【ガルパン】フードファイト・ウォー! (277)


 フードファイト。

 それは伝統的な文化であり、世界中の女子の嗜み。

 喰えば完食、馳走は早く、食す姿は零れなし。

 膳の掟、料理の心―――

 これは、食の戦場を駆け抜ける少女たちの物語であるッ!



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フードファイト・ウォー! 第1話 『開幕!フードファイト!』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


審判「両者、礼っ!」

ローズヒップ「いただきますでございますわっ!」ペコリ

エリカ「……いただきます」

審判「位置について、用意っ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


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【まえがき】
このお話の世界では特殊なカーボンにより選手たちの肉体の安全には十分配慮されています。実際に行うと非常に危険ですので絶対にマネしないでください。料理はよく噛んでゆっくり味わいながら食べましょう。


王「両者一斉に駆けだしました! スタートランを制し、先にサンドイッチに手を伸ばすのはどちらだーっ!?」


 ローズヒップ「聖グロいちの俊足が走りで負けるわけがねぇのですわー!」ドドド!

 エリカ「くっ!」タッタッタッ!


<イケークルセイダー! ガンバレー! フウキヲマモッテオウエンシナサイ!


王「さぁー始まりました! 戦車道連盟主催フードファイトォッ!」

王「実況はわたくし、大洗の天に輝く五つ星こと、王大河がお送りします!」

<イイゾー! ウォンタイガー!

愛里寿「解説の島田愛里寿。好きな食べ物は牛丼、アタマの大盛り」

<アリスステキヨー! タイチョーカワイー!

王「パンツァージャケット映える晴天に恵まれた本日、茨城県立カシマサッカースタジアムよりお届けして参ります」


王「Aグループ第1試合は聖グロリアーナvs黒森峰という好カード! 白熱した試合展開が予想されます!」

愛里寿「えっと、『礼儀を持ちて誇りを懸けよ』? 合ってる?」

<アッテマスタイチョー! カワイー!

愛里寿「よかった! 私もボコのフードファイト回を思い出しながら頑張るけど、3人ともお手伝いよろしくね」ニコニコ

王「カンペを用いた4人羽織のバミューダ解説、期待しております!」

王「さあ! そうこうしているうちにローズヒップ、テトラーク並みの素早さでサンドイッチが大量に置かれた大テーブルへと到着ゥ!」

愛里寿「あのテーブル、TOGⅡの形してるんだね」


 ローズヒップ「先手を取りましたわー! サンドイッチがよりどりみどりでございますのよー!」ブイッ


王「ローズヒップ、余裕のVサイン! アルデンヌの森は自然の要塞だったか!? 聖グロが電撃戦で黒森峰に勝利だァーッ!」


愛里寿「これで食事時間を稼げた。けどローズヒップさんは早く走った分、体力を消耗したはず」

王「犠牲を払いながらも黒森峰からの逃げ切りを図ったわけですね! サンドイッチのダイナモ作戦、ダンケルクだいてったぁーいっ!」


 ローズヒップ「ダージリン様の作戦通り、きゅうりサンドを独占してやりますわ-!」スッスッスッ

 エリカ「くそっ!」タッタッ!

 ローズヒップ「ごめんあそばせでございますわーっ!」スススッ


王「おーっとローズヒップ! 見事にきゅうりサンドばかりを自らの手中に納めた! フードファイトの空中戦、バトル・オブ・ブリテンを制します」

王「少し遅れて黒森峰逸見が到着! 既に残っているのはハムサンド、エッグサンド、ツナサンドとお腹に溜まりやすいものだけだが!?」

愛里寿「この試合は食べたサンドの数で勝敗がつく。食べやすいものを優先する方が圧倒的に有利」

王「もはやアシカは上陸不可能! チェーンホームを前にして戦車砲は届かなーい! これは早くも勝負がついてしまったかぁー!?」


 ローズヒップ「大家族で育ったわたくしの食事スピードを舐めるんじゃねぇでございますわー!」パクパクパクッ!

 ダージリン「見事な食べっぷりよ、ローズヒップ。はい、どんどん。はい、じゃんじゃん」ニコニコ

 まほ「エリカ、相手にペースを乱されるな!」

 エリカ「はい、隊長っ!」パクッ パクッ


王「本試合、選手のセコンドには聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長ダージリンさんと、黒森峰女学園戦車道チーム隊長西住まほさんがついております」

王「セコンドは開始時点からテーブル横で待機しており、選手のプレイングのサポートをします!」

愛里寿「セコンドの補佐は何人居ても構わないルール。聖グロ側はオレンジペコさんたちも控えてる」

愛里寿「それと、貸してほしいって言われたからセンチュリオンも待機中」

王「あちらに停めてあるのは島田さんの戦車だったんですね」

愛里寿「スタジアムに許可も取ったよ」

王「聖グロは戦車を何に使うつもりなんでしょうか! 楽しみです!」


王「本試合のサンドイッチに使用されているパンは10枚切り食パンの耳落としとなっております」

愛里寿「けっこう薄いね」

王「なんでも、薄ければ薄いほど上品なんだそうです」


 ダージリン「こんな格言を知ってる? サンドイッチはね、パ―――」

 オレンジペコ「挟まれた方が良いお味を出すんですよね。でも今は関係なくないですか?」

 ダージリン「まあ見てなさい」ンフ

 ローズヒップ「んまーいっ! しっとりしたパンの間に挟まれたシャキシャキきゅうりと絡み合うたっぷりバターの風味が"まいうー"ですわー!」パクパク!

 オレンジペコ「……格言というか、そのままですね」ハァ


王「ローズヒップ、ものすごい勢いでサンドを殲滅していくーっ!」

愛里寿「俊足と戦車の操縦のみならず、その摂食嚥下も拙速を尊んでいる模様」

王「無心ッ! 食卓<テーブル>という名のバックストレッチを反射神経で疾駆する姿はまさにアスコットのエクリプスだぁーっ!」


 ダージリン「"Eclipse first, the rest nowhere."」ドヤッ


王「対する逸見は―――」


 エリカ「はむっ! はむむっ!」ガブッ ガブッ

 ローズヒップ「なんとっ!」

 まほ「いいぞエリカ!!」グッ


王「おおっ!? 大口を開けてサンドを一度に3つ重ねて食べています!?」

愛里寿「まるでワニ。アニマルシリーズ?」

王「砂漠の狐かカプッツォの獅子か!? トブルク陥落ッ! めざせエジプトーッ!」

<シキカンタルモノゼンセンデメシヲクエ! オチツケエルヴィン!


 ルクリリ「所詮ネズミよ! 爆弾を詰めてから石炭に混ぜて差し上げますわ!」

 オレンジペコ「チャーチルはトーチ作戦の説明にワニの絵を使い、固い鼻と柔らかい腹の同時攻撃を提案しました」

 ダージリン「ロンメルサンドの出来上がりというわけね。頑張って、モンゴメリー」クスクス

 ローズヒップ「ダージリン様? わたくしの名前はローズヒップでございますわ?」モグモグ


王「聖グロは余裕のようですが、黒森峰のこの追い上げ! 時間当たりの食べた数としては黒森峰の方が多いのではないのでしょうか?」

愛里寿「だけど顎や食道に負担がかかる。制限時間いっぱいこのペースは無理かも」


 ダージリン「それにしても、レディーのすることではなくってよ」

 アッサム「そろそろ第2戦線展開のタイミングかと、ダージリン」

 ルクリリ「マンシュタインプランをシュリーフェンプランに書き換えてやりましょう! 逆メヘレン事件よ!」

 ダージリン「そうね。ペコ」

 \キュポラッ/

 オレンジペコ「お紅茶の用意できています」スッ


王「おやぁ? センチュリオンの車長ハッチから出てきたオレンジペコさんが持っているのは―――ティーポットだーっ!」

愛里寿「確かにセンチュリオン砲塔内部にはBoiling Vesselがあるけど、普通の給湯器を用意すればよかったんじゃ……」


 ダージリン「だって使ってみたかったんだもん」

 オレンジペコ「こういう機会じゃないとセンチュリオンに乗れませんもんね」トポポ

 アッサム「それに通常の湯沸かしよりも温度が低くなるので、より飲みやすいお紅茶になります」キリッ


王「わたくしも一度聖グロにお邪魔して紅茶とサンドイッチをいただきましたが、あれは素晴らしい味わいでしたよ!」

愛里寿「いいなぁ。私も飲んでみたい」

王「さて、この大量の紅茶をどうするのでしょうか。わたくし、てっきり戦車から空砲を撃って黒森峰を妨害するのかと思ってました」

愛里寿「それだと敵味方両方に甚大な被害」


 ダージリン「どこかのチームはうちとの親善試合の前、ブーム海軍大将のように空砲を目覚まし代わりにしたみたいだけど」フフッ

<ワタシタチノコトデスヨ,ニシズミドノ エェッ!? 


 ダージリン「準備はよろしくて? それじゃ、コッパーヘッド(まむし)作戦、開始」

 ローズヒップ「わっかりましたでございますわー!」ゴクゴクゴクッ!


王「な、な、なんとぉっ! 聖グロのクルセイダー、大量の紅茶でサンドイッチを流し込む作戦に出ました!」

愛里寿「本大会は外部から飲食物の持ち込みを一切制限してない。ルールの穴をついた上手い作戦」ムフーッ


 まほ「待て! これは邪道食いじゃないのか!?」

 ダージリン「あら? サンドイッチを重ね食べさせている人が何かおっしゃっているようで」

 オレンジペコ「邪道食いとは、食べ物本来の味を損なう行為のことです。むしろお紅茶とサンドイッチのセットは王道中の王道ですね」

 アッサム「何よりルール上問題ありません。貴女も黒森峰なら規則を遵守してください」

 まほ「くっ……」


愛里寿「聖グロの皮肉、ちょっと怖い」


王「ローズヒップ、次々と標的サンドを撃滅させる様はオーストラリア製センチネルの連射攻撃のようです!」


 エリカ「水分摂取は死亡フラグよ! 勝手に自滅するがいいわ!」ガブリガブリ!

 ダージリン「それはどうかしら?」フフン

 オレンジペコ「この試合は短期決戦型。喉に詰まらせることなく胃に入れることが何より重要です」

 オレンジペコ「それだけじゃありません。このお紅茶は我が校独自のフレーバーをベースに改良を加えたもの」

 オレンジペコ「士気向上のみならず、興奮しやすいローズヒップさんの冷静さを保つよう調合された特殊なお紅茶なんです!」

 ローズヒップ「ぬるめのお紅茶のマジカルパワーがチョークールでございますわッ!」バクバクッ!


愛里寿「カヴェナンターみたいにならないといいけど」

王「場内に魔法のような爽やかな香りが漂います」


 エリカ「そんな精神論、私には通用しないわッ!」モグモグ!

 ダージリン「そろそろ紅茶がキいてきたはず。ローズヒップ、エンジンキャブレターのガバナーを外しなさい」

 ダージリン「……常に動き続けて、食し続けるのよ」ニヤリ

 ローズヒップ「リミッター外しちゃいますわよー!」ゴクゴクゴクッ!

 エリカ「ッ!?」

 オレンジペコ「は、早いっ!」コポポポ


王「聖グロの快速戦車、ここでトップギアァーッ! 紅茶装填手のスピードが追い付かなーいッ!」


愛里寿「でも逸見さんの指摘通り胃の内容量が増えるから諸刃の剣。スピードに自信がないと普通はできない」

王「黒森峰に衝撃走る! コマンド部隊ノルウェー上陸を目前に、大西洋の壁は間に合うのかーッ!?」


 まほ「なんだあれは!? ホントにただの紅茶なのか!?」

 ダージリン「ルクリリ、ペコを手伝ってあげて」

 ルクリリ「お任せくださいっ!」コポポポ


愛里寿「装填手が2人……チャレンジャー」

王「これが聖グロの秘策! 英国面! ロンドンの霧のように深く厚いベールが今あらわになりましたーッ!」

愛里寿「FIDO、滑走路バーナー?」

<シルバーストーン?  ウッドコートシケインダネ! イヤカンケイナイカラ

王「もはや彼女はクルセイダーではありません! ミーティアエンジン搭載のクロムウェルッ! 探していた、見失っていた光は、ロンドンの風の中にありましたーッ!」

<ラッキーガールスパイクアウトォ! マッテマシタコノシュンカン! アリガトー! アヒルサンチームドウシタ?


 ローズヒップ「きゅうりサンド、お紅茶、きゅうりサンド、お紅茶でございますのよー!」ゴクゴクッ!

 ルクリリ「はーっはっはっは! 黒森峰など敵ではないわっ!」トポポポ

 ダージリン「大事なことはポイントを一突きすること」

 オレンジペコ「チャ、チャーチルですね」トポポポ

 ダージリン「ここにおいては、そう。『速さ』ですわ」キリッ


王「大蛇のように呑み込んでいくーッ! サンドイッチのノルマンディー上陸作戦だぁーッ!」


王「さあ制限時間は残り2分を切りましたが、対する黒森峰は……むむッ!?」

愛里寿「えっ……!?」ガタッ


 エリカ「―――はむむっ! はふふっ!」ガブッ ガブッ!

 ローズヒップ「マジですのッ!?」ビクッ


王「ご、ご、5個重ねーッ!?!? 人間の限界に挑戦していますッ!!」

愛里寿「パン1斤を丸かじりしてる……」プルプル

王「女を捨てた肉食獣ッ! ミドガルドシュランゲッ! 奴に噛み砕けないものは無いというのかーッ!?」


 ダージリン「落ち着きなさい、ローズヒップ。食べられるかどうかを疑った瞬間、永遠に食べられなくなってしまうわ!」

 ローズヒップ「ッ!!」

 ダージリン「貴女は騎士道精神で優雅に勝負すればいいの。そう、マッド・ジャックのようにね」ニコ

 オレンジペコ「バグパイプ演奏でもする気ですか!?」トポポポ

 ダージリン「世界が成長とともに堕落したのよ」

 ローズヒップ「がんばりますでございますのよォ~っ!」モグモグ


王「ローズヒップ、この試合で何かを感じているようです! 成長が止まらなーいっ!」

王「両者一歩も譲らず! この勝負、一体どちらに軍配が上がるのかぁーッ!?」


王「さあ残り時間30秒ッ! 会場では過酷なデッドヒートならぬフードヒートが繰り広げられていますッ!」

愛里寿「ふたりとも少しペースが落ちてきた」

王「途中経過ですが、現在のところ聖グロがわずかにリード! これはコッパーヘッド作戦が功を奏したか!?」


 まほ「エリカッ!」

 エリカ「…………」ピタッ


王「おや!? 逸見、手が止まりましたが、まさかここでギブアップなのかぁーっ!?」

愛里寿「ううん、これは……」


 エリカ「胃袋よ、ほら、サンドイッチだわ……! ハァァァ……!」コォォォォ!


王「か、彼女は一体なにをしているんでしょうか!? なにやら強烈なオーラを放っております!」

愛里寿「これは、"自律神経系"」

王「自律神経系!?」


愛里寿「人間は、口、消化器官、肛門といった、食事にかかわる器官の働きが副交感神経に左右されている」

愛里寿「内臓筋は意志によって動かせない不随意筋。だから副交感神経の支配は食の支配と同じ」

愛里寿「彼女は瞬間的に脳内麻薬を放出、胃酸と蠕動を自在にコントロールしている」

愛里寿「そして交感神経を刺激し幽門を開放することで、胃から十二指腸へ食べ物を送り出している……」

王「で、ですが交感神経と副交感神経はシーソーのような存在! 両方を活性化させるなど―――」

愛里寿「もちろん同時には無理。だけど、それが交流電流のように変化するとしたら?」

王「彼女は今日のために肉体改造を行ってきたとの情報ですが……おーっと! 逸見、信じられなーいッ!」


 エリカ「ガブッ! ガブブッ!!」グルン グルン

 ローズヒップ「ヒィッ!?」ビクッ

 まほ「っ!?」ビクッ


王「全身をひねっていますっ! 噛み千切る補助動作として身体をツイストしていますッ!」

愛里寿「デスロール……」

<バケモノゼヨ!? オニシマヅ!? アポカリプスビースト!? イヤ、P1500モンスターダロ! ソレダ!

王「今までの倍の速さで手当たり次第にサンドイッチを撃破ァーッ! 戦いの歓喜を無限に味わっているかのようだぁーッ!」


 ダージリン「っ……」

 ルクリリ「た、助けて東部戦線っ!」ウワーン!

 アッサム「は、挟まれた方が良い味出すのよ」プルプル

 オレンジペコ「それは血の味というブラックジョークでは……」ビクビク


王「聖グロに恐怖の味を思い出させていくッ! 食のフランケンシュタインコンプレックス逸見エリカーッ!」


王「聖グロを制す様はまさにヴィレル・ボカージュ! ティーガーの騎士、ここに見参ッ!」

<ヴィットマンキュウハウチノタイチョウダゾ! エルヴィンサンオチツイテ!

王「小手先のテクニックではなく、己の肉体の圧倒的なパワーで英国貴族の嗜好品を蹂躙するッ!」

王「胃袋の報復兵器ッ! 食欲の陸上戦艦ッ! これが真の西住流なのかぁーッ!?」

<チガウヨ!?


 ダージリン「あれが、ロイヤル・タイガー……」

 まほ「エ、エリカ……」

 エリカ「ハムッ! ハムムムッ!!」グルン グルン

 ローズヒップ「お~の~れぇ~ッ!」パクパクパクパク


王「聖グロ、ATシリーズのごとき守備力で防衛なるか!? それともマーケットガーデン作戦となってしまうか!? 残りあと3秒ッ! 2、1……ッ」


ビーーーーーーーーーーーッ!


王「し~あ~い~しゅ~~りょ~~~~ッ!! 勝ったのは、どっちだぁ~~ッ!?」


 審判「勝者―――」



   黒 森 峰 女 学 園 ッ !!


王「やりましたァーッ! 勝者、黒森峰副隊長、逸見エリカーッ!!」


 エリカ「―――私の胃袋は、宇宙よッ!!」

 ローズヒップ「ごちそうさまで……ございますわ……」バタッ

<ワーワー! ドレスデンボウエイ! チュウケンー! カペルスウェイトー! 


王「逸見、勝利のガッツポーズ! 黒森峰、Aグループ準決勝進出決定ッ!」

王「ここに巡航戦車、歩兵戦車の歴史が幕を閉じる! ローズヒップ、試合終わっての一言め……まさに"ごちそうさま"、と言った感じでした!」

王「情報によりますと、黒森峰の追い上げ逆転勝利。しかもサンドイッチ1つ分という僅差とのことです」

王「いやー解説の島田さん。今試合、直接的な勝因はなんだったでしょうか」

愛里寿「試合の組み立て方。ギリギリまで敵に手の内を晒すのを我慢できた黒森峰の作戦勝ち」

王「なるほどー。ですが、手の内を見せれば次戦以降は対策を立てられてしまうのでは?」

愛里寿「それはどこのチームも同じ。あるいは次の策を用意してるのかも」

王「次の試合が楽しみです! なお、余ったサンドイッチは会場にご来場のお客様に無料で振る舞われます」

愛里寿「一旦CM」


―CM―


 ♪パーパパパッパッパッパッパパパーパッ! ~

この度、大洗ボコミュージアムがリニューアルオープンしました!

 ♪やってや~るやってや~るやぁ~てやるぜ~

『おう! よく来やがったなお前たち!』

 ♪い~やなあ~いつをボ~コボコに~

可愛いボコたちが大集合! アトラクションで大冒険!

 ♪け~んかは売~るものど~うどうと~

『ボッコボコにしてやるぜ!』

 ♪か~たでか~ぜ切りタ~ンカ切る~ ジャン!


     ボ コ ミ ュ ー ジ ア ム
                        (株)島田コーポレーション


―CM裏―
<聖グロベンチ>

救護班「バイタルチェック終わりました。何かありましたらいつでも救護テントまでどうぞ」

ローズヒップ「ゴポッ……お、お紅茶で溺れそうですわ……」クターッ

ダージリン「ローズヒップ、貴女はよく頑張ったわ。戦い方に気品が現れていてよ」ナデナデ

オレンジペコ「とっても素敵でした。ゆっくり休んでください」ニコ

ルクリリ「でも悔しいですぅ! 今日はVEデーになるはずだったのにぃ!」

アッサム「私のデータによれば勝率は90%を超えていました。黒森峰の暗号は解読していたのに、一体どうして……」

ダージリン「あら? ホームズさんは黒森峰が何か不正を働いたとお考えですの?」

アッサム「い、いえ、そういうわけでは……」

ダージリン「例えそうだとしてもルールは穴だらけ。不正を指摘できないこちらが悪いのです」

アッサム「はい、ダージリン……」


ダージリン「それに、私はローズヒップの方がサンドイッチをおいしく召し上がっていたと思いますわ」

ダージリン「バーナード・ショー曰く、食物を愛するよりも誠実な愛はない」

オレンジペコ「愛の深さでは私たちは負けていない、ということですね」

アッサム「空爆を受けてもなお鳴り響き続けたウェストミンスターの鐘のような心の強さですわ」

ダージリン「そもそもサンドイッチは一度に3個も重ねて食べるものではありませんっ」プンプン

オレンジペコ「お紅茶で流し込むように食べたことは棚上げなんですね……」

アッサム「サンドイッチなのにイチド3個……3個イッチ……」フフッ

ダージリン「あらおかしい。そのジョークをエリカさんに送っていたら勝てていたかも」

オレンジペコ「……それはモンティ・パイソンです」

ローズヒップ「ぷっ! アッサム様サイコーですわ、あはは―――ごぽっ、ごほっ、がはっ! くるしっ!」バンバン


<黒森峰ベンチ>

まほ「……よくやった、エリカ。周りは色々言っているが、勝ちは勝ちだ」

エリカ「まだ初戦です。優勝するまで気を抜けません」

まほ「あ、ああ。そうだな」

救護班「あ、あの、バイタルチェックを……」

エリカ「必要ないわ。この通り、問題なしよ」

救護班「ですが一応――」

エリカ「今からトイレに行くの。ついてこないで」キッ

まほ「エリカ……」

エリカ「心配しないでください、隊長。私は大丈夫です」

まほ「……そうか」

エリカ「……失礼します」クルッ スタスタ


   「――あ、あの、エリカさん!」タッタッ


エリカ「っ、あなた……」

みほ「はぁ……はぁ……」

エリカ「……ここは黒森峰ベンチよ。大洗のところへ帰りなさい、みほ」

みほ「で、でも、心配になっちゃって……」

エリカ「敵の心配をしているヒマがあったら自分たちの心配をすることね」フンッ スタスタ

みほ「あぅ……」

まほ「……みほ。エリカのことは私に任せてくれ」

みほ「……うん」


<通路 女子トイレ前>

エリカ「…………」スタスタ

ローズヒップ「あら」

エリカ「げっ」

ローズヒップ「エリカ様はお尻からサンドイッチをデファイアントでございますの? わたくしはお紅茶をロックですわ!」

エリカ「その下品なお口をBf109してあげましょうか? というか、せめて陸軍の話をしなさいよ」

ローズヒップ「アーチャー自走砲の方がよろしくて?」

エリカ「それ、トイレ間に合うの?」

ローズヒップ「ハッ! そうでしたわ! お先に失礼致しますわ!」ダダダ

エリカ「……ほかのところに行きましょ」クルッ

エリカ「…………」スタスタ


エリカ(……私は)


エリカ(―――私は、間違ってないわよね……)グッ


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

ついに始まった戦車道フードファイト。

エリカさんが勝ったけど、どこか様子がおかしい? 心配だな……。

次の試合はアンツィオ対継続。食材は"安斎さん"!?

次回! フードファイト・ウォー。『アンチョビのスペシャリテ』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


_________________________
フードファイト・ウォー! 第2話 『アンチョビのスペシャリテ』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


愛里寿「―――ってやるやぁ~ってやるぜ♪」

<タイチョー、ウツッテマス! ハジマッテマスヨ! オウタガジョウズ!

愛里寿「い~やな―――こほん。第2戦目、Bグループ第1試合はアンツィオvs継続」

王「は、はいっ! かつてのどんぐり小隊対決となります!」

王「今大会優勝候補と目されるアンツィオ高校からは副長ペパロニ選手が出場。セコンドにはドゥーチェ・アンチョビがつきます」


 アンチョビ「負けるな……じゃなかった、勝て! ペパロニ! アンツィオのノリと勢いをここで見せないでどうするんだっ!」

 ペパロニ「任せてくださいッス、ドゥーチェ! もうお腹減って死にそうッスよー!」

 カルパッチョ「この日のために3度のメレンダ(おやつ)を1度に減らしましたものね」ウフフ

 ペパロニ「感触が違うんスよ、普通に食った時と空腹時ってのは」チッチッチ

 ペパロニ「料理の食いごたえが2倍伝わってくる。飯食ってるって実感沸くんスよ!」ニヤリ


王「飢えた狂犬、ペパロニ選手の活躍に期待です!」

愛里寿「そのポテンシャルは出場校中随一。いかにノリと勢いを維持できるかが勝負の分かれ目」

王「対する継続高校からは操縦手ミッコ選手が出場、セコンドにはミカ隊長がつきます」


 ミッコ「お腹空いて、裏と表がひっくり返りそう。いっぱい食べるぞーっ!」

 アキ「私たちの分も残しておいてよ?」

 ミッコ「アキとミカはさっきサンドイッチ食べてたじゃん」

 ミカ「食べられる。それだけで食べ物は尊いのさ」ポロロン


王「アンツィオの補給線を寸断できるか!? 世紀の腹ペコ対決がここに始まるーッ!!」


王「本大会の優勝賞品、『戦車道CM出演権』をかけて両校とも本気のようですね!」

愛里寿「今年度、文科省は世界大会誘致のため日本にプロリーグを発足させようとしている」

愛里寿「当然、国民に広く戦車道を知ってもらい、イメージアップを図る必要がある」

王「その広報CMに出演すれば学園艦の知名度はうなぎ登り! 来年度の戦車道新入生および義捐金の3割増しが約束されます!」

愛里寿「大学選抜チームに勝利した大洗連合チームの学校をCMに起用しようという文科省のツラの皮の厚さには―――」

王「あーっ!! そ、それにしても、島田流師範がボコミュージアムのスポンサーになってくださってよかったですね!」アセッ

王(何言わせようとしてるんですかルミさん!)※小声

愛里寿「うん。試合には負けたからお母様との約束は果たせなかったんだけど、お母様もボコを気に入ってくれたみたい」ニコ


王「そ、そうですね! さて! 気になる対決食材ですが、今試合はなんとぉ~……『アンチョビ』ですっ!」

愛里寿「うわ」

王「島田さんは苦手ですか?」

愛里寿「うん」


 ペパロニ「ドゥーチェを食べるんスか? いただきますッス!」ガブッ

 アンチョビ「いててて! こら、やめろペパロニ! 私を食べるなぁ~!」

 カルパッチョ「半額セール品じゃないなんて夢のようです!」パァァ

 アキ「アンチョビってイワシの塩辛のことだっけ」

 ミッコ「魚介なら任せろーっ!」

<バリバリ! ヤメテ! アリクイサンチームハナニヲヤッテルンダ?


審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」


王「さて、島田さん。本試合、島田さんはどのようにご覧になられますか?」

愛里寿「塩味の強い食材ゆえ、全体のペース配分の上手い方が勝つ。肉体より頭脳、脳漿を絞った戦いを期待する。けど……」


 ペパロニ「あっれー? ドゥーチェのウィッグ、噛みついても取れないッスねー」カジカジ

 アンチョビ「地・毛・だぁっ! 冗談きついぞお前!?」

 ミカ「食事の量と速さを競うことに意味があるとは思えない」ポロロン

 アキ「タダ飯食べられるなら参加するって言ったのミカじゃん」

 ミカ「風と一緒に流れてきただけさ」ポロロン

 審判「早く移動を!」

 カルパッチョ「ほ、ほら、みなさん? 向こう行きますよ?」


愛里寿「大丈夫かな?」

王「さ、さあ! まもなく試合開始のホイッスルが鳴ります!」


 ミッコ「よっ! どんぐり小隊以来だね!」

 ペパロニ「あんときは大活躍だったな! こっちからは見えなかったけどさー」

 ミッコ「ホントはあの後も一緒に戦いたかったんだけどねー」

 ペパロニ「試合終わったら居なくなってるなんて、つれないじゃんかよー」ウリウリ

 ミッコ「んまあ、今日こうして会えて良かったじゃん!」

 ペパロニ「そうだなっ!」ニカッ

 審判「両者、礼っ!」

 ミッコ「いっただっきまーす!」

 ペパロニ「いただきます! あっ、アタシらはアペリティーヴォで乾杯もしていいッスか?」

 審判「軽く胃を刺激させるためですね。構いませんよ」ニコ

 ペパロニ「それじゃ、ノンアルコールワインで……Salute!」ニコ

 ミッコ「Kippis!」チンッ

<プロージット! ティンティン! オマンラハセンデイイゼヨ

 ペパロニ「お互い頑張ろうぜ!」ゴクッ

 ミッコ「おうっ!」ゴクッ

 審判「両者位置について。用意ッ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


 ミッコ「天下のクリスティー式、舐めんなよーっ!」ドドド!

 ペパロニ「アヴァンティ……って、早ェーッ!? おーい、食事の時はもっとゆったり構えるもんだぞー!」タッタッタッ!

 ミッコ「急がないといつも誰かさんに食べられちゃうからねーっ!」ドドドド!

 アキ「ミカ、テーブルに置いてあるやつ、まだ食べちゃダメだからね?」

 ミカ「それは風が決めることさ」ポロロン

 アンチョビ「ペパロニ! もっと早く走れぇ~ッ!」

 ペパロニ「腹減り過ぎて力が出ないッスよー、姐さぁーん!」タッタッタッ!


王「うむむ、溶接からリベットへと逆進化したC.V.33系列のような……なんだかわたくしも不安になってまいりましたぁ……」

愛里寿「一緒にがんばろう?」


<イケー! ムーミン! カーベータンカエシナサーイ!

<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ヒナチャーン! ドゥーチェ!


 カルパッチョ「たかちゃーん!」フリフリ


王「大歓声がスタジアムを包みます! おっと、やはりというべきか、継続が先に食材テーブルへと到着しました!」

王「テーブルにはアンチョビパニーニ、アンチョビリゾット、アンチョビソースカプレーゼ、そして―――」

王「アンチョビスパゲッティなどなど、アンチョビを使った料理が小分けにずらっと並んでおります!」

愛里寿「今回は食器の枚数勝負。小皿の上に乗ってる重さはグラム単位で同じだけど、食べやすさの取捨選択が鍵」

王「んーっ! しかしなんとも素晴らしいオリーブオイルベースの香りが食欲をそそります!」


 ミッコ「はむっ! ぅんまぁっ! あっつつつつ! でも、ぅおいっしーっ!」パクパク

 アキ「いいなぁ……」グゥ

 ミカ「他人を羨んでもお腹は膨れないよ」ポロロン


王「ミッコ、小エビのしっぽまで綺麗にペロリと食べています! ほとんど噛まずに飲み込んでいく様はまさに鳥類! 鳥人ミッコネン!」

愛里寿「本試合は両校の強い要望により少し試合時間が長い。舌と脳に飽きがこないよう調整するのも重要」

王「さあ、すでに2皿を平らげた継続ですが、ここでアンツィオペパロニが大テーブルへ到着だーッ!」


 ペパロニ「お味のほどはどうなってっかなっと……んー、なるほど。んで、こっちは……」パク パク


王「あーっとぉ! "吟味"していますッ!!」ズルッ

愛里寿「職業病?」


 アンチョビ「ペ・パ・ロ・ニィィ~~ッ!!」バンバンッ!

 ペパロニ「わ、わかってますって! ちゃんと勝ちますから、ちゃんと!」

 アンチョビ「この勝負、絶対に負けられないんだぞ!? 戦車の整備費のためにも我が校の知名度を上げる必要があるんだぞぉ!?」

 アンチョビ「食べ物勝負でアンツィオが負けたら、何に勝てばいいんだぁっ!!」ウルッ

 カルパッチョ(言っちゃったぁ……)

 ペパロニ「ドゥーチェ、信じてくださいって! このアタシを誰だと思ってるんスか?」ドヤ

 アンチョビ「お前だから心配なんだよぉーーッ!!!」ウガーッ!


王「なにやらアンツィオサイドがもめておりますが、試合は着実に継続がリードしていきます」

王「本命アンツィオ、ここにきてM11/39のようなもどかしさ、M13/40のようなあと数歩足りない感じです。カンガルーに捕えられてしまったのか!?」

愛里寿「ううん、ペパロニさんの態度は余裕の現れかも。何か策が?」



 ペパロニ「よしっ。だいたいの味付けは覚えたかな。それじゃ……」


 ペパロニ「―――"ペパロニ流フルコース"の始まりだぜッ!!」バァーン!


 ペパロニ「もぐっ、んむっ! んまいっ! はむっ! はむっ!」パクパクパクッ!

 ミッコ「!?」


王「おーっとぉ!? ペパロニ、各種料理の小皿を手あたり次第に食べていきます! ものスゴイ速さだぁーッ!」

愛里寿「いや、あれは一見ランダムだけど……?」

カルパッチョ「私が解説しますね!」

王「ふおっ!? カルパッチョさんが放送席に!?」

愛里寿「マイク取られた」

カルパッチョ「我が校アンツィオはご存じの通り、お昼時には屋台が立ち並びます」

カルパッチョ「食堂のランチもありますが、多くの生徒たちは毎日屋台を利用するわけです」

王「な、なるほど? そう言えば最近は放課後も屋台を出すようになったのでしたね」

カルパッチョ「色んな屋台の色んな料理を毎日おいしく食べるにはどうしたらベストか。それはアンツィオ生徒最大の命題」

愛里寿「そんなに?」

カルパッチョ「そこでペパロニさんが生み出したのが"ペパロニ流フルコース"!」

カルパッチョ「その日の気温や湿度、自分の体調や食材の状況、料理人のコンディションや提供までにかかる時間など、総合的に判断して最適な食事の順番を算出し……」

カルパッチョ「その瞬間の自分にとってのベストを得るためのルートを構築するんです!」バァーン!

王「ディ・モールトベネッ! アンツィオの料理にかける情熱は、その食し方にも向けられていたーッ!」


 ペパロニ「はむっ! 塩が足りないっ! はむっ! こっちは多すぎっ!」パクパク!


王「ペパロニ、味付けの微妙な差までも評価しながら次々と小皿を完食していくッ! 食欲の不発手榴弾ッ! まさにイタリアの赤い悪魔ァ!」

愛里寿「それは褒めてないような……今までの余裕は諸々のデータを算出するための時間稼ぎ?」

カルパッチョ「も、もちろんです! たぶん!」アセッ

王「その変速猛追ぶりは本場スーパーカーの如し! フードファイト界の跳ね馬、フランチェスコ・バラッカだーッ!」

<ナマエカライエバ458イタリア? イヤ、ソレナラ458スパイダージャナイ? クーペカブリオレッポイヨネ! デモチームハミナダヨネ

王「人間食品加工工場ッ! フードファイトの通り魔ッ! 食べる豆戦車が火を噴いたぁーッ!」


 カルパッチョ「もうすぐ継続を追い越しますよ、ペパロニさんっ!」パァァ

 ミッコ「―――ッ!?」クルッ

 ペパロニ「戦いは火力じゃない。オツムの使い方だ」ドヤァ

 アンチョビ「お、おおっ!? なんだかわからないが、すごいぞペパロニッ!!」パァァ

 ペパロニ「ドゥーチェが喜んでくれて何よりッス!!」パクパクパク!

