男「席替えが・・・・・・はじまる!!!」(28)

教室

男(落ち着け、平静を装え)

不良「めんどくせーな。このままでいいじゃねーか」

サッカー部「後ろの方がいーなー」

バレー部「俺クジ運強いから多分いけるわ」

男(・・・・・・クク、ハハハ! 馬鹿共め。せいぜい暢気に神頼みでもしていろ)

吹奏楽部「運なら俺だって負けないぞー」

男(運で勝ち取れるものなど存在しない)チラ

女「誰が隣になるかなァ」ニコ

男「・・・・・・」ポケー

男(・・・・・・女ちゃん、君の隣は必ず)

委員長「皆さん静かにー。じゃあ出席番号順にクジを引いて下さいね」

男(席替えが・・・・・・はじまる!!!)

委員長「あ、その前に。みんなも分かってると思うけど、女さんは近視の為最前列です」

男(ああ、そうだ。はじめての席替えからそれは変わらない。・・・・・・つまり)

委員長「という訳で、女さんはそのままの席で」

女「はーい。みんな迷惑かけてごめんね?」

委員長「女さんの席は女子列の廊下側最前だから、2番の紙は省いてますので」

男(クックック。第一条件はクリアされたな。つまり、予想通り1番か3番の紙が天国への切符という訳だ)

委員長「はい。じゃあまずバレー部君」

バレー部「ほーい」

委員長「違う違う。そっちのは女子の箱です」

バレー部「あ、ごめん」ゴソゴソ

男(フフフ、第一条件がクリアされた時点で俺の勝ちは決まっている。何故なら)


――
―――
――――

前日・放課後の教室

委員長「・・・・・・」チョキチョキ

ガラガラ

男「あれ、委員長じゃん」スタ、スタ

委員長「どうしたの? 男は帰宅部なのに」

男「忘れ物。なにしてるの?」

委員長「明日の席替えのクジ引きを作ってたよ」

男「ふーん。俺も手伝うぞ」

委員長「あ、いや・・・・・・」

男「ん? どーした?」

委員長「ほら、こういうのって誰かが手伝うと後で不正だなんだって疑われるからさ」

男「ははは、相変わらずお前は真面目だなァ」

委員長「疑ってる訳じゃないんだけどね。いつも手伝ってくれてる男に文句がいくのは嫌だからさ」

男「そんなこと言われないってば。ほら、帰り遅くなったらお前の母さん心配するんだろ?」

委員長「うん。・・・・・・そうだね、それじゃあお願いしようかな。ごめんね」

男「気にするなって。早いとこ終わらせて一緒に帰ろうぜ」ニコ

教室

男(・・・・・・すまんな委員長)ニヤ

男(何の為に毎日委員の仕事を手伝ったと思う! 全ては信頼を得る為!!!)

男(フフフ。・・・・・・流石にお前でも気づかなかったようだな。クジ箱の内側側面にあるポケットに)

男(そのダンボール箱を調達したロボコン部はなァ。俺の仲間なんだよ)
             ポケット
男(1番と3番は・・・・・・その悪魔の口に仕込んだ)ニヤ 

男(さあせいぜい吟味しろ、馬鹿共め)

男(わざわざ箱に入れたのは最後の良心だ。フェアにいこうじゃないか。フェアに)ニヤ

不良「・・・・・・」ガタ

男「ん?」チラ

不良「あのよォ。実は俺も目が悪ィんだよ」

男「ッ!?」

委員長「どうして今まで言わなかったんですか?」

不良「あー・・・・・・ほら。俺ッて授業サボってばっかでまともに勉強してこなかっただろ。
・・・・・・でもさ、そろそろ本気にならないといけねーかなってよ」

委員長「そうだったんですか・・・・・・委員長として、凄く嬉しいです」ニコ

男(不良めェェェ! これでは番号など関係なくなるじゃないか! なんて不運だ!!!)

不良「・・・・・・」ニヤ

男(いや・・・・・・こいつ、狙ってやがる!!! 確実に女ちゃんの隣を狙っている!!!)

不良「悪いな皆。これから頑張るからよ。最前列は譲ってくれ」

男(女ちゃんが居なければ最前列など地獄以外のなにものでもない! こいつぬけぬけと!!)ギリギリ

不良「じゃあ、先に移動するわ」スタ、スタ

男(一直線に1番の席に向かっている!?)

