠集合ね」
加賀「分かった」
瑞鶴「じゃ、またね」スタスタ
加賀「ええ……」
瑞鶴「……」スタスタ
ピタッ
瑞鶴「加賀さん」
加賀「何かしら」
瑞鶴「……何でもない。ごめんね」
スタスタ
加賀「……」
瑞鶴(……伝えればよかったかな……私の気持ち……)
瑞鶴(ううん、これでいい。だってあの加賀さんは幻なんだから)
瑞鶴(……)
ここまでで
土日は多めに投下したい…
――翌朝・工廠前――
瑞鶴「……」
瑞鶴(あんまり眠れなかった)
ガチャ
明石「あれ……? 瑞鶴、もう来たの……?」ズーン
瑞鶴「おはよう。加賀さんももうすぐ……って、なんか暗くない?」
明石「……」
瑞鶴「何かあったの?」
明石「気づいちゃったの」
瑞鶴「何を?」
明石「よく考えれば分かることだったんだけど」
明石「加賀さんが元に戻って、もし記憶が残ってたら」
明石「謝罪する余地もなく怒られる気がする……」
瑞鶴「ああ……うん」
明石「怖い」
瑞鶴「だね。ごめんね、私のせいで」
明石「もう許したよ。パーツプレゼントしてくれたし」
明石「ところで加賀さんは?」
瑞鶴「8時にここで集合って伝えたから、そろそろ来ると思う」
明石「……よし、覚悟を決めるか」ハァ…
瑞鶴「完成したんだよね」
明石「バッチリね」
瑞鶴「……」
――10分後――
明石「……」
瑞鶴「……」
――20分後――
明石「……」
瑞鶴「……」
――30分後――
明石「来ない」
瑞鶴「おかしいな、もうとっくに時間過ぎてるのに」
明石「ちゃんと伝えたの?」
瑞鶴「8時に工廠前って言ったよ」
明石「夜の8時と間違えたとか?」
瑞鶴「それはないと思う。明日の朝に薬が完成するって言ったし」
明石「じゃあどうしたんだろう」
瑞鶴「……ちょっと見てくるね」
スタタタッ
――――
コンコン
瑞鶴「加賀さん? いる?」
瑞鶴「返事がない……いないのかな」
翔鶴「瑞鶴? 加賀さんの部屋の前で、どうしたの?」
瑞鶴「翔鶴姉! 加賀さん見なかった?」
翔鶴「えっ! あなた……ついに加賀さんを、さん付けして呼ぶようになったのね!」
瑞鶴(あ、しまった!)
瑞鶴「違う違う! 翔鶴姉につられちゃっただけ」アセアセ
瑞鶴「それより見てない? 用があって探してるんだけど」
翔鶴「どこにいるか知ってるわよ」
瑞鶴「ホント!?」
翔鶴「ええ、弓道場で赤城さんと訓練していたわ」
瑞鶴「弓道場?」
瑞鶴(何でそんなところに……約束忘れてる?)
瑞鶴「ありがとう!」スタタタッ
翔鶴「ふふ」ニコニコ
――弓道場――
スタタタッ
瑞鶴「はぁ、はぁ……!」
赤城「あら? ずいぶん急いでますけど、どうしたんです?」
瑞鶴「赤城さん……加賀さ…」
瑞鶴「か、加賀はどこに?」
赤城「休憩所にいますけど」
瑞鶴「ありがとうございます!」スタタタッ
赤城「……?」
――――
加賀「ふぅ……」
瑞鶴「いた! 加賀さん!」スタタタッ
加賀「?」
瑞鶴「探したんだよ? まさか弓道場にいるなんて」
加賀「……」
瑞鶴「昨日、工廠前に集合って言ったよね。何で来なかったの?」
瑞鶴「何か理由がある? 夜の8時と間違えちゃったとか」
加賀「……」
瑞鶴「黙ってないで何か言ってよ」
加賀「……」
加賀「あなた、さっきから何を言ってるのかしら」
瑞鶴「へ?」
赤城「加賀さん! そろそろ演習場に行きませんか?」
加賀「そうね、行きましょう」スッ
スタスタ
瑞鶴「……」ポカーン
瑞鶴「ちょ……ちょっと待ってよ!」ガシッ
加賀「! 何をするの」
赤城「どうかしました?」ヒョコ
瑞鶴「あ、赤城さん! ちょっと加賀と話があるんで待っててもらえますか!」グイグイ
赤城「? はい」スッ
加賀「……」
瑞鶴「何をするの、じゃないでしょ。薬が完成したんだよ」
瑞鶴「明石さんのところに行ってすぐにでも飲まなきゃ」
加賀「薬?」
瑞鶴「無効化の薬。忘れたわけじゃないよね?」
加賀「……。意味が分からないわ」
瑞鶴「え……」
瑞鶴「意味が分からないって……何が?」
加賀「あなたがさっきから言ってること全てよ」
加賀「突然ここに来たかと思えばよく分からないことを喋って」
瑞鶴「……」
加賀「それに慣れ慣れしいのは何故? 悪巧みでもするつもりかしら」
瑞鶴「……」
加賀「……」
瑞鶴「……」
赤城「加賀さん! もうすぐ始まっちゃいますよ!」
加賀「今行く」
