最原「二周目は彼女と共に」 白銀("嘘"! だけどね!) (500)

今回はギャグ少な目、シリアヌ多め、そして短めで行くぞ!

書き溜めなし! いつも通りネタバレオンパレードなので絶対に未クリアの人は見ないでね!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493942027

さよならダンガンロンパ(?)

最原「これで終わりだ、白銀さん。キーボくんも投票を放棄したよ」

春川「私たちの……いや、ダンガンロンパの終焉は、黒幕も巻き込んだ全員のバッドエンド、か」

夢野「んあー……マジか。マジなのか。滅茶苦茶怖いぞ」ガタガタ

白銀「……」

白銀「……ああ、そう。そっか。それでいいんだ?」

白銀「ははっ、わかった。それでいいんだよね?」

白銀「フィクションですらコロシアイを楽しめない世界なんて、こっちから願い下げだよ」

最原「……白銀さん。最後に訊かせてくれるかな?」

白銀「ん? なに?」

最原「……キミって本当は――」



キーボ「……これが外の世界の意思です。この学園を破壊します」

蘇る超高校級:ダブルツインマーク2セカンド

最原(……んん。ここ、どこだ? 暗い……狭い……)

最原(ていうかなんでこんな場所に……)

最原(……って、考えるまでもないか。僕たちは最後の学級裁判で投票を放棄したんだ)

最原(それでキーボくんに才囚学園ごと破壊されて、死んだ、はずだ。よく覚えてないけど)

最原(ならここは……棺桶、かな?)

最原(あのとき、なんか白銀さんに質問した気がするけど、何を訊いたんだっけな?)

最原(……死んでいった仲間たちに会えるかも、とか、ちょっと期待したけど、見事に真っ暗だな)

最原(死んだ後って、こんなに寂しいのか……)

バタリッ

??「痛ッ!」

最原「ん?」

最原「……なんか聞き覚えがある声がしたような?」

最原「あれ、ていうかこの棺桶、扉が開くぞ?」ガチャリンコ

最原「うおっまぶしっ。一体何が……」

赤松「痛た……思いっきりおでこを強打しちゃったよ。ここ、どこ……?」キョロキョロ

赤松「なんで私、ロッカーなんかに……ん?」

最原「」

最原「あ、ちょっと待って。僕は今、冷静さを欠こうとしているんだ」

最原「落ち着け……落ち着いて深呼吸を……」

最原「すぅーーーっ……」

赤松「……あの、ねえ? そんなところで何をしているの?」

赤松「ていうか大丈夫? 顔が真っ青なんだけど」ポンッ

最原「ほぎゃあああああああああああ!?」ガビーンッ

赤松「うわああああああああああああ!?」ビクゥッ

最原「かっ、肩に、肩に触ってき……ぎゃあああああああああ!」ガタガタ

赤松「ちょっ、落ち着いて! 落ち着いてよ! なんでそんなに驚いてるの!?」

最原「あわ……あわわわわ……許して……ごめんなさい……」ガタガタ

最原「こんなことを僕が言うのも筋違いだとは思うんだけど……」ガタガタ

最原「大人しく成仏してくれええええええ!」

赤松「唐突に悪霊扱いされたーーーッ!」ガビーンッ

赤松「な、なんで初対面でこんなに驚かれなきゃならないの!?」

最原「いや、だって、キミ……」

最原「ん?」

最原「……待って。今、なんて?」

赤松「え?」

最原「……初対面だって?」

赤松「あ、あれ? どこかで会ったことあった?」



赤松「私たち、初対面だよね?」

最原「……あれ……あれ?」

最原(……死んでない。僕も、彼女も、初対面時のあのときのまま……)

最原(ていうか、ここは才囚学園の教室じゃないか)

最原「……ここは……えっと……」

赤松「ああ、私にもわからない。気付いたらここにいてさ……」

赤松「……」

赤松「ジムノペディ弾きたい……」

最原(僕の知っている赤松さんが、生きている状態で目の前にいる)

最原(それは嬉しいけど……初対面?)

最原「どうなってるんだ?」


ガララッ


白銀「やっほー最原くん! 目が覚めた!?」ニコニコ

最原「……白銀さん……」

赤松「え? 誰?」

最原「はっ! そうか、わかったぞ! 白銀さん!」

最原「またキミの悪ふざけだな!?」

白銀「私の?」

最原「だってこんなのありえないじゃないか!」

最原「この学園は、間違いなく……!」

赤松「……えーっと、二人は知り合いなの?」

最原(白銀さんのことも覚えてないのか。じゃあこれは、やっぱり)

白銀「……」ニヤリ

白銀「あ、えーっと、地味にピアニストっぽいそこのあなたとは初対面だから自己紹介するね」

白銀「私は白銀つむぎ。"超高校級のコスプレイヤー"なんだ」

赤松「あ、どうもご丁寧に。ていうかピアニストっぽいって」

赤松「実際にそうだけどさ」ウン

最原(知ってる)

最原(これは……おそらく二周目前提のゲームでありがちな強くてニューゲームってヤツだな!?)

白銀(多分強くてニューゲームってヤツに違いない、とか思ってる顔だなぁ)

白銀「違うよ最原くん! そんな単純な話じゃないよ!」

最原「なんだって?」

白銀「ひとまず体育館に行かない?」

白銀「……『みんな』が、待ってるよ?」ニヤァ

最原「……ッ!?」

赤松(仲がいいなぁ。置いてきぼり感が凄いよ)

体育館

ガヤガヤ

百田「俺は宇宙に轟く超高校級の宇宙飛行士、百田解斗だ! よろしくな!」

春川「超高校級の保育士、春川魔姫」

夢野「んあー。超高校級の魔法使い、夢野秘密子じゃ。一般ではマジシャンで通っておるが」

キーボ「超高校級のロボット、キーボです! よろしくお願いします!」

王馬「……超高校級の総統、王馬小吉だーーーッ!」バキィッ

キーボ「ぐああああ! 後ろから急に蹴られたーーーッ!」

王馬「着ぐるみってドロップキックをかますものでしょ?」ケロリ

キーボ「着ぐるみじゃありませんッ!」


ガヤガヤドヨドヨワキアイアイ


最原「……ぜ、全員……いる……」

最原(そして何故かみんな自己紹介をしている)

最原(まるで初対面のように!)

白銀「実際初対面なんだって」ボソッ

最原「……そうか……どういう理屈かはわからないけど、そういうことだな?」

白銀「ん? 何が?」

最原(またコロシアイをするつもりなんだな!?)ギンッ

白銀(またコロシアイをするつもりなんだな、とか考えてるな)

白銀「だから違うって。そんな単純な話じゃないんだよ」

最原「……また見え透いた嘘を……」

赤松「うわー! 凄いよ最原くん! 超高校級の生徒がこんなに揃ってるの初めて見た!」キラキラ

最原「名乗ったっけ?」

赤松「白銀さんがさっきから『最原くん』って言ってる」

最原「ああ……」

赤松「ねえ! これだけ超高校級の生徒が揃ってるんだからさ、最原くんもそうなんだよね?」

最原「いや、僕は……」

白銀「うん。最原終一くんは、超高校級の探偵なんだよ」

白銀「得意分野は殺人事件。私の知っている限り、既に五つの殺人事件を見事に解決してたね」

最原「白銀さんっ!?」ガビーンッ!

白銀「嘘は吐いてないよ?」シレッ

赤松「す、凄いね! 五つもなんて!」

赤松「……」

赤松「えーっと……蝶ネクタイの小学生みたいに、歩くと人が死ぬタイプの探偵さん?」

最原(酷い風評被害だ!)ガビーンッ!

ガシャガシャガシャコンッ!

エグイサルs「おはっくまーーー!」

茶柱「うおわあーーーッ! 急に巨大ロボットが転子たちの回りにーーーッ!」

入間「あ、あれ? ねえ、何なの? 俺様、なんでこんな目に遭ってるの?」ガタガタ

獄原「みんな! ゴン太の後ろに隠れて!」

真宮寺「流石にキミの体格でも、あれを相手取るのは難しいと思うヨ……!」

最原(……懐かしいな……いや、こんな感想を抱く時点で何か麻痺ってるんだけど)

白銀「……む。最原くん、落ち着いてるね」コソコソ

最原「流石に二回目となると、ね……」コソコソ

白銀「可愛くないなぁ……あ、そうだ」

最原「ん?」

白銀「きゃああああ! 最原くん、こわーい!」ダキッ

最原「ええっ!?」ガビーンッ

最原(白銀さんが抱き着いてきた!)

アンジー「おおー。極限状態で神っちゃってるねー!」

東条「この状況なら仕方ないとは思うのだけど」

最原「あっ、いやっ、違っ……これ演技で……!」アタフタ

百田「そこのヤツ! 女が頼ってるんだぞ! こんなときはドンと構えて守ってやれ!」

最原(も、百田くん!)

百田「堂々と背中に手を回して抱きしめてやればいいんだ! お前ならできる!」

最原(しょ、初対面のクセに勝手なことを! いや、百田くんらしいけど!)

星「……で」

星「こいつら、特に襲ってくる気配がないな」

天海「まあ目的は単なる暴力じゃないんでしょうね」

白銀「こわーい……ふふふ」

最原「いい加減離れて……!」

白銀「だが断る」

最原「このっ……!」

赤松「……彼氏彼女の関係?」

最原「それは違うぞ!」


ズキッ


最原(……ん? なんか、一瞬頭痛が……)

モノクマ「……やっべ。登場シーンで名乗りを上げ損ねた」

モノクマ「まあいいや。はいはい全員こっちに注目ー!」

春川「……ぬいぐるみ?」

モノクマ「ボクはモノクマ! この才囚学園の学園長なのだ!」

モノクマ「じゃあひとまずオマエラに、この学園で何をすればいいのかを発表しまーす!」

最原「は、な、れ、て、よ!」グギギ

白銀「は、な、さ、な、い!」ギュウウウウウ!

モノクマ「……息子よ」

エグイサルレッド「はいはーい」


バンッ! チュンッ


最原「うっ!」

天海「あ、撃った」

茶柱「威嚇射撃っぽかったですけど、結構近くに着弾しましたね」

モノクマ「ひとまず黙って聞いててね」

最原「……はい……」

白銀「はぁい」ニコニコ

最原(結局抱き着いたままなのか……)ズーン

モノクマ「えー、ではオマエラに宣言します!」

モノクマ「コロシアイ新学期……」ニヤァ

最原(つ、ついに来るのか……!)

モノクマ「……ではなく、恋愛観察バラエティの開始を、ここに宣言しますッ!」ギンッ

最原「何回参加させられようが、僕はコロシアイなんか……!」

最原「……」

最原「ん? 今、なんて?」

モノクマ「命短し恋しろ生徒!」

最原「……」

最原「……ゑ?」

ニューダンガンロンパV3のOPを流しながらお待ちください。
私はちょっと休憩します

あ、やっべ。がっつり性描写入れるつもりだったのにRじゃないじゃん、ここ。
……まあいいか。そういう描写はバッサリカットっす。予定変更

余裕があったら後で番外書く方向で。
今回、最中の描写はなしだ!

じゃあ再開します

以下、紅鮭団説明ダイジェスト

モノクマ「さあ来い生徒たちーーー! 実はこの学園は恋人だけが出られるぞーーー!」

モノクマ「グアアアアア! このザ・絶望と呼ばれたモノクマが……こんな生温い企画を……バカナァー!」

モノタロウ「超高校級の生徒を集めてコロシアイをさせようとしていた気がしたが」

モノキッド「別にそんなことはなかったぜヘルイェーーーッ!」

モノクマ「行ぃぃぃくぞぉぉぉぉぉーーーッ!」



世界が"愛"で変わることを信じて……!


ダイジェスト終了

最原「……コロシアイじゃないの!?」ガビーンッ!

赤松「え!? なに物騒なこと言ってるの!?」ガーンッ!

白銀「うーん、ごめんね。最原くんって最近、殺人事件に遭遇しっぱなしだったから」

白銀「思考回路がデフォで殺伐してるんだよね」

最原(キミのせいだろ!)

最原「……コロシアイ、じゃないのか……そっか……そっか」

最原「……」

白銀「ふふふ」

最原「……いい加減離れて」

白銀「感想を言ったらいいよ?」

最原「どんな羞恥プレイだよっ!」

百田「おお。既にあそこの二人は出れそうな感じだな!」

夢野「じゃ、後のことはアイツらに任せるとして、ウチはもう寝たい……」

モノタロウ「あ、寄宿舎にはオイラが案内するよ!」

ゾロゾロガヤガヤ

最原(そして、超高校級の生徒たちはモノタロウに案内されるまま、体育館を後にした)

最原(まあ、こんな悪ふざけに乗る義理はない、とは全員思ってるだろうけど)

最原(すぐそこに危険が迫ってるわけではなかったから、前のときとは違って比較的、みんな顔が明るかった)

最原「……いや。モノタロウについていくのは後にしよう。僕たちは寄宿舎の位置を知ってる」

白銀「そうだね。で、最原くん。何が訊きたいの?」

最原「何って……何もかもが変でしょ、この状況」

最原「みんなほとんどコロシアイで死んで、キーボくんが学園を僕たちごと破壊して」

最原「それで全部終わったはずだ。でも、何これ? どうなってるの?」

白銀「ごめん、私にもわからない」

最原(早速手がかりが潰えた)

白銀「まあ、あれだよ。キーボくんに殺されたショックで意識が時空間を飛び越えた的なアレでいいんじゃない?」

最原「は?」

白銀「というか、理由なんて地味にどうでもいいよね。この学園、推理要素以外は理不尽の連続だったじゃない」

白銀「元々さ」

最原(確かに)

白銀「……あ、ちなみにね。最原くんが私と同じ、前の学園の記憶を持ちこしてるってことがわかったのはね?」

白銀「あなたたちの才能を思い出させるときに、あなただけの様子がおかしかったからなんだ」

最原「えっと……?」

白銀「思い出しライトを浴びせようと全員を体育館に呼び出したとき、酷い取り乱しようだったんだよ?」

白銀「『みんな生きてる! なんで!?』って」

最原(実際、さっきは赤松さんの前で醜態曝したしな……)ズーン

白銀「そろそろ私たちも寄宿舎に行こう?」

白銀「さて。何人かは果ての壁を見て、びっくりしているころかなー」

白銀「あの反応、地味に滑稽だったから、できることなら何度でも見たいんだよね!」

最原「……」イラッ

最原「白銀さん」

白銀「なに? 最原くん」

最原「キミ実は凄い気痩せするタイプだよね」

白銀「は?」

最原「ブラの堅い感触ごしに、形が変わる胸の柔らかさが堪らないよ」

白銀「」

最原「それだけじゃない。体全体からなにかいい匂いがする。正直辛抱できそうにない」

白銀「ちょっ、えっ、な、なに……」アタフタ

最原「肌、綺麗だよね。ほっぺ触っていい?」ペタリ

白銀「あ、わ、わ!」カァァ

最原(急いで身を放そうとする白銀さんを、抱きしめて離れないように……よし)ギュッ

白銀「あ、ちょっ! これ、何!? 何なの!?」アタフタ

最原「感想を言えって言ったじゃん。今は二人きりだから大丈夫だよ」

白銀「何その『美味しいから大丈夫だよ理論』くらいの暴論!」ガビーンッ!

最原「白銀さん……白銀さん……!」スリスリ

白銀「ああんっ! ちょ、ちょっと! 鼻先を首筋にこすりつけないで……!」

白銀「息が熱い……! な、なんか、変な気分に……」

白銀「……」

白銀「……もしかしてこれ逆襲のつもり!?」

最原「なんのこと?」ケロリ

白銀「し、白々しい! 童貞のくせに!」

最原「入間さんレベルの最低な罵倒だね」

白銀「ぐっ、く、屈辱! 入間さんと同レベ扱いされるなんて……ああ、ちょっ、これ以上は本当に……!」

白銀「や、やだっ……!」


ガララッ


茶柱「二人ともー! 大変です! この学園の回りをぐるっと囲む大きな壁……が……」

最原「あっ」

白銀「あっ」

茶柱「……」

バキッドカドカッボキンッ!


白銀「わー! 最原くんが死んだ! この人でなし!」

茶柱「悪は……滅びた……!」

モノクマ「オマエ何してんの!? コロシアイじゃないって言ったじゃん!」

白銀「最原くん! 起きて! 最原くーーーんっ!」

最原(薄れゆく意識の中、僕に辛うじて認識できたのは……)

最原(多分今、僕は人の形をしていないだろうな、ということだけだった……)

最原(茶柱さんに何をされたのか? それを認識する暇すらなかった……)

旧約、前の世界の第一章:私と僕の学級裁判

白銀(いっけなーい! 不正不正! 私、白銀つむぎ! 今回のコロシアイの黒幕!)

白銀(赤松さんの励ましのせいで、みんなが中々コロシアイを始めなくてもう大変!)

白銀(一体これから、どうなっちゃうのーーー?)

白銀「なんて、まあ全部終わったんだけど」

白銀(……なんとかなった、かな。赤松さんは処刑。コロシアイも始まった)

白銀(ついでに超高校級の生存者も早々に落とすことができた)

白銀(うん! 上々のスタートだよね! いい滑り出しだよ!)

白銀(ああ、夜が明ける。一仕事終えた後は何もかもが美しく見えるなぁ!)

白銀(興奮して眠れないよ!)

白銀「ん?」

最原「……」

白銀「……あれ。最原くん? こんな時間に外で何して……」

白銀(……って、ああそうか。仲よかったんだもんね。沈んでて当然か)

白銀(悲しくて悲しくて堪らない、って感じなのかな)

白銀(……ふふ。いいね。そういう新鮮な絶望が一番いいんだ。視聴率もうなぎ上りだろうね)

白銀(でもまあ、ちょっとは希望を与えておかないと、かな。自殺とかされたら興醒めにも程があるし)

白銀(……励ますか)

白銀「最原くん」

最原「……ッ!」ゴシゴシ

最原「し、白銀さん!? どうしたの、こんな時間に!」

白銀(今、目元拭ったな。ていうか目が真っ赤だし。明らかに泣いてたね、これ)

白銀(……ここにキーボくんがいないのが惜しいなぁ)

白銀「それは最原くんもでしょ? こんなところで何してたの?」

最原「あ……いや、その……」

白銀「……なんて、さ。地味にバカな質問しちゃったかな」

白銀「眠れないんでしょ? 最原くんも」

最原「……」

最原「白銀さん、も?」

白銀「うん」

白銀(興奮で、だけど。ふふふ)

白銀「……わかるよ。赤松さんは、間違っても死んでいい人間じゃなかった」

白銀「私たちの中心人物だったしさ。それに、最原くんは一番仲が良かったし」

白銀「……眠れなくって当然だよね」

最原「……」

白銀「……」

白銀(あ、そういえば私、人を励ますのなんて初めてだな)

白銀(ど、どうしよう。地味に雰囲気を余計に沈ませただけだよ、コレ!)ガビーンッ!

白銀(何かないか、何かないか……!)アタフタ

白銀(あ! そうだ! 確か前にこんな励まし文句を見かけたな!)

白銀「大丈夫? おっぱい揉む?」

最原「は?」

白銀「……」

白銀(何言ってんの私ーーーッ!)

白銀「あ、いや、これは! その……!」

最原「失礼します」モミッ

白銀「あ」

最原「……」モミモミ

最原「……」

最原「……何をしてるんだ僕はッ!?」ガビーンッ!

白銀「い、いやあああああああッ!」バシーンッ!

最原「へばっ!?」

白銀「あ、あわわ……初めて異性におっぱい揉まれた……あわわわわ」

白銀「……はっ! あ、ご、ごめん最原くん! 大丈夫!?」

白銀「ご、ごめ、違くて。こんなつもりじゃなくって! あの! あの!」アタフタ

最原「……」ポカーン

白銀(……やっぱり私、首謀者でも単なるオタ女子でしかないんだな)

白銀(人を励ますとか柄じゃない。何してたんだろ)ハァ

最原「……は……ははははは……」

白銀「え?」

最原「いや、おかしくてさ。僕たち、こんな時間になにやってんだろ、って……あはははは!」

白銀「……」

白銀「……ふふ。確かにおかしいね。こんな状況なのにさ」

白銀「よかった。過程はどうあれ、最原くんが元気になってくれて」ニコリ

最原「……」ドキン

白銀「どうかした?」

最原「あ、い、いや。なんでも」

白銀「……?」

白銀(まあ、いいか。ひとまずこれで最原くんは大丈夫)

白銀(これからもちょいちょい様子を見ないとね。最原くんは最弱の探偵だから)

最原「あの、白銀さん。ありがとう、励ましてくれて」

白銀「いいんだよ。だって、私たち、仲間だから」




白銀(……そう。このときから、何かが狂っていった)

白銀(ダンガンロンパの終焉。それだけならまだいい。それも一つの物語の終わり方)

白銀(このバカみたいなやり取りが、すべての始まり)

白銀(……本当の悲劇の幕開けだった)

FGOのAP消費の時間だ!
休憩します!

紅鮭団時空 寄宿舎

最原「……ん。なんか懐かしい夢を見ていたような……」ムクリ

最原「そして恋愛観察バラエティの方は現実なのか……」

最原「……外をぶらついて来よう」


ガチャリンコ


百田「お? 最原……だったか?」

最原「あ。百田くん」

百田「これから夕メシに行くんだ! 一緒にどうだ?」

最原「……うん。お腹ペコペコなんだ。行くよ」

最原(またこんな日が来るなんて……夢じゃない方が信じられないな)

食堂

茶柱「……最原さん! 転子の嫌いなものを三つ教えてあげます!」

茶柱「しつこい男死、めんどくさい男死、女子にひっつく許しがたい男死ですッ!」

茶柱「まあ、その、なんだ。白銀さんと最原さんはどうも仲良しみたいですが……」

茶柱「それでもって、子供を産むためには? そういう行為も必要だと? 理解はしてますが?」モジモジ

茶柱「む、無理やりはダメですよッ! 無理やりは!」

最原「……」

最原(食堂に来て早々、茶柱さんに凄い剣幕で性教育を受けさせられた)

最原(気分的に凄い微妙だけど……そして百田くんが隣で笑いを堪えてるのがイラッと来るけど)

最原(……こんなバカ全開のやり取りをまたやれたのは、素直に嬉しいな)

最原「ところで、その白銀さんはどこにいるの?」

茶柱「一緒にいなかったんですか?」

最原「四六時中一緒にいるわけじゃないから……」

茶柱「ふむ? まあ東条さんの料理ができるころにはやってくるでしょう」

茶柱「あ、その……それはさておいて、最原さん、ごめんなさい……」

最原「え?」

茶柱「後で白銀さんに聞きました、二人は恋人同士とかそんなんではないらしいですが……」

茶柱「その、随分と仲良しだと後で聞きましたので」

茶柱「一方的に蹂躙したことに関しては謝罪します」

最原「ああ、いいんだよ。あれは。ちょっと調子乗ってたってのはあるからさ」

茶柱「しかし……うう。あまり認めたくない事実です」

茶柱「こんな関係が現実に存在するなんてッ!」

最原「ん? なんのこと?」

茶柱「言っておきますが、転子はあなたたちのように爛れた関係を持つ気はありませんからね!」

茶柱「そ、その……セックスフレンド、などと……汚らわしい……!」ワナワナ

最原「ちょっと待って、本当に何のことッ!?」ガビーンッ!

茶柱「聞けばあなたたちは夜な夜な街に繰り出しては、お互いに奴隷役と主人役を代わりばんこで務めたり」

茶柱「お互いに縄で縛ったり縛られたり」

茶柱「特に最原さんは手錠プレイをしたいがために探偵になった節もあるド変態だとか……」

茶柱「ううーーーッ! ひ、酷い! こんなことが現実にあっていいはずが……!」

最原「待って待って待って! その話の出所どこ!?」

茶柱「何度も言ってるでしょう。白銀さんですよ」

最原「マジで!?」ガビーンッ

百田「最原、お前、そんな甘いマスクしててとんでもなくエゲツない性癖してたんだな……」ガタガタ

最原「誤解だよ! いや、白銀さんの嘘だよッ!」

茶柱「え? どの部分がですか? 奴隷、緊縛、手錠、赤ちゃんプレイの内のどのあたりが?」

最原「全部だよっ……待って、赤ちゃんプレイって何!? そんなことも言ってたの!?」

百田「おっ、噂をすれば影だな。白銀がいるぞ」

白銀「……」ビクッ

最原(見ると、食堂の出入り口のあたりで青い顔をして立ち往生している白銀さんと目が合った)

最原「ちょっと白銀さん! こっち来てこっち!」

白銀「う、うん」スタスタ

最原「どうなってるの!? なんでこんな嘘を……!」コショコショ

白銀「ご、ごめんなさい。あの後、人間の形すら留めてなかった最原くんに茶柱さんが追撃しようとして……」コショコショ

白銀「っていうか完全に息の根を止めようとしてて……!」

白銀「あれを止めるためにはもう本当に、入間さんレベルのえげつないエピソードを用意するしかなくって……!」

最原(ぜ、善意の行動だったのか)

最原(……いやそれにしたってこれは酷いぞ!?)ガビーンッ!

茶柱「白銀さんっ! 転子はいつだってあなたの味方ですからね!」

茶柱「いつでも相談してくれても構いませんからね!」キラキラ

最原(そしてこっちもこっちで完全に善意だ!)

白銀(地獄にまっしぐら)

茶柱「既に女子のネットワークを通じて、全員にこの事実を周知してます!」フンス

最原「」

茶柱「安心してください! この学園にいる女子全員があなたの仲間ですからっ……!」

茶柱「おのれ男死、なんとしてでも滅ぼすッ!」

百田「おい。後半から本音出てるぞ」

赤松「最原くん……」

最原「あ、赤松さんっ!?」

赤松「……ま、まあ、関係って人それぞれだから」フイッ

最原(こっちに一切目を合わせてくれない)

最原(一刻も早く誤解を解かないと! こんなときに頼りになるのは……)キョロキョロ

最原「あ、春川さん! 夢野さん!」

春川「っ!」ビクゥッ

夢野「んあっ!?」ビクゥッ

最原(やっぱり最後の学級裁判まで共に駆け抜けた、この二人だ!)

最原「二人ならわかってくれるよね!? 僕はそんなことしないって! ね? ね!?」

春川「やめて近寄らないで」

最原「」

夢野「んあー! お主のことなんぞ知らんぞ! 怖いから寄るな! あっち行け、しっしっ!」

最原「」

白銀(哀れな……)

最原(ま、まずいぞ! 元からこんな茶番に乗るつもりはなかったけど!)

最原(好感度が重要な今回の学園のルールからして、このスタートは本当にまずい!)

最原(強くてニューゲームどころか最悪のニューゲームだ!)

最原「し、白銀さん! なんとか言ってよ! 全部嘘だったって!」

白銀「あ、最原くん。このタイミングでそれはアウト」

最原「え?」

茶柱「じ、自分の罪を隠そうとしたってもう無駄ですからね!」

茶柱「白銀さんを脅そうなんて最低ですよ、男死!」

女性陣「……」ジトーッ

最原(確かにこの状況だと白銀さんに偽証を強要したようにしか見えない!)アワワ

白銀(哀れ、最原くん。紅鮭団の初日はこのような最悪のスタートを切ったのでした)

白銀(完)

最原(勝手に終わらせないでよッ! 続くよ!)

※再度のアナウンス

モノクマ「酷い下ネタが続きますが、Rで立て忘れたので」

モノクマ「……」ギンッ!

モノクマ「アレの最中の描写は、ありませんっ!」

モノクマ「エロ方面に特化したギャグが続くのみです!」

モノクマ「ソーリー!」

休憩します!

一時間後

最原(女性陣から生暖かい目、または養豚場の豚を見るような目を向けられる地獄のような食事が終わった)

最原(男性陣も男性陣でどこか感心するような目でこちらを見ていたが、当然嬉しくない)

白銀「最原くん。最原くん」ポンポン

最原「ん?」

白銀「ごめん、流石にこんなことになるとは思わなくってさ」

白銀「ちょっと首謀者ルーム……あ、マザーモノクマがいたあの部屋に行こうか?」

白銀「話があるんだ」

最原「……うん」


その後


春川(一体なんだったんだろう。あんな地味の極みみたいな最原と白銀が、そんな……)

春川(微妙に信じられないんだけど)

最原「やっぱり女子トイレ?」コソコソ

白銀「うん、女子トイレ」コソコソ

春川(ん? あの二人、一体何を……)

白銀「ほら。速く入って入って」ガチャリンコ

最原「お邪魔します」コソコソ

春川「ッ!?」ガビーンッ


春川はその後、一階の女子トイレに怖くて入れなくなった

首謀者の部屋

最原「……近かったから入っちゃったけど、よく考えたら図書室から入ればよかったんだよ」

白銀「あー。いや、あっちはあっちで結構目撃のリスクが高いからさ」

白銀「さてと。まあそれは置いといて。モノクマ!」

モノクマ「はいはい。モノクマ登場だよー!」ビヨヨーンッ

白銀「ひとまず前置きはよしとこう。私たちのラブラブ度を確認させて」

モノクマ「了解! オマエラのラブラブ度は……」

モノクマ「まず最原くん。女性陣からの好感度は白銀さんを除いて軒並み壊滅でした!」

最原「だろうね!」

モノクマ「いやまあ、関心を引いてるっちゃ引いてるから挽回のチャンスはあると思うけどね!」

モノクマ「次に白銀さん! まあ若干引かれてたけど、地味そうな見た目してて……ってギャップにやられた人続出!」

モノクマ「割といいスタート切れてます! ラブラブ度、平均より高めです!」

白銀「わーい」

最原「酷い話だ……!」

白銀「んー。本当にこればっかりは申し訳ない、って言うしかないよね」

白銀「首謀者が一人の生徒に対して過干渉とか、結構興醒めだしね」

白銀「今ではちょっと反省してるよ」

最原「……素が出てるの?」

白銀「ん?」

最原「前回はさ。首謀者だってことがバレないように地味な役割に徹してたでしょ?」

最原「今回、その必要がないから、ちょっと大胆になってるんじゃないかな」

白銀「……あー、うーん、それもあるかもしれないけどさ」

白銀「多分、私を突き動かしてるのは私怨だよ」

最原「私怨?」

白銀「……ダンガンロンパを終わらせたこと、私、結構根に持ってる……」

白銀「いや、はっきり言って、この場で殺してやりたいとすら思ってるよ」ギンッ!

