藤原肇「触れず、踏まえた二人の距離で」 (28)


これはモバマスssです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493972705


カタカタカタ、ッターン!

P「…ふぅ、ようやく一息」

ちひろ「お疲れ様です。コーヒー淹れましょうか?」

P「いえ、大丈夫です。そろそろ…」

ちひろ「そろそろ…どうかしましたか?」

P「肇が、帰ってきてくれると思うので」

ガチャ

肇「お疲れ様です。レッスン終わりました」

ちひろ「わぁ…流石ですね」

P「どやぁ」

ちひろ「うわぁ…そんな杏ちゃんみたいなドヤ顔をいい成人男性にされても…」

P「…すみません、正直自分でも引いてます」



ちひろ「成る程、肇ちゃんが帰ってくるのを分かっていたから…」

P「はい、ちひろさんが淹れてくれるコーヒーも好きですが、肇がいつもお茶を淹れてくれるので…」

ちひろ「羨ましいですね、そんな関係」

P「俺もレッスン終えた肇のために、どら焼き買ってきてるんですよ」

ちひろ「まるでおしどり夫婦ですね。押せ押せですね」

P「っと、お疲れ様肇。悪いんだけど」

肇「あ、すみません。今日は私、早く帰らないといけないので」

P「……」

ちひろ「……」

肇「失礼します」




P「……」

ちひろ「…プロデューサーさん、取り敢えず涙拭いて下さい」

P「泣いてません、最近花粉症がしんどいだけです。いやぁきつい、花粉きつい」

ちひろ「今、外軽い雨ですよ」

P「…心は土砂降りです」

ちひろ「はいはい…ところで、肇ちゃんが…」

P「…ドアから出ようとする素振りはするものの、なかなか帰りませんね」

ちひろ「…話し掛けて貰うの、待ってるんじゃないですか?」

P「いや、でも用事があるって…」



肇「…あの」

P「ん?どうした?」

肇「こう…何か、ありませんか?」

P「え?」

肇「普段だったら嬉々としてプロデューサーにお茶を淹れて、プロデューサーは私に労いの言葉をかけてくれる、そんな関係ですよね?」

P「ん?ま、まぁな」

肇「そんな私が、大切な大切な…ごほんっ、プロデューサーの事を放って帰ろうとしているんですよ?何か理由を聞いたりしないんですか?」

P「…肇」

肇「はい」

P「冷蔵庫に、戸棚2段目に駅前のどら焼き屋の紙袋入ってるぞ」

肇「…まだ時間に余裕がありますし、お茶でも淹れましょうか」



コトン

肇「……」ゴクゴク

P「……」ゴクゴク

コトン

P「…で、肇」

肇「どうかしましたか?私は忙しいんです」

P「今度は誰に何を教えられた?」

肇「えっ?い、いや、そう言ったことは…」

P「…今どうしてちひろさんの方を見た?」

肇「べ、別にちひろさんから何かを入れ知恵された訳じゃ…」

P「分かりやすなぁ、可愛いぞこんにゃろう」

肇「かわいっ…ふふっ…」

P「ちょろい」

肇「は?」

P「ごめんなさい」




ちひろ「…やっぱり席外していいですか?」

肇「いえ。私は本当にこの後用事がありますので」

P「あ、ほんとだったのか。引き止めて悪かったな」

肇「…よし」

P「なんだ今のガッツポーズ」

肇「明日もまた頑張ろう、と意気込んだだけです」

P「良いことだ。明日もレッスン頑張れよ」

肇「はいっ!それでは、お疲れ様でした」

P「お疲れ様ー」

ちひろ「お疲れ様です、肇ちゃん」

バタンッ



P「…ちひろさん、いや、千川さん」

ちひろ「そ、そのですね…」

P「俺、心が折れかけたんですけど。謝罪の言葉なら簡潔に6文字以内でお願いします」

ちひろ「ごめんなさい」

P「ふぅ…それで、何を入れ知恵したんですか?」

ちひろ「そ、それはですね…貴方達が悪いんです!」

P「富士の樹海探索ツアーとかどうですか?」

ちひろ「あら、デートのお誘いですか?」

P「一人でああいう場所に居ると、本当に出るらしいですよ。片道の交通費くらいなら出しますから」

ちひろ「分かりました、少し言い訳の時間を下さい」




ちひろ「元はと言えば、貴方達が場所も時間も弁えず何時でも何処でもいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ!」