加賀「それじゃあ演習だから。あなたも次でしょう、準備しておきなさい」スタスタ
瑞鶴「……待って!」
瑞鶴「か……加賀さん……」
加賀「……? さん付けなんて、やっぱり何か企んでいるのね」
加賀「1つ言っておく。悪戯をする気なら覚悟をしておきなさい」
スタスタ
瑞鶴「……」
瑞鶴「…………」
瑞鶴(……まさか……)
――工廠――
瑞鶴「……」トボトボ
明石「瑞鶴、加賀さんは?」
瑞鶴「……」
明石「……瑞鶴?」
瑞鶴「……」
瑞鶴「明石さん」
明石「?」
瑞鶴「確か、惚れ薬の効き目……いつ切れるか分かんないって言ってたよね」
明石「え、ええ」
瑞鶴「3日くらいで切れる可能性もあったんだよね」
明石「あったわね」
瑞鶴「……」
明石「……」
明石「……え? まさか……」
瑞鶴「うん。多分だけど、加賀さん元に戻ってる」
瑞鶴「いつもみたいにクールな感じだったよ、無効化の薬が完成したって伝えたら」
瑞鶴「意味が分からないって言われたし」
明石「……本当なの?」
瑞鶴「うん」
ここまでで
来週中には終われそう
明石「本当の本当?」
瑞鶴「明らかに態度が冷たかったし」
瑞鶴「実際に見れば分かる。私たちがよく知ってる加賀さんだったよ」
明石「……そう」
明石「で、この3日間のことは覚えてた?」
瑞鶴「詳しく聞いてないから分かんないけど、覚えてないと思う」
瑞鶴「覚えてたら、真っ先にここに来て怒るでしょ」
明石「それもそうか」
明石「ふー……よかったぁぁぁ! これで提督にも叱られずに済む!」
明石「瑞鶴も一安心ね!」
瑞鶴「……」
明石「……加賀さんのこと、まだ踏ん切りつかないの?」
瑞鶴「そ、そんなことないよ」
明石「浮かない顔してるじゃない」
瑞鶴「それは……気のせいだよ! ちゃんと気持ちの整理はできたもん」ニコッ
明石「ならいいんだけど」
瑞鶴「加賀さんの記憶は消えて、何もかも丸く収まった。一件落着だね!」
明石「……」
瑞鶴「あ、でも……せっかく薬を作ってくれたのに無駄になっちゃったね」
明石「いいの。解決すればそれで良しだから」
瑞鶴「だけど何か悪いな……今度鳳翔さんのお店で奢らせてよ」
瑞鶴「空いてる時間ある?」
明石「……じゃあ、明後日の夜で」
瑞鶴「オッケー!」
瑞鶴「って、そろそろ演習の時間だ。行かなきゃ」
明石「頑張ってね」
瑞鶴「うん! それじゃ!」スタタタッ
ガチャ
パタン
明石「……はぁ」
明石「気持ちの切り替えができてるなら、呼び方も変えなきゃダメでしょ」
青葉「……」
――演習――
ドン! ドーン!
瑞鶴「攻める!」バシュバシュ
翔鶴「瑞鶴、張り切ってるわね!」
瑞鶴「まあね! 一航戦になんか負けてられないし!」
瑞鶴「攻めて攻めて攻めまくる!」バシュバシュ
ヒューーン
翔鶴「危ないわ!!」
瑞鶴「え?」
ドーーーン!!
瑞鶴「うぅ……けほけほ……!」
翔鶴「大丈夫瑞鶴?」
瑞鶴「あはは……張り切りすぎちゃった」
加賀「何をしているのかしら」スイー
瑞鶴「!」
加賀「あんな周りが見えていない攻め方をして、勝てるとでも思っているの?」
瑞鶴「……」
赤城「ま、まあまあ、瑞鶴さんもやる気が見えていいじゃないですか」スイー
加賀「赤城さんは甘すぎです。やる気だけで戦果を上げられるなら苦労はしません」
加賀「ハッキリ言っておくけど、今のような戦い方をするなら」
加賀「仲間にとって邪魔にしかならないわ」
瑞鶴「……!」
赤城「加賀さん、言い過ぎでは……」
翔鶴「そうです。もっと柔らかく…」
瑞鶴「いいんだよ翔鶴姉。これは自分の命にも、みんなの命にも関わることなんだから」
瑞鶴「確かにその通りだね。もっと慎重にならないとダメだった」
瑞鶴「ごめんなさい」
加賀「……」
スイー
赤城「加賀さん!」
瑞鶴「はは……無視か」
翔鶴「いいえ、あれは加賀さんなりの『次は頑張って』という返事よ」
瑞鶴「無理があるでしょ」フフ
瑞鶴「……」
――――
赤城「お疲れ様です加賀さん」
加賀「お疲れ様です」
赤城「私はこれから用事があるので、お先に失礼しますね」スタスタ
加賀「はい」
加賀「……」
瑞鶴「……」ジー
加賀「……」
瑞鶴「……」ジー
加賀「それで隠れてるつもりかしら」
瑞鶴「!」ビクッ
加賀「私に一体何の用?」
瑞鶴「……えっと」スッ
瑞鶴「さっきはムチャクチャな戦い方して、謝りたくて」
加賀「不要よ。謝罪よりも次の演習のことを考えなさい」
