【艦これ】鎮守府料理人 (92)

人間が一か月間に飲み食いする糧は1人100キロ弱。
日本から遠く離れた鎮守府では途中で無くなったからと言って
近所のスーパーに走ることはできません。
当然、あらかじめ持っていった食材・飲料水が基本。


鎮守府にはおおよそ150人ほどの人が生活していて
半数近くが小柄な幼女
そのため少なく計算されているとはいえ
150人の胃を賄うだけの食糧

一月にするとおおよそ13トン

その量はとても膨大でした。

まぁ速吸が昔積んでいた量に比べれば些少なものですけどね えっへんo(*^▽^*)

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鳳翔「さて お夕飯はどういった料理に致しましょう」

上役より何回となく聞いた問いを受け
先ほど同僚と相談した結論を答えます。

速吸「はい! 洋風ディナーがいいです!」

大鯨「馬鈴薯がそろそろ危ないんですよぉ~ 使いたいですねぇ」

速吸「お肉があればバーベキューにしたいんですが」

鳳翔「あらまぁ芽が」

150人分の食材は膨大であるため調理も輪番制というわけにはいきません
食材の管理があるからです

何十人もが好き勝手に料理を作ると当然余る端材が出るし
各人が人数分、得意料理を振舞われては使われなく痛む食材が出てしまいます

補給は三カ月に一度程度
13トン×3=36トンを腐らせないように上手に使いまわさないと…


また、栄養状態の管理ができないことも輪番制ができない理由
毎食カツカレーや玉子焼きではコレステロールがヤバい

「気合! 入れて!!」 胃もヤバい

「秋刀魚はこうやって、丁寧に焼きあげて」 臓器に悪い

「Admiral うなぎのゼリー寄せを」 見栄えも悪い

色々な意味で悪い


速吸「えーと おじゃがは焼いて」

鳳翔「昨日の余りのお豆腐があります」

大鯨「豆腐ステーキにしますぅ?」

速吸「それ昨日と被ってないですか」

鳳翔「ふむ では豆腐と馬鈴薯をすりつぶしてグラタンにしましょう」


結局のところ全員分の食事を一度に作り
3か月スパンにて食材を計画的に使わなければ

そのための炊事・衛生責任者が要る

主戦部隊でなく、計画性があり料理も作れる
鳳翔さんがその任を受け持つようになったのは必然であったのかもしれません

彼女は配膳・食器洗いなど単純作業要員として幾人かの妖精さんを
さらに複雑作業。調理士として私、速吸と大鯨さん。2名の艦娘を指名

速吸「間宮さんほどじゃありませんけどお料理は得意です!」

大鯨「潜水艦の子たちでご飯のお世話は慣れてますよぉ」

速吸たちはそれが意味するものも知らずに受け入れました…
だって艦隊の皆さんのお役に立てると思ったから…



限られた食材と特殊な環境の中で
兵士たちの数少ない楽しみである食事の供託。

ただの日常業務に見えて
それはあまりにも苛烈であることも知らずに…

例えばある一日の光景を見てみましょう

カーン カーン カーン

鳳翔「駆逐艦のみなさーん朝ご飯の時間ですよ~」

フライパンをお玉で叩く金属音は3回ほどで聞こえなくなります
叩くのを止めたわけではありません

野獣…こほん
淑女たちのドタドタという来襲の先触れ音によってかき消されているだけ
濁流に飲み込まれるように席は埋まり
餓鬼の大群は列を争う

「深雪さま一番乗りぃ!」

「いっちばーんは譲らないよ~」

「おそーい」モグモグ

ガキ×訓練=ハラヘリ魔人

その数80余り
対するは3人 圧倒的っ…圧倒的戦力差…っ
も、もう無理ですぅ…はぁ…


無論、バイキング形式にしたり一列に並ばせて配給方式したり
回転を速くする施策は講じているのに
それにしても数が多い 戦いは数だよ 風早

「オウ、朝飯Aセット一つ……ってやんでぇーべらぼうめぇ! 15分待ちたぁどういうことでぇ!」

「ご飯出てこない…… ひもじい… もういいよ……。別に。」クスン

「おかわりおそーい」モグモク

腕がつるほどの速度で調理をしても到底消費には間に合わない

配膳の妖精さんたちもてんてこ舞い
80人とはそういう数なのです

そして駆逐艦たちが終われば次は軽巡や重巡たちその後は食う母などが控え
まさに戦場
昔を思い出します…あんまし戦ったことないけど
全体を5つに分け30分交代で提供をしているため6時から8時半まで戦場は続く