――スタ、スタ、スタ

男(クッ。確かに自然な行為だ。近視は最前列ルールは曖昧だからな。
・・・・・・むしろこの行為は、人気の窓際を避けるという気遣いに昇華されている!)

――スタ、スタ、スタ

男(・・・・・・ククク、中々やるじゃないか。・・・・・・完敗だよ)ガク

不良「おい女、これからよろ――」ドキドキ

男(――お前のな)ニヤ

委員長「不良君。こっちおいで?」

不良「ッ!?」

委員長「せっかく勉強したくなったんですから、黒板の前どうぞ」ニコ

不良「い、いや。ほら、俺」

男(ハハハハハ! お前が女ちゃんに気があること位分かっていたよ!!)

委員長「どうしたんですか? 遠慮しないでいいですよッ」

男(分かり易いんだよォ。対策しているに決まっているじゃないか)

委員長(本当に不良君が更生してる! やっぱり男はなんでも分かるんだなァ)

男(お前の浅はかな計画など、俺が委員長に口添えをするだけで崩れる!!)

不良「・・・・・・分かったよ。ありがとう」ガク

男(良かったなァ不良。お望みの勉強生活がはじめられて)ニヤ

教室

バレー部「さーて何番かなァ」スタ、スタ

委員長「じゃあ次の人ー」

卓球部「あ、俺か」スタ、スタ

男(ククク、不良が馬鹿で助かった。俺の計画に狂いはない)

女「なんだかドキドキするなー」

男(俺だってドキドキさ。これから君の居る天国へ行けるのだから)ニコ

委員長「次の人ー」

科学部「・・・・・・」ニヤ

男「ん?」

男(・・・・・・笑っ、た?)


――
―――
――――

前日・放課後の教室

委員長「それにしても良いクラスだよね。皆優しいし」チョキチョキ

男「どうしたんだよ、突然」

委員長「このクジ箱はロボコン部君が用意してくれたし、紙は科学部君が用意してくれたんだ」

男「・・・・・・ふーん」チョキチョキ

男(ロボコン部は俺の仲間だが・・・・・・科学部だと? イレギュラーだな)

委員長「凄いよね。ちゃんと番号も印刷してくれてるから、あとは切るだけでいいんだ」ニコ

男(・・・・・・いや、考え過ぎか。どうみてもただの紙だ)

教室

男(奴は紙を提供しているだけだ。それに1番と3番は悪魔の口の中・・・・・・問題はない)

――スタ、スタ、スタ

科学部「・・・・・・」ニヤ

男(しかしあの笑みはなんだ?・・・・・・ん?)

科学部「・・・・・・」

男(なにか持っている? あれは――)

科学部「・・・・・・」スッ

男(磁石、か? ・・・・・・まさか!!!)ガタ

科学部(クククク・・・・・・男、お前が何か仕込んだのは分かっているよ)

男(それは計画を立てる中で俺も考えたが、現実的ではなかった!!!)

科学部(ヘビのように委員長に近づくお前だ。きっとあの箱に何か仕掛けたのだろう?
隠しカメラで確認したよ。何をしたかはしらないが、昨日お前は確実に紙を箱に入れた・・・・・・で、あれば)

男(第一そんな技術一介の高校生にある訳が・・・・・・いや、そうだ・・・・・・奴は)

科学部(科学部に不可能はない!! 天国への切符は、自ら私の手に向かうのだよ)ニヤ

男(間違いない・・・・・・あの紙・・・・・・磁性流体が混ぜられている!!)

科学部(大変だったよ。何せ製紙技術を一から勉強したのだからね。・・・・・・紙に注意を怠ったお前の負けだ)

男(だから番号を印刷したのか! 1番と3番の紙だけに磁気を帯びさせる為に!!)

――スタ、スタ、スタ

科学部(フハハハハ! あの女さんを低脳なクズに渡す訳がないだろう!?)

男(伏兵めェェ! 女ちゃんに好意がある素振りなんてなかった筈だ・・・・・・いや、意図的に隠していたのか!?)

科学部(せめてもう少し私を警戒していれば良かったものを・・・・・・ハハ、ハハハ、ハハハハ!!)

男(・・・・・・あ)

男「いいんちょーう。科学部君が勉強に関係ないものを持ってきてます」

科学部「なん――だと?」

科学部(馬鹿な!? これは知恵くらべだろう!? そんな、そんなのルール違反じゃないか!!!)