瑞鶴「う、うん……そうする」
加賀「……」
瑞鶴「……」
加賀「……今朝から思っていたのだけれど」
加賀「あなた様子がおかしいわ。いつもなら牙をむき出しにして飛びかかって来るのに」
瑞鶴「そんなことしてないし」
加賀「比喩よ」
加賀「なのに、今のあなたは……やけに大人しいわね」
加賀「気味が悪いわ」
瑞鶴「っ……!」ズキッ
瑞鶴「わ、私はただ……加賀さんに……」
加賀「そのさん付けもやめてくれるかしら。調子が狂うから」
瑞鶴「……」
瑞鶴「……ふ、ふん! せっかく敬意を払って後輩らしく振舞ってみたのに」
瑞鶴「そんな反応されるなら、もう気を遣うのはやめる!」
加賀「……」
瑞鶴「そう、気を遣ったの! この私が! 気味が悪いって? 自分でもそう思う!」
瑞鶴「ホントバカみたいだよね。あんたに対して下手に出るとかさ」
瑞鶴「もうこんなバカバカしいこと考えないから、安心して」
加賀「……」
加賀「やっとスッキリしたわ」
瑞鶴「は?」
加賀「スッキリした。これが私とあなたの距離感よ」
加賀「ベタベタしてくるあなた、気持ち悪いもの」
瑞鶴「!! ……」
加賀「さて、私はもう行くわ」スッ
加賀「明日の演習では、今日みたいな腹立たしい動きをしないでね」スタスタ
ガチャ
パタン
瑞鶴「……」
瑞鶴「……」
瑞鶴「……、」グスッ
瑞鶴「っ……」ポロポロ
青葉「……」
――――
翔鶴「お昼いらないって、具合が悪いの?」
瑞鶴「うん」
翔鶴「……鳳翔さんに言っておくわね」
瑞鶴「うん」
翔鶴「……」ガチャ
パタン
瑞鶴「……」
瑞鶴(もうあの加賀さんはいない)
瑞鶴(あれは幻、そう割り切ったはずなのに)
瑞鶴(って、またさん付けしてるし)ハハ…
瑞鶴「……」
――食堂――
赤城「風邪ですか?」
翔鶴「分かりません。でも具合が悪いらしいんです」
赤城「心配ですね」
加賀「……軟弱ね」
赤城「えっ」
加賀「規則正しい生活に、日々の訓練を欠かさず行っていれば」
加賀「体調は常に万全のはずよ」
翔鶴「さすがにそれは……」
赤城「どんなに健康的な生活を送っていても、具合が悪くなってしまうことはありますよ」
ここまでで
読んでくださってありがとうございます
え、ここで完結?マジか…
>>284
まだ続きます、すみません
誤解を招くような発言すみません…
更新していきます
加賀「……」パクッ モグモグ
赤城「加賀さん、どうしたんです? 瑞鶴さんと何かあったんですか」
加賀「いいえ」
赤城「でも明らかに、瑞鶴さんに厳しくなってますよね」
加賀「あの娘に厳しいのはいつも通りだと思うのだけれど」
翔鶴「ここ数日は仲が良かったじゃないですか。昨日だって一緒にお買い物に行って、仲を深めたのでは?」
加賀「買い物……? 知らないわね」
翔鶴「知らないって……」
加賀「知らないものは知らない。記憶にないわ」
赤城・翔鶴「……?」
青葉「……」
――――
コンコン
提督「瑞鶴? 具合が悪いと聞いたんだが、大丈夫か」
瑞鶴「!」
瑞鶴「……うん、平気」
提督「午後からの演習は出れそうか。無理なら違う艦娘に…」
瑞鶴「ちょっと休んだから、もう大丈夫だよ」
提督「そうか」
提督「……入ってもいいか?」
瑞鶴「え」
瑞鶴「……」
瑞鶴「……」
瑞鶴「……ごめん。もうちょっと横になりたいから」
提督「そうだよな……分かった。お大事に」スタスタ
瑞鶴「……」
――夕方・演習後――
瑞鶴(はぁ……全然集中できなかったな)
瑞鶴(こんなことなら出ない方がマシだったかも。みんなに迷惑かかるし)
翔鶴「瑞鶴!」スタタタッ
瑞鶴「翔鶴姉……」
翔鶴「探したわ。終わったらすぐにいなくなっちゃうんだもの」
瑞鶴「ごめん、散歩したかったんだ」
翔鶴「……」
翔鶴「やっぱり加賀さんと、何かあったんでしょう」
瑞鶴「! ……」
翔鶴「お買い物の時に喧嘩したの?」
瑞鶴「ち、違うよ」
翔鶴「じゃあ何故あなたに元気が無いの? どうして加賀さんはあなたにキツくあたるの?」
瑞鶴「言ったでしょ、私はただ体調が悪かっただけ」
瑞鶴「それに、あいつが私に厳しいのはいつものことじゃない」
翔鶴「仲良くするんじゃなかったの」
瑞鶴「……そうだね」
瑞鶴「頑張ったんだけど、結局こうなっちゃうみたい」
瑞鶴「きっと反りが合わないんだよ! 表で仲良くしようとしても、お互い息苦しくて我慢できなくなるの」
翔鶴「……」