そして8時半からは一分も休む間もなく下ごしらえを開始
11時から2時間半の間 もう一度同じことを繰り返すからです

ちなみに1時半からも一分も休む間もなく同じことを繰り返します
5時から二時間半 再度同じことが起こるからです

そして7時半
日に3度の難関を乗り越えると…また休む間もなく夜食と朝食の支度を開始
それが365日続く
一日の休みさえ許されない

終わらない戦い
提供する人数は増えるばかり、一向に改善の余地無無無
本当に過酷……で3人では追いつくわけのない業務が成り立っているのは

鳳翔「やるときは、やるのですよ」シュパパパパ

大鯨「嘘… わたしぃ鳳翔さんの手が7本も8本もあるように見えますぅ…」

大鯨「目がおかしいのかなぁ」

安心してください速吸もそう見えます はい

鳳翔「誰か取り皿15枚 あと塩コショウを」

あの速度で手を動かしながらの正確な指示……


そう
成り立っているのは
大黒柱。鳳翔さんという女性がいるから

この方がいるから


鳳翔「ふぅ… 50人前完成。大丈夫ね」

鳳翔「では配膳をお願いできますか?」

大鯨&速吸「はい!」

なんて頼もしいんでしょう

速吸たちも皆もこの鎮守府の食を取り仕切る彼女に尊敬の念を持ち
こう呼びました

「女将さん」と


言われると本人は嫌がっているようですが…はい

目標
GW中に終わる

速吸「女将さん! 米がもうありません! どうしましょう?」

鳳翔「冷凍庫の中に粟と稗があるので解凍しましょう あと名前で呼んでください」

大鯨「あのぉ おしんこがもうないんですぅ」

鳳翔「おしんこがなければ紅ショウガを出せばいいのです」

妖精さん「サラアライ マニアワナイ ソノママノセテイイ?」

鳳翔「紙皿を使いましょう この南方の湿度で残飯はなりません」

配膳の皿はまちまち。見栄えや色彩も決して華やかとは言い難い
それは雑な対応に見えるかもしれません

しかし女将さんは知っています!
デリカシーなどという糞の役にも立たないものを発揮していては皆が飢えてしまうことを

ここはレストランではない
軍の食堂
大切なことはとにかく安定した食事の供給その次に衛生と栄養
そのためには多少のことなど犠牲にして構わない。

炊事係を務めること幾年
その理論は経験から生み出されたその場の正解…

無論、その正答に対する反論は雨後の筍のように生まれます

特に多い批判としては「食べたいものを食べさせてもらえない」というものです

足柄「肉!! お肉を食べないと力が出ないのよ!」

大鯨「ごめんなさぁい 今月のお肉供給予定はもうないんですぅ」

足柄「しょ しょんなぁ…」

那智「仕方あるまい 我儘をいうものではないぞ ところで…酒は」

速吸「はい! 今月分の供給は終了です!」

那智「しょしょしょしょんな……」

羽黒「姉さんたちが溶けちゃった…」

妙高「はぁ…」

妙高「食べ物一つでもう」

妙高「……というかお酒なしでのんべぇ勢は反乱とか大丈夫なのですか?」

大鯨「えっとぉ 鳳翔さんが交渉中みたいですね」

速吸「同時に工業用アルコールの禁止も交渉中で」

妙高「…敬意を」

速吸「頑張ってとしか言えないです」


個々の要望にこたえるのは難しいんです すいません


明石「今朝は牛丼の気分!」

龍驤「せやなぁ チーズ牛丼が食いたいわぁ」

時雨「僕はおろしポン酢牛丼が」

鳳翔「今朝はAセットが納豆とおしんこ Bセットたまごかけご飯とポテトサラダ両方味噌汁付きになります」

明石「おーにーくーのきーぶーん」

鳳翔「AですかBですか?」

明石「うう冷たいぃ」


龍驤「まぁーしゃーないわなぁ Bや」

大鯨「はーい どうぞ~」

龍驤「どうも さーて玉子を割ってかき混ぜてご飯に~ってコレゆでたまごやないかい!!!」

大鯨「月火水木」

鳳翔「衛生的に南方で生卵は認められません」

龍驤「ゆでたまごをご飯にかける… そな殺生な」

龍驤「……」

龍驤「しかも堅茹でかぁ!!!」

時雨「僕はAセットにするよ」

大鯨「まいどどうもぉ~」

時雨「ありがとう ……あれ?おしんこが…紅しょうがに見えるんだけど」

大鯨「おしんこは切れたので代用ですよ~」

時雨「……」

時雨「君たちには失望したよ」(真顔)