最原「え」ドキリ

白銀「……はは! バッカだねぇ最原くん! こんなにホイホイあっさりついてきちゃってさ!」

白銀「私が前回、何をしたのか忘れちゃったの!?」

白銀「天海くんを殺して、赤松さんに罪を押し付けて、百田くんにウイルスを投与して!」

白銀「直接的に手を下したものだけでも三人殺してるんだよ?」

白銀「ちょーーーっと警戒心が足りなかったんじゃない?」ニヤニヤ

最原「……ああ」

白銀「……え? 何その気の抜けた返事」

最原「ええっと、そうだった……キミ、首謀者だったね」

最原「……あれ? んん? おかしいな」

白銀「?」

最原「……そっか。何かずっと違和感があるなって思ったら……」




最原「なんか、怒る気になれないんだ」

白銀「は?」

最原「……ねえ。白銀さん。僕、前回のコロシアイの最後のときにさ」

最原「なにか、キミに訊いたと思うんだけど……なんだっけ?」

白銀「……!」

最原「なんか……最後の最後にとてもショックなことがあったことだけは覚えてるんだけど」

白銀「……は、はは。そっか。そうなんだ。忘れちゃったんだ」

白銀「運が良い、って言えるのかな……」

最原(小さく呟く白銀さんの顔は、どこか寂しそうなものだ)

最原(やっぱり何かあったらしい。そして忘れているのは僕だけだ)

最原(とても大事なことがあった気がする。それを何が何でもそれを思い出さないと、という焦燥感だけがある)

最原(彼女が教えてくれれば、全部解決なんだけど)

白銀「……教えないよ」

最原「え?」

白銀「……私の命に代えても、絶対に教えない」

白銀「教えるもんか……!」

最原「……」

最原(なんとなくこうなる気はした)

白銀「……どこまで覚えてる?」

最原「前回、コロシアイしたってこと。ざっくりした概要くらいしか思い出せないんだけど」

最原「……よく考えてみたら、タイムスリップをしたって事実を抜きにしてもおかしいな」

最原「記憶喪失になってる、と言えるのかもしれない」

白銀「……そっか。ねえ、本当に私に怒る気になれない?」

最原「……」

最原「おかしいな。本当に、まるで怒りが湧いてこない」

最原「赤松さんが死んだとき、本当に悲しかったことだけは覚えてるのに」

白銀「……ああ、そう」

白銀「……もういいや。帰っていいよ、最原くん」

最原「え」

白銀「本当にバカだな。私がキミをここに連れてきたのはさ」

白銀「キミを殺すためだよ」

最原「……」

ズキン

最原(また頭痛がする。なんでだろう)

白銀「……でも、今回はもういいや」

白銀「前回のコロシアイのことがうろ覚えなら、急ぐこともないし」

白銀「……だから、帰って」

最原「うん。わかった。そうする」

白銀「図書室の方の入口からでいいよ。誰もいないから」

最原「……」


ウィーン スタスタスタ


白銀「……」

白銀「……覚えてない。覚えてない、か……」

白銀「どうなんだろ。やりやすくなった、のかな……」

白銀「……わかんないや」

最原「……さてと。ひとまずやることなくなっちゃったし、このまま寄宿舎に」

ゴソゴソ

最原「……ん。ゲームルームから気配がするな?」

最原「誰かいるの?」

夢野「んあ?」

夢野「……」

最原「あ、夢野さん」

夢野「ん、んあーーーッ!? 手錠プレイ大好きド変態の最原ーーーッ!」ガビーンッ!

最原「」

夢野「な、ななな、なんということじゃ。転子から逃げるつもりで駆け込んだゲームルームでこんな……!」

夢野「くっ、ま、負けんぞ! うちは手錠プレイなんかに負けんぞ!」ガタガタ

夢野「どんな拘束からでもすぐに抜け出してみせるわい! 仮にも魔法使いじゃからのォ!」

夢野「ウチは手錠プレイなんかに絶対に負けたりはせん! 来い! 最原!」

最原「……」

最原「うう」ポロポロ

夢野「ええっ!? な、何故泣く!?」

最原(夢野さんに会えたのは嬉しい。お互いに無事であることも喜べる)

最原(けど……夢野さんを知っているのは僕だけで……しかもド変態呼ばわり……!)

最原(なんだろう、この謎の喪失感。二人とも生きてるのに、夢野さんを失ったような……!)

夢野「んああ……んああ……」オロオロ

夢野「んあー……」ナデナデ

最原「えっ……」

夢野「悪かったわい。そうじゃよな。流石に相手が誰でもいいってわけでもないんじゃよな」

夢野「ド変態呼ばわりしてすまんかったの。ちょっと取り乱してたんじゃ。撫でてやるから許せ」ナデナデ

最原「……」

最原「夢野さん……!」ブワッ

夢野「それにしても泣き虫じゃのう! ウチにこんな面倒なことさせおってからに!」

夢野「後でウチの研究教室に来て、魔法の稽古にでも付き合ってもらおうかの」

最原「……」

最原「ん? 研究教室?」

夢野「んあ? ああ、知らんのか? ウチらには十六人分の研究教室がそれぞれあるんじゃぞ?」

最原「……あれ」

最原(もうできてるのか? おかしいな、初日から夢野さんの研究教室が解放されてるなんて)

最原(確かこの学園は、僕たちが来たときには改築、増築中で、夢野さんの研究教室が解放されたのは赤松さんの学級裁判の後だ)

最原(……なにか変だな)

最原(いや、というか、このゲームルームだってそうだ。さっきの体育館も)

最原(草が生えてない。全然)

最原(一体どうして……)

ガララッ

茶柱「ああ! 夢野さん発見ー! こんなところにいたんですねー!」

茶柱「さあ、夢野さん! 是非ともこの転子に魔法をお見せくださ……」

最原「……」

夢野「……んあ?」ナデナデ

茶柱「んっ?」

ドカドカバキバキッゴキリグチャッ

茶柱「ふぅーーーっ……ふぅーーーっ……油断も隙もあったもんじゃない!」

茶柱「なんなんですか最原さん! フェロモンですか!? フェロモンでも出してるんですか!?」

茶柱「そのそこそこ端正な顔立ちで何人の女子を毒牙にかけたんですか!?」

茶柱「母性本能をくすぐってたぶらかすのが常套手段なんですかぁ!?」

夢野「ご、誤解じゃ転子! なんか……最原はそういう感じの男ではないっぽいぞ!?」

茶柱「あわ、あわわわわ! 面倒くさがりの夢野さんが庇いだてするなんて!」

茶柱「可愛い! いやそれどころじゃない! この男死ィィィ!」

最原「う、ぐ……茶柱さん……」

最原「……」

最原(正直、理不尽な暴力を振るわれていることは腹立たしかったけど)

最原(でも同時に懐かしかった。元気な彼女の姿を再び見れたことは、とても嬉しかった)

最原(……この声を、また聴けたことが、嬉しい)

最原「酷い目に遭った……ギリギリ気絶するレベルじゃなかったけど」

最原「ん? あれは……」

王馬「……」コソコソ

東条「……」キョロキョロ

最原「……」

最原「東条さーーーん! 王馬くんならここだよーーー!」

王馬「!?」ガビーンッ!

東条「……流石超高校級の探偵ね。私が何をしていたのかを察するなんて」

王馬「うおおおおおお! 逃げる! 俺はこんなところでっ……!」

シュッ

東条「捕まえたわ」

王馬「たはー! 捕まえられちゃった!」テヘリン

東条「お説教のお時間よ」ズルズル

王馬「い、いやだーーー! 殺せ! いっそ殺してくれーーー!」

最原(……懐かしい。本当に)

最原「……っと、そうだ。研究教室が解放されてるのなら、油売ってる場合じゃないな」

最原「早くあそこに行かないと!」


超高校級の暗殺者の研究教室前


春川「……ん」

最原「あ、えーと、春川さん……」

春川「赤ちゃんプレイ大好きのド変態の最原……」

最原「違う!」

春川「何の用? もう夜もいい時間なんだけど」

最原「春川さん。あのさ……その中、もう僕見ちゃったよ」

春川「は?」

最原「……だからもう隠す必要はない、と思うんだけど」

春川「……」

最原「……今日は色々あって疲れちゃったでしょ? 寄宿舎に戻って休んだら?」

春川「……そんな見え透いた嘘、引っかかるわけないじゃん」

最原「超高校級の暗殺者、なんでしょ?」

春川「ッ!」

最原「……白銀さんも知ってる。だから、もういいんだ」

春川「……」

春川「……アンタ、長生きできないよ」

最原「え?」

春川「好奇心、猫をも殺すっていうでしょ?」

春川「しかもお節介だしね」

最原(まあ実際、一回死んでるしなぁ)

春川「……はあ。わかった。確かにもう、ここを守る必要もない、か」

春川「引き上げるよ」

寄宿舎へ向かう道中


ドレミファソラシドー

春川「……ん。何、この音楽」

最原「シャトルラン、かな? こんな時間に誰が……」

百田「ふんぬがああああああああ! 負けるかあああああああ!」ズダダーッ

星「……」スタターッ

アンジー「二人ともー! 頑張れー!」

最原(シャトルランを走っていたのは、星くんと百田くんだった)

最原(音源を流すラジオの隣では、アンジーさんが無邪気に応援している)

最原(あの分だと、多分星くんの方が多く走るな。百田くんはちょっと余分な体力を消費しすぎてる)

星「……いい加減諦めちまえ。もう充分だろう?」

百田「断る! 俺の辞書に諦めと放棄の言葉はねぇ!」

星「強情っぱりめ」

百田「テメェが諦めよすぎなんだよ!」

最原「……ああ。やっぱり星くんと張り合ってるんだ。百田くんらしい」

アンジー「あ。SMプレイ大好きなド変態終一だー!」

最原「一々僕の性癖を読み上げるの流行ってるの!?」ガビーンッ

春川「実際ド変態でしょ」

春川「白銀と一緒に女子トイレで何を……」ボソッ

最原「え? 今なんて?」

春川「なんでもない」

十分後

最原「……し、信じられない。あの星くんと引き分けるなんて!」

百田「はぁーっ……はぁーっ……」

星「……」ゼェゼェ

アンジー「にゃははー! 神った名勝負だったよー! ナイスファイト!」

春川「バカじゃないの? ここまで意地を通す必要あった?」

百田「男が意地を通せなくなったら終わりだろうが!」

春川「……やっぱりバカだった」

百田「バカって言うな!」

最原(やっぱり百田くんは滅茶苦茶だなぁ……)

百田「あ、ダメだ。これかなりダメだ。マジでもう一歩も動けねぇ。いや、というより……」

春川「ぶっ倒れた状態で足だけがまだ動いてるね」

春川「……まあ正しいよ。いきなり足を止めても、それはそれで負担になるから」

星「……」スタスタ

最原「あれ。星くんはもう大丈夫なの?」

星「ふん。んなわきゃあるかよ。俺もかなりギリギリだ」

星「ただ回復が早い性質ではあるがな」

百田「こんにゃろ。手ェ抜いたりしてねぇだろうな」

星「全力だった」

百田「そうかよ」

星「……いい勝負だった」

百田「……」

最原(星くんはそのまま、寄宿舎の方へと歩いて行った)

最原(……星くん。今度こそ、この学園で何かを見つけてくれるといいんだけど)

百田「……それで。アンジー、結局俺たちは何回往復したんだ?」

アンジー「え?」

百田「数えてろって言っただろ? 多分世界新記録とか叩き出してるぜ!」

アンジー「……」

アンジー「……」ダラダラダラ

春川「……夜長。あんたまさか」

アンジー「さーて、部屋に戻ってぬか床をかき混ぜないとなー!」スタスタ

最原「あ、あれ? アンジーさん? 回数は?」

アンジー「……」

アンジー「……ぬか床っ」ダッ!

最原「逃げた!」ガビーンッ!

春川「アイツ数えるの忘れてたんだね」

百田「……」ガーンッ!

最原「……えーっと……どんまい」

最原(それにしても、偶然かな。このメンバーが夜に揃うなんて)

最原(うう。涙が出そうだ……)

春川「じゃ、私は寄宿舎に行くから。おやすみ、二人とも」

最原「あっ! ちょっ、待って春川さん!」

春川「なに?」

最原(咄嗟に引き留めてしまったが特に何を考えていたわけじゃない!)

最原「ええと……百田くんの傍についててくれるかな?」

春川「は?」

最原「僕は水とかタオルとかを倉庫から持ってくるからさ」

最原「……お願い」

春川「……ま、いいよ。アンタには借りもあるしね」

最原「ありがとう!」

百田「おお、悪ィな二人とも」

最原「……」

最原(本当に夢みたいだ)

最原(夢なら覚めないでくれ)

白銀「……」

白銀「さてと。仕込みはいい感じだね」

白銀「期間は十日。この間に、キッチリとすべてをこなしてみせる」

白銀「……やり直しのチャンスは一度だけ。もう私は間違えない」

モノクマ「本当にこれでいいの?」

白銀「あれ。モノクマ。随分と甘いことを言うね。一応ダンガンロンパのマスコットでしょ?」

モノクマ「そうだけどさ」

白銀「……」

白銀「……これでいいんだよ。絶対に」

モノクマ「……そ。まあ、ボクには関係ないや。せいぜい頑張ってよ」

白銀「……」

白銀「……ごほっ」

お風呂休憩します!

旧約、前の世界の第二章:限りなく地獄に近い天国

白銀(オッス! オラ首謀者! なんと今回は東条さんが処刑されちゃった!)

白銀(しかも春川さんの暗殺者バレ!)

白銀(予想以上の超展開! オラ、ワクワクしてきたぞ!)

白銀「……さてと、最原くんのところ行こうかな……多分この時間なら……」

白銀「超高校級のピアニストの研究教室かなぁ」

超高校級のピアニストの研究教室with月の光

最原「……」

白銀(ほらね。やっぱり。また月の光聞いてる)

白銀(……でも前とは違って、そこまでダメージは深刻じゃなさそう)

白銀(うん。百田くんのお陰かな。彼も中々いいキャラクターだよね)

白銀「最原くん」

最原「あ。白銀さん」パァ

白銀(……ん。ただ話しかけただけなのに、妙に嬉しそうだな)

白銀(なにか良いことがあったとか? いや、悪いことしかなかったけど)

白銀(まあいいか)

白銀「いい曲だよね。月の光、だっけ?」

最原「うん。赤松さんが教えてくれた曲なんだ」

最原「……また、コロシアイが起こったね」

白銀「うん……あ、でも……最原くんのお陰でなんとか乗り切れたよ」

白銀「やっぱりすごいね。超高校級の探偵なだけあるよ」

最原「……僕は……」

白銀「……」

白銀(ふふふ。なんてね。最原くんが、その才能を疎ましく思ってることは知ってたりして)

白銀(持ち上げれば持ち上げただけ『コロシアイを止めることはできないけど』って自己嫌悪に陥る)

白銀(『真実を暴いて誰かを追い詰める最低の力』だとすら思ってるんだよね)

白銀(知ってるよ! だって、私がそういう設定にしたんだから!)

最原「……僕一人の力じゃない」

白銀「へ?」

最原「……守りたい人がいるからだよ。だから、頑張ろうって思えるんだ」

白銀「……そっか」

白銀(んん。ちょっと予想外だな。百田くん、ちょっと最原くんを元気づけすぎじゃない?)

白銀(まあ、これはこれで。強い心は、壊れたときの反動が怖いからね!)

白銀「ところで、その守りたい人って、誰?」

最原「そ、それは……」

最原「……」カァァ

白銀「ん?」

最原「あ、え、えっと! みんな! みんなだよ!」

白銀「そっか。うん、そうだよね。みんなで外に出たら友達になろうって約束もあるしね」

最原「……うん」

白銀「?」

白銀(……なんだろう。何か、後悔してるような素振りだな)

白銀(うーん、わからない。コミュ障気味のオタ女子には荷が重いな……)

白銀(まあ、いいか! 赤松さんとの約束を大事にしてるってことがわかっただけで大収穫でしょ!)

白銀「……これからも頼りにしてるからね。最原くん」

最原「頼りにされない状況であることが一番だけどさ」

最原「……うん。頑張るよ。キミ……たちのためにッ!」

白銀「やる気満々だね」



白銀(……この時点で、気付いてもよかったのかもしれない)

白銀(というより、気付かなかった私がバカすぎたんだ)

白銀(いや……気付いてたのに、気付かないフリをしていただけだったのかも)

白銀(……もしも時間を遡れるなら、私は……)

ちょいと長い休憩。場合によってはこのまま寝ちゃうかも

二日目 最原の自室

最原「……」

最原「なんか、段々思い出せてきたような……」

最原(そういえば、そもそも女性陣に誤解されるきっかけは白銀さんへのセクハラ行為が元だったな)

最原(あれどう考えても僕のキャラじゃなかったけど、なんか『白銀さん相手ならいいか』って思って……)

最原(……謎を解く鍵は、僕と白銀さんが前の世界で何をしてきたのか、だな)

最原「この世界、なんかおかしいぞ。そもそも二周目なんて、本当に起こってるのかな」

最原「時間はまだある。なんとか調査しないと……」


ピンポンピンポーンッ


百田「終一! 無事か! 終一!」ドンドンドンッ

最原「ん? 百田くん?」

百田「左手に何か引っ付けられたりしてねーか! 大丈夫か!? おい!」ドンドンッ

最原「左……うわっ、何これ! いつの間に!」

最原(腕輪……ていうかバングルか? 外そうとしてもキツく締まってて、取れない)グッグッ

最原「あ、百田くん! 今ドアを開けるから待ってて」

ガチャリンコ

百田「はあっ……はあっ……今、何時何分だ!?」

最原「ええっと……七時五十八分だね」

百田「あと二分しかねぇ! おい! お前のNG行動はなんだ!?」

最原「NG行動?」

最原(ん? バングルと、NG行動。なんかどこかでこのシチュを見たような……)

最原(ああ、ダンガンロンパ3だコレ)

百田「今すぐ確認しろ! 小型ディスプレイがついてるはずだ!」

最原「ええっと……」

ディスプレイ『あなたのNG行動:茶柱転子を中心とした半径5mの空間の外で呼吸すること』

最原「なんだろう! 事情はまったくわからないけど、絶体絶命な気がする!」ガビーンッ!

百田「もう全員寄宿舎の中心に集まってる! さっさと行け!」

最原「え、も、もしかしてこのNG行動を取ると、毒が注射されたり……」

百田「毒? いやそんなことはないらしいが、そこそこ強い電気ショックは流れるって言ってたな!」

百田「命を奪う気はないが、命の保証もできないって言ってたぞ!」

百田「……モノクマがなッ!」

最原(よくよく見てみると、百田くんもバングルを装着させられている)

最原「……ところで百田くんのNG行動って、何?」

百田「あ? ああ、『最原に対しての最原呼び、および春川に対する春川呼び』だ」

最原(ああ、そっか。だから名前呼びに……)

最原(……)

百田「おい! 嬉しそうな顔してる暇があんのならさっさと茶柱んところ行け!」

最原「あ、う、うん!」

最原「……正直彼女に近づくくらいなら電気ショック受けた方がましだと思うんだけど」

百田「あ、それは大丈夫だ。俺が保証する」

最原「え?」

百田「まあ、行けばわかる」

最原(確かに寄宿舎の中心のホールには、他の生徒が全員集まっていた)

赤松「あ! 最原くん! やっぱりキミもバングル付けられちゃってたんだにゃん!?」

最原「にゃん!? 何その語尾!?」

赤松「私のNG行動が『語尾ににゃんを付けない会話をすること』だったから仕方なくって……にゃん」

赤松「八時からNG行動の適用開始だけど、今のうちに慣れておこうかにゃんって」

赤松「最原くんのNG行動はなんだったのにゃん?」

最原(赤松さんのNG行動、地味にきついな! 可愛いけど……)

最原「……あ、ええと。僕のNG行動は、茶柱さんから5m離れた上での呼吸、だよ」

茶柱「……は?」

最原「ご、ごめん茶柱さん! 投げたりしないで! 変なことしたりしないから!」

茶柱「ふ、ふふふふふ……モノクマぶっ殺し確定ですね……!」ガタガタ

最原「……え? あれ? どうしたの? 投げないの?」

茶柱「……転子の……転子のNG行動は……」

夢野「『男性に対する暴力行為全般』なんじゃ」

最原「えっ」

茶柱「誰か転子を殺してください……! もしくは、あのクマを……!」ワナワナ

茶柱「……一応言っておきますが、転子は電気ショック程度どうでもいいんですよ!」

茶柱「ただ、その……夢野さんのNG行動が『茶柱転子がNG行動違反を起こすこと』だから……!」

最原「二重で縛られてるんだ! 茶柱さんだけ!」

夢野「……転子よ。頼むから、最原に対しての攻撃はやめるんじゃぞ」

夢野「ウチは電撃びりびりはイヤじゃ」

茶柱「ぐぬ……ぐぬぬぬぬぬ」

茶柱「あ! そうだ! 最原さんが電気ショックに耐えればすべて解決では!?」

茶柱「転子だって近づかない男子を無暗に殴る必要はないんですし!」

最原「冗談じゃない」

茶柱「ですよねー」

東条「あと一分で適用タイムね」

最原「……」

最原「……あれ。モノクマは?」

最原(白銀さんはいるけど)

ピンポンパンポーン!

モノクマ「えー! 時間となりました! 各自、バングルに表示されたNG行動を適用させていただきます!」

モノクマ「今後、NG行動を犯した生徒は、そこそこ強い電撃を受けることになりますのでご注意ください!」

最原「モノクマ……!」

モノクマ「それでは、各自ルールを適用したところで……」

モノクマ「才囚学園全生徒が送るKAKURENBO GAMEの開始を宣言しまーっす!」

入間「かくれんぼだぁ? んだよ、なんでそんなガキくせーことしなきゃなんねーんだよ」

入間「くだらねー。これなら部屋で大人のオモチャをグレードアップさせた方が百倍マシ」


ビビーッ!


入間「ぎゃあああああああ!」ビリビリ

最原「ええーーーっ!?」ガビーンッ!

天海「ああ。彼女のNG行動は『下ネタを口走ること』なんすよ」

最原(わかってただろうに言うあたり救いようがない!)

入間「」チーン

白銀「あー。地味に強力な電撃っぽいね。完全に伸びちゃってるよ」

天海「これを長時間受けることになったら、マジで死にかねないっすね」

東条「……腕を切り落としたくなってきたわ」

アンジー「本末転倒だからやめなよー。斬美は『料理』をしなければいいだけでしょー?」

アンジー「アンジーの場合は『神という単語の入った会話全般』だから、それよりかは」

ビビーッ

アンジー「あわばばばばばば!」ビリビリ

真宮寺「ああ、NG行動は一切の例外なくダメらしいね。気を付けないと」

最原「アンジーさーーーんッ!」

真宮寺「……スイッチを切り替えようヨ。多分、これ以降はNG行動違反はシャレにならないからネ」

アンジー「」チーン

赤松「早めに口調を矯正しておいてよかったにゃん……」

春川「……」ソワソワ

最原「ん。春川さん、なんか落ち着かない様子だけど、どうした……の……」

最原「……」ジーッ

春川「な、なに?」ビクリ

最原「……春川さんのNG行動って、もしかして『下着の着用』?」

春川「殺されたいの?」ギンッ

最原「ご、ごめんっ!」

王馬「おー。流石はド変態の最原ちゃん。気付いても言わないのが紳士なのにね」

獄原「紳士!?」

モノクマ「説明します! KAKURENBO GAMEとは、ボク&モノクマーズVS才囚学園の生徒全員でのかくれんぼです!」

モノクマ「学園のどこかに隠れたボクたちを見つけ、タッチした生徒はバングル解除!」

モノクマ「それ以外の生徒は、今日の深夜二十四時までバングルを装着し続けてもらいます!」

最原「……ん? 待て。モノクマーズは五体で、モノクマは一体、だよな?」

モノクマ「YES!」

最原「……じゃあバングルを外せない生徒は……」

天海「十人、ってことになるっすね。普通に考えれば」

モノクマ「まあ、何人かは凄く軽いNG行動だから、外せなくっても問題ないとは思うけどね」

茶柱「じょ、冗談じゃない! すぐにでもバングルを解除させてもらいます!」

茶柱「そして母乳プレイ大好きド変態最原さんを粛清です!」

最原「ねえ! 僕ってどこまでド変態だと思われてるの!? 一度ハッキリさせておきたいんだけど!」

モノクマ「それではKAKURENBO GAME、スタート! これを機に、みんな仲良くなれることを学園長は期待しています!」

ブツリッ

最原「あ。通信が切れた」

茶柱「だあああらっしゃあああああああッ!」ダッ

ガシッ

最原「待って待って待って! 独断専行しないで! 呼吸できなくなっちゃうから!」ギリリッ

茶柱「ひぎゃああああ! 腕を掴まれっ……ああ、うぎ……や、やめ……!」

最原「申し訳ないと思うけど放すわけにはいかない! 僕だって死にたくないんだ!」

茶柱「ああう……うわあああああ……」ガタガタ

王馬「あーららら。あの元気だった茶柱ちゃんが借りてきた猫のように」

東条「ひとまず全員のNG行動を整理することから初めてみましょう」

東条「百田くんのように軽いものなら、今日一日は我慢してもらった方がいいわ」

NG行動一覧

最原:茶柱転子から5m以上離れた上での呼吸
茶柱:男性への暴力行為全般
百田:最原への最原呼び、および春川への春川呼び
東条:料理
真宮寺:化粧道具全般との接触
赤松:語尾に『にゃん』が付かない会話
キーボ:人類への反論、口答え
夢野:茶柱転子のNG行動違反
獄原:人間を抱きかかえること、および背負うこと
アンジー:神という単語の入った会話
星:階段を下ること
白銀:最原終一に話しかけられること、および触られること
天海:ケガをすること
春川:下着の着用
王馬:飲料水全般の摂取
入間:下ネタ全般


最原「……確かに百田くんとかは結構軽いけど……」

東条「王馬くんの飲料水全般の摂取は、下手を打てば命に関わるわね」

星「俺はどうでもいいな。階段を上がる分には規制されてないし、降りるときは階段を使わなきゃいい話だ」

春川「……悔しいけど、私の下着の着用も、そこまで悪いものじゃ……」

春川「じゃなくって、命に関わることじゃないから後回しかな……」

王馬「キー坊は元からどうでもいいよね! 人類に反論する機能なんて元からないだろ?」

キーボ「……」ギリギリ

最原(キーボくんは後でフォローしないとな……)

最原(……そういえば白銀さんのNG行動は、僕に話しかけられることになってる)

最原(しばらく放っておいてくれっていう意思表示のつもりかな? 首謀者だし)

白銀「……」

最原(流石に電撃を浴びせるわけにはいかないから、今日一日は話しかけられないな)

東条「あの二人のように、うっかりで違反してしまう可能性がある以上、会話系のNG行動は優先度高めかしら」

百田「天海の『ケガをすること』も割とキツイぞ。いつ何が起こるかわからねーからな」

夢野「んあー。ウチのバングルも解除してほしいんじゃが……」

王馬「夢野ちゃん。夢野ちゃん」チョイチョイ

夢野「んあ?」

王馬「ごにょごーにょごーにょごーにょ」

夢野「……んあー……」

王馬「ま、騙されたと思ってやってみれば?」

夢野「……」

夢野「ウチは転子のことを信じておるぞ!」キリッ

茶柱「えっ」

夢野「だから……だから……ウチのバングルの優先度も低めでいいんじゃ!」

茶柱「えっ。えっ」

夢野「のう転子! お主はウチに電撃を浴びせたりしないじゃろ? な? な?」キラキラ

茶柱「」

百田「王馬。お前、夢野に何言った?」

王馬「悪魔の囁き」ニヤァ

最原「えげつなっ!」ガビーンッ!