瑞鶴「だから、もうこれまで! 私たちはずっとこんな感じ!」
瑞鶴「せっかく喜んでくれたのに、ごめんね」ニコッ
翔鶴「……そんな顔で言われても、説得力が無いわ」
瑞鶴「え?」
翔鶴「あなた今、悲しそうな笑顔をしてるわ」
瑞鶴「……!」
瑞鶴「あ、あはは! そんなわけないじゃない! 開放されて清々しい気分なのに!」
瑞鶴「もう一緒にいるのはウンザリ! できれば顔も合わせたくない!」
翔鶴「……」
瑞鶴「あー、なんか元気出てきたな! お腹も空いてきたなぁ」
瑞鶴「そうだ! 夕食までまだ時間あるし、間宮に寄ろう!」
瑞鶴「ってことで翔鶴姉、また後でね!」
スタタタッ
翔鶴「……瑞鶴……」
――――
間宮「お待ちどうさま、間宮パフェよ」スッ
瑞鶴「ありがとうございます」
スタスタ
瑞鶴「……いただきます」パクッ
瑞鶴「ん、甘くて美味しい」モグモグ
瑞鶴「やっぱり疲れた時には甘い物、か」
瑞鶴「……」パクッ
瑞鶴「……」モグモグ
加賀『はい』スッ
瑞鶴『なんでアイスを掬ったスプーンをこっちに向けるの』
加賀『食べさせたいの』
瑞鶴『は?』
加賀『あーんして食べさせたいの』
瑞鶴「……」
瑞鶴「……」パクッ
加賀『はい、あーん』
瑞鶴『……アーン』パクッ
加賀『どう、おいしい?』
瑞鶴『うん』モグモグ
加賀『……そう』
加賀『よかった』ニコッ
瑞鶴「……」モグモグ
瑞鶴「……いつまで引きずってるんだろ、私」
瑞鶴「もうあの加賀さんはいないのに」
スタスタ
提督「お、瑞鶴か」
瑞鶴「? 提督、何でここに」
提督「甘味を摂取しに来たんだよ」
瑞鶴「まあそうだよね」
提督「間宮ー! アイスを一つ!」
間宮「はーい」
瑞鶴「……」
提督「ここ座ってもいいか?」
瑞鶴「うん」
提督「ありがとう」スッ
ここまでで
明日から0時更新です
瑞鶴「……」パクッ
提督「好物、パフェに変わったのか」
瑞鶴「……?」モグモグ
提督「クリームあんみつじゃなくて」
瑞鶴「ああ、これは……パフェが食べたい気分だったの」
提督「そうか。まあ好物だからといって毎回頼みはしないよな」
提督「体はもう大丈夫なのか?」
瑞鶴「すっかりね」
提督「それは何よりだ」ニコッ
瑞鶴「……」
瑞鶴「……ねえ、提督」
提督「ん?」
瑞鶴「パフェ、一口食べない?」
提督「いいよ、お前が頼んだ物だし」
瑞鶴「遠慮しなくていいから。すごく美味しいよ」
提督「……なら、いただこうかな」
瑞鶴「はい」スッ
提督「!?」
提督「な、何をしてるんだ」
瑞鶴「せっかくだから食べさせてあげる」
提督「お前な……」
瑞鶴「早く! 溶けちゃうよ」
提督「……」
瑞鶴「一回だけだよ。いいでしょ?」
提督「……はぁ」
提督「分かったよ」
瑞鶴「あーん……」
パクッ
提督「……」モグモグ
瑞鶴「どう? 美味しい?」
提督「美味しいが、とてつもなく恥ずかしい」
瑞鶴「ふふ」
瑞鶴「……」
提督「……? どうした、急に暗い顔になったな」
瑞鶴「何でもない」
スタスタ
間宮「お待たせしました、間宮アイスです」
提督「ありがとう」
瑞鶴「……」
――夜・食堂――
瑞鶴「……」
赤城「瑞鶴さん、箸が進んでませんね」
翔鶴「少しでも食べないと力がつかないわよ」
瑞鶴「うん……」
加賀「……」パクッ モグモグ
瑞鶴「ちょっと気分が悪くて」
加賀「……」
スッ
赤城「加賀さん、どこに行くんですか?」
加賀「別の席で食事するわ。辛気臭い雰囲気を出されると、せっかくの料理が不味くなってしまうから」
瑞鶴「……」
翔鶴「どうしてそんな酷いことを言うんですか!?」
加賀「事実なのだから仕方ないわ」スタスタ
翔鶴「加賀さん!」
瑞鶴「いいんだよ翔鶴姉。私が悪いんだから」
赤城「いえ、今のは加賀さんが悪いです。厳しさではなく悪意を感じる言葉ですから」スッ
赤城「ちょっと注意してきますね」スタスタ
瑞鶴「……」
翔鶴「瑞鶴……お願いよ、私に全部話して? 加賀さんとの間にあったこと」
瑞鶴「……ごめん」スッ
スタタタッ
翔鶴「瑞鶴!」
――――
瑞鶴「鍵をかけてっと」ガチャ
瑞鶴「……もう寝よ」スタスタ
バフッ
瑞鶴「……」
瑞鶴「……苦しい……」
瑞鶴「辛い……」グスッ
瑞鶴「……私に大嫌いって言われた時の加賀さんも、こんな気持ちだったのかな……?」
瑞鶴「あの時ホントに酷いこと言っちゃったんだな……」
瑞鶴「……」
――――