P(目が怖い)

ちひろ「分かりますか?!そんな空間で一人孤独にディスプレイとにらめっこしながらキーボードに怒りを叩きつける私の気持ちが!」

P「…すみません。いや、とはいえそんないちゃいちゃはしてない気が…」

ちひろ「そんな?あれで?まゆちゃんとその担当さんすらドン引きするレベルのあれでですか?」

P「え…」

ちひろ「そんな状況を四六時中見なければいけない私の気持ちになって下さい。控えて欲しいですが、まぁ外でやられるよりは事務所内くらいなら、と大目に見ていた私が馬鹿でした」

P「…どら焼き食べます?」

ちひろ「もう一歩」

P「冷蔵庫のハーゲンダッツ付けます」

ちひろ「よろしいでしょう…そこで、肇ちゃんに教えてあげたんです」

P「…一体、何を…」

ちひろ「押してダメなら引いてみろ、と。あと、押せ押せよりも一歩下がっているくらいの方が魅力的に移りますよ、と」

P「あー、だから」

ちひろ「失敗でしたけど」

P「失敗?」

ちひろ「何時もの会話に入る前にワンセクション増えただけでした」

P「……」

ちひろ「個人的には、もっと会うのも避けてくれるぐらいだと有難かったんですけどね」

P「そんな事したら肇が俺の中で余計レアキャラになってくじゃないですか」

ちひろ「はいはい。ところでプロデューサーさん、グイグイ押していくよりも少し引いたくらいの男性の方がモテるらしいですよ」

P「今の話をしておきながら、それを俺が本気で信じると思うんですか?」

ちひろ「ですが実際、肇ちゃんみたいなタイプにはグイグイ行くよりもそっちの方がいいと思いませんか?」

P「さぁ、どうでしょう?そこはまぁ、俺なりにそれなりに」

ちひろ「兎も角、事務所で…いえ、私の前でいちゃつくのはもう少し控えていただけると助かります」

P「うっす」




~翌日~

P「おはようございます」

ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん」

P「…っと、あと3分くらいかな」

ちひろ「なにか連絡待ちでもしているんですか?」

P「3分後には分かりますよ」

ちひろ「はぁ…」

P「その間にコーヒーでも淹れますか」

ちひろ「あ、私の分もお願いします」

P「了解です、三人分ですね」

ちひろ「…プロデューサーさん、ついに数を数えられなく…」

P「なってないですから」



ガチャ

肇「おはようございます」

P「おはよう肇」

ちひろ「おはようございます、肇ちゃん」

肇「午前中はレッスンですから、直ぐに行ってきます」

P「行ってらっしゃい、頑張ってこいよ」

ちひろ(…イチャイチャしない!よし!)