時雨「タダのものをメニューとして出すなんて…」

大鯨「だから牛丼屋じゃないんです~」



鳳翔「艦娘1人1人の要求に答えていては仕事が回りません」

速吸「牛丼は当分予定なーし!」

『ギュウドン…ナイ…ノ……?』

鳳翔「…」

鳳翔「まぁ艦娘でなければ」

明石「おい」

まったく答えないわけではありませんが はい

また同じくらい多かったのは食事の提供速度と量……

赤城「すくな」

加賀「すぎて」

蒼龍「みえ」

飛龍「なーい」


大鯨「せ、潜水艦の子たち何人分…」

あっ。大鯨さんが潮じゃなくて泡吹いた

鳳翔「本日の白米は終了です 雑穀タイムに移ります」

赤城「白くないお米…親の顔より知ってる子ですね」バクバク

加賀「さすがに気分が普通です」バクバク

蒼龍「やだやだやーでもない」バクバク

飛龍「たとえ雑穀になっても、我慢して見せます!」バクバク


鳳翔「……」

鳳翔「本日の雑穀すら終了です 霞でも食ってろタイムに移ります」


赤城「ペロペロ」

加賀「ペロペロ」

蒼龍「ペロペロ」

飛龍「ペロペロ」

お腹を満たすほど食材を提供できないのは心苦しいところ

仕方ないんです色々足りないんです

それでも速吸たちは頑張りました!

食材を多く見せるため同じ野菜でも切り方を出し方を変え
様々なメニューへと昇華させてみたり

少ないお酒を多く見せるため水で薄めてみたり

霞ちゃんに蜂蜜塗ったり

提督さんに頼んで間宮から食料と人員徴発してもらったり

とても忙しい険しい苦しい調理場



それでも時間に余裕のあるときは相手に合わせて調理法を変えてあげて

できるだけ工夫するんですよ!

霰「…ピーマン……苦手…なの」

山雲「え~っと~ ごめんなさいこれは~」

満潮「ふんっ! ピーマンなんて…ウゲッ やっぱり駄目ぇ」

大潮「唯一の楽しみの時間なのに気分サゲサゲ…」

4人「キラキラキラキラキラ」(他のものが食べたいという純粋な眼差し」

大鯨「うぐっ」

速吸「ああっ 潜水艦におねだりされるとお菓子をあげちゃう人がやられた!」

大鯨「確か冷凍のハンバーグがまだストック…」

速吸「だめっ それはMVP用とっておきの残り少ないお肉」

4人「キラキラキラキラ」(私たちをイジメルの?という純粋な眼差し」

速吸「ぐはっ」

鳳翔「好き嫌いをすると大きくなれませんよ?」

大鯨・速吸「お、女将さん!」

霰「だって」

山雲「や~です~」

満潮「…がんばる」

大潮「ご飯くらい好きなもの食べたーい」

鳳翔「…ふぅ 仕方ありませんね 本日は手も空いていることですし」

~再調理中~

鳳翔「細かく刻んで濃いソースで炒めなおしました」


霰「これなら…まぁ」

満潮:水で流しこんでいる

大潮「わーぁ 大丈夫でーす」モグモグ

大鯨「まぁ! さすが鳳翔さん」

速吸「えーとあと一人は…」

山雲「だからや~です~」

山雲「こんな古くて不味い野菜なんてや~」

山雲「新鮮な生野菜が食べたい…」クスン

鳳翔「…」

あー

ちなみに「食べたいものを食べさせてもらえない」という不満の根源は補給頻度不足にあります。

皆さんいい子たちですもんね
それなりに要求に答えれば文句は言わないんですよ はい

ただ3か月に1度の補給で要望に答えるのは… 無理…かな?

大体いつも

【補給到着直後】

「ひゃっはー 補給だぁ! 新鮮な肉だぁ!! 酒が進むぜぇ!」

【補給到着一か月後】

「最近…缶詰多くね? まぁ酒のつまみになるぜぇ!」

【補給到着二か月後】

「最近…なんか料理匂わね? まぁくさやはいいつまみだぜぇ!」

【補給到着二カ月半後】

「最近…飯少なくね 一昨日食ったでしょ畜生 酒も切れたぜぇ!」

【補給到着二か月と二八日後】

「……乾パン3枚で一日分か」

って感じ

畜生。お水入れて1人13トンは平時の話であって
このメンバーが肉体労働してて一月間に合うわけないです!

食べるものは絶対量が足りない

ましてや新鮮な食材なんて望むべくもなく…

山雲「クスンクスン」

泣いている子供の願いを叶えることなんてとても

鳳翔「新鮮な生野菜ですねわかりました」

えっ?