赤城「あら? 瑞鶴さんは?」スタスタ
翔鶴「それが、食堂から出て行ってしまって」
赤城「そうですか……やはり2人の間に何かあったことは間違いないですね」
青葉「あのー」
赤城・翔鶴「!」
赤城「青葉さん?」
青葉「お聞きしたいことがあるんですけど、いいでしょうか」
翔鶴「私にですか?」
青葉「お2人にです」
赤城・翔鶴「……?」
――――――――
――――――
――――
――翌朝――
瑞鶴「……ん」
瑞鶴「いつの間にか眠ってた……今何時?」
瑞鶴「4時か。早く起きちゃったな」
瑞鶴「でも眠くないし……顔洗ってこよう」スッ
スタスタ
―――
ジャバジャバ
瑞鶴「目の腫れ、すぐに治せないかなぁ」
瑞鶴「このままだと、また翔鶴姉に心配かけちゃう」
ここまでで
また明日投下します
タンッ
瑞鶴「?」
タンッ
瑞鶴(……この音って……)スタスタ
――弓道場――
ヒュッ タンッ
瑞鶴(やっぱり、弓矢の音だ)
瑞鶴(こんな朝早くから、誰が?)チラッ
瑞鶴「!」
加賀「……」ヒュッ
タンッ
瑞鶴(加賀さん……)
瑞鶴(そっか、そういえば前に、朝早くから訓練してるって聞いたことが)
瑞鶴(……)ジー
加賀「……」
瑞鶴(……横顔も素敵……)ドキドキ
加賀「何かしら」
瑞鶴「!!」ドキッ
加賀「私に何の用?」
瑞鶴「す、すごい。どうして分かったの?」スタスタ
加賀「精神を研ぎ澄ませてたもの。気配を察知することは難しくはないわ」
瑞鶴「達人みたいだね……」
加賀「で、何の用なの」
瑞鶴「え? あ、いや……目が覚めたらこんな時間で」
瑞鶴「顔を洗ってたら、矢が的に当たる音が聞こえてきて、気になって見に来たの」
加賀「そう……じゃあ早く部屋に戻りなさい」
瑞鶴「え……」
加賀「訓練の邪魔よ。お喋りに付き合ってる暇はないの」
瑞鶴「……」
瑞鶴「あのさ」
瑞鶴「私も一緒に、いいかな」モジモジ
加賀「……」
瑞鶴「ダメ……?」
加賀「好きにしなさい」
瑞鶴「ありがとう」
――――
瑞鶴「……」ヒュッ
タンッ
瑞鶴「……」チラッ
加賀「……」
瑞鶴「……」ジー
加賀「何」
瑞鶴「! な、何でもない!」
瑞鶴「すー……はー……」
瑞鶴「……」
ヒュッ タンッ
瑞鶴「……」チラッ
加賀「……」
瑞鶴「……」ジー
加賀「……もうやめなさい」
瑞鶴「!! ごめん、もう見ないから!」
加賀「違う。訓練をやめろと言ったの」
加賀「今のままだと何も身につかない、やるだけ無駄よ」
瑞鶴「……」
加賀「私の邪魔にもなるわ。出て行って」
瑞鶴「! ……」
瑞鶴「……」
加賀「さあ早く」
瑞鶴「……なに……ても……じゃん」
加賀「何?」
瑞鶴「そんなにキツく言わなくてもいいじゃん」
加賀「キツい? 普通だと思うのだけど」
瑞鶴「全然普通じゃないよ、前はもっと……」
加賀「前?」
瑞鶴「……何でもない」
瑞鶴「出て行くね……」トボトボ
加賀「……。よかった」
加賀「これでやっと集中できるわ」
瑞鶴「……っ」
瑞鶴「何でなの……」
瑞鶴「何でそうやって突き放すの」
加賀「?」
瑞鶴「ねえ加賀さん」
瑞鶴「加賀さんって、私のことどう思ってる?」
加賀「は?」
瑞鶴「私はね」
瑞鶴「好きだよ」
加賀「……!」
瑞鶴「加賀さんのこと、大好き」
加賀「あ、あなた……何を……」
瑞鶴「仕方ないじゃん……だって、苦しいんだもん」
瑞鶴「ずっと自分の気持ちを抑えてるの、辛いんだもん」ポロポロ
瑞鶴「元に戻って、加賀さんの記憶が無くなっても」グスッ
瑞鶴「私の記憶は無くならないもん……あの時の記憶はずっと……」ポロポロ
加賀「……」
瑞鶴「ごめんね、意味分かんないよね。っていうか私の自業自得なんだから」
瑞鶴「こんな事になっても加賀さんは責められないのにね」
加賀「……」
加賀「一つ確認したいのだけど」
加賀「好きというのはもちろん、人として、という意味よね」
瑞鶴「ううん、恋愛感情」
加賀「!」
ここまでで
金曜まで0時になると思います
時間が遅れそうです
2時までには投下します
瑞鶴「言いたいことは分かるよ。女同士なのに変だよね」
瑞鶴「でも……好きになっちゃったものはしょうがないじゃん」
加賀「……」
瑞鶴「加賀さんがいつも通りになってね、気づいたの。ハッキリ自覚できた」
瑞鶴「私、加賀さんのことがこんなに好きになってたんだって」
加賀「……」
瑞鶴「一緒に居たいの」