肇「……」

P「……」

ちひろ「…?どうかしたんですか?二人とも」

肇「…あの、プロデューサー」

P「…コーヒー淹れたし、少しのんびりお喋りしてから行かないか?」

肇「…!はい!」

P「ったく、かわいいなぁ」

肇「プロデューサーこそ、少し意地悪じゃないですか?」

P「はいはい、ミルクと砂糖は一つずつでいいか?」

肇「はい。それと、さっき言って貰えなかった分…」

P「分かってるって。お洒落な服だな、似合ってるぞ」

肇「ふふ、ありがとうございます」

P「俺も少しお洒落を勉強しないとな。一緒に並んで歩いて恥ずかしくないようにならないと」

肇「私も自信があるわけじゃありませんが、一緒に選ぶ事なら出来ますよ」

P「ならお願いしようかな、今週末でいいか?」

肇「はい、楽しみにしてます」




P「あ、はい。コーヒー」

肇「ありがとうございます…あつ、くない?」

P「そろそろ来るだろうと思って先に淹れておいたんだよ。肇なら熱いの大丈夫だろうけど、熱すぎて飲めないよりはな」

肇「だとしたら、貴方は余計に意地悪な人ですね」

P「肇だってそうだろ。なんとなく分かってるとはいえ、避けられてるんじゃないかって不安になるんだぞ?」

肇「あ…ごめんなさい」

P「ま、おあいこって事で。レッスン頑張ってこいよ。時間あったら少し覗きに行くから」

肇「はい!それと…週末、楽しみにしてます」

P「おう、俺もだよ」

肇「では、行ってきます」

P「行ってらっしゃい」

バタンッ

P「ふうー…少しは引いた感じで振る舞えたな」

ちひろ「…は?」

P「え?ダメでした?肇も一歩引いた感じでしたよ?」

ちひろ「…もういいです、期待した私が馬鹿でした」

P「いやいや、ちひろさんは馬鹿じゃありませんって」

ちひろ「では貴方達が馬鹿です」

P「俺は兎も角、肇は…」

ちひろ「訂正します、バカップルです」

P「…そんなに、ですか?」

ちひろ「自覚ないあたりなかなかですね…取り敢えず、私の分のコーヒーもお願いします」

P「あ、さっき淹れたコーヒーありますよ。ミルク一つで良かったですよね?」

ちひろ「いえ、ブラックのとても熱いものをお願いします」

P「…このコーヒーは?」

ちひろ「プロデューサーさんが飲めばいいんじゃないですか?」

P「うっす…」




~昼休憩~

P「っと…おわり!」

ちひろ「お疲れ様です。私はもう少しで終わるので先に」

P「了解です。昼食買いがてら肇のとこ覗いてきます」

バタンッ



~レッスンルーム~

P(肇は…まだレッスン中か)

P(頑張ってるな。それにかなり激しいダンスなのに楽しそうだ)

P(…ドアの窓から覗き込んでるって、周りからみたら不審者に見えたりしてんのかな)

P(まぁいいや、もうすぐ終わるだろうしレッスンの邪魔しちゃ悪いか)

P(…あ、一瞬目が合った…と思ったら逸らされた)

P(…ダンスのキレが更に増した。凄いな、かなりうまい)

P(っと、レッスン終わったみたいだし入るか)

ガチャ

P「お疲れ様、肇」

肇「お疲れ様です、プロデューサー。来てくれてたんですね、気付きませんでしたが」

P(目が合ったのに気付いてなかったのかな)

