男「朝だ」(16)
男「いつから寝てたんだろう」
男「なんかすっげー頭が痛い。二日酔いか?」
男「皿も洗ってないし。だらしないなー」
男「ってもうこんな時間か。さっさと出社しないと」
男「朝飯は...なしでいいか」
男「全く、だらしないなー」
男「まあいいか。行ってきまーす」
男「って言っても誰もいないんだけどね」
男「最近独り言が増えたなー」
男「元はこんなんじゃなかった気がするんだけど」
男「いつからだろう」
男「でもまあ流石に周りに変な目で見られるのはごめんだ。家の中だけにしておこう」
男「ってもう外に出てるんだった。バカだ」
男「ハハハ...」
男「急ごっと」
男「おはようございます」
課長「おはよう。今日も仕事頑張ってくれ」
男「はい」
男「...」
男(デスクワークは暇だ)
男(決して口には出さないがこんな仕事金のため以外の何物でもない)
男「全く、いつからこうなっちまったんだろう」
男「昔の俺はこんな日常想像してもなかっただろうな」
男「今はなんて言うか、心が死んでるよ」
男「...仕事しよ」
男「無心で仕事をしていたらもうこんな時間か。帰ろう」
男「最近集中力だけは高まってきてるな。現実逃避のためか?」
男「...自分で自分を煽っても仕方ないか」
男「よし!今日は朝から何も食ってねーし豪勢に外食といきますか」
男「金だけはありあまってるしな」
男「となると何処にしようか。この辺知ってるようで何も知らねー」
男「困った時のスマートフォンを使うか」
男「ふーん、この辺って意外と色々あるんだな」
男「決めた。ここにしよう。近いし」
店員「いらっしゃいませ。何名様でのご来店でしょうか」
男「一名です」
店員「かしこまりました。奥の3番テーブルへとお進みください」
店員「ごゆっくりどうぞ」
男「はぁ...信じらんねー。なんでお一人様に用意されるのがテーブル席なんだよ。カウンターにしてくれって言おうと思ってたのに」
男「まあいいか。どうでも」
男「何処にいようと誰も俺のことなんて気に留めないしな」
男「...自虐ネタはやめよう」
男「黙って飯を食おう」
男「うん、美味い。高いだけある」
男「でもそれだけって感じだな」
男「ささやかな贅沢だった」
男「でも今度はもう少し雰囲気のいい店に行ってみたいな。あそこは賑やか過ぎた」
男「落ち着いた雰囲気の店で一人酒を飲む。うん、いいね」
男「孤独が似合う男になろう」
男「お、あそこにいい感じの公園があるじゃーん」
男「寄り道に夜の公園へ。そこのベンチで一人酒を飲む」
男「これもまた一興。冬の夜空は星が綺麗だね」
男「あれはなんて星なんだろう。星を学ぶのもロマンチックでいいかもしれないな」
男「金と時間は有り余るほどあるからな。今度本屋にでも行くか」
女「そんなことしなくていいよ」
男「お前は...」
女「久しぶりだね男。元気だったかい?」
男「お、おう。久しぶりだな女。元気だよ、うん」
女「そうかい、そりゃよかった。と言ってもとてもそんな風には見えないんだけどね」
女「男、今が本当に楽しいかい?寂しさに耐えきれなくなってきているんだろ?」
男「そんなこと!」
女「ないのかい?本当に?」
男「...」
女「無理に孤独を選ぶ必要なんてないじゃないか。こっちへ帰って来なよ」
男「...」
女「おじさんやおばさんだって二人だけじゃ寂しそうだよ」
女「いつまでも意地を張り続けているけど、もうその目的も見失い始めているんだろ」
男「...」
女「誰もキミを追い詰めたりしない。皆歓迎するさ」
女「勿論、僕だってね。僕は誰よりもキミを待っているつもりだよ」
男「...」
女「...じゃあ男。話を少し変えようか」
女「キミは新しい恋を始めてみたかい?否、友達付き合いでもいい。新しい生活に馴染む努力をしてみたかい?」
男「...話が変わってないぞ」
女「そう思うのはキミが何も始めてないからだよ」
女「キミはあの時から何も変わってないんだよ。生活だけ新しくなったんだ」
女「心ここに在らずってね。キミの心はずっと僕らの住む街にあるままなんだよ」
女「ねぇ、男。帰って来てくれよ...」
男「...」
男「俺は...俺は...」
男「んっ...」
男「朝か...女は?...」
男「誰もいない...夢だったのか...」
男「全く、公園のベンチで一人で寝るなんて終わってるな。ハハ」
男「でも夢で良かった...」
男「俺は帰らないよ。というか帰る度胸がない」
男「女に合わせる顔もないしな」
男「確かに新しい生活には馴染めてないけどさ。今を精一杯生きてなんとか孤独を誤魔化していくよ」
男「そしたらまた人付き合いもできるようになって、きっと故郷にも帰れる」
男「まずは、そのリハビリとして...」
男「猫でも拾って帰りますか。丁度そこに一匹野良がいるわけだし」
猫「ニャー」
男「よし!これからも頑張るぞーうぉー!」
終わりです。ありがとうございました
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