いや、そんな、いくらあなたでも、ないもの…は

鳳翔「こんなこともあろうかと鎮守府裏にて畑を作っていました」

スゲー! この人スゲー

鳳翔「はい新鮮なパクチー」

山雲「オンリ~?」

そういえばたまにあるわけがない新鮮な食材が出てくることがあり
不思議に思うことがありました

まさか畑まで作っていたなんて…

鳳翔「正規の補給で賄えない分は現地調達が基本ですので」

鳳翔「ふふっまだ量を出せるほどのものではありませんが」

鳳翔「なかなか南方の気候に合うものが見つからず」

現地調達ですかー
凄いなぁ

………だから一昨日。品切れのはずのお肉出てきてあれなんの肉ですか?

鳳翔「ふふふふっ」

うわぁ 弓抱えてる

『農業』

鳳翔「知られたからには手伝って頂きます」

鳳翔「もう少し形になってからと考えていたのですが」

その日から仕事が増えました



鳳翔「パクチーにはお水をたっぷり タロ芋にはさらにたっぷり」

速吸「はい! 女将さん!!」

鳳翔「種もみを植えたら害虫に気をつけること あとこれもお水たっぷり」

速吸「はい! 速吸水汲み行ってきます!」

鳳翔「いえ、土手を切り崩して川の水を引きます」

鳳翔「家庭菜園ではないのですよ?」

農業はやってみると非常に体育会系のお仕事でした!

大鯨「わたしぃ…多分文化系……」

あっ。大鯨さんが砂浜に打ち上げられた顔になってます

大鯨「ピチピチ…」

あっ、倒れこんだところに虫がたかりだした

大鯨「きゃあーーー!!」

農業と虫はワンセット
あの人なんか全身から甘いミルクの香りがしますもんね

鳳翔「速吸さんからもレモンのハチミツ漬けの香りがしそうね」

??? なんで?

鳳翔「さぁさぁ手も動かして。ネコソギエースとダイアジノンを撒いてくださいね」

はーい

農薬はたっぷり使います

熊野さんあたりがごちゃごちゃ言っていましたが
手作業で除草とか防除なんて時間が有限なことを忘れています
この農園で150人分の野菜を賄わなくてはいけないので

「急募 アルバイト」

農業をも開始したことでリアルに人手が足りなくなり…
手伝ってくれる艦娘をもう一人増やすことになりました

これまでも募集はしていたんですが今度は本格的に採用に動きます! はい!

ちなみにこれまでは
「後方支援が得意」という子を採用して
3日目に「無理です マジで」と辞表を出されたり

レベル99で暇そうな子が悪夢慣れしているというので採用して
「この労働環境じゃじゃあ働けないっぽ……働けないです」と辞表を出されたり

ブラック企業戦士みたいな瞳をした姉妹を採用して
「あっ 空を見上げる時間があるだけ幸せでした」と辞表を出されたり

たどたどしい日本語が可愛いフレンチ担当を採用したら
「ニホン人オカシイアルヨロヨシ!」と中国人みたいなこと言い出されたり

だけど今度は大丈夫!!
なぜなら待望の即戦力新人! ゴールデンルーキーが加入しているから!

速吸「カムイちゃん! 速吸たちと一緒に働きましょう!!」

神威「かむい? どなたですか? ラッコ鍋を仕込む作業があるのでこれで…」

速吸「あれぇ?」


この人だと思ったのに
間違えちゃいました
今回新人さん多いからなぁ… かむいちゃんはどの子かなぁ? まだ着任していないんでしょうか?

『狩猟・採集』

鳳翔「罠でリスが取れました」

大鯨「まあ~! かわいい~」

鳳翔「ではまず皮を剥きます リスの毛皮は切れ目を入れれば服を脱ぐように綺麗に剥けますね」

大鯨「」

鳳翔「脳みそは珍味だそうです」

大鯨「」

oh バタリアン


「戦闘部隊は人語を解する相手を解体しているのでこの程度耐えるのです」とは鳳翔さんの弁ですが
速吸たちは無理です根本的に戦わないです物理は嫌
あ、大鯨さんが潮じゃなくて女の子が出してはいけないものを口から吹いてる


鳳翔「チプタク♪ チプタク♪」



速吸たちは大人しく木の実でも拾うことにしましょう

くるみ…食べれる
トチノキ…食べれる
アケビ…食べれる

どんぐり…どうだろ?