 アンチョビ「ってゆーか、そんな秘策があるならなんで教えてくれなかったんだよっ! んもう……私にこんなに心配させて!」ホロリ

 ペパロニ「あっれー、言ってなかったでしたっけ? おっかしーなー、まぁいいや!」パクパクパクパク!

 アンチョビ「……あ、うん。あれだよな、敵を騙すにはまずなんとかって」ガクッ


王「まさかのペパロニ、700ps級の覚醒超加速ッ! 継続の枚数を追い越しましたぁーッ!」


 アキ「ミッコ! やばいって!」

 ミッコ「はむっ! はふふっ! はむっ!」パクパク!

 ミカ「焦ることに意味は無い。勝利の女神は気まぐれなのさ」ポロロン

 アキ「もう! ミカも応援してよーっ!」

 アキ「義捐金たっぷりもらうんでしょ! パンツァージャケット作るんでしょ!?」

 アキ「ミッコが負けちゃってもいいのっ!?」

 ミカ「……でも、私はミッコを信じてる」

 アキ「ミカァ……!」パァァ


 ミカ「行くぞっ」スッ


♪ズンチャ ズンチャ ズンチャ ズンチャ ~

 ミッコ「いよっ、待ってましたぁーっ!!」ニッ

♪ズンチャ ズンチャ チャッ!


王「おおーっ! これは対大学選抜戦で見せたカンテレ演奏ですッ! わたくし王大河、生で聴けて感激ですッ!」クーッ!

愛里寿「楽器の持ち込みはルール上問題ない。音による相手選手への妨害も可能」

王「同時に相手を狙い撃つ! 白い死神! 無傷の撃墜王! 湖の守護者ーッ!」


♪~

 ペパロニ「うっ!? か、体が、踊りたく……」プルプル

 アンチョビ「だぁっ!? 今は食べることだけに集中しろーっ!!」

 カルパッチョ「片方でもいいから耳を塞いで~!」

 ミッコ「~~~♪」パクパクパクッ!


王「北欧の漂流者、1人ウィーン少女合唱団、白夜の国の王女様、その名は、ミ~~カ~~ッ!」

王「Sakkijarven polkkaの追い風受けて、継続ミッコは全開走行ッ! まさにハンドルを得たBT-42ッ!」

愛里寿「変な諺」

王「一方、音楽に誘われ踊り出したいペパロニは集中力が途切れてしまった! もはやクラッシュ寸前だーッ!」

愛里寿「味方に薬、敵に毒の上手い作戦」ンフー


 ミカ「だろう?」フフン


♪~

 ミッコ「あんたたちが食事に関してすっげぇ情熱を持ってるのはよく知ってるよ」モグモグ

 ミッコ「だけど、私たちのそれは、そんな生ぬるいものじゃあないんだ……!」モグモグ

 ミッコ「キッチンなんてない。調理器具も、食器だって無いそんな状況でも……」モグモグ

 ミッコ「常に飢えていて、常に欲していて、目に映る全てが食材に見えるほどにねッ!」モグモグ!

 ペパロニ「な、なにィッ!?」

 ミッコ「このバトルフィールドにおいて、空腹こそが力の源……」モグモグ

 ミッコ「獲物を前にした獣は、飢えた者ほど強いッ!」モグモグ

 ミッコ「つまり、今の私は最強ということだァーッ!!!」モグモグッ!

 ミカ「トゥータ!」


王「勢いづいたミッコ、ここでペパロニを煽っていくーッ! マンネルヘイム線は重武装だったぁーッ!!」


 アンチョビ「―――本当にそうか?」


 ミカ「……っ」ピタッ


王「ア、アンチョビさん、どうしたのでしょう? 謎のオーラでカンテレ演奏の手を止めたが……?」


 ミッコ「な、なんだよっ?」モグモグ

 アンチョビ「いくら腹ペコだろうと、食欲の矛先が"自分"にしか向いていないのでは意味が無いッ!」ドンッ!

 ミッコ「ッ!?」ビクッ

 アンチョビ「飯ってのはなぁ、誰かのために存在してるからウマいんだよォッ!!」ダッ! タッタッタッ…


王「おおっとぉ!? ドゥーチェ・アンチョビが調理テントの方へ駆けていきます!?」

愛里寿「セコンドのバックヤードへの干渉は……うん、ルールにないからセーフ」

王「カメラさん! アンチョビさんを追いかけてっ! はーやーくー!」


【2カメ】
<調理テント>

アンチョビ「邪魔するぞっ!」バサッ!

調理班1「っ!?」

調理班2「こ、困りますっ!」

アンチョビ「いいかお前たち、よく聞け! 料理で大事なのは、人の心を感動させることだ!」

アンチョビ「人の心を感動させることが出来るのは、人の心だけなんだ! 材料や技術だけでは駄目なんだっ!」

調理班3「安斎先輩、いったい何を!?」

アンチョビ「おなじ素材でもっとうまい料理を食わせられるって言ってるんだよぉ!」

調理班3「え!! おなじ素材で料理を!?」

アンチョビ「コックコート借りるぞっ! 今から私がこの厨房の料理長<カポ・クオーコ>アンチョビだッ!!」キュッ!

調理班一同「「「なんだってぇー!?」」」


アンチョビ「まず盛り付けっ! 食べる人間のことを考えろ! 口に入った時の温度変化と香りの鼻への抜け方もな!」

調理班1「は、はいっ!」

アンチョビ「次に味付けっ! そんなんじゃムラが出ちゃうだろ! 重戦車の操縦みたいに優しく!」

調理班2「す、すいませんっ!」

アンチョビ「それから! ああもう、お前代われっ! 私の料理を体で覚えろ!」

調理班3「了解ッス、アンチョビ料理長!」

アンチョビ「料理も恋愛も戦車道も一緒だッ! 自分の想いを一発のタマに込めろッ!」

調理班一同「「「はいッ!!!」」」


【1カメ】
<会場>

王「試合時間は残り2分。いよいよアンチョビ料理対決も大詰めです!」

王「状況は継続側が防衛的勝利、気がつけばタリ=イハンタラの様相を呈してまいりました」

王「なにやら調理テントではアンチョビ料理長による料理指南が行われている模様ですが……」

愛里寿「セーフ」

王「ちなみに調理班は各校の栄養科などから集結した女子生徒たちにより構成されております」

王「アンチョビさんの行動が、既に引き離されてしまったアンツィオにとって吉と出るのか、凶と出るのかっ!」

愛里寿「今、新規の配膳が追加されたみたいだけど、どうなるかな」

王「あの新しい料理は、キャベツのスパゲッティでしょうか? 両選手ともに口へと運びます」


 ペパロニ「姐さん、アタシのために……!」モグッ

 ミッコ「食えれば一緒でしょ!」モグッ


 モグモグ…


 ペパロニ「―――ふ、ふおわぁ!?!?」ビクッ

 ミッコ「―――な、なにこれっ!?!?」ドキッ


王「おっとぉ!? 両選手、固まっています! いったい、どぉーしたぁーッ!?」ガタッ

愛里寿「これは……?」


 ペパロニ「姐さんの味だァァァーーーーッ!!!!!」モグモグモグモグッ!!!


王「ぬゎぁーっ!? ペパロニ、信じられなぁーい! 前半のモーレツな超スピードが復活しましたァッ!」


 ペパロニ「旨さの砲撃が次から次へと飛んでくるぜーーーーッ!!!!」パクパクッ!

 ペパロニ「ボーノ、ボーノ、ボーノボーノボーノボォォォォッノォォォォッ!!!」バクバクッ!

 ペパロニ「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!!!!!!」ポロポロッ!


王「泣いていますッ!! ペパロニ、セコンドの献身的サポートに感激しておりますっ!!」

愛里寿「料理は言葉にならない感動を与えてくれる。たぶん、今ここにある料理は彼女にとって完璧な味」

愛里寿「真に美味しく愛のこもった料理を食べた時、食欲は無限大となり胃袋は小宇宙と化す!」フンス

王「アンツィオ猛追! グラン・サッソへと光速を超えて突き進むーッ!」


王「対する継続、先ほどからストップしたまま! ピクリとも動かなぁーい! 戦意喪失かッ!?」


 アキ「ミッコ!? どうしたの!? どうして止まってるの!?」アセッ

 ミカ「……風が止んだんだね」ポロロン

 ミッコ「……っ」プルプル


 ミッコ「―――うまぁいよぉぉぉっっ……」ポロポロ


王「こ、こちらも泣いております!? いったい何があったんだぁっ!?」


 ミッコ「ぐすっ、えぐっ……こんなにおいしい料理、初めて、食べた……」ポロポロ

 ミッコ「飢えをしのげれば、なんでも一緒だと、思ってたのに……っ」ポロポロ

 ミッコ「ほどける麺にふわーっと香るアンチョビ……それは幸福の味……っ」ポロポロ

 ミッコ「おい……し……すぎる……よぉ……っ!!」ポロポロッ!


王「これは、一体……?」

愛里寿「ただのスパゲッティじゃない……?」

アンチョビ「いや、ただのスパゲッティだよ」

王「おっと! アンチョビ料理長、解説をお願いします」

愛里寿「お願いします」ペコリ


アンチョビ「私が作ったのはただのスパゲッティだ。おいしいキャベツとおいしいアンチョビを使っただけのな」

アンチョビ「2人も一口食べてみるか?」スッ

王「あ、ありがとうございます! いただきますパクッ……こ、これはぁぁっ!?!?」キラキラ

愛里寿「お、おいしい。見た目のシンプルさに反して、とてつもなくおいしい……」キラキラ

王「島田さん、苦手なアンチョビ料理を食べても大丈夫なんですか?」

愛里寿「うん。勢いで食べちゃったけど、こんなにおいしいとは知らなかった。私、少し大人になった!」ンフー

アンチョビ「なんでおいしいのか。色々理由はあるけど、一番の理由は愛情だ」

王「あ、愛情ですか!?」

アンチョビ「言っとくがこれ、マジメな話だぞ?」


アンチョビ「私は本気であのBT-42の操縦手に旨いモンを食わせてやりたいと思って作った」

アンチョビ「もちろん私の料理のクセは抜けないから、ペパロニにとっては食べ慣れた味になったけどな」

アンチョビ「人を喜ばそうと懸命になって調理する。心を込めて作れば必ず人を感動させることができる」

アンチョビ「……だから、私はキャベツを手にした。フィンランド料理でよく使われるキャベツを」

王「っ!!」モグモグ

愛里寿「っ!!」モグモグ

アンチョビ「マジノ女学院の校長は、フィンランド料理は最悪でイギリス料理より少し美味い程度とバカにしたが」ケッ

アンチョビ「誰でも母の味が最高なんだよ。母親の、母校の、母なる大地の。どんな高級レストランでもかなわないぐらいに」

アンチョビ「だから私は、ミッコの母になるために、ペパロニの姐さんであり続けるために、このスパゲッティを作ったんだッ!」ドンッ!


アンチョビ「―――アンチョビのスペシャリテ。さぁ、た~んと食べてくれっ!」ニコ


 アキ「そんなぁっ!! ミッコ、ミッコォォォッ!!」

 ミカ「アキ。彼女の作った料理の歌が聞こえるかい?」

 アキ「……え?」

 ミカ「それは、人生にとって大切な歌なんだ」

 アキ「ミカ……」

 ミカ「なに、嵐の中にボートを出すばかりが勇気じゃないさ」ポロロン


ビーーーーーーーーーーーッ!


王「こ~こ~で~し~あ~い~しゅ~~りょ~~~~ッ!! 無情にも継続に逆転のチャンスは与えられなかったァーッ!!」


 審判「勝者―――」



   ア ン ツ ィ オ 高 校 ッ !!


 ペパロニ「ごちそうさまでしたァァッ!! いよっしゃああああっ!!!」グッ!

 カルパッチョ「すごいっ! すごいわ、ペパロニさぁんっ!!」キラキラ

 アンチョビ「よくやったぞぉぉぉペパロニィィィィッ!!」キラキラ

<ペーパーロニ! ペーパーロニ! ペーパーロニ!


王「会場はアンツィオ高校生徒一同の歓喜の声で満たされています! アンツィオ、Bグループ準決勝進出決定ッ!」


 ミッコ「……ホントに、ごちそうさま……でした……っ」グスッ

 アキ「そんな……」

 ミカ「…………」ポロロン


王「いやーとんでもない試合展開になってしまいましたねー!」

愛里寿「どっちも全力だった。どっちの想いも強かった」

愛里寿「ただ、アンチョビさんのそれは全てを包み込むラビオリのような存在だった」

王「感動的な試合でした! なお、余った料理は会場にご来場のお客様に無料で振る舞われます」

愛里寿「私、アンチョビさんのスパゲッティをもっと食べたい!」ンフー

王「会場の皆さんもそう思われていることでしょう。アンチョビさん?」


 アンチョビ「い、いや、ある分しかないぞ? 早い者勝ちだぞ?」


王「ということなので皆さま、お急ぎくださいませ! アンツィオ高校名物、お昼の大争奪戦の、始まり始まりーっ!」

王「それではCMの前に一旦カメラをベンチサイドへと移します。どうぞっ!」


<アンツィオベンチ>

ペパロニ「姐さん、ほんっとーにありがとうございましたぁっ!!」ペコリ

アンチョビ「バカ、私は料理を作っただけだ。フードファイトに勝ったのはペパロニの実力だ!」

ペパロニ「姐さぁぁぁんっ!!」ダキッ

アンチョビ「よくやったな、ペパロニ。よし、3人で継続のとこ行くぞ!」

ペパロニ「ハイッス!」

カルパッチョ「はいっ!」


<継続ベンチ>

ミッコ「ごめん……っ……」グスッ

アキ「もう大丈夫?」サスリサスリ

ミカ「ミッコの勇気、見せてもらった」ポロロン

アキ「……負ける勇気ってこと?」ムッ

ミカ「本当の勇気とは自分の弱い心に打ち勝つことだよ」

ミカ「包み隠さず本当のことを正々堂々と言える者こそ本当の勇気のある強い者なんだ」ポロロン

ミッコ「でもっ、でもぉっ……」グスッ

ミカ「……風が来たみたいだ」


ペパロニ「邪魔するぜ」

カルパッチョ「失礼します」ニコ

アンチョビ「…………」


アキ「な、なによあんたたち……」

ペパロニ「てめぇらに話があってよぉ。よくも演奏で妨害してくれたな? あん?」

アキ「う……」


ペパロニ「―――なんてな! 冗談だ、冗談! 試合楽しかったぜ、ミッコ!」ダキッ

ミッコ「わわっ!?」

ペパロニ「なんだよー、楽しくなかったのかー?」ムーッ

ミッコ「い、いや、そうじゃなくて……そっちの隊長の料理食べたら、なんか頭真っ白になっちゃってさ……」

ミッコ「今まで、自分のために食べるのが食事だと思ってた。でも、私のために作ってくれた料理が、こんなにも……」

ミッコ「こんなにも、うまいんだって、知らなかったから……」モジモジ

ペパロニ「ったりめーだろ! 姐さんの料理は世界一なんだからなッ!」フッフーン


アンチョビ「なあ、ミッコ。スパゲッティ、うまかったんだよな?」

ミッコ「……っ」コクッ

アンチョビ「なら笑え。元気いっぱい笑ってくれ。私は、お前の笑顔が見たくて料理を作ったんだから」

アンチョビ「本当においしい料理があるってことを、知ってほしかっただけなんだ」ニコ

ミッコ「……う、うんっ……!」ニカッ

アンチョビ「ペパロニ! ミッコ! ちょっとこっちこいっ!」グイッ グイッ

ミッコ「うわっ!」

ペパロニ「っとと!」

アンチョビ「お前たち、よく頑張った! とっても偉いぞっ!」ダキッ

ミッコ「ね、姐さん……!」トクン

ペパロニ「苦しいッスよー、姐さーん」

ミッコ「……ペパロニ! 今日、楽しかった!」ニッ

ペパロニ「おう! アタシも楽しかったぜ!」ニッ


アキ「ちょ、ちょっと! ミッコをアンツィオに引き込む気!?」グイッ

ミッコ「うおっと! 引っ張らないでよ、アキ!」

アンチョビ「いや、そんなつもりは無かったんだが……そうだ!」ポンッ

アンチョビ「お前たち、今度アンツィオに遊びに来い! 私が直々に旨いモノを作ってやろう!」

アキ「ええっ!? いいのっ!?」キラキラ

ミッコ「ま、またあの味が食べられるのっ!?」キラキラ

ペパロニ「アタシの鉄板ナポリタンも楽しみにしとけよ!」ヘヘッ

ミカ「皆さんの料理が歌う歌たちを、今度はじっくり聞きたいな」ポロロン

アンチョビ「ああ! 今日、我らは友になった! そのお祝いをみんなでやろう!」

アキ&ミッコ「「やったぁーーーっ!!!」」


アンチョビ「おいしいご飯に歌と踊りだっ!」

ペパロニ「あのPolka、踊りたかったんだ! 演奏、よろしく頼むぜ!」

ミカ「私たちのはPolkkaだけど、それは些末なことだね」ポロロン

カルパッチョ「踊った後はローマっぽいお風呂にみんなで入りましょうね」ニコ

アキ「サウナも準備しといてよね!」

ミカ「美味しい食事は人生にとって大切なものなんだね」ポロロン

アンチョビ「そうとも! うまいメシは人生をサイッコーに輝かせるからな!」

ミカ「準決勝進出、おめでとう。皆さんの健闘を祈ります」

アンチョビ「おう! よし、お前たち、次に向けての作戦会議だぁーっ!」

ペパロニ「ハイ、姐さんっ!」

カルパッチョ「はーい!」


<放送席>

王「……画面には美しい映像が流れていました」ホロリ

王「それにしても島田さん。わたくし、てっきり継続高校が食材を盗んで不戦勝になるかと思っていましたよ」

愛里寿「実はそうならないように裏で交渉していた」

王「と、いいますと?」

愛里寿「このフードファイトで余った食材は全て継続に提供することと引き換えに、一生懸命頑張ることを約束させた。大洗の会長さんの発案で全会一致」

王「ははー、なるほどぉ! 最初から余った食材は継続のものだったわけですね! それで彼女たちは優勝賞品に一途になれたと!」

王「ですが、食品衛生法とか大丈夫なんですか?」

愛里寿「細かいことは裏方任せ」

王「有能なスタッフさんに期待しましょう! それでは次の試合をお楽しみに!」

愛里寿「一旦CM」


―CM―


母「はい、まさお。戦車道リーグカレーよ」コトッ

まさお「いっただっきまーす」パクッ

母「もりもり食べて強くなってね」

まさお「」モグモグ

母「おいしい?」ニコ

まさお「」メキメキメキ…

父「ん?」

母「まさお?」

♪ムゲンキドウデ ボカージュコエテ ~

父「まさお……」

まさお(CV38豆戦車)「おかわり」

母「は、はい」

 ドカァン! ズバァン! パパパパ!

 体を作る栄養素入り! 長谷園、戦車道カレー! 新発売


―CM裏―
<黒森峰控室>

モニタ『―――画面には美しい映像が』

ピッ

エリカ「……チッ」

エリカ「なによこの試合、グダグダもいいところだわ」フン

エリカ「美味しい料理が出てきたから食べられませんとか、舐めてるの?」

エリカ「フードファイトは孤独との戦いよ。馴れ合っていいモノじゃない」

エリカ「こんなの、私は認めない……」

エリカ「絶対に勝ってやるんだから……」

エリカ「勝たないと、いけないんだから……っ」グッ

ガチャ パタン

まほ「エリカ、紅茶をもらった。聖グロからエリカによろしく、と」コトッ

エリカ「……隊長、わざわざすいません」

まほ「いや、今回私はお前のサポートに徹すると決めている。だからこれでいいんだ」トポポ

エリカ「……もうひとつすいません。今、紅茶を飲む気分じゃなくて……」

まほ「そうか。なら、これは私が頂くとしよう」スッ

まほ「エリカには次戦も控えているのだから、万全の体調になってもらわないとな」ニコ

エリカ「……ありがとうございます」


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

ミッコさん、ペパロニさんと仲良くなれて良かったね!

次の試合はプラウダ対知波単。メニューはまさかのカキ氷!

日本の夏の風物詩も、雪女には関係ない!?

次回! フードファイト・ウォー。『Remember 八甲田』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


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フードファイト・ウォー! 第3話 『Remember 八甲田』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


杏「もうちょいそっち詰めて~。そうそう」

王「あっ! 角谷会長、始まってます!」

杏「オッケー。やぁやぁ皆さん。この度戦車道フードファイトを提案させてもらった大洗女子の生徒会長、角谷です」

王「はいっ! では、このフードファイト開催に至った経緯を教えていただけますでしょうか!」

杏「うん。最初は西住しh……ゴホン。プロリーグ設置委員会から大洗に戦車道の広報CMに出て欲しいって言われたんだけど、あの時うちらは混成チームだったじゃん?」

王「そうですね。8校による合同チームでした」

杏「だから、それじゃ不平等だって役にn……ゴホン。ある人から指摘があってさ」


杏「確かに出演の権利はみんなにあるべきだと思ったんだけど、8校全部を出演させるほど枠も無いみたいで」

王「ちなみに先ほど流れたカレーCMとは別のCMです」

杏「それだったら、私ら生徒会のお得意な"なんとか大会"を開催して、交流と実益を兼ねたものができないかと思ってさ」

王「それでフードファイト大会の運びになったわけですね!」

杏「ついでに放映しちゃえばさらなる戦車道のイメージアップにもなるしね。連盟の理事長や陸自の人、島田流や西住流と会議を重ねて今日に至るってわけ」

愛里寿「私が解説に選ばれたのも母上の推薦あってのこと。日本戦車道ここにありと知らしめるため」

<タイチョーニホンイチー!  ニンジャセンポー! コクミンテキアイドルー! 

王「現在ラジオ放送、衛星放送のみならず、インターネット放送としてもライブ配信されております」

愛里寿「茨城の地方テレビ局は?」

杏「存在しないんだなーこれが」


王「というわけで、本大会実行委員学生代表、大洗女子学園生徒会会長の角谷杏さんでしたー!」パチパチ

杏「補足情報があったらまたあとでくるね~」ヒラヒラ

王「さぁ! 3戦目、Aグループ第2試合はプラウダ高校vs知波単学園! この試合での勝者が準決勝で黒森峰と当たります!」

王「対決メニューは、夏と言えばこれ! カキ氷だぁーっ!!」

愛里寿「カキ氷! 好き!」ンフー

<タイチョーカワイー! ワタシガツクリマスー! ワタシヨ! イヤ、ワタシ!

王「ちょ、ちょっと! 3人とも落ち着いてくださいっ! んー、イエローカード!」ピーッ!

王「えー失礼しました。プラウダ高校からは"ブリザードのノンナ"こと、副隊長ノンナさんが出場されます! おぉー怖い! 私事ですが怖いですこの人!」

愛里寿「セコンドは"地吹雪のカチューシャ"こと、カチューシャちゃん……じゃなかった、カチューシャ隊長」


 カチューシャ「誰がカチューシャちゃんよ! しゅくせーするわよ!」

 ノンナ「おや? これを機会に彼女と仲良くしたいとおっしゃっていたのはわたしの聞き間違いだったのでしょうか」

 カチューシャ「う……べ、別に、怒ってなんかないわよ。ふんっ!」

 ニーナ「わんども居ます!」

 アリーナ「ノンナ副隊長、けっぱれぇ!」

 クラーラ「ノンナ様、わたくしたちも応援しております」ニコ


王「対する知波単学園からは西絹代隊長がフードファイターとして名乗りを上げました!」

愛里寿「セコンドは知波単の皆さん」


<ドンドンドンドン ドン! パフパフ! フレー! フレー! タ・イ・チョー!

 西「このような誉れ高き舞台に私のような者が上がっていいものだろうか……いや、いい!」バサッ!

 福田「隊長! かっこいいであります! 決まったであります!」

 細見「バンザーイ! バンザーイ!」


王「おや? 西選手、そのOD色のマントと軍帽はどうされたのですか?」


 西「うむ。今日の天気予報は晴れではありましたが、もしかしたら食闘に必要かも知れないと思いまして」

 福田「転ばぬ先の杖が役に立ちましたでありますな!」


愛里寿「カキ氷を食べ続けたら体温を奪われる。身体を少しでも温かくして臨むのは良いこと」


 西「サムライ戦車隊長、じゃなかった、ニンジャ戦車隊長殿にお褒め頂き、恐悦至極に存じます!」ビシッ


王「心なしか西隊長がいつもよりたのもしく見えます!」


 福田「隊長殿はいつでも逞しく美しい大和撫子でありますぅ!」


 西「乙女は食わねど高楊枝! 据え膳食らうは乙女の恥! 本日の上覧試合のため、私はニューギニアもかくやの飢餓に耐えたっ!」バサッ!

 細見「隊長殿にとっては朝ご飯を抜いただけで地獄なのだ。いつもにぎり飯10個はぺろりと撃破してしまわれるからな!」ナッハッハ

 玉田「その上、我が知波単学園の鉄則は早寝早飯! しっかり噛んで喰らうため顎も強いのだっ!」


王「西選手は普段から大食い早食いであるとのこと。これは期待できそうです!」

愛里寿「でもちょっと心配」

王「と、言いますと?」

愛里寿「甘味大食いは満腹感との戦い。血糖値が上がると胃に余裕があっても満腹中枢が働いて食べられなくなる」

愛里寿「朝ご飯を抜いた西さんは今血糖値が低い。血糖値の急上昇は避けられない」

王「確かに心配です! このハンデを知波単魂でカバーできるのか!」


 西「知波単戦車隊の誇りにかけてェ! 身命を擲ち勝利を掴まんッ!」バサッ!

 カチューシャ「誇りで飯が食えたら世話ないわよ」フン

 審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」

 細見「遂に此の食闘を以て年来の仮想好敵手ぷらうだと一戦交える事喜ばざるべからず也!」

 西「福田、私の軍帽を預かっていてくれ」スッ

 福田「隊長殿の武運長久を祈るでありますっ!」ウルッ

 玉田「バンザーイ! バンザーイ!」

 カチューシャ「ほら、ノンナ。私を降ろしなさい。……絶対に迎えに来てよね」

 ノンナ「Mig-25よりも速く駆けつけます」ニコ

<プラウダハドンナマシンカシッテルノカ? ボウメイスルキカ?

 西「むむっ。ならば私は、神鷲疾風(はやて)の如く空駆けるであります!」

<フアンダナ… ニホンサイリョウノセントウキデハアルガ…


王「お互いのスペックに期待です!」


王「さあ、島田さん。風雲急を告げるこの試合、どうご覧になりますか?」

愛里寿「今回は忍耐勝負。いかにカキ氷の冷たさを克服できるかにかかっている」

愛里寿「プラウダも知波単もその校風から耐え忍ぶことには強いはず」

王「壮絶な雪上戦がここに始まる! 氷の世界を制するのは一体どちらだーっ!」


 審判「両者、礼!」

 西「いた~~だき~~ますっ!」パンッ!(※柏手)

 ノンナ「いただきます」ペコリ

 審判「位置について、用意っ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


 西「ハイッ! ハイヤッ!」タッタッタッ!

 ノンナ「Ураааааа!!」タッタッタッ!

 福田「突撃でありまぁーすっ!! 吶喊ーっ!!」

 カチューシャ「ノンナッ! 負けたら許さないんだからねッ!」


王「両者とも速い! 先頭は西か! ノンナだ! ノンナだ! 超音速の末脚が炸裂する! ノンナ! 勝ったのはノンナ!」

王「そして2着に西絹代! 今、今、1つの戦車道の常識が覆されました!」

愛里寿「もう2人ともカキ氷を食べ始めた。は、早い!」


 ノンナ「はぁっ! んぐっ! ヒンナヒンナ!」シャクシャク!

 西「はむっ! んむっ! 懐かしい味っ!」シャクシャク!

<oh, It'sゲダンクバー!  アイスクリームジャナイデスヨ?
<ハボクック? ハリアワナイデクダサイ、ダージリン


王「今回も立食スタイルです! 容器はプラスチック製ではありますが、あまり長く持つと指がかじかんできます!」

愛里寿「色んな味のシロップがかかったものが用意されてるけど、2人とも手近なものから平らげてる」

王「好みの味ではなく手近なものから、というのは?」

愛里寿「目の前のカキ氷を消費していくのは良い戦術。視覚による満腹中枢の刺激を少しでも和らげる工夫」

王「なるほど! ですが意外でしたね。プラウダのことですから、わざと2位になるのかと」

愛里寿「確かにプラウダの得意な戦法、消耗戦では自分たちが消耗しないのも重要」

愛里寿「だけど今回の相手はあの知波単。常に全力で突撃する相手を徹底的に消耗させるには、こっちが追い抜くのが一番」

王「そういうことでしたか! 両校、この世界史上希に見る大規模な乳酸菌地獄に耐えられるのかっ!」

愛里寿「でも、見て。知波単、すごい追い上げ」


 西「足りないモノは知波単魂でなんとかするッ!!」シャクシャクシャク!

 ノンナ「っ!」シャクシャク!


王「おぉ~と! 先手を取られた西、ここでプラウダのペースを上回りましたっ! U字回復! トウゴウターンだぁーっ!」

<コンジョー! ホンジツテンキセイロウナレドモナミタカシ! ノギタイショウノゴトシゼヨ!


 浜田「見たか"ぷら助"! 此れが誠の203高地だッ!」ドヤッ

 名倉「難攻不落の旅順要塞、陥落ッ! 知波単の興廃この一戦にありィ!」

 久保田「スズメ、メジロ、ロシヤ!」

 玉田「浮かれるな貴様らァ! 最前線の隊長殿には、生きるか死ぬか、それだけだ! 極寒地獄の底で鬼となって凍てつく苦痛があるだけだ!」

 福田「隊長は、前のみを見つめながらあるく! のぼってゆく坂の上の青い天の雲をみつめて!」ウルウル


優花里「おおっ! バルチック艦隊、見事撃破ですっ!」

王「あ、秋山さん!? 何故放送席に!?」

優花里「わわっ、すいません! 福田殿のセリフに感動してしまってつい……あ、お父さん! お母さん! このあと私も頑張りますよ!」

王「秋山さんにはまた後程ご登場をお願いしたいと思います! ところで島田さん、知波単のペースが速すぎると思うのですが」

愛里寿「前半にこれだけ飛ばしてるのは、有利な立場を先に取って勝負を仕掛けようとしてるから、だと思う」

王「期を見て突撃する浸透戦術ということですね! さすが島田隊長殿であります!」

愛里寿「口調、移ってる」


 細見「よぉ~し、このまま"ぼりしえびき"打倒っ! 西伯利出兵だぁーっ!」

 浜田「北進北進! 日本の首都を秋田に!」

 カチューシャ「何やってるのノンナ! とっとと極東共和国を併合しなさい!」


王「遅れるノンナを尻目に快調に飛ばす西―――お、おやっ!? これはどうしたことだぁっ!?」


 西「ぐっ……! つぁ……!」プルプル

 福田「た、隊長殿っ!?」


王「と、止まりました! 西、完全に停止しましたっ!」

愛里寿「来た……『アイスクリーム頭痛』」

王「あ、あいすくりいむですか!?」

愛里寿「その原因は主に2つ。喉の三叉神経が刺激され、この時の信号を脳が勘違いして関連痛として痛む」

愛里寿「もう1つは口腔内の温度が急激に低下することで、反射で体温を上昇させるため血管が膨張して一時的に炎症が起こって痛む」

王「で、ですが、対するプラウダは頭痛が起こっていません!」

愛里寿「この頭痛を引き起こさない方法はただ1つ……それは、"ゆっくり食べること"」

王「っ!!!」ガタッ


 ノンナ「ふふふ……痛いですか? 痛そうですね。痛くて動けないですよね」フフ

 西「な、なに、を……!」プルプル

 ノンナ「わたしがスタートランで先行したために、あなたには焦りが生じていた。一刻も早くわたしに追いつき追い越さねばと」

 西「ま、まさ、か……!?」プルプル

 ノンナ「わたしは今まで早く食べている"フリ"をしていただけ……自分の口腔温度をゆっくりと下げるために、です」ニコ


王「これはぁーッ!! 西、既にプラウダの術中だったぁーッ!! 正面から突撃してくる知波単のウィークポイントを突いた欺瞞作戦です!!」

愛里寿「おもしろい展開」ンフー


 カチューシャ「ノンナぁっ!!」パァァ

 ノンナ「黙っていてすいません、同志カチューシャ。ですが、どんな時もわたしは偉大なる指導者カチューシャと共にあるのです」

 細見「隊長殿ぉっ!! 衛生兵、衛生兵ーっ!!」

 玉田「転進転進!! 戦略的後退的突撃でありまーすっ!!」

 西「食う物があっても、戦いをしなければならないのだ……! 食う物があるなどは戦いを放棄する理由にならぬ……!」プルプル

 西「我らには知波単魂があるということを忘れちゃいかん……ッ!」プルプル

<シボウフラグダ! インパールサクセンデモヤルツモリカ!?

 福田「こうなったら、我らが肉弾三勇士となりて隊長の突撃路を確保するでありますぅ!!」ウルウル


愛里寿「選手への直接的妨害はさすがにルール違反」

王「間接的にはOKなんですけどね」


 福田「あゝ、長山号が完成していれば……っ」ガクッ

<ナンダソレ テツジン28ゴウデショウカ? シッテルミポリン? エエット…? ゴリアテミタイナヤツデスネ


王「さぁ西の履帯が破断している間にノンナが防衛線突破! 逆転していくーっ!」


 西「すまぬ……もはやこれまで。潔く、散るよりほかに、道は無し。乙女の本懐、大志を遂げん―――」

 福田「ゆ、ゆきーの、しんぐんっ! こおりをっ、ふんでぇっ!!」ポロポロ

 細見「福田ッ!?」

 玉田「福田ァ!!」

 福田「どぉ~れが、かわやら、みちさえしれ、ず~うっ!!」ポロポロッ!

 西「……おおっ? おおっ! なんだか福田の歌で力が湧いてきた! いざ、雪中行軍!!」シャクシャク!


王「立て、立て、立て、立ってくれ~~、立ったぁ!! 知波単、これは先の一戦でも用いられた音楽ドーピングですっ!」

愛里寿「痛みを感じるのは脳。意識を外に逸らしてしまえば痛みを忘却できる」


 細見「連隊、福田に続けぇーっ!!」

<♪ウマーハタオレル ステテモオケズ! ~

 西「疲労がポンととれる突撃錠のようだ! 不思議と痛みが引いていくっ!」シャクシャクシャク!

 玉田「隊長殿がおっしゃっておられるのは玉露の豆仁丹のことであります! 危ない薬ではないであります!」


 福田「やった、やったであります! よし、このまま皆で歌い続けるでありますっ!」パァァ

<♪コーコハイズクゾミナテキノクニー! ~

 ノンナ「…………」シャクシャク!