瑞鶴「パフェ食べて、遊んで、買い物に行って」
瑞鶴「ずっと笑い合っていたい」
加賀「……」
瑞鶴「……」
加賀「どうなると思ったの」
瑞鶴「……え……」
加賀「それを私に伝えて、どうなると思ったの」
加賀「普段の私を見ているはずよ。あなたの望む答えをもらえると思ったのかしら」
瑞鶴「……」
加賀「一応ちゃんと返事をしておくわね」
加賀「お付き合いはできません」
瑞鶴「……」
加賀「にしても、一体どんな心境の変化があったのかしら」
加賀「前までは敵意をむき出しで突っかかって来たのに」
瑞鶴「……」
加賀「……さっき、私があなたのことをどう思ってるのかと聞いたわよね」
加賀「今の正直な気持ちを伝えるわね。迷惑よ」
瑞鶴「……!!」
加賀「恋愛感情を抱かれても迷惑なのよ。こっちにはその気が無いんだから」
加賀「告白されても断ることしかできないし」
瑞鶴「……」
加賀「……」
加賀「もう部屋に戻るわ」
加賀「次に顔を合わせた時は、今までの関係のままでいましょう」
瑞鶴「……」
加賀「それじゃ」スタスタ
瑞鶴「ま、待って……!」ガシッ
加賀「!」
瑞鶴「……」
加賀「何」
瑞鶴「……嫌」
加賀「は?」
瑞鶴「このまま離れるのは嫌」
加賀「もう一度言いましょうか。迷惑よ」
瑞鶴「分かってる。加賀さんにはずっと迷惑かけてるよね」
瑞鶴「でも……でも……」
加賀「……そろそろ他の艦娘が起きる時間だわ」
加賀「こんなところ見られたら誤解される。離れて」グイッ
瑞鶴「待って! もう少し話を……!」
加賀「そんな余裕はないわ」
瑞鶴「お願いだから!」ギュッ
加賀「離れなさい」グイグイ
瑞鶴「私の話を聞いて! ちょっとだけでいいから!」
加賀「離れて!」
青葉「そこまでです!」
加賀・瑞鶴「!」
加賀「青葉さん?」
青葉「あんまり大きい声を出すと、誰かが気になって見に来ますよ」スタスタ
瑞鶴「ず、ずっと見てたの?」
青葉「はい、最初からずっと」
瑞鶴「……」
青葉「安心してください」
青葉「私、ぜーんぶ知ってますから」
瑞鶴「え?」
青葉「瑞鶴さんが明石さんに作って欲しいと頼んだ惚れ薬から、全てが始まったこと」
青葉「その薬を飲んだ加賀さんの相手を、瑞鶴さんがしていたこと」
青葉「相手をしている間に、瑞鶴さんが加賀さんに惹かれていったこと」
瑞鶴「何でそこまで知ってるの……」
青葉「青葉にかかれば造作もないことです」
青葉「ちなみに、デートの時もずっと尾行してたんですよ?」
瑞鶴「嘘……全然気づかなかった」
瑞鶴「そ、それでどうする気? 私を揺すろうっての?」
青葉「いえいえとんでもない!」
青葉「ただ、ちょっとだけ恋のお手伝いをしたいんですよ」ニコッ
瑞鶴「?」
加賀「……訳のわからないことを」
加賀「もうウンザリよ。部屋に戻らせて…」
青葉「逃げるんですか?」
加賀「……逃げる?」ピクッ
青葉「頑なに部屋に戻ろうとしてるじゃないですか」
青葉「おかしいですねぇ……今の言葉を聞いて、加賀さんは追求してくると思いましたよ」
青葉「『詳しく聞かせて』って」
加賀「……」
瑞鶴「どういうこと?」
青葉「ふふ、言ったじゃないですか。青葉はぜーんぶ知ってるんです!」
青葉「加賀さん、あなた実は……」
青葉「記憶が無くなってないんじゃないですか?」
瑞鶴「!!」
加賀「……」
加賀「……何のことかしら」
青葉「しらを切っても無駄ですよ。徹底的に調べたんです」
青葉「もし最近の自分の記憶が3日間分も無かったとしたら」
青葉「瑞鶴さん、普通どうすると思いますか?」
瑞鶴「え」
青葉「ハッと気づいたら、3日間自分が何をしていたのか分からないなんて状況、怖すぎますよね」
青葉「誰かに話を聞こうとしませんか?」
瑞鶴「うん……確かに」
青葉「でも加賀さんはそれをしなかったんです」
青葉「この鎮守府にいる全員から話を聞きましたけど、加賀さんが元に戻ったとされる時間から今この時まで」
青葉「誰一人として加賀さんに質問はされなかったらしいです」
ここまでで
また明日に投下します
青葉「そして今、青葉が言ったことにも突っ込まなかった」
加賀「……」
青葉「それってつまり、3日間自分が何をしていたのか、少なからず知ってるってことだと思うんです」
加賀「……」
瑞鶴「じ、じゃあ……」
青葉「分かってますよ。じゃあ何故、記憶が戻っていながら記憶が無くなったふりをしたのか」
