～春、鎌倉～

ｺﾞﾄﾝｺﾞﾄﾝ....

元提督「......」

元提督（....今日は妻がめでたく退院する日だ...）

元提督（........）

元提督（....長かった....本当に長かった....）

元提督（.......）

..........

........

～数年前、鎮守府～

提督「.....」

鳳翔「....どうしたんです？提督....」

提督「.....ほんの数週間前まで賑やかだった鎮守府も...だいぶ静かになってしまったな...。」

鳳翔「....そうですね...。でもそれは喜ばしいことではないですか。提督...。」

提督「..ああ..。」

提督「戦争は終わった...。そしてここの艦娘たちは全員退役...。」

提督「しばらく政府から生活援助を受けられるとしても....心配だな...。」

鳳翔「...大丈夫ですよ...あの子たちは...強い子ばかりでしたから...。」

提督「....そうだな...。」

鳳翔「提督は、これからどうなさるおつもりですか？...」

提督「あと最低１年はこの戦争の後処理だな...それからどうなるかはわからんよ...。」

鳳翔「....私はどこまでもついていきますよ...提督...。」

提督「.....」

鳳翔「私も艦娘ではなく、１人の人間となりました....。」

鳳翔「...でもこれで....提督と本当に結婚することだってできるようになりました...。」

鳳翔「提督の....本当の妻に....。」

提督「.....」

鳳翔「....」

提督「....鳳翔.....。」

提督「......結婚...しようか....。」

鳳翔「！......はい...。」ｷﾞｭｳ....

...........

～それから１年後、提督の家～

鳳翔「あと１年...ですか....。」

提督「ああ...戦時中の記録の処理がなかなか片付かなくてね。」

鳳翔「そうですか.....」ｺﾎｺﾎ

提督「...まだ病院へいってないのかい？」

鳳翔「え、ええ....少し咳がでるだけなんで...。」

提督「そう言い続けてもうひと月以上たつじゃないか..。とりあえず今から病院に行こう...。」

～病院～

提督「療養...ですか...。」

医者「戦時中の苦労がたたったんでしょうね。どうも肺の状態がよくないみたいなんですよ。」

医者「数年前に良く効く薬ができたんですけど、高価だし、数も少ないらしくて...。」

提督「.....わかりました....。」

鳳翔「....」

～それからまた１年後、鎌倉のサナトリウム～

鳳翔「そうですか...長い間お疲れ様でした...。」

元提督「ありがとう...新しい仕事にも就けたし、あとは君がよくなるのを待つだけだね....。」

鳳翔「ええ...最近体の調子もとても良いし...散歩にだって毎日行けるんですよ...。」

元提督「そうか...。」

鳳翔「....そういえばこの前、飛鷹さんと隼鷹さんがお見舞いに来て下さったんですよ。」

鳳翔「２人とも夢だった海外航路の客船の船員になったって...。」

元提督「！....そうか.....今度２人にお祝いをあげないとな...。」

鳳翔「ええ...。」

.......

～現在～

ｺﾞﾄﾝｺﾞﾄﾝ...

元提督（....）

元提督（...あれから、妻の病気は悪化して...）

元提督（７年間の療養生活....）

元提督（一昨年辺りから薬の値段も下がってきて....。）

元提督（なんとか持ち直したんだよな....。）

............

～去年の４月、サナトリウム～

ｺﾝｺﾝ　ｶﾞﾁｬ

元提督「やあ...。」

鳳翔「！....あなた....」

元提督「...具合はどうだい？...」

鳳翔「だいぶよくなってきました...。この前は海まで散歩へ...。」

元提督「そっか....薬が効いてきてよかった....。」

鳳翔「....あなた、昨日翔鶴型の２人が来てくれたんですよ。」

元提督「そうか...３年ぶりじゃないか？....２人と会うのは..。」

鳳翔「ええ...２人ともさらにきれいになって...。」

元提督「この前僕が会った時は、２人でアルバイトしながら大学へ行ってるって話をしてたよ。」

鳳翔「ええ、戦時中は毎日出撃の日々でしたから...。」

鳳翔「平和になったら２人で大学へ行くって約束していたみたいですよ..。」

元提督「....」

元提督（よかったな....翔鶴、瑞鶴...。）

元提督「！、そうそう、今日は花を買ってきたんだ....ほら...。」

ライラック
http://i.imgur.com/tfx0QT1.jpg

鳳翔「まあ、素敵ね...。」

..................

～６月～

ｻｱｱｱｱｱｱ...ｼﾄｼﾄ...

元提督「退院か...」

鳳翔「ええ、だいぶ病気も良くなったし７月にでも退院できるって...。」

元提督「よかったなぁ...それじゃあこれにも出られるな」

鳳翔「...それは？」

元提督「昨日届いたんだ。加賀さんが結婚するみたいでね..。」

元提督「来月結婚式だから、鳳翔さんも病気を治して来てくださいって...。」

鳳翔「ええ、ぜひ行きたいです。」

.............

～７月～

ﾐｰﾝﾐｰﾝ...