 カチューシャ「好き勝手やってんじゃないわよ! ニーナ、アリーナ、クラーラ、こうなったらこっちも歌で勝負よ!」

 クラーラ「カチューシャ様、既に準備はできています」

 ニーナ「んだんだ~」

 カチューシャ「え、そうなの?」

 クラーラ「はい。スタジアムの観客席にプラウダの生徒を一定間隔で配置し、周囲のお客さんに歌詞カードを配りました」

 アリーナ「したはんで、行くべ!」

 クラーラ「それでは皆さん、ご一緒に」ニコ


♪前奏 ~

♪ラスツヴィターリ ヤーブラニ イ グルーシ ~


王「なんとぉ~っ! 四方八方から合唱の絨毯砲撃! 歌声のカチューシャロケット! スタジアム全体が赤い風に包まれております!」

愛里寿「60万の大包囲網、神算鬼謀の四面露歌……えと、この解説、聞こえてる?」

王「まさにここは中華大陸満蘇国境ノモンハン―――えっ!? なんですか島田さんっ!?」


♪パプルィリー トゥマーヌィ ナード リコーイ ~


 カチューシャ「今よっ! 永久凍土の果てまで追いかけなさいっ!」

 ノンナ「これがプラウダの団結力です!」シャクシャク!

 西「うっ、"雪の進軍"がかき消されてしまった……!」グヌヌ

 細見「くそっ! 亀の子爆雷さえあれば!」グッ

 福田「我らが部隊は全滅しましたぁっ!」ビシッ

 玉田「何が全滅しましただ! 貴様が生きておるではないか、貴様が!」


王「ノンナ、BT-7の如き侵攻力で追い上げていきます! まさに合唱団のタンクデサント!」

王「プラウダのお家芸、人海戦術! いや、縦深攻撃で知波単を包囲殲滅だぁーっ!」


 福田「あ、あれ? よくよく聞けばこの旋律、異国の言葉にして故郷の歌の如し……もしや!?」

 細見「どうした福田!? 何か妙案が!?」

 福田「い、いかがいたしましょう! 進むべきか、退くべきか!」

 玉田「……福田ァ! 思うがままに突撃せよ! 今こそ戦車夜襲の時ッ!」ビシッ

 福田「ハッ!――――り~んご~の、はなほころ~びっ!!」

<♪ミーナモーニ カースミタチー!

 西「お、おおっ? これはしたり! 大和言葉の調べとあらば、此れより頼める物はなしっ!!」シャクシャク!

 ノンナ「っ!?」シャクシャク!


王「おおっとぉ!? 外来語に弱いことで有名な知波単学園、ロシア音楽"カチューシャ"を歌い始めたっ!?」

愛里寿「ビルマの竪琴?」


 カチューシャ「ちょっとどうなってんのよ!? ストップ、ストーップ!」


 玉田「そうか、思い出したぞ! この旋律、歌声喫茶で同胞と歌ったではないか!」


王「歌声喫茶? 知波単の学園艦にはカラオケの走りとも言える歌声喫茶があるのですか?」


 玉田「うむ。近年できたばかりだが、昭和25年頃風の店が設けられている」

 細見「思想の自由の範囲内でだが学園生徒皆歌謡曲を嗜んでいるのだ!」

 福田「まあ中には店内で秘密結社〇〇〇団や○○○○部!なるものを作って"てれび漫画"歌曲による洗脳布教や同人誌?なる小冊子を出版配布する思想活動を行う者達が、学園の治安維持のためという理由で特別高等生徒会により一斉検挙される事案もあったりなかったり―――」

 玉田「福田ァ!」

 細見「福田ァ゛!」

 西「この好機、逃してなるものか! さすれば吶喊ッ!」シャクシャクシャク!


王「誰がこの展開を予想できたでしょう! 西、逆風と追い風のトルネードのど真ん中を勇猛果敢に突撃していく!」

王「西ガンバレ! 西ガンバレ! ガンバレ、ガンバレ! 西ガンバレ! あと少し! あと少し! わずかにリード! わずかにリード! 西、西ガンバレ! ガンバレ! ガンバレ! 西ガンバレェ~~~~!!」

愛里寿「あの、公平性」

王「一度言ってみたかったであります」エヘヘ


 福田「この隙に乗じて知波単学園校歌を斉唱しましょうぞ! 突撃心は父心、押せば命の泉沸く!」

 知波単一同「「「♪ち、ち、知波単学園~。アー、アー、世界で一番、電話は二番」」」

 カチューシャ「ムキーッ! だったら曲を変えるまでよ! クラーラ!」

 クラーラ「はい、カチューシャ様。観客席の同志も、一緒に!」


<♪Полюшко, поле, Полюшко, широко поле,

 福田「これなら任せろであります!」

<♪ノヲユクヒヅメノオーーート オオ、タクマシツワモーノーー

 カチューシャ「クラーラ!」

 クラーラ「ノンナ様の好きな曲ですっ!」

<♪В воскресенье я на ярмарку ходила,

 福田「しゅらしゅらしゅらら! であります!」

<♪イトトー アサヲー カーッテキター

 カチューシャ「クラーラぁっ!」

 クラーラ「Да!」

<♪У моря у синего моря

 福田「ザ・ピーナッツであります!」

<♪アナータノクーチヅケーニー


王「最後のは日本の歌謡曲では?」


 クラーラ「いえ、ロシア音楽ですよ?」

 ノンナ「え?」

 クラーラ「え?」


王「スタジアム全体を巻き込む巨大な作戦が、まさかまさかの裏目に出てしまったーっ!」

王「銀盤の復活劇! これが西絹代です! 西絹代のフードファイトです! なんというすごいフードファイターでしょう!」


 寺本「快挙であります! 大戦果であります!」パシャ! 

 細見「帝国の稲妻の威力、思い知ったか! 極東の鉄の美少女、地獄の大車輪! 知波単、バンザーイ!」

 玉田「この粘り強い徹底抗戦の記念に日付と部隊名を彫った石をここに埋めておこう!」


愛里寿「スタジアムに怒られるからやめて」

王「さぁ知波単西、プラウダの妨害を何度となく?い潜り、数も勢いもリードしています! まだ続く、繋いだ、繋いだ、知波単西の冬はまだ終わらな~いっ!」


 西「恥ずかしながら帰って参りました! 我が戦車連隊の獅子奮迅の大活躍、痛み入る次第! かたじけない!」シャクシャク!

 久保田「残地諜者命令下達! 隊長殿、よう生きて帰ってきてくれたであります! 『視点を変えれば不可能が可能になる』を体現されましたな!」

 西「うむ。可能なら実行する。不可能でも断行する。それが知波単魂だ!」シャクシャク!

 福田「無事御帰還の由、祝着至極に存じますでありますっ!」

 名倉「堅忍持久の精神、感服仕りましたっ! いざ、撃ちてし止まむ! であります!」

 西「合点承知の助! よし、今こそ我らが秘密兵器100トン戦車の威力を見せる時!」

 西「粉骨砕身ッ! 神仏照覧ッ! 予は常に諸子の先頭に在りッ!」スッ スッ


王「あーっとぉ! こぉ~こぉ~でぇ~、さらに西が畳み掛けるぅ~! 両手に匙を持ちぃ~~?」


 西「―――二天一流ゥゥゥッ!!!」シャクシャクシャクシャク!


 細見「ややっ! あれは禁断の両手持ちッ!?」


王「やはりかーっ! やはりそうきたかーーっ! 自身の多砲塔を巧みに使いカキ氷を口の中へと放り込んでゆくーっ! 遅いぞ第二号艦!」

愛里寿「もう痛覚は麻痺してるから、あとはいかに氷を溶かせるか。ロスを少しでも減らすための良い作戦」


 福田「某は今まであの石の一つでござった。今からはいくつかの石を動かして天地を作って見たい……という隊長殿の気持ちが伝わってくるであります!」ウルウル

 玉田「ムトキンもかくやの大奮闘であります! もはや大捷を博したも同然だな!」

 名倉「敵は砲や機銃で撃つものではない! 気迫で倒すものだ!」

 細見「破邪顕正の活人剣を受けてみよ!」

 寺本「蓋し"ぷらうだ"は敗色濃厚! 降伏せよ! "いえす"か"のう"か!」


王「知波単、もう勝った気でいます!!」

愛里寿「い、いや、あれはプレッシャー攻撃だと思う。たぶん」


 カチューシャ「くぅ~~~っ……ノンナぁ……っ!」ポロポロ

 ノンナ「…………」

 ノンナ「カチューシャに涙を流させてしまったのは、他でもないわたしなのですね……」

 ノンナ「仕方ありません。本当はこの手は使いたくなかったのですが……」スッ


 ノンナ「…………」トン トン トン


王「お、おっと? ノンナ、プラスチックスプーンの腹でテーブルを叩いています。これは一体?」

愛里寿「……?」


 ノンナ「西さん、西さん。イメージしてみてください。あなたはだんだんイメージしたくなる」トン トン トン

 西「い、今それどころでは―――」シャクシャク!

 ノンナ「所詮、人の胃袋には限界があります」トン トン トン

 ノンナ「例えカキ氷でも満腹感は脳に伝わり、体が食べることを拒否します」トン トン トン

 ノンナ「ですが、カチューシャ以外に感覚が働かないわたしの舌は、脳には何も伝えません」トン トン トン

 西「何っ!? そんな馬鹿なッ!」ビクッ


 ノンナ「胃袋も大腸も小腸も、それぞれが全く個別に機能し、脳に満腹感など伝えることなく」トン トン トン

 ノンナ「ただ機械的に、食べ物を消化していくだけです。それも人よりも何倍も早く」トン トン トン

 西「そんな、それでは人間ではないっ! 悪鬼羅刹、いや雪女の如き―――」

 ノンナ「西さん」トン トン トン

 西「なっ、なんでありましょう!」ビクッ

 ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」トン トン トン

 西「そ、そんなこと、無いでありま―――」

 ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」トン トン トン

 西「…………」

 ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」パチンッ!

 西「ひ、ひぃぃぃっっ!!!!!」ガクガクブルブル


 西「寒いぃッ! 寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い―――さむいぃぃぃぃぃっっ!!!」ガチガチガチガチ!


王「ぬぁーっ!?!? 西、全身を痙攣させ、歯をガタガタと鳴らしています!? 見るからに凍えているぅーっ!」

愛里寿「あれは"催眠術"! 西さんは今、全身が氷雪に覆われているかのような錯覚に陥ってる!」

王「超能力ッ! プラウダの超能力者開発計画、まさか完成していたのかぁっ!?」

愛里寿「ソ連軍10003部隊……」

王「ラスプーチン、ヴォリフ・メッシング、いやニーナ・クラギーナ! プラウダ、知波単西を大雪原に抑留してしまったぁーーっ!!」


 ニーナ「おっがねぇ……」プルプル

 カチューシャ「すごいわノンナ! ご褒美にプラウダの学園艦内を自由に旅行できる許可証を与えるわ!」キャッキャッ!

 アリーナ「それっきゃ、副隊長にはたぶん必要ねぇびょん」

 ノンナ「カチューシャの笑顔が一番の褒美です」ニコ

 玉田「おいコラァ! 神通力は反則ではないのか!? 条約違反ではないか!!」

 福田「催眠術は科学に非ず、でありますぅ!」ウルウル


愛里寿「えっと……ルールにないからセーフ」アセッ


 細見「ふ、ふん! たかが手品に騙される隊長殿では無いわ!」

 玉田「そ、そうだ! ぷらうだの策は姑息偸安(とうあん)の一日を弥縫(びぼう)しているに過ぎん!」

 福田「そ、そうであります! 隊長殿には暖かい"まんと"が―――」


 西「―――あ、熱い暑いアツいぃぃぃぃぃっ!!!!!!」ヌギッ


 福田「隊長殿ぉっ!?」

 細見「気でも狂ったか!?」

 玉田「なぜ上着を脱ぐんですか!?」


王「こ、これは一体どうしたことでしょう!?」

愛里寿「……"矛盾脱衣"!」

王「む、矛盾脱衣!?」

愛里寿「一種の錯覚。寒すぎて暑く感じる現象……思い込みのはずなのに」ブルッ

王「に、西、ブラウス1枚の状態で停止……いや、凍結しました……」プルプル


 福田「こうなったらヤスリで隊長殿の氷を削るしかっ!」スッ

 細見「ダメだ!」

 池田「ええい、卑劣極まりないアカ(※プラウダ校旗の色)め! 吶喊ッ! 士魂戦車大隊、玉砕覚悟で突撃だァーッ!」ダッ!

 福田「戦車隊の神様の御下知とあらば! 前進せよ、前進せよでありまーすっ!」ダッ!

 審判「セコンドは選手に突撃してはダメです! ちょっと、ダメっ!」ガシッ

 浜田「貴様知波単を愚弄するかァ!」

 審判「私が貴女たちを侮辱した証拠があるならお腹いっぱいになるまで食べて謝ります! 無かったら、貴女たちがお腹いっぱい食べなさい!」

 浜田「ぐぬぬ……!」


王「スタンドは非常に底冷えがします! 信じられませんが、気温が一気に下がっております! 冬将軍到来! このままではプラウダのワンサイドゲームだぁーっ!!」


 細見「森羅万象までをも操るというのか!?」ビクッ

 玉田「天に抗する気力があればなんとかなる! 必ず天に勝てぇーっ! か、勝ってくれぇ……!」プルプル

 浜田「天は我々を見放した……っ」ガクッ



 西「あ……うぅ……あぁ―――――・・・・


・・・ ・・・ ・・・


 西「――――こ、ここは……?」キョロキョロ


     「絹代……絹代……」


 西「そ、その声は……辻つつじ先代隊長殿でありますか!?」


 つつじ「後退は許さんと言ったな……よくぞ約束通りに……」


 西「隊長殿ぉ……ええ、茨城の地で……っ」ポロポロ


 つつじ「色々と苦労しただろう……」


 西「いや、苦労は、本当の苦労は、不肖西絹代を育て上げた、つつじ隊長殿、貴女です……!」ポロポロ


 つつじ「本当の敵は、強い相手では無く、無能な上官……貴様には苦労をかけたな……」


 西「隊長殿……?」


 つつじ「雪とは……いったい、何なのだろうな……」スーッ…


 西「隊長殿っ、隊長どのぉぉぉぉっっ!!!!」


・・・ ・・・ ・・・


 西「」カチコチ


王「た、立ったまま気絶しています! これぞ乙女の矜持、なんという精神力でありましょうか……」プルプル

愛里寿「武蔵坊弁慶……ううん、八甲田雪中行軍……」プルプル


 クラーラ「いやぁ、映画って本当にいいものですね」ニコ

 カチューシャ「あれがカブキ……見得は映画の技法でいうクロースアップね。今度うちの映画に取り入れましょう!」

 ニーナ「そったらごと言って、わんどの作った映画っこ、ペケ入れまぐったでねがっ!」

 カチューシャ「大階段にコサック兵が一列で進撃してくる絵が欲しいわ! 大勢の人が階段で混乱する中、戦車から政府に向かって砲撃がドーン!」キャッキャッ

 ノンナ「……ふふっ」シャクシャク


王「観客は、ホイッスルよ早く鳴ってくれ、という面持ちでピッチを見つめています。プラウダノンナ、縦深防御の如くゆっくりとカキ氷を食していき――――」


ビーーーーーーーーーーーッ!


王「……試合、終了です」


審判「勝者―――」



   プ ラ ウ ダ 高 校 ッ !!


 ノンナ「あなたは目を覚まします……わたしの合図で夢から現実へ……はいっ」パチン

 西「ハッ!? わ、私はいったい……?」キョロキョロ

 ノンナ「いい試合でした。あなたの忍耐力、素晴らしかったです」チュッ チュッ

 西「ふおおおっ!?!? な、な、何をするでありますかぁ!?!?」ボンッ

 ノンナ「ロシア式挨拶ですよ。それだけ元気ならすっかり大丈夫ですね」ニコ

 西「ほ、頬に接吻などと……///」カァァ

 ノンナ「では、わたしはこれで」スタスタ

 西「ロシアの挨拶、恐ろしや……」ドキドキ

 玉田「突撃ィ~~~ッ!!」ダッ!

 西「えっ、うわ、なっ!?」

 細見「急いで隊長殿を担いで救護室へ運べ!」ダッ!

 西「ちょ、待って! 自分で歩ける、歩けるからぁ!」

 福田「このまま戦車(たんく)で鹿島の海へと突撃でありますぅ!」ポロポロ

 久保田「違う! 救護室だっ!」ダッ!

 西「あ~~れ~~~――――」

 寺本「善戦敢闘参拾分におよび人間に許されたる最大の忍耐を経て、しかも刀折れ矢尽きたり!」ダッ!

 池田「此度のいくさ、確かに我らは降伏した! だが、戦いでは勝ったのだッ!」ダッ!


<プラウダベンチ>

カチューシャ「フン、負け犬が何か言ってるわ」ドヤァ

ノンナ「戦った相手に敬意を示すことも名将の素養ですよ。みほさんとの戦いでそれを学んだはずでは?」

クラーラ「あとで一緒にお見舞いに行きましょうね、カチューシャ様」ニコ

カチューシャ「うっ……わ、わかってるわよ!」

ダージリン「あれが知波単の武士道精神……今度遊びに行こうかしら」

カチューシャ「なぁに? 紅茶でも飲みに来たの?」

ダージリン「そうそう。映画を撮ると言っていたけれど、うちのシネマトグラフをお使いになってはいかが? マジノ女学院から頂いたものだけれど」

ケイ「あら? だったらうちのバイオスコープの方がいいんじゃない? 世界最初の戦争記録映画みたいに!」

カチューシャ「自転車戦争なんか撮らないわよ!? ってゆーかサンダースはお呼びじゃないわ!」


ケイ「そんなつれないこと言わないでよぉ、カチューシャ。帰りにスーパーギャラクシーに乗せてあげるから!」

ノンナ「あれなら誰よりも高いところから景色を見渡せますね」

カチューシャ「ふ、ふぅん……ま、考えてあげなくもないわ!」

クラーラ「Вы вытащили различные КАТЮША-подобных чувств. Я ценю это(カチューシャ様の色んな表情を引き出してくださり感謝します)」ニコ

ノンナ「Пожалуйста, покажите мне фотографию. Я надеюсь. (わたしにも写真を見せてください。お願いします)」

カチューシャ「日本語で話しなさいよっ!」


<放送席>

王「プラウダ、Aグループ準決勝進出決定。黒森峰の対戦校が確定しました!」

王「いやー島田さん。なんというか、やはりプラウダは恐ろしかったですねー」

愛里寿「あったかいスープが飲みたい」

<ワタシガツクリマス! イヤ、ワタシガ! ワタシヨ!

王「それでは一旦CMです!」


―CM―

♪ハーンケーイ ジューウメーーターノセーカイー~

女子校生A「私、戦車乗りになる」

女子校生BC「「マジで!?」」

女子校生A「うん」ニコ

女子校生A「……決めたんだ!」


 ―――その気持ちが、学園を守る力になる。


 \第 6 4 回 戦 車 道 全 国 大 会 出 場 校 募 集 !/

                  なぜ?戦車道 【戦車道全国大会】[検索]


―CM裏―
<黒森峰控室>


モニタ『―――それでは一旦CMです!』

ピッ

エリカ「……っ」ブルッ

エリカ「正直、プラウダとはやり合いたくないわね。見てるこっちまで寒くなってきたわ」ハァ

エリカ「気温が下がったのはさすがに偶然だと思うけど、それを味方につけるなんてさすがプラウダ……」

エリカ「催眠……敵にしたら厄介ね。なにか対策を立てておかないと……」ブツブツ

ガチャ パタン

まほ「コーヒー淹れたぞ。エリカの好きな、とびきり苦いやつだ」コトッ

まほ「身体が冷えただろう。これを飲んで暖まってくれ」ニコ

エリカ「……ありがとうございます。いただきます」ズズッ

まほ「次戦のプラウダ戦にむけて防寒用装備の供給も打診しておこう」

まほ「外套、長靴、手袋、防寒帽……橇は居るか? いやスキーの方がいいか。ヴィンターケッテとツィンメリット・コーティングに冬季迷彩、七年戦争を鑑みて冬営の準備も―――」

エリカ「あ、あの、隊長。お気持ちだけで十分ですので」


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

うぅ、見てるだけで寒気がしたよぅ。

次の試合はいよいよ大洗が出場! 対する相手はサンダース!

ホットドッグの早食い勝負は向こうのホームグラウンド!?

次回! フードファイト・ウォー。『進撃の華』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


___________________
フードファイト・ウォー! 第4話 『進撃の華』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


王「せんしゃどぉっ! フ~ド、ファイトぉっ! 皆さん、楽しんでますかーっ!」

<イェーイ! ワーワー! キャーキャー!

愛里寿「うん。テンション上げて、会場を温め直さないと」

王「はいっ! そんなわけで次戦の前にひとつ、戦車道とフードファイトの関係について、島田さんに解説していただきます!」

愛里寿「えっと、軍隊は胃袋で動く、って言葉、知ってる?」

王「ナポレオンの有名な言葉ですよね!」

<ハラガヘッテハイクサガデキヌデゴザル! ソレハトモカク,カルタゴホロブベシ イチジクガオイシイカラナ

愛里寿「それほど兵站は重要ってことだけど、同時に食べ方も重要」

愛里寿「いつ相手が出てくるかわからない。でもお腹は減る。だから迅速かつ大量に食事をする必要がある」

優花里「1日の行軍距離は補給所間の距離を限度とするのは当然ですからね! それが兵士1人1人の胃袋で伸びるのなら伸ばすに越したことはありません!」

王「うわっと! 秋山殿、お疲れ様であります!」ビシッ

優花里「横から失礼します! 県立大洗女子学園あんこうチーム装填手、秋山優花里です! 今回の試合のために王大河殿にミリ知識を伝授させていただきました!」

<ソレデニワカネタマンサイダッタンダ

王「ちょ!? アズミさんですか今の!?」


王「ともかく、一度にたくさん食べられる胃袋を持っているというのは戦車道においても重要なんですね!」

優花里「厚い脂肪より速い食、ですぅ!」

愛里寿「プラウダ高校みたいに持久戦に持ち込まれたら空腹で白旗を上げることになる」

優花里「悲しいっ! お腹が減って負けましたというのは本当に悲しいですぅ!」

王「いやー、そう考えると全国大会準決勝の大洗は実に相当なピンチだったわけですよねー」

優花里「相手はそれを見越した上でのストラテジー構築でしたから、私たち以上に多くの苦境を乗り越えてきたことがよくわかります」

愛里寿「空腹と体温低下という士気減退の中、起死回生の作戦を実際に遂行できるだけのマンパワーを引き出せたみほさんは本当にすごいと思う」

優花里「そのガンバリズムに至っては学園中第一であると級友たちが語っております!」

王「軍神の軍神たる由縁ですね!」

<チガウヨ!?

愛里寿「もちろん、食べ過ぎて寝ちゃったり、動けなくなっちゃったら本末転倒」

優花里「あー。どこの学校とは言いませんが、気をつけないといけないところですね」

<ドコノガッコウノコトッスカネー,ドゥーチェ? …サアナ

王「つまるところ戦車道に必要なのは、無限軌道のような胃袋と鋼鉄装甲のような意志、ということですね!」


王「さぁ! 早くも4戦目となりましたがBグループ第2試合、ついに我らが大洗女子の登場です!」

愛里寿「対する相手校はサンダース大学付属高校」

王「因縁の対決ッ! サンダースはリベンジマッチとなるのでありましょうか!」

愛里寿「この試合の勝者が次の準決勝でアンツィオと戦う」

王「そしてそしてぇっ! 気になる食材は~~ッ!」


王「HOT DOOOOOOG!!!!!!!!」クイ


愛里寿「なんで顎を出してるの?」

優花里「しゃくれというやつですね」

王「んー! これぞ本場フードファイト! という感じの食材に実況のわたくしも興奮してまいりました!」

優花里「というか、ホットドッグ早食いは確か……」


 アリサ「うちの大学の学園祭の名物、だけど?」ニヤリ


王「選手入場です! サンダースからはかの一戦でフラッグ車M4A1シャーマンの戦車長を務めたアリサ選手が名乗りを挙げたぁーっ!」

優花里「あれ? アリサさんが出場するんですか?」


 アリサ「悪い?」イラッ


優花里「だって、確かサンダース大の学園祭で毎年行われているホットドッグファイトで、大学生を押しのけてここ2年連続優勝していた高校生は……」


 ナオミ「私よ」クッチャクッチャ


王「なんと!? 名狙撃手ナオミさんが優勝者! しかしサンダースこれを起用せず! 一体どういうことなんでしょう?」

愛里寿「温存?」


 ケイ「アタリよ、アリス! 私たちはもうすでに次の一戦まで視野に入れている、ってわけ!」イェイ!

 ナオミ「次戦は優勝候補のアンツィオと当たるからね。少しでも余裕があった方が良い」

 アリサ「大洗なんて敵じゃないってこと。ホットドッグファイト6位の実績を持つ私で十分なのよ」ククッ


愛里寿「6位……参加者何人だろう?」

王「試合ごとに出場選手は代わってもよい、というルールのもとに築かれたサンダースの作戦のようです! これはサンダース大幅有利かぁ!?」


メグミ「まあ、それだけじゃないでしょうけど。ねっ」

王「うおっ!? サンダースOGのメグミさん!?」

メグミ「どうせケイのことだから、ナオミをここで出したら大会があまりにもつまらなくなるって思ったんじゃない?」

王「え? 勝ちをひとつ確実に狙えるのにですか?」


 ケイ「ワンサイドゲームはナンセンス。このファイトはティーヴィーショー! エンターテイメントをリスペクトしなきゃね!」

 ナオミ「私たちはアリサのサポート役、コーパイに徹するわ」

 アリサ「ま、せいぜい楽しませてもらうわよ? 大洗女子?」ニヤリ


愛里寿「フェアプレー精神というよりエンタメ精神?」

王「サンダース、余裕を見せつけています! この試合、果たしてどちらに転ぶのか!?」


王「そう言えば、今回秋山さんはサンダースに偵察に行かれなかったんですか?」

愛里寿「一応ルールでは許可してる」

優花里「いえ、それがですね。行くには行ったんですが、船中に検問が敷かれていまして……」


―――回想―――

モブサンダース「……ちょっとあなた。ここを通るにはサンダース学園艦横断クイズに答えてもらうわ」

優花里「ク、クイズですか?」

モブサンダース「イリノイ州の州都は?」

優花里「ほっ。それならスプリングフィールドです」

モブサンダース「えっ……!?」

優花里「え、えっ? 合ってるはずですが?」

モブサンダース「サンダース生ならシカゴって間違えるに決まってるでしょ! あんた、他校のスパイね!」

優花里「ハッ!?」

――回想終了――


優花里「……ということがありまして。まさかこの私がバルジの戦いを失念していたなんて」ガックリ


 アリサ「そう何度もさせるわけないでしょ! ってか落ち込むところそこなの!?」ウガーッ

 ケイ「アリサが聞かなくて。ゴメンね、オッドボール! 普段はいつでもウェルカムなのよ?」


王「ということは、逆にサンダースも大洗にスパイを送ったり?」


 アリサ「してないわよ! この大会が私たちの汚名返上のチャンスなんだから!」

 ナオミ「"アリサの"チャンス、でしょ。巻き込まないでくれる?」

 アリサ「い、いいでしょ別に!」

 ケイ「マジックは使ってないわ。そんなことしなくても、アリサならヴィクトリーを掴めるって信じてるから!」

 アリサ「隊長ぉ……」グスッ

 ナオミ「ところで、事前に敵の情報を仕入れるのは基本中の基本なんだけど? M24チャーフィー?」ニヤニヤ

 アリサ「うぐっ!?」

 ケイ「HAHA! ナオミのキレッキレジョークがこっちの新兵器よ!」


優花里(ということは、五十鈴殿のことは全く知られていないのですね……)


優花里「それではそろそろ私もセコンドとしてフィールドへ行きますね。失礼しました」ペコリ

王「はい、ありがとうございました。大洗女子あんこうチーム、秋山優花里さんでした!」パチパチ

王「続きまして、同じく大洗女子あんこうチーム、砲手五十鈴華選手の入場です!」



 /パッ!\ /パッ!\ /パッ!\

 ♪Damn. I would have never thought it ever would have been like this ~


王「スポットライトにBGM!?」

愛里寿「演出すごい」


 スタ スタ スタ …

 華「…………」ニコ


<ワーワー! カッコイー! スゲェー! パチパチパチ!


 おりょう「すごい恰好ぜよ。背から頭から花が咲いている」

 カエサル「ケントゥリオの羽飾りか?」

 左衛門佐「旗指物か?」

 エルヴィン「いや、あれは有翼重騎兵フサリアだろう」

 歴女「「「それだ!」」」

 エルヴィン「自分で言っておいてなんだが、タンカスロンでもやるつもりか?」


 アリサ「な、なによそのカッコ!? バカじゃないの!?」

 華「わたくし、頭にピッケルハウベ、背を剣山にしてお花を生けてみました。テーマは『荒野に咲く大輪の花』」ウフフ

 優花里「エリカ行進曲の正式名称から取ったオマージュですね! まるで砲口発光のような煌びやかさですぅ!」


王「その派手やかな出で立ちたるやレッド・バロンの如し! 五十鈴選手、これにはどういった意図が?」


 華「あ、いえ。実は会長からド派手に登場してくれと頼まれまして」

 杏「この方が視聴率あがるっしょ? 相手へのプレッシャーにもなるしね」フフ

 ケイ「Hey、アンジー。そのエンタメ精神は称賛に値するけど、見くびってもらっちゃ困るわね。うちのアリサがこんなことでビビるとでも?」

 アリサ「そ、そうよ! こんなノーズアート、所詮張り子の虎のジークフリート線でしょう!?」フンッ

 ケイ「アリサの食べっぷりを見たら、さしものアンジーも"驚愕"のスペルをキャピタルレターで書き記すことになるわ!」


王「ちなみにBGMの選出は?」


 華「本大会実行委員長の蝶野さんからです」ニコ

<ゲキハリツ120%ヨ!


 沙織「華、がんばってね!」

 麻子「喉につまらせんようにな」

 華「はい、頑張ります。それでみほさん、作戦に変更は?」

 みほ「うん、予定通りで大丈夫かな」

 アリサ「圧倒的パワーで作戦ごとひねりつぶしてあげるわ!」

 ケイ「特訓の成果を見せなきゃね!」

 ナオミ「腹の虫の加護があらんことを」

 審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」


王「さぁ注目の一戦、いよいよ準備が整ったようです! 島田さん、この試合も楽しみですね!」

愛里寿「うん。エンタメとして面白そう」


 アリサ「ってゆーか意外ね。やせ型のあんたが相手になるなんて。てっきり西住流あたりが出るのかと思ってたわ」

 華「みほさんは私のセコンドとして指揮を担当します。Ⅳ号に乗ってる時と一緒ですね」

 アリサ「ま、いくら指揮官が優秀でもスペックが足りてなきゃ意味無いわね、アハハ!」

 アリサ「さぁ……戦争を終わらせるための戦争を始めましょう?」ニヤリ

 華「…………」ニコォ

 審判「両者、礼!」

 アリサ「"Let's rock'n roll!"」

 華「いただきます」ペコリ


\パパパパパウアードドンッ!/


王「観衆の見守る中、開始のホイッスルが鳴りました! おおっ! アリサ、スーパーダッシュだぁー!」


 アリサ「ふっ! 毎日隊長のランニングに付き合ってる私にとってはこんなの朝飯前よ!」ダダダッ!

 杏「文字通りってか! うーん、座布団一枚!」

 柚子「もうお昼前ですけどね」


王「私がサンダース校を訪れた時はアリサ選手、ずっと息切れしてましたが特訓の成果が出たようで―――お、おやぁっ!?」

愛里寿「あ、あれは!?」


 華「…………」スタスタ

 アリサ「――ッ!?!?」ビクッ


王「五十鈴、まさかの徒歩だぁーーっ!! しかも例の過剰装備はヘルメット以外脱いでいません!!」


 みほ「華さん、その調子です! 呼吸をしっかり整えてください!」

 アリサ「ハァ!? 何してんの大洗!?」

 ナオミ「司令部へ報告! 敵は戦車を捨て徒歩で進撃中!」

 ケイ「へえ……面白いじゃない。これが作戦?」


王「一体何が起こっているのでありましょうか!? サンダースアリサの独走、というより、大洗五十鈴の花道ランウェイパフォーマンスだぁー!」


 ナカジマ「1969年のル・マン、ジャッキー・イクスの大芝居を彷彿とさせるね」

 スズキ「スタートの危険を避けて精神を落ち着かせる……並大抵の度胸がなきゃできないな」

 ツチヤ「あれって結果はどうなったんだっけ?」

 ホシノ「ル・マン最多優勝者、キングの初勝利だよ」ニッ


 アリサ「先に到着したはいいけど、何がどうなって……」ハァハァ

 ナオミ「っ、気にせず食べ始めるんだ!」

 アリサ「……バカにしてくれちゃってぇっ!」モグモグッ!


王「テーブルにHALO降下し、先にホットドッグを食べ始めたのはアリサ! 当然でしょう! 煽りを受けて勢いがついている!」

愛里寿「これ、ちょっとわからなくなった。もしかしたらサンダース勝つかも」

王「ここで情報が入ってきました! 大洗五十鈴は体育の授業が苦手とのことです!」


 みほ「はい。それを考慮して、無理をせず彼女の力を最大限出せる作戦にしました」


王「あえてドーリットル空襲を受け入れた大洗の奇策、吉と出るか凶と出るか!」


 アリサ「ホットドッグファイト6位の実力、舐めんじゃないわよぉーッ!」モグモグ!


王「おおっ、これは思ったより速い! M18ヘルキャット並みの機動力です!」

愛里寿「噛ませ犬かと思ったら意外とやる」


 ケイ「それだけじゃないわ! シレイラ並みの攻撃力だってあるんだから!」

 ナオミ「隊長、それじゃ信頼性が下がります」


愛里寿「レギュレーションは守って」

王「アリサ、次々にホットドッグという名の対戦車ミサイルを装填していくーッ!」


 アリサ「私が、私こそがコマンドーケリーよっ!」モグモグ!


 華「…………」トコトコ


王「徒歩とは言え着実にテーブルへと近づいてくる五十鈴! 恐怖! その笑顔の下に隠し持っているものは何なのか!」

愛里寿「普通ならこの差はもうひっくり返せないけど……?」


 優花里「"普通なら"そうかもしれません。ですが私たちは大洗、あんこうチーム!」

 沙織「今までだってたくさんの不可能をみぽりんのムチャ振りで乗り越えてきた!」

 麻子「少しでも油断したら足元をすくわれるのは相手の方だ」

 華「目標地点に到着します!」

 アリサ「もう手遅れよっ!」モグモグ!