速吸「食べられると思いますか?」
大鯨「えーっと…無理かなぁって思います~」

速吸「じゃ。ぽ~い」
「ふざけるなぁあああああああああああ」

へっ?

雪風「ニホン人オカシイアルヨロヨシ! クジラなんか食べないでどんぐり食べようそうしよ「あら? まだリスさんが」

鳳翔「チプタク♪ チプタク♪」

雪風「……雪風は沈まな」

鳳翔「つみれは沸騰してから鍋に入れると沈まないですね」

雪風「あっはい」

弓をつがえた鳳翔さんを見て
雪風ちゃんはオソマを漏らしそうな顔でへたり込んでしまいました

そして矢は放たれその…横に居た野生のリスの脳天を直撃

どうやら雪風ちゃんはリスではなくビーバー認識されていたようです
カワウソじゃなくてよかったね

鳳翔「ああっ 胴体を狙ったのに」

鳳翔「脳みそがこぼれないうちに早く食べてください! さぁ啜って!」

雪風「」

…助かった

鳳翔「目玉はお二人で食べていいですよ?」

速吸&大鯨「えっ」

『漁業』

大鯨「爆弾投げまーす」ヒョイ

ドカーン

大鯨「はーい 雪風さーん 潜水艦の子たちー 回収お願いしまーす」


「はーい」

人には向き不向きがあるものでこれは大鯨さんの独壇場でした
法律?

まぁ あの その 緊急避難というやつです!

臨時アルバイトを集める手際は見事の一言

漁獲高の想定は…!!

速吸「いやぁ ここまで頑張れば」

睡眠時間を削っての早朝農業
本日は一日二食でござる昼食をお休みにしての狩猟・採集
おじいちゃんご飯は昨日食べたでしょ。断食日を設定しての漁業

皆に我慢を強いた結果は……
なんと秋刀魚など魚が数百匹
リスが5匹にイノシシと熊が2頭づつ。シカとウサギ。ビーバー1頭(労働力)木の実がわんさか。
鳳翔さんの頑張りを収穫して農産物も3人が腕一杯に抱えて5往復するほど