鳳翔「.......」

元提督「.....結婚式....行けなかったな....。」

鳳翔「....最近熱が高くて...仕方ないですよ.....。」

元提督「.........」

鳳翔「....」ﾎﾟﾛｯ

元提督「！....鳳翔.....泣いてるのか？....」

鳳翔「.....いつもこうなんです...。退院できるって話が出た途端にまた具合が悪くなって...。」ｸﾞｽｯ

元提督「.....」ｻｽｻｽ

元提督「...昨日、赤城から手紙が来たんだ。」

鳳翔「.......」ｸﾞｽｯ

元提督「...見てくれ...。」

鳳翔「....」ﾌｳﾄｳﾋﾞﾘﾋﾞﾘ

鳳翔「...手紙と...写真？...！」

鳳翔「...」

鳳翔「...花嫁姿の加賀さん、とてもきれいでしょう?」

鳳翔「鳳翔さんのご病気が治ることを、元艦娘一同、願っております。赤城...」

鳳翔「これは雪風さんの字ね...ほうしょうさん、雪風はらい年で中学生です...」

鳳翔「大きくなったらおいしゃさんになって....ほうしょうさんのびょうきを治してあげます...。」ｳﾙｳﾙ

鳳翔「まあ、龍驤さんからも...鳳翔さんのサバの味噌煮が食べたいなぁ...」

鳳翔「...はやく元気になって、またお店を再開してね。...」ｳﾙｳﾙ　ｸﾞｽｯ

元提督「.....」ｻｽｻｽ

元提督「あともう一息なんだ....２人でがんばろう...ね?...」

鳳翔「......はい...。」ｺｸｯ

..............

～９月、七里ヶ浜～

ｻﾞｻﾞｧｧ....ｻﾞｻﾞｧｧｧ...

鳳翔「えっ？お店...ですか...？」

元提督「ああ、もう退院も近いし、そろそろ決めようと思ってね...。」

元提督「君が一番好きな土地でお店を...居酒屋鳳翔を...ね...。」

鳳翔「それなら....やっぱり....この街でやりたいです..ね...。」

元提督「！...」

鳳翔「療養のためにここに来てもう８年、つらいことも多かったけど...。」

鳳翔「やっぱり鎌倉の街がとても好きなんです...。」

元提督「...そうか...じゃあここでお店を再開しよう。」

元提督「その為にもあと半年...がんばろうな...お互い...。」

............

～１０月、サナトリウム～

ｶﾞﾁｬ

元提督「ただいま...ほら、お茶を買ってきた....」

鳳翔「.....」ｽｳ....ｽｩ..

元提督「....寝たか....。」

鳳翔「....」ｽｩ...

元提督「.....かわいいな....寝顔.....」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

鳳翔「.....」ｽﾔ...

...............

寝ます、また明日。

～２月、極楽寺～

ｻｸｯ...ｻｸｯ...

元提督「...どうしたんだい？雪が降ってるのに急に散歩に行きたいだなんて...。」

鳳翔「...雪を見ていると、１０年前貴方と初めて一緒にお出かけした時のことを思い出すんです...。」

元提督「....そうか、あの時も雪が降ってたっけな...。」

元提督「雪で帰りの電車が止まっちゃって、２時間かけて鎮守府まで歩いて帰ったっけな....。」

鳳翔「ええ...あれは大変でしたねえ...。」ﾌﾌﾌ

元提督「それで途中で君が足を挫いちゃって、おんぶして帰ったんだよな....。」

鳳翔「.....ええ...。」///

元提督「....あれから１０年....か....。」

鳳翔「....ええ...。」

元提督「......。」ｷﾞｭｯ...

鳳翔「.！...。」//

鳳翔「....。」ｷﾞｭｳ....

..........

～４月、サナトリウム～

医師「それでは、お大事に....。」

鳳翔「先生、お店が開店したらぜひいらして下さいね...。」

医師「ええ、必ず...。」

元提督「長い間ありがとうございました...。」

........

ｺﾞﾄﾝ...ｺﾞﾄﾝ

鳳翔「.....」

元提督「.....」

鳳翔「.....あなた....。」

元提督「...どうした？....」

鳳翔「その...手を...握ってもらっても...いいですか？...。」///

元提督「.....ああ..。」ｷﾞｭ

鳳翔「.....。」ｷｭ

鳳翔「....これで...止まっていた時間がまた動き始めましたね...。」

元提督「......そうだな.....。」

ｺﾞﾄﾝ.....ｺﾞﾄﾝ.....

～極楽寺駅～

元提督「ここから歩いてすぐだよ...。」

鳳翔「まあ、静かでとても良いところですね...。」

元提督「ああ......」

鳳翔「..あっ..提督...。...桜が...。」

元提督「....おお...満開だな....。」

元提督「まるで僕たちの新しい生活の始まりを祝福してくれているようだな....。」

鳳翔「....ええ....。」

元提督「....さあ、行こうか。今日は金剛たちが退院祝いに来てくれているんだよ...。」

鳳翔「！...はい...あなた...。」

.....................

おしまい