 みほ「それじゃ、対象を射程範囲から駆逐してください」

 華「はいっ、みほさん!」スッ

 アリサ「今更何をやっても―――あ、あれ?」


 アリサ「さっきまでここにあったホットドッグが……無い!?!?」


王「み、見間違いでしょうか。今、食材テーブル上からホットドッグの山がひとつ消滅したように見えたのですが……」プルプル

愛里寿「地形が変わるほどの戦車砲なんて、聞いたこと無い……」


 華「すいません、おかわりを」ニコ

 スタッフ「は、はい! 只今!」

 アリサ「あ、あんた、今、何を……」プルプル

 華「何って、おかわりですが?」キョトン

 アリサ「は……?」

 華「今日は遠慮しなくてもいいんですよね?」ニコォ

 アリサ「――――ッ!?」ゾワワッ

 ケイ「なにこれ!? ジャパニーズホラームービー!?」

 ナオミ「OMG! 彼女は"捕食者<プレデター>"だ!!」


王「五十鈴、その砲撃能力をターレットダウンしていた! ここで新たな情報です!」

王「情報によりますと、五十鈴は大洗の旅館『いそや』で出される夕食をペロリと平らげてしまうほどとのこと!」

 
 梓「あの『いそや』の夕食を!? 鍋三つあるよ!?」

 沙織「それでも足りなくておかわりしてたけどね」アハハ

 杏「あそこのあんこう鍋はサイコーだよねぇ」

 アリサ「聞いてないわよぉ!?」ガーン!


 みほ「華さん、ぱっくん作戦は成功です! あとは味わって食べてください」

 アリサ「マジで"食べてる"の!? あれが"食事"なの!?」

 華「パンとソーセージとケチャップとマスタードのハーモニー、シンプルながらおいしいですねぇ」モグモグ


王「あれで本当に味がわかるのでしょうか!? 彼女はギャグマンガの住人ではないのか!?」

愛里寿「フードファイトの歴史がまた1ページ」

王「このままではいずれアリサに追いつきます! 猛追! 家庭用冷蔵庫が走ってくる! 先ほどの心配は完全に杞憂だったーッ!」


 みほ「華さん、そのままのペースを維持して進軍してください!」

 アリサ「ハッ! いくら名将軍神って呼ばれても、まるで人間を機械か何かだと勘違いしているようね!」モグモグ

 アリサ「維持しろって言われて維持できるなら苦労しないわよ! そんなの人間には不可の……う……!?!?」ビクッ

 華「はい、みほさん!」モグモグ!

 アリサ「んなぁぁっ!?」


王「止~ま~ら~な~い~~っ!! 彼女の乗る戦車のマニュアルに障害物の3文字はありませんッ! その風格たるやT28超重戦車の如し!!」

愛里寿「それはアメリカの試作戦車」


王「客席は何が起こっているんだと言わんばかりの驚きに包まれています! 飢えと渇きのモンロー・ノイマン効果、食い意地のHEAT弾が炸裂する!」

愛里寿「私も初見は驚いた。今大会、スペックだけで言えば五十鈴さん無双」


 優花里「サンダースは私たち大洗を偵察してこない、という西住殿の読みは大当たりでしたね! もう完全にこっちのペースですぅ!」


辻(役人)「お、おい! 実況! 大洗にあんなバケモノが居るなんて聞いてないですよ!」

王「ちょ!? なんですか急に!? 放送席は部外者立ち入り禁止です!」

愛里寿「それは今更な気がする」

辻「貴女、自分が大洗だからって黙ってたんじゃないでしょうね!?」

王「はいっ! 公平を期するために黙っておりました! フェアプレー精神で行きましょう!」

<ソウダソウダー! オッサンハオヨビジャナインダケド ムチハツミヨ

辻「ぐぬぬ……!」

王「さあ! フードファイトの時間ですッ!」


 ナオミ「こうなったらコーラにホットドッグを浸けて食べるしかない! 抜かれたら最後だ、何としても守れ!」

 アリサ「陣地を死守するなんて我が軍にはありえない! 攻撃あるのみよ! ガチョウの糞のようにメタメタにしてやるわ!」

 ケイ「アリサ、アメリカンジャンボサイズよ! 受け取って!」スッ

 アリサ「"I feel the need,the need for speed!"」ジャボジャボ モグモグ!


王「出ました! 邪道食いの代名詞、コーラでビチャビチャ! 特にルール上問題ありません!」

愛里寿「絵的に汚いけど確かに早い」

王「やるなら炭酸より水でやった方が、とは思いますが、そこは好みの問題でしょう!」


 桃「まるで犬のエサですね。ホットドッグだけに」

 杏「んー、こっちも座布団一枚!」

 ケイ「名付けてマッドドッグ作戦よ! 特に元ネタは無いけどね!」


王「一方、五十鈴は背中から花々の後光を浴びてホットドッグ大隊を一網打尽にしています! ホットドッグは五十鈴華の砲口の為に産まれてきたのか!」


 ナカジマ「まさにホッケンハイムリンク、オーバーテイクの代名詞だ!」

 ホシノ「多重接触事故も無くぶっちぎったな」ウンウン

 スズキ「これはシケイン設置しないとマズイね」ニヤニヤ

 ツチヤ「それってフランクフルトじゃ?」


 華「ホットドッグ対決でドイツ戦車がアメリカ戦車に負けるわけには行きません」スッ

 みほ「華さん、そろそろ射程圏内に入ります。体調は大丈夫?」

 華「シュトリヒ計算はバッチリですよ、みほさん!」スッ

 みほ「あと少し……撃てっ!」

 華「はいっ!」スッ スッ!


王「ぬわーっ!? 試合中盤で大洗、まさかのペースアップ! 恐ろしく速い食事、もはや目視できなーいッ!」

愛里寿「このタイミング、サンダースを一番心理的に揺さぶれる。さすがみほさん」


 アリサ「信っじられない! あんな細い体のどこに入るっていうのよ!?」

 優花里「茨城県人、ここにあり! ですね!」

 ケイ「まさか本物のイバラキケンジン!? MIB呼ばなきゃ!」

 ナオミ「フー・ファイター!? エイリアン!?」


王「サンダース側は混乱しております。コテージ作戦、いや、ロサンゼルス空襲でしょうか?」

愛里寿「見えない敵と戦って同士討ちするのは良くない」

王「五十鈴、アリサのマッドドッグ作戦を物ともしておりません! ここはエリア88、戦場のド真ん中! サンダースに次の一手はあるのか!?」


 アリサ「最低でも弓と槍に勝てる銃、リベレーターでもジャイロジェットピストルでもいいから私に逆レンドリースしてちょうだい! 火事を消さないと!」

 ナオミ「XB-70ヴァルキリーで衛星軌道上から攻撃しよう」

 アリサ「とても無理だわ!?」

 ナオミ「わかった。じゃあプランBで行こう……プランBは何?」

 アリサ「あ!? ないわよ、そんなもん!」

 ナオミ「ホットドッグがレバノン料理に見えてきた……」ゴクリ

 ケイ「私に良い考えがあるわ! アリサ、逆噴射よ!」

 ナオミ「キャプテンやめてください!」


王「アリサ、このマッハの恐怖の中、F-4戦闘機パイロットばりのハドソン川の奇跡を起こせるか!」


 ナオミ「大丈夫! 抜かれない限り、勝機はまだある!」


愛里寿「あ、大洗が抜いた」


 ナオミ「今はもうない」


王「急減圧! 油圧喪失! みるみるうちに引き離されて行きます! 何のための前進守備だッ! これはいけませーんッ!」


 アリサ「好き勝手言ってんじゃないわよ! いいわ、私がDC-10じゃないってとこ見せてあげる! 第4エンジンに愛着はないわ!」

 ナオミ「DC-10は3発機だぞ?」

 アリサ「だから違うってば! ホットドッグになりたいのかしら!?」

 ケイ「Haha…」


王「アリサ、ハウランド島付近で消息を絶ってしまったー! 大洗のあまりの凄さにサンダースも苦笑い!」


王「さぁここまでですが一方的な展開になっています。ちょっとこの差は予想していなかったでしょう」


 華「あふれる肉汁がパンに染み込んで、ケチャップの酸味がそれを引き立てています」スッ スッ


 ナオミ「抜かれた以上、大洗を妨害するしか無いわね。あのぴょこぴょこ動くアホ毛が強さの源なんじゃない?」

 ケイ「それじゃあアホ毛脱毛作戦よ!」

 カエサル「旧約聖書のサムソンか?」

 左衛門佐「山内一豊の妻かも知れん」

 エルヴィン「いや、OSSが狙ったヒトラーのヒゲだろう」

 歴女「「「それだ!」」」

 アリサ「それだ! じゃないわよぉ! テキトー言わないでっ!」モグモグ!

 ナオミ「じゃあどうすんの!? 鳩ミサイルやコウモリ爆弾でも使う!?」

 ケイ「ポパイ作戦やA119計画も捨てがたいわね」ウーン

 エルヴィン「一番有効なのは同性愛爆弾じゃないか?」

 ナオミ&ケイ「「それだ!」」

 アリサ「それだ! じゃなぁいっ! 大洗じゃなくて私を恐れるようにしてやるわよ!?」

 ナオミ「正直すまなかった……」

 アリサ「どうしてうちはこんなに泥縄なのよぉ!!」ウワァン!


 みほ「華さん、もう十分です。ペースを抑えましょう」

 華「あら残念。わかりました」モグモグ


王「残り時間1分。現在大洗が10個差でリードですが、もはやこの状況、どれだけサンダースが足掻こうと大洗は勝ち確定の状況と思われます」

愛里寿「それでも健闘したと思う。アリサさんには賛辞を贈りたい」

王「とのことですが、アリサ選手は―――」


 アリサ「全部タカシが悪いのよぉぉぉっ!!!」モグモグ!


王「まるでストーブのように燃えております!」


 杏「勝負あった。無理するこたぁないよ、サンダースの」

 ナオミ「ハハ、ザカライアス大佐の心理戦争をされるとはね。たしかにもう勝ち目はない、か」ハァ

 ケイ「ここまで、ね。ナイスガッツだったわ、アリサ」

 アリサ「……返事は"Nuts"よ!」

 ケイ「アリサ……」

 ナオミ「このウォーモンガーめ……」


 アリサ「何も終わっちゃいないのよ! 私にとってはあの日から戦いは続いたままなの!」モグモグ

 アリサ「全国大会第一回戦、必死で戦ったのに勝てなかった! そして帰ったら空港で非難轟々よ!」モグモグ

 アリサ「盗聴魔だとかストーカーだとか悪口の限りを並べられたわ! あいつらは何? 戦車道のせの字も知らないくせに!」モグモグ!

 アリサ「どうせわかりゃしない。奴らには理解できない、仲間のために戦うってことが。それだけ……それだけよ……!」モグモグ…

 杏「そこまでして何を求めてるのさ?」

 アリサ「尊重よ! 誰にもバカにされない権利の尊重!」モグモグ

 桃「貴様、会長に敬語を―――」

 柚子「桃ちゃん、ステイ!」

 桃「がるる……」

 杏「どうどう。それで、アリサちゃんはそんなつまらないもののために戦ってたのか」

 アリサ「あ゛ぁっ!?」


 杏「今はもう、私たちと肩を並べてお茶を飲める。笑い話にできる。それでいいじゃん」

 アリサ「いいわけ、ないでしょ……戦車道は遊びじゃないのよ……」モグモグ

 杏「同情はしないよ。それがアリサちゃんの選択だったんだから。だけどね」

 杏「戦車道をやってる人間が一度でもアリサちゃんを非難した?」

 アリサ「――ッ!!」

 杏「過去にだって無線傍受が行われた試合は何度もあった。それを知ってたからこそ西住ちゃんはサンダースの作戦を逆手に取れたわけだし」

 杏「戦車道を知ってるって言うバカに限って戦場を知らないもんだ」

 杏「アリサちゃんが守るべきものはさ、戦車道の外にあるの?」

 アリサ「……そうね。たしかに、そう。戦車道は―――」


 アリサ「―――私の家よ」グスッ


ビーーーーーーーーーーーッ!


王「し~あ~い~しゅ~~りょ~~~!! ディス! イズ! フードファイトォ!」


審判「勝者―――」



   大 洗 女 子 学 園 ッ !!


 沙織「華ってば! もう試合は終わったの! 勝ったの!」グイグイ

 麻子「あれだけ食べててまだ食うのか」

 華「病みつきになってしまって」モグモグ

 みほ「残りは皆さんで分け合いましょう?」

 華「そういうことでしたら……」

 優花里「勝者とは思えない残念そうな顔ですね」アハハ

 アリサ「……ハァ。また大洗に負けたのね」

 優花里「もしサンダースが大洗に偵察に来ていたらどうなっていたかわかりませんでしたよ、アリサ殿」

 優花里「あんまり悲観的にならないでくださいね。未来に希望を持ってください!」

 アリサ「……そうね、情報戦も戦車道。次こそは負けないわよ、オッドボール軍曹」フッ

 ナオミ「これで私は実戦を経験せずに退役、ファイティングモンスターM103重戦車ってわけね」

 アリサ「ナ、ナオミ……その、ごめん……」

 ナオミ「アリサが謝るなんて、脳にまでそばかすが出来た?」

 アリサ「は、はぁ!? んなわけないでしょーが!」

 ナオミ「フッ。グリズリーは全世界に愛されなくていいの」

 ナオミ(無鉄砲だけど勇敢な灰色熊を、私たちは尊敬してるんだから)ニッ

 ケイ「いい試合だったわ! アリサもなんだか吹っ切れたみたいだしね!」ダキッ

 アリサ「ちょっ!? た、隊長! 苦しいっ! 出る、出ちゃうっ!」ジタバタ

 杏「終わりよければ全てオッケイ! おケイだけにね」ニッ


王「それでは本大会のダークホース、五十鈴華選手へのヒーローインタビューです! 今試合の作戦はどのようなものだったのでしょうか!」


 華「お恥ずかしい話なんですが、わたくし、おいしいものが目の前にあるといくらでも食べてしまうので、みほさんにペース管理をお願いしたんです」

 優花里「最悪、対戦相手を開始数秒で戦意喪失させるほどのものですからね」

 杏「それは運営としてはダメだからねぇ。一応スポンサーついてるし」

 みほ「それだったら中盤以降で勝負を仕掛けようってことになったんです」


王「となると、基本的には黒森峰の戦略と一緒だったわけですね!」


 みほ「え……っと……。そうなるの、かな」


王「やはり王者の戦法! 西住みほ隊長は黒森峰出身であり、西住流の家柄だけあって―――」


 優花里「あーっと! それより準決勝以降は試合の流れが変わるんでしたよね!?」


王「えっ? あ、はいっ! 次戦からは準決勝となります!」

愛里寿「尺が無いから巻きで? だって」


王「それでは準決勝以降のルールについてご説明させていただきます!」

王「まず、初戦出場の選手とは別の選手の出場が可能です!」

王「胃袋の負担を考えれば選手交代をすると思いますが、チーム内に高いスペックの人材が他に居ない場合は一人に負担がかかることになるかもしれません」

愛里寿「その意味でアンツィオは優勝候補と目されている。メンバー全員が腹ペコモンスターだから」

王「次に、スタートランは廃止され着席スタートとなります!」

愛里寿「純粋に食べることだけで勝敗がつくようになる。シンプルだからこそ究極のフードファイト」

王「最後に、セコンドからのサポートは掛け声のみとなります!」

愛里寿「選手に声をかける以外の全ての行為が禁止される。信じられるのは己の身体一つ」

王「Aグループ準決勝は黒森峰vsプラウダ。前年の全国大会決勝カードとなっております!」

愛里寿「激しそう」

王「Bグループ準決勝はアンツィオvs大洗。今年の全国大会第2試合と同じですね!」

愛里寿「楽しそう!」

王「それでは一旦CMでーす!」


―CM―


パンツァーセット♪

今度のパンツァーセットは中国戦車!

ジャケットと砲弾を買うと


   ①ルノーNC型  ②ヴィッカース Mk.E  ③九七式中戦車チハ(功臣号仕様)


どれかのミニ戦車がもらえるよ!



     せんしゃ
     倶楽部


―CM裏―
<黒森峰控室>


モニタ『―――それでは一旦CMでーす!』

ピッ

エリカ「コーラ浸けホットドッグ……考えただけで気持ち悪くなってくるわね。しばらくは炭酸飲めそうにないわ」ウップ

エリカ(それとあの役人……取り乱すんじゃないわよ……)チッ

ガチャ

まほ「エリカ。ファンタ持ってきたが、要るか?」

エリカ「い、いえ、お気持ちだけ頂いておきます……」

まほ「そうか、次はすぐエリカの出番。ファンタなど飲んでる場合ではない、か」

まほ「次期隊長として良い判断だ」ニコ

エリカ「……次期隊長、ですか」

まほ「ああ。これからエリカには次期隊長としての自覚を持ってもらうことになる。今の私の持つ全権を委任することになるからな」

まほ「お母様をはじめとする歴代黒森峰隊長の『古き偉大さ』と、エリカという『新しい力』のシンボルが結合するんだ」

まほ「次のプラウダ戦も、私とエリカとでならタンネンベルクの戦いのように大勝利をおさめることができるだろう」

エリカ「……頼もしい限りです、隊長」

まほ「応援しかできないことがもどかしいよ。この気持ちがヒンデンブルク号のように爆発しないよう気をつけておこう」フフッ


コンコン ガチャ

クラーラ「失礼します。次戦の前にご挨拶に来ました」ニコ

エリカ「貴女はプラウダの?」

まほ「敵兵が何の用だ。アイスピックは持っていないだろうな?」

クラーラ「ご心配なら身体検査をしていただいても構いませんよ」

まほ「ならば折角だ、させてもらおうか」ペタペタ

クラーラ「下着も脱ぎましょうか?」

まほ「……いや、いい。特に硬いものは無かった。それで、用件は?」

クラーラ「一つはエリカさんにご挨拶と、もう一つはまほさんの招聘です」

まほ「私を? カチューシャか?」

クラーラ「なるべく急いでくださいね。カチューシャ様のご機嫌の良いうちに」

まほ「仕方ない。少し席を外す」ガチャ

クラーラ「…………」チラッ

エリカ「…………」


クラーラ「話は手短に。こちらをどうぞ」スッ

エリカ「下着の中に隠してたのね……って、これは、隊長の写真!?」ガタッ

エリカ「しかも幼少期の!? 貴女、これを一体どうやって……!?」

クラーラ「私の父に頼んで入手しました。それより、この写真、欲しいですか?」

エリカ「……八百長はしないわ。そういうことはしない」

クラーラ「ええ、構いません。ただノンナ様に対するあらゆる妨害をしないとさえ誓っていただければ、あとはノンナ様の実力で貴女に勝ちます」ニコ

エリカ「へえ、プラウダも出場選手の変更は無しなのね」

エリカ(どうして私が続投することを知ってるのかは聞かないけど)

エリカ「にしても、なんか怪しいわ。うちの隊長にこの取引のことバラすつもり?」

クラーラ「大丈夫です、この行動は私の独断専行ですから。取りあえず前金としてこちらを」スッ

エリカ「どうだか……嘘だったらタダじゃおかないから」スッ(※写真を懐に忍ばせる音)

クラーラ「交渉相手が貴方で良かったです」ニコ


クラーラ「成功報酬はこの倍で」

エリカ「ま、どの道? 私の考えた作戦じゃどれもブリザードに腕押しになりそうだったし、こっちは自分の身を守るので精一杯」

エリカ「決勝戦のことも考えての2方面作戦は苦手よ。だから、直接的にも間接的にも妨害攻撃はしないってちゃんと約束するわ」

クラーラ「この辺が私たちのカーゾン線、クラーラ=エリカ協定締結ですね」

エリカ「いいえ、これは不可侵条約の秘密協約。公にする必要はないでしょ」

クラーラ「それもそうですね」フフッ

エリカ「ほら、隊長が戻ってくる前に」

クラーラ「次はなにかお土産を持ってきます」ガチャ

エリカ「パン籠だけはお断りよ」


エリカ(さてと……)

エリカ「癪だけど、"あの人"にレンドリースを受けに行こうかしら」


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

ナオミさんが出てたら経験の差で負けてたかも!

華さんお疲れ様! 大洗のみんなもありがとう!

次の試合は黒森峰対プラウダ。嫌な予感しかしないよぉ……。

次回! フードファイト・ウォー。『目指せモスクワ』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


_____________________
フードファイト・ウォー! 第5話 『目指せモスクワ』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


王「皆さんこんにちは、ご機嫌いかがでしょうか。王大河です。今大会第5試合目を迎えております」

王「お昼をまわりましてこれより午後の部、準決勝の模様をお送りしてまいります」

王「放送席での解説は、日本戦車道ここにあり! でおなじみ。島田流から、島田愛里寿さんです!」

愛里寿「よろしくお願いします」ペコリ

<タイチョーカワイイー! オベントウツイテマスヨー! アリス,ガンバルノヨ!

王「さあ、島田さん。黒森峰対プラウダということで今試合も厳しい戦いが予想されるんですが、いかがですか」

愛里寿「怖い」

王「……その一言に尽きると思います。なお救護班は万全の状態で待機しておりますのでご安心を!」

王「さて、気象情報をお伝えしましす。現在気温が29℃、湿度が59%、ご覧の通りの快晴です」

愛里寿「良い天気」

王「そしてスタジアムなんですが、なかなかの盛り上がりですよね!」

愛里寿「人、増えてる?」

王「はいっ! なんとですね、午前の試合の様子がSNSを通じて拡散され、現在ぞくぞくとスタジアムにお客さんが集まって来ています!」

王「この放送をご覧の皆さま! まだまだ空席は残っておりますのでスタジアムにお急ぎください!」

愛里寿「くださいっ」


王「Aグループ準決勝、黒森峰からはなんと逸見エリカ選手が続投! 対するプラウダからは……な~んと! こちらもノンナ選手続投です!」

愛里寿「おぉ~」パチパチ

王「お2人には既に卓に着いてもらっています。そこへ料理が次々と運ばれてくるわけですね!」

愛里寿「カメラに向かって横並び」


 ノンナ「エリカさん。続投だなんて、無理していませんか?」

 エリカ「その言葉、貴女にそっくりそのまま返します」

 ノンナ「あなたにも前戦のダメージが蓄積しているはず。サンドイッチとカキ氷、どちらが軽いのでしょう」

 エリカ「フン。私にそんなものはありません」

 ノンナ「……?」


王「島田さん。お2人のダメージ、どうご覧になりますか?」

愛里寿「普通なら固形物を大量に摂取してる逸見さんの方が不利……だけど、水分をたっぷり吸収したノンナさんは全体的に動きがにぶくなるはず」

王「なるほど! この試合もおもしろくなりそうです!」


王「さて! 気になる対戦食材はぁ~~っ!! ジャガ―――っとぉ?」

スッ

愛里寿「あれ? カンペ?」

王「え、えーっと? 本当ならジャガイモ料理対決になるはずでしたが? 北海道地方天候不良のため? 食材のジャガイモが大洗港に入港せず!?」

愛里寿「そうなんだ。残念」

王「えぇっ!? これ、どうするんですか!? 大会大丈夫なんですかぁ!?」

辻「そ、そんなバカな! この時期に天候不良だとぉ!?」

王「うわっと!? あなたはまたぁ!」

愛里寿「誰か放送席に鍵かけて」

辻「ええい、トラックでも輸送機でも使って持って来なさい!」


   「その必要はありません」


王「あ、あなたは……プラウダ高校、クラーラさん!」

クラーラ「こんなこともあろうかと、こちらで料理をご用意させていただきました」ニコ

辻「なんだと!?」

クラーラ「既に調理テントへ搬入中です。時間、押しているのでしょう?」

辻「そのような変更は認められませ―――」

杏「いいよー。許可許可」

クラーラ「ありがとうございます、大会実行委員学生代表様」ニコ

辻「くっ……」


 まほ「津軽海峡はプラウダの庭。何かやったな?」

 カチューシャ「あら? なんのことかしら」フフン

 ノンナ「同志カチューシャが天候不良と言えば天候不良なのです」

 エリカ「なるほど。2+2=5ってことですか」

 ノンナ「そちらこそこのタイミングでジャガイモ料理。元々何か仕込んでいたのでは?」

 エリカ「…………」フンッ

 まほ「何を根拠に」


 ノンナ「空腹状態の第1戦はともかく、第2戦以降はフードファイターの精神力がより重要」

 ノンナ「そんな状況で食べ慣れた食事が可能というのは、暴力的なまでに有利でしょう?」

 エリカ「まあいいわ。たとえ食材が何であろうと、私が勝ちます」

 カチューシャ「こんな諺をご存知? 弱い犬ほどよく吠える」ドヤァ

 エリカ「チッ……」

<アラ,カチューシャニパクラレマシタワ フンイキブチコワシデス,ダージリンサマ


王「食卓という名のリング上ではメンチの斬り合いが行われています! ここに不可侵条約は破られた!」

愛里寿「ノンナさんの言う通り、準決勝以降は気力の闘い。舌戦でリードすることも重要」

王「2人の暗黒の帝王が、平和のパイ包みを破壊し始めました! 独ソ開戦は避けられなぁーいッ!」


王「果たしてェ! 雪の王国プラウダが用意した料理とは一体何なのでありましょうか!?」


みほ「あ、この匂い……パン? 美味しそう!」


クラーラ「そう。準決勝の料理は"ピロシキ"です!」

王「なんとぉ! 臆面もなく自分たちのホームフードを用意してきたプラウダ! その鉄面皮のラジエーターは不凍液完備だァ!」

<ピロシキッテ? ピーラッカノコトサ ポロロン♪

王「このピロシキが、隊長カチューシャによる黒森峰への撤退命令となるのか! はたまたプラウダがスタジアムを去る際の捨て台詞となってしまうのか!」


 カチューシャ「うるさいわよ実況! ノンナー! 負けたら空挺戦車の降下訓練なんだからね!」

 ノンナ「Да. そう言えばエリカさん、催眠術対策はしてきましたか?」

 エリカ「耳を塞げばいいだけです」

 ノンナ「ですが、ルールには五感を遮断する道具の使用は禁止とあります」

 エリカ「だったらこうすればいい」スッ

 ノンナ「両手を使って? でも、そうしたらどうやって食べるんです? 犬喰いでもするつもりで?」

 エリカ「…………」フンッ

 ノンナ「それは楽しみですね」ニコ

 審判「準備、整いました。両者、礼!」

 ノンナ「いただきます」ペコリ

 エリカ「…………」ペコリ

 審判「用意っ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


 エリカ「はむっ! はむっ! はむむっ!!」

 ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」


王「さぁ両者一斉に食べ始めた! どちらも速い! ノンナ有利と思われたがそれに食らいつく逸見! 一度噛みついたら離さなーいっ!」

愛里寿「ノンナさんの戦い方は無駄に戦力を浪費させてから突破を図る縦深攻撃。わざとペースを落としてるのかも」

王「総菜パンのバルバロッサ作戦! 小麦粉、ひき肉、タマゴに野菜の大生産地、レーベンスラウムを獲得することができるのかァ!」


 ノンナ(スタートは様子見……やはりあなたは黒森峰。不文律でも律儀にルールを守ろうとする)

 ノンナ(ふふ。クラーラから情報は得ていますよ。あなたはわたしに攻撃することができない)ニヤ

 ノンナ(であれば、先手必勝ということ!)ピタッ


王「あぁーとぉ!? どうしたノンナ!? ピロシキ4個を平らげたところで止まったぁー!」

愛里寿「これは!」


 エリカ(来たか……!)ハムッ!


 ノンナ「あなたはわたしに勝てません」トン トン トン

 エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!


王「で、出たぁーっ!! プラウダ印の秘密兵器、ハイプノシスっ!!」

愛里寿「スプーンは持ち込み」

王「待ち構えていた鬼戦車! ヴォルガを超えて、食欲のタイフーンはモスクワに届くのかぁーっ!?」


 まほ「エリカ! 耳を貸すな! 食べることに集中しろ!」

 カチューシャ「無駄よ! ピロシキを食べてる間は耳を塞げない! 赤ん坊だって知ってるわ!」

 ノンナ「あなたはわたしに勝てません」トン トン トン

 エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!

 ノンナ「あなたはわたしに―――ッ!?」トン トンッ ガチャーン!

 エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!


愛里寿「……効いてない?」

王「これはどうしたことだ!? 逸見、ノンナの催眠術に全く耳を貸していません!」


 ノンナ「そんな!? あなた、いったい、なんで……!?」

 エリカ「……あら? もう終わりなの? じゃぁこれ、外そうかしら」キュポッ

 ノンナ「そ、それは……耳栓!?!?」


王「な、な、なんとぉ! 黒森峰逸見エリカ、耳栓をしていたぁーっ!」


王「換装対応したⅣ号潜水戦車、無音の川底より渡河ッ!」


 カチューシャ「潜水戦車って?」

 クラーラ「ZIL-29061やBe-2500 ネプトゥヌスのようなものです」

 アリーナ「いや全然違うべな」

<ジンルイサイゴノキボウ,ゴウテンゴウダ! カリナ!?


 ノンナ「一体いつの間に―――あの時!」


――回想――

エリカ『だったらこうすればいい』スッ

――――――


 カチューシャ「ってちょっと待ちなさーいッ! この薄っぺらいルールブックには耳栓ダメって書いてあるわよ! 反則負けよ!」

 エリカ「同時に飲食物の持ち込みは可、とも書いてあるわ。しかも第1条にね」

 まほ「エ、エリカ……。そんな策を立てていたとは……!」

 エリカ「紅茶やコーラで見てきたように、飲食物を使ってのサポートはアリ、ということ」

 カチューシャ「だから何なのよ! 耳栓はどっちにしろダメじゃない!」

 ノンナ「それに、あなたは入場検査で持ち込み飲食物を何も申請していなかったはずですが?」

 エリカ「やっぱり調べてたんですね。その貴女たちの諜報能力への強い自信を逆に利用させてもらいました」

 カチューシャ「ふぇ?」

 エリカ「確かに私は何も申請していない。私は、ね」

 ノンナ「―――ッ!!」


 エリカ「これ、サンダースからもらったガムですから」ニヤリ


王「まさかの独米レンドリース! 逸見選手の耳栓は、サンダースナオミ選手が常備しているチューインガムだったぁ!」


 エリカ「隊長の持ってきてくれたファンタを渡したら快く交換してくれました。ありがとうございます、隊長」

 まほ「エリカ……!」


王「避弾経始で相手の攻撃を逸らした逸見選手! Ⅴ号パンターここにあり!」

愛里寿「持ち込み申請したモノの譲渡は、うん、ルールにないからセーフ。だけど……」


 カチューシャ「はぁ!? ガムだろうがなんだろうが耳を塞いじゃ危ないでしょ!? それにガムは飲食物とは言い難いわ!」

 エリカ「催眠術とかいう反則技を使ってる貴女たちに言われたくないわよ!」

 まほ「いいぞエリカ! 言ってやれ!」

 カチューシャ「傾斜装甲はこっちが最初なのにぃ……ノンナぁ!」

 ノンナ「カチューシャ、残念ながら一理あります。それに、プラウダが己の諜報力にあぐらをかいていたというのも事実」

 カチューシャ「えっ」ウルッ

 ノンナ「ですがカチューシャ、安心してください」ニコ

 ノンナ「どんな状況下であろうと、勝つのはこのわたし、"ブリザードのノンナ"ですから」ゴォォォ…


王「恐ろし気なオーラを放っておりますプラウダノンナ! えぇー、ここで運営からの場内説明が入ります」

愛里寿「これ読むの? えっと、"只今のプレーですが、判断に困るものは試合の進行に問題が無い限りセーフとします"」


 カチューシャ「なっ!? アリーシャ、あなた黒森峰の味方をするのっ!?」ジワッ


愛里寿「ち、違うよカチューシャちゃん!」アセッ


 カチューシャ「ちゃん付けするなぁ!」ウガーッ!


王「戦車道連盟をはじめとする面々のモンロー主義に助けられました黒森峰逸見! フードファイト続行です!」


 エリカ「はむっ! はむっ! はむむっ!!」

 ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」


王「さぁここで逸見がリードする展開となりました! 神聖ローマ帝国復活ッ! 大ゲルマン帝国の腹の虫の音が聞こえるかーっ!」

王「対聖グロ戦でのダメージを全く感じさせない逸見の電撃戦! 消化液のマンシュタインバックブロウ! 兵站線がみるみるうちに伸びていきます!」


 カチューシャ「西部戦線は何やってるのよ!」

 ニーナ「もうサンダースも聖グロも敗退したべさ」

 カチューシャ「これだから敗北主義者は!」


愛里寿「食べるスピード、催眠術対策、そして無尽蔵の胃袋……完璧な布陣」

王「北方は一路レニングラード、中央はモスクワ守勢、南方はキエフ・コノトプラインで包囲殲滅! プラウダ、総退却を強いられている!」

愛里寿「でもどうして? サンドイッチはどこへ……」


王「しかしやはりここはプラウダノンナ! ピロシキの輸送量はエクラノプラン、カスピ海の怪物並み! セヴァストポリが陥落しようと、じわじわその差を詰めていきます!」


 ノンナ「エリカさん。あなたはピロシキというものをやはりわかっていない」ホフッ!

 エリカ「な、なんですか? 丸かじりじゃなく、手でちぎって食べろとでも?」ハムッ!

 ノンナ「日本で作られる大抵のピロシキは揚げパンですが、比較的暖かいモスクワのような地域では焼いたパンなのです」ホフッ

 エリカ(モスクワって暖かいって認識なのね……)ハムッ

 ノンナ「当然プラウダでは本場モスクワに倣った焼きパンのピロシキ。極寒のシベリア平原のように、油を摂取して脂肪を蓄える必要はありませんから」ホフッ

 エリカ「だからなんです? これ、揚げパンですよね?」ハムッ

 ノンナ「そう。この試合のための特注なのです。なぜだと思います?」ホフッ

 エリカ「……?」ハムッ

 ノンナ「脂肪を蓄え、寒さに備えるためですよ……」ビュォォォォ…

 エリカ「―――ッ!? さ、さむっ!? え、なに!?」プルプル


王「こ、これはぁ! 知波単戦で見せた"冬将軍"ッ!! まさか、あれはただの偶然ではなかったというのかっ!?」ガタガタ

愛里寿「これは、何か仕掛けがあるのかも……?」ブルブル


 エリカ「うっ、寒いっ! 手が、かじかんで……!」プルプル

 まほ「エリカッ! クソ、今防寒装備を持ってくる!」クルッ

 クラーラ「おっと。セコンドの選手への干渉は掛け声のみですよ、西住まほ様」ニコ

 まほ「……畜生ッ!!」ダンッ!

 カチューシャ「ノンナ! どうしてだかわからないけど気温が下がった今がチャンスよ! 奴ら、寒さ対策をしてないわ!」キャッキャッ

 ノンナ「寒さという苦痛の中で食べる……そう、これでこそピロシキ。これこそがピロシキの食べ方の真実」

 ノンナ「ピロシキさえ与えれば、人間はひれ伏すのです。なぜなら、ピロシキより明白なものはないのですから」ニコ

 エリカ「あ、貴女……おかしいわよ……!」プルプル

 ノンナ「カチューシャへの愛があれば、わたしは無尽蔵に食べることができます」

 ノンナ「あなたにもウラル山脈のように高い理想とバイカル湖のように深い思慮を持つカチューシャの素晴らしさを教えてあげましょう」ニタァ


王「ここは鹿島ではありません! 茨城ではありません! スターリングラード! スターリングラード! 冬の嵐が吹き荒れるゥ!」

<タイチョー! コレキテクダサイ! イイエコッチヲ! ソレワタシノヨ!