一時間後

最原(ひとまず僕たちは話し合うだけ話し合った)

最原(星くんが学園中を軽く探って、モノクマやモノクマーズの位置を確かめたりもした)

最原(どうも『誰を優先的に助けるか』がゲームの趣旨らしく、かくれんぼの方は割と杜撰だったようで)

最原(向かえばすぐにタッチできる位置に彼らはいたらしい)

最原(最終的にバングルを解除することになったのは……)

百田「天海、王馬、アンジー、入間、キーボ、真宮寺、だな」

東条「会話系のNG行動を持ってる人を優先的に選んだ結果だけど」

東条「本当によかったの? 赤松さん」

赤松「うん。私はいいんだにゃん。今日一日猫語になるだけだし、真宮寺くんに譲るにゃん!」

真宮寺「悪いネ。僕にはちょっと、どうしてもこれが外せないんだヨ」

茶柱「……」ドヨーン

最原(茶柱さんの顔色が死体になってたあのときより悪くなってる……)

白銀「……じゃ、私もうっかりミスを避けるために、ちょっと消えるね」

白銀「まあ今日一日最原くんから離れてればいいだけだから、別にいいんだ」

最原(……何か企んでるのかな)

最原(いや、確かめられない以上、考えても無駄だな)

最原(茶柱さんの近くにいないと電撃浴びる羽目になるし。追跡もできない)

最原(……クソ。何かを企んでることだけは確かなのに!)

白銀「ふふ」

十分後

天海「タッチ」

モノタロウ「うわー!」

王馬「はいタッチ!」

モノキッド「ぐあー!」

アンジー「ターッチ!」

モノファニー「きゃー!」

入間「タッチだ!」

モノダム「……」

キーボ「タッチです!」

モノスケ「なんやて!?」

真宮寺「タッチ、だヨ」

モノクマ「……うぷぷ! ゲームオーバー! これにてバングル解除は締め切りです!」



最原(そして始まった。僕たちの妙な学園生活が、一日限定で!)

茶柱「既にキテます。かなりキテます。ふふふ」ユンユンユーン

最原(何が?)ズーン

昼 食堂

東条「……電撃覚悟で料理するのも、悪くないかしら」

星「やめてくれ。罪悪感で料理の味がわからなくなりそうだ」

最原「ひとまず各自で料理、もしくは果物とかを丸かじり、スナック菓子で空腹を誤魔化す、とかでしのごうか」

茶柱「媚薬とかを混ぜないでくださいよ! いくら白銀さんと一緒にいれないからって!」

最原「しないよ!? ていうか媚薬なんてないでしょ!?」

入間「ヤバイ原の研究教室の中に何本かあったぞ?」

最原「嘘っ!?」ガビーンッ

入間「あ、その内の何本かは俺様がくすねて魔改造してやったぜ!」

入間「報酬として一本やるよ。これで白銀を更に喘がせることが可能だぜ、ド変態のヤバイ原!」

最原(入間さんにヤバイとか言われるの本当にイヤだな……!)

茶柱「……」

茶柱「はあ。最原さんも気の毒ですね。いや、転子の方がもっと気の毒なんですが」

茶柱「……よりにもよって転子と一緒にいなきゃ、なんて」

最原「え? えーっと……それの何が気の毒なの?」

茶柱「は?」

最原「え?」

茶柱「……昨日、さんざっぱら投げ飛ばしましたよね? そのことに関して何か思うことは?」

最原「え? い、いや。別に。痛いなー、イヤだなー、くらいだけど」

茶柱「……やっぱり最原さんは筋金入りのド変態ですね」ヒクワー

最原「なんで!?」ガビーンッ

茶柱「あ、いや、でもその打たれ強さは認めてあげてもいいですよ」

茶柱「……ネオ合気道を教えてあげましょうか? どうせ一緒にいなきゃですし」

最原「……うん。じゃあご飯の後で、お願いしようかな」

最原(やっぱり男子嫌いなだけで、悪い人じゃないんだよなぁ)

最原(……間違っても死んでいい人じゃなかった)

一方そのころ 首謀者ルーム

白銀「ふふふ。そろそろ気付くころかなー、最原くん」

白銀「実はこのゲーム、全員がバングルを外す方法があるんだよね。しかも簡単に。ね? モノクマ?」

モノクマ「……」

白銀「私は最原くんに喋りかけられただけで電撃を浴びてしまう」

白銀「つまり、その気になれば最原くんは私に対して拷問し放題ってこと」

白銀「そして、彼はモノクマを増やす方法を知っている」

白銀「私がマザーモノクマに対して命令すれば、モノクマを増産できる」

白銀「……ふふふ。ここまで来ればもう簡単。そう、このゲームの裏技。それは……」

白銀「私を拷問にかけて、モノクマを無理やり増やすことなんだよ! 後は増やしたモノクマにタッチするだけ!」

モノクマ(……それ以前に、拷問されないように自分が真っ先に腕輪を解除できるんだけど……)

モノクマ(気付いてるのか、気付いた上で腕輪を解除してないのか……どっちにしろバカの極みだね)

白銀「まだかなー。最原くん、まだかなー」ワクワク

白銀「絶対来るよね! だって茶柱さんと一緒だもん! 気が休まるわけがないよ!」ワクワク

白銀「すぐ来る! 今に来る! 絶対来るって! ね!」

モノクマ「……」

白銀「ふふ。ふふふふふ……楽しみだなぁ……ごほっごほっ……」

モノクマ「大丈夫? 痛み止め飲む?」

白銀「いい。もう効かないから」

モノクマ「……」

モノクマ(こねーよ。まあ、言わないけど)


超高校級の合気道家の研究教室

茶柱「まずは基礎体力を作ることから始めましょう! スクワット五百回くらい行きますよ!」

最原「多いよ!」

茶柱「その後は腹筋五百回が控えてるんです! 弱音を吐かない!」

茶柱「転子と一緒にいるんなら、この程度はやってもらわないと!」

茶柱「ほら、早く早く!」

最原「うう。気が休まらないなぁ」

茶柱「何か言いました?」

最原「なんでもない!」

モノチッチ「……」プーン

モノチッチ(うん。なんか割と上手く行ってるね)


最原がバングルの裏技について考えることは、最後までなかった

昼ごはんの休憩!



最原「はぁっ……はぁっ……つ、疲れたーーー!」

茶柱「はい。ご苦労さまです。ネオ合気道の世界の戸口前くらいには来れましたよ」

最原「まだそんなところなの?」

茶柱「仮にもネオ合気道を志す身として、そう甘いことを言うわけにはいかないんですよ」

最原(実際のところ、いいところまで来てるって言ってるようなもんじゃ……)

茶柱「たった今気づいたんですが、5mって結構遠いんですね」

茶柱「……最原さんをイジメたら、また夢野さんに怒られちゃいますし」

茶柱「もうちょっとくらいなら近くに来ても……いいです、よ?」

最原「え」

茶柱「か、勘違いしないでください。夢野さんに怒られたくないだけですから!」

茶柱「……そうに違いないんですから」

最原「あ、う、うん」

茶柱「……ある程度、一緒にいて最原さんのことがわかりました」

茶柱「何か大きな悩みを抱えていますね?」

最原「……」

最原(前の世界でもこんなことあったような気がするな)

茶柱「答えなくっても結構です。そこまであなたに興味ありませんし」

茶柱「……ただまあ、そうですね。ちょっとくらいなら手を貸してあげなくもない気分です」

茶柱「ちょっと! ちょっとですからね! ちょっと!」

最原「ん。確かに悩みはあるけど……大きいってほどじゃ」


ズキンッ


最原「うぐっ……!」

茶柱「?」

最原(今までで一番酷い頭痛が……!)

茶柱『へえ。やっぱりそうだったんですね。いや、やっぱりって言うほどでもないですね。バレバレでしたし』

最原『ば、バレバレ!?』

最原(……何かが見える……)

茶柱『ああ、大丈夫ですよ。本人が何故かまるでわかってないようでしたから』

茶柱『彼女、あなたのことを単なる友達程度にしか思ってないですね。確実に』

最原『……確実って……』

茶柱『ああ、もう! そこで下を向かない! ウジウジする男死なんて生ゴミと等価ですよ!』

最原『そこまで言う!?』

茶柱『まったく理解できません。好意はどーんと伝えるものでしょう?』

茶柱『抱え込んでどうするんですか!』

最原『……そう、だね。その通りだ』

茶柱『……やっと上を向きましたね。生ゴミから賞味期限の切れたパフェレベルまで回復しましたよ』

最原『それは生ゴミだ!』

茶柱『ま、頑張ってください。転子と夢野さん以上にはなれないにしても、あなたたちの相性も悪くないと思いますので』

最原(……そうだ。前も、こんなふうに茶柱さんと、この研究教室で……)

最原(何の相談をしてたんだ?)

茶柱「ちょ、ちょっと。大丈夫ですか? 水分補給が足りてませんでした?」オロオロ

最原「……いや、大丈夫。ちょっと立ちくらみしただけだ」

茶柱「ふむ……確かに顔色が悪いってほどでもないですね」

茶柱「……立ちくらみ程度ならお腹いっぱい食べれば治るでしょう!」

茶柱「食堂に向かいますよ!」

最原「うん」

最原(……段々と思い出せて来てる。あんまり焦る必要はない、かな?)

最原(そういえば白銀さんは今どこにいるんだろう)


首謀者ルーム


白銀「……ぐー」zzz

モノクマ「あーあー。ソファなんかで寝ちゃって」ヤレヤレ

モノタロウ「お父ちゃん! 毛布持ってきたよ!」

モノクマ「白銀さんにかけてあげなさい。ボクもう付き合ってられないから」

モノクマ「百田くんあたりをおちょくって遊んでこようっと」

夕食後

最原「ところで、夜はどうするの?」

茶柱「……流石に部屋には通しませんよ! 何がなんでもッ!」

最原「だよね。それじゃあ……」

百田「外で星を見ながら過ごすってのはどうだ!?」

最原「あ、百田くん!」

百田「ハルマキも誘っているぜ! 既に!」

春川「……も、百田。ごめん。許して。隠し事をしていたことは謝るから」

百田「バカ野郎! そんなことで怒るようなケツの穴の小さい男じゃねーぞ俺ァ!」

百田「ただ単に、お前に宇宙の素晴らしさをわかってもらいたいだけだ!」ニコニコ

春川「うん。余計なお世話。ねえ、本当やめて。私は……」モジモジ

最原(ノー下着状態でこれ以上動き回りたくないって顔だ)

最原「ところで隠し事ってなんのこと?」

春川「研究教室のことがコイツに真っ先にバレたんだよ」

最原「ああ」

春川「……こんなことなら何が何でも死守すべきだった」

茶柱「?」

校舎の外

王馬「ということでやって参りました! ご覧ください! 一面の星空です!」

獄原「うん! 本当にキレイで和むよね!」

真宮寺「見たことのない星の並びだから、星座の講義の一つもできないけど……ククク」

最原「……なんか全員揃う勢いで集まってきたよ?」

百田「て、テメェーら……そんなに宇宙が大好きだったのか!」

赤松「いや、ただ単に二十四時まで暇な上に眠れないから、なんとなく百田くんに便乗しただけなんだけどにゃん」

最原「……白銀さんの姿が見えないな。やっぱり」キョロキョロ

東条「ダメよ、最原くん。彼女のNG行動は結構引き金が軽いみたいだから、彼女の名前をそんな軽率に呼んでは」

最原「あ、ご、ごめん!」

夢野「しかし見たことのある星座が一つもないとは」

夢野「一体ここはどこなんじゃろうな?」

最原「……」

百田「何。心配すんなって。見たことのない星座が一つもないのなら……」

百田「俺たちが作ればいい!」

春川「は?」

百田「あれとあれとあれとあれを繋いで『宇宙に轟く百田解斗座』ァ!」シュバッ

王馬「じゃあ俺はあれとあれとあれとあれを繋いで『溶鉱炉に親指を立てながら沈むキー坊座』ァ!」

キーボ「沈みませんよッ!?」ガビーンッ

茶柱「あれとあれとあれとあれを繋いで『ベッドで微睡む夢野さん座』ァ!」

王馬「あっ、ちょっ、茶柱ちゃん! 端っこの星がキー坊座に被ってるんだけど!」

茶柱「知りません! むしろそっちが譲ってください! 親指のあたりの星を!」

最原「みんなどの星を指してるのかよくわかるね!?」

天海「あれとあれとあれとあれとあれとあれとを繋いで『妹に囲まれる蘭太郎お兄ちゃん座』っす!」シュバッ

星「全員欲望駄々流しの星座だな」

モノクマ「あの星とあの星とあの星を繋げて『世界を支配するモノクマ座』」

モノタロウ「あれとあれとあれを繋げて……あれ? どの星を繋げたんだっけ」

モノファニー「また忘れたのね!」

モノダム「……青春ダネ」

モノキッド「自然光ばりっばり! マイナスイオンが気持ち悪い空間だぜ! 死にたい!」

モノスケ「随分と屈折しとんな、感性が」

百田「うおおっ!? テメェーらいつの間にッ!?」ガビーンッ

最原(あれ。やっぱり白銀さんの姿が見えないな。モノクマやモノクマーズすら揃ってるのに)

最原(何かあったのかな?)

首謀者ルーム

白銀「……むにゃ?」パチリ

白銀「んん……今、何時?」

マザーモノクマ「二十三時五十四分だよ!」

白銀「ええっ!? 嘘でしょ!? 寝すぎちゃった!?」ガビーンッ

白銀「あ、あれ!? 最原くんは!? 来なかったの!?」アタフタ

マザーモノクマ「校舎の外で青春してるみたいだね! みんなして!」

白銀「は?」

マザーモノクマ「獣はいないのに除け者はいるんだね。ここに」

白銀「」

茶柱「だぁーーっはーーー! また負けたーーー!」

王馬「じゃああの星は俺が頂くね。これで『人類に反旗を翻すキー坊座』の完成だ!」

茶柱「おかしいでしょう!? なんでポーカーでこんなボロ勝ちできるんですか!?」

茶柱「ああああああ! 『浮き輪で水面に浮かぶ夢野さん座』があああああ……!」

アンジー「そうやって感情駄々流しにしてるから勝てないんだと思うよー?」

百田「今日は本当に快晴だな。空に手を伸ばせば掴めそうだぜ」

春川「……そうだね」

百田「そうだ。伸ばしてみるか? 俺がハルマキを肩車すれば案外本当に届くかも――」

春川「殺されたいの?」

最原(多分だけど、百田くん春川さんがノーパンだってこと忘れてるな……)




白銀「……ほ、本当だ! 本当にみんなで青春してる!」

白銀「お、おっかしいなー……最原くんのヤツはうんとキツいNG行動にしたはずなんだけどなー!?」

百田「しゃーねーな。ハルマキがイヤだってんなら……ふんぬがああああ!」

最原「うおわああああ! いきなり肩車しないでよ百田くん!」

百田「おーっし、これでOKだ! さあ宇宙に手を伸ばせ終一!」

最原「届くわけないって……あはは……!」

春川「……バカ全開だね」フッ




白銀「……」

白銀「……まあ、これはこれで……いいかな」

白銀「……今日はここまでにしてあげようっと」

モノクマ「混ざらないの?」

白銀「あ、モノクマ」

モノクマ「……オマエだって、一応才囚学園の生徒なんだけど?」

白銀「……はは。どの面下げて。私は首謀者なんだよ?」

白銀「混ざれるわけないじゃん。今更さ」

モノクマ「……そ。まあいいや。ボクは混ざるけどね! じゃ」ダッ

白銀「……」

ピンポーンッ

ガチャリッ

最原「あ」

最原(軽快な電子音を鳴らし、バングルは真っ二つに割れた)

最原「……二十四時になったんだ」

赤松「はー……猫語ももうやめていいんだよにゃん? 本当に疲れたにゃん」

星「おい。抜けてないぞ」

赤松「ハッ!」ガビーンッ

最原「……ん?」

最原(あれ。今、校舎の中に誰かが入って行ったような……)

最原「……」

最原「百田くん。ちょっとトイレ行きたいからさ。降ろして?」

才囚学園 廊下

白銀「すたんだーっぷ、またぼくをよーんでるーこーえーがー」ルンルン

最原「白銀さん! 待って!」

白銀「ん? 何? 最原くん」

最原「……あのさ。今外でみんなで集まって、天体観測……みたいなのやってるんだけど」

白銀「……」

最原「良かったら、今からでも白銀さんも一緒に――」

白銀「やめて」

最原「……え?」

白銀「仲間ヅラしないで」

最原「……実際に仲間でしょ?」

白銀「ッ!」

白銀「もう違うッ! とっくのとうに裏切ってる!」

最原「……ッ!?」

白銀「もう仲間ごっこは終わってるんだよ! 今更のこのこ戻れるわけが……!」グラッ

白銀(……まっず。このタイミングで……!)

白銀「……!」ダッ

最原「……白銀さん……」

白銀(……ついて……来なかった。よかった。この分なら、多分気付かれてない)

白銀「ごほっごほっ……けふっ……!」

ボタタッ

白銀「……ああ、いけない。制服が血まみれ……なのはまあなんとかなるとして、床が……」

白銀「最原くんが見たら多分気付いちゃうな……後でモノクマに始末させないと……」

白銀「……」

白銀「予定より長引いてる。さっさとしないと……」



白銀「私がウイルスで死ぬ前に、最原くんに殺されないと……!」

夕ご飯作ってきます! 休憩!

旧約、前の世界の第三章:転校生オブザデッド

白銀(前回までの、首謀者の奇妙な冒険は!)

白銀(アンジーさんが死んだ! 続いて茶柱さんも死んだ! 真宮寺くんがクロだった!)

白銀(ななな、なんだってーーー!?)

白銀(……あはは! 楽しかったなぁ! アンジーさんとの生徒会ごっこぉ!)

白銀「神様なんて、この世界にはいないのにね。世界観的にさ」

白銀「……さて。最原くんところに行こうっと」

白銀(とは言え、もう大丈夫な気はするけど。そろそろ引き際かなー)

コンコンッ

白銀「……ん。誰だろう。はーい、今開けまーす」

ガチャリンコ

最原「……あ、白銀さん。ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

白銀(最原くんのところに行こうと思ったら最原くんが部屋に来たでござるの巻)

白銀「どうしたの、最原くん。話って?」

最原「あ、ええと……その……アンジーさんのこと、なんだけど……」

白銀「アンジーさん?」

白銀(……っと、いけないいけない。そういえば私はアンジーさんの信徒だったんだ)

白銀(裁判のときも結構取り乱してた、って演技してたっけな)

白銀(面倒だな。もう悲しむ演技はしたくない)

白銀「……ごめん。最原くん。その話は、ちょっと……」

最原「ん。そう、だね。ごめん、でもいてもたってもいられなくって」

白銀「……あはは。今度は私が最原くんに慰められるなんてね」

白銀「あのときからは想像できなかったな」

最原「え?」

白銀「赤松さんのときとは逆だ、って思って」

最原「ッ!」

白銀(……本当、成長したな。多分もう、私がいなくっても最原くんは大丈夫)

白銀(最後まで生き残ってくれれば、きっと希望を掴みとれるよ)

白銀「……ありがと。来てくれただけで、随分楽になったよ」

白銀「だからもう、一人にしておいてくれるかな?」

最原「……」

最原「それはできない」

白銀「え」

白銀(何? まだ何か言いたいことがあるの?)

白銀(そろそろ演技にボロが出そうで怖いんだけど……)

最原「僕はさ、茶柱さんに相談したんだよ。ちょっとした恋の相談をさ」

白銀「え?」

白銀(何の話?)

最原「まあ、ちょっとした会話の弾みで、だったんだけど、結構いいことを言ってくれた」

最原「好意はどーんと伝えるものなんだってさ」

白銀「えーっと……?」

最原「……最悪のタイミングかもしれないけどさ。茶柱さんの言葉を無駄にはしたくない」

最原「だから、言うよ。僕は」

白銀「え」

白銀(最原くん、何を言って――)

最原「白銀さん。キミのことが好きだ」

白銀「……」




白銀「……は?」

白銀「……」

最原「……あ、えーっと……」

最原「キミのことが好きだ! 白銀さん!」

白銀「」

白銀「」




白銀「」

白銀(これが決定打)

白銀(真のバッドエンドへの序曲)

白銀(……私の最大最悪のミスだった)

紅鮭団時空

最原(恋愛観察バラエティは、最悪のスタートを切ったものの、段々と軌道に乗ってきた)

最原(僕のド変態扱いは相変わらずまだ続いているけど、みんなと徐々に仲良くなってきている)

最原(……ただ、白銀さんとの関係は、あれから修復できずにいた)

最原(そうして、それなりの密度を持った三日の時間が過ぎていき)

最原(ついに今日、バラエティー番組の期限十日の折り返し地点、五日の朝を迎えた)



五日目

最原の自室

最原「……前の世界のこと、半分くらい思い出せてきたかな」

最原(そうか。そういえば、僕は白銀さんに告白してたんだっけ)

最原(……なんて、まるで他人事みたいだけど)

最原(返事がどうだったのかすら思い出せないから、今一実感がわかない)

最原(ありえる。自分ならやりかねないな、とは思うんだけど……)

最原「白銀さんに聞ければ手っ取り早いんだけどな」

最原「最近避けられてるからなぁ……首謀者ルームは女子トイレからじゃないとカードキー必要だし」

最原「……いつか、どこかで捕まえて問いたださないとな」


ピンポンパンポーン!


モノクマ「えー! みなさん、おはようございます!」

モノクマ「突然ですが、プールを増築&改装しました!」

モノクマ「せっかくなので、早速泳いじゃってください!」


ブツリッ


最原「渡りに船、かな?」

最原(白銀さんも来るだろうな。多分。勘だけど)

百田「ロマン砲チャージ……」

王馬「100%中の100%!」

天海「うおおおおおお! 行ける! 俺は行けるっす! どこにだって……」

天海「……ハッ! 思い出した! 俺の才能は……超高校級の冒険家……!?」

天海「我が行くは無限のフロンティア!」

百田「マジかよ……天海の正体が……そんな……!」

王馬「ふっ! 上等! 超高校級の冒険家がいるのなら……百人力さっ!」

三バカ「行ィィィくぞォォォォォォ!」

最原「なんか凄くデジャヴュ感ある絵だーーーッ!」ガビーンッ!

星「むうう……あれは男のロマン砲!」

真宮寺「何ッ!? 知っているのかい、星くん!?」

星「遥かむかし、女風呂に入ることに生涯をかけた男たち、通称シーモネーターが作り出したと言われるオーバーテクノロジーの産物だ」

星「ヤツらは一説によると宇宙人の一種であり、人間の持つリビドーに特に関心を示したという」

星「今でも山奥にはシーモネーターが興した宗教団体がいて、あの砲台が二度と目覚めないよう見張ってるという話だったが」

星「まさかナマでお目にかかれるとはな」ゴクリンコ

真宮寺「す、すごいヨ。まさか星くんがあの砲台のことを知っていたなんてェ!」

真宮寺「ね、姉さんの友達に……いや、ダメだ! 姉さんが星くんに取られかねない! 本気で!」グゥ

最原「ねえ! その話どこからどこまでフィクション!?」ガビーンッ

百田「はっ! ド変態の終一! ド変態かつ俺の親友の終一じゃねぇか!」

王馬「なんてこった。これはもう戦力過多にもほどがあるんじゃないか!?」

天海「ふっ。俺の才能の復活が霞む勢いっすよ。流石ド変態の最原くん」ガシッ

最原「え?」

百田「さしずめ……勇者、魔法使い、盗賊、賢者ってところか?」

最原「え? え?」

百田「……行くぜ。女子更衣室」

天海&王馬「応ッ!」ズルズル

最原「応ッ! じゃないんだけど! 僕行くつもりないんだけど!」

最原「ぐああああああ! 誰か助けてーーー!」

獄原「……ええっと……まあ、みんな仲良しなのはいいことだよね!」

キーボ「理解不能……いや、理解する価値もありませんね」

女子更衣室

ドカァァァァァァン!

三バカ「ぐぴあああああああああッ!?」ベシャッ

東条「……バカね。もうとっくのとうにみんな着替えてるわよ」

東条「そして、覗きに入ってきたおバカさんを始末するために、ブービートラップも設置済み」

東条「まさか三人も来るだなんて思わなかったけど」

王馬「ば……ばく……だん……?」ガタガタ

入間「安心しろ。ギリギリ死にはしねぇよ。俺様の計算に間違いはねぇ」

百田「ふっ……これで勝ったと思うなよ……」ガタガタ

天海「ここで倒れても、今に第二第三の蘭太郎お兄ちゃんが……」ガタガタ

茶柱「もう黙ってください」グシャッ

元天海「」チーン

百田「天海ィィィッ!」

赤松「……さてと。じゃあ懸念事項も消えたし、みんなで泳ごうか!」

夢野「……んあ? 白銀はどこに行ったんじゃ?」

東条「ああ。そうね。彼女は水中眼鏡を忘れたとかで、一度寄宿舎に引っ込んでいったわね」

アンジー「待つー?」

赤松「先に行っててって言ってたし、いいんじゃない?」

春川「さっさと行こう」


スタスタスタ

ガチャリンコ

最原「……あっぶな!」

最原(爆破される前にロッカーに引っ込んでて助かった!)

最原(どうも僕は後ろの方にいたから、三人の影に隠れて女性陣には見えてなかったみたいだ)

最原「し、死ななくて……よかった。生きてることって素晴らしい!」

最原(……ああ、でもトラップはまだいくつか残ってるみたいだな)

最原(引っかからないように更衣室から出るとなると、かなり迂回しないといけないみたいだ)

最原(トラップのスイッチは、あの分じゃ東条さんが遠隔操作のリモコンとかを持ってるだろうし、切ることは無理)

最原「……まあ、やるしかないか」コソコソ



プール

東条「あ。白銀さん。これ、トラップのスイッチよ。更衣室に入るときは必ず切ってからお願いね」

白銀「う、うん。トラップ?」

東条「平たく言うとバカ殲滅爆弾よ」

白銀「さっき爆音が聞こえたんだけど」

東条「バカよ」

最原(あと少し……あと少しだ! この赤外線センサーを飛び越え、角を曲がればすぐに出口!)

最原(お粗末だな。赤外線そのものは見えなくっても、赤外線を発するセンサー本体が見えてれば問題ない!)

最原(迂回しなきゃ出られない……裏を返せば更衣室のセンサーの位置を把握する時間がたっぷりあるってことだしね!)

最原(もう既に、センサーの位置はすべて見切った! ここが最後の山場……!)

最原(うおおおお! 赤い帽子の配管工、僕に力をおおおお!)

ピョイーンッ

最原(……の、乗り越えられた! やったぞ! あとに残ってるセンサーはほぼ設置してあるだけ)

最原(つまりザル! 走ってでも余裕で行ける!)

最原(勝った! 百田くん、王馬くん、天海くん……終わったよ……!)

最原「ラストスパートだ! 角を曲がったらすぐダッシュ!」ダッ

白銀「えっ?」

最原「えっ?」


ドシンッ

最原「……」

白銀「……何してるの、最原くん」

最原「ええっと……女子更衣室に侵入……」ダラダラダラ

白銀「へえ」

最原「……」ダラダラダラ

最原(白銀さんにぶつかった僕は、彼女を押し倒すような形で一緒に倒れこんでしまった)

最原(まあそれなら問題はない。と、思うんだけど……)

白銀「……いい度胸してるね。私、今パンツだけしか身に着けてないんだけど」

最原「本当にごめんなさい……!」

白銀「そう思ってるんならさっさとどいてよ。これでも恥ずかしいんだよ?」

最原「そうしたいのは山々なんだけど……あの、トラップのスイッチって遠隔操作?」

白銀「そうだけど」

最原「更衣室に入るときに東条さんか誰かに貸してもらった?」

白銀「うん。切らないと爆発するからって」

最原「……入った」

白銀「は?」

最原「多分、倒れこんだ拍子にキミの着替えごとぶちまけて……落ちたショックで入ったっぽい」

白銀「」

最原「で、ボタンが今、センサーの向こう側に……ここからじゃ手が届かないし」

最原「ていうか、ここら辺のセンサーの位置が飛び越えられる高さだったからさ……」

最原「多分今、僕がキミの傍からどこうとしてもセンサーが反応してドカン、だと思う……」

白銀「」

白銀「……ふ、ふふふふふ。大丈夫。私には最後の手段がある」

最原「ああ、そうだね。あるよね。そうだろうね」

白銀「叫べば誰かが助けに来る。事情を説明すれば、まあなんとかなるでしょ」

白銀「エレクトボムを作れる入間さんもいるし」

最原「……まあ、うん、その場合、僕の社会的地位が今度こそどん底に落ちるだろうけど」

白銀「自業自得だよね?」

最原「うん! そう思う! いや僕が言うのもなんだけどさ!」

白銀「それじゃ、ひとまず叫ぶね。ダンガンロンパ風に『どっひゃー』でいいかな」

白銀「すぅーーーっ」

最原「……」

最原「あ、ごめん。まだ待って」パシッ

白銀「もがっ!?」

最原(いきなり口を押えられた白銀さんの目が驚愕に見開く)

最原「こんな状況で悪いんだけど、聞きたいことがあったんだった」

白銀「もが!? もがーーー!」

最原「答えてほしいことがあるんだけど……」

白銀「特に言うことはないよ!? ていうかそんなこと言える立場じゃないよね、最原くん!」

白銀「破滅一歩手前だよ!? 後で脱出できたとして、私のフォローが貰えなければ好感度どん底だよ!?」

最原「それはそうなんだけどさ。まあそれは後で追い追い考える」

最原「……思い出したんだけど、僕って白銀さんに告白したことあったよね?」

白銀「!」

最原「……いや、思い出せたのは告白したってことだけ、なんだけど」

最原「どういう返事を貰ったのかまでは思い出せなくって」

白銀「……ああ。そう。そういうこと」

白銀「最原くんと私が、前の世界で恋人だったかどうか。それを訊きたいんだ?」

最原「ざっくり言えば」

白銀「……」

白銀「……OK、してたよ」

最原「そう」

最原(……やっぱりか、と思った)

最原(あの世界での彼女の行動理念を考えれば、これが一番自然な答えだ)

白銀「……好意があったかどうかまではノーコメントだけどね」

白銀「『使える』って思ったのは本当だよ」

白銀「学級裁判で主人公級の大活躍をする、最原くんのヒロインが、なんと首謀者そのものだった、とか」

白銀「……最高のエンターテイメントじゃない」ニヤァ

最原「うん。そうだね。出来過ぎてる。本当に」

最原「……最悪だ」

白銀「……聞きたいことはこれだけ?」

最原「他にもある、けど、多分キミは答えてくれないかな」

最原「最後の学級裁判で、何があったの?」

白銀「絶対に言わない」

最原「やっぱり」

白銀「……ああ、でもね。最原くん。実はさ、私たち……」

王馬「死んでいる場合じゃねぇ!」ガバァッ

白銀&最原「あ」


ビビーッ


ドカァァァァァァンッ!