さあもう食糧事情は解決……それらは150人を前にして約3食程度にて消え去りました

あんなに頑張ったのにたった3食…

「新鮮な食材が食えるっていうのは、ありがたいことだな。幸せだ」

「熊カレー! これは蝦夷の誇りっす! 次はアザラシで頼むっす!」

なんて褒めてくれた人がいたのは嬉しかったけど
大多数は淡々と食べてなにもコメント無し

モチベーションなんて保てません はい

中には

「美味いけど量がすくねえ」

「棒受網で採りました? この秋刀魚どうも身がぐずぐずで」

「リスさんを食べるなんて残酷なのです」

なんていちゃもんをつける人達も

採って作って出してお皿まで洗ってあげてるのに何様なんですか!
と、温厚な速吸ですら怒りそうになります

鳳翔「ごめんなさいね 次はもっと狩りますから」

鳳翔「うーん では次は爆弾ではなく電気を使います」

鳳翔「すいません泣かないで泣かないで、ね?」

しかし一番苦労しているであろう人が
怒気を出さずに受け答えしているんだもの 速吸たちが怒るわけにはいきません…

全員の食事が終わった後
残り物で3人前を作って
疲れ果てているので無言で食べるときの虚しさ

それでも一番大変な人が弱音の一つも言わないのであれば

鳳翔「ごちそうさま では罠の様子を見てきますね」

タフだなぁ…

『ベストな料理を大公開』

鳳翔「和食は肉じゃがとほうれんそうのごま和えに豆腐のお味噌汁と天ぷらです」

速吸「洋食の人はビーフシチューとビフテキ ビフが被った? もひとつビーフストロガノフ!」

大鯨「カレーは大鯨特製! フーカデンビーフ・カツ・ハンバーグ・エビフライ乗せ~♪」

「「「「ふぉおおおおおおおおおおおおおお」」」」」

※今日は補給到着日。

赤城「鳳翔さん……ここ…戦場ですよね?」

赤城「こんな…こんなの知らない…」

加賀「気分が…気分が…」

蒼龍「大物狙い…いや、でも確実に確保を…? えっえっ?」

飛龍「慌てないで 動きのキレが落ちちゃいます」

加賀「そうね。その通り」

赤城「さぁこの5分間のために生きてきた!!」

※さすがに腹一杯食われると困るので時間制限を設けています。

神風「この匂い…カツカレェ…」ジュルリ

朝風「よしっ 和食だ和食だぁ! たまの贅沢食い逃すかぁ」

春風「それではハイカラを選択いたしましょうか 久方ぶりのお肉です」

松風「姉貴? どうした? これは何だ?」

朝風「あんたは前回の補給時いなかったっけ?」

神風「エビフリャィ…」ジュルジュルリ

春風「5分間だけ 全く儚いものですわ」

松風「???」

1人5分間 食べ放題タイム開始






大破3名 中破5名を出しつつ無事に終了


~食事時間終了後~

速吸「今回も大好評!!」

大鯨「皆餓鬼みたいで手掴みで~ 提督には見せられない姿でしたー」

鳳翔「本当にお疲れ様でした。では食べ切れなかった分は冷蔵庫に」

鳳翔「明日は各自これをチンしていただくので調理班の2人はお休みです。」

大鯨・速吸「はーい」

3か月に1度のお休み
嬉しい!!
な~に~を しよ~かな~

~翌日~

速吸「はれぇ? 大鯨さんお休みなのになんで農園に」

大鯨「ちょっと様子を… 速吸さんは?」

速吸「速吸は…その 雑草が気になって…」

大鯨「一緒ですね♪」

鳳翔「そろた 出そろた さなえが そろた♪ 植えよう 植えましょ…あらっ?」

鳳翔「お二人は今日…お休みのはずでは」

怪訝な顔で植える苗を抱えていた鳳翔さん
速吸たちは笑いながら、その荷物を受け取りました。

『一か月経過』

補給から一カ月経過!

最初に無くなるものはなんだろななんだろな

お肉? いえいえ冷凍しておきます

お野菜? 現地採集で何とか。そもそも冷凍不可なものは輸送の段階でOUT大根とか懐かしい

お魚? 同上

正解は~

『甘味』

ええ、盗み食いですねはい

主食は盗み食いされても満腹になるのでたかがしれている

お酒は常温でいいので隠しようがある

甘いものは…南方の鎮守府だと冷蔵庫に入れざるを得なくてそこに鍵はなくて
別腹で皆女の子で食べると余計に食べたくなって

甘味 『全 滅』

影響としては
阿賀野←☆が出ない

間宮←仕入れ先は鎮守府食堂

金剛←ティータイムがティーだけ

その他もろもろ←毎晩甘味の夢を見る

まぁ夢を見たところで甘味は存在しないんですが
だって全滅しているもん

しかし何事も例外は
その例外をも狙う奴らも

ガサガサ
ゴソゴソ

パチッ←電気付け

「ふぇぇ」

また今日も泥棒猫が
常温商品は調理班の寝床の傍に置くから盗み食いは困難です

暁「た、食べてないもん! なにも食べてないもん!!」

ちっちゃな猫さん
お口の周りには常温保存が可能な小分けのピーナッツクリーム

響「作戦失敗」

雷「もー。だから持って帰って食べようって言ったのにー 暁のバカー」

速吸「さぁ出して出して!」

電「ううう、ごめんなのです」つジャム

雷「はい」つマーマレード

暁「…ごめんなさい」つ食べかけピーナッツクリーム

パンにつける系統の小分けシリーズは常温保存可能で甘く
この時期狙われがちな商品

速吸「はい では皆さん甘味窃盗罪で確保します!」

速吸「暁ちゃんは食べてしまったので甘味損失罪も含めて3食 他の3人は2食!」

速吸「抜き!」

雷「一食の差かー ……なら食べちゃおうかしら」

電「駄目なのです、明日の朝昼は抜きとして夜はカレーの日なのです」

雷「そうだったわね 危ない危ないギリギリセーフ」

暁「暁はギリギリアウト…」

暁「カレー食べたい…」

速吸「仕方ない 駄目です」

響「……異議あり!!!!」

おやおや?

響「これは正当な判決とは言えない。異議と罪状の軽減を申し立てる」

暁「響…」

暁「そうよ! 3食は重すぎ」

響「3人は甘味を盗んだから当然として私はほら、これだ」つズブロッカ

響「酒の窃盗罪は甘味より軽い 未開封で返却を行えば1食抜きのみのはずだ」

響「違うかい?」

速吸「ぐぬぬ」

速吸「だ、だけど酒の窃盗は鳳翔さんのお説教が付きますよ」

響「ふっ、構わないよ」

響「ただ『めっ』ってされるだけなのだろう?」

ええそうですね

但しめっ はめっでも 『滅っ』なのですがそれは知らぬが花というものです
食事抜きでも応えない方々がいるので

舐められるのはピーナッツクリームだけで十分
食材の管理はなによりも重要な仕事なので…
当然。罰も

うひひひひ。世の中食を握っているものが一番強いんですよ

『ようやく見つけた新しい仲間は』

神威「水上機母艦となった神威です」

神威「カムイではありません」

神威「甲標的 いいですね」

速吸「…」

改造済み……! 圧倒的… 瑞雲……!