愛里寿「みんなありがとう。これであったかい」


 カチューシャ「ノンナ! 黒森峰が1個食べる間に10個食べなさい!」

 ノンナ「はい、偉大なる同志カチューシャ!」ハフッ! ハフッ!


王「あっと言う間に形勢が逆転しました! 春の目覚めは遠のいてしまった! ツァーリ・ボンバは落とされた! もはや勝負あったか!?」

愛里寿「ううん。今のノンナさんは防御をなげうっての攻撃全振り。全周ショットトラップ」

愛里寿「もしここで逸見さんが反攻に転じたら、打つ手がない」



<観客席 大洗サイド>

典子「根性! ここで根性だ逸見ーッ!」

ねこにゃー「でもこれ、もう勝ちようがないぞな」

ナカジマ「勝負において重要なのは勘だよ。こうすれば勝てるというゆるぎない直感」

ナカジマ「そして、勘を研ぎ澄ませるために必要なものは孤独だ」

園「孤独?」

ホシノ「F1レーサーだってそうだよ。0.1秒に命をかけてアクセルを踏み込む勝負の世界」

ホシノ「だけど、そんなレーサーも守る者ができれば命が惜しくなりアクセルが踏めなくなる。ジャン・アレジがいい例だ」

左衛門佐「あーゴクミの。差し詰めフランスの伊達政宗か」

ホシノ「2人の間には子どももでき、何不自由ない生活を始めたが……さっぱり勝てなくなった」

ホシノ「それに比べて、レース中に事故で死んだアイルトン・セナはどうだ?」

忍「音速の貴公子ですね!」

ホシノ「セナには恋人は居たが、結婚せず家族を持たなかった。彼が事故死する前に恋人に言った言葉はこうだ」

   『心配しなくていい、僕はとっても強いんだ』

おりょう「漢ぜよ……」

ホシノ「プラウダの副隊長は、自分が無理できないことを知ってしまっているんだ。なぜなら、そんなことをすればカチューシャが悲しむから」

エルヴィン「だが、黒森峰は違う。逸見エリカは、その自己犠牲が西住まほを悲しませるなどとつゆも思っていないだろうな」

カエサル「むしろ逆……結果を示すことでしか、その忠誠を表現できないというのであれば」

ホシノ「勝負に勝つためアクセルを踏むことしか知らない黒森峰の副隊長は、強い」


 エリカ「私は……負けられない……」プルプル

 まほ「エ、エリカ……」

 エリカ「JS-2なんかに負けるわけには、いかない……ッ!」プルプル

 カチューシャ「今更何をしたって無駄よ! バグラチオン作戦は成功したの! 銃の代わりにパンツァーファウストでも支給して待ってなさい!」

 エリカ「フ……フフ。最高の戦車以外に必要なのは、経験と用心深さだけよ……」

 ノンナ「地下壕に籠り過ぎて状況が把握できていないのでしょうか」

 エリカ「こんな状況、想定済みってことよ……! 頭を冷ましてくれて感謝するわ……!」ゴゴゴ

 ノンナ「―――ッ!?」ゾワッ

 エリカ「さぁ目覚めなさい、私のティーガー……"食事の時間"よ……!!」コォォォ

 カチューシャ「ひっ!?」ビクッ

 まほ「立った……?」


王「おおっ!? 逸見、席から立ち上がった! これは第1試合でも見せた"自律神経系"でしょうか!?」

愛里寿「でもなんで立ったんだろう?」

王「車高を高くしたその姿はビゾン自走砲のような威圧感です! 一体なにを―――」


 エリカ「ガブッ!!! ガブブッ!!!」


 ノンナ「!!」

 まほ「!!」

 カチューシャ「!!」


王「あ、あ、あ、ありえな~~~いッ!!! 手当たり次第にピロシキを口の中へと詰め込んでいく~~~ッ!!!」


 エリカ「ングッ!!! ングググッ!!!」


王「まだ入る!! まだ入る!! これが宇宙の胃袋ハウニヴ!! ゼンガー計画は完成していたァ!」


 クラーラ「アツアツのピロシキを……いえ、今はもう十分に冷まされて……でもっ!!」

 ノンナ「―――息を止めている!?」

 まほ「そうか! 呼吸を止めることで食事時間のロスを最大限に減らしている!」


王「なんとぉ!! し、しかし、呼吸せず食事など可能なのでしょうか!?」

愛里寿「まるでワニのパニッツァ孔」

王「ワ、ワニ……パニ……なんですか?」

愛里寿「ワニの心臓は陸上では哺乳類と同じような循環だけど、潜水中はパニッツァ孔というバイパスを使うことで肺循環をある程度省略する」

王「たしかに水中で肺を使う必要はないですからね」

愛里寿「これによって体内の血液に残された酸素を効率よく使い切ることができるようになる。中には1時間近く息を止めることのできるワニも居るという」

王「それを人間の体で実現していると!?」

愛里寿「ヒトの胎児は羊水の中で肺呼吸ができないから肺循環はしていない」

王「究極の幼児退行!! 生命の起源まで遡っていくぞ逸見エリカァ!!」


愛里寿「いや、それだけじゃない。あれはおそらく……気道にピロシキを詰め込んでる」

王「気道に!? そんなことが!?」

愛里寿「普通気道に物が詰まれば3~6分で酸素濃度が低下し危険な状態になるはずだけど、それをもろともしない肉体であれば理論上は可能」

愛里寿「しかも立ち上がることで少しでも多く気道に詰め込もうとしている……まさに水中のワニの立ち姿」

王「戦うクロコダイル・レディ、逸見エリカ! スコルツェニーより危険な女! 人類最強の爬虫類ィーッ!!」


 カチューシャ「何よそれ……何よそれ! もう、ただの化け物じゃない!」プルプル

 ノンナ「……我が手と我が胃袋に、戦う力を!」ハフッ! ハフッ!


王「実はわたくし、個人的に逸見選手とメル友なのですが、彼女の黒森峰隊長へのラブには凄まじいものがありまして」

愛里寿「まほさんの期待に応えたいという強い想いが彼女をモンスターにしてしまったのかも」


王「もはやナルヴァの戦いなんてものじゃない! ティーガーⅡのようなオーバーヒートをせずに食べ続ければこのまま勝負は決まってしまうが!?」


 カチューシャ「そんなぁ!? ダメよ、だめぇっ!!」ウルウル

 まほ「……っ」


<ノンナ! ノンナ! ノンナ! ノンナ! ノンナ!

王「ここでノンナコールだ! 渇ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のように、ノンナに対する悲しげな、プラウダ校生徒の声援が飛んでいる!」


 ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」

 エリカ「んぐっ! んぐっ! んぐぐっ!!」


王「意地と気合の雪崩が衝突するッ! 残り時間3秒!! 2、1ッ!!!」


ビーーーーーーーーーーーッ!


審判「勝者―――」



   黒 森 峰 女 学 園 ッ !!


王「勝者、黒森峰副隊長、逸見エリカーッ!! フードファイトの国家社会主義革命ーッ!!」


 エリカ「―――私の胃袋は、宇宙よッ!!」グッ

 ノンナ「私は……カモメ……」バタッ

<ワーワー! ドクソコウワ! スウジクショウリ! トウホウヘノショウドウ! 

王「逸見、かすれ声での勝利宣言! グスタフ級の巨大なかすれ声! AMX40のように膨れたボディから発せられるのは勝者にのみ許された栄光! 黒森峰、決勝進出決定ッ!!」


 カチューシャ「わ、私が、出るわ……ノンナの、代打よ、私が……」プルプル

 アリーナ「か、カチューシャ様!? 落ち着いてけろ!?」

 カチューシャ「だって銃は2人で1丁でしょ!? 前進する兵士が倒れたのなら、後方の兵士が代わりに銃をとるの!」プルプル


愛里寿「さすがにそれはルール違反……誰か、カチューシャちゃんを正気に戻してあげて」


 クラーラ「カチューシャ様……。一緒に救護テントへ行きましょう」

 カチューシャ「ピ……ピロ……ッ」


 カチューシャ「ピロシ、キ……ィ……ぁ……っ……」ポロポロ


王「いやぁ蓋を開けてみればやはりとんでもない展開となってしまいましたAグループ準決勝黒森峰対プラウダ! 島田さん、どうでしたか」

愛里寿「うん……うん、やっぱり。そう」

王「島田さん?」

愛里寿「えっとね、調べてもらってわかったんだけど……会場のあらゆるところに冷気発生装置が仕掛けられてた」

王「ななっ!? 確かに"直接妨害"とは言い難いですがこれは……」

愛里寿「即失格、とはいかないけど、セーフにはならないと思う」

王「このような場合は審議入りの後なんらかのペナルティを課される形になる、とルールブックにあります」

愛里寿「2回も使ったら偶然性を疑われて当然。だから、あの時のノンナさんはそれを覚悟で戦ってた」

王「それほどまでに逸見選手に負けられなかったわけですね。カチューシャ隊長の居る目の前で、ピロシキ勝負で……」

愛里寿「死力を尽くしていたはずのノンナさんを破った逸見さんは、想定以上だった」

王「本当に凄まじい戦いでした! それでは逸見選手にお話を……って、逸見選手? ピッチにもベンチにも居ませんが……?」キョロキョロ

愛里寿「とりあえずCM」


―CM―


 L O V E  T A N K 


I will not make it overseas in time!


 WORLD → → JAPAN


    3   2   1  


SENSYA-DO World Congress

          Coming soon…


―CM裏―
<女子トイレ>


エリカ「う゛ぅっ!! おぇ、お゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛っ!!!」

ビチャビチャ!

エリカ「ごふっ……はぁ、はぁ……」

まほ「……そうやって、食べたものを全て吐いていたのか。聖グロとの戦いの後も」

エリカ「……吐いてはいけない、という規則もありません」

まほ「なあ、エリカ。やはり次の試合、私に出場させてもらえないか? 選手の変更は直前でも可能だという事だから」

エリカ「いえ、隊長に無理はさせられません。初期登録通り、私が」

まほ「だが、それではエリカの身体が……」

エリカ「問題ありません、隊長。私が必ず勝ちます」

エリカ「来年度以降、黒森峰が絶対王者に返り咲くために」グッ

まほ「エリカ……」


エリカ(あとでクラーラから隊長の写真もらおう……)


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

エリカさん、どうしてそんなに強いの……?

次の試合はアンツィオ対大洗。今回は会長が出場します。

食材はパスタだけど、なにこのパスタ!? これパスタなの!?

次回! フードファイト・ウォー。『マウンテンパスタ』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


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フードファイト・ウォー! 第6話 『マウンテンパスタ』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


王「全国の戦車道ファンの皆さん、お待たせ致しましたァ! Bグループ準決勝、アンツィオ高校対大洗女子学園! これを見なけりゃ戦車道ファンじゃない!」

王「実況はわたくし、奥茨城の気伝獣こと王大河。解説は変幻自在のくノ一戦法、島田愛里寿さんでお送りいたします」

愛里寿「いたします」

王「フードファイトにかける女たちが、この1戦に人生の変わり目を予感しています。負けられない戦いが、ここにある!」

王「さて、この場をお借りして広報さんから何やら発表があるようですが!」

桃「はい。現在戦車道フードファイト、視聴率は軒並み想定以上。ネット配信に関しては海外からのアクセスも集中し祭り状態となっているとのこと」

王「おお! 大成功じゃないですかぁ!」

柚子「これを記念して、大会主催から視聴者プレゼントをご用意致しました! ぜひぜひ振るってご応募ください!」

桃「応募方法は番組の最後に。豪華賞品が10名様に当たります」つ[国内限定]

愛里寿「もしかして干し芋?」

桃「…………」

柚子「…………」

王「カメラ止めて! ストップストップ!」


王「えー、はい! 気を取り直してまいりましょう! アンツィオ高校からは、出場選手はペパロニ選手に代わりまして、"食卓は私の遊園地"、ドゥーチェ・アンチョビ!」

<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!


 アンチョビ「うおっし! 気合い入れていくぞ!」

 カルパッチョ「はい、ドゥーチェ!」

 アンチョビ「って、ペパロニのやつはどうした?」

 カルパッチョ「それが……ペパロニさんはお腹いっぱいになったみたいで、お昼寝してます」

 アンチョビ「……そうか。まあ、アイツ頑張ったからな。次は私が頑張る番だぁーっ!」


<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!

王「会場はドゥーチェコールに揺れております! セコンドにはカルパッチョさんとペパロニさん(予定)がつきます」

愛里寿「楽しみ」


王「続きまして大洗女子からは五十鈴華選手に代わり生徒会会長、"干し芋食べて50年"、角谷杏選手の出場です!」

愛里寿「セコンドはあんこうチームの皆さん」


 沙織「華は控室で休憩中だけどね」

 みほ「よ、よろしくお願いします!」ペコリ

 杏「西住ちゃんたち、よろしくね」


王「さぁこの試合も因縁の対決! アンツィオ高校にとってリベンジマッチとなるのでありましょうか!」

愛里寿「これがホントのアンツィオ戦、というところを見せてほしい」

王「芝の匂いがしてきます。そこに広がるのは、私たちの戦車の歴史、20世紀を締めくくる戦場です」

王「アンツィオはここで終るのではありません。戦車道フードファイトBグループ準決勝、アンツィオ対大洗。勝つために戦います!」


 杏「やぁやぁチョビ子。お互いがんばろうねー」

 アンチョビ「チョビ子言うな。しっかしまぁ、舐められたもんだな」

 杏「んー? なにがさ」

 アンチョビ「例の隠し玉、五十鈴華を出さないってことは、決勝戦に温存ってことだろ?」

 杏「まぁね。思ったより黒森峰がやるみたいだし」

 優花里「ちょ、会長殿! あんまり手の内を晒しては……」

 アンチョビ「それはつまり、お前でもこの私に勝てるってことか?」

 杏「私も料理にはちょっと覚えがあるんでね」

 杏「……そっちこそ、私のこと舐めてるんじゃないの?」

 アンチョビ「はあぁ?」


王「フィールドでは既に舌戦が始まっておりますが、お二方ちょっと待ってください! 料理の紹介をさせてくださーい!」


 杏「おっとそうだった。ごめんね、よろしく~」

 アンチョビ「すまんすまん! 紹介頼んだぞ!」


愛里寿「Aグループと違って進行しやすい」

王「本当にそうですね(笑」


王「さてさて! 今試合、気になる食材はぁ~っ! こちらッ! ドンッ!」



   \ 甘 口 パ ス タ (提供:喫茶マウンテン)/



愛里寿「電光掲示板に大きく出たね。でも今までこんな演出あった?」

王「今回はスポンサー様によるレシピ提供なので大々的になりました!」


 杏「パスタか~。アンツィオのお家芸、こりゃ私が出たのは失敗かもね」

 アンチョビ「マ、マウンテンの、甘口パスタ……だと……!?」プルプル

 麻子「あのマウンテンってのは何だ」

 アンチョビ「知らないのか!? パスタはパスタでも、マウンテンのパスタってのはなぁ……!」

 カルパッチョ「名古屋の奇食。"喫茶マウンテン"で出される甘口スパのことですね」

 カルパッチョ「その料理は挑戦的で激情的なカラヴァッジョ、あるいは新技法で人情的なダラピッコラのような芸術性があります」

 沙織「奇食? 甘口?」

参考画像
http://i.imgur.com/k5J4pgv.jpg
http://i.imgur.com/NQa2kCB.jpg
http://i.imgur.com/VDEGwYb.jpg


王「そのとーり! Bグループ準決勝は"登山"対決となります!」

愛里寿「行こう、行こう、火の山へ~♪」

<コンナカクゲンヲシッテル? ソコニヤマガアルカラ ジョージマロリーデスネ

王「何故人は山に登るのか。その問いに答えてはならない。とにかく登りに行け、とにかく登りに行け! フードファイトの山岳戦がここに始まるッ!」


 左衛門佐「三増峠の戦いか?」

 おりょう「いやいや。稲葉山、白河口の戦いぜよ」

 カエサル&エルヴィン「「モンテ・カッシーノ=アンツィオの戦いだろ」」

愛里寿&歴女「「「それだ!」」」

 カエサル「おお!? オクシュアルテスもそう思うか!」


愛里寿「モンテ・カッシーノ……ヴォイテク!」ニコ


 杏「名古屋ってことはチョビ子の出身地じゃん。ますます私らには不利だ」

 アンチョビ「いやいやいや! そうじゃない! むしろ、私だからこそあの恐怖を知っている!」

 みほ「きょ、恐怖?」

 アンチョビ「"遭難"、よくて"途中下山"……小さい頃、何度"登頂"を目指して失敗したことか……」プルプル

 沙織「そんなに?」キョトン

 アンチョビ「甘いものは嫌いじゃない。嫌いじゃないが、あれだけは……」


王「安心してください! なんと今回喫茶マウンテン様には特別に高校戦車道仕様の甘口スパゲティをご用意していただきました!」


 アンチョビ「せ、戦車道仕様!?」


王「詳細は試合進行とともに説明いたします! 常に状況が変化する様はまるで戦車道ですね!」

愛里寿「お楽しみに」


 審判「それでは、両者、礼!」

 アンチョビ「い、頂きます……うぅ、不安だ……」ペコリ

 杏「頂きますっと」ペコリ

 審判「用意っ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


王「さぁー最初の1品目は聖グロリアーナ女学院とスコットランドハイランドをイメージして作られた、"お紅茶スコーンスパ"だぁっ!!」


 アンチョビ「ブフォ!! スパゲティにパッサパサのスコーンなんか入れるんじゃないッ!!」

 沙織「うわぁ、食べにくそう」

 カルパッチョ「サランラップをした上でにおいを嗅がされているような味気ない料理、って感じですね……」

 杏「麺は見事に紅茶色……うん、味も紅茶の味がする」モキュモキュ


王「なお、これらの料理は試合終了後、観客の皆さまもお求めいただけます」

愛里寿「今大会限定商品」ンフー

<ドウスル? キネンニタベトク? ウーン…


 杏「ん、おかわり!」


王「おおっと! 一抜けしたのはまさかの大洗角谷っ! パスタの国の王女様、今日はご機嫌斜めか!?」


 アンチョビ「はぁ!? なんでそんなに早いんだ!?」

 杏「まあ、いつも乾いたもの食べてるしね」ニッ

 麻子「関係あるのかそれ」


王「さあ角谷の目の前に運ばれてきた2品目! 黒森峰女学園とブロッケン山のブロッケン現象をイメージして作られた"バームクーヘンスパ"だぁー!」


 アンチョビ「殺す気かぁーっ!!」

 みほ「お水もしっかり飲んでください!」

 杏「おっ、これ麺にビールが練り込んである?」

 アンチョビ「マジでか……」プルプル


愛里寿「黒森峰の学園艦で生産されているノンアルコールビールを使用とのこと」

王「どうやら美食のグルメマスターには少々刺激が強すぎるようです」


 アンチョビ「私の口の中は砂漠地帯になってしまったぞ……」

 杏「これがホントの砂漠パスタってか」ニシシ

 カルパッチョ「ドゥーチェ! そろそろ本気出さないとマズいですよ!」

<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!

 アンチョビ「ええい、こうなったら第2次エル・アラメインだっ! うがーっ!」モグモグッ!


王「鉄のフォルゴレ! 無敵フォルゴレ! 角谷を抜き返した! イタリア軍最強伝説ここにありィーッ!」


 アンチョビ「うおおおっ!! 3品目寄越せぇっ!!」ハァハァ


王「ここにきて獅子奮迅の追い上げを見せたアンチョビ! 3品目はアンツィオ高校とマッターホルンをイメージして作られた"パスタスパ"だぁーっ!」


 アンチョビ「……は?」


愛里寿「スパゲティの上にペンネ、ラザニア、マカロニなど、色んな形のパスタが乗ってる。たべっこどうぶつみたい」

王「その上からミルクジェラートが乗っているので、甘口スパの定義は守っています!」


 アンチョビ「いやいやいや! 全体の味を考えろよ全体の味を!」

 杏「そばめしとか、たこ焼きご飯のたぐいでしょ?」

 麻子「イタリア版ライス定食だな」

 アンチョビ「ほぼ小麦粉の塊だぞこれ!?」


 アンチョビ「よ、4品目ぇ……」ゼェゼェ


王「そろそろツッコミ疲れが溜まってきたドゥーチェアンチョビ! 待望の4品目は、継続高校とハルティ山をイメージして作られた―――」


 アンチョビ(嫌な予感しかしなーーいっ!!)


王「―――"サルミアッキスパ"だぁーーっ!!」


 アンチョビ「アホかぁーーーっ!!!!」

 沙織「うわ、スゴイ臭い」

 杏「くっさー」ニヤニヤ

 アンチョビ「塩化アンモニウムの塊だぞ!? 本当に食うのか!? ハルティ山要素どこだよ!?」ウルッ


愛里寿「ガンバッテ(鼻声)」

王「場内に独特のフレーバーが漂います(鼻声)」


 アンチョビ「なんだよこれぇ……フードファイトというか、食欲減退競争じゃないかぁ……」ウップ


王「などと言いながらも現在アンツィオがリード! やはり4合目付近で差が歴然としてきました! アンチョビの胃袋はヴェスヴィオ山の火砕流の如く全てを呑み込んでいく!」


 カエサル「ちなみにあの有名なポンペーイィーを呑み込んだウェスウィウスの山に開通した登山列車のCMソングこそがフニクリ・フニクラだ! これは世界最初のCMソングで、うーむ、どこから蘊蓄を垂らすべきか……」

 カルパッチョ「たかちゃん、ちょっとあっちでプリニウスの話でもしない?」

 カエサル「おお! 火山に死んだ男、不滅の名誉の男ではないか! 奴は軍人でありながら博物学者で……」

 おりょう「早くその鈴木を連れて行くぜよ」


王「次の5品目は、知波単高校と富士山をイメージして作られた"あんこスパ"です!」

愛里寿「円錐のあんこの上に生クリームが乗ってる」


 アンチョビ「お……おお? これは意外とまともなものが出てきたんじゃないか!?」


王「おっと? アンチョビ選手的にあんこスパはアリですか?」


 アンチョビ「アリもアリ、大アリだ! 嘘だと思うなら一度食ってみろ!」

 沙織「そうなの? 私も後で食べたい!」


愛里寿「でも、マウンテンの甘口スパゲティであんこ乗せは普通な気がする」

王「はい! なので今回は特別に"乾パンと氷砂糖"が入っております!」


 アンチョビ「だぁーかぁーらぁーっ!!!」バンバンッ!

 杏「あまあま♪」モキュモキュ


 アンチョビ「歯が折れる……硬ったぁ……」ジンジン

 桂里奈「すごい! 地底戦車マグマライザーみたい!」


王「丈夫そうなアゴですねぇ~。きっと小さな頃からカタクチイワシをボリボリ食べたらこんな風になるのでしょう」

愛里寿「何言ってるの?」

王「6品目はプラウダ高校とエルブルス山をイメージして作られた、"シベリアスパ"です!」

愛里寿「有り体に言うと、ようかんカステラスパゲッティ」


 アンチョビ「その3食品を全部別々に食べられたらどれだけ幸せだろうな!」クワッ

 エルヴィン「なるほど。ブラウ作戦中にもかかわらずエルブルス山に登頂したドイツ軍山岳部隊をヒトラーが怒ったという、関係ないモノをくっつけてはいけない戒めが込められた一品なのだな」

 優花里「それは無いと思いますぅ」


王「7品目はサンダース大付属とダイアモンドヘッドをイメージして作られた、"ドーナツアイスクリームスパ"です!」

愛里寿「おいしそう! 生クリームとチョコにバニラに、ミント、シナモン、クッキー、レーズン、ストロベリー!」キラキラ


 優花里「確かに小さい子の目はダイアモンドのようにキラキラ輝くこと間違いなしですが……」

 沙織「すごい色……」

 麻子「目に悪い」

 アンチョビ「もぐもぐ……うぅ、もう口が甘々だし、それに脂が重い……」オエッ

 杏「あれ? チョビ子、まだそれ食べてるの?」モキュモキュ

 アンチョビ「さすがの私でも舌と胃袋が拒絶反応をだな……って、ええっ!?」


王「な、なんと!? ここで大洗角谷が抜いた! ドゥーチェを抜いた! これはいったいどういうことでしょう島田さん!?」

愛里寿「カキ氷の時も言ったけど、甘味大食いは満腹感との戦い。シェフの舌を持つアンチョビさんよりも、女子高生の舌を持つ角谷さんの方が"別腹"を多く持っていた」

王「食に対するプロ意識が裏目に出てしまったアンチョビ! パスタ対決で敗北してしまうのか!?」


 アンチョビ「い、いや、ダメだ! この私がパスタ対決で負けるなんて、それだけはダメだ!」

 アンチョビ「パスタにかける想いで、この私が負けるわけにはいかないんだーッ!」モグモグッ!


王「さぁ8品目は我らが大洗女子と筑波山をイメージして作られた、"干し芋スパ"です!」

愛里寿「芋アイスを中心にして、紅はるかの干し芋が中央に山状に盛り付けされてる」


 アンチョビ「ほ、干し芋!?」

 杏「え? なにこれご褒美?」


辻「ちょっと待ちなさい! いくらなんでも偏りすぎじゃないですか!?」

王「またあなたですか……で、何がご不満なんです?」

辻「パスタ勝負と言いながら、圧倒的に大洗が有利なのでは!?」

王「いや、作ったのは喫茶マウンテンのマスターですし……」

愛里寿「こちらが行なったのは、パスタ勝負が決まった後にお店を探して依頼しただけ。むしろパスタ勝負と決めたのはそちらでは? だって」

辻「せ、先生……。くっ、仕方ない……」

王「西住流宗家の一喝、効果はばつぐんのようです!」


 アンチョビ「……ひとつ聞かせてもらっていいか?」


王「はい、なんでしょう?」


 アンチョビ「8校目が出たってことは、これで最後ってことなんだよな?」


王「そうなります! 今後は今までに出た甘口スパの中から自由に選んでいただく形になります」


 アンチョビ「そういうことは試合が始まる前に言えよ……まあ、それはいいんだが」

 アンチョビ「この干し芋パスタ、普通に美味い」


王「なんとっ!!」


 アンチョビ「今まで私の力が全然発揮されなかったのは単に味がヤバかったり食べにくかったり甘すぎたりしたからだ」

 アンチョビ「だがこれは、甘さも控えめだし、何より美味い」

 アンチョビ「芋が歯につくこともなく、スパゲティが邪魔することもなく」

 アンチョビ「なんていうか、素朴だ。田舎の味、と言ったら誤解されるが、旅先で偶然出会って安心するタイプの味」

 アンチョビ「派手すぎず、あか抜けないやさしさ。そんな美味さだ」


――――――

ミーンミンミンミーン …

「おねーちゃーん! あっちに畑があるー! お芋畑ー!」キャッキャッ

「もう、そんなに走ったら危ないぞ」

「へーきへーき! あぷっ!」ベチャッ

「だから言ったろう? ほら、これで畑の泥を拭きなさい」

「いいの? このハンカチ、お姉ちゃんがお母さんからもらって大事にしてた……」

「ハンカチは洗えばいい。それよりも大事なものが、私にはある」

「お姉ちゃん……」

「お芋さん達に感謝しないとな。妹をケガから守ってくれてありがとう、って」


ミーンミンミンミーン …

――――――


愛里寿「あれ、なんでかな……パスタなのに懐かしい。日本人の心のふるさとの味」モグモグ

王「茨城鹿島のサッカースタジアムの空の向こうに、里山の青い空が近づいてきているような気がします……」モグモグ

 
 沙織「って放送席でも食べてるんだ」

 カエサル「共和政ローマの哲学者キケロの言は間違っていたようだ。汝は食うために生きるべし、生くるために食うべからず!」

 杏「なぁーチョビ子ぉ。私が前に作ってやった干し芋パスタと、そのパスタと、どっちが美味い?」

 アンチョビ「んーそうだな。あれはあれで美味かったが」

 アンチョビ「―――すぐに飽きが来た」ニヤリ

 杏「言うねぇ……」ニヤリ


 アンチョビ「はむっ! んぐんぐ! ごくん! おかわり!」

 杏「んっ! ちゅるちゅる! ぷはぁ! おかわり!」


王「ここに来て両者干し芋スパのおかわりのみを選択! 試合は干し芋パスタ対決の様相を呈してまいりました!」

愛里寿「今までの戦いはなんだったの」

王「ここまでくると純粋なフードファイトの地力が試されます! パスタ王国の王位継承者アンチョビが有利か!? はたまた干し芋の皇太子妃角谷が有利か!?」

愛里寿「角谷さんも全然負けてない。リードを譲る気なんて、無い」

王「勝ち残るのはアンツィオか、それとも大洗か。勝利の女神は時に厳しい選択を迫ります! パスタのサンベルナール峠を越えるのはどちらだァーッ!!」


 アンチョビ「はむっ! くそぉっ! ごくん! どうして私が負けてるんだぁ!」

 杏「んっ! もぐもぐ! 奇襲成功だねっ!」


 左衛門佐「桶狭間か」

 おりょう「池田屋事件ぜよ」

 エルヴィン「パールハーバーだな」

 カエサル「いや、ハンニバルのアルプス越えだろ」

 歴女「「「それだ!」」」

 カエサル「進もう! 胃袋の神の待つところへ! アーレア・ヤクタ・エスト!」


王「アンチョビ抜けない! 抜けない! すごいフードファイトになりました! 泣いても笑ってもここがラスト3分! この戦いの果てには一体何が待っているんでしょうか!」


 ホシノ「完全にテール・トゥー・ノーズ。会長がアンチョビさんを押さえてる!」

 ツチヤ「ドリフトが出来ればなあ!」


王「安斎千代美と、角谷杏の差はこれだけ! たったこれだけ! 信じられないような凄い戦いになりました!」

愛里寿「これは妨害しない限り抜けない」

王「さあここはモナコモンテカルロ! 絶対に抜けない!」


 アンチョビ「もぐっ! やるねぇ、意外に! はむっ!」

 杏「意外なんかじゃっ! んくっ! ないよっ!」

 アンチョビ「はぁ!? そんな小さい体のどこに入ってるってのさ!」モグッ!

 杏「私がどうして四六時中干し芋を食べてると思う?」ングッ!

 アンチョビ「……?」

 杏「そう、燃費が悪いんだよねぇ。38(t)とは真逆でさぁ」

 杏「私はモノを食べた瞬間、吸収しちゃうんだ」

 杏「食べても食べてもエネルギーとして燃焼してしまう。そのせいで背も胸も小さいまま」

 杏「だから腹持ちのいい干し芋をいつも食べてるってわけ」

 アンチョビ「なにっ!? 好きだから食べてたんじゃなかったのか!?」

 杏「そりゃまあ干し芋は好きだけどさ、あれがないと死んじゃうんだよ」

 杏「私の趣味が料理なのも、自分のお腹を満たすために自然に身についたもの……必要から生まれたものだったんだ」

 カエサル「他の人々は食わんがために生き、己れ自身は生きんがために食う、と」

 杏「私にとって、食事は呼吸と一緒なんだよ」ニヤリ

 アンチョビ「そんな……ことが……!」


 杏「うちの次期生徒会長が誰だか知ってる?」

 アンチョビ「はぁ? 知るわけないだろ」

 杏「五十鈴華だよ。チョビ子もさっき見たでしょ、あの食べっぷりを」

 アンチョビ「だからどうした!」

 杏「どうしてこの私が、生徒会長の座をあの子に譲ることになったと思う?」

 アンチョビ「そ、それは、選挙とかじゃないのか? 3年なんだし引退だろ?」

 杏「……勝ったんだよ。あの子。この私にさ」

 杏「"大洗の無限食欲"と呼ばれたこの私に、フードファイトで勝ったんだ!」ドンッ!

 アンチョビ「なんだってぇーーっ!? 待て待て! ってことは、お前はあいつよりも弱いってことじゃないか!」

 杏「チョビ子。五十鈴ちゃんに勝てると思った?」

 アンチョビ「い、いや、全く思わなかった。この試合、出てこないと聞いて心底安心したくらいだ」

 杏「そう。本来なら優勝候補とぶつかるこの試合、ホットドッグのダメージを考えても五十鈴ちゃんが出るべきだ」

 杏「なのに出てない……。もうこれ以上説明しなくてもわかるだろ?」ニヤリ

 アンチョビ「―――ッ!?!?」

 杏「もひとつオマケにいいこと教えてあげる」


 杏「私は1週間、干し芋を食べていないッ!!!」バァーン!


 アンチョビ「なにぃ~~~~ッ!?!?」



王「全くもって意味がわかりません! フードファイターの極限状態は、言語を超越した意志疎通となっていた!」

愛里寿「アンチョビさん、ノリと勢いに付き合ってるだけのような」


 優花里「本当は選挙が無効になったので会長自ら五十鈴殿を指名しましたよー」ヒソヒソ

 カルパッチョ「そうなんですねぇ」


 杏「だからチョビ子は勝てないよ。"チョビっとチョビ子"にはね!」モグモグ!

 アンチョビ「―――ッ!!」カッチーン

 カルパッチョ「ああっ!? 言ってはいけないあだ名を……」プルプル

 アンチョビ「……おい審判。担架をひとつ用意しておいてくれ」

 審判「は、はい?」

 杏「へ?」

 アンチョビ「私は"チョビっとチョビ子"じゃない。ドゥーチェ・アンチョビだ」

 アンチョビ「お前、わざと言っただろ」

 杏「……からかってんの?」

 アンチョビ「いや、違う。ふざけてたってのは私にはわかるんだが、"私のドゥーチェ"は怒ってる。謝れば許すだろうけどな……」

 杏「"私のドゥーチェ"? ドゥーチェはチョビ子じゃん。面白い冗談だねぇ」アハハ

 アンチョビ「笑うのはやめた方がいい。"私の中のドゥーチェの魂"は、ドゥーチェを笑うやつが嫌いだっ! 自分がバカにされてると思うからなァッ!」ガバッ! シュババッ!  シュババッ!

 杏「―――いいィッ!?」


王「ひ、ひぇーッ! 電光石火のフォークさばき! セルジオ・レオーネが訴訟で勝ってしまうほどの早抜きです! パスタのファニングショットだぁー!」

<Oh! It'sスパゲッティセイブゲキ! セカイノクロサワデアリマス!? 


王「アンチョビ猛追! しかしながら無情にも時は過ぎていた! アンツィオの勝利に黄色信号が灯りました!」


 アンチョビ「うおおおおおっ!!!!」シュババッ! シュババッ!

 杏「ぃよっしゃぁぁぁっ!」モグモグ


<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!

王「残りあと10秒! アンツィオ高校あと10秒! 間に合うか! アンツィオはアンチョビ、間に合うか! 後ろではカルパッチョが声を掛けている!」



ビーーーーーーーーーーーッ!


審判「勝者―――」



   大 洗 女 子 学 園 ッ !!


王「今、マウンテンの神、ここに降臨! その名は、角谷杏ゥッ!」

<ワーワー! クカンシン! カイチョォォォォォォォ! モモチャンハナミズデテルヨ


 杏「やっぱ強いな、チョビ子は……っ」バタンッ

 アンチョビ「どの口が言うんだ……ったく」

 審判「あ、あの担架は……?」

 アンチョビ「増えたぞ。2つだっ」バタンッ


 カエサル「テルモピュライを守ったスパルタ兵のような勇敢な戦いぶりだったよ」

 カルパッチョ「たかちゃん……。ううん、カエサル。また負けちゃった」

 カエサル「いずれまた戦うこともあるだろう。その時を楽しみにしている!」バサッ! 