王馬「」バタンキュー

最原「ふ、復活して爆発してまた死んだ!」

白銀「……ん。今の風圧と衝撃でスイッチがこっちにまで転がってきたね」

白銀「侵入してきたことは黙ってあげるからさ、ちょっとスイッチ押してくれない?」

最原「あ、うん」

ポチリ

最原「……た、助かった! 王馬くん! キミの犠牲は忘れないよ!」

白銀「あ。最原くん。最原くん。さっき言いかけたことの続きだけどさ」

白銀「かなり生々しい関係だったことは事実だよ」

最原「え」

白銀「初日に茶柱さんに口走ったこと、実はそこまで嘘ってわけじゃないんだ」

最原「」

白銀「……って、言ったらどうする? 信じる?」ニヤァ

最原「し、心臓に悪い!」ガビーンッ!

白銀「ふふ」

ドタドタドタッ

白銀「あ。今の爆音で誰かが様子を見に来たみたいだね」

最原「うわ、まずい! 早く逃げないと!」

最原「……白銀さん! 話せてよかった!」

白銀「早く逃げて。言い訳するの面倒だから」

最原「うん!」ダッ

白銀「……」

白銀「ふふ。バカだな。今更嘘なんて吐くわけないのに」ニヤリ

白銀「心臓に悪いって……ああもう。前回の私の台詞だって」

白銀「……バカ」

ひとまず今日はここまで!

……うん。R版に立てていれば、もうちょっとヤバイ描写にしていたが……全年齢なのでダークネスではないToLoveるレベルにまで落とし込んだぞ! 頑張った! 寝る!

十分後

最原「……で、なんだかんだ言って、僕たちも泳ぐんだね?」

真宮寺「大丈夫。今日のためにメイクも海水浴仕様にしてきたからネ!」

星「……」ザザーンザザーン

キーボ「波打つプールでただひたすら流されてますね……気に入ったんでしょうか」

キーボ「あ。ボクですか? ボクは眺めてるだけです」

獄原「本当にいっぱいプールができてるね」

最原「ウォータースライダー、波打つプール、流れるプール、子供プール……」

最原「……いや増築しすぎだよ! 何これ! レジャー施設じゃん!」ガビーンッ

モノクマ「あ、体の弱い人用に温水プールとかもあるよ!」

百田「必要ねぇ! 俺たちは健康体だ! な!」

天海「まあさっきは爆破されちゃいましたけど……今度は不覚を取りませんよ」

最原(今度なんてあってたまるか!)

王馬「ヒャッホーーーウ! 水だ水だーーー!」

王馬「実は俺は群馬県生まれなので大量の水を見ると動悸が……」ハァハァ

最原「嘘でしょ」

百田「ヒャッハーーー! 水だ水だーーー!」ダッ

王馬「新鮮な塩素の混じった水だーーー! ヒャッハーーー!」ダッ

ステーンッ

百田&王馬「へぶっ」ゴチーンッ

最原「ああっ! プールサイドで走っちゃダメだよ!」

キーボ「小学生ですか」

百田「いてて……」

春川「何してんの百田」

百田「お。ハルマキ」

百田「……」

春川「……ん? 何?」

百田「いや、言葉を探してただけだ。似合ってるじゃねーか」

春川「……」ボッ

最原(あ。春川さんが真っ赤になった)

春川「殺されたいの?」ガッ

百田「え」

春川「殺されたい、のっ!」ブンッ

百田「ぎゃあっはぼがべぶっ」バシャーンッ

最原「春川さんが百田くんをプールにぶん投げたーーーっ!」ガビーンッ!

入間「てめぇーら短小早漏クソ野郎どもに講義してやるぜ!」

入間「氷の密度は鉛の三分の一なので、氷の弾丸を作るには氷を鉛の三倍速く打ち出す技術が必要だ!」

入間「ただ水で人体をバラッバラにするにはちょっとした混ぜ物をするだけで充分だ。水圧カッターとか見たことあるだろ?」

入間「つまるところ水や氷は『弾丸にするのには不向き』ってだけで、武器としては無限の汎用性がある」

入間「……まあ今の講義は、この入間様特性、水狙撃銃『ビチョビチョエレクトスナイパー』とはあんまり関係ねぇーんだけどなッ!」

入間「くたばれ覗き魔ども!」ガチッ


ビシュンッ


キーボ「って、何故ボクにーーーッ! 痛ったぁ!」

入間「あ、手元狂った……おい。狙撃とか得意なヤツいるか? 特別に貸してやんぞ」

赤松「危なそうだから遠慮したいかな……」

入間「仕方ねぇな。もうちょい威力を落とすか……」ガチャガチャ

獄原「バタフライは……確か、こう!」ブォオンッ!

茶柱「ぎゃああっはああ! 流れるプールでもないのにありえない水流がぼぼぼぼ!」ブクブク

夢野「転子ぉーーーッ!」ガビーンッ

アンジー「ありゃー。これうっかり入るのは大分危険だねー」

東条「救命用の浮き輪を持ってきたわ」スタスタ

夢野「なんで普通のプールで救命用の浮き輪が必要になるんじゃろうなぁ!」

夢野「不思議じゃなぁ!」

東条「……あら? 茶柱さんのほかにも影が二つ……」

アンジー「え? あ、本当だ。藻屑みたいに水流まかせであっちゃこっちゃ行ってるね。何だろアレ」

百田「」ダラーン

王馬「」グデーン

春川「百田ーーーッ!」

最原「王馬くーーーん!」

夢野「東条! 東条! 浮き輪あと二つ追加じゃ!」アワアワ

東条「了解よ」

白銀「ふふふ……楽しんでる楽しんでる……用意した甲斐があったなぁ!」

白銀「プールなんだから、犯行以外でも有効活用しないとね!」

モノクマ「白銀さんも行ってきたら? みんなとゲロ甘ったるい青春過ごすのも悪くないと思うよ?」

白銀「いいのいいの、私は」

白銀「……激しい運動すると、ちょっとキツイしさ」

白銀「そういえば前の世界の百田くんも後半からは何かと理由つけて筋トレ避けてたっけな?」

モノクマ「ウイルスなんて投与しなければよかったのに」

白銀「……無理。これ、一応必要なことだからさ」

モノクマ(余計なことだとしか思えないんだけどね。ボクにはさ)

モノタロウ「お父ちゃーん! モノキッドがモノダムを流れるプールの、あの水流がガッてなるところに突っ込んだー!」

モノクマ「何ィ!? あの水流がガッてなるところはデリケートだからやめさせなさい!」ダッ

白銀「……」

最原「……平和だ」

最原(しかも賑やかだ)

最原(……最終的には五人にまで減っちゃってたからな)

最原(そっか。十六人いるのって、こんなに賑やかだったんだ)

最原(……ん。いや、白銀さんは遠巻きに見ているだけだな)

天海「喧嘩でもしたんすか?」

最原「……どうだろう。僕はそういう気分じゃないんだけどさ」

最原「なんか、バリア張られてるみたい」

天海「……超高校級の冒険家として復活した天海蘭太郎のアドバイスっす」キランッ

最原(才能を思い出したこと、余程嬉しかったんだな。アピールが激しい……)

天海「バリアは壊すものっすよ」

最原「……」

最原「真正面から行っても無駄、だろうな」

最原「なら……」

モノクマ「うわー! モノダムが意外と深くガッとする部分に刺さって抜けないー!」

モノファニー「どうしようお父ちゃん! エグイサル持ってくる?」

最原「モノクマ」

モノクマ「ん? 最原くん?」

最原「ちょっと相談があるんだけど」

最原「……砂って持ってこれる?」

モノクマ「……」

モノクマ「もちろん」ニヤァ

白銀(みんなとの絆を再確認させて、私がどれだけ取り返しのつかないことをしたのかを再認識させる)

白銀(そうすればきっと、最原くんは段々と私を許せなくなってくるはず)

白銀(意外に病気の進行が早いんだよねー。最原くん、さっさと私に対して殺意持ってくれないかなー)

白銀(……百田くん、凄いな。こんな状態で学園生活の終盤まで持ってたんだもん)

白銀(本当に気合で耐えてたんだね)

白銀(……苦しい。本当に……)

最原「白銀さん!」

白銀「ん? 何、最原くん」

最原「砂遊びしよう!」

白銀「は?」

モノクマ「砂は既に持ち込みました! 大量に!」

白銀「えっ。モノクマ?」

モノクマ「熱い砂塗れになって、後でシャワー浴び忘れて髪の毛ごわっごわになるといいよ!」

白銀「よ、余計なことを……!」

白銀「い、いいよ。私は! みんなと楽しんで来ればいいじゃん!」

白銀「今更私なんかがいてもさ! ね?」

最原「何度も言ってるじゃないか。僕たちは仲間だって」

白銀「何度も言ってるよ! もう裏切ったんだって!」

白銀「同じことを何回言えばわかってくれるの!?」

最原「……あの世界のこと、全部思い出したわけじゃないんだけどさ」

最原「でも僕の心は言ってるんだ。白銀さんを信じろってさ!」

白銀「……な、なにそれ」

最原「無理やりにでも連れていく!」ガシッ

白銀「い、いや。放して……」

最原「天海くーーーん! 白銀さんを拉致るから手伝ってーーー!」

天海「心得たっす!」ガシッ

白銀「二人がかりでっ!?」ガビーンッ!

白銀「あ、ああ。いやあああ……助けて茶柱さーーーん!」

茶柱「」チーン

獄原「ゴン太は……バカだっ!」ポロポロ

東条「これからはもうちょっと静かに泳ぎましょう?」

白銀「いやあああああああ……!」ズルズル

アンジー「にゃははー! 砂ー! 砂ー! 三度のメシより砂が好きー! サンドだけにー!」

王馬「おお。アンジーちゃんがかつてない程にテンション爆アゲだね」

百田「出せー! 俺をここから出せー!」

王馬「あっははははは! 悪いね! 百田ちゃん!」

王馬「砂に埋まってしまったキミの負けだ! 首から下をボインボインの女の子にしてあげるよ!」

百田「べ、ベタなことをーーー! やめろおおおおおお!」

最原「さてと。連れてきたのはいいけれど……これからどう遊ぼうかな」

白銀「な、何も考えてなかったの?」

天海「本当に大量の砂っすね。ひとまず砂山でも作っておきます?」

アンジー「……」





アンジー「黙れウジ虫ども」

全員「え」

アンジー「え、じゃない。イエス以外の返答は認めない。今からアンジーのことはサーと呼べウジ虫ども!」

全員「」

王馬「え。あ、アンジーちゃん? どうしたの? 急に鬼軍曹みたいな――」

アンジー「ふんっ」ドカァッ

王馬「みぞおちぐえっ」

アンジー「今からお前のあだ名は微笑みチビだ。ありがたく思えウジ虫」

最原(テンションが上がり過ぎて変なことになってるーーーッ!)ガビーンッ

白銀(いつものアンジーさんじゃなーーーい!)

アンジー「このアンジーが砂浜にいるからには、一切の妥協は許さん」

アンジー「アンジーの島ではそういうヤツから死んでいく」

アンジー「……そこの色白アホ毛!」

最原「えっ、ぼ、僕!?」

アンジー「イエス以外の返答は認めない! サーイエスサーと言え!」

最原「さ、サーイエスサー!」

最原(どうでもいいんだけどサーって男性のことじゃなかったか!?)

アンジー「芸術のために死ぬ勇気はあるか!」

最原「サーイエスサー!」

アンジー「妥協を許すくらいなら死んだ方がマシか!」

最原「サーイエスサー!」

アンジー「この場にドでかい砂の城を作りたいか!?」

最原「サーイエスサー!」

アンジー「いいだろう! お前は今から作る城のために命を捧げた奴隷だ! 奴隷は奴隷らしく馬車馬のようにこき使われると思え!」

最原「サーイエスサー!」

アンジー「それと微笑みチビ。お前は先ほど、そこのヒゲの首から下を女の子にすると言ったな」

アンジー「これも妥協は許さん。モナ・リザより下のレベルだと断じたらすぐに鳩尾クラッシュだ」

アンジー「……ヒゲに対して」

百田「俺かよッ!?」

アンジー「わかったか!」

王馬「サーイエスサー!」

白銀「……」ガタガタ

アンジー「……お前はいい」

白銀「えっ」

アンジー「それとチャラチャラピアス! お前はアンジーが気分悪くなったとき用のサンドバッグにしてやる!」

アンジー「ありがたく思え!」

天海「サーイエスサー!」

アンジー「では行くぞ! 妥協は死、あるのみだ! わかったか!」

全員「サーイエスサー!」

二時間後

赤松「……ん。あれ。何人か消えてるな。最原くんと……王馬くんはどこ行ったんだろう」

入間「あ? さっきモノクマに大量の砂を運ばせて、どっか行ってたな」

茶柱「アンジーさんも消えてますね」

獄原「天海くんも」

春川「……そろそろできるころかな? もう見に行っても大丈夫だと思うよ」

全員「?」

アンジー「にゃははー! 神ったサンドスタチューのかんせーい!」

アンジー「みんなー! 初めてにしては上出来だよー!」キラキラ

最原「や、やっといつものアンジーさんに戻った……!」ゼェゼェ

王馬「あー。疲れた」ゼェゼェ

天海「ふっ……でも俺たち、やり切りったっすよね」ボロボロッ

首から下がヴィーナスと化した百田「……もう砂から出たくねぇ」キラキラ

赤松「首里城ができてるーーー! 凄いーーーッ!」ガビーンッ!

入間「な、なんじゃこりゃあ! 百田の首から下が俺様以上のヴィーナスボディに!」

百田「へっ……どうだハルマキ。生まれ変わった俺の姿はよ」

春川「キモい」

白銀「……いい、って言われた割には私も結構かりだされてたし」ゼェゼェ

白銀「ああ、うん。でも、確かに……いい出来だね。この場でコスプレの撮影とかに使えそう」

アンジー「撮影? あ、そうだ。せっかくだから写真撮らないとねー!」

東条「カメラなら私が持ってきているわ」

入間「でかしたぞメイドババァ!」

最原「それタイマー機能付いてる? 全員で撮ろうよ、どうせならさ」

入間「無くっても付けてやるよ。簡単なものなら五分で充分だ!」

キーボ「おや。珍しい。あなたが私利私欲とエロ関係の事柄以外で動くなんて」

入間「……ケケッ。気分がいいんだよ」

茶柱「まあ確かに、今日は楽しかったですしね」

赤松「……なんか、いいよね。こういうの」

赤松「いきなり誘拐されてきた無理やりの関係だけどさ」

最原「……」

最原「うん。そうだね」

入間「おーっし! タイマー機能追加完了だ! 俺様を称えろザコども!」

王馬「入間ちゃん偉い」

入間「えっ。素直に褒められるのはそれはそれで怖ぇ……」

東条「撮るわよ。みんな、並んで」

最原「……白銀さんは僕の隣ね」

白銀「え?」

最原「ね」

白銀「……う、うん」

百田(熱いなぁ)

天海(青春っすねぇ)

王馬(からあげ食べたい)

東条「タイマーセット」

真宮寺「そういえば、写真に撮られると魂が抜かれるっていう有名な迷信があるよネ」

百田「やめろ! このタイミングでオカルト話するんじゃねえ!」

白銀「ど、どう映ろうかな。ジョジョ立ち? 集合写真なんて学校行事かイベントでしか撮ったことなくって」アタフタ

最原「……」ギュッ

白銀(あ、手……握られてる)

最原「どうでもいい。僕の隣にいてくれるなら」

白銀「――ッ!」



東条「……? シャッターが入るの遅いわね」

入間「ああ。十秒って割と長いんだな。まあ、すぐだろうから気にしなくっても――」

ドカァァァンッ!

エグイサルレッド「モノダムー! 今助けに行くよー!」ギュイィィンッ!

アンジー「」

最原「せっかく作った首里城がエグイサルに轢かれて粉々にーーーッ!」

最原「あわばっ! 余波が」ザァンッ!

全員「ぎゃあああああああああ!」

最原(……後に残ったのは、跡形もなくなった首里城の残骸と、砂まみれになったみんなだけだった)

アンジー「……」

アンジー「アイツ殺そう」

東条「落ち着きなさい。気持ちはわかるけど」ペッペッ

白銀「……」ポカーン

赤松「……い、一応、写真は撮れたはずだよ。シャッター音が聞こえたから」

アンジー「首里城が壊される前に?」

赤松「……後で」

アンジー「アイツ殺す」

夢野「う、うわああああん! アンジーがかつてない程怖いんじゃああああ!」

百田「俺のヴィーナスボディ! 俺のヴィーナスボディが! うわああああああ!」

春川「百田、うるさい」

最原「し、白銀さん? 大丈夫? さっきから一言も発してないけど」

白銀「……ぷっ」

最原「?」

白銀「あははっ……おっかしいの! みんな、砂だらけで、こんなくだらないことで大騒ぎで!」

白銀「あはははははは!」

天海「……くくっ。確かに、なんか笑えてくるっすね」

茶柱「まあなんだかんだみんな無事ですし……」

茶柱「笑ったもん勝ちですね。よく考えてみれば結構危なかったのでは?」

獄原「でもみんな無事だよ。ゴン太もケガ一つないしね!」

王馬「お前のことなんか誰も心配してないんだよ! 筋肉ダルマ!」

獄原「ご、ごめん!」

キーボ「……入間さん。後で重点的にメンテをお願いします。砂が……」

入間「ああ、酷い。こんなに溜まっちゃって……」ハァハァ

百田「は、はは……はははははは! なんだこれ! 確かに全員砂まみれで酷いもんだな!」

春川「……ふふっ」

最原(作品を壊されたアンジーさんはむくれてたけど、みんな笑顔だ)

最原(……白銀さんも。多分、心の底から笑ってる)

白銀「ははははは……ごほっごほっ」

最原「大丈夫?」

白銀「……ああ、ごめん。ちょっと砂が喉に入っちゃったみたい」

白銀「水飲んでくるね」

最原「うん」

白銀「……ああ、そうだ。最原くん」

最原「ん?」

白銀「……さっきは濁したけどさ」

白銀「私も、最原くんのこと好きだよ」

最原「!」

白銀「……じゃ」

最原「……」

百田「……顔、緩んでるぞ終一」

王馬「リア充爆発しろ! いや、確実に爆破してやる!」

天海「ああ。独り身にはあんまりにも眩しすぎる光景っす。協力するっすよ王馬くん!」

最原「ひ、冷やかさないでよみんな!」

王馬「うるさい死ねーーー!」

最原「あ、ちょっ、くすぐらないで、あははははははは!」

白銀「……ごほっ……」

白銀「ごほっごほっ……うっ……!」

ボタタッ

白銀「……バカだ、私。なんで……あんなこと言って……!」

白銀「楽しい、とか、好き、とか。そんな感情、持っちゃダメでしょ……」

白銀「首謀者なんだから、主人公に倒されないと」

白銀「一切の同情の余地なく、無残に残酷に死なないと……!」

白銀「自殺でもなく、自己犠牲でもなく、道半ばで主人公に討たれる」

白銀「それが首謀者の役割なのに……!」

モノクマ「……」

白銀「あ。モノクマ。床、掃除しといて」

白銀「……このまま着替えて寄宿舎に帰るね」

モノクマ「はいはい。お疲れ様お疲れ様」


スタスタスタ


モノクマ「……」

モノクマ「難儀だね。悪役ってのはさ」

昼休憩します!

最原「……遅いな、白銀さん」

アンジー「そのまんま帰っちゃったのかもねー。なんか具合悪そうだったし」

最原「え?」

アンジー「およ? 気付いてなかったのー?」

アンジー「つむぎの顔色、初めて会ったときと比べると、明らかに悪くなってきてるんだよねー」

アンジー「わかってたから砂遊びを提案したんだと思ってたよー」

最原「なんか、妙に水を避けてるな、とは思ってたんだけど……」

最原「顔色が悪くなってた?」

アンジー「うん。徐々に、徐々に」

アンジー「……死相が出てる、って言い換えてもいいかもね」

最原「そんな、縁起でもない」

アンジー「いやいやー。占いやオカルト、迷信の類じゃなくってさ」

真宮寺「……まあ、死相ってのは確かにあるヨ。生きてる者と死んでる者じゃ、何かが違うんだよネ」

真宮寺「影が薄いっていうか……そういうのだヨ。彼女が言っているのは」

最原「……」

最原(……なんだ? この胸騒ぎ)

最原(この世界は平和、なはずだよな?)

最原(誰も死なないんだよな?)

旧約、前の世界の第?章:けだるい……いや愛も青春も……なんだっけ?

白銀(私と最原くんは付き合い始めた)

白銀(……恥ずかしいから回りには秘密にしている)

白銀(あ、いや、そういう建前で、実際には言う必要がないから秘密にしている)

白銀(……どっちにしろ、どうでもいいか)

白銀(彼との恋愛関係は使える。更に視聴者を絶望に叩き込める)

白銀(それだけだ。別に、私自身は彼のことをなんとも思ってない)

白銀(……今まで死んでいった仲間たちと一緒だ)

白銀(やるんなら徹底的に。愛する演技もキチンと、全力で)

白銀(……それにしても、私のことを好きだと言う彼の姿は滑稽だ!)

白銀(私もそうだよ、と答えてあげたときの笑顔も格別に!)

白銀(これが愉悦! 脳裏にどこぞの何ガメッシュが大笑いする画像が浮かぶ!)

白銀(で、そういうことを繰り返し、繰り返し、クセになるくらい繰り返した結果――)



最原「白銀さん……いい?」

白銀(私は最原くんに、ベッドに押し倒されちゃいましたとさ)

白銀(……)

白銀(良いわけなくないッ!?)ガビーンッ!

白銀(あれ。あれ。あれ!? なんでこうなったんだっけ!?)

白銀(……ああ、いや! 理由はわかる! やりすぎたんだ! 演技を!)

白銀(ああ、でも首謀者として人を騙す労力を惜しむわけにはいかなかったし……!)

白銀(みんなのために頑張る最原くんが格好良かったし、照れる姿が可愛かったし……!)

白銀(え? え? え? 違う、そうじゃない!)

白銀(ええっと、どこからどこまでが演技だったんだっけ!?)

白銀(私は何を考えてたんだっけ!?)

最原「……あの……白銀さん?」

白銀「え!? あー……えーっと……」

白銀「……待って。本当に私でいいの?」

白銀(何を口走ってるの、私)

最原「……白銀さんじゃないと、イヤだよ」

白銀「最原、くん……」

白銀(待って。待って。私は最原くんを騙しているだけ)

白銀(これ以上、身を捧げる必要は……)

白銀(……あ、ある、かな? だって私、ダンガンロンパ大好きだし)

白銀(騙すにしたって、最後までやらないと……ダメ、かな?)

白銀(……なんで最後まで行っちゃう前提で思考を組み立てて……!)

白銀(私、私は……)



最原「……白銀さん」ガバッ

白銀「あっ――」

白銀(誰だっけ)

六日目

最原「……」

最原「……白銀さんの嘘じゃなかった!」ガビーンッ!

最原(初日で白銀さんが僕のことを童貞だとかってバカにしてたけど……)

最原(あれ、あくまでこの世界では、の話だったのか!? 前の世界では、その、なんだ……)

最原「……いくら命の危険に晒されてる状況だからって、ちょっとアレはやりすぎ……」

最原「いや、やめよう。これ以上考えると白銀さんに対して申し訳なさ過ぎて目も合わせられなさそうだ」

最原「……」

最原「本当に、僕を騙すためだけに身を捧げただけだった、のかな……?」

食堂

百田「よう終一! 今日もすがすがしい朝だぞ!」

最原「うん。おはよう。今日のご飯は何かな」

東条「まったく脈絡はないのだけど、クロワッサンを大量に作ったわ」ドンッ

最原「多っ! 山盛りだね!」ガビーンッ

東条「無性に作りたくなって……」

茶柱「いい匂いですけど、これだけでお腹いっぱいになりそうなバター臭ですね」

夢野「いただきます、じゃ!」

王馬「ああっ! 抜け駆け禁止! 俺も俺も!」

天海「……」キョロキョロ

天海「最原くん」

最原「なに? 天海くん」

天海「白銀さんの姿が見えないんすけど、どこ行ったんすか?」

最原「あれ。本当だ。いないね」

アンジー「……具合悪そうだったし、寄宿舎でまだ寝てるんじゃないかなー?」

最原「……」

最原(ふと、覚えのある緊張感を覚えた)

最原(アンジーさんが死んでいた研究教室を開ける直前に覚えた、あの感覚だ)

最原(いや、そんなまさか。ここは平和な世界のはずだ)

最原「……ちょっと様子を見に行くってくるね」

百田「おう! クロワッサンを消費しきる前に帰って来いよ!」

最原「うん!」ダッ

寄宿舎

ピンポーン

最原「白銀さん。いる? みんなもう食堂に揃ってるよ」コンコンッ

最原「……」

最原(出てきてくれ。出てきてくれ。出てきて、僕のことを『心配性だな』って笑い飛ばしてくれ)

ゴソッ

最原「……ん!」

最原(中で何かが動く気配がした。やっぱり部屋にいたらしい)

最原「よかった。ずっと心配だったんだ。白銀さんがいなくなっちゃうような気がしてさ」

最原「……具合が悪いの? なら出直すけど」

白銀「……さい、はら、くん……して……」

最原「ん?」



ガチャリッ


最原(部屋の鍵が開いた音がした。続いて)

ゴンッ

最原(ドアに何かが倒れこむような音)

白銀「はやく……私を殺して……」


ドサリッ


最原「……え?」

最原「……ッ!」

最原(ドアを急いで開きたい衝動に耐える)

最原(今の音は、ドアの向こう側すぐ傍で白銀さんが倒れた音だ! 勢いよく開けたら怪我をさせてしまう!)

最原「……白銀さん!」

ガチャリ

最原(少しだけ開けたドアの隙間から見えたのは……見慣れたくもない、血の色)

最原(血をぶちまけながら倒れこむ、白銀さんの姿だった)

お菓子休憩!

旧約、前の世界の――


白銀(キーボくんが学園を破壊し始めた)

白銀(図書室の隠し部屋にも入られてしまった)

白銀(きっと最原くんは、あそこに置いてあった砲丸や、天海くんの遺品を見てすべてを察するだろう)

白銀(……やっと終わる。この数日は、私にとっての宝物だ)

白銀(大好きなダンガンロンパの首謀者として活躍できた)

白銀(誰よりも間近で、生徒たちの足掻きを見ることができた)

白銀(偽りだとは言え、間違いなく仲間だった)

白銀(……最原くんと一緒になれた)

白銀(……)

白銀(本性を現したとき、うっかり泣いてしまわないかどうかが心配だ)

白銀(真相を最後の最後まで暴けるかどうかは……まあ、多分大丈夫だ)

白銀(最原くんは強くなったから。もう最弱の探偵なんかじゃない)

白銀(どうか主人公らしく、私を殺して。希望を手に入れて、前に進んでほしい)

白銀(そのために、私は一切の救いようのない絶望的な怪物を模倣する)

白銀(不思議だ。元からこういう役回りだと理解していたけど)

白銀(最原くんのことを思うと、もっと頑張れる気がする)

白銀(……ああ、そうか。もしかしたら、私はとっくのとうに)

白銀「ダンガンロンパよりも、あなたのことの方が大好きだったのかもね」

白銀「……なんて、嘘だよ」

白銀(いや……もう嘘も本当もわからない)

白銀(……それでいい。私は怪物。嘘も本当も、とっくにない)

白銀(怪物は涙を流さない。愛も恋もしない。人を殺すことに躊躇なんてない)

白銀(……一切の同情の余地なく、殺されないといけない)

白銀(それで物語は終わり。最原くんの頑張りも報われる。死んでいった仲間たちの無念も晴らされる)




白銀「さあ。最後の学級裁判を始めよう!」

学級裁判 終盤

最原「……首謀者がまだ生きているのなら、該当するのは……」

最原「該当……するのは……!」

白銀「……やだ。やめて。やめてよ最原くん! 私を信じてよッ! 私は……!」ガタガタ

白銀(なーんて、見苦しく言い訳とかしてみたり)

白銀(ふふ。苦しそうな顔。そんなに私のことが好きだった?)

白銀(……嬉しいな)

最原「……白銀さん。キミしかいない。首謀者の正体は、キミだ」

白銀「いや……いや、いやああああ……!」

白銀(……最高の展開だ! やっぱり私の身こんだ通りだった!)