恥を知れっ……!
補給艦なら最後まで補給艦でいろよっ……!

あと少し…
あと少し早く会えていたならば…


神威「素敵な装備です」

目先を追うなっ……!
いい加減気がつけっ……!
現状に耐えることなくして
勝利はないんだっ……!

個性的でいい、個性的でなきゃダメだ…狂ってなきゃ、逸脱してなきゃ役割は持てない…!
常軌を逸してこそ開かれる、ニッチへの道が…!
洋上補給…個性を捨てるなっ……!!!

いいじゃないか…!補給艦で…!熱い補給艦なら、上等よ…!
まるで構わない…!構わない話だ…!
だから…恐れるなっ…!
繰り返す…!戦えないことを恐れるなっ…!

神威「この装備のお陰で改母になるまでのレベル上げが楽でした」

……へ?

神威「中型バルジも積めるようになりこれでしっかりと積み荷が守れます」

神威「速吸さん どうしてあなたは補給艦なのに艦攻を? 戦いへの色気があるのですか?」

速吸「あっハイ」

神威「第一補給する側なのにその燃費はどういうことですか? もっと本来の役割を鑑みて」

少しピンチです
主にニッチに勝ち取っていた速吸の地位が

とりあえず調理より食材集めのほうが得意そうな顔をしているのでそちら専属になってもらうこととします。

神威「兎が取れました はい、心臓を生でどうぞ」

速吸「はぁ~ん」

神威「ではチタタプを」

神威「速吸さんはチタタプ処女ですか? 非処女なのですね」

神威「おお~、さすが非処女 上手いじゃないですか 経験豊富ですか~ ああ~」

やめて

とりあえずは大戦果
なかなか有能っ子な模様

大鯨「すごいですねぇ~」
大鯨「私も2段階改造すればハイパー潜水母艦になれたりするのかなぁ?」

ルート固定と言う個性を失うだけです

『甘味を作ろう』

前回の補給から2カ月が過ぎ
常温保管のマーマレードやピーナッツバターもなくなって
甘味と言えば麦飯を数十回咀嚼した麦芽糖の甘みしか存在しない世界
女の子は甘みに飢えていました

舐めると甘そうな大鯨さんやろーちゃんはよくペロペロされていました
いいぞ。もっとやれ
そんな時です

鳳翔「甘味…カルメ焼きでも作りましょうか」

ええっ?
いくらなんでも無いものは作れな
鳳翔「サトウキビがよく育ってきましたので」
あなたが神かーーー


鳳翔「ではさとうきびを1キロほど刈ってきました」

大鯨「わぁ~ いっぱーい」

鳳翔「ではこれをまず…粉砕します」

鳳翔「本来は石うすを使うところですが夕飯のお時間もあるので今回は武蔵さんを使います」

武蔵「フッ。任された」

鳳翔「武蔵さんが握り潰したサトウキビの粉を」

武蔵「くっ 繊維が刺さって痛いぞ」

鳳翔「少量の水に入れ、絞ります」

速吸「うーーーーんしょ」


鳳翔「その絞り汁を3時間ほど 加熱。余計な水分を飛ばして」

大鯨「これで終わりですかぁ?」

速吸「なんかドロドロしたゲルみたい」

鳳翔「これを加熱し砕き。加熱し砕きそれを繰り返すと水分が除去されて」

鳳翔「黒砂糖の完成」

大鯨「わーぁ 甘ーい」

速吸「優しい甘さですね ねっ?」

鳳翔「1キロからおおよそ80gほどの砂糖が取れます」

鳳翔「カルメ焼きには1つに砂糖を40g×人数分」

大鯨「サトウキビ1キロで2つ えーと150個作るとして~」

武蔵「つまり茎75キロを粉砕? はははっ…ちょっとトイレに」

鳳翔「子供たちの笑顔が見たくないのですか?」

武蔵「助っ人を連れてくる」

その晩
一人の駆逐艦が声を上げます
「なんだか甘い匂いがするよ!!!!!」

「ばかな」
「ありえない」
「もう砂糖なんてないんだよ」
と周囲は宥めますがその子は譲りません

「あたしのお鼻は敏感なの! ぜーったい 絶対これは砂糖の匂い!!」

そんな言い争いをしているうちに続々と他の子も


「クンクンクン …確かに甘い匂いがするっぽい!!!」

「するにゃしぃ… どこにゃしぃ…」

「キタコレ!!」

と、その匂いに気が付きはじめ

そこでバタンとドアが開き
人数分のカルメ焼きを持った速吸たちに300個余りの目玉が集中

そのうち何人かは神様でも見たかのような表情でこちらを拝み…

全員を着席させその前にカルメ焼きを置いて
あと2分ほどで遠征の6人が戻ってくるからせっかくなら皆一緒にと
「待て」の命令
ダラダラと涎を垂らす者も決して少なくはなく

そこでまたしてもバタンとドアが開き
さぁ、待っていた遠征組のご帰還だ!