 おりょう「なんであいつが戦ったみたいになってるぜよ?」

 左衛門佐「さあ?」


 救護班「それではお2人とも運びますね」ヨイショ

 ペパロニ「アンチョビ姐さぁぁぁぁんっっっ!!!!」ポロポロ

 アンチョビ「ああ、今頃来たのか。次期ドゥーチェ」

 ペパロニ「なんでっ!? こんな、ことに……ッ!」ポロポロ

 杏「チョビ子の敗因はただひとつ。それはパスタに対する想いでも、チームを想う気持ちの差でもない……」

 杏「干し芋の食べ方、だよ」

 ペパロニ「た、食べ方……ッスか?」グスッ

 アンチョビ「ああ、正直言って干し芋は食べにくい。食べ慣れてるかどうかが勝敗を分けたな」ニッ

 杏「そゆことっ」ニッ


王「私たちは忘れないでしょう。アンツィオ高校という非常に強いチームがあったことを。カシマサッカースタジアム、空にはまだ、アンツィオ高校の太陽<オー・ソレ・ミオ>が輝いています」

愛里寿「廃校にはならないよ?」


王「さて、島田さん。優勝候補アンツィオの敗因はなんでしょうか。やはり干し芋ですか?」

愛里寿「……角谷さんのハッタリに呑み込まれたこと」

王「ハ、ハッタリですか?」

愛里寿「角谷さんが言ったことは全部嘘だと思う。干し芋の食べ方も含めて」

王「え、ええっ!?」

愛里寿「本当だったとしても、アンチョビさんの精神を動揺させ、ノリと勢いを完全に奪った角谷さんの作戦勝ち」

愛里寿「もしアンツィオが大洗の作戦を見抜いていたら戦局は大きく変わっていたかも」

王「そこのところどうなんですか西住みほさん!」


 みほ「え、ええっと……でも、身体の負担をできるだけ減らす、というのは重要なことだと思います」


王「奥義、欺瞞作戦返し! 騙された方が悪いのだ! いやぁ、蓋を開けてみればとんでもない試合でした!」

愛里寿「視聴者プレゼント用の干し芋は全て使い切ってしまいました、だって」

王「んー残念! それでは、CMの前に現在の救護テントの様子、どうぞ!」


<救護テント>


救護班「困ります! まだ安静にしていてください!」

杏「いや、もう大丈夫だって。この後色々仕事もあるし」

柚子「私が会長のことをそばで見ておきますので……でも、本当に大丈夫なんですか?」

桃「会長が大丈夫だとおっしゃっているのだから大丈夫なのだろう」

杏「そそ。消化が良いのは本当だしね。それより、アンツィオに挨拶に行かないと」

柚子「そうですね。行きましょうか」

桃「このカーテンの向こうです」スッ

杏「あー、カルパッチョちゃん? ドゥーチェ・アンチョビに謝りたいんだけど」

カルパッチョ「大洗の会長さん。ドゥーチェは怒ってるようなことを言ってましたけど、ノリでああ言っていただけですのでお気になさらなくとも」

杏「んー、まあそうだろうなーとは思ってたけどね。それでもちょっと思うところがあってさ」

カルパッチョ「でも、あれはそういう勝負だったわけですし……」

杏「……最後の干し芋、持ってきたんだけど、食べる?」

カルパッチョ「ささ、どうぞどうぞ! ドゥーチェがお待ちです!」ニコニコ

杏「ども~」


杏「よっ、チョビ子」

アンチョビ「チョビ子って呼ぶな! って、よく来たな! 我が友よ!」ダキッ ホッペスリスリ

杏「なんだ、思いのほか元気そうじゃん。ベッドに居るって聞いたからもうぐっすり眠ってんのかと思ったよ」

アンチョビ「あのくらいでぶっ倒れてたらドゥーチェは務まらないからな! わかったか、ペパロニ!」

ペパロニ「勉強になるッス!」

杏「……それで、チョビ子。心の中のドゥーチェは、燃え尽きたか?」ニッ

アンチョビ「……いいや。燃え尽きるどころか燃え盛ってるさ。私の中じゃなく、ペパロニの中でな」ニッ

ペパロニ「へ? なんのことッスか?」

アンチョビ「台無しだぁっ! お前が次期ドゥーチェとして頑張っていくって話をしてるんだよっ!」

ペパロニ「そぉーだったんすかぁー!」

杏「こりゃ将来有望だねぇ」ニヤニヤ


―CM―


・・・協賛各社紹介・・・

ロイヤルサンドイッチ


アドリアーノ水産


昭和製氷


スターストライプフーズ


お惣菜のロマノフ


喫茶マウンテン


阿蘇ミート


        (※実在の企業・団体とは関係ありません)


―CM裏―
<黒森峰控室>


エリカ「…………」

まほ「いよいよ決勝だな。緊張しているのか?」

エリカ「いえ……」

コンコン ガチャ

辻「失礼します。調子はどうですか、逸見さん」

まほ「貴方は、たしか……」

エリカ「上々です、お陰様で」チッ

辻「大洗の妨害はすべて失敗に終わってしまったが……まあ、例の薬さえあれば余裕でしょう」

まほ「ま、待て。何の話を? 薬……?」

辻「何、ちょっとした援助ですよ。私の援助は青師団のようなものと思ってください。基本的に中立を保ちます」

辻「では、正々堂々と頑張ってください」

ガチャ バタン

まほ「……エリカ。話してくれるな?」

エリカ「……申し訳ありませんでした、隊長」


―回想・数日前―
<文科省 とある一室>


辻「こちらが自律神経系を操れる薬。そしてこちらは胃酸の分泌量が3倍になる薬です」スッ

エリカ「……何ですか、これ」

辻「とある筋から手に入れた新薬ですよ。何、副作用などは気にしなくてもいい。貴女はまだ若いのですから」ククッ

エリカ「……それで、話とは何ですか」

辻「もし来年度、第64回高校戦車道大会で黒森峰が大洗に負けるようなことがあれば」

辻「その時は、黒森峰には廃校とまでは行きませんが、しかし、なんらかの然るべき処置はしなければならない」

エリカ「なんですって……!?」ガタッ

辻「それはそうでしょう。考えても見てください」

辻「62回大会では10連覇の王座を逃し、63回大会では急造チームに敗退。64回大会では天才西住まほは卒業済みだ」

辻「正直言って今後の黒森峰に期待すべきところは何もない、というのが世間の評価です」

エリカ「……っ」


辻「その凋落ぶりは火を見るよりも明らか。結果を出せない古い体制を維持させるほど、世の中は優しくないのです」

辻「ですが、私は違う」

エリカ「……?」

辻「天才の背中を常に見てきた貴女なら、きっと黒森峰を再建できると信じている」

辻「大洗を下し、王者の栄光を再びその手につかむのだと」

エリカ(ああ、なるほど。この人、大洗を潰したいのね。その意味では敵は同じってこと……)

エリカ「……へえ? それで?」

辻「今次のフードファイト、私が貴女に援助をしましょう。優勝すれば、黒森峰第三帝国の夢に確実に一歩近づくことができる」

エリカ「CMに出ただけで、新入生と義捐金がどれだけ集まるか怪しいところですが」

辻「黒森峰が優勝したら戦車道CMの出演だけでなく、それにかこつけてその他の宣伝にも使わせてもらいましょう」

辻「大洗が優勝したら……大洗が全面的に応援されるでしょうね。話題性はたっぷりですから。その時黒森峰は確実に噛ませ犬扱いだ」

エリカ「……っ!」

辻「逸見さん。貴女には、フードファイトでも大洗に勝つ以外の選択肢が無いんですよ」

辻「それだけじゃない。ここで勝てば、貴女には "大洗に勝った"という強い自己肯定感が芽生えることになる」

辻「例え戦車道ではなくフードファイトだとしても、今の貴女を支える精神的支柱は1本でも多く欲しいはず」

辻「西住まほ隊長を失った貴女には、喉から手が出るほどに、ね……」

エリカ「…………」

辻「さぁ。長年の黒森峰の名声を地に堕とした西住まほに代わり、貴女が全てを取り戻すのです。"逸見隊長"」ニヤ


辻「具体的には食材と対決カードを操作しましょう。黒森峰に有利なように、大洗に不利なように」

エリカ「できるんですか?」

辻「それと、こちらの薬を」スッ

エリカ(……なるほど。こんなヤバいものまで用意してくるなんて、相当本気みたいね)

辻「このことはくれぐれも内密に。もちろん、黒森峰の誰にも言ってはいけませんよ、傍受やスパイが得意な学園に情報が漏れてしまうかもわかりませんからね」

エリカ「……私からもいくつか条件があります」

辻「ほう?」

エリカ「まず、第1戦目は黒森峰対聖グロリアーナにしてください。食材は……そう、サンドイッチで」

辻「なに? それでは貴女が不利になってしまう」

エリカ「聖グロごときも倒せないなら、元々私には優勝する能力なんてないってことです」

エリカ「そのくらい、自力で勝ってみせる」


辻「まるでヴィルヘルム2世のような矜持だが、まあいいでしょう」

辻「もしもの時はこの薬を使ってくだされば」


―回想終了―


エリカ(聖グロに自力で勝てる自信はあった。あった、けれど……)

エリカ(私は、奴から貰った最初の薬を飲んでしまった)

エリカ(私は間違いなく、私が、勝てると信じていた)

エリカ(なのに、それ以上に、絶対に勝ちたかった)

エリカ(だって、私は"逸見隊長"になる必要があるから……)

エリカ("黒森峰の隊長"にならなければいけないから……)

エリカ(勝利を信じることと、絶対に勝つことは……)

エリカ(こんなにも、違うのね……)グッ


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

ついに迎えた決勝戦。ま、またエリカさんなんですか!?

華さんにも陰謀の影が! 裏で糸を引いてたのはやっぱりあの人だった!

次回! フードファイト・ウォー。『みんな大好きハンバーグ!』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


___________________________
フードファイト・ウォー! 第7話 『みんな大好きハンバーグ!』
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<廊下>

まほ「はぁっ……はぁっ……!」タッタッタッ

ガチャッ


<大洗控室>

まほ「みほっ!!」

華「はいっ?」モグモグ

まほ「はぁ、はぁ……五十鈴華1人か。みほはまだ戻ってないか?」

華「まほさん。ええ、皆さん間もなくピッチからお戻りになられると思いますが」モグモグ

ワイワイ ガヤガヤ

カエサル「いやー燃えたな。ローマ大火の如く燃えた」ツヤツヤ

桂里奈「次は決勝! 楽しみ!」

園「でも大洗だけ試合間隔が短いのは不公平だわ!」

ねこにゃー「きっと何かの陰謀だにゃ!」

みほ「あはは……って、お姉ちゃん?」

まほ「みほ……」


優花里「むっ。敵情視察ですか?」

まほ「いや、違う。そう思われても仕方ないと思うが、信じて欲しい」

みほ「うん。疑ってなんてないよ。それで?」

まほ「……エリカの現況について、報告に来た」

左衛門佐「敵に塩を送りに来たのか」

おりょう「獅子身中の虫か?」

カエサル「和平工作をしに来たわけではなさそうだが」

エルヴィン「欺騙による敵軍指導部の撹乱により心理的優位を保持しようということだな」

沙織「カバさんチームは話をややこしくしないで!」

みほ「エリカさんがどうかしたの?」

まほ「ああ。このままでは……」


まほ「エリカが、危ない……!」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

まほ「―――というわけなんだ」

桃「またアイツか! 何度も何度も大洗の邪魔をしてくれおって!」

園「しかも今度は逸見さんまで巻き込むなんて! 天が許してもこの風紀委員長園みどり子が許さないわ!」

梓「これ、公にしちゃえば試合放棄できますよね?」

杏「いや、話はそんなに簡単じゃない」

優花里「会長!」

まほ「ああ。もしそんなことをすれば黒森峰の……逸見エリカの評判は地に落ちる。良くて戦車道出場停止処分だ」

柚子「既に共謀しているわけですからね」

典子「でもそれは半ば脅されてたわけで!」

まほ「脅しがあったとしてもエリカは薬を飲んだ上、食材や対戦カードの操作を依頼した」

麻子「プラウダの冷気発生装置による妨害とはわけが違う。あれはただの"反則"だが、こっちは"不正"。大会を根本的に否定することになる」

みほ「エリカさん……」


まほ「みほ……すまない。結局エリカの暴走を止めることはおろか、その不安定さに気付くことすらできなかった」

まほ「私は道をふさいだ岩石、小さな障害物にすぎず、流れを食い止めることはできなかった」

まほ「もう、どうしたらいいか……」クッ

華「……だったら、私が勝てばいいだけです」

まほ「なに……?」

麻子「あの役人も逸見さんも大洗打倒のために色々こそこそやった。だが、それでも大洗が勝ってしまえば」

沙織「あそっか! こそこその部分はどうでも良くなっちゃう!」

優花里「いやいや待ってください! 西住まほ殿の話によれば逸見殿は食べたものを全て吐いていたとのこと! 一方五十鈴殿にはホットドッグのハンデがあります!」

ねこにゃー「五十鈴さんでも勝てるかどうか……」

カエサル「まるで古代ローマ貴族のような食べ方だが、それはそれで体力を消費しているはず」

エルヴィン「いや、どうだろうな。その胃液3倍薬を使われたら、やはりこちらに勝ち目は無いのかも知れない」

優花里「それに仮に勝ったとして、こそこその部分は隠し通せるとしても、その後の黒森峰や逸見殿はどうなってしまうのですか!?」

みほ「……そこは、エリカさんと話し合ってみる。お姉ちゃんと一緒に」

まほ「みほ……」


   「ククク……取らぬアンコウの皮算用、ですか」


優花里「あ、貴方は!」


杏「よくもまあいけしゃあしゃあと顔を出しますね……逆に感心しますよ」

辻「西住まほさんが逸見さんから聞いたという妄想話の証拠は何もないでしょう?」

まほ「っ……!」

柚子「フードファイトに薬物検査は無いですからね……」

園「それで、大洗に何の用ですか」

辻「そろそろスタンバイをお願いしますという事務連絡ともう1つ……五十鈴華さんにお菓子の感想を聞きたくてね」

沙織「お菓子の?」

みほ「感想?」

華「―――っ!?」ドキッ

まほ「……そう言えば先ほど彼女は1人でなにやらお菓子を食べていたようだったが」

優花里「って、何ですかこのお菓子の空き袋の量!? これ全部食べちゃったんですかぁ!?」

沙織「そんな大げさな……って、ええ!? こんなに!?」ビクッ

麻子「試合前だぞ!? 何考えてるんだ!?」

華「つ、つい……」


桃「これも貴方の差し金ですか……っ、やることがこすいぞ!」

辻「何のことでしょう。そもそも彼女には"食べない"という選択肢があった。いや、常人であればフードファイト中に間食など食べるわけが無い」

みほ「どうして食べちゃったの!?」

華「……手紙が同封されていたんです。"応援してます、頑張ってください"と」

華「お気持ちのこもったものなら頂かないわけにはいきません。それで、少しだけ、と思ったら、これが存外おいしくて……」

沙織「ブレーキが利かなくなっちゃった、と」ハァ

優花里「そこが唯一の五十鈴殿の弱点でしたね……」

麻子「西住さんが居ないタイミングを狙っての犯行。計画性がある分タチが悪い」

まほ「急ごしらえでよくそこまで悪知恵が働くものだ」

華「あのお手紙は、嘘、だったのですね……」

辻「とにかく。今五十鈴華の胃袋にはホットドッグだけじゃない。大量のお菓子も詰まっている」

辻「本当に大洗が勝てるんですかねぇ?」ニタァ

華「……わたくしから1つ、貴方に言いたいことがあります」

辻「ほう? なんでしょう」


華「―――お菓子、大変おいしゅうございました」ペコリ


辻「……っ!? つ、強がりを!」

華「いいえ、これは本心です。強がりでもなんでもありません」

華「美味しいものを食すことは、わたくしにとってなんら苦ではないのです」ニコ

辻「……ふんっ。なに、すぐに結果が出る。楽しみに待っていますよ」クク

ガチャ バタン

桂里奈「やなかんじィー!」イーッ

華「皆さん、お見苦しいところを見せてしまい、大変申し訳ありません」

沙織「何言ってんの! あの人、華の善意を利用したんだよ!?」

麻子「沙織、その話はあとだ。さすがに時間がない」

優花里「行きましょう。私たちの戦場へ」

みほ「……行こう!」


【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


王「戦車道、そしてフードファイトを愛してやまないファンの皆さま、こんにちは。王大河です」

王「戦車道フードファイト決勝、最終試合の模様をお届けしてまいります! いやーもう、ここまでの激戦ぶりで既にお腹いっぱいですが! で・す・が!」

王「視聴者の皆さま、メインディッシュはこれからです! よだれを拭いてお待ちください!」

王「解説は、おいらボコだぜ! でおなじみ。島田愛里寿さんですっ!」

愛里寿「そ、そんなにおなじみかな?」

王「そんな島田さんから、決勝へ向けての檄をお願いします!」

愛里寿「うん。すぅ、はぁ……」


愛里寿「―――フードファイト。それは、魂の扉」


ただひたすらに食べる。それがフードファイト


戦略があろうと、個人の技能があろうと、結局は食うか食われるか


シンプルにして、それでいて真理……そこにあるのは、純粋な勝負の世界


わずかでも曇れば食われると同時に、隙さえあれば射抜くことができる


ここは、神が与え給うた極上のコロッセオ


顕現せしは、人類が創り出した料理文明の深淵


その勝負の味は、何を食べても得ることができない至福の頂き


さあ……今こそ、精神の極限まで食らい尽す時!


<ワーワー! イイゾー! ヤレヤレー! コロシアエー!

王「さぁ大きな歓声です! スタジアムが一斉に揺れています! 場内今日一番の盛り上がり!」

愛里寿「すごい」

王「決勝は奇しくも黒森峰vs大洗という今年の全国大会と同じカードとなりました! またしても大洗が勝利に酔いしれるのか、それとも黒森峰が溜飲を下げるのか!」

王「それでは選手紹介です! 黒森峰女学園からはまさかの3連続登板! 胃袋の宇宙開発競争、いつ~~~み~~~ッ、エ~~~~リカ~~~ッ!!!」


 エリカ「…………」

 まほ「…………」


王「大洗女子学園からは史上最強のフードファイター! お腹がいっつも空薬莢、いす~~~ず~~~ッ、は~~~~な~~~ッ!!!」


 華「よろしくお願いします」ニコ

 みほ「よろしくお願いします」ペコリ


王「決勝戦、セコンドは1名のみ! それぞれ西住まほ、みほ姉妹がついております!」

愛里寿「決勝の審判は蝶野1等陸尉」

<グッジョブベリーナイス!

王「さあ! 2人が優勝を懸けてチャレンジする料理はッ! 決勝にふさわしい王者の料理は~~~ッ!!」



王「ハンバァァァァァァァァァァァァァァァァグ!!!!!!!」



ハンバァァァァァァァァァァァァァグ


ハンバァァァァグ   (※エコー)


<観客席>

辻「おおっありがたい! 私はハンバーグが大好物なのだ! たっぷりソースのハンバーグは男の子の味だ!」

おりょう「しらじらしいぜよ……」


<放送席>

王「五十鈴選手はよく学食でハンバーグ定食を食べているとの情報ですが、島田さんはハンバーグはお好きですか?」

愛里寿「好き。目玉焼き乗せたのとか。この間、メグミたちにハンバーグ作ってもらったの、とってもおいしかった!」ンフー

<タイチョー! アイシテマス! ソノエガオデオナカイッパイデス!

王「みんな大好きハンバーグ! 最終試合に限りまして、"総カロリー"による勝負となります!」

愛里寿「総カロリー?」

王「それではご説明いたしましょう!」


王「本試合、メイン料理はハンバーグですが、付け合わせのポテトやコーン、ソースやバター、そしてライスも含めてのカロリーの累計で計算されます!」

王「例えば! 150gのレギュラーハンバーグ・中ライスの場合783kcalですが、ライス大盛では+168kcal、ライス小盛では-134kcalとなります」

愛里寿「なるほど」

王「制限時間内により多くのカロリーを平らげることができた方が勝利! そこに皿の枚数やハンバーグのグラム数は関係ありません!」

愛里寿「お米ばっかり食べてもいいの?」

王「残念ながらライスのみの注文はできません。しかし、1gあたりのカロリーはおよそ炭水化物が4kcal、脂質が9kcalなので、ハンバーグを中心に食べた方が若干有利と思われます!」


愛里寿「ってことは、お肉の多いメニューを選べば効率が良いのかな」

王「今回特別に用意された料理の種類も豊富です!」

王「チーズハンバーグ、和風ハンバーグを始めとして、目玉焼きハンバーグ、ビーフハンバーグ、ハンバーグカレー、ロコモコ丼、オムハンライスなどなど、対戦者の舌を飽きさせない仕様となっております!」

愛里寿「各料理が大テーブルにずらっと並んでる! すごい、夢みたいな会場!」キラキラ

王「精鋭スタッフが選手の注文した料理を全速力で運んできます! なおスプーン、フォーク、ナイフやお箸のたぐいは大小各種取り放題、交換し放題となっております」

王「制限時間いっぱい、このハンバーグの桃源郷を満喫し、カロリークイーンの座を手にするのは一体どちらなのでありましょうか!」


王「それでは各選手に意気込みを伺ってみましょう! 黒森峰、逸見エリカ選手。今の心境は!」


 エリカ「……現在、我が黒森峰には先の大戦の敗北機運が蔓延しています」

 エリカ「私の目標は、この空気感から脱却し、黒森峰を頂点とするニューオーダーの樹立」

 エリカ「そのための第1歩となるこの1戦……大洗を倒し、必ずや勝利を掴んでみせます!」


王「逸見エリカこそはこの世に比類なき勇者であり、彼女が掴むのはフードファイトの戦闘旗であります!」

王「続きまして、大洗女子、五十鈴華選手。いかがでしょう!」


 華「聞こえます。彼らの声が」

 華「お皿の上で、私を味わって食べてくださいと訴えているのです」

 華「ならば、わたくしのすべきことはただ1つ」

 華「頂きますと、感謝を捧げることだけです」ニコ


王「五十鈴華が五十鈴華であることを証明すれば大洗は勝ちます! まもなく試合開始ッ!」


 華「逸見さん。わたくし、勝ちに行かせてもらいます」

 エリカ「……? 当然でしょ? そのためにここまで来たんじゃない」

 華「言い方を変えましょう。大洗は必ず黒森峰を負かします」

 エリカ「へえ。らしくないわね、挑発なんて」

 華「挑発ではありません。事実を述べているだけです」

 エリカ「……何がしたいの」

 華「わたくしはまた黒森峰と、逸見さんと、戦車に乗って戦いたいのです」

 華「笑顔のままで」ニコ

 エリカ「……だったら」

 エリカ「だったら譲りなさいよ……っ」

 エリカ「黒森峰が笑って戦うためには、大洗に勝たれるとダメなのよ……!」プルプル

 華(逸見さん……。わたくしが必ず、貴女をその呪縛から解き放ってみせます!)


 蝶野「両者、礼!」

 エリカ「……いただきます」ペコリ

 華「いただきます」ペコリ

 蝶野「2人とも頑張ってね。……用意ッ!」


\パパパパパウアードドンッ!/


王「さぁ戦いの火ぶたが切って落とされたァ! スタートダッシュを決めるのはぁ~っ!?」


 エリカ「悪いけど、最初から全開で行かせてもらうわッ! ハァァァァ……!」コォォォォ!


王「で、出たーッ! 逸見選手の"自律神経系"! 厚みのある肉に喰らいついていく! ヴェルダンのミートグラインダーエリカッ!」

愛里寿「逸見さんの食べ方は縦方向に特化している。薄いものより厚みのあるもの、丼ものなどを優先的に消化していく戦法」

王「やはり最大グラムの300g肉厚ハンバーグを狙っていく逸見! 効率重視で高カロリー摂取を企んでいる!」


 華「付け合わせのポテトもおいしいです。良いジャガイモですね」ホクホク


王「しかーしッ! ここは絶対君主五十鈴華! スタート開始から既に殲滅戦理論を展開! 歴史を逆行していくーッ!」

愛里寿「たぶん、法則性無く食べてる。ライスも食べてるから、気の向くまま?」

王「あぁ、なんということでしょう。なんの罪もない料理たちが腹ペコ連合に爆撃されていきます! ハンバーグのゴモラ作戦だぁー!」


 エリカ「はむっ! はむむっ! はっ! むっ!」モグモグッ!

 華「お速いですね……!」スッ スッ

 エリカ「マジックショーやってる貴女に言われたくないわ!」モグモグッ!

 華「聖グロ戦の時より"3倍"速いのでは……?」スッ スッ

 エリカ(まさか知ってる? 隊長が話したの……?)モグモグッ!

 まほ「…………」

 エリカ(いや、構わない。勝ちさえすればどうとでもなる!)モグモグッ!


王「島田さん! 大洗サイドには何か戦略のようなものはあるのでしょうか?」

愛里寿「ペースの調整をする必要がないから……もしかしたら作戦なんて無いのかも」

王「そこんところどうなんですか西住タイチョー!」


 みほ「わ、私のことだよね。えと、華さんには自分のペースでってお願いしてあります」


王「マイペェス! 華道で培われた究極の集中力が食事の時間を支配するっ!」

王「智謀をかなぐり捨て、己が身ひとつで肉の機甲師団に突っ込んでいく五十鈴華! 彼女はご存知の通り人間ではありません! 人間の皮を被ったパンツァーシュレックです!」


 華「粗挽きで肉の触感が強く、噛むとじゅわ~っと肉汁が……」ホフホフ

 エリカ(くっ、やはり化け物か五十鈴華!)モグモグ

 エリカ(この悔しさが、惨めさが、悲しさが私を強くする。そして強大な敵こそが、真に私を偉大にしてくれる……)モグモグ

 エリカ(だったら……私だって!!)モグモグ!


 エリカ「バレてるみたいだから教えてあげるわ! 今の私の胃袋には3倍の消化液が出てる! 消化力は100キロトンカロリーよ!」ドンッ!

 華「っ!」

 エリカ「食器は使い放題って言うから、使わせてもらうわ!」パシッ!

 みほ「ナイフとフォークを2本ずつ!? 計4本!?」

 まほ「それを交互に!?」


王「あ~~っと、ここで二天一流の改造版! 逸見、知波単西の技を盗みましたっ!」


 華「に、二刀流……」

 エリカ「100+100で200キロトンカロリーッ!」シャキーン!


王「それだけじゃないッ! これは、ソ連の超人の……!」


 エリカ「さらに今の私は自律神経系を刺激し、通常の2倍の消化量!」

 エリカ「そして3倍の回転デスロールを加えれば……!!」グルングルン!

 エリカ「五十鈴華ッ! 貴女をうわまわる1200万キロトンカロリーよぉーッ!」シュバババッ!


 優花里「威力増大のゲルリッヒ理論!? 完成していたんですか……」

 エルヴィン「いや、むしろフラー理論の1919計画に基づいた多砲塔戦車NbFzだろう」

 歴女&優花里「「「「それだ!」」」」


 エリカ「うおおおおおっ!!!!」シュバババッ!


王「両腕と回転を用い、全身でハンバーグを壊滅させていきます逸見! 彼女が通った後には肉汁1滴残らない! 1人民族強制移動!」

愛里寿「えっ!? 摂取ペース、五十鈴さんを追い越した!?」


 みほ「っ!?」

 まほ「っ!?」


王「ここで逸見が五十鈴のペースを上回ったーッ! 総力戦! 総力戦です! トート機関の24時間営業!」

王「我々は生物進化論の最先端研究に立ち会っているのでありましょうか! このままでは五十鈴の合計摂取カロリー量を追い越すのも時間の問題だーッ!」


 エリカ「今のうちにベルゲパンターでも用意しておくといいわッ!!」シュババッ!

 華「は、速い! このままでは……っ」アセッ

 みほ「華さん!」

 華「はい、みほさん!」


 みほ「―――そのまま、ペースを維持してください!」


 華「ッ!?」

 まほ「ッ!?」

 エリカ「―――ッ!?」


王「ぬゎーッ! 血迷ったか軍神西住ィッ! 砲身を突き付けられ、それでもなお平然としていられる人間がこの世のどこに居るのでありましょうか!」

愛里寿「ど、どういうこと……?」


 みほ「華さん、お願い!」

 華「……了解です!」スッ スッ

 エリカ「明らかな失策ね! 軍神などと呼ばれながら、学校で習ったのはナイフとフォークの持ち方だけだったのかしら!?」シュババッ!

 エリカ(いや。みほのことだから何かあるのかも……ッ、何を心配してるのよ私!ああ、鬱陶しい!)シュババッ!

 エリカ(いつも私の邪魔ばかりして……考え付く限りの手段で妨害してぇ……ッ!)シュババッ!

 エリカ「この戦争はァッ!! 私の勝ちよォッ!!」シュバババッ!!


王「こぉこぉでぇ逸見が五十鈴を超えたぁーッ!! 生身で戦車を撃破しやがりました! このまま大洗はフレンスブルグと成り果ててしまうのかぁーッ!?」



 みほ(私のすべきことは、エリカさんを救うこと。黒森峰が辛い時でも、乗り越えられるように支えてあげること)


 みほ(だって、私がそうやってみんなに支えてもらったから……!)


 みほ(お願い、私を信じて……! 私の戦車道は、みんなの戦車道だから!)


―次回予告―

♪エンター エンター ミッショーン ~

エリカさん、ごめんね。私、貴女の想いを大切にできなかった……

ううん、でも、だからこそ……!

次回! フードファイト・ウォー最終回。『それぞれの決意を胸に』

みんなで一緒に、パンツァー・フォー!

♪ダカライッショ カモン!


_________________________
フードファイト・ウォー! 最終回 『それぞれの決意を胸に』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―


王「こぉこぉでぇ逸見が五十鈴を超えたぁーッ!! 生身で戦車を撃破しやがりました! このまま大洗はフレンスブルクと成り果ててしまうのかぁーッ!?」


 エリカ「私は隊長の夢を叶えるッ! 隊長だって、自分の夢を私に託したはずよッ!」シュババッ!



<観客席>

エルヴィン「世界首都クロモリミネアでも作るつもりか?」

おりょう「言ってる場合じゃないぜよ!」

沙織「ちょっと!? これマズいんじゃない!?」

ホシノ「どうしたコ・ドライバ―! どうしてそこでアクセルを踏ませないんだ!」

優花里「もしや例のお菓子がここにきて邪魔を!?」

典子「こ、根性が、出ない……!」

梓「まさか隊長、わざと負ける気じゃ!?」

左衛門佐「確かに、例の不正を知ってるのは私たちと西住の姉だけ。わざと負けて黙ってるのが一番手早い」

カエサル「だがそうなればあの役人が逸見の弱みを握ることになる。傀儡国家黒森峰の誕生だ」

桃「もうダメだぁ!!」ウワァン!

杏「まぁ信じてみようよ。西住ちゃんと次期会長を、さ」

ねこにゃー「あ、あの、ちょっといいかな……?」

園「どうしたの? もしかして、西住さんの真意がわかった!?」


ねこにゃー「前に、アリクイさんチームでクックファンに行ったんだ」

柚子「ああ、戦車カツのお店ですね! 大きなとんかつにコロッケが乗った」

ねこにゃー「筋トレの後にお肉を食べて、筋肉を強化しようって」

ももがー「せっかくだからフードファイトしようってことになったナリ」

ぴよたん「そしたら、一番食べるのが遅かったねこにゃーが一番多く食べたぴよ」

麻子「ほう……何故だ?」

ももがー「ちょっと最初から飛ばし過ぎたモモ。お腹が重くなっちゃって」

ぴよたん「私はお肉ばっかり食べてたからかな……」

ねこにゃー「ボクはわりと普通に食べてたにゃ。ご飯も、お野菜も」

梓「じゃ、じゃあ、ゆっくり食べた方が結果的に多く食べられるってことですか!?」

優花里「マズルブレーキでガスを逃がすことにより少しでも大口径高初速の弾を撃てる、ってことですね!」


   「みほは経験的にそれを知っていたのでしょうね」


優花里「あ、貴女は……!」


沙織「みぽりんのママ!!」

しほ「…………」

優花里「に、西住流宗家、西住しほ殿ではないですか。えっと、つまり、どういうことですか?」

しほ「逸見エリカはカロリーの最大効率で食事をしている。一方、五十鈴華はいわゆる"三角食べ"を実践している」

しほ「適度に米や野菜を胃袋に入れることで肉の消化を促しているのよ。そうしないと胃袋にはダメージが蓄積してしまう」

しほ「制限時間はあと3分。逸見エリカはあのペースで最後まで食べ続けることはできない」

大洗一同「「「ッ!!」」」

しほ「必ず限界が来る。今、彼女の胃袋は悲鳴を上げていることでしょう」

優花里「最強戦車のティーガーといえども欠陥を背負わざるを得ない構造になってしまった、ということですか……」

麻子「ああ、転輪が外れたアレか。この戦いも、楔を打ち込んで浸透突破などというのは悪手だということだな」

しほ「胃液が増えようと、代謝が増えようと、"時間当たり"の吸収力の限界値はそう簡単には引き上げられない」

桂里奈「でも逸見さん、すごい必殺技でしたよ!?」

しほ「強さにロマンなど要りません。必要なのは堅実さだけ」

優花里「ポルシェじゃなくヘンシェル、シュペーア的ということですね」

しほ「己の肉体<スペック>への過信・慢心を犠牲にせずして、真の勝利はあり得ないのです」


王「逸見エリカ独走ォォ~ッ! メッサーシュミット Me262でさえ彼女の前に出ることは許されません! 奴の胃袋はヴンダーヴァッフェンだ!」

<ヴーヴァナドソンザイシナイ!


 エリカ(勝った……っ)

 エリカ(勝ったッ!!! 勝った、勝った、勝った、勝った―――)シュバッ!

 エリカ(勝ったぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!)シュババッ!

 エリカ「アハ、アハハ! やった、やった! ホントに勝ちを譲ってくれるなんて! 優しいのねぇ五十鈴華ァ!」

 華「まだ試合は終わっていませんよ、エリカさん。美味しいお料理は最後まで味合わないと」

 エリカ「おい……しい……?」

 華「わたくし、ハンバーグは大好きですのでいくらでも食べられます」ニコ

 エリカ「ハッ、たわ言を! だったらどうして貴女は負けてるのかしら!?」シュババッ!

 エリカ「もはやこの差は覆せない! これで黒森峰は――――」ドクン


 エリカ(―――あれ?)