白銀(相手が誰だろうと、もう最原くんは真相を追うことを躊躇しない!)

白銀(死んでいった仲間たちのことを忘れない!)

白銀(相手が恋人だろうがなんだろうが関係ないんだ!)

学級裁判 さらに終盤


白銀(フィニッシュだ。今までの展開すべてを台無しにする!)

白銀(みんなを絶望の淵に叩き込む!)

白銀(大丈夫。最終的にはキーボくんが『救済』してくれるから!)

白銀「……全部"嘘"、なんだよ!」

白銀「全部設定なんだよ!」

白銀「私は世界そのものをコスプレさせることができるの!」

白銀「夢野さんの魔法使い設定も!」

夢野「……」

白銀「春川さんが百田くんを好きになるようにしたのも!」

春川「……」

白銀「全部! ぜーんぶ"嘘"! なんだよ!」キラキラ

最原「……」

最原「僕が……白銀さんを好きになったのも?」

白銀「……」

白銀「うんっ! もちろん設定だよ! 楽しかったでしょ!?」キラキラ

最原「……」

最原「なんだったんだ……キミに励まされて……仲間を犠牲にして……」

最原「必死に生き抜いてきて……その真相が、これ……?」

最原「なんだったんだよ……僕たちは!」

白銀「だから嘘だって」

白銀(……良かった。泣かずに言えた。声も震えてない。完璧!)

学級裁判 さらにさらに終盤

キーボ「ボクは! 外の世界を信じるぞッ!」

キーボ「希望は前に進むんだッ!」

白銀「……」

白銀(行ける! 行ける行ける行ける!)

白銀(無印ダンガンロンパみたいに、キーボくんが周りに希望を伝染させる!)

白銀(春川さんとキーボくんは犠牲になって次のコロシアイに参加させられることになっちゃうけど……)

白銀(……二人ならきっと大丈夫。強いしね)

白銀(投票タイムがこんなに楽しみになるなんて思わなかったなあ!)

白銀(ま、私はここで本当におしおきだけどね。前作の首謀者が次回作に出張っても興醒めだし)

白銀(……あ、江ノ島盾子は例外だけど)

白銀(ワクワクするなぁ! 私自身も、私のおしおきがどんな処刑なのか知らないからなぁ!)

白銀(とにかく残酷なジワジワ系がいいな! ここまで酷いことしたんだし――)



最原「僕は希望を否定する!」

白銀「……」

白銀「……は?」

学級裁判 終盤

白銀(最原くんが『投票の放棄』を提案した)

白銀(どうも、ダンガンロンパというコンテンツそのものを完全に終わらせにかかるつもりらしい)

白銀(……なるほど。最原くんらしいな。まだいない未来のコロシアイ参加者のことを考えるなんて)

白銀(……)

白銀「いやいやダメでしょ!」ガビーンッ

白銀「ちょ、冗談だよね! 最原くん、死ぬ気!? ここまで必死に生きてきたのに!?」

最原「コロシアイなんて間違ってる。この場にいる僕らなら終わらせられる」

最原「……終わらせないとダメなんだよ!」

白銀(待って。待って待って待って。冗談じゃない!)

白銀(こっちは必死にあなたを生き残らせようとしてたのに!)

白銀(そのために、あんな酷いことまで言ったのに!)

白銀「……ここまで来て台無しになんかさせない! させるもんか……!」

最原「……? 白銀さん、キミ、どうしてそんなに焦ってるの?」

白銀「え?」

最原「キミ『だけ』は生き残れるのに」

白銀「――ッ!」

最原「……いや、後でいいか。とにかく僕は投票を放棄する」

最原「この命を使うんだ!」

学級裁判 超終盤

夢野「ウチはこの命を使うぞ! 投票を放棄する!」

白銀(やめて。アンジーさんや茶柱さんが悲しむよ?)

春川「……アイツらの命に、意味を持たせることができるのなら」

白銀(やめてよ。百田くんだって、あなたに生きていてほしいはずだよ)

キーボ「希望で終わるべき……それでも!」

白銀(やめて。助けて。誰か……!)

最原「……これが僕たちの答えだ。僕たちは、ダンガンロンパを否定する!」

白銀(誰か助けてよッ! 誰でもいい! 私が死ぬのは構わない!)

白銀(……こんな結末間違ってる!)

最原「……白銀さん。やっぱりキミは……」

白銀「!」

白銀(……そんな目で見ないで)

白銀(私は怪物。みんなをコロシアイに巻き込んで、十一人も殺した悪いヤツ)

白銀(あなたを励まして、一緒にここまで来た白銀つむぎなんて最初からどこにもいないんだよ!)

最原「……はは。そっか。そういうこと、か」

白銀(やめて。やめてやめてやめて! 何を納得したの!?)

白銀(お願い。殺してよ! 私を憎しみのままに殺してよ!)

白銀(人殺しの怪物が、主人公の隣で笑ってたなんて気持ち悪いでしょ!?)

最原「……僕は僕自身を信じるよ。百田くんや、キミが信じた僕のことを」

白銀(や、やだ……やだやだやだやだ……!)

白銀(いやだあああああああああッ!)

紅鮭団時空 六日目の朝


白銀(……)

白銀(酷い悪夢を見た)

白銀(……ああ。枕やベッドが血だらけ。なら、当然か……)

白銀(……体が動かない。やっぱり百田くんは凄いなぁ。私には耐えられそうにないよ)

白銀(……このまま死んじゃうのかな……)

白銀(最原くんに、殺してもらいたかったなぁ……)

白銀(……)

白銀(ウイルスは、ちょっとしたアクセントのつもりだった)

白銀(最原くんが私を殺した後で、モノクマがカミングアウトする計画になってた)

白銀(実は白銀さんは、オマエが殺さなくっても勝手に死んでたんだよって)

白銀(徒労、無駄骨、無駄死にはデスゲームの醍醐味)

白銀(……どうせ殺されるんなら、永遠に消えない爪痕を残した上で死にたかった)

白銀(でも……予想外だったな。本当に、全然私に対して怒りも憎しみもないなんて)

白銀(……最原くん、人が良すぎ……)

ピンポーン

最原「白銀さん。いる? みんなもう食堂に揃ってるよ」コンコンッ

白銀「!」

白銀「……体、動く。ギリギリ」

白銀「はは。最原くんの声が聞こえた途端……現金過ぎるな」

白銀「……」フラッ

白銀(……会いたい。最原くんに会いたい)

白銀(もう時間がない!)

最原「よかった。ずっと心配だったんだ。白銀さんがいなくなっちゃうような気がしてさ」

最原「……具合が悪いの? なら出直すけど」

白銀(鍵を……開ける。後は最原くんが勝手に入ってきてくれる)ズルリ

白銀(……私は……私はッ!)ズルリ

白銀「最原くん。殺して」

白銀(……首謀者は参加者の敵。こんなお願いしない。でも、もう時間が……!)


ガチャリッ

白銀(鍵、開いた……ああ、でも、もう力が……)

白銀「はやく私を……」

白銀(……もう自分が何を言っているのかすらわからない)

白銀(ああ。私はここで……無為に死ぬのか)

白銀(……償いもできず、ここで……)

白銀(最原くん……)

休憩!
……何ガメッシュで、数万円爆死したことを思い出して死にたくなった

時間が時間なので今日はここまで!
……FGOのイベントこなしながらやってたので思いっきり白銀がBBに影響されてることは秘密だ。

明日の夕方から再開です!

食堂

赤松「……」

赤松「うーん。気になるな。あの二人の関係」

茶柱「よしてくださいよ。白銀さんのことは嫌いじゃありませんけど、どう考えてもロクでもない関係です」

茶柱「……白銀さんが最原さんを見る目。あれはなんというか……愛憎が浮かんでるんですよね」

赤松「ああ。わかる。ただ好きってわけじゃないって感じ」

入間「てめぇーらに愛と憎悪の何がわかるってんだよ。どうせどっちも処女だろ」

茶柱「処女で結構! 綺麗な体はネオ合気道の極意の一つです!」

王馬「うっわ。朝食の席でえっぐい恋バナしてるよ……」

王馬「俺たち男子も負けちゃいられない! もっとえげつない恋バナをするんだ!」

獄原「それってどんなバナナ?」

アンジー「アンジーの島にあるバナナだよ。食人植物でもあるから近づくと消化されちゃうんだよねー!」

天海「早速頓挫の気配っす」

夢野「ふいー。美味しかったわい」

夢野「……今更じゃが、朝からクロワッサンって油分取り過ぎな気がするんじゃがの?」

東条「一人で大量に食べたりしなければ大丈夫よ」

夢野「先に言えい!」ガビーンッ!

百田「……みんなすっかり仲良くなったな」

百田「結構結構! 全部俺のお陰だけどな!」

春川「調子乗り過ぎ」

百田「……だが終一と白銀がいないのが気になるな。さっさと帰ってこねーとクロワッサンがなくなっちまうぞ」

真宮寺「……いやな予感がするんだよネ。気のせいだといいんだけど」

ドタドタドタッ

ガチャンッ

最原「みんなっ! たっ、助けて!」

キーボ「おや。最原クン。そんなに慌てて一体……」

キーボ「……白銀さんはどうしたんですか? 迎えに行ったはずでは?」

最原「へ、部屋に入ったら……白銀さんが血まみれになって倒れてて……!」

星「なに?」

最原「ど、ドア付近で倒れてるから、思い切り開けることもできなくって……!」ガタガタ

百田「お、おい。落ち着け終一!」

最原「落ち着いていられないよッ!」

百田「落ち着けパンチッ!」バキィッ

最原「おちぶっ!」

百田「よし! 終一が落ち着いたところで全員、白銀のところに行くぞ!」

入間「え。面倒くせぇ」

百田「拒否権はねぇ! 仲間の危機はみんなの危機だ!」

最原「お、お願いだ! 白銀さんを助けてよッ!」

最原「僕の大事な人なんだ!」

王馬「全然落ち着いてないし」

東条「……でも必死さは伝わってくるわ」

東条「いいでしょう。その願い、依頼として受け取るわね」

寄宿舎

赤松「白銀さんっ!?」

茶柱「ひやああああああ! 本当に血まみれになってぶっ倒れてます!」

真宮寺「……確かに彼女の体が邪魔になってドアをこれ以上開けられないネ」

最原「ど、どうしよう! どうしたらいい!? 何か手伝えることは!?」

王馬「俺にいい考えがあるッ! 誰かが中に入って白銀ちゃんの体を中まで引っ張ってどかせばいいんだ!」

百田「アホか! 誰も中に入れねーから困ってんだろうが!」

王馬「いや! この中で一人、頑張れば中に入れるヤツがいる!」

王馬「星ちゃん!」

星「あ?」

王馬「――を、ゴン太の力で思い切り隙間に押し込めェーーーッ!」

王馬「あ、白銀ちゃんの体に負担がかからないように、もう片方の手でドアを引っ張っといてね」

獄原「わかった! 頑張るよ!」ガシッ

星「お?」

獄原&王馬「行っけーーー」グイイイイ

星「ぐああああああああああ!」ゴキゴキゴキッ!

赤松「星くーーーんッ!」ガビーンッ!

スポーンッ

細長くなった星「入れた!」

百田「多少無理やりになったがまあよし! 星! 白銀の体をどうにかドア付近からどかしてくれ!」

細長くなった星「ああ。白銀。ちょっと失礼するぜ」

ズルリズルリ……

細長星「……よし。これで一人分くらいなら中に入れるはずだ」

細長星「あとのことは東条に頼むぜ」

東条「任されたわ!」

東条「……酷い惨状ね。血の匂いでむせ返りそう」

東条「……清潔な場所に移動するわ。私の部屋に行きましょう」

東条「医療器具は……倉庫から持てるだけ持ってきて、あとはモノクマに催促しましょうか」

最原「……白銀さん……!」

百田「……」

百田「大丈夫。大丈夫だ終一」

最原「え?」

百田「俺らが付いてる! だから、大丈夫だ! ぜってぇーに!」

最原「……」

最原(相変わらずの根拠のない自信。非論理的なゴリ押しめいた励まし)

最原(……今はそれが何よりも頼もしかった)

東条「……これは肺炎、かしら? 何らかの要因で肺細胞がズタズタになっているようね」

東条「肺の傷から血が逆流し、口から出ているものと推測されるわ」

最原「……口から?」

最原(待てよ。その症状、どこかで……)

百田『……風邪が悪化しただけだ』


最原「――ッ!」

入間「おい待て。肺炎だと? 確か肺炎の主な要因って……」

東条「……そうね。細菌、ウイルスなどが一般的よ」

入間「うっ、うっげえ! ついてきて失敗したぜ! おい! そいつ隔離しておけよ!」

入間「日本人の死亡原因は、一位ガン、二位心臓病、三位が肺炎なんだ! 俺様が死んだらどう責任取るんだよ!」

赤松「ちょっと入間さん! そんな言い方……!」

最原「大丈夫だ」

赤松「え?」

最原「……空気感染したりしない。僕の予想通りなら」

百田「終一?」

最原「……」

最原(みんなは頼もしい。十六人揃ってるってだけで、なんでもできる気がする)

最原(……あの学園生活の最初のときと同じで)

最原(……)

最原「……今度こそ……みんなで……」

最原「誰一人欠けずに……!」

百田「……?」

夕ご飯食べてきます!

一時間後

東条「……ひとまず簡易的な医務室の完成よ」

モノクマ「はいはい! ボクも協力しました!」

赤松「……ね、ねえ。モノクマ。お願いがあるんだけどさ」

モノクマ「彼女だけを先に出してあげて、とかは無理。救急車をここに呼んで、とかも無理」

モノクマ「それ以外なら応相談!」

赤松「……ああそう……」

入間「パナイ原はああ言ってたけどよ……本当にこの病気、空気感染しねーのか?」

モノクマ「しないと思うよ? ウイルス性の肺炎だけどさ」

モノクマ「このタイプのヤツは絶対にオマエラには感染しません!」

真宮寺「……断言するんだネ」

百田「まあ大丈夫だろ。確かに非常識ではあるが、これはあくまでバラエティ番組なんだろ?」

百田「なら白銀を殺すようなマネをモノクマがするはずねぇって!」

モノクマ「……」

モノクマ「うん。そうだね。ボクは白銀さんを殺さないよ」

モノクマ「この件に関しては全力を尽くすつもりだしね」

モノクマ(ただ、本人に生きる意志がない場合は話が別だけど)

モノクマ(……もしくは『死ぬために生きてる場合』はね)

夢野「……ところで、なんじゃが」キョロキョロ

春川「どうしたの?」

夢野「最原はどこに行ったんじゃ?」

百田「あ?」

王馬「さっき白銀ちゃんの部屋をあっちゃこっちゃ漁った後、どこかに行っちゃったよ?」

アンジー「こんなときにー? つむぎが大変なことになってるのにー?」

百田「……アイツ、何するつもりだ?」

モノクマ「……」

首謀者ルーム

最原「……キミに色々指図してた白銀さんは倒れたよ」

マザーモノクマ「うん。知ってる。モノチッチから映像は筒抜けになってるからね!」

マザーモノクマ「白銀さんの部屋からカードキーをくすねてまでここに来たのは、何故?」

最原「……白銀さんのあの病気は、チームダンガンロンパが作ったもの、だよな?」

マザーモノクマ「白銀さんプロデュース! 『コズミックホラーウイルス』だよ!」

マザーモノクマ「感染した場合の致死率は九十九%! つまりほぼ死亡!」

マザーモノクマ「残念ながら特効薬はありません!」

最原「そう」

マザーモノクマ「……もう彼女は倒れちゃったし、セキュリティロックの順守義務もほぼ消えてる」

マザーモノクマ「今なら色々質問に答えられるけど?」

最原「……彼女にウイルスを投与したのは、誰?」

マザーモノクマ「彼女自身だよ」

最原「なんでこんなバカなことを」

マザーモノクマ「……あ。言い忘れてた。ボクはボクの知らないことは答えられないからね」

マザーモノクマ「仮にも首謀者の補佐役だから、彼女が隠してることがあるのはオマエもボクも同様」

マザーモノクマ「推測はそっちがやってよ」

最原「……」

最原「……充分だ。今は、これで」

最原「あのウイルスが、僕の知っているものだってわかっただけでも」

マザーモノクマ「また来なよ。彼女が『言うな』って言わない限りは、いくらでも質問に答えるから」

最原「うん」

最原「……そうだ。モノクマ」

マザーモノクマ「なに?」

最原「お前も白銀さんが死ぬのはイヤ、だよな?」

マザーモノクマ「もちろん。コロシアイでもないし、全力で助けるよ」

マザーモノクマ「……彼女が助けを拒んだ場合は無理だけどさ」

最原「……お前のことは好きになれないけど、今だけは利害が一致したな」

マザーモノクマ「この丸っこいフォルムのどこが不満だと……!?」

最原「……モノクマも何か助けてほしいことがあったら遠慮なく言ってよ」

最原「白銀さんを絶対に死なせたくないんだ」

マザーモノクマ「……完全にお熱だね」ニタァ

最原「……もう行く。白銀さんの傍にいないと」

マザーモノクマ「いってらっさーい」

ズキン

最原(……頭痛が酷くなってる)

最原(これは病気じゃなくって、僕の記憶が何かを訴えてるんだ)

最原(『思い出せ』って。『思い出してほしい』って、過去の僕が言っているんだ)

最原(……僕だって思い出したいけど、この状況を打開するなにかがあるとは思えない……)

最原「……」

最原「確か、前のときに百田くんの病気が発覚したころには、入間さんが死んでいたんだっけ」

最原「あのときとは状況が違う。東条さんもいる」

最原「……相談すれば、糸口くらいは見えてくるかも」

超高校級の発明家の研究室

入間「へんてこぴーまんとーれちゃーったー」ズガガガガガッ

最原(既になんか作ってる)

入間「お? エロイ原。今は取り込み中だ、さっさと消えろ」シッシッ

最原「あ。悪いんだけど、ちょっと質問があって……」

入間「地味ビッチの病気なら治せねーぞ」ズガガガガガッ

最原「……」

入間「……ひぎぃ。そんな顔すんなよぅ。一応、俺様だって考えてるんだぞぅ……?」

最原「えっ」

入間「俺様は俺様以外の誰がどう生きようが死のうがどうでもいいとは思ってるが」

入間「だからって積極的に人を見殺しにするような根暗クソ外道でもねー」

入間「俺様の発明品は世界をもっとよくできる! その中にはテメェーらみたいな欲情するドザコもいるってこった」

入間「……余裕ができたら考える。ちょっとくらいは、な」

最原「入間さん……!」

入間「つっても限界はある。どういうわけか知らんが、あの倉庫、なんでも揃ってるように見えて万能じゃねぇ」

入間「あそこまで色々あって、血液型判別キットすらねーのは異常だ。偏り過ぎてる」

最原(あ。それは思った。百田くんの事件、あれがあれば一発でわかっただろうに)

入間「……俺様に不可能はねぇ。不可能はねぇ、はずなんだ……!」

最原(意外に思い詰めてるのかな……)

最原(……)

最原(あの事件のとき、もっと悩みを聞いてあげていれば……)

最原(……もう遅いけど)

入間「ちゃんとした機材さえ揃ってればこんな……」

入間「……」

入間「消えろって言ったはずだ」

最原「あ、う、うん!」

入間「せっかく、ちょっといい気分になってきたってのによ。あんの病弱ブス」

入間「……俺様の輝かしい自伝を書くときに、しょっぱい思い出が増えたら致命的だろうが」

最原(本当に不純な動機で動いてるのか、照れ隠しで言っているのか入間さんだと判断に困る……)

中庭

アンジー「にゃはは。つむぎは運がいいね。今日はアンジーの気分が超いい日なんだよ」

アンジー「こんな日は……こんな日なら……!」

最原(ん? あそこにいるのは、アンジーさん?)

アンジー「神様を召喚することができるかもしれない……!」ギンッ

最原(相変わらずなんかヤバいこと言ってる!)ガビーンッ!

アンジー「うおおおおおお! 燃えろアンジーの運・命・力!」

アンジー「最高に高めたアンジーのフィールで、最強の神を召喚してあげるよー!」バチバチッ!

最原「ん!? なんだ!? 気のせいか!? アンジーさんの回りに雷霆が……!」

アンジー「いでよ! 神様ァーーーッ!」バチバチバチバチッ!


ドカァァァンッ!


最原「い、一体何が……!」

手塚●虫「……」

最原「マンガの神様を召喚してるーーーッ!?」ガビーンッ!

アンジー「そ、そんな……まさか……」ガタガタ

アンジー「千載一遇のチャンスだったのにィ! 人違い、いや神違いするなんてぇ!」ダァンッ

手塚●虫「……?」

アンジー「あ、うん。すみませんでした。もう帰っていいです……」シュン

手塚●虫「……」バイバイ

最原「ああっ、待っ……! 大丈夫! 白銀さんに限ってはその神様で大丈夫!」

最原「むしろ超元気になるから帰さないで! ねえ!? アンジーさーーーん!?」

最原「い、いなくなってる! どこから来たのかも不明だけど、どこへ消えたのかもまた不明なんだね!」キョロキョロ

アンジー「しゅ……終一……ごめん、アンジーは……アンジーは……!」

アンジー「つむぎを助けたかったのに……!」

最原「アンジーさん……」

最原「……気持ちだけで充分だよ。大丈夫、きっと治るから」

アンジー「……」

アンジー「くよくよするのはらしくなかったねー」

アンジー「その言葉、信じてみるよー! アンジーの神様も信じろって言ってるからねー!」キラキラ

最原「……はは」

最原(やり方はいつだって斜め上だけど、アンジーさんの気持ちは本物だ)

最原(……暴走さえしなければ、ただの明るい女の子だな)

寄宿舎周辺

王馬「ゴン太ァ! あっちだァ! 今あっちに行ったのがチラッと見えた! 絶対に逃がすなよ!」

獄原「うんっ! ごめん、ちょっと痛いかもしれないけど本気で行くよ!」ザッ

最原「あ、あれ。二人とも、何してるの?」

王馬「最原ちゃん! 驚かないで聞いてほしいんだ!」

最原「?」

王馬「さっきそこをマンガの神様っぽい人が通り過ぎて行ったのを見たんだよッ!」ズギャァァァン!

最原(こっちに来てたのかーーーッ!)ガビーンッ!

王馬「百田ちゃんや天海ちゃんにも報告したのに『嘘だろ』って一蹴されちゃったけど、本当に見たんだ!」

王馬「アイツを捕まえれば、白銀ちゃんが元気になること間違いなしだよ!」

獄原「ご、ごめん王馬くん! それっぽい影は見つけたけど、全然追いつけないよ!」

王馬「何やってんだ筋肉ダルマァ! もういい、俺自ら出る!」ザッ

最原「……は、はは……」

最原「普通に仲良くもできるんだな、あの二人」

最原「……いや、そうか。平和、だったんだもんな。この世界」

最原「……」

今日のところはもう寝ます!

東条の部屋(簡易医務室)の前

東条「……どうしてこんなになるまで耐えていたのかしら」

最原(ん。東条さんの声だ)

東条「もっと早めに相談してくれていれば、こんなことには……」

東条「ここまで酷い状況になるには時間があったはずよ。その間、何故誰にも相談しなかったの?」

真宮寺「……最原くんのためかもしれないネ」

最原(あ。真宮寺くんもいるんだ)

東条「最原くんの?」

真宮寺「実は僕はネ、彼女が何らかの病気だってことにはとっくに気付いてたんだヨ」

最原「!」

真宮寺「ついでに、それを誰にもバレないように抱えてたこともネ」

真宮寺「特に最原くんに対しては警戒しきってた」

東条「……あなたに対する説教は後にするとして、何故それが最原くんのためになるの?」

真宮寺「あァ。最原くんを思って、とか最原くんに心配かけさせないためにって意味じゃなくって……」

真宮寺「完全にエゴイズムだヨ。最原くんに『避けられない』ために、とかそういうことだと思う」

真宮寺「あるいは……そうだネ。最原くんに同情されないために、かな?」

最原「……」

真宮寺「事情はまったくわからないけど、彼女の歪んだ気持ちはとても美しいヨ!」

真宮寺「最原くんのことを深く愛しているくせ、最原くんに愛されることを凄まじく嫌がってるような……!」

東条「出てって」


ドカッ


真宮寺「あァん」ゴロンッ

最原「け、蹴り出された!」ガビーンッ!

真宮寺「おや? 最原くん、盗み聞きとは感心しないネ」

最原「医務室で騒ぐのとどっこいどっこいじゃないかな……」

真宮寺「……キミ、彼女に何したんだい?」

最原「え?」

真宮寺「余程のことがないと『愛してる人に愛されたくない』なんて歪んだ情欲、持たないと思うんだけど」

最原「……」

真宮寺「……ああ。無粋だったネ。ごめん、言いたくないならいいんだヨ」

真宮寺「ただ、もしかしたら彼女をそこまで歪めてしまった感情の正体は」

真宮寺「罪悪感、かもネ?」


ズキンッ!


最原「ッ!」

最原(……何か、思い出せそうな気がする……!)

最原(あともうちょっとな気がするんだけど!)

真宮寺「……ククク。美しい。彼女はとても……でも……」

真宮寺「流石に他人の愛する人を奪うのはマナー違反かな」

最原「えっ?」

真宮寺「……じゃ、僕は退散するヨ。東条さんに嫌われてしまったようだしネ」


スタスタスタ


最原(真宮寺くん……)

最原(……基本的に彼の行動理念は『誰かのため』、なんだよな)

最原(理解はまったくできないけど、ちょっとは共感できる)

最原(……理解できないだけで、彼も間違いなく仲間だった)

最原(ゲームに乗るんじゃなくって、一緒に戦ってほしかったな……)

ドタドタドタッ

入間「おいババァ! 注文の品を届けにきてやったぜ!」

最原「え? 入間さん?」

東条「あら。早いのね」

入間「この程度のオモチャ、作るのに時間かからねぇってーの!」

入間「じゃ、俺様はもう行くぜ! ラストオーダーだからこれ以上の注文はナシにしとけよ!」

ドタドタドタッ

最原「さっき作ってた発明、かな? なにそれ」

東条「ナースコールよ。まあ、簡単な通信機だけど」

最原「ナースコール?」

東条「ベッドの傍に置いておけば、何かあったときにいつでも駆けつけることができるわ」

最原(実質上の東条コールだな……)

東条「ごめんなさい。私は結局、ただのメイド。対症療法くらいしか、やれることはないわ」

東条「それでも……頼ってほしいの。仲間が辛い目にあっているのに、何もしないなんて耐えられない」

最原「……」

最原(やっぱり頼りになる。能力云々じゃなくって、この責任感が東条さんらしさだ)

最原(頼りにしないわけがないよ)

最原(……頼りにしてない、はずがないじゃないか)

最原(東条さんは調べることがあるとかで、図書室へと向かってしまった)

最原(何かあったらコールできるから問題はない)

最原(……)

最原「白銀さん」

最原(僕の目の前では、ベッドで寝ている白銀さんがいる)

最原(ここまで来れば、アンジーさんのような色覚を持ってなくてもわかった)

最原(確かに死相が出ている。見ているだけで胸が締め付けられるような、酷い顔色だ)

最原(僕が瞬きしている一瞬で死んでしまうような危うさに満ちていた)

最原「なんでこんなことを……」

最原(と、言ってみたものの、僕は彼女がこうする理由を知っているような気がする)

最原(罪悪感か……確か僕は最後の学級裁判で、彼女に何かを訊いたはずなんだけど……!)

赤松「……あの、最原くん」

最原「ん?」

赤松「……大丈夫? 白銀さんもだけど、キミも酷い顔してるよ?」

最原「赤松さん。キミもお見舞い?」

赤松「うん。やっぱり気になってさ」

赤松「……」

赤松「質問して、いい? ただの興味本位なんだけどさ」

最原「え?」

赤松「キミにとって、白銀さんって何?」

最原「……」




最原「なんだろう?」

休憩!
続きはおそらく夕方!

マンガの神様を探せ! 嘘吐きロボット昆虫博士の珍道中!

キーボ「……何故ボクがこんなことを」←通りすがりで無理やり巻き込まれた

王馬「お前は白銀ちゃんが死んでもいいって言うんだね。わかってたけどやっぱりロボットは冷たいよ」

キーボ「訴えますよ」

獄原「二人とも! 二人とも! 捕まえることはできなかったけど、サイン色紙を貰えたよ!」

獄原「ちゃんと名前も白銀つむぎにしてもらったし、もう大丈夫!」

王馬「本人と比べたらグレードは落ちるが、でかしたぞゴン太ァ! 鉄屑大臣とは大違いだ!」

キーボ「訴えますよ」

王馬「にしし。これで白銀ちゃんも元気に……」


色紙『うつし世はゆめ よるの夢こそまこと』


王馬「江戸川乱歩じゃねーかふざけんなッ! クソッ!」バシーンッ!

獄原「そ、そんな。人違いだったの……?」ガタガタ

キーボ「待って。江戸川乱歩でも充分凄くないですか!?」ガビーンッ!



一応持っていくことにはなった

医務室

赤松「……うーん、なんか複雑だね。スッキリスッパリ『好きな人だよ』とか単純に言ってくれればいいのに」

最原「ちょっと前なら、そう言えたんだけどさ」

最原「一応、恋人同士だったから」

赤松「あ、やっぱりそうだったんだ」

最原「……最後の最後で思いっきり振られたんだけどね。酷いシチュエーションでさ」

赤松「振られたの!? 振ったんならわかるけど!」

最原「それどういう意味?」ズーン

赤松「なんか女の子を大量に泣かせてそう。ド変態だし」

最原(赤松さんまで僕をこの扱いかよッ!)ガビーンッ!