青葉「それは瑞鶴さんのためです」
瑞鶴「え……?」
青葉「司令官にも話を聞いたんですけど、こんな事を言ってましたよ」
青葉「『加賀に瑞鶴のことを気遣ってやって欲しいと頼まれた』と」
青葉「『あの娘、最近元気がないから、いつもより優しく接してあげて欲しいと言われた』と」
瑞鶴「……」
加賀「……」
青葉「加賀さん、あなたは惚れ薬の効果が無くなって、瑞鶴さんへの好意が無くなった」
青葉「でも記憶は残っていた。瑞鶴さんと過ごしてきた3日間の記憶が」
青葉「今まで見たことのない笑顔や、一面を思い出して」
青葉「怒る気持ちが無くなってしまった」
青葉「一方で、瑞鶴さんが加賀さんに好意を抱いてることを感じ取って」
青葉「このままではいけないと、冷たくして嫌われようとし、司令官に耳打ちして瑞鶴さんとくっつけようとした」
加賀「……」
青葉「というのが、青葉の見解なんですが」
青葉「違いますか?」
加賀「……妄想もいいところね」
青葉「まあ確かに主観が入ってますけど、こうすれば筋が通るんです」
加賀「……」
青葉「ちなみに、証拠もあるんですよ」
加賀「証拠……?」
青葉「これです」スッ
瑞鶴「そ、それって……!」
青葉「加賀さんのお部屋にあったこのマグカップ、瑞鶴さんとのデートで購入したものですよね」
青葉「お茶を淹れて飲んだ痕跡もあります。カップは他にもいくつかあったのに、わざわざこれを使ったんです」
青葉「これがどういうことか分かりますか?」
瑞鶴「……?」
青葉「つまり加賀さんは、これを買ったことを覚えていて使用したんですよ」
青葉「買った覚えのない物を使うなんて、絶対に嫌じゃないですか?」
加賀「……」
瑞鶴「……そうかな」
青葉「少なくとも青葉は嫌ですね! 不気味ですよ!」
加賀「人それぞれじゃないかしら。もし私が、買った覚えのない物でも気に入れば使うような性格だったとしたら?」
青葉「ぐっ……」
青葉「で、でも青葉は……!」
加賀「もういいわ」
青葉「え?」
加賀「はぁ……全く、あなたが邪魔をしなければ上手くいったのに」
瑞鶴「か、加賀……さん……?」
加賀「ええ、そうよ」
加賀「全て覚えてるわ。私に異変が起きたことも、何もかも」
瑞鶴「……」
加賀「前にも言ったでしょう、記憶力には自信があるのよ」
青葉「やっぱり! 青葉の推理は正しかったんですね!」
青葉「でもやけにあっさり白状しましたね。もっと粘られるかと」
加賀「上手い言い訳ができないもの。記憶を無くした演技、もっと徹底すれば良かったわ」
瑞鶴「……何で?」
加賀「……」
瑞鶴「何でこんなことしたの?」
加賀「青葉さんの言った通りよ。理由はどうであれ、私はあなたがやった事を許そうと思った」
青葉(瑞鶴さんの笑顔が頭から離れなかったに一票)
加賀「そして、今まで通りに接しようとしたら……あなたの様子がおかしいと感じたの」
加賀「3日間の記憶を遡っても、それらしい顔や反応をしていたし。まさかとは思ったけれど」
瑞鶴「……」
加賀「だから私はあなたを元に戻そうとした」
加賀「私がキツイ態度をとって、そこに提督が言い寄れば、離れてくれるだろうと…」
瑞鶴「離れないよ」
加賀「!」
瑞鶴「もう無理だよ。私もね? 加賀さんを諦めようと思ったんだ」
瑞鶴「でも……もう戻れないみたい」
加賀「そんなことないわ。あなたは気の迷いで一時的に…」
瑞鶴「加賀さんっ!!」ダキッ
加賀「!?」
瑞鶴「……ホントに……」
瑞鶴「ホントに記憶、無くなってないんだよね?」
加賀「そうよ」
瑞鶴「よかった……」グスッ
瑞鶴「よかったよぉ……」ポロポロ
加賀「泣くほどかしら」
瑞鶴「当たり前でしょ……どんだけ辛かったと……」ヒック
加賀「ごめんなさい。謝るわ」ナデナデ
加賀「でもね、落ち着いて聞いて。あなたは私のことが好きだと言ったけれど…」
瑞鶴「加賀さんっ」ギュー
加賀「……一旦離れなさい」
瑞鶴「やだ」
加賀「じゃあそのままでいいから聞きなさい。あなたが私に対して抱いているそれは、恋心でも何でもないわ」
加賀「きっと気のせい…」
瑞鶴「加賀さん大好き」
加賀「聞いてるの瑞鶴?」
瑞鶴「好き、大好き」
瑞鶴「えへへ」ムギュー
加賀「……」
瑞鶴「加賀さん」スリスリ
加賀「……はぁ、仕方ないわね……」ナデナデ
青葉「……」
青葉(ふふ、良かったですね瑞鶴さん。まあ恋人の関係になれるかは別問題ですけど)