 エリカ(おいしいって……)



 エリカ(なんだっけ……?)プルプル


 エリカ「うぅっ!? うぇっ、っぷ、んぐ!!」ギュッ

 まほ「エリカッ!?」

 みほ「エリカさん!?」


王「もはや優勝は――――っとぉ!? 逸見、両手で口を押さえている! ここにきて履帯破損! 食事の手が停止してしまったぁーッ!」



<観客席>

優花里「まさかホントに!?」

しほ「胃袋が脳に指令を出したようね。もう食べられない限界だ、と」

麻子「この状況では脳を胃袋が支配しているのか……」

しほ「もはや彼女は何も口にできない。何を食べても砂を噛むようなもの」



<放送席>

愛里寿「こ、こんなことが……まさか、みほさんはこれを読んでいたの?」


 みほ「そ、そんなことできないよ! エリカさん、しっかりして!」

 エリカ(くそ! くそくそくそぉっ! こんなところで、こんなところで立ち止まってる場合じゃないでしょ、逸見エリカッ!)ウルッ

 エリカ(どうしたって言うのよ私の身体!? 肉ぐらい無理にでも詰め込みなさいよ!! なんで、どうして言うことを聞かな―――)



 エリカ(――――吐き癖がついてる……)


 まほ「エリカ、大丈夫か!? 救護班! 救護班ッ!」

 エリカ(ああ、隊長……また私は、隊長のもとへ駆けつけることが叶わないのですね……)ポロポロ

 まほ「もういい! お前はよく戦った! それで十分だ!」


王「しかし大洗五十鈴! 既に開いたこの差をあと1分で埋めることができるのかぁっ!?」


 エリカ「!!!」

 エリカ「まだ、負けてない……まだ、戦える……」ユラッ

 まほ「やめろエリカ! もうやめてくれっ! 頼む……っ!」

 エリカ「隊長の……名誉の、ために……!」ギリッ


王「ぬゎーっんとぉーっ!? 逸見、フラフラになりながらもハンバーグに手を伸ばします! 残りあと40秒! これでは五十鈴も成すすべ無しかぁ!?」


 華「いいえ。あと1皿でいいはずです」モグモグ!

 エリカ「このぉ……っ!」


 エリカ「五十鈴―――」


 『わたくし、ハンバーグは大好きですのでいくらでも食べれます』


 エリカ「華―――」


 『ハンバーグは大好きですのでいくらでも』



 エリカ「貴女の―――負けよ―――!」




 『ハンバーグは大好きですので』




―――回想―――
<黒森峰女学園 食堂>


まほ「副隊長就任、おめでとう。今後ともよろしく頼む」

エリカ「……ご期待に添えるよう精いっぱい務めます」

まほ「そんなに固くならなくていい。ティーガーⅡの……いや、エリカの活躍には既に十分信頼を置いている」

エリカ「あ、ありがとうございます」テレッ

まほ「確かにみほの抜けた穴を埋める形になってしまったことは申し訳ないと思う」

まほ「だが、我々はチームだ。組織の勝利は団結と連帯で……っ」

エリカ「た、隊長?」

まほ「すまない、説教臭くなってしまった。本当はエリカの就任祝いをしようと思っていたんだ」

エリカ「ええっ!?」ドキッ

まほ「下級生からエリカの好きなものを聞いてな……作ってみた」スッ

エリカ「これは、お弁当、ですか?」ドキドキ


パカッ

エリカ「かわいいハンバーグ……」ニヘラ

まほ「ハンバーグ弁当。幸いここは黒森峰だ、栄養科を訪ねたらハンバーグの材料から調理法からすべてが揃っていた」

まほ「ま、まぁ、だからと言って上手くできるわけではないが」

エリカ「でも、どうしてです? だって、みほの就任の時は何も……」

まほ「理由は後で答える。取りあえず食べてみてくれ」

エリカ「は、はいっ! いただきますっ!」パクッ

エリカ「…………」モグモグモグ

まほ「ど、どうだ?」

エリカ「…………」モグモグ

エリカ「…………」モグ ゴクン


エリカ「美゛味゛し゛い゛っ゛」ブワッ


まほ「そうか。良かった」ホッ

エリカ「世界で一番美味しいです! 人生で一番美味しかったですッ!」ウルウル

まほ「……これが黒森峰の味だ。もし辛い時、苦しい時は、この味を思い出してほしい」

エリカ「た、隊長?」グスッ モグモグ

まほ「これからエリカは副隊長として、さまざまな困難に立ち向かわなくてはならない」

まほ「そういう時、常に原点は黒森峰にあってほしいんだ」

まほ「黒森峰のハンバーグを美味しく食べるため……そのためならどんな苦境も乗り越えられる。そういう気概を持て」

エリカ「は、はいっ!」ビシッ!

まほ「まぁ、これはアンツィオの隊長からの受け売りだが」

まほ「黒森峰の良さも思い出すことで、黒森峰から"離れないように"してほしいんだ……」

エリカ「……っ」


エリカ「約束します。私が隊長の側に居ます」

エリカ「いついかなる時でも、絶対に、隊長のお側を離れるようなことはしません」

エリカ「ハンバーグは大好きですので!」

まほ「……ふっ、力が入り過ぎているな。もう昼が終わる、早く弁当を食べてくれ」

エリカ「す、すいませんっ! 只今食べ、んぐっ! けほ! ごほ!」

まほ「大丈夫か?」トントン

エリカ「すいません……あ、あの、隊長!」

まほ「なんだ?」

エリカ「全国大会、黒森峰が優勝したら、その時は―――」



エリカ「―――またハンバーグが食べたいです」ニコ



まほ「エリカ……」



まほ「ハンバーグ定食なら学生食堂で買えるぞ?」

エリカ「…………」


―――回想終了―――




そうだった。私は―――



―――ハンバーグが大好きなんだった。






ビーーーーーーーーーーーッ!



蝶野「勝者―――」




   大 洗 女 子 学 園 ッ !!




 エリカ「――――っ」バタッ

 まほ「エリカァッ!! 救護班、早く担架を! 急いで運べッ!」


 華「ごちそうさま……でした……っ」クラッ

 みほ「華さん!? 大丈夫!?」

 華「ええ。みほさんの的確な指示のおかげで大丈夫ですよ」ニコ

 みほ「良かった……」

 華「あそこで焦っていたらどうなっていたか……それよりも、みほさん。エリカさんのところへ」

 みほ「う、うん!」タッ タッ


 華「……エリカさん。貴女の胃袋が無限の宇宙だと言うのなら」


 華「―――わたくしの胃袋は永遠の愛です」ニコ


<救護テント>


エリカ「……んぅ?」パチクリ

エリカ「ここは……そっか。運び込まれたのね、私……」

エリカ(黒森峰は負けた。大洗にまた勝てなかった―――)ウルッ

みほ「エ、エリカさん? 大丈夫ですか!? どこか痛いんですか!?」

エリカ「って、えぇっ!? ちょ、なんでみほがここにいるのよ!」ビクッ

みほ「良かった、元気そうで……エリカさんのバカ!!」

エリカ「っ!?」

みほ「どうしてこんなにボロボロになるまで戦ったんですか! どうして、そこまでしてっ!」ポロポロ

エリカ「なんで貴女が泣くのよ……」

エリカ「…………」

エリカ「……だって、約束したじゃない。忘れたの?」

みほ「ふぇ?」グスッ



   『次は負けないわよ』

   『はい!』



みほ「あ……」

エリカ「まぁ、もちろんCMに出て多少なりとも黒森峰に貢献したいとは思ってたけど」

みほ「で、でも、だからって、あんな戦い方は……」

エリカ「"犠牲なくして大きな勝利を得ることはできない"」

みほ「っ」ビクッ

エリカ「……貴女が一番よくわかってるでしょ? "西住"みほ」

みほ「で、でも、私たち大洗は―――」

エリカ「大洗の勝利は、戦車道が嫌で転校してきた西住みほという少女の想いを犠牲にして成立した。違う?」

みほ「……違い、ます。私が、選んだんです」

エリカ「結果オーライだったからなんとでも言えるのよ。もし大洗が負けて廃校になってたら、貴女の人生、終わってたわよ」

みほ「……終わって、ないです」

エリカ「強がりね」

みほ「……いいえ。私は、たとえ川の中でも、火砕流の中でも、進んでいったと思います」

みほ「……私の心が、私のものとして、生きている限り」

みほ「でも、もし、体を、心を大事にしないのなら……それが、本当の終わり、です」プルプル

エリカ「…………」


<聖グロ控室>


ダージリン「"兵士たちよ、あなたたちは機械じゃない。心に愛を持った人間だ"」

オレンジペコ「チャップリンの『独裁者』でのスピーチですね」

ダージリン「私たちは戦車乗りではあるけれど、戦車に乗られてしまってはいけないの」

オレンジペコ「えっと……?」

ダージリン「こんな言葉を知ってる? 人生は一局の将棋なり、指し直す能わず」

オレンジペコ「菊池寛ですね。人生に『待った』、やり直しは無い、という意味です」

ダージリン「戦車道もまた然り。やり直しなんてできない」

ダージリン「だけど、誰かの人生を犠牲にして勝利したら、その人の人生もやり直しはできないの」

オレンジペコ「みほさんの戦車道ですね!」パァァ

ダージリン「本当に大事なことは、悔いの残らない戦い方をするということ。これが案外難しいのよね」

オレンジペコ「ですね」

ダージリン「やっぱり騎士道精神が一番ってことで」

オレンジペコ「えぇ……。でも、これから武士道精神を見学しに行くのでは?」

ダージリン「そうだったわね。それじゃ、キングスクロスへ向かいましょうか」


<救護テント>


エリカ「わかってるわよ。それこそ大洗みたいに、揃いも揃ってド新人の急造チームでさえ優勝した」

エリカ「本当に大事なことはそういうものじゃない。貴女が身をもって教えてくれたものね」

みほ「……えっと」

エリカ「でも、私は貴女じゃない。逸見エリカは、西住みほじゃないの」

エリカ「私には、貴女みたいな生き方はできないのよ……」

まほ「負けたのはエリカのせいじゃない。背後の一突き……私の至らなさのせいだ」

エリカ「隊長……テントの外で聞いてたんですね」

まほ「勝利が全てではない。たったひとつの勝利のために手段を選ばないというのは、戦車道の理念から最も外れた行為だ」

みほ「お、お姉ちゃん?」

まほ「犠牲無くして勝利無しという西住流の教え……これは誤解を与えるので、私が師範となった暁には文言を改めようと思っている」

まほ「真に犠牲にすべきは己の怠惰や慢心であって、道義や愛情ではないんだよ」


まほ「去年の大会の後、お母様がみほを怒ったのは、他でも無い、自分の大切な愛娘が危険な行為をしたからだ」

みほ「――っ!」

まほ「ただそれだけのこと。人の親ならば当然に持つだろう感情。深い意味なんて無い」

まほ「Ⅲ号戦車の救助に向かったみほの優しさは、お母様にだって当然わかっていた。だが、その無鉄砲さがある限り、いずれ戦車道がみほの身を滅ぼしてしまうと思ったんだ」

まほ「我が身を顧みない戦車道……それは、西住流ではない」

みほ「……うん」

エリカ「……っ」

まほ「犠牲無くして勝利無し……。言い訳がましく聞こえるかもしれないが、そうだとしても、自己犠牲で得る勝利など真の勝利ではない、と今の私は信じている」

まほ「負けてもいい、といえば、これも語弊があるし、無理をするな、というのも違うんだ」

まほ「限界を超えるような努力をすることは勇ましく逞しい行為だ。だが、だがな」

まほ「自らを含め、人間を粗末に扱うようなことだけは絶対にするな」

まほ「その先に得るものは何もない。私たちの生きる道は、私たちの心の中にしか無いんだよ」


まほ「これが真の西住流だ。エリカ、納得できたか?」

エリカ「……はい」

まほ「エリカがそんなにも不安を抱えていると気付けなくてすまなかった。隊長失格だな」

エリカ「い、いえ! そんなことは―――」

まほ「確かに来年度、黒森峰に私は居ない。無論、みほも居ない」

まほ「だが、私もみほもこの世から消えるわけじゃない」

みほ「そうだよ、エリカさん。別の学校だからって関係ないよ」

エリカ「みほ……」

まほ「いつでも連絡しろ。大切な後輩が悩んでいるとあらば、私は飛んで駆けつける」

エリカ「……いえ。隊長のお手を煩わせるなど、私には……」

まほ「……そうだったな、エリカはそういう性格だ。なら、OG訪問を定期的に開催させよう」

エリカ「え、ええっ!?」

まほ「規則にしてしまえば、エリカが気負うことはなくなるだろう?」

エリカ「そ、それは……」

みほ「ふふふっ」


まほ「上の代には私から連絡しておこう。それに、まだ時間はある。隊長の引継ぎはゆっくり時間をかけてやればいい」

まほ「これからの黒森峰のリーダーは確かにエリカだ。だが、これからの黒森峰を作るのは、エリカ1人だけじゃない」

まほ「エリカは独りじゃないんだよ。たくさんの仲間に支えられているだろう?」


   「「そうですよ"隊長"!」」


エリカ「あ、貴女たち……!」

赤星「エリカさんはいつも前に出過ぎなんです! 次からは私たちが先陣を切りますからね!」

直下(仮名)「何でも自分でやろうとしない。エリカの履帯が切れたら私たちが直すっての」フッ

エリカ「バ、バカね……独断専行は、ご法度よ……」ウルッ


みほ「……エリカさん。約束してください」

エリカ「な、何を?」

みほ「次は負けないって。その次も、その次も私に負けないって」

エリカ「……ぷっ。なにそれ、ずっと負けられないじゃない」

みほ「そうです。だから、ひとつの戦いに勝つだけじゃなく、その次も、その次も勝てるような、大局的な戦略を立てないといけません」

エリカ「……相変わらず甘いわね、みほ」

エリカ「わかったわよ、次からはこんな戦い方はしない。貴女に心配されると虫唾が走る」

みほ「エリカさん……!」ニコ

エリカ「ほら、早く大洗に戻りなさい。連れが待ってるんでしょ?」

みほ「は、はいっ!」


タッ タッ


エリカ「……優勝おめでとう、みほ」


救護班「こ、困りますッ! ちょっと!」

辻「どういうことですか!? どうして黒森峰が大洗に負けているんです!?」グイッ

まほ「……また貴方か。失礼ですが、今エリカは病床の身。安静の為にもご退室願いたいのですが」

エリカ「…………」

辻「あれだけお膳立てをしたのに、なんですかこの結果は!? 私の努力は何だったんですか!?」

辻「こんなことならホンモノの薬物でも渡しておくべきだった……!」

エリカ「本物の? それ、どういう意味です?」

辻「貴女に渡した白い粉はただの小麦粉です。たかがお遊びに危ない橋を渡るわけにはいかないですから」

エリカ「なっ……!?」

辻「しかし、プラシーボ効果だけであそこまでやるとは思っていませんでしたよ。これなら黒森峰の優勝は確実! と、思ったんですがね!」

まほ「失礼」ガシッ

辻「な、なんです!? 私は納得のいく説明を求めに―――」

まほ「帰っていただきたい」ギロッ

辻「……ふ、ふん。まあいいでしょう。来年度大洗に戦車道で勝てるよう、せいぜい頑張ってください!」クルッ スタスタ

赤星「悪は去りました!」

直下「はいはい、めでたしめでたし」


<放送席>


王「と、言う訳でェ! 戦車道フードファイトォッ! 優勝は、大洗女子学園~ッ!」パチパチ

愛里寿「これから優勝カップ授与式」

王「はい、そうなんですねー。現在ピッチには"休戦の客車2419号"が用意されており、車内でカップと優勝賞品の授与が行われます」

愛里寿「賞品は"CM出演権"って書かれたおっきなプラカード」

王「それではカメラさん、授与式の様子を、どうぞッ!」



<客車内>


蝶野「優勝おめでとう。頑張ったわね!」スッ

華「ありがとうございます」ニコ

沙織「優勝カップっていうか、これ何!?」

優花里「金メッキのシュタールヘルムですかね……なるほど、これを鍋として使えと」

麻子「鍋は戦争と言うからな」

杏「ウマいねぇ~。あんこう鍋くらいウマい」

柚子「プラカードは私たちが受け取るねー。はい、桃ちゃん」ニコ

桃「お、重いぃっ! 助けて柚子ちゃん!」


<パチパチパチパチ ワーワー!



<放送席>


王「以上! 戦車道フードファイトでしたーッ!」

愛里寿「バイバイ」


<K2形蒸気機関車>


シュッシュッシュッシュッ ポッポー


福田「隊長殿! 日の丸弁当であります! 駅弁であります!」

西「うむ! なんだかんだでまともな飯にありつけていなかったからな。栄養補給も訓練のうち!」

ダージリン「お茶もご用意しましたわ。うちのローズヒップが」

西「おお、これはかたじけない! では一杯……ブフォ!!」

細見「隊長殿!?」

玉田「貴様ら! まさか茶に毒を盛ったな!?」

西「い、いや、つい渋めの日本茶かと思って飲んだのだが、砂糖たっぷりで驚いてしまって……」フキフキ

福田「これが世に聞く"てー"というものでありますか!?」

ローズヒップ「いえ? 知波単の皆様のお口に合うよう、麦茶にお砂糖をいっぱい入れて差し上げたのですわ?」

細見「麦茶に!?」

玉田「砂糖だと!?」

ペコ「ほ、ほら。やっぱり皆さん怒ってらっしゃいますよ」ビクビク

福田「なんと贅沢なのでありましょう!」

細見「懐かしい、これぞ日本の味だ!」

玉田「よし! この喜びに歌を歌おう! 一緒に帰ろう!」

知波単一同「「「♪おお わが宿よ 楽しとも たのもしや」」」

ペコ「えぇ……」


<フィアットSpa38>


ブロロロロ…


ペパロニ「姐さん……もう食べられないッス……」グゴー

アンチョビ「次期ドゥーチェ……負けるな……いや、勝て……」スピー

カルパッチョ「ふふふ。2人ともお腹いっぱいになってよく寝てます。寄りかかられて少し運転しにくいですが」

カルパッチョ「余った食材ももらえましたし、帰ったら大宴会ですね」ニコ


<荷台>

ポロロン♪

ミカ「そうして、命は巡っていくんだね。だから私たちは、命を感じるんだ」

ミカ「そうは思わないかな、アキ。ミッコ」

ミッコ「おいしい……おかわり……」グゥ

アキ「もう……ミカってば……」スゥ

ミカ「…………」ポロロン


<C-5Mスーパーギャラクシー>


ゴォォォォォォォォォォォォォォ…


ケイ「アリサ、また太ったんじゃない?」

アリサ「Jeeeeeeeeez!!!! 隊長、それは言わない約束でしょう!?!?」ウガーッ

ナオミ「帰ったらエクササイズだね」クッチャクッチャ

アリサ「わ、わわ、わかってるわよ! それくらい織り込み済みよ!」

ケイ「そういや、ナオミがあの子のサポートをしてあげてたなんてね」

ナオミ「……私は飢えた子供にガムをあげただけですよ」

カチューシャ「ホーント、余計なことしてくれちゃって。これだからサンダースは」

ノンナ「おや? その件についてはもうお許しになられたのでは?」

ケイ「HAHA! まあ、私たちはそのくらいの方がいいんじゃない?」

アリサ「ってゆーかコクピットから出て行きなさいよ! 狭いのよ!」


クラーラ「それではプラウダの皆さん、そろそろ降下地点です」

ニーナ「ホントにやんべか!?」

アリーナ「いくら負けたからって罰ゲームでエアボーンはやり過ぎでねが!?」

カチューシャ「私を批判するなら全校集会でやりなさい! それとも、パラシュート無しで飛び降りたいのかしら?」

ノンナ「きっと積雪による安全な着地が期待できますよ」ニコ

ニーナ&アリーナ「「ひぃぃぃぃっ!!!」」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



―翌日―
<日本戦車道連盟本部 プロリーグ設立対策会議室>


児玉(理事長)「いやはや、これは壮観ですな」

蝶野「はい。高校戦車道有名校のうち、8校の代表者が揃い踏みしています」

まほ「この度は我々にこのような機会を頂き、ありがとうございます」

しほ「…………」

千代「…………」ニコ

辻「…………」グヌヌ

児玉「それで、学生の皆さん。ご用件は?」


まほ「―――はい」


まほ「我ら高校戦車道連盟は、文科省を含めたあらゆる外部組織に起因する」

ダージリン「言論の自由」

ケイ「校風の自由!」

アンチョビ「貧乏からの自由!」

杏「横暴からの自由」

まほ「を、宣言します」

児玉「ほお……」

まほ「つまり、今後文科省からの提案は、戦車道連盟さんと当事校との合議の上で検討する、ということです」

杏「今までがおかしかったんだよねぇ。廃校だって言われて、はいそうですか、なんて、奴隷じゃないんだから」

まほ「国の政策に従わないとは言っていません。ただ、事前の十分な情報公開と状況説明、並びにそれを前提とした対話が必要ではないかと」

ケイ「そういう場を設けるべきだと思わない? ネーミングは、そう! 戦車道連合!」

ミカ「勇気と銃剣だけでは戦に勝てない。講和の機会は逃してはならない」

ダージリン「密約や秘密協定、地下工作や口約束の反故等々、とぉんでもないことを平然とされてきたようですからね。そういうのは良くないと思いますわ」

西「かような考え方でこの文書に調印し、その上でこの文書を誠実かつ完全に実行することによってのみ戦車道の未来を開拓すべきであり、またそれはできることと思われます!」

児玉「いやあ、高校生の意見とは思えないほど立派だ。どうですかな、学園艦教育局長殿」

辻「っ……」


しほ「これから戦車道にはプロリーグが設立され、世界大会も誘致される」

しほ「日本の若手となる彼女たちがこのような自主独立と公平の精神を持っていることを誇りに思うべきです」

千代「娘たちの将来が楽しみですね」

辻「し、しかし、学生にそのような権限を与えるなどと言うのは……」

児玉「会議で学生に発言させるくらいの権限も与えないというのですかな?」

辻「ですが、中には何をしでかすかわからないような学園もあるわけで……」

杏「へえ? なんでも自分の思い通りにならないと気が済まないってわけですか。まるで独裁者ですねぇ」

カチューシャ「もちろんプラウダの学園艦は16個ある分校舎の分まで発言権を持つのよね?」

ケイ「それはちょっとフェアじゃないよ、カチューシャ。んーでも、拒否権はあった方がいいかもね!」

まほ「その辺は後々決めていくこととしよう。とにかく、以上が私たちからの最後通牒です」

まほ「辻さん」

辻「な、なんです?」

まほ「……今度エリカに手を出してみろ。その時は、これだけでは済まないぞ」ボソッ

辻「……っ」ゾクッ

児玉「どうしました?」

辻「ゴホン、わ、わかりました。そのような会議の場を設けられるよう、前向きに検討してみます……」

児玉「よろしく頼みましたぞ! はっはっは!」


―同日―
<大洗女子学園生徒会室>


コンコン ガチャ

みほ「失礼します。あの、ご用件ってなんでしょう?」

華「何かあったんですか?」

柚子「ちょっとお届け物が、ね」

桃「これだ、西住」ピラッ

みほ「これは……聖グロからの電報?」

優花里「あっ、ダージリン殿からですね」

沙織「えー、なになに? なんて書いてあるの?」

みほ「えっとね―――――」


本日、我々共通の敵は降伏した。最後の敵はついに屈服したのである。

大洗女子学園各位においては、今日は勝利を祝う日として喜び、明くる日よりさらに新たなる英気をもって来たるべき諸問題に果敢に挑まれたい。

しかししばらくは、自己の成し遂げためざましい業績を思い起こし、心からの安らぎをもって休養せられんことを望む。

平和は再び世界に訪れた。




戦車道はこれから新たなる光の差す方へと進む。その向かう先は必ずや人生の素晴らしきものであると確信す。

なぜならばそこでは、大洗西住みほより生まれし多くの光が輝き続けているからだ。


沙織「これは……なにかの引用かな? ゆかりんわかる?」

優花里「これは、えぇーっとぉ……冷泉殿ぉ!」

麻子「1945年8月15日、英国アトリー首相のラジオ放送だな」

みほ「へぇー」

優花里「さすが博識ですね、冷泉殿!」

麻子「いや、あの人が引用しそうなものから長さと内容をヒントに候補を絞って検索しただけだ」

華「最後の2行も何かの格言でしょうか?」

麻子「……わからん。それらしいのはないな……」

みほ「きっとダージリンさん本人の言葉じゃないかな」

優花里「それは、なんというか、貴重ですね……」

みほ「うん。でも、なんだか嬉しいなぁ」エヘヘ


華「せっかくですので、以前頂いたティーセットでお茶の準備をしますね。お茶請けは……」

桃「こっちの棚だ、次期会長。あと、茶請けくらい部下にやらせろ」

華「ふふっ。河島先輩もご一緒にいかがです?」

桃「わ、私は、会長のご帰還を待つという任務がだな……」

沙織「お菓子食べながらでもいいじゃないですかー、桃ちゃん先輩!」

桃「桃ちゃんって呼ぶな!」

麻子「紅茶が冷めてしまうぞ、桃ちゃんさん」

優花里「そうですよ、桃ちゃん先輩殿!」

桃「貴様らぁ……CM出演はやっぱり取り消しだぁっ!!」

みほ「えぇーーーっ!?」

ガチャ

杏「いや、んなわけないでしょ。話はもうちょっとだけ続くんだからここで落とすなよなぁ、かぁしまぁ」

桃「か、か、か、かいちょぉぉーっ! よくぞご無事でぇっ!」ビェェ

柚子「お疲れ様でした、会長」ニコ

杏「よぉし! 大洗女子学園、生徒会会長、角谷杏から、最後の会長令をだーすっ!」



杏「フードファイト祝勝記念パーティーやるぞーっ!!」


♪アイジャスフィマイウィー アイジャスフィマイシャー ソラニー レザラー


<大洗女子学園 演習場>


スタッフ「本番いきまーす! 5秒前、3、2……」


沙織「キャー! キャー! カメラ入ってる! 私たち映ってるよ! 全国のお茶の間にお届けだよ!」

優花里「正確には私たちの乗ったⅣ号が映っているだけですが」

沙織「あはは……尺の都合で人間は隊長だけCM出演の予定だったなんてね……私のタレント化モテモテ計画がぁ……」

優花里「クラッぺからでは中が薄暗いので顔までは見えませんからね」

麻子「仮に地上波に乗ったとしても沙織は沙織のままだから安心しろ」

沙織「うん……って、何気にひどい!?」

華「それにしても、みほさん大丈夫でしょうか。緊張してないといいのですが……」


<Ⅳ号戦車前>


スタッフ「それでは、最後に何か一言お願いします!」

みほ「ひ、ひとことですか!?」ガチガチ

監督「何でもいいよ。みほちゃんの思いのたけをカメラにぶつけちゃって!」

みほ「え、えっとぉ……」モジモジ

杏「西住ちゃん、リラックス。ほら、深呼吸」

みほ「は、はい! すぅ……はぁ……」


みほ(……大洗は全国優勝して、CMにも起用されて、知名度が上がる)

みほ(エリカさんみたいに大洗に勝ちたいっていう人がますます増えるかも知れない)

みほ(私たちはこれから、色んな戦いを挑まれるかも知れない)

みほ(だったら、私にできることは、誠心誠意戦うこと)

みほ(勝つためじゃなく。一緒に戦って、一緒に前に進むために!)


沙織「みぽりん!」

華「みほさん!」

優花里「西住殿!」

麻子「西住さん」


   『次は負けないわよ』


みほ(これが私の……ううん。私たちの戦車道!)



みほ「や、やってやるぜー!」



一同「「「えぇーっ!?」」」




―後日―
<島田家>


愛里寿「これ、最高のCM! またフードファイトやろう!」キラキラ







おわり

自分の趣味全開の駄文を読んでくれて本当にありがとうございます
このSSの主人公はエリカでした。エリカの力強さと脆さが書きたかったです
そして細かすぎて伝わらない元ネタばかりで申し訳ありませんでした
興味ないかもしれませんが時間を見て元ネタ紹介してみようと思います

>>1 ・パパパパパウアードドンッ! : ゲーム「CivilizationIV」の開戦時に鳴るSE

>>3 ・牛丼、アタマの大盛り : 愛里寿の声優竹達彩奈の吉野家CM

>>4 ・礼儀を持ちて誇りを懸けよ : ラノベ原作アニメ「ベン・トー」より狼のルール
   ・テトラーク : 英軽戦車。自動車式ハンドルで運転できる。聖グロのタンカスロン戦車
   ・TOGⅡ : 食卓に使えそうな形の英重戦車
   ・余裕のVサイン : チャーチルはなにかとピースしてる

>>7 ・アスコット : 英王室所有の競馬場
   ・エクリプス : サラブレッドの先祖みたいな競争馬。当時の世界最強
   ・Eclipse first, the rest nowhere : 競馬の歴史をちょっとかじった人が言いそうなセリフのひとつ

>>8 ・アニマルシリーズ : パンターとかマウスとかティーガーのこと
   ・カプッツォの獅子 : ヨハネス・キュンメル。Ⅳ号戦車2両でマチルダⅡを9両破壊する
   ・シキカンタルモノ : 正しくは「司令官たるもの前線で指揮をとれ」。エルヴィン・ロンメルの名言らしい。本「革命家100の言葉」より
   ・所詮ネズミ : 英軍は真面目にネズミのお腹に爆弾を詰めてから石炭に混ぜてドイツにプレゼントしようとした

>>9 ・Boiling Vessel : 英戦車の中に給湯器が標準装備されるようになったのはセンチュリオンやチャレンジャーから
   ・ブーム海軍大将 : メリーポピンズの登場人物

>>10 ・コッパーヘッド作戦 : モンゴメリーの影武者がどうのってwikiに

>>11 ・オーストラリア製センチネル : 初の一体鋳造戦車。砲塔を二門つけたり。なお見た目がR-18
    ・カヴェナンター : 英巡航戦車。車内温度が40度を超す。走る火葬場

>>12 ・FIDO、滑走路バーナー : 霧が多いと戦闘機が飛べない→ガソリン滑走路に撒いて燃やそうぜ!
    ・シルバーストーン : WWⅡ中英爆撃機の飛行場だったものをサーキットにした場所
    ・探していた、見失っていた光は : まさかのNHK広坂安伸さんの実況。ロンドンオリンピック女子バレーボール3位決定戦
    ・ラッキーガール : 迫田さおり選手
    ・マッテマシタコノシュンカン : 解説の大林素子さんの言葉

>>13 ・女を捨てた肉食獣 : 格ゲー「P4U」里中千枝の煽り文句
    ・ミドガルドシュランゲ : 今でいうシールドマシンみたいな独戦車
    ・食べられるかどうかを疑った瞬間 : ディズニー映画ピーターパン「The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it.」
    ・世界が成長とともに堕落した : 映画「パットン大戦車軍団」より、ロンメルとタイマン張りたいパットンが「まるで騎士のようだ」と皮肉られて一言

>>16 ・ATシリーズのごとき守備力 : wotでの話。現実のトータス重突撃戦車も防御重視だったが終戦に間に合わず
    ・マーケットガーデン作戦 : ノルマンディー以降初の連合軍の大失敗。兵士を空から敵地に突き落として4日間ほぼ補給無しで戦わせる作戦

>>17 ・私の胃袋は、宇宙よ : 「俺の胃袋は宇宙だ」 ドラマ「フードファイト」より主人公満(草彅剛)の決め台詞
    ・カペルスウェイト : ラノベ「ベン・トー」より主人公の二つ名。「変態する黒妖犬」

>>19 ・VEデー : ヨーロッパ戦勝記念日。5月8日
    ・黒森峰の暗号は解読 : エニグマを解読したチューリング

>>23 ・デファイアント、ロック、アーチャー対戦車自走砲 : 英軍は陸海空いずれもお尻から火を噴くのが好き
    ・それ、トイレ間に合うの? : アーチャー対戦車自走砲はwotでは前進が遅い

>>27 ・感触が違うんスよ~ : アニメ「はじめの一歩Rising」沢村のセリフ

>>33 ・鳥人ミッコネン :スキージャンプ選手マッチ・ニッカネンの日本での二つ名が鳥人

>>34 ・M11/39 : 戦車を作ったはいいが砲塔に砲が載らなかった→じゃあ車体に砲くっつけよう→車体ごと回らないと照準合わない
    ・M13/40 : 砲塔に砲を載せたよ!→換気装置を付け忘れる→1発撃ったらガス充満→偵察用ではなく敵との戦闘中にハッチを開ける必要が
    ・カンガルー : M11/39もM13/40もオーストラリア軍によってカンガルーの落書きをされまくる

>>36 ・イタリアの赤い悪魔 : OTO M35型手榴弾。あだ名の命名は英軍
    ・フランチェスコ・バラッカ : WWⅠの伊空軍エース・パイロット。この人の「跳ね馬」の個人マークがフェラーリのエンブレムに
    ・ミナ : 今はなきミナルディ。F1のチーム。めっちゃ弱いし貧乏だが情に厚くパスタがうまい。
    ・人間食品加工工場、フードファイトの通り魔 : 古館さんのF1実況「人間スクラップ工場」「サーキットの通り魔」チェザリスに対して
    ・食べる豆戦車が火を噴いた : 古館さんのプロレス実況。「アームストロング砲が火を噴いた」 C.V.33のバリエーションに火炎放射戦車がある

>>38 ・白い死神 : シモヘイヘ
    ・無傷の撃墜王 : エイノ・イルマリ・ユーティライネン
    ・北欧の漂流者、1人ウィーン少女合唱団 : 古館さんのF1実況「北欧の貴公子」「走る一人ウィーン少年合唱団」ハッキネンに対して


>>39 ・このバトルフィールドにおいて~ :「ベン・トー」遠藤「どうだ、三日間の断食に耐えた俺の力は。このフィールドにおいて、空腹こそが力の源!!獲物を前にした獣は、飢えた者ほど強い!つまり俺が最強ということだ!!」
    ・マンネルヘイム線は重武装 : 芬ソ両政府のプロパガンダから生まれた伝説。実際は嘘

>>41 ・人の心を感動させることが出来るのは~ : 「美味しんぼ」海原雄山「人の心を感動させるのは唯一、人の心をもってのみ出来ることなのだ」
    ・え!! おなじ素材で料理を!? : 「スーパーくいしん坊」 「え!! おなじ値段でステーキを!?」

>>44 ・旨さの爆弾~ : 「食戟のソーマ」水戸郁魅「旨さの弓矢が次から次へと飛んでくるみてぇだー!!」
    ・うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!!!!!! : 「ミスター味っ子」味皇
    ・グラン・サッソへと光速を超えて : 独軍によるムッソリーニ救出作戦、および2011年にグランサッソ研究所でニュートリノが光速を超えた(超えてない)

>>45 ・それは幸福の味 : 「幸腹グラフィティ」リョウ「ほろほろとほどけるご飯にじゅわーっと甘いお揚げ、それは幸福の味」

>>47 ・マジノ女学院の校長は~ : 2005年シラク大統領「欧州で最悪の料理の1つで、英国料理よりはわずかにおいしいだけ」wikiより

>>56 ・画面には美しい映像が流れていました : ウイイレ10、ジョンカビラ実況

>>57 ・Jリーグカレー、ラモス出演のCM

>>59 ・カキ氷、雪女 : ドラマ「フードファイト」第四話より

>>64 ・OD色 : オリーブドラブ、深い緑色のこと
    ・サムライ戦車隊長 : 島田豊作のこと。島田愛里寿の元ネタ

>>65 ・ニューギニアもかくやの : 日本兵の死因の半分以上は栄養失調や餓死であったとされる

>>66 ・年来の仮想好敵手ぷらうだ : 日本陸軍はずっと仮想敵にロシア(ソ連)を設定していた
    ・Mig-25 : 世界一速い戦闘機(航空機)
    ・ボウメイ : ベレンコ中尉が函館に亡命してきた事件
    ・疾風 : 四式戦闘機のこと。最良の日本戦闘機とされるが、スペックが発揮されていたかが怪しい