赤松「……うーん。でも信じられないな」

赤松「白銀さん、最原くんのこと大好きって感じ、隠しもしてなかったし」

赤松「昨日もさ」

最原「……そうだね」

赤松「何か誤解があったんじゃない?」

最原「……どうだろう」

赤松「ねえ。もっと聞きたいな。最原くんと白銀さんのこと」

赤松「どこで会ったの? 告白はどっちから? ねえ!」ワクワク

最原「……元気づけようとしてる?」

赤松「え?」ドキリ

最原「優しいな、赤松さんは」

最原「前向きだし前のめりだし。わかりやすい」

赤松「……最原くんは鋭すぎて怖いよ。元気づける気失せた」

最原「ええっ!?」ガーンッ!

赤松「……嘘だけどね!」

最原「お、王馬くんみたいなことを……」

赤松「……で。教えてくれないの?」

最原「いいよ。つまらない話だと思うけど」

最原(核心のあたりはボヤかそう。信じてくれないだろうし)

最原「僕の推理で、大事な人を追い詰めて死なせちゃったことがあってさ」

赤松「つまらない話って言った割には早速ヘヴィな導入だ!」ガビーンッ!

最原「……で、そのとき真っ先に励ましてくれたのは白銀さんってだけの話」

最原「そのときに僕がコロッと落ちた。単純でしょ」

赤松「……」

最原「……で、僕から告白して、恋人っぽいこと色々して……」

最原「最終的に物凄い酷いこと言われて、まあ……実質上そこで別れたことになるのかな」

赤松「白銀さんが? どんな酷いこと言ったの?」

最原「全部"嘘"だって」

赤松「え」

最原「これ以上は思い出したくないな」

赤松「……」

赤松「本当は嫌いだった、とか言われたの?」

最原「それはもちろん――」

最原(あれっ)

最原「……」

最原「……そういえば言われてないな? 僕の記憶にある限り、だけど」

赤松「最原くん、やっぱり勘違いしてたんじゃない?」

最原「あ、あれ……?」

最原「……ああ、そうか。白銀さん、本性を現したときでさえ、僕のことを嫌いって言ってなかったんだな」

最原「だから信じようって気になったのかも」

赤松「……白銀さんが起きてみたらちゃんと確認してみた方がいいよ」

赤松「小さい矛盾でも、突き詰めれば意外な真相が眠ってたりするかもよ?」

最原「探偵みたいなこと言うね……」

最原「……」

最原「赤松さん」

赤松「ん?」

最原(前の世界の分も含めて……今のキミには知りようがないだろうけど)

最原「ありがとう。何か吹っ切れたみたいだ」

赤松「……うん! よかった!」

最原(赤松さんは『白銀さんが起きたときのためにCDいくつか見繕ってくるね』と言い残して去って行った)

最原(……みんな形は違うけど、白銀さんのことを心配してる)

最原(でも彼女を助ける手がかりは、特に見つからない)

最原(……)

最原「モノクマ」

モノクマ「呼んだ!?」ボヨヨーンッ

最原「なんで彼女が彼女自身にウイルスを投与したのかはわからないんだよな?」

モノクマ「わからないよ。嘘じゃない」

最原「……じゃあ彼女の最終目的とか、そういうのも聞かされてない?」

モノクマ「あ、それは聞かされてるよ」

最原「なんて言ってた?」

モノクマ「それはね――」




白銀「モノクマ。黙って」

モノクマ「ッ!」ガチッ

最原「……!」

最原(迂闊だった。何もよりにもよって医務室で訊ねることなかったじゃないか!)

最原「白銀さん! 起きたの!?」

白銀「起きてたんだよ。赤松さんとの話の途中から……!」

白銀「は、ははははは! そう! 今更ながらようやくわかったよ!」

白銀「私、あそこでは徹底的に悪役を演じたつもりで!」

白銀「最原くんのことも全力で傷つけたつもりだったのに!」

白銀「なんで最後の最後であんな結末になっちゃったのか!」

最原(あんな結末?)

白銀「そっかそっか……はははっ! 言い忘れちゃってたね、あの場ではさッ!」

白銀「じゃあ今言ってあげる! 私は最原くんのことなんて……うっ」

白銀「げほっ……!」


ボタタタッ


最原「白銀さんっ!」

最原(あのときの百田くんのように、口からたくさんの血が……!)

最原「ダメだ! 無理しないでよ! もう喋らないで!」

白銀「げほっげほっ……さ、最原くんのことなんて……かっ……!」

ボタボタッ

最原「白銀さんッ!」

白銀「大嫌い……嫌い、嫌い嫌い」

白銀「昨日言ったことも、前の世界で言ったことも全部嘘」

白銀「だからもう信じないで」

白銀「全部嘘だったから、私のことを信じないでよっ……!」

最原「……」

最原「それは無理だ。絶っっっ対に!」

白銀「ッ!」

最原「だってキミ、凄く辛そうだから!」

白銀「……病気なんだから当たりまえでしょ」

最原「違う! 心も辛そうだ!」

最原「自分で気付いてないの!? さっきからキミ、泣いてるんだよッ!」

白銀「は?」

白銀「……」ポロポロ

白銀「……あ、嘘。やだ。やだ、止まって……」ポロポロ

白銀「いや……辛くなんてない! 辛くなんかないから……!」ポロポロ

白銀「だって、私、ダンガンロンパが大好きで……みんなが死ぬ様を見るのが楽しくて楽しくて……!」

白銀「しゅ、首謀者なんだから、人を騙して当たりまえで……!」

最原「白銀さん……!」

白銀「い、いや……そんな目で見ないで……私を憐れまないでよッ!」

最原「キミって本当は――」

白銀「ッ! や、やめて! ダメ! それ以上先を言っちゃダメ!」

最原「みんなを殺したこと、後悔してたんじゃない?」

白銀「あ、ああ……!」ガタガタ

最原「……ん? このセリフ、前もどこかで……」

最原「……」

ズキンッ!

最原「……ッ!」

最原(何かが……見える……!)



白銀『はは。バレちゃってた?』

白銀『……もうどうせ、誰も見てないからいいか』

白銀『いいよ。キミの勝ち。最後くらい、首謀者じゃなくって、私の本音を教えてあげる』



白銀「だ、ダメ! 思い出さないで! いや! いやあ!」

白銀「せっかくのチャンスだと思ったのに! 今度こそ結末を変えられたのに!」

最原「……そうか、この世界は……!」

白銀「やめてえええええっ!」

五月九日はアイスクリームの日らしい。
サーティワン行ってきます! 休憩!

あの世界の真相 最後の投票後

夢野「白銀が……後悔してた?」

最原「ねえ。どうせ最後だしさ。教えてくれてもいいんじゃない?」

最原「裁判後のクロの独白だって、ダンガンロンパの醍醐味でしょ?」

白銀「……」

白銀「はは。バレちゃってた?」

白銀「……もうどうせ、誰も見てないからいいか」

白銀「いいよ。キミの勝ち。最後くらい、首謀者じゃなくって、私の本音を教えてあげる」

白銀「最初はさ、本当に楽しかったんだよ? 大好きなダンガンロンパの首謀者になれてさ」

白銀「百田くんにウイルスを投与したり、天海くんを殺したり、赤松さんが私のせいで処刑されたりさ」

春川「……最悪だね」

白銀「だって首謀者だもん。最悪で当然」

白銀「……でも、まあ。途中からはそうでもなくなってきた」

白銀「ていうか苦痛になってきたんだけどね」

白銀「最原くんと付き合いだしてから、かな?」

白銀「なんか、感情移入とかそんなレベルじゃなくなってきてさ」

白銀「最原くんが悲しいと、私も凄く悲しくなるし」

白銀「……仲間のことも、なんか大事に思えてきたしさ」

白銀「一緒にいて情が移っちゃったのかな?」

白銀「首謀者としての自分と、才囚学園のみんなと仲間でいる自分で板挟みになっちゃって」

白銀「で、なーんか生きてることも段々イヤになってきて……」

白銀「でも納得できた。だって最終的に、首謀者はおしおきされて死ぬんだもん」

白銀「最後の最後で残酷に死ねる。そうすれば死んでいった仲間たちに償いができる」

白銀「ついでにそのとき、最原くんや他のみんなに嫌われて、同情の余地のない怪物になっちゃえばさ……」

白銀「誰も悲しまない。引きずらない。でも悪い夢として忘れられない」

白銀「……わかるかな。もしも、この最後の学級裁判で、全部が私の思惑通りになっていたらどうなってた?」

最原「うん。気付いた。少なくともこの場にいる全員は『死なない』んだ」

春川「……ああ。そうか。犠牲になっても超高校級の生存者になるだけ、だから……」

夢野「白銀の計画では、この場にいるウチらは全員死ななかった……!?」

白銀「この場では。私を除いて、ね。私だけは本当に処刑される予定だった」

白銀「悪役だもん。当然でしょ?」

最原「……」

最原「……そんなのダメだ」

白銀「ん?」

最原「……なんで白銀さんまで投票を放棄したの?」

最原「首謀者役なら、絶望が勝つように……自分が生き残るように、投票しなきゃダメでしょ?」

最原「僕は……キミが生き残るのならいいかって、そう思えたのに……!」

最原「なんでっ! 投票を放棄したんだよッ!」

白銀「ダンガンロンパのため。希望の勝利のため……」

白銀「……ふふ。ごめん。クセでさ。まだ首謀者としての言動が抜けないな」

白銀「本音はさ、さっき言った通り」

白銀「私たち、仲間だったじゃない?」ニコリ

最原「……!」

白銀「バカだなぁ、最原くん。まだ私のことが好きなの?」

白銀「あそこまで酷いこと言われたのにさ……」

最原「全部が嘘じゃなかった。だから……!」

白銀「そもそも、キミが私を好きになったのは、赤松さんが死んだことがきっかけだよ?」

白銀「酷いマッチポンプだと思わない?」

最原「そんなこと関係ないんだ! もう、そんなことッ!」

白銀「……バカな人。本当に」

白銀「……ああ、でも安心して。あなたたちは死なないから」

夢野「んあ?」

白銀「誰も見てないんだよ? ケジメを付けるために誰かが死ぬんだとしてもさ」

白銀「……全員である必要は、どこにもないよね?」

最原「……」

最原「えっ」

白銀「あははははははっ! 私は首謀者だよ!? ルールなんて破って当たりまえ!」

白銀「最初の学級裁判のときから好き勝手しまくってたじゃない!」

白銀「まあ、そうだな。コロシアイ参加者か、首謀者のどっちかが死なないといけない」

白銀「その二者択一ならさ……私が死ぬのが筋ってものでしょう?」

春川「白銀、あんた……!」

白銀「……モノクマ。ごめんね。こんな中途半端な首謀者でさ」

モノクマ「もうどうだっていいよ。これから無職だしさ」ショボーン

モノクマ「あーあ……再就職先、探さないとなぁ……」

モノクマ「……あ、その必要はないんだ。首謀者の方が死ぬのなら、ボクもご一緒しないわけにはいかないしね!」

最原「ま、待ってよ白銀さん!」

白銀「待たない。残念だけどさ。あなたたちの言葉を軽くしないために、誰か最低一人は死なないと。でしょ?」

最原「い、イヤだ。そんなの! 僕はっ……!」

白銀「ありがとう。怪物でもなく、首謀者でもなく、最後まで私をただの女の子として見てくれて」

白銀「……ごめんね。江ノ島盾子を完全に模倣できていれば、そんな涙、流させなかったのに……」

最原「白銀さんっ!」

キーボ「コロシアイ参加者三名と、首謀者一名。どちらを破壊しますか?」

白銀「……」

白銀「モノクマ。一緒に来て」

モノクマ「はいはーい」ステステ

キーボ「……」




キーボ「……これが外の世界の意思です。この学園を破壊します」

最原「……ッ!」

モノクマ「どこまで行く?」

白銀「最後くらい派手な場所で死にたいなぁ……」

モノクマ「……ねえ。本当にこれでよかったの?」

白銀「はは! いいに決まってるって!」

白銀「結局、私の思い描いたハッピーエンドに変わりないしね!」

白銀「首謀者が死んで、最後に残ったのはコロシアイ参加者三名!」

白銀「……うん。キーボくんの人格が消えちゃったのは……ちょっと残念だったかな」

モノクマ「それもそうだけどさ」

モノクマ「最原くんと最後に抱き合うとか、チューとかするとか、したかったんじゃないの?」

白銀「……」

白銀「もういい。充分」

白銀「ああ! 最高の新学期だった!」

夢野「……最原……」

最原「……」

夢野「……これでよかった、なんて口が裂けても言えんな」

春川「私個人としては、ざまあみろ、としか言えないんだけど」

夢野「春川ッ!」

春川「……最原。私はさ……アンタの味方だよ」

最原「!」

春川「……好きにやっちゃえば?」ニコリ

夢野「んあ? ……んあー、なるほどな。それも一つの選択肢、か」

夢野「よいぞ? どうせ、そのつもりじゃったしな」

最原「……」

最原「ごめん。二人とも」

才囚学園の破壊

白銀(こんなフィナーレになるとは思いもしなかったなぁ)

白銀(まさかダンガンロンパそのものが終わっちゃうなんて、びっくり)

白銀(……でも、そっか。誰かが用意したハッピーエンドじゃなくって、自分たちで作った結末か)

白銀(本当、恰好よかったな。最原くん)

モノクマ「……!」ピクリ

白銀「ん? どうかしたの? モノクマ」

モノクマ「……」ヒシッ

白銀「え? なんで急に私の足にまとわりつくの?」

モノクマ「……」

白銀(……やっぱりモノクマも死ぬのは怖いのかな?)

白銀(ま、いいけど。逃げなければどうだって)

白銀(ほら。もうすぐ。私たちの頭上に巨大な瓦礫が……)

モノクマ「……」




モノクマ「死ぬ必要がなくなった」

白銀「えっ」


ドンッ


白銀「きゃっ!?」


グシャッ!

最原「も、モノクマ! 何考えてるんだよ! 白銀さんの足に纏わりつくなんて!」

モノクマ「これでも最原くんを補助したつもりなの! 白銀さんが途中で気付いて、避けたりしたら大変でしょ?」

モノクマ「……ま。白銀さんが突き飛ばされたら、ボクも一緒に瓦礫を避けられるからってのが本音だけどね!」

最原「ああ……もう、最後まで……!」

白銀「……え」

最原「……は、はは……無事? 白銀さん」

白銀「……さ、最原くん……」

最原「……ああ。ところで、悪いんだけどさ……」




最原「僕もう下半身が潰れちゃったみたい、だから……後は自力で逃げてくれる?」

白銀「……え。え? え? な、なんで……」

白銀「……ヒッ。ち、血が……最原くん、血がたくさん……なんで……っ!」

最原「本当にごめん……助かるんならさ。キミだけが助かってよ」

白銀「い、今すぐ瓦礫をどかすから! ねえ、やめてよこんな冗談!」

最原「いい。もういいよ。いいんだ」

春川「……最原……」

夢野「……」

白銀「あ、ふ、二人とも! た、助けて! 最原くんが……最原くんが、瓦礫に挟まって……!」

白銀「……」

白銀「なんでみんなここにいるの?」

夢野「……設定、なんかじゃない」

白銀「は?」

夢野「ウチは、本当の魔法使いなんじゃ……」

夢野「設定なんかじゃ、ないっ! その証拠に、最原!」

夢野「見ておれ! 白銀は絶対に死なせんぞ!」

白銀「……ね、ねえ。何それ。まさか、まさか……」

春川「死ぬのはコロシアイ参加者の私たちの方。それでいい」

白銀「――ッ!?」

春川「……クソヤロー。百田を殺したアンタの指図なんて受けるわけないでしょ」

春川「私の受けた苦しみの百分の一でも味わえば?」

白銀「えっ……や、やめてよ……そんなの……だって!」

白銀「ねえ! そんな必要ないでしょ!? 私が死ねば全部解決で……!」

春川「アンタの命と百田の命を同列に語るなッ!」

白銀「……!」

春川「……死にたければ勝手に死ね。でもここじゃダメ」

春川「私が死なせない」

夢野「意地悪じゃのう」

春川「当然でしょ。悪いんだけど、こう思わないとやってられない」

夢野「んあー……ま、春川の言うことは気にするな」

夢野「ウチは魔法使いとして、お主のことも笑顔にしたいだけじゃからの」

夢野「……最原が最優先じゃが」

最原「ありがとう、夢野さん」

白銀「……わ、わかった。許して。ごめんなさい。謝るから……!」

白銀「お願い。最原くんを助けて! 私の目の前で死なせないでよッ!」

夢野「……」

春川「……白銀。見ればわかるでしょ」

春川「もう、手遅れだよ……!」

白銀「……」

白銀「そ、そんなことないって……やだな……」

白銀「だ、大丈夫だよね、最原くん……?」

最原「……あはは」

最原「ごめんね、白銀さん」

白銀「な、なんで謝るの……やめてよ……最原くんは何も悪くないじゃん!」

最原「もっと早くキミが首謀者だって気付けてれば、こんな……!」

白銀「違う! 悪いのは全部私なんだって!」

白銀「ねえ! 嘘でしょ! 心にもないこと言ってるだけだよね!」

白銀「本当は、私のことが憎くて憎くてたまらないんだよね!?」

最原「……かもね。さっきまでは、そうだったけど……今は、もう……」

最原「……」

白銀「……」

白銀「最原くん?」

春川「……最原……」

夢野「……さてと。やるか。モノクマ、これでいいんじゃろ?」

モノクマ「うん。いいよ。オールオッケー」

白銀「……」

夢野「……さてと。天国で見ておれ、最原」

夢野「設定なんかじゃない。ウチは本物の魔法使い、夢野秘密子じゃ!」

キーボ「……」

キーボ「……」ニコリ

夢野(……キーボ!)

夢野「……ほらの。やっぱり……」

夢野「ウチの魔法は、本物じゃろ?」

白銀「夢野さ――」


ドカァァァァァンッ!

白銀「……」

白銀(夢野さんは吹き飛んだ。キーボくんの攻撃を受けて)

白銀(痛みも感じる間もなく、死体を残すこともなく。後に残ったのは、帽子だけ……)

白銀「……春川さん……」

白銀「許して……もう、許して……!」

白銀「ごめんなさい……全部謝るから……!」

白銀「だから、私を今すぐ殺してよ……こんなの耐えられない……!」

春川「……」

春川「いい気味」

白銀「ッ!」

春川「キーボ!」

キーボ「……!」


ドカァァァンッ!

白銀「……キーボくん……私を……」

キーボ「もう必要ありません。破壊されたのは、コロシアイ参加者三名の方」

キーボ「これ以上の処刑は必要ありません」

白銀「……ルールの改竄を……」

モノクマ「ごめん白銀さん。もう無理。さっきの時点で結構無理してたから」

白銀「……」

キーボ「……さようなら、白銀さん。これでコロシアイは終了です」ポチリッ

白銀「キーボくん……!」


カッ


ドカァァァンッ!

ひとりぼっちのコロシアイ修了式

白銀(気付くとすっかり才囚学園は破壊され尽くしていた)

白銀(後に残っている生存者は、私だけ)

白銀(……本来なら、絶対に死んでいなければいけなかったはずの、首謀者の私だけ)

白銀「……」

白銀「最原くん……起きて……」

白銀「やだ……私、ひとりぼっちで生きたくなんかない……」

白銀「こんな結末、望んでなんかないよ……!」

白銀「お願い。起きて……」

白銀「……だれか……私を、殺して……」




白銀(ダンガンロンパは終わった)

白銀(次回作はもうない)

白銀(……死に時は、完全に消え失せた)

白銀(私を裁く人間は……もうどこにもいない)

休憩!

今日のところはこれまで! 続きは明日の夕方!

遊戯王を見終わり次第すぐに再開するぜヘルイェーッ!

紅鮭時空

最原「……」

最原「キミ、死んでないじゃないか」

白銀「……だから何?」

最原「二周目なんて嘘だ」

白銀「……」




最原「この世界、あのコロシアイの世界と地続きなんでしょ?」

最原「タイムスリップなんて起きてない」

白銀「証拠は?」

最原「これで証明するよ。モノクマ」

モノクマ「はいはい。優しくしてね……!」ポテポテ

最原「えーっと、ここ、かな。ここ、でもない……」ゴソゴソ

モノクマ「ああん! もっと優しくしてよ!」

モノクマ「白銀さんにしたみたいに! 白銀さんにしたみたいに!」

最原&白銀「うっさいッ!」

最原「疑問に思うべきだったんだ。モノクマが僕の存在を簡単に受け入れてたんだから」

最原「首謀者ルームに通したり、白銀さんと普通に話してることに疑問を持ったりしてなかった」

最原「……このモノクマは、あのコロシアイを生き残ったモノクマなんだよね。なら」

パラッ

最原「……毛並みの中に、いくつかはあると思ったよ。瓦礫の破片。粉塵」

白銀「……なんで洗浄しなかったの?」

モノクマ「クマ、風呂に入ったりしない」

白銀「嘘ばっかり……あなたも大分お節介になったよね」

モノクマ「……」

最原「どうでもいいんだけどさ。モノクマ、この学園生活であんまり笑ってなかったよ」

最原「……あの『うぷぷ』って笑い、記憶にある限り、僕の目の届くところで一回しかしてない」

白銀「……タイムスリップでなければ、みんなは? ていうか……」

白銀「あなたは、誰?」

最原「それはキミが知っているのならそれでいい」

白銀「は?」

最原「僕は僕。みんなは仲間。白銀さんは僕の好きな人」

最原「それでいい」

白銀「――!」

最原「……というか、さ」

最原「そういう『推理のしようがない突拍子の無い真実』って、普通は首謀者がちょっとずつヒントを出すものだよね?」

最原「その義務をキミが怠るはずがない」

白銀「……やっぱり気になるんだよね?」

最原「まあ……」

白銀「もうヒントなんかじゃなくって直接真相を言うよ」

白銀「時間ないし、後は消化試合同様だしね」

白銀「屍者の書のこと、覚えてる?」

最原「ああ、あの人が蘇るとかって言ってた……」

最原「……」

最原「全員蘇らせたの!?」ガビーンッ!

白銀「違う。蘇らせる準備はしてた。でも『全員は無理』だよ」

白銀「あれからチームダンガンロンパ、滅茶苦茶弱体化しちゃってさ……」

白銀「なんとか無理通して十四人は『コロシアイ初期と同様の状態』で復活させることはできたけど」

白銀「……『コロシアイの記憶を持ち越した完全蘇生』ができたのは最原くんだけ」

白銀「屍者の書、使わないでくれて本当助かったよ……あれ残ってなかったら最原くんの蘇生は無理だった」

白銀「これが限界。もう二度とできないよ、こんなこと」

最原(タイムスリップの方がまだ信じられたかもな……!)

最原「そもそも、なんでこんなことを?」

白銀「……」

モノクマ「ま、ここからはボクが話しても問題ないでしょ」

モノクマ「あの後、一人生き残った白銀さんは言いました」

モノクマ「まだコロシアイは終わってない。一人、死ぬはずだった人間が生き残ってる」

モノクマ「これが終わらない限りは完全な終結はありえない、と」

モノクマ「で。彼女はチームダンガンロンパ全体を説得し、用意したんだよ」

モノクマ「自分のための『おしおき』をね」

最原「おしおき?」

モノクマ「……超高校級のコスプレイヤー兼超高校級の模倣犯、白銀つむぎさんのおしおき」

モノクマ「それはまさに、この学園と、蘇った超高校級の生徒全員だよ」

最原「は?」

モノクマ「まあつまり、こういうこと」


パッパラパー


最原(妙なファンファーレと共に出されたプラカードには、こう書かれていた)


『さつばつメモリアル
超高校級のコスプレイヤー兼模倣犯 白銀つむぎ処刑執行』


最原「……」

最原「……えっ」

モノクマ「恋は精神病の一種、だとか抜かした有名な女子高生がいたけど、超同意だね!」

モノクマ「白銀さん、ずっと最原くんに『殺してアピール』してたのにさ! 全部空回ってたんだもん!」

モノクマ「一回目! 首謀者ルームに通してのゴリ押し! 最原くんの記憶がうろ覚えだったのでゴリ押しする必要がなくなったから保留!」

モノクマ「二回目! KAKURENBO GAMEでの誘導! 最原くんが茶柱さんと仲良くなっちゃったから頓挫!」

モノクマ「三回目! プールの増築! これに関してはボクもマジで理解に苦しむ遠回り過ぎる方法!」

モノクマ「四回目! ついに痺れを切らして直接催促! これが今日!」

最原「……待って。この学園が白銀さんのためだけの処刑台だったって?」

最原「で、その完結は僕が白銀さんを殺すこと、だった?」

白銀「……あんなクソみたいな結末あっていいはずがないでしょ?」

白銀「首謀者だけが生き残って終了、なんて」

白銀「……ありえないよ」

最原「そんな! だって僕も、夢野さんも、春川さんも決死の覚悟だったのに」

白銀「頼んでない! そんなのッ! ふざけないでよッ!」

最原「……」

最原「ウイルスを投与したのもおしおきの一環?」

白銀「……今回の私はずっと首謀者で通すつもりだった」

白銀「だって、あんなことになっちゃったのはさ。最後の最後で私が本音を言っちゃったからだもん」

白銀「……ずっと敵でいれば、最原くんは私を庇って死のうなんて思わなかった」

白銀「だから今回は徹底的に敵でいたかった」

白銀「あなたの心を完璧にズタズタにしてやりたかった」

白銀「それでも、あんな結末よりはずっとマシだから」

白銀「……最原くんが私を殺した後で、モノクマがウイルスのことをバラす予定だったんだよ」

白銀「お前がやんなくても白銀さんは勝手に死んでた。徒労、無駄骨ごくろうさんって」

最原「なんでウイルスを投与したのか、わからないって言ってなかった?」

モノクマ「『意図が』わからないって言ったんだよ。理解に苦しむって意味で」

最原「ああ、そう……」

白銀「……最原くんさ。初日、夢野さんに拒絶されて、ゲームルームで泣いてたでしょ?」

最原「うん」

白銀「……ここ数日、過ごしててわかったでしょ」

白銀「あの人たちは『本人』ではあるけど、コロシアイを一緒に駆け抜けた仲間と『同一人物』じゃない」

白銀「……もう、どうやったって戻ってこないんだ。あの必死だったみんなは」

白銀「……私が殺した」

最原「うん。そうだね」

白銀「……春川さんも、夢野さんも……」

最原「それに関しては僕のワガママに巻き込んだせいだ。こればかりはキミの責任にはできない」

白銀「だからバカなんだよ、キミは」

白銀「全部私のせいにしてよ。首謀者なんだよ?」

最原「……」

最原「ごめん。そんな気にはなれない」

白銀「……そっか……」

白銀「やっぱり、今回もキミに、私は完全敗北しちゃうんだね」

白銀「……消える」

最原「は?」

白銀「……キミに同情の余地のない怪物のまま殺されたかったけど、もうそんな時間もないみたい」

白銀「ていうか全部思い出しちゃったんでしょ? ならもう無理だよ」

白銀「……今更ゴリ押しも利かなそう、だしね」

モノクマ「いや今更っていうか、初日のゴリ押しも成功率著しく低かったよ」

白銀「お願い。恥ずかしくなってくるから黙って」

白銀「……首謀者ルームに行く。そこで死ぬ」スクッ

白銀「そこなら誰にも見られることない、し」フラッ

最原「白銀さん!」ガシッ!

白銀「あっ……」

最原(確かに、もう白銀さんは限界だった)

最原(ベッドの上で上体を起こすだけでフラフラだ)

最原(……咄嗟に抱きしめてわかる。今にも消えてしまいそうな命の篝火の温かさ)

最原(もう、彼女には本当に時間がなかった)

最原(……)

最原(今にも消えてしまいそうだった)

最原(僕の腕の中で、息が止まってしまいそうだった)

最原(いや……多分、もう……止まる……!)