青葉(青葉は応援してますよ!)グッ
青葉(とりあえず記念に一枚)パシャッ
スタタタッ
明石「瑞鶴! ここにいる!?」
青葉「明石さん、そんなに慌ててどうしたんですか?」
瑞鶴「♡」ギュー
加賀「……」ナデナデ
明石「うおぉ……何あのラブラブ空間……」
青葉「まあ色々あったんですよ。で、瑞鶴さんに何の用です?」
明石「うん……あのね……」
明石「瑞鶴の恋心、惚れ薬の効果かもしれない」
青葉「へ? ど、どういうことです!?」
明石「瑞鶴、加賀さんとアクシデントでキスしたって言ってたんだけど」
明石「その時に移っちゃった可能性があるの」
青葉「……なんと」
明石「だから無効化の薬を飲ませようと思って探してたんだけど」
青葉「……」
青葉「あのー……もうしばらく待ってもらえませんか」
明石「え?」
青葉「直接飲んだわけでなく、キスでほんのちょっとですし」
青葉「放っておいても、そのうち効果が切れると思いませんか?」
明石「……でも……」
青葉「この通りです! 借り一つということで、どうか!」ペコリ
明石「何であなたが必死なの?」
青葉「お願いします!」
明石(すごい勢い)
明石「んー……分かった。でも加賀さんに迷惑がかかるようなら、すぐに飲ませるから」
青葉「はい! ありがとうございます!」
瑞鶴「……」ギュッ
加賀「……」ナデナデ
明石「っていうか、あれ? 加賀さんって記憶が無くなったんじゃ……?」
青葉「ふふ、青葉が説明しますよ! 実は……――」
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――――――
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――後日・演習後――
翔鶴「お疲れ様です!」
赤城「お疲れ様です」
翔鶴「あの、これから二航戦の娘たちと鳳翔さんのお店に行くんですけど」
翔鶴「赤城さんもどうですか?」
赤城「いいですね! もちろん行きます!」
翔鶴「よかった!」
翔鶴「えっと、加賀さんもどうですか?」
加賀「私はいいわ。食べる気分じゃないの」
翔鶴「そうですか……分かりました」
赤城「もし気が変わったら来てくださいね!」
加賀「はい」
赤城「そういえば瑞鶴さんはどこに?」
翔鶴「まだ演習中です。お店も今度行くと言ってました」
ガチャ
パタン
加賀「……」
ガチャ
瑞鶴「食べる気分じゃないの?」
加賀「聞いてたの」
瑞鶴「聞こえてきたの。でも残念だなぁ、せっかく間宮で奢るって約束したのに」
瑞鶴「食べる気分じゃないのかー」
加賀「あれは嘘よ。そんなことも分からないなんて、思わず冷笑してしまいそう」
瑞鶴「なっ!?」
瑞鶴「……もう奢らない」プクー
加賀「こんなことで捻くれるの」
瑞鶴「私をバカにしたのが悪い」
加賀「約束は約束でしょう」
瑞鶴「……」プイッ
加賀「分かった、謝るわ。だから機嫌を…」
瑞鶴「なーんてね」ニコッ
加賀「……」
瑞鶴「ビックリした? 私の演技、なかなかだったでしょ!」
加賀「……これは罰よ」スッ
瑞鶴「へ?」
コチョコチョコチョ
瑞鶴「ちょっ……あはははは! や、やめて! くすぐりはダメぇ!」
コチョコチョコチョ
瑞鶴「あはははは! ごっ、ごめんなさいごめんなさい! 許して!」ジタバタ
加賀「笑ってるじゃない。謝る気がないようね」コチョコチョ
瑞鶴「くすぐってるからでしょ!? やめてぇ! あはははは!」
ピタッ
加賀「っと、こんなことしてる場合じゃないわ。そろそろ間宮DXパフェの販売が終わってしまう」
加賀「行きましょう」グイッ
瑞鶴「うわ! ちょっと、行動をコロコロ変えないでよ!」
加賀「早く」
瑞鶴「はいはい……じゃあ行こっか」
瑞鶴「あ、そーだ。今日奢ったら次はそっち持ちだからね」スタスタ
加賀「演習で私に勝てたらの話よ」スタスタ
瑞鶴「まーたそういうこと言う! そんなんじゃいつになるか分かんないじゃん!」ガチャ
パタン
おわり
百合は良い
約1ヶ月の間、読んでくださってありがとうございました
また色々書くので読んでいただけると嬉しいです
このSSまとめへのコメント
スゲー綺麗な青葉だ!どこの海域で泥すんの欲しい(笑) ギャップにやられました。伏線良かったです!
素晴らしい瑞加賀。浄化された
面白かった
素敵、心が穏やかになりました。