「おい、ヤベーって!そこの島に鉄とポーキが大量だよ、採りに行こーぜ!!」

「……ってなんだこの匂い」

「フミィ! フミフミ!!! フミミィ!!」
「に、日本語でおk」

「早く席に付いてよぉ! 皆待ってるの!!」
「で、でも資源がよぉ」

「資源は逃げない!」
「は、はい」

みんな揃っていただきます。

ただのカルメ焼きなのにとっても美味しく感じました

これは自分たちも甘味に飢えていたこともあるでしょうが
皆の笑顔 これが最高のトッピング
料理を作る側だけの特典ですね。と語る鳳翔さんはとてもキラキラしていました。

『飢餓との戦い』

さてとうとう来ました

マラソンで言うと33キロ地点。
野球で言うと完投ペースで投げている8回。リリーフが肩を作るのを止めた時
サッカーで言うと後半35分。相手がフレッシュな選手を出してきた時
ジャンプで言うとアンケートの取れない7週目

一番辛い時間帯
3か月に1回の補給から…2か月と21日が経過した時

まともな食糧の備蓄が切れるころです
あと一週間も耐え抜けばどうにかなるのですが
2日程度なら断食しても死にませんし

鳳翔「では残りの食材をまとめましょう」

鳳翔「まず前回補給物資の残りについて」

速吸「はい! 麦と米の混合物が3俵 乾パンが300食 干物や缶詰が少々」

鳳翔「1200合と300食 おおよそ1人に12食分程度でしょうか あと10日…」

鳳翔「しかし農業部門にて芋が500本・インディカ米が5反分ほど収穫できる見込みがあります」

神威「狩猟部門は一日100キロ程度の肉を供給可能」

大鯨「漁業部門は潮の流れによるんですけど~」

大鯨「でもパンガシウスとかスネークヘッドとかは採れないことはないかと~」

速吸「た、食べれる魚?それ」

鳳翔「ふむ まぁ10日程度の食材は用意できそうですね」

鳳翔「農耕狩猟漁業 3本柱がボディーブローのように食材倹約に役立ちました」

鳳翔「この段階で3俵も余しているとは素晴らしいことです」

以前は補給到着前になると大変ひもじいものでしたが
屯田兵というのは優れた制度ですね

まぁこれで安心
現地住民からの徴収や危険の大きい駆逐艦食材入りドラム缶鼠輸送などは実行不要
それらは最終手段です

さてあとは昔の速吸のような超大型船
コンテナにての山盛り補給を待つばかり……

提督「その…あの」

って提督さんが喋るの珍しいな?

「提督?」

提督「今…入電があって」

提督「本国からの補給船が……途中…襲われて」

提督「次回の補給到着時期は未定」

提督「食料については自活せよ…だって」






マジで?

あ、これもう駄目だ。
公立校が初戦シード落ち私学に当たったときのアレだ
おしまいだ

誰もが打ちのめされるその通知
これはメラゾーマではないメラだ

大鯨さんは涙を流し
神威ちゃんは神に祈り
提督はただただ無能で
速吸は指一本だって動かない

それを受けて 

そして

なお

鳳翔「そうですか」

彼女は表情を崩さず
弓を抱え

鳳翔「では一狩りいきましょう」

前を向いていた

どうしてだろう
頭ではわかっているのに
無理だとわかっているのに
150人分の食料なんて湧いて出てくるわけがないことは分かっているのに
彼女が動くと

自然に…体が…

速吸・大鯨・神威・提督「イエス、マム!!」

動く!!



俺たちの第一次産業はこれからだ

鳳翔さんの狩猟が皆の胃袋を救うと信じて…

ご愛読ありがとうございました
速吸先生の次回補給にご期待ください。   艦

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年06月03日 (土) 21:12:03   ID: Ti1H8xEx

おもしろい

2 :  SS好きの774さん   2017年06月09日 (金) 00:31:32   ID: MmEp7m1e

大鯨ちゃんぺろぺろ

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