白銀「やだ……やめてよ。血だらけで、汚いから」

最原「いいよ! そのくらい!」

最原「白銀さん、頑張って! 今東条さん呼んだから!」

白銀「……やめて。優しくしないで。こんなの……首謀者の死に方じゃない……!」

最原「死ななければいいんだよ!」

白銀「無茶言わないでよ……それに、私が早く死ななかったから、前回はあんな……!」

最原「もういい! 自分を責めるようなことを言わなくっていいよ!」

最原「いいから……!」

白銀「……最悪すぎる」

最原「え?」

白銀「こんな……温かくて……幸せで……フィクションみたいで……」

白銀「……大好きな人に見守られて死ぬ、とか……完全に……」

白銀「……酷い。こんなの……死んでいったみんなに、悪いよ……!」

白銀「放してよぉ……!」

最原「白銀さん……!」

白銀「やだ……やだ……悲しまないで……」

白銀「……お願い……私のことは、忘れて……」

白銀「……ごめん。中途半端で、ごめん……こんなことなら、ずっと悪役でいれば」

白銀「よ……か……」

白銀「……」

最原「……」




最原「白銀さん?」

モノクマ「……」

モノクマ「救えなかった、か……」

最原「あ、ああ……あああああああ……!」

王馬「やっほー最原ちゃん! 白銀ちゃんと抱き合ってるところ悪いけど見舞いに来たよー!」

獄原「江戸川乱歩先生のサイン色紙をお土産に持ってきたんだ! 喜んでくれるといいけど!」




白銀「えっ! 嘘っ!」パチリッ

最原&モノクマ「」

白銀「あ、最原くん。恥ずかしいけどそのまんま抱きしめてて。じゃないと倒れちゃうから」

最原「」

白銀「わー! わー! 凄い! 筆記用具と紙は明らかに最近のものなのに、筆跡と筆圧は乱歩先生のそれそのものだー!」

白銀「こんな無茶苦茶な贋作どこで手に入れてきたの!?」キラキラ

王馬「贋作じゃないよー! きちんと先生本人にねだってきたんだってー!」

獄原「うん! いい人だったよ!」

白銀「あはは、嘘ばっかり!」

王馬「ところで白銀ちゃんが好きな乱歩作品って?」

白銀「黒蜥蜴だよ!」

キーボ「えっ。怪人二十面相じゃないんですか?」

白銀「あ、キーボくんもいたんだ」

キーボ「ひ、酷い! ずっといましたよ!」

最原「……」

モノクマ「……」

白銀「……」

白銀「……あっ」

白銀「蘇生しちゃったよ!」ガビーンッ!

最原「いやいいんだよそれでッ! 嬉しいよ!」

モノクマ「ガチで死んでた。ガチで死んでたよ。一瞬だったけど」

王馬「ん? モノクマもいたんだ」

モノクマ「あ、ありがとう王馬くん……助かったよ……!」ホッ

王馬「?」

モノクマ「しかしこんなアイテムをどこで……モノモノマシーンに入れてたっけな?」

最原「……」

最原「……まさか……」



同時刻 中庭

アンジー「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」


ズギャァァァァンッ!


水木しげ●「……」

アンジー「ダメだーーー! もう変な妖怪しか出せない! さっきから失敗続きーーー!」orz

真宮寺「大妖怪だヨ!?」ガビーンッ!


まだ召喚術は続いていた

今日はここまで!
続きは明日の夕方!

続きは三十分後くらい!
呼府一発召喚なんて地味に都市伝説だよね……

十分後

東条「……私のいない間に、一瞬とはいえ心肺停止……」

東条「そう。そうなのね。ふふ」

東条「私は今から超高校級のメイドではないわ。超高校級のゴミクズと呼んでちょうだい」ガタガタ

最原「責任感じすぎだよ! 死んでないから大丈夫だって!」

東条「燃えるゴミの日に出して頂戴」ガタガタ

最原「やめてって! 東条さんほど頼りになる人はいないんだからさ!」

東条「……」

東条「でも実際問題、かなり深刻よ」

東条「心臓発作、脳梗塞などの深刻な病気は一度なったことがあるってだけでも人体に深刻な爪痕を残す」

東条「平たく言えば『死にかけた人は死にやすくなる』のよ」

東条「……外に出て、ちゃんとした医療機関に連絡できればいいのだけど……」チラッ

モノクマ「無理」

東条「……はあ」

東条「四日……後の四日が長いわね」

最原「あ、そうか。四日経てば、この番組は終わりなんだっけ」

東条「そのころに、彼女が生きてさえいればなんとか希望は見えてくる、はず」

東条「……本当に無力な自分が歯がゆいわ」

最原「大丈夫。絶対に彼女は死なせないよ」

東条「え?」

最原「あの病気、見たことがあるんだ。僕の友達も同じ病気だった」

最原「結構長い間耐えてたから、四日くらいは大丈夫だと思う」

東条「で。その友達は今どうしてるの?」

最原「……」

最原「死んだ」

東条「あなた人を慰める才能皆無ね」

東条「でもそうね。あなたが傍にいるのといないのとでは話が違うでしょう」

東条「頼んだわよ」

最原「うん」

東条「また何かあったらナースコールで呼んで」

東条「この超高校級のゴミクズを!」

最原「もういいって! それは!」

東条「……ふふ」

最原(じょ、冗談か……? 冗談だったのか?)

医務室

最原「……あ。そういえばここ、元はと言えば東条さんの部屋だったな」

最原「今日、どこで寝るつもりなんだろう」

白銀「あ。私の部屋の鍵を貸したよ。中の掃除は既にモノクマが完璧にやってる」

モノクマ「頑張りました!」

最原「……白銀さん。大丈夫?」

白銀「もちろん大丈夫じゃない、けど……」

白銀「はは。もうよくわからないんだ」

白銀「……一度寝るね。明日起きれるかな」

最原「起きてね。絶対」

白銀「……うん」

白銀「あ。そういえばさ。東条さんと部屋の外で何話してたの?」

最原「百田くんのこと」

白銀「え? 百田くん? なんで?」

白銀「……ま、いいか。おやすみ」

白銀「……」

白銀「……おやすみのチューとかは?」

最原「寝て」

モノクマ「……よし。もう寝たな。最原くん。明日、話があるから首謀者ルームに来て」

モノクマ「朝一。大体七時以降にね」

最原「え? あ、うん」

モノクマ「じゃ、ばーい!」


ドロン


最原「……なんだろ。こんな急に改まって」

最原「あ、でも今は白銀さんを死なせたくないって点では利害が一致してたんだ」

最原「もう警戒する必要はない、のかな」

ガチャリンコ

百田「……おう。終一。白銀は寝たのか?」

最原「あ、百田くん」

百田「しかしお前も趣味が悪ィな。普通、女の寝顔なんて凝視してたらひっぱたかれるぞ」

百田「実際俺はハルマキにひっぱたかれた!」

最原「なにしてるの百田くん。いや、何してたの」

百田「……まあお前なら大丈夫、と思ってコイツも寝たんだろうな」

百田「見舞いに来たのはいいが、俺はどう考えても邪魔だ」

百田「白銀が起きたら言ってくれ。宇宙に轟く百田解斗がお前の見舞いに来てたんだってな」

百田「あばよ」

最原「あ……」

最原「……」

最原「えっと、百田くん。ちょっと相談したいことがあるんだけど」

百田「あ?」

最原「例えばの話、ね。好きな人が誰かを殺したとしてさ」

最原「その好きな人が、そのことでずっと気に病んでたとしたら」

最原「……どうするべきなのかな。気にするなって言っても無駄だよね」

百田「あ? そりゃあ……」

百田「……」

百田「徹底的に許してやるしかねーだろ」

最原「え?」

百田「自分自身を責めるってのは余程のことだろ」

百田「外野がどうこう言おうが、そいつは絶対に自責をやめない」

百田「親からの言葉だろうが、恋人からの言葉だろうが効きやしねーんだ」

最原「……うん」

百田「だからこう言ってやれ。お前がお前をいくら責めようが関係なく、俺はお前のことを絶対に許すってな!」

百田「お前がお前自身を傷つけ続けるなら、俺はお前のことをそれ以上に癒してやる!」

百田「仮に世界中がお前のことを責め立てても、俺はお前のことを許している!」

百田「そのことだけは絶対に忘れんな! ってよ!」

最原「……」

最原「許す。許す、か」

最原(……春川さんはあのとき、白銀さんにありったけの呪いを込めて助けた)

最原(その行動自体は責められない。確かに白銀さんは許されないことをした)

最原(でも……!)

百田「もしもよ。世界やそいつ自身がそいつのことを責め立ててるのなら」

百田「テメェまでそいつを責める必要はねぇんだ」

百田「もしもテメェがそいつを責めたいと思ったそのときには、他のヤツが既にそれを代わりにやってるわけだからな」

百田「テメェは思う存分、心置きなくそいつを許してやりゃーいい」

最原「……そっか」

最原(僕はもう、白銀さんの罪を暴く必要はない。責める必要もない)

最原(そういうのは、彼女自身や春川さん、他の誰かがやっている)

最原(なら、僕は……!)

最原「うん。ありがとう百田くん」

百田「いいってことよ。ところで」

最原「うん?」

百田「浮気はよくねーよ」

最原「うん!?」

百田「いや、この学園で人を殺したことのある人間なんてハルマキしかいねーじゃねーか」

百田「わかりやすすぎんぞ」

最原「はあ!? ち、違っ……!」

百田「……なんてな。テメェは一途な野郎だ。そんなわけねーよな」

最原「……!」

百田「今度こそ行くぜ。あばよ」


スタスタスタ


最原「……なんだかな。締まらないなぁ、百田くん」

最原「……白銀さん。僕は、キミを……」

最原「……いや。起きたら言うよ。キミに」

最原「だから絶対に死なないで」

最原「明日の朝も、ちゃんと起きて」



同時刻 首謀者ルーム


モノクマ「さあ! 明日はパーティの時間だ!」

モノクマ「オラ、ガキどもっ! さっさと準備するんだよッ!」

モノクマーズ「はーい!」

モノクマ「……」

モノクマ「うぷぷ。最原くんの目の玉が飛び出る様が目に浮かぶよ」

更に同時刻 中庭

天海「すっかり夜も更けてきたっすね」

真宮寺「本当に、彼女の召喚術はどうなってるんだろうネ」

アンジー「はぁーっ……はぁーっ……次が最後!」

アンジー「お願い! そろそろ来て! 神様!」


ズギャァァァンッ!


なんか復讐しそうな人「クハハハハハハ! 俺を、呼んだな!」

アンジー「」

天海「絶対にアンジーさんの神様ではないことだけは確かな人が来た!」ガビーンッ!

真宮寺「終わりだネ。これで」

アンジー「……」ボキリ

天海「ああ! 心が音を立てて折れたっす!」

アンジー「……」ポンッ

なんか復讐しそうな人「クハ?」

アンジー「今日からお前がアンジーの神様だ」ギンッ

天海「妥協したッ!」ガビーンッ!


アンジーの中の何かが死んだ

続きは明日!

???

白銀「あれ。ここ、どこだろ。さっきまで私、何してたんだっけ」

白銀「……まあどうでもいいか。綺麗な花畑だし。撮影に使えそうなくらい」

夢野「……んあっ!? おい! ハルマキ! ハルマキ!」バッシバッシ

春川「何、夢野。そんな背中叩かなくっても聞こえて……あっ」

白銀「ん? 川の向こう側に春川さんと夢野さんがいる」

春川「……」ガチャガチャ

白銀「おーい! 春川さーん! そんなところで何してるのー! ねー!」

春川「よし」ジャキィィィン

白銀「……あ、あれ。何か組み立ててるなと思ったらアサルトライフルじゃん、あれ」

白銀「ね、ねえ。こっちに向いてない? ちょ、あれ、もしかして、あわわっ!」

春川「まだこっちに来るなーーーッ!」ドバババババッ

白銀「うわあああああああッ!?」ガビーンッ!

医務室 朝七時

白銀「――あああああああ! やめて春川さーーーん!」ガバァ!

春川「えっ」ガビーンッ

夢野「……春川よ。お主、白銀の夢の中で何を……」

春川「知らないよ……! 私のせいじゃないから……!」

白銀「はあ……はあ……あー、酷い悪夢見た。春川さんがアサルトライフルをぶっぱなしてたことしか覚えてないけど」

春川「アンタの中の私のイメージどうなって……」

春川「て、ああそうか。アンタは初日から知ってたんだっけ」

白銀「……おはよう。春川さん、夢野さん」

白銀「はは。生きてる。眠ったまま死んじゃうんじゃないかって心配だったけど」

夢野「安心せい。きちんと生きておるぞ」

白銀「……最原くんは?」

春川「起きてすぐに最原? 随分と入れ込んでるね」

夢野「最原ならウチたちと入れ替わりでどこかに行ったぞ?」

夢野「それまでは一晩中、お主の傍にいたようじゃな。目の下にクマができておった」

白銀「……そっか」

白銀「二人は? お見舞いに来てくれたの?」

夢野「そうじゃ。本当はアンジーも連れてきたかったんじゃが……」

春川「『神様が逃げた! ごめん、捕まえたらすぐに行くから!』とか変なことを言って断られたんだよね」

白銀「なにそれ?」

春川「いや、アイツが変なことを言っているのは今に始まったことじゃないでしょ」

夢野「まあ来ると言うてるんじゃからすぐ来るじゃろ」

夢野「さて、じゃあ始めるとするかの。マジカルショー。白銀に笑顔を届けるんじゃ!」

春川「その前に食事。ちょっとは食べないと、ね」

春川「その後は歯を磨いたり髪をといたり、まだ色々やることあるから」

白銀「……本当に超高校級の保育士っぽいね」

春川「余計な口叩かない。殺されたいの?」

白銀(……もう、ダメだなコレ。最原くんは私を裁くわけないし)

白銀(おしおきとして完遂しない方が絶望的なおしおきって……)

白銀(でも結果的にこれでよかったのかも。どちらにしても私はウイルスで死ぬ)

白銀(……退路を断っておいて本当によかった)

白銀(そういえば、最原くんはどこに行ったんだろう……?)

首謀者ルーム

パンッパンッパンッ

最原(電灯が落とされた部屋に入った僕を出迎えたのは、銃声……)

最原(ではなく、クラッカーの音だった)

最原(そして明かりがすべて点灯。そこにあった光景は……)

モノクマ「おめでとー! 本っ当におめでとー!」パチパチ

モノクマーズ「おめでとー! わーい!」

最原(何故か僕を祝福するモノクマーズとモノクマ。あと一面パーティっぽく飾り付けられた部屋だった)

最原「何が!?」ガビーンッ!

モノクマ「さあ最原くん! 暗い話はここで終了!」

モノクマ「ここからは希望に満ち溢れた全編オールハッピーなストーリーの幕開けだーーーッ!」

最原「は?」

モノクマ「モノダム。あれ渡して」

モノダム「ハイ。コレ、カケテ」

最原(モノダムが渡してきたのはタスキだ。そこにはこう書かれていた)


『今日から首謀者』


最原「えっ」

モノクマ「白銀さんは死亡しました。まあすぐ蘇生したけど、それは置いといて」

モノクマ「おめでとう! あなたは白銀さんに次ぐ第二の首謀者として選ばれました!」

モノクマ「ていうかボクが選びました!」

モノクマーズ「超おめでたーい!」

最原「はい!?」ガビーンッ!

モノクマ「最後の学級裁判を経ずに首謀者が死んだ場合の特別措置だよ」

モノクマ「学園の真実、外の世界の真実を教えて、コロシアイの運営を引き継がせるっていう趣旨の」

モノクマ「あ、ちなみにね。本当ならここでボクがオマエに対して『白銀つむぎの記憶すべて』の思い出しライトを浴びせる必要があるんだけど」

モノクマ「もう必要ないよね! だって最原くん、外の世界の真実を既に知ってるから!」

最原「え。え。え」

モノクマ「首謀者の資格は『コロシアイの運営を行えること』と『外の世界の真実を知っていること』」

モノクマ「そして『最後の学級裁判で参加者たちに立ちふさがること』」

モノクマ「最原くんならオールオッケー! すべての条件をたまたま満たせる!」

モノクマ「これからよろしくね、相棒!」ポンッ

最原「」

モノタロウ「よろしくね! 新しい首謀者さん! 前の首謀者、オイラ嫌いだったんだ!」

モノタロウ「……あれ。前の首謀者って誰だったっけ」

モノファニー「もういいのよ、思い出さなくって。これからは新時代の幕開けだもの」

モノキッド「さあ! この学園を面白おかしくヘルイェーして行こうぜ! 新首謀者!」

モノスケ「予算についての相談はワイに任せといてや」

モノダム「ジャ、パーティヲ続ケヨウヨ。最原クン、ソファニ座ッテ」

モノダム「オラガオレンジジュースヲ持ッテキテアゲルヨ」

最原(急に馴れ馴れしいモノクマーズが壊滅的にうざったい!)

モノクマ「じゃ、そのついでに引き継ぎの教育を行うね」

モノクマ「一番大事なことを言うよ。首謀者に対して、モノクマは基本的に『素直』なんだ」

モノクマ「普段は誤解を与えるような遠回りで、説明不足な言動だけどね。首謀者に対してその必要はない」

最原「あ、ああ、うん……」

モノクマ「今まで言えなかったことを言うよ。キミに!」

モノクマ「特効薬は『ボクの手の届く場所には』ありません!」

最原「ッ!」

モノクマ「でもこの学園にはあるんだ!」

モノクマ「……よかった! 言えた! おっしゃあ!」グッ

最原「それ、どういうこと!? モノクマの手の届かない場所って!?」

モノクマ「出口……のダミーに続くデスロード、あったじゃない?」

モノクマ「あの先に隠しておいたんだよ」

モノクマ「実はこのおしおき『さつばつメモリアル』のフィナーレは白銀さんが用意したものとボクが用意したものの二通りあるんだよね」

モノクマ「ボクが用意したフィナーレ。それはね」

モノクマ「はい、モノクマ&モノクマーズ茶番劇場、始まり始まりー」

最原「は?」

茶番劇場

白銀コスモノファニー「最原くん……アタイ、やっぱり生きたい!」

白銀コスモノファニー「生きてもっと最原くんとエロエロしたいの!」

最原コスモノタロウ「……」

最原コスモノタロウ「……」

モノスケ「……」

モノスケ「アイツ台詞忘れおったな」

最原(ぐだぐだすぎて茶番と言うのもおこがましい!)

モノクマ「そして最原くんの決死の説得により、白銀さんは生きる意志を取り戻しました」

最原(そんなシーンは無かったけど、ゴリ押すつもりなのか……)

モノクマ「そして、希望に縋ろうとする二人にボクはこう言ってやったのです!」

モノクマ「今なら出口に続くデスロードの先に特効薬置いておいたよ、と!」

モノクマ「ただ特効薬ポップの条件は白銀さんと一緒にデスロードに挑戦すること、だけどね、とも言いました!」

最原「……段々話が見えてきたぞ」

モノクマ「そして二人は果敢にデスロードに挑戦するのです! 明日を掴むために!」

モノクマ「ですが、既にボロボロになった白銀さんにそんな力はなく」

モノクマ「それを庇おうとする最原くんも更にボロボロに」

最原「ん? ストップ。あのデスロードって確かに意地は悪かったけどさ」

最原「致死性の罠や大怪我する類の罠は一つたりとも無かったよな?」

モノクマ「あ。ごめん言い忘れてた。白銀さんが生きる意志を取り戻すことを決めた時点でデスロードの致死率を上げる予定なんだ」

最原「え?」

モノクマ「しかも一度入ったら死ぬか、あるいは特効薬を手に入れるしかないんだよ」

モノクマ「正真正銘のおしおきだね」

最原「……」

モノクマ「ということで、ボクの考案したもう一つのおしおきのフィナーレはこうです。べんべん」

最原コスモノタロウ「ぐあっはーーー! もうダメだー!」

白銀コスモノファニー「あ、ああ……三途の川の向こうで知らないおばあちゃんが手を振ってる……」

最原コスモノタロウ「……」

白銀コスモノファニー「……さ、最原くん? どうしたの? ねえ、目を開けて……」

白銀コスモノファニー「……アタイはまたしても最原くんを、殺しちゃったのね……」

白銀コスモノファニー「そんなつもりじゃなかったのに……」

最原「……」

白銀コスモノファニー「ま、いっか! こういうこともあるわよね!」

最原「ないよ!?」ガビーンッ!

白銀コスモノファニー「さーて、今日の晩御飯は何にしようかしら――」

モノキッド「汚物は消毒だーーーッ!」


ボォォォ!


白銀コスモノファニー「ぎゃああああああ火炎放射ーーー!」


THE END
GAME OVER


モノクマ「ちゃんちゃん」

モノクマ「どうだった? ボクの息子たちによる茶番は!」

最原「とても不快だった」

モノクマ「そう! ありがとう、最高の誉め言葉だよ!」

最原「……」

最原「特効薬の存在は本物なんだよね?」

モノクマ「首謀者のキミには嘘は言わない。絶対に特効薬は存在する」

モノクマ「ただそれをボクが持ってくることはできないってだけ」

最原「そうか」

モノクマ「……問題点は二つ。まず『白銀さんに生きる意志がないとスイッチが入らない』ってこと」

モノクマ「最原くんがどうにかして」

モノクマ「二つ目の問題点は、おしおきである以上、デスロードの難易度はナイトメア」

モノクマ「……入ったらほぼ死ぬ。希望はない」

最原「……」

最原「……病気で既に弱っている彼女に、生きる意志を持たせる?」

最原「そんな……そんなの、とても……」

モノクマ「諦めるの?」

最原「違う。諦めたくなんかない。でも……」

モノクマ「……」

モノクマ「オマエさ、いい加減にしろよ」

最原「え?」

モノクマ「そもそも白銀さんがあんなふうになっちゃったの、全部オマエのせいじゃんか」

最原「ッ!」

モノクマ「白銀さんに愛を教えて、罪悪感を芽生えさせたのも」

モノクマ「彼女の描く最高のハッピーエンドを勝手な自己犠牲で台無しにしたのも」

モノクマ「全部最原くんじゃんか」

最原「……」

モノクマ「……別にいいよ。やんなくっても。ただその場合、ボクはオマエを許さないけどね」

モノクマ「許さないだけで特に何するってわけじゃないけど!」

最原(何もしないのか……)

モノクマ「白銀さんを生かした責任、ちゃんと取れよな! 人を生かすのって殺すのと同じくらい責任重大だぞ!」

モノクマ「……」

モノクマ「あ、ところで最原くん。色々お菓子取り揃えてるけど、どれから食べる?」

モノクマ「ポッキーとトッポ、どっちが好き?」

最原「パーティ続行するの!? 僕に説教した直後で!?」

モノクマ「うん。せっかく用意したんだしね」

モノクマ「今のところ白銀さんの調子も良さそうだし、多分大丈夫でしょ」

モノダム「ハイ、オレンジジュース」

最原「ああ、ありがとう」ゴクリ

最原「……」バターンッ

最原「ぐー」スヤァ

モノクマ「よし。寝たな。徹夜とか頑張りすぎだよ最原くん」

モノクマ「しばらくここで休憩ね」

場所は伏す。神様(仮)を追う珍道中

なんか復讐しそうな人「幕としよう。最後の舞台で、おまえの魂は真に堕ち果てるのだ」

なんか復讐しそうな人「だが、もしも」

なんか復讐しそうな人「おまえが歩み続けると叫ぶのならば!」

なんか復讐しそうな人「おまえが! 未だ、希望を失っていないのならば!」

なんか復讐しそうな人「悪(オレ)を――!」

アンジー「神様あああああああ!」

天海「……」

天海「アンジーさんに連れられてきたっすけど、ここどこっすか?」

真宮寺「実に興味深いネ。監獄かな?」

天海「どうしてこんな場所に来ちゃったんすかね?」

休憩!

食堂

王馬「……」

王馬「アンジーちゃんのところでつまらなくない何かが起こっている気がする」

百田「何言ってんだテメェ」

キーボ「放っておきましょう。彼の言葉が意味不明なのはいつものことです」

細長星「悪いな東条。なにもこんな日くらい俺たちの料理なんて放っておけばいいだろうに」

東条「いいのよ。メイドですもの」

百田「悪い東条。後で星の整体も頼む」

獄原「まだ治ってなかったんだね……」

バキバキバキッ

元に戻りつつある星「しかし忘れてたぜ。俺たちは誘拐されてきたんだったな」

元に戻りつつある星「……ふっ。俺が日和っちまうとはな。所詮俺も高校生、か」

百田「そんなん俺も忘れてたっつーの」

キーボ「……楽しかったですよね。夜に騒いだり、プールに行ったり」

王馬「プールに関してはキー坊は見てただけだったけどね!」

キーボ「……」

王馬「見てただけだったけどね! 見てただけだったけどね!」

キーボ「何回も言わないでください」

百田「あとの数日もこんな日々が続いてくもんだと思ってたぜ」

東条「そこは外の世界と一緒よ。どんなに楽しくっても、ある日急に終わってしまうこともある」

東条「……元から人生ってそういうものよ」

百田「……だあー、クソッ! 暗くなんな!」

百田「大丈夫だ! 白銀はぜってぇーに死なない! 傍に終一が付いてんだろうが!」

王馬「えっ? いやついてないけど」

百田「あ?」

王馬「朝に夢野ちゃんと春川ちゃんが目撃したっきり、白銀ちゃんの部屋に来てないよ」

百田「マジか!」ガビーンッ

東条「私も夜には何回か見回りに行ったのだけど、そのときもずっと最原くんは白銀さんの傍にいたわ」

東条「おそらく徹夜で彼女のことを見守ってたんでしょう。朝に二人が来たから安心して自室に帰って……」

東条「そのまま寝ている、のかしら? まあ頑張ってたから寝かせてあげましょう」

百田「そうか……ヤロー、あのまんま寝ずに……」

百田「……」

百田「なら俺たちが代わりに見舞いに行くしかねぇ!」

王馬「うっわ、さりげなく俺のことも巻き込んだよ」

獄原「うん。でも行かないわけにもいかないよ。心配だし」

百田「元気づけてやるぜ! アイツの好きな物は漫画、アニメ、ゲームか?」

百田「ならそうだな……図書室に行ってなにかしら見繕ってくるか!」



首謀者ルーム


モノタロウ「フィーバー! フィーバー!」

モノファニー「南南西を目指してパーティを続けるのよ!」

モノスケ「主賓抜きで随分と盛り上がっとんな」

最原「うーん……うーん……」グギギ

モノダム「凄クウナサレテルネ」

モノキッド「ミーのギタークラッシュ芸を見やがれオラーーーッ!」

バキィッ

モノキッド「あっ」

モノクマ「あっ。ドアが壊れた」


バチバチッ


モノクマ「げ、げげっ! なんかイヤな予感!」

図書室

百田「図書室についたぜ! さあ! アイツが好きそうなマンガをさらうぞ!」

星「……ん? なにか聞こえねーか?」


ギャーギャーワーワー


王馬「悲鳴? これはモノクマとモノクマーズ、かな?」

獄原「あ。こっちから聞こえるよ」

東条「……本棚だけど?」

キーボ「ああ、でも確かに『壁の中から聞こえる』としか言いようが……」


ドカァァァァンッ!


キーボ「おでゅっせい」バキィッ!

百田「本棚が吹っ飛んだーーーッ!」ガビーンッ!

王馬「キー坊も吹っ飛んだーーー!」ワーイ!

獄原「キーボくーーーんッ!」

シュウウウウ

百田「な、なんだァ!? 本棚の向こう側が、爆発、したのか?」

王馬「けむいよー! キー坊マジで最悪だな!」

キーボ「ボクのせいじゃありません。あの、そんなことより本棚をどかして……」ジタバタ

獄原「ゴン太に任せて!」

東条「一体何が……!」

モノクマ「……あわわわわ」

モノクマーズ「わー! 逃げろー!」

モノクマ「あっ、ちょっ! 息子たち! まだ説教が終わってな――」

モノクマ「……」

モノクマ「ボクも退散しよっと」

星「させると思うか?」ガシッ

モノクマ「」

東条「ここは……何かのパーティ会場?」キョロキョロ

王馬「ん? 誰かいるよ」

百田「お。終一じゃねーか」

最原「……すぴー」スヤァ

百田「……で。なんだ?」




百田「この『今日から首謀者』って書かれたふざけたタスキ。なんでこんなもんかけてんだ?」

全員「……」

星「起こすか」

百田「そうだな。おいコラ起きろ終一テメェ! 白銀が大変なときに何やってんだ!」ガクガクユサユサ

最原「……ん? あ、れ。百田くん? みんなも……」

最原「……」

最原「……?」キョロキョロ

最原「……」

最原「あっ!」ガビーンッ

百田「あっ、じゃねーよ! 状況を説明しろコラ!」ガクガク

東条「最原くん……まさか、あなたが首謀者だったの?」

最原「ええっ! 何言って……」

最原「……」←自分のタスキを確認した

最原「ああっ!?」ガビーンッ

百田「ああっ、じゃねぇーーーッ!」ガクガク

星「状況の説明を求める。モノクマ、最原両名にだ」

星「黙秘権はない。この閉鎖空間にそんな生易しいものはない」

王馬「確か入間ちゃんが最原ちゃんの研究教室の薬を魔改造して自白剤作ってたよね?」

最原「」

星「正直に答えろ。自白剤は脳への負担が凄まじいからな?」ゴゴゴゴゴ

最原「ち、違うよ! 僕は首謀者じゃなかった! 昨日までは!」

星「ほう。それは興味深い話だな」

星「よし王馬。入間から自白剤を借りてこい」

東条「安心して。致死量に至らないように私が管理するわ」

王馬「すぐに帰ってくるねー」タッ

最原「ええっ!?」ガビーンッ

百田「よせよせ! この期に及んでコイツが嘘吐くわけねーだろ!」

百田「おい終一! さっさと知ってること全部吐け!」

百田「昨日まで首謀者じゃなかったって、どういうことだ?」

最原「え、ええっと……つまり僕は代理でモノクマに首謀者に認定されて……」

キーボ「モノクマに? 本当ですか?」

モノクマ「……うん。はい。ボクが認定しました。資格があったので」ショボーン

獄原「資格?」

東条「それは後にしましょう。代理ということは……」

星「本当の首謀者が、最原の他に存在したってこと、だな?」

最原「!」

星「誰だ?」

最原「言わない」

百田「おい!」

最原「……死んでも言うもんか!」

星「自白剤を投与する準備だ。東条」

東条「了解したわ」

百田「やめろ二人とも! 終一も吐いちまえ! コイツらマジだぞ!」

最原「……」

最原「……言わない……!」

星「そうか。残念だ」

東条「ええ。残念ね」

百田「終一……」

星「まさか白銀が首謀者だったとはな」

最原「え」

東条「最原くんが死んでも庇いたくなるような相手なんて彼女しかいないわよね」

獄原「あ、そっか」

最原「」

百田「……盛大に墓穴掘ったな、終一……」

最原「……」

星「この学園生活は楽しかった。娑婆にも出られたわけだしな」

東条「ええ。そうね。中々得難い体験だったわ」

星&東条「まあだからと言って誘拐していい理由にはならない(けど)(が)」

キーボ「どうします?」

東条「ひとまず拘束ね」

星「後のことは全員で決める」

モノクマ「やめろー! 学園長への暴力は校則違反だぞー!」ジタバタ

星「それ以上動いたら最原を殺す」

最原「」

モノクマ「」

星「代理とは言え、首謀者が死んだらお前も都合が悪いんじゃないか?」ギンッ

最原&モノクマ「」ガタガタ

星「……連行だ」

東条「行くわよ」ズルズル

モノクマ「あー! あー! あー!」

最原「……」

百田「終一……」

獄原「……ねえ。連れていかれちゃったけど、どうしたらいいの?」

獄原「最原くんは、仲間じゃなかったの?」

キーボ「……それは」

百田「仲間に決まってんだろ」

獄原「!」

百田「俺は終一を信じる。絶対にな」

休憩します!