>>68 ・ハイッ! ハイヤッ! : 騎乗の掛け声。バロン西は乗馬のオリンピック選手ということで
    ・両者とも速い!~常識が覆されました! : 1996年日本ダービー「先頭はダンスインザダークか! コンコルドだ!コンコルドだ!外から音速の末脚が炸裂する! フサイチコンコルド! 勝ったのはフサイチコンコルド!そして2着にダンスインザダーク! ・・今・・今、一つの競馬の常識が覆されたっ!」
    ・ヒンナヒンナ : 漫画「ゴールデンカムイ」でアシリパのセリフ。アイヌ語で「いただきます」「ごちそうさま」
    ・ゲダンクバー : 空母エンタープライズ内にあるアイスクリーム製造器のこと。米軍のアイスクリームにかける情熱はすごい
    ・ハボクック : 氷山空母。英のトンデモ兵器の代表格

>>69 ・世界史上希に見る大規模な : 日露戦争最後の奉天会戦のこと。60万の兵士が18日間荒野で戦い続けた


>>70 ・ホンジツテンキセイロウナレドモナミタカシ : 「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」バルチック艦隊を破った時の秋山真之(幼名は淳五郎)の打電。地味に七五調
    ・知波単の興廃この一戦にあり : 「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ、各員一層奮励努力セヨ」秋山真之(優花里のパパの元ネタの人)の打電
    ・スズメ、メジロ、ロシヤ : 当時流行った言葉遊び。「日本の、乃木さんが、凱旋す、スズメ、メジロ、ロシヤ、やまんこく、クロパトキン、きんのたま・・・」と延々と続く
    ・最前線の隊長殿には~ : 1980年の映画「二百三高地」古賀「最前線の兵には体面も規約もありません。あるのは生きるか死ぬか、それだけです。兵には、死んでいく兵たちには、国家も軍司令官も命令も軍規も、そんなものは一切無縁です! ただ灼熱地獄の底で鬼となって焼かれていく苦痛と恐怖があるだけです」
    ・前のみを見つめながらあるく~ : 司馬遼太郎(福田の元ネタ)小説「坂の上の雲」、あるいは映画「坂の上の雲」ナレーション 「前をのみ見つめながら歩く。
登っていく坂の上の青い天に、もし、一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて坂をのぼってゆくだろう」

>>71 ・お父さん! お母さん! : 秋山好子の元ネタは秋山好古。日本騎兵の父。真之(淳五郎)の兄。
    ・期を見て突撃する浸透戦術 : 日本陸軍のマレー電撃戦(スリム殲滅戦)。チハ最強伝説を作った島田豊作

>>72 ・日本の首都を秋田に : 最初期の北進論での一案
    ・浜田 : 元ネタは浜田勇? シベリア出兵に従軍
    ・極東共和国 : 1920年から1922年まで存在した、シベリア出兵に対峙するためだけに作られた緩衝国家

×映画「坂の上の雲」 → 〇NHKドラマ「坂の上の雲」

>>73 ・食う物があっても、戦いをしなければならないのだ : インパール作戦失敗後の牟田口中将の訓示「皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん」
    ・肉弾三勇士 : 爆弾三勇士とも。1932年第一次上海事変での突撃兵
    ・長山号 : ラジコン爆弾。独軍でいうゴリアテ

>>74 ・立て、立て、立て、立ってくれ~~、立ったぁ! : NHKアナウンサー工藤三郎さん、1998年長野五輪、原田選手個人ラージヒル2回目
    ・疲労がポンととれる突撃錠 : ヒロポン。本当はギリシャ語が由来だとか

>>76 ・カチューシャロケット : 世界最初の自走式多連装ロケット砲
    ・60万の大包囲網 : 劉邦が項羽の陣に迫った時の布陣。四面楚歌
    ・亀の子爆雷 : 九九式破甲爆雷。戦車に貼るタイプの爆弾、生還はまず無理。ソ連戦車の装甲が紙だったのでノモンハン事件初期で活躍したが後に対応された
    ・何が全滅しましただ~ : 辻政信(役人の元ネタ)のノモンハン事件での名言。東捜索隊が全滅した報告に対し、「全滅とは何事か。君達四人が生き残っているじゃないか」 出典「はじめてのノモンハン事件」より
    ・BT-7 : ソ連の快速戦車。ノモンハン事件に増援として初投入。その速さからタンクデサントもよく行われた

>>78 ・西ガンバレ! : 前畑ガンバレ。1936年ベルリンオリンピック女子競泳200m平泳ぎ、NHK河西三省アナ。その後の実況を変えた名実況

>>79 ・知波単学園校歌 : 漫画「突撃!パッパラ隊」 スットン共和国国歌
    ・ザ・ピーナッツであります! : 1963年の曲「恋のバカンス」が2年後ソ連で大ヒット。日本の曲だと知らないロシア人も多い

>>80 ・銀盤の復活劇!~ : NHKの鳥海貴樹アナ。ソチ五輪浅田真央フリー「これが浅田…真央です。浅田真央のスケーティングです。6種類の3回転ジャンプ8つ、すべて成功。これが出来るんです。なんという凄い…スケーターでしょう」解説そのものより無音、沈黙、間がすごい
    ・帝国の稲妻、極東の鉄の美少女、地獄の大車輪 : チハたん

               
             .___   ______チハ坊:チハを自由自在に操る鋼鉄の騎士
            ヽ=☆=/ /    チハを愛し、チハに愛されることで通常の3倍の性能を引き出すぞ!
           ∩( ・ω・)∩ チハタンばんじゃーい
           ┬======l         ____チハ主砲:「帝国の稲妻」と呼ばれたチハの必殺兵器
           ヽ┴-----┴ 、      /       57cmの巨大な砲弾で、機関銃巣もイチコロだ!      
        ==|  □:|: 乃 「r---┬───o  
   _____└┐_:|:___||-─┘ ̄ ̄

 |ミ///   / ~~|ミ|丘百~((==___ ――――チハ車体:コンパクトかつチャーミィに仕上げられた形状には
└┼-┴─┴───┴──┐~~'''''-ゝ-┤            「極東の鉄の美女」と、連合国も大絶賛!
 ((◎)~~~O~~~~~O~~(◎))三)──)三)
  ゝ(◎)(◎)(◎)(◎) (◎)ノ三ノ──ノ三ノ  
                       ――チハキャタピラー:敵陣地を踏み荒らし大陸を駆け抜ける
                                   「地獄の大車輪」と呼ばれたその豪脚には、韋駄天ハインツもびっくりだ!

   ・石をここに埋めておこう : なにかと石を埋める日本陸軍
   ・まだ続く、繋いだ、繋いだ~ : 元朝日放送アナウンサーの植草貞夫さん。2009年夏の全国高校野球甲子園大会決勝「まだ続く、繋いだ、繋いだ、日本文理の夏はまだ終わらな~い~!」

>>81 ・恥ずかしながら帰って参りました : 1972年の流行語。残留日本兵横井庄一さんの言葉から
    ・残地諜者命令下達! 隊長殿、よう生きて帰ってきてくれたであります : 残留日本兵小野田寛郎さんの特集番組から
    ・可能なら実行する。不可能でも断行する : フランスの軍人マルセル・ビシャールの言葉。なんとなく大和魂っぽい
    ・堅忍持久 : 1937年国民精神総動員運動の目標のひとつ。残り二つは挙国一致と尽忠報国
    ・撃ちてし止まむ : 1943年のプロパガンダ。古事記にも書かれている
    ・秘密兵器100トン戦車 : オイ車
    ・予は常に諸子の先頭に在り : 映画「硫黄島からの手紙」より、硫黄島守備隊栗林忠道中将の突撃前の挨拶。史実でもも最高指揮官が突撃を行った異例
    ・二天一流 : 宮本武蔵の兵法。二刀流

>>82 ・遅いぞ第二号艦 : 映画「宮本武蔵」より小次郎「遅いぞ武蔵。臆したか」 第二号艦は戦艦武蔵のこと
    ・某は今まであの石の一つでござった~ : 司馬遼太郎の小説「宮本武蔵」の一節
    ・ムトキン : 日本海軍軍人武藤金義。「空の宮本武蔵」の二つ名
    ・敵は砲や機銃で撃つものではない~ : 東条英機「飛行機は機関銃や高射砲で落とすのではなく、気迫で落とすものだ」
    ・破邪顕正の活人剣 : 柳生十兵衛の父からはじまる思想・・・日中戦争以降紙面のプロパガンダでよく出る
    ・"いえす"か"のう"か : マレーの虎、山下奉文が言ったという

>>83 ・所詮、人の胃袋には~ : ドラマ「フードファイト」第三話での催眠術

>>85 ・ヴォリフ・メッシング : スターリンに気に入られた超能力者。褒美にソ連国内を自由に通行できる許可証をもらったとか
    ・催眠術は科学に非ず : 「千里眼は科学に非ず」明治末に起きた千里眼事件における学者の結論


>>86 ・姑息偸安~ : 日米開戦に踏み切らない近衛首相に対しての開戦派の非難 出典「第二次世界大戦外交史」

>>87 ・ヤスリ : 司馬遼太郎のエピソード。戦車がヤスリで削れた話
    ・士魂戦車大隊、玉砕覚悟で突撃 : 「戦車隊の神様」と呼ばれた池田末男。占守島の戦いでソ連軍に徹底抗戦
    ・貴女たちを侮辱した証拠があるなら~ : 腹切り問答。浜田国松と寺内寿一の問答。「私が軍を侮辱する言葉があるなら割腹して君に謝罪する。なかったら君が割腹せよ」
    ・天に抗する気力があればなんとかなる~ : 映画「八甲田山」より、弘前歩兵第31連隊中隊長徳島大尉の台詞「我々がもし天に抗する気力がなければ、天は必ず我々を滅ぼすだろう。 諸君、必ず天に勝て」
    ・天は我々を見放した : 映画「八甲田山」より、第5連隊神田大尉の台詞

>>88 ・後退は許さんと言ったな~ : 映画「八甲田山」、幻覚?亡霊?のシーン
    ・本当の敵は、強い相手では無く、無能な上官 : 辻政信(役人と同時に辻つつじの元ネタ?)の迷言。「本当の敵は強い相手ではなく無能な身内である」NAVERまとめより


>>89 ・いやぁ、映画って本当にいいものですね : 名作糞映画「シベリア超特急」で有名な水野晴郎の「金曜ロードショー」での絞め台詞
    ・あれがカブキ~ : 映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインの「イワン雷帝」第一部にまつわるエピソード
    ・ペケ入れまぐったでねが : レーニンに人気があったという理由でスターリンから検閲されまくった
    ・大階段にコサック兵が~ : 1925年の映画「戦艦ポチョムキン」。「オデッサの階段」で有名

>>90 ・ロシア式挨拶 : ソ連時代のおっさん同士がベロチューしてる写真をネットでよく見る
    ・戦車(たんく)で鹿島の海へと突撃 : 1964年の映画「馬鹿が戦車でやって来る」より
    ・善戦敢闘参拾分~ : インパール作戦独断退却で有名な佐藤幸徳の返電。「善戦敢闘六十日におよび人間に許されたる最大の忍耐を経てしかも刀折れ矢尽きたり」

>>91 ・世界最初の戦争記録映画、自転車戦争 : ボーア戦争

>>93 ・自衛隊のCM

>>94 ・ヴィンターケッテ : 冬季用履帯。外側に大きく張り出しがある
    ・ツィンメリット・コーティング : 杞憂のドイツ代表

>>96 ・カルタゴホロブベシ : ポエニ戦争で大カトがカルタゴを滅ぼす理由を説明した言葉。「ともあれ、カルタゴは滅ぶべき」「これほど見事なイチジクを産する国が3日の距離にいる」字面だけ見ると小学生並みの説得力だが、食糧と軍事力との関係を端的に説明している

>>97 ・そのガンバリズムに至っては~ : 1940年の映画「西住戦車長伝」(原作:菊池寛)でのナレーション

>>101 ・バルジの戦いにおいて、米軍内に独軍のスパイがいる(グライフ作戦)ため検問が敷かれた際の質問。出題者が州都をシカゴだと思い込んでいたため正解を答えたブラッドリー将軍が拘留された

>>102 ・M24チャーフィー : 米軽戦車。バルジの戦いが初陣。スマートでコンパクトなので偵察向きだが、パンターに似ていたため味方から誤射される

>>103 ・♪Damn.~ : 蝶野正洋の入場曲

>>104 ・エリカ : ツツジ科の植物。桃~白色の小さな花を咲かせる
     ・レッド・バロン : WWⅠの独エースパイロット、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンの二つ名。戦闘機を真っ赤に染めていて目立った上、当時のプロパガンダにも使われた
     ・ノーズアート : 軍用機に描かれるパツキン白人女性のセクシーな落書きのこと

>>105 ・腹の虫の加護があらんことを : 中の人ネタ。声優伊瀬茉莉也演じるアニメ「ベン・トー」メインヒロイン槍水仙の台詞
     ・戦争を終わらせるための戦争 : WWⅠのこと。第28代米大統領ウィルソンの言葉として知られているが実際は違うんだとか
     ・司令部へ報告!~ : 映画「バルジ大作戦」ラストシーンでのセリフ「司令部へ報告。敵は戦車を捨て、徒歩でドイツに帰る」
     ・キング : ジャッキー・イクスの別名「ル・マンのキング」 ルマン24時間レースで6度優勝している


>>107 ・シレイラ : 空挺戦車を実現するために生み出された米軍対戦車ミサイル。が、信頼性が悪く6年だけ使われて退役

>>110 ・家庭用冷蔵庫が走ってくる : 2014年日米野球で阿部慎之助のプイグ(ドジャース)に対する言葉

>>112 ・陣地を死守するなんて~ : 映画「パットン大戦車軍団」よりパットン「陣地を死守するなど我が軍にはありえない。攻撃あるのみだ!陣地の死守はナチの役割だ!我々は進撃に次ぐ進撃あるのみ!敵の鼻っ面を掴みケツを蹴飛ばしてやれ!容赦はいらん!思い切り蹴飛ばし続けろ!ガチョウの糞のようにメタメタにしてやれ!」
     ・I feel the need,the need for speed!" : 映画「トップガン」より、米映画史に残る名台詞。なお日本語訳は戸田奈津子的に「やろうぜ!勝負はこれからだ!」

>>113 ・茨城県人、ここにあり! : ニコ動の日本兵MADでよく聞くセリフ。元のゲームが何なのかは不明
     ・フー・ファイター : UFOという概念が誕生する前の先祖。大戦中に見つかるUFO的なもののこと

>>114 ・リベレーターでもジャイロジェットピストルでも : ダメ拳銃
     ・火事を消さないと : ルーズベルト大統領がレンドリースについて国民に説明した時の言葉
     ・レバノン料理 : メーデー民のネタ。航空機事故の原因のひとつ
     ・逆噴射 : 日本航空350便墜落事故での片桐機長。メーデー民のネタ
     ・やめてください! : 同上のボイスレコーダーに残っていた副機長の言葉「機長!やめてください!」は1982年の流行語に
     ・ハドソン川の奇跡 : USエアウェイズ1549便不時着水事故。機長は元戦闘機乗り
     ・大丈夫! 抜かれない限り~ : 映画「戦略大作戦」でのオッドボール軍曹の台詞「橋はちゃんとある」→チュドーン!→「今はもう無い」
     ・何のための前進守備だ~ : 2006年プロ野球横浜対巨人戦、「世界の松下」こと松下賢次アナ
     ・DC-10 : メーデー民にネタにされるほど航空事故を頻繁に起こしたジェット機
     ・第4エンジンに愛着はない : メーデーネタ。1989年のアメリカでの観測機のトラブルの際、クルーが放ったアメリカンジョーク
     ・ハウランド島付近で消息を絶つ : アメリア・イアハート。米女性飛行士。1937年世界一周中南太平洋上で行方不明に。レキシントンや神威(かもい)が共同捜索にあたった
     ・大洗のあまりの凄さに~ : 2004年アテネ五輪体操男子団体NHK刈屋アナの実況「あまりの凄さにアメリカも苦笑い」。この時の実況は名言製造機。>>201の「冨田が冨田であることを証明すれば日本は勝ちます」もこの時のもの

>>115 ・アホ毛脱毛作戦 : CIAの前身、OSS(戦略諜報局)がヒトラーのヒゲこそが人心掌握の要とし、あの手この手で剃ろうとした
     ・サムソン : 髪の毛にめっちゃパワーがある人
     ・鳩ミサイル、コウモリ爆弾、ポパイ作戦(雨降り作戦)、A119計画(月爆破計画)、同性愛爆弾 : 実際に米軍がやったトンデモ作戦
     ・私を恐れるように~ : 色んな映画で出てくる米新兵訓練シーンでよくある台詞「敵兵ではなく俺を恐れるようにしごいてやる」

>>116 ・ストーブ : 独軍がつけたM4シャーマンのあだ名。良く燃えたため
     ・Nuts : 映画「バルジ大作戦」で、独軍の降伏勧告に対しての返事。意味は「馬鹿野郎」

>>117 ・何も終わっちゃいないのよ~ : 映画「ランボー」ランボー男泣き「何も終わっちゃいねえ!何も! 言葉だけじゃ終わらねえんだよ!俺の戦争じゃなかった、
あんたにやれって言われたんだ!俺は勝つためにベストを尽くした。だが誰かがそれを邪魔した!シャバに戻ってみると、空港に蛆虫どもがぞろぞろいて抗議しやがるんだ!俺のこと赤ん坊殺したとかなんとか言いたい放題だ。やつらに何が言えるんだ!奴等はなんだ俺と同じあっちにいてあの思いをして喚いてんのか!俺にはシャバの人生なんか空っぽだ!」
     ・そこまでして何を~ : 映画「風とライオン」での、そこまでして何を求めるのかと聞かれてルーズベルト大統領の台詞「尊重を求めとる。人命と米国民の財産への尊重だ」
     ・桃ちゃん、ステイ! : ホットドッグだけに犬扱い

>>118 ・肩を並べてお茶を飲める : 映画「ウィンドトーカーズ」「50年後には、ひょっとするとジャップと肩を並べて酒を飲んでるのかもしれないな」
     ・戦車道を知ってる~ : 映画「父親たちの星条旗」「戦争を知っているという馬鹿にかぎって戦場を知らない」
     ・私の家よ : 映画「フューリー」ウォーダディー、戦車を指して「これは俺の家だ」
     ・ディスイズ戦車道 : 1988年10.19。「アベロク」こと安部憲幸さんの実況。「ディスイズプロ野球」


>>119 ・悲観的 : 映画「戦略大作戦」で、オッドボール軍曹の口癖「悲観的だねぇ。もっと楽観的に物事考えなきゃ」
     ・脳にまでそばかす : 映画「ミッドウェイ」「私を推薦するなんて脳まで皮膚病になったのか?」
     ・グリズリー : 映画「風とライオン」よりルーズベルト大統領「灰色熊は米国人気質のシンボルだ。強さと知性と獰猛さのな。時には衝動的で無鉄砲だが文句なしに勇敢だ。最も顕著な特性は「孤独」だ。誰にも支配されず征服されず敵に囲まれながら毅然としとる。全世界には愛されないが尊敬はされる」

>>123 ・ファンタ : 1940年、ドイツで誕生。コーラが飲みたいのに材料が手に入らなかったから生まれた
     ・全権を委任 : 全権委任法。独裁者アドルフヒトラー誕生
     ・古き偉大さ : 1933年3月21日ヒンデンブルク大統領へのヒトラーの演説「元帥閣下、閣下の理解によって『古き偉大さ(ヒンデンブルク)』と『新しき力(ヒトラー)』のシンボルは結合できました」
     ・タンネンベルクの戦い : WWⅠの方。数で勝るロシア軍をぼっこぼこにしたヒンデンブルク
     ・ヒンデンブルク号 : 1937年アメリカで起きた飛行船爆発事故。飛行船の歴史の幕を閉じた

>>124 ・アイスピック : スターリンとの権力闘争に敗れメキシコに亡命したトロツキーは同地でアイスピックで後頭部を刺され殺害された

>>126 ・クラーラ=エリカ協定 : モロトフ=リッベントロップ協定
     ・パン籠 : 冬戦争におけるフィンランド空爆についてモロトフの説明「資本家階級に搾取されているフィンランドの労働者への援助のため、パンを投下した」

>>127 ・目指せモスクワ : ドイツのグループ「ジンギスカン」が1980年モスクワ五輪に向け発売した2曲目のシングル。Flashムービーの空耳ソングで有名

>>77  ・今こそ戦車夜襲の時 : 玉田美郎(ノモンハン戦車第4連隊連隊長)は初の大規模な戦車夜襲を行った

>>133 ・ピーラッカ : フィンランドのピロシキ。ピロシキは北欧東欧から中央アジアまで広く分布
     ・催眠術対策 : ドラマ「フードファイト」第三話で、催眠術対策に満(草彅)がガムを耳に詰め込む

>>135 ・食欲のタイフーン : タイフーン作戦。独軍によるモスクワ攻略戦

>>136 ・ZIL-29061やBe-2500 ネプトゥヌス : ソ連のトンデモ戦車。ドリルがついている
     ・ゴウテンゴウ : 轟天号。帝国海軍が設計した陸・海・空すべてで行動できる万能戦艦。単艦でムウ帝国を壊滅

>>137 ・避弾経始 : 独ソ戦によって戦車は合理的に進化していった

>>138 ・マンシュタインバックブロウ : 第三次ハリコフ攻防戦において活躍したマンシュタインの異名。戦車戦の歴史を変えた

>>140 ・ピロシキさえ与えれば~ :ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」より「パンさえ与えれば、人間はひれ伏すのだ。なぜなら、パンより明白なものはないからな」前後の文脈としては人間の倫理観を否定し世界帝国を肯定するような内容
     ・冬の嵐 : 冬の嵐作戦。スターリングラードで赤軍に包囲されてしまった独軍を救出するための作戦


>>141 ・春の目覚め : 春の目覚め作戦。ヒトラーの失敗作戦
     ・全周ショットトラップ : T-54(1946年型)
     ・勝負において重要なのは勘~副隊長は、強い : ドラマ「フードファイト」第十話、さだまさし演じる親父の台詞。当時(というか90年代)は日本におけるF1放送全盛期
     ・ゴクミ : 後藤久美子。「国民的美少女」。ジャンアレジの妻。大河ドラマ「伊達政宗」で政宗の側室役

>>142 ・銃の代わりにパンツァーファウスト : ベルリン攻防戦では国民突撃隊に一人一本提供され、銃はなくともパンツァーファウストはあるという状況も生じた(wikiより)
     ・最高の戦車以外に必要なのは、経験と用心深さだけ : 東部戦線のティーガーエース、オットー・カリウスの名言
     ・地下壕に籠り過ぎて : 総統地下壕に1945年1月16日から籠り始めた
     ・食事の時間 : ティーガーIの乗員向け教本「ティーガーフィーベル」に「敵に対する時に最適な位置は10時半、1時半、4時半、そして7時半」と掲載。これがドイツでの食事の時間に相当する

>>143>>144 ・息を止めている~ :ドラマ「フードファイト」第五話。イルカの調教師ゆえ息を止めて気管に食べ物を詰め込めるという、今思えばとんでもない設定
     ・戦うクロコダイル・ダンディ : ワールドプロレスリングで古館伊知郎が小林邦昭につけたあだ名。クロコダイル・ダンディはコメディ映画のタイトル
     ・スコルツェニー : ヨーロッパで最も危険な男と呼ばれた
     ・我が手と我が胃袋に、戦う力を : 映画「プライベートライアン」「我が手と我が指に戦う力を与えたまえ」ジャクソン二等兵の台詞、聖書の一節の引用
     ・メル友 : ドラマCDで王大河とエリカはメアド交換している

>>145 ・ナルヴァの戦い : 独ソ戦におけるドイツの防衛作戦。数で勝るソ連軍を追い返した
     ・渇ききった時代に送る~ : 1983年猪木vsホーガン戦での古館伊知郎の実況「渇ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のように、猪木に対する悲しげなファンの声援が飛んでいる」

>>146 ・私はカモメ : 世界初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワが宇宙で発した最初の言葉。世界初の非軍人宇宙飛行士でもある
     ・東方への衝動 : ドイツ民族が魂レベルで持っている性質みたいなものとして議論された
     ・銃は2人で1丁 : 映画「スターリングラード(2000)」冒頭のシーン

>>148 ・東京オリンピック2020誘致

>>149 ・トイレで吐く作戦 : ドラマ「フードファイト」第五話。ドラマでは吐血(実は血糊)して主人公満の同情をわざと誘うシーンがあるが、エリカのキャラではなかったので省略

>>151 ・フードファイトにかける女たちが~ : 元NHKアナ山本浩さんの実況。1993年W杯アジア地区最終予選「サッカーにかける男たちが、この一戦に人生の変わり目を予感しています」

>>153 ・芝の匂いがしてきます~ : 元NHKアナ山本浩さんの実況。1998年W杯グループH「芝の匂いがしてきます...そこに広がるのは、私たちの20世紀を締めくくる戦場です。リヨン、ジェルラン競技場。日本はここで終るのではありません。自分たちの明日に、私たちの2002年につなぐ90分間にしなければなりません。ワールドカップ第3戦、日本対ジャマイカ。勝つために戦います」

>>158 ・何故人は山に登るのか~ : ソロクライマー最強と言われた鈴木謙造の言葉
     ・モンテ・カッシーノ……ヴォイテク! : 兵隊クマが活躍したのがモンテカッシーノ

>>160 ・サランラップをした上で~ : 「クラッキー」こと倉敷保雄の実況(迷言)ヘルタ・ベルリン vs. バイエルン「サランラップをした上でにおいを嗅がされているような味気ない料理って感じですね」

>>161 ・イタリア軍最強伝説 : 第2次エル・アラメイン会戦で第185空挺師団『フォルゴーレ』が戦車比1:70という絶望的状況で連合軍を2度も退けた。チャーチルは「彼らは獅子の如く戦った」と称賛(wikiより)

>>165 ・丈夫そうなアゴですねぇ~ :  「クラッキー」こと倉敷保雄の実況(迷言)オリバー・カーンの顔のアップ映像に対して「丈夫そうなアゴですねぇ~。きっと小さな頃からカタクチイワシをボリボリ食べたらこんな風になるのでしょう」

>>170 ・茨城鹿島のサッカースタジアムの空の向こうに~ : 元NHKアナ山本浩さんの実況。1986年W杯メキシコ大会アジア最終予選「東京千駄ヶ谷の、国立競技場の曇り空の向こうに、 メキシコの青い空が近づいているような気がします」
     ・様相を呈してまいりました! : 辻よしなりさんのプロレスでの口癖
     ・勝ち残るのはアンツィオか~ : 元NHKアナ山本浩さんの実況。1986年W杯メキシコ大会トーナメント1回戦「勝ち残るのはイタリアか、それともフランスか。勝利の女神は時に厳しい選択を迫られます」
     ・サンベルナール峠 : セントバーナード峠。ナポレオンの白馬の肖像画で有名。古代から現代に至るまで軍事的重要地点

>>171 ・アーレア・ヤクタ・エスト : 賽は投げられた、のラテン語。スエトニウスによる全文が「さあ進もう。神々の示現と卑劣な政敵が呼んでいる方へ。賽は投げられた」
     ・アンチョビ抜けない!~ : F1で最も有名な実況のひとつ。三宅正治アナ。1992年のF1シーズン第6戦モナコグランプリにてセナがマンセルのオーバーテイクを抑え込む

>>174 ・映画「荒野の用心棒」クリントイーストウッド「棺桶を3つ、用意しとけ」「俺のラバの足の間を狙って撃っただろ?」「俺のラバは怒っている。謝れば許すだろうが…」→ガンアクション→「間違いだった。棺桶は4つだ」BTTFでも有名なシーン
     ・セルジオ・レオーネが訴訟で勝ってしまう : 「荒野の用心棒」のストーリーが黒沢明の「用心棒」のパク…リメイクだったため東宝に訴えられて敗訴
     ・スパゲッティセイブゲキ : マカロニウエスタンは和製英語で、アメリカやイタリアではスパゲッティウエスタンと呼ばれている。イタリアでは500本以上西部劇が作られた

>>175 ・黄色信号 : 箱根駅伝の実況でよく使われる
     ・残りあと10秒!~ : これも箱根駅伝繰り上げスタートギリギリのシーンでよく使われる
>>176 ・今、マウンテンの神、ここに降臨! : 2007年箱根駅伝第83回大会、河村亮アナの実況。「今、山の神、ここに降臨! その名は今井正人」

>>177 ・私たちは忘れないでしょう~ : 元NHKアナ山本浩さんの実況。1999年元日、第78回天皇杯決勝・横浜フリューゲルス対清水エスパルス「私達は忘れないでしょう。横浜フリューゲルスという、非常に強いチームがあったことを。東京国立競技場、空は今でもまだ、横浜フリューゲルスのブルーに染まっています」横浜フリューゲルス最後の試合

>>182 ・青師団 : ここでは青師団高校のことではなく、スペイン義勇兵。フランコ将軍は連合軍と平和を保ちながらも東部戦線でドイツ軍に義勇兵を参加させた

>>183 ・胃酸の分泌量が3倍になる薬 : ドラマ「フードファイト」第九話で筧利夫演じるコミッションドクターが調合した薬

>>186 ・ヴィルヘルム2世 : その髭の形は当時日本で大流行した。ドイツ人以外はザコばっかが信念の困った人であり、長いことWWⅠの元凶とされていた

>>191 ・私は道をふさいだ岩石、小さな障害物にすぎず、流れを食い止めることはできなかった : ルーデル閣下の言葉らしい
     ・古代ローマ貴族の食べ方 : 美味しいモノを延々と食べるために開発された、毒を盛られる可能性があったから、健康法として流行ったからなど諸説ある。カエサルも嘔吐剤を持ってたとか
    
>>198 ・おおっありがたい! 私はハンバーグが大好物なのだ : 漫画「封神演義」姫昌の台詞。なお人肉
     ・たっぷりソースのハンバーグは男の子の味だ! : ドラマ「孤独のグルメ」井之頭五郎の台詞、武蔵野市吉祥寺喫茶店のナポリタン
     ・五十鈴選手はよく学食でハンバーグ定食 : ガルパン第一話でチーハン定食をご飯大盛りで食べている

>>200 ・オムハンライス : 喫茶マウンテンのメニュー。名前の通りオムライスの中にハンバーグが入っている
     ・カロリークイーン : 島田愛里寿の声優竹達彩奈の二つ名

>>201 ・逸見エリカこそはこの世に比類なき勇者であり~ : ゲッベルスの演説「ヒトラーこそは、この世に比類なき勇者であり、彼が握るのは、人類文明の旗である」

>>203 ・絶対君主 : ここではフリードリヒ大王のこと。この時代の戦術論が殲滅戦理論。この後WWⅠで塹壕戦となりWWⅡで電撃戦となる
     ・ゴモラ作戦 : ハンブルク空襲のこと。英米爆撃機がハンブルクの街を破壊しつくした。「ドイツのヒロシマ」とも呼ばれる

>>205 ・キン肉マン : ゆで理論のうちのウォーズマン理論

>>206 ・1人民族強制移動 : 古館伊知郎によるアンドレ・ザ・ジャイアントのあだ名「一人民族大移動」

>>206 ・ベルゲパンター : 回収戦車。戦車を回収するための戦車

>>207 ・軍神などと呼ばれながら~ : 映画「ヒトラー~最期の12日間~」 総統閣下シリーズ空耳で有名なあのシーンの和訳「貴様ら、将軍などと呼ばれているが、士官学校で歳ばかり取りやがって!覚えたのはナイフとフォークの持ち方だけだ!常に軍は私の邪魔ばかりしやがって!考え付く限りの手段で妨害しやがって!」 丁度「チキショウメー!」から「スターリン!」の間
     ・フレンスブルク : デーニッツ政府とも。ヒトラーの死後、降伏交渉のための政府
     ・私のすべきことは、エリカさんを救うこと~ : ヒトラーの死が初めて公にされたラジオ演説。ハンブルク放送、デーニッツ「私の任務は押し寄せる共産主義たちによる破滅からドイツ人を救うことであり…来るべき苦難の時代に力の及ぶ限り耐えうる生活条件を作り出す努力をする…私を信頼してもらいたい、諸君の道すなわち私の道である」(wikiより)


>>209 ・私は隊長の夢を叶える : シュペーアの回顧録「第三帝国の神殿にて」には「大建築家になりたいと思って果たせなかった青春の夢を私にかけているのだろうか」とある
     ・世界首都クロモリミネア : 世界首都ゲルマニア。ヒトラーがデザインを考え、シュペーアに完成させるよう命じたもの

>>212 ・メッサーシュミット Me262 : 世界初の実戦投入されたジェット戦闘機
     ・ヴンダーヴァッフェン : 都市伝説。ナチスの残した最強の兵器のこと。語頭からヴーヴァとも呼ばれる

>>225 ・菊池寛 : 小説「西住戦車長伝」の作者。1939年新聞に連載

>>226 ・背後の一突き : ドイツがWWⅠに負けた理由。負けたのは兵士のせいではなく身内に居た裏切者のせいである、的な意味

>>232 ・休戦の客車2419号 : WWⅠで1918年に休戦協定が結ばれた場所だったが、1940年フランス侵攻に成功するとヒトラーは博物館から同じ車両を引っ張り出し、全く同じ場所で独仏休戦協定を行った
     ・これを鍋として使えと : シュタールヘルムはその素材と形状から非常用の鍋となった

>>233 ・おお わが宿よ 楽しとも たのもしや : 「埴生の宿」の歌詞。原曲はイングランド民謡「Home! Sweet Home!」。映画「ビルマの竪琴」で「一緒に日本へ帰ろう!早く入って来いよ!」のシーンで流れる

>>235 ・パラシュート無しで飛び降りたいのかしら : ソ連はパラシュート無しで降下作戦を行ったことがある。1942年2月、現在のカルーガ州ユーフノフ西方、飛び降りた約1000名のうち半数が負傷。そこへドイツ軍の反撃が

>>237 ・言論の自由~ : 国連を作るにあたり提案された。元はルーズベルトが表明した民主主義の原則。4つの自由
     ・かような考え方で~ : ポツダム宣言受諾。外務大臣重光葵の陛下への内奏「かような考え方でこの文書に調印し、その上でこの文書を誠実かつ完全に実行することによってのみ国運を開拓すべきであり、またそれはできることと思われます」

>>238 ・16個ある分校舎の分まで発言権 : スターリンの、国連を作るにあたっての注文。当時ソ連邦は16の自治共和国から成り立っていた
     ・拒否権はあった方がいいかもね : スターリンとの妥協案

元ネタ解説は以上になります。長々と失礼しました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月08日 (木) 19:57:30   ID: tk4G5F3V

元ネタ細かいなー

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