委員長「科学部君、それはなんですか?」

科学部「え、あ、その・・・・・・磁石、です」

委員長「部活で使うんですか? ホームルーム中はしまってくださいね」

科学部「・・・・・・はい」ギリギリ

男(ハハハハハ!!! ルールなんてないんだよォ!! 切り札を安易に敵に見せるからこうなる!!!)

科学部「・・・・・・クソォ、卑怯者めェ」ギロ

男(スポーツでもやっているつもりかァ? 今は殺し合いの時間なんだよォ)ニタァ

委員長「今は席替えの時間なんですからねッ。早くカバンにしまって下さい」

続きは深夜辺りに書きます。

教室

委員長「次の人ー」

裁縫部「はいはい」スタ、スタ

男(・・・・・・ククク、この次はとうとう――)

委員長「はい、次の人」

男「俺の番」ボソリ

――スタ、スタ、スタ

ガサゴソ

男(――ある・・・・・・あるぞォ)ズバ!!!

――1番

男(フ、フフフ、フハハハハ!!!)

委員長「はい次ー」

――スタ、スタ、スタ、ストン

男(勝った!!! 思わぬ敵に惑わされもしたが、俺は掴んだ! この1番を!!)グシャ

女「隣だれかなァ」ニコ

男(お れ だ よ)ニタァ

――グイ

男「?」ポトリ

男(なん、だ? 紙が引っ張られた・・・・・・?)

裁縫部「あれ、男ー。お前紙落としてるぞ。ほい」

男「ああ、ありが――なッ!?」

――17番

男(何故だ!? 何故17番なんだ!! 俺は確かに1ば――まさか)バッ

裁縫部「・・・・・・」ニヤ

男(すり替えだと!? まずい!! この手のすり替えは証拠がなければ証明のしようがないッ!!)

裁縫部「ああ、俺は1番かァ。ってことは女の隣? 嫌だなァ」

男(狙ってすり替えを行ったのか!? だとしても俺が紙を落とすなど事前に分かる訳がッ!)

キラリ

男(――なんだ、これは? 奴の持つ1番の紙からなにか垂れている・・・・・・極細の糸!?)

裁縫部(裁縫部を甘くみたなァ。男)ニヤ

男(紙に縫い付けた糸を引っ張ったのか!? だとしても一体いつ・・・・・・箱の中に手を入れた瞬間に片手で!?)

裁縫部(日頃の女への態度でお前が何かを仕込むのは察っしていた。
天国への切符を最初に入手するのはお前だと分かっていたよォ)

男(そもそもあの箱の中で当たりクジだけを正確に縫うことなど不可能だ!!
・・・・・・ん? よく見ると周囲に細い糸が散乱している・・・・・・そしてその先は――箱!!!)

裁縫部(イヒヒ、箱の中全ての紙に糸を縫い合わせたんだよォ)

男(神業ッ!!!)

裁縫部(丁寧に箱の中を探って隠れている2枚を見つけたが、
それが当たりという保障はなかったからなァ。念のため、こうしてお前を泳がせた訳だ)

男(なんて奴だ・・・・・・既に糸の束を手放している以上、不正を問うたところでこいつが犯人という証拠がない!!)

裁縫部(女に俺の作ったドレスを着せるのだァァァ!!!)ニタァ

男「・・・・・・おい」

裁縫部「なんだい? クジの交換ならしないよ?」

男「・・・・・・いや、そうじゃない」

裁縫部「じゃあ負け惜しみかなァ?」

男「どうして、1番が2枚あるんだ?」カサ

裁縫部「ッ!? 何故それを!! いや、俺の手にある紙も確かに1番!?」

男「委員長、ミスがあったみたいだ! 同じ番号が2枚あるぞ」

委員長「え、本当!? ・・・・・・どうしよう」

男「・・・・・・」

委員長「――仕方ない、もう一度やり直しましょう。全員紙を返して下さい」

裁縫部(なにィィ!?)

男(こんなこともあろうかと事前に当たりクジのコピーを用意しておいたんだよォ。
委員長の性格ならばやり直すであろうことは予測出来たからなァ!!!)

裁縫部(な、なんて奴だ!!!)

男(これで勝負は振り出しだァ!! まさか、同じ手が二度通じるとは思っていないだろうなァ?)ニタァ

裁縫部(あれは一度限りの奇襲技だ・・・・・・もう通じまい。クソォォォ!!!)ガク

男(ハッハッハッハ!! 勝負はまだ俺の手の内にあるのだよ!!!)

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