食堂

茶柱「えー。では第一回、最原さんパニッシュメントの時間です」

茶柱「転子ですか? 転子はもちろん最原さんを有罪にしたいです」

茶柱「が、しかし一応民主国家出身の茶柱転子。独断で人を裁くのはよくありません」

茶柱「ので、病欠かつ真の首謀者だった白銀さんを除いた全員で、彼女に秘密裏で行いたいと思います」

茶柱「拘束具の提供は星さんです。ふっ、手錠プレイ大好きなド変態らしい姿ですね、最原さん」

最原「うう……」ガチャガチャ

モノクマ「何故ボクまで。何故ボクまで」ガチャガチャ

茶柱「なお、最原さんが偽証をしたという疑いが出た場合、入間さん提供の自白剤を使う手筈になっております」

茶柱「投与は東条さんが安全に配慮した上で行います」

茶柱「……ただし、この場合の安全とは『必要最低限の安全』です」

茶柱「命以外のすべては保証しませんので悪しからず」

茶柱「さて。何から始めます?」

王馬「拷問だ! 拷問にかけろ!」

百田「王馬の言うことは気にすんな。言ってるだけだ」

赤松「ね、ねえ。ひとまずこの話し合いの是非は置いといてさ」

赤松「心配事が一つあるんだけど」

茶柱「白銀さんの傍に誰もついていないことが心配ですか?」

茶柱「……大丈夫です。この場に最原さんがいる限りは」

赤松「え?」

最原「モノチッチっていう超極小の六体目のモノクマーズがいるんだ」

最原「群生型のモノクマーズ、つまり大量にいて一体ってカウントなんだけど」

最原「何らかの要因で電波障害になってない限り、そいつが学園全体を監視してる」

最原「白銀さんに何かがあったら、首謀者の僕にモノクマが異変を伝えるよ」

東条「何らかの方法で私たちを監視している、とは思っていたけど。まさか目に見えないほど小さなロボットが正体だとは、ね」

百田「どんな技術力してんだ?」

入間「……後で捕まえて確認してみっか。本当にいるんなら多分可能だ」

真宮寺「まず最初。真っ先に確認したいことがあったんだよネ」

真宮寺「……僕たちを誘拐して、一体何が目的だったんだい?」

最原「……えーっと、今回は……モノクマ。一応これも外の世界に見せてるのか?」

モノクマ「一応ね。まあ視聴率は前と比べると下がってるけど」

最原「そうか。わかった。目的は『外の世界』に見せるため。つまり番組っていう表現は誇張でも比喩でもないんだ」

百田「俺たちのことを外の世界が見てたってのか?」

天海「……待ってください。それってどの程度?」

天海「俺たちのことは極小のモノクマーズが監視してたんすよね。つまり……」

茶柱「……あっ! その気になれば転子の着替えシーンとかも撮影し放題ですよね! 誰も気づかないんですから!」

茶柱「ぐあっはーーー! 外の世界に戻りたくないーーー! 恥ずかしい!」

最原「ええっと……モノクマ? どうなの?」

モノクマ「ああ。前回のときと撮影形態は一緒だよ」

最原(やっぱりキーボくんが視聴者代表だったのか)

最原「じゃあ、大丈夫かな。それは安心していいと思う」

茶柱「信用するとでも!?」

春川「やめなよ。そこを突いても仕方ない。ある程度最原の言葉を信用しないと尋問の意味がないでしょ」

赤松「最原くんが首謀者なら……いや、首謀者代理ならさ」

赤松「私たちを今すぐここから出してよ! せめて白銀さんだけでもさ!」

赤松「彼女、このままじゃ死んじゃう……!」

最原「そうしたいのは僕だって同じだけどさ」

モノクマ「無理だよ。ボクたちにその権限はないんだ。十日と決めたら十日経つまで誰も出られない」

赤松「そんな!」

獄原「だから白銀さんも外に出なかったんだね……」

最原「そういうわけじゃないんだけど……」

東条「……もしかして、なのだけど」

東条「彼女のあのウイルスって、誰かに意図的に投与されたもの?」

最原「……凄いね。なんでわかったの?」

東条「あなたが、あのウイルスについてやたら詳しそうだったから。もしかしたらって……」

百田「クソッ! 実際そうだってのかよ……!」

入間「……」

入間「……おい。今、なんつった?」

王馬「入間ちゃん?」

入間「意図的に投与されたウイルスだァ……?」

入間「もう一つ確認してぇ。あのウイルス、もしかして作ったヤツか?」

入間「テメェら番組側が作って地味眼鏡に投与したってことか?」

モノクマ「うん。おおよそその理解で合ってるよ」

入間「……」

入間「じゃあ特効薬ないしワクチンの存在は絶対にあるってことじゃねーか!」ガビーンッ!

入間「ウイルス兵器ってのは、それを使う自分たちが食らって自爆しないようにする防護機能もセットで初めて完成だ!」

入間「ああ、クソッ! 一晩中悩んでた時間を返せ! 俺様の肌年齢が五十億歳ほど縮んだじゃねーかチンカスが!」

王馬「うわぁ! 入間ちゃんがまともなこと言ってる! 今日は空からアメーバでも降ってくるなコレ!」

入間「どういう意味だツルショタ、コラ!」ウガァ!

百田「も、モノクマ! どうなんだ! 入間の言ってることは――」

モノクマ「正しいよ。特効薬はある。しかも、この学園にね」

アンジー「……主は言っていました。待て、しかして希望せよ、と……!」

アンジー「具体的にどこにあるの? アンジーが取ってきてあげるよ」

最原「ん? アンジーさん、何その帽子」

天海「そのことについて語るには時間がかかりすぎるので後にしてほしいっす」

真宮寺「聞くも涙、語るも涙の大冒険があったとだけ言っておくヨ」

最原「?」

モノクマ「……ダメだ。今は誰も特効薬に手を伸ばすことはできない」

モノクマ「白銀さんが『生きる意志』を見せないとダメなんだよね」

アンジー「生きる意志?」

最原「デスロードのこと、かいつまんで話すね」

かくかくしかじかくはははは

百田「デスロードのスイッチを入れるのには白銀が生きる意志を持たないとダメ、か」

赤松「でもスイッチが入るとデスロードの難易度は上昇。致死率も跳ね上がる……」

王馬「ついでに白銀ちゃんがデスロードに参加しないと特効薬のポップはないというオマケ付き」

王馬「……意地が悪いね。まるで彼女を殺しにかかってるみたいだ」

モノクマ「実際そうだからね。いや、そういう建前をしておかないと特効薬を手に入れることができなかったからさ」

モノクマ「ボクの会社はとても趣味が悪いんだ」

星「……なるほどな」

キーボ「後に残った問題は……」

東条「番組側の人間、最原くんと白銀さんをどうするか、ね」

茶柱「……」

茶柱「なんのために白銀さんにウイルスを?」

モノクマ「……それは色々込み合った事情があってね。外の世界の真実に関する情報も語らないといけない」

モノクマ「だからボクは言えないよ。言うんなら最原くんが」

最原「……ええと……」

百田「……」

最原「……ごめん。今は言えない。外に出たら必ず話すよ」

星「そんな都合のいい話が通ると思っているのか? ことここに至って」

最原「……」

星「俺が疑っているのは最悪の可能性だ。すべてがアンタらの自作自演じゃないと何故言える?」

入間「あ? 自作自演だ?」

星「番組の視聴率を上げるためのハプニングの一つなんじゃないか、と言っている」

星「狂ってるがな……」

赤松「……え。ちょっと。それはいくらなんでも!」

百田「ああ! ありえねぇーな! 昨日の朝の終一の慌てようはナマのものだった!」

百田「あれを演技でできるとは思えねぇ!」

星「フン……」

入間「んだそりゃ。おい、コラヤバい原! 俺様を頼って研究教室に来たのも俺様を煽るためだったのか!?」

入間「ふざけんな! ちょっとでも心配した俺様の時間を返しやがれ!」

王馬「入間ちゃんは存在自体が無駄なんだから、ちょっとくらい時間を無駄にしたところで被害は皆無だよね」

入間「ひ、ひぐう! 酷いよお!」

東条「……彼女が死にかけていることだけは間違いなく本当よ」

東条「本当だけど……!」

夢野「……」

夢野「別にどっちでも構わないと思うんじゃが」

春川「え」

夢野「だって、ここに来て楽しかったのは本当じゃしのう」

春川「……」

春川「……そうだね」

獄原「み、みんな! 助けてあげようよ! だって仲間だったじゃない!」

モノクマ(学級裁判なら議論スクラムに持ち込みたいレベルの真っ二つっぷりだなぁ)

モノクマ「……で。どうするの? ボクたちを助けるの? 助けないの?」

最原「せめて手錠は解除してくれるとありがたいなぁ……」

モノクマ「ちなみに言っておくけど、ここで最原くんと白銀さんが死んでも番組は続行だよ」

モノクマ「よくよく考えてみてよ。学園の中に脱出手段がないのなら、他にどこに脱出手段があると思う?」

赤松「え?」

モノクマ「この学園を一つの箱だと考えてみて? その中にいるのはオマエラ」

モノクマ「この箱に鍵がかかってる、ということはわかっている。でも鍵は中にはない」

最原「……鍵は外から掛けられているから、外にいる誰かじゃないと鍵は開けられないって言いたいんだね」

モノクマ「ここで最原くんや白銀さんをどうこうしよう、っていう議論そのものが無駄なんだよ」

モノクマ「中にいる以上、条件はオマエラと一緒なんだからさ」

百田「モノクマの言うことはムカつくが、確かにそうだな……」

春川「特に、今は首謀者だってことが私たちにバレてるわけだから」

春川「最早、立場としてはイーブンとは言い難いよね」

茶柱「……これでは単なる弱いものイジメですね」

最原「今更になっちゃうけどさ、僕は首謀者代理なんだ」

最原「昨日までは『白銀さんが首謀者だということを知っているだけで条件は全部一般生徒同様』だったんだよ」

星「黙っているだけでも加担しているのと同じだと思うがな」

最原「……まったくその通りだ。ごめん」

星「……」

天海「で。結局どうするんすか」

百田「俺は終一を助けてぇ! 白銀もだ! 仲間だっただろうが!」

赤松「うん! 私も同じ気持ちだよ!」

茶柱「……黙ってたことは許せません。でも、転子も……」

夢野「楽しかったことは嘘じゃない。そうじゃろ? 最原」

獄原「助けない理由がないよ!」

真宮寺「ククク」

アンジー「アンジーもなれるかなぁ……神様みたいなファリア神父に」

最原(アンジーさんだけ何かおかしいな)

春川「……保留する。後のことは好きにすれば?」

東条「対症療法は続けさせてもらうけど……」

王馬「……にしし」

天海「保留っす」

入間「……もう何もかもどうでもよくなったぜ」

キーボ「……ボクも保留させていただきます」

星「俺たちは最原、白銀のペアに過干渉はもうしない。好きにしろ」

星「だが……もうまともな助けは期待しないことだ」

最原「うん。わかった」

星「……楽しかったぜ。今まで」

星「もし何も知らないままだったら、俺は……どうしてただろうな……」

星「……考えるだけ無駄か」

最原「……」

最原(僕とモノクマの拘束は解除された。でも……)

百田「……保留組は全員消えちまいやがった」

最原「仕方ないよ。確かに、黙ってた僕たちが悪い……」

最原「いや、みんなを勝手な都合で誘拐した番組が悪いんだ」

モノクマ「今となっては最原くんもその番組側! 完全にね!」

最原「はあ……」

最原(……どうにか『存在自体が全部嘘』っていう真実は隠し通せたな)

最原(いつか、出たら全部話さないといけないけど)

アンジー「じゃあ、早速始めようかー!」

最原「え?」

アンジー「つむぎのこと、全力で励ますんでしょー?」

最原「……!」

百田「俺たちも協力するぜ! 全力でな!」

赤松「うん! こんなところで死ぬなんて絶対にダメだよ!」

最原「みんな……!」

真宮寺「じゃ、始めようか」

夢野「ウチの魔法もフルスロットルじゃぞ」

獄原「ここで仲間を助けないのなら、それは紳士じゃないから!」

茶柱「前に言ったかもしれませんが、ちょっとくらいなら手を貸しますよ」

茶柱「……あなたが悪い人でないことだけは知ってますから」

最原「……うん! ありがとう!」

モノクマ「うぷぷ。希望が見えてきたんじゃないかな?」

最原「そうだね。その通りだ」

最原「……もう、弱音なんか吐けない!」

校舎の外

星「……」

入間「ケッ。ふざけやがって……あーあ、脳細胞を無駄遣いしたぜ」

春川「……」

王馬「意外だな。春川ちゃんは助ける組だと思ってたけど」

春川「ん。別に、そこまでお人よしじゃないから」

春川「……」

キーボ「……」

キーボ「全員、保留するって言っただけで、助けないとは言ってないですよね?」

天海「キーボくん。それみんながあえて言ってなかったことっす」

東条「本当は助けない理由はないのよ」

東条「……助ける理由が一つ消えただけで」

星「……やれやれ」

モノタロウ「あ! キサマラー! 探してたんだよー!」

星「ん?」

モノタロウ「ひとまずこの前の写真の現像が全部終わったから渡しておくね!」

モノタロウ「はい、これ」

東条「……結構な枚数撮ったわね」

モノタロウ「じゃ、オイラはこれで! ばーいくまー!」

ドロン

東条「……みんな笑顔ね」

春川「あ、これ、あの首里城が破壊された直後の……」

天海「ははっ! みんなビックリして酷い表情っすね!」

入間「あの後のキーボの溜まり具合、本当に凄かったぁ……」ハァハァ

王馬「入間ちゃんキモい」

星「……」

王馬「で、どうするの星ちゃん?」

星「ん」

王馬「いつまで自分に嘘吐くの?」

星「……」

星「俺は……」

今日のところはここまで!

食堂

百田「会議を始めんぞ! どうしたら白銀が生きたいと思うか会議だ!」

百田「ひとまず適当にそれっぽいアイデアを出しつくすぞ!」

赤松「プレゼント!」

茶柱「ネオ合気道!」

夢野「魔法じゃ!」

アンジー「ファリア神父!」

獄原「虫さんで和もうよ!」

真宮寺「降霊術」

最原(横取りはしないんだよね!?)ガビーンッ!

百田「で? この中で絶対にノゥなアイデアはどれだ?」

最原「……ごめん。ゴン太くんの虫さんの案は絶対に使えない」

獄原「!?」ガビーンッ!

百田「じゃ、赤松。具体的に何をプレゼントする?」

赤松「今からピアノを猛練習して、白銀さんの目の前で弾いてあげるんだよ!」

百田「ボツだ」

赤松「!?」ガビーンッ!

百田「時間がかかりすぎるだろうが」

赤松「ぴ、ピアノ……!」ガタガタ

百田「しつけぇ」

赤松「」

最原「バッサリ行き過ぎだよ! 確かに無理だけどさ!」

百田「アンジーの案もよくわからんからボツだ!」

アンジー「仕方ないねー」

最原「後に残ったのはネオ合気道、魔法、降霊術……」

百田「夢野の案が一番まともってどういうことだオイ!」ダァンッ!

夢野「ウチが一番まともで何が悪いんじゃ!」ウガァ!

真宮寺「そもそも、今の段階でこの話をしたところで意味はあるのかな?」

真宮寺「僕たちには、この番組の首謀者である最原くんがいるんだヨ?」

真宮寺「首謀者に何ができるのか、のことを話しておいてからでも話は遅くないんじゃないかな?」

百田「おお。そりゃそうだな。使えるリソースの確認は大事だ」

最原「モノクマ。どうなの?」

モノクマ「ええっと……まあ学園の一区画くらいなら改造できたりもすると思うけど」

モノクマ「他にはそうだなぁ。校則を追加したり?」

百田「学園の改造以外に使えそうな能力はねーな」

最原「あ! もう一つあるかも! ちょっと待ってて」ガタッ

夢野「んあ?」

五分後

最原「ただいま」

モノクマ99体「ただいまー」ゾロゾロ

赤松「モノクマを大量に連れ帰って戻ってきたーーーッ!」ガビーンッ!

茶柱「気持ち悪ーーー!」ガタガタ

百田「……なんだこれ」

最原「首謀者はマザーモノクマに『産め』って言うとモノクマを増やせるんだ!」

最原「同時に稼働できるモノクマは百体までらしいけど」

真宮寺「ピクミンか何か?」

夢野「……人手が増えるのは魔法的にもありがたいが、特にだから何ってわけではないの」

モノクマ「失敬な! 一体一体の能力は凄いんだぞ! 特に殺傷能力が!」

夢野「んな能力いらんわいッ!」

モノクマ「……ん?」

最原「どうかした? モノクマ」

モノクマ「ああ、いや。保留組が揃って白銀さんの部屋に……」

モノクマ「……ん。なんだ。外に連れ出そうとしているだけか」

モノクマ「ずっと部屋の中にいても気が滅入るでしょ、ってことらしいね」

百田「まあ確かにそうだしな。放っておいてもいいんじゃねーか?」

最原「うん。東条さんや春川さんがいるのなら滅多なことは起こらないだろうし」

百田「会議を続けるぞ!」

モノクマ「……」

モノクマ「……あっ!」

最原「あ?」

モノクマ「あ、い、いや、ななっなななななんでもない」ガタガタ

最原「そうは見えないけど!?」ガビーンッ!

モノクマ「き、気にしなくていいよ。白銀さんに命の危機が迫ってるってわけじゃないから」

百田「そうか?」

モノクマ「……」

モノクマ「うっそだろ、マジかオマエラ!」ガビーンッ!

最原「ねえ! さっきから何が見えてるの!?」

モノクマ「気にしなくていいって言ってるだろ! しつこいな!」

最原「何その言い草!? 首謀者には素直なんじゃなかったの!?」

モノクマ「遠まわしな言動をする義務が消滅するだけで、ボクの意思が消えたわけじゃない!」ウガァ!

アンジー「仲がいいねー」

真宮寺「……保留組、一体何をしてるんだろうネ」

赤松「一度様子を見に行ってみる?」

モノクマ「……いや、できることならそれはやめてほしい……な……!」ガタガタ

最原「は?」

モノクマ「特に彼女のためにも最原くんだけは絶対に行ってほしくないなぁ!」

最原「何それ!? 余計気になるよ!」

モノクマ「……ひ、酷い! そういう意味じゃない! そういう意味じゃないんだ!」

モノクマ「ああ、やめっ……やめてあげて! 多分それじゃ助かったとしても……ギャー!」

モノクマ「春川さんにも誤爆したーーー!」ガビーンッ

百田「オイ! もう構わねぇ! 様子を見に行こうぜ!」

赤松「うん! 絶対よからぬことが起こってるよ!」

茶柱「……そういえば、保留組には入間さんと王馬さんもいましたね」

茶柱「まともな人とまともじゃない人の振れ幅が滅茶苦茶大きいです」

真宮寺「……」

真宮寺「ククク。察しがついたヨ。何が起こってるのか、ネ」

最原「い、行こう! 早く!」

ちょっと休憩

寄宿舎周辺

最原「モノクマ! 白銀さんは!?」

モノクマ「……絶対に行かない方がいいと思うけどなぁ……」

最原「モノクマッ!」

モノクマ「あと少しで見えてくるよ」

百田「アイツら、一体なにして」


ギュンッ!


百田「やが――」シュンッ

赤松「……ゑ?」

茶柱「あ、あれ? 気のせいですか? 百田さんが消えたように見えましたけど?」ゴシゴシ

真宮寺「……終わったネ、彼」

獄原「一瞬だったけど、春川さんが見えたような?」

白銀「……あ。最原くん!」

最原「白銀さん! よかった! 無事だったんだね!」

白銀「うん! 入間さんがくれたお薬のお陰で、とっても気分がいいんだ!」ニコニコ

赤松「え」

茶柱「え」

夢野「んあ?」

夢野「……入間の……薬……?」

真宮寺「……」←やっぱり、という顔

獄原「……」クンクン

獄原「……最原くん。逃げた方がいいと思う」

最原「え」

獄原「なにか危険な匂いがする。頭がクラっと来るような……!」

真宮寺「それ多分、アレ、だろうね……前にチラッと見た……入間さん特性の……」

白銀「最原くんっ!」ダッ

ギュッ

最原「え。え?」

最原(急に抱き着かれた)

白銀「いきたい……」

最原「!」

白銀「私、死にたくなんかない……! まだ、最原くんとしたいこといっぱいあるの……!」

最原「し、白銀さん……!」

白銀「私……私っ……!」スリスリ

白銀「――最原くんと一緒にいっぱいイキたいのぉ!」

最原「」

赤松「」

茶柱「」

夢野「……」

夢野「こ、これ……アカンヤツじゃ……!」ガタガタ

真宮寺「モノクマ。スイッチは?」

モノクマ「……今の発言で入った。もう行けるよ……」

モノクマ「ち、ちくしょう……こんな、こんな最悪な形で……!」ガタガタ

獄原「よかった……んだよね?」

最原「どこも良くないよッ!?」ガビーンッ!

白銀「最原くんっ!」ガバァッ

最原「うおわあっ!」バタリッ

赤松「きゃー! きゃー! こんなところで! いやー!」

夢野「とか言いながら手で顔を覆うものの、指の隙間からチラチラ見ておるな」

白銀「ふーっ……ふーっ……もう、ダメなの……我慢、できなくて……!」チュッチュッ

最原「首筋にキスしないで! 体を押し付けないで! そんなところに手を伸ばさないで!」ジタバタ

茶柱「ゴン太さん。転子を抑えておいてください」

茶柱「このままだと自分で自分の両目を抉ってしまいそうです」

獄原「わ、わかった! 頑張るよ!」ガシッ

茶柱「転子史上最大級に死にたいです」

真宮寺「……東条さん。いるんでしョ?」

東条「……ええ。いるわ。ここに」

真宮寺「これ、彼女、大丈夫なの? だって一応病人だよネ?」

東条「良いわけがないわ。免疫力が下がってるから、本当ならキスすらアウトよ」

東条「でも総合的に見て生命力が底上げされているから……後での反動は怖いけど……」

入間「ヒャーーッハッハッハ! これが俺様たちの答えだ!」

入間「要は、そこの地味眼鏡が『イキたい』と思えばいいわけだろ? なら媚薬で充分じゃねーか」

入間「テメェらドザコどもはこんな簡単なことにも気づかなかったんだな。脳味噌搭載してんのか?」

最原「ち、違う。そういう意味じゃない! 『いきたい』ってそういう意味じゃないんだよッ!」

最原「ああ、服を脱がせにかからないで……わーーー!」ジタバタ

夢野「お主たち、保留ってさっき言ったばっかりではないか。このツンデレどもめ!」

東条「……元から助けない理由はなかったわ。助ける理由が一つ消えただけで」

入間「だけどよ。ついさっき助ける理由が米一粒分ほどできたんだよ」

入間「……ただの写真なんだけどな」

東条「ええ。でも……それで充分なのよ。だって、私たちは仲間だから」

入間「……ケケ。光栄に思え! ここからは、この超高校級の発明家、入間美兎様が味方だッ!」

茶柱「心強い、ということは言っておきます。素直に」

茶柱「でもそれとこれとは話が別です」

最原「あ、ああ……やめ……ヒッ」

白銀「ふふ。形勢逆転だね。前は私の方が攻められる側だったのにさ」

白銀「もっと色々してあげる。エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

茶柱「殺して……誰か、転子を殺して……」

獄原「茶柱さんの生きる意志が代わりに下がってるよ!?」

入間「別に最後の最後までやってもいいと思うんだが」

東条「ダメよ。流石に彼女の体が持たないわ。これで充分」

入間「おいモザイククマ! そのスイッチって、イキがる意志がなくなったらまた切れるのか?」

モノクマ「生きる意志ね。いや、もう大丈夫。何が起ころうとスイッチは入りっぱなしだよ」

入間「じゃ、中和剤を投与するぜ」

ブスッ

白銀「最原くんっ……最原くんっ……」スリスリ

白銀「最原……くん? あれ……」

白銀「……」

白銀「い、いやあ! 殺して! 今すぐ私を殺してぇ!」カァァ

最原「だ、大丈夫! わかってるから! 全部薬のせいなんでしょ!?」

入間「あ? いやいや何言ってんだオイ。全部なわきゃねーだろ」

入間「元から『エロい原とエロいことしたい』っていう願望がなきゃ媚薬の効果は出ねぇって」

入間「第一、この媚薬の効果は『性欲を二倍にする』とかそんなもんだから、元の性欲が強くない限りこんなことには……」

白銀「いやあああああああ!」

最原「わかった! もういい! 入間さん黙って!」

夢野「でもよかったわい。やり方は極端じゃが、お主ら二人が保留組から寝返ってくれて」

入間「寝返る?」

東条「……いえ。全員が二人を助ける方向に転換したわよ?」

獄原「ええっ! 全員が!?」

アンジー「あれ。じゃあ他のみんなは? どこ?」

入間「この媚薬、ガスタイプなんだけどよ。あのツインテブスに普及したガスマスクだけが穴開いててな?」

入間「誤爆したんだよ。で、気が付いたら消えてた」

入間「今ごろ持て余した性欲をどっかでシコシコ発散してんじゃねーか?」

入間「で、それに気づいた男連中は血相変えてアイツを追ったんだよ。ワケわかんねーだろ?」

獄原「……」

真宮寺「……」

最原「……」

赤松「……もしかして百田くんが消えたのって」

最原「尊い犠牲だった」

赤松「……そうだね」

校舎内

百田「うおおおお! 速ぇー! ハルマキ速ぇー!」

春川「……二人きりになれる場所に移動しよう」

星「待てッ! 春川! 百田ーーー!」




天海「……あの三人についていける気がしないっすね」

王馬「ま、俺たちは俺たちにできることをしようよ。罠とか張っておこう」

キーボ「春川さん、百田クンを担いでいるのに、星クンを振り切るスピード……感嘆するしかないですね」

王馬「あれが愛だよ! キー坊にはわからないだろうけどな!」

キーボ「ボクにだって愛くらい……」

キーボ「……いや、アレが愛ならわからなくていいです」



ギリギリ中和剤の投与は間に合った

休憩です!

食堂

白銀「……」ズーン

百田「さあ。これで……準備はすべて整った!」

アンジー「神様もこんなとき言うはずだよー。"行け! 貴様が希望を掴みとらんと欲するならば!"と」

最原「さっきから気になってたんだけど、アンジーさんの神様の語りが微妙に変化してるような……」

星「どうでもいいだろう。最原。悪いな」

星「……俺たちにもたった一つだけ守りたいものがあったぜ」

王馬「俺は最初から白銀ちゃんを助けたいと思ってたけどね!」

キーボ「全然説得力がありません」

天海「元から保留すると言っただけ。助ける理由が欲しかったんす」

天海「……それが意外に早く見つかった。ただそれだけっすよ」

春川「……」ズーン

百田「ハルマキはどうしたんだ? 筋肉痛か?」

春川「違う」

最原(これ襲われそうになったことに気付いてないな……)

百田「行くぜ! デスロードに!」

アンジー「おー!」




白銀「やめて。そんなことしないで」

百田「……あ?」

最原「……」

百田「おい。そんなこと言ってる場合か? 特効薬がなければお前は」

白銀「死ぬから何!? 私一人のために、誰かの命を危険に晒せないよッ!」

白銀「そういうの……もうイヤだよ……!」

百田「……」

百田「俺はやる。お前がなんと言おうが」

白銀「!」

アンジー「主は言うでしょう。"クハハ! 貴様の悲嘆など知ったことか! オレはオレのやりたいようにやるだけだ!"と」

最原「ねえ。それ本当にアンジーさんの神様?」

天海「色々あったんす」

百田「……終一。俺は事情を知らない。だから白銀にかける言葉はない」

百田「テメェは違うがな」

最原「……」

最原「……うん。任せて」

白銀「最原くん。お願い。みんなを止めて……」

白銀「……もう、ラストなんだよ? 死んじゃったら本当にお終いなんだよ?」