P「そうか…それにしても、途中から凄くダンスキレッキレだったな。かっこ良かったぞ」

肇「ふふ、ありがとうございます。誰かに見られている、と思うと自然と頑張り過ぎてしまうので」

P「…俺の事気付いてた?」

肇「い、いえ。扉の外から見てるなんてまったく気付きませんでした」

P「そうか、まぁいいや」

肇「…本当は気付いてましたけど…プロデューサーにとっては、まあいいやで流してしまえる事なんですか?」

P「……」

肇「好き合ってる相手の視線なんて、すぐ気付くに決まってるじゃないですか」

P「せ、せやな」




肇「プロデューサーの仕事が忙しいのは知っています。だから、レッスンの最後の方に来てくれると思っていたら丁度でした」

P「と、とにかくお疲れ様」

肇「お疲れ様です。私はこれからお昼にします」

P「んじゃ俺も適当にコンビニ行って買ってくるかな」

肇「……」

P「……」

肇「…お昼、誘ってくれたり…」

P「…一緒に食べるか?」

肇「あ、プロデューサーさん、見て下さい。間違えてお弁当二人分作ってきてしまいました」

P「弁当箱二つって、間違えるとかの話じゃない気が…」

肇「ところでプロデューサーさん、これからお弁当を買いに行くって言っていましたよね?」

P「あぁ、俺は弁当持ってきたりとかしないから、普段からそうだし」

肇「そんなプロデューサーさんに朗報です。なんと私、間違えてお弁当を二人分持ってきてしまいました」

P「…俺も、分けてもらっていいか?肇の手料理が食べたいんだ」

肇「仕方ありませんね、プロデューサーさんがそう言って下さるなら」

P「そんなにニコニコして…んじゃ、部屋でお茶入れて待ってるから」



ちひろ「あ、おかえりなさいプロデューサーさん…あれ?お弁当は買ってこなかったんですか?」

P「まぁ、色々あってこの後分けてもらえる事になったので」

ちひろ「…あっ」

P「ちひろさんはどうしますか?」

ちひろ「一応お弁当持ってきてはいますが、もう少しやってこれ終わらせしまいたいので」

P「すみません、頑張って下さい」

ちひろ「いえいえ、お気になさらず。イチャイチャさえされなければ全く問題ありません」

P「…ういっす」




P「と、言うわけで肇」

肇「はい」

P「ちひろさんが言うには、私はまだ仕事中だからイチャイチャはするな、だってさ」

肇「イチャイチャ…?私達、してましたか?」

P「してないと思うし、寧ろかなり距離置いた感じで振舞ってると思うんだよな」

肇「ですよね。私も押してダメなら引いてみろ精神を持って振舞っていますから」

P「まぁ兎に角、普通に食べよう」

肇「了解しました」





肇「はい、本日のお弁当です」

P「ありがとう、肇…うぉお、美味そう」

肇「あまりはしゃがないで下さい。いい大人なんですから」

P「そんなニコニコされながら言われてもな」

肇「ところでプロデューサー。残念なお知らせがあります」

P「なんだ?」

肇「お箸が…一膳しかありません」

P「それは困ったな…ボールペンあるけど」

肇「ところでプロデューサー、間接キスって直接キスしなければセーフですよね?」

P「ものすごく意味わからないけどそんな気がする」

肇「つまり、ですね…ごほんっ、えーと、その…」

P「そ、その箸を使って、お互いに食べさせあえばいいのか!」

肇「そ、そうです!」

P(…何を言ってるんだ俺は!)

肇(…そうです、じゃないですよ私!)

P・肇(それじゃイチャイチャに…!)

肇「…そう言えばちひろさんは、イチャイチャした雰囲気を出すな、って言っていたんですよね?」

P「そうだな」

肇「イチャイチャした雰囲気って、若手のカップルだから出るオーラだと思うんです。つまり…」

P「つまり…?」

肇「熟年の夫婦感をだせば、そんな雰囲気になんてならないんじゃないでしょうか?」

P「…おお!なるほど!」

肇「というわけで、アーンなんて言わずに食べさせあえば良いのでは?」

P「おお、賢いなぁ肇は!」

肇「ふふ、ありがとうございます」

P「んじゃ、いただきます」

肇「いただきます」




P「ん、美味い。味付けが凄く俺好みだ」

肇「色々と勉強しましたから」

P「お茶淹れといたぞ、はい」

肇「…美味しいです。プロデューサーもお茶淹れるの上手くなりましたね」

P「肇に喜んで貰いたかったからな」

肇「…ここでにやけてしまったらイチャイチャになってしまいますか?」

P「セーフだろ、多分」

肇「…ふふ。折角でしたら、二人の名前を彫った湯飲みでも作ってきたいです」

P「いいなぁ、手作りの湯飲みで飲むお茶」

肇「よろしければ、プロデューサーも一緒に作りませんか?」

P「いいな、それ。ほんとに熟年の夫婦みたいだ」

肇「そう、なりたいです」

P「あぁ、俺もだ」

肇・P「……」ニヤニヤ





P「ごちそうさまでした」

肇「お粗末でした。では行ってきます」

P「頑張ってこいよー」

肇「……」

P「……」

肇「プロデューサー」

P「…夕飯、どっか食べに行くか」

肇「はいっ!頑張ってきます」

バタンッ



P「ふー…まぁ、普通な感じでいられたな」

ちひろ「プロデューサーさん」

P「はい」

ちひろ「セーフ要素、ありましたか?」

P「…すみません」

ちひろ「私今、叙々苑でお腹いっぱい食べたい気分です」

P「…奢らせていただきます」


花粉症が苦しいです
お付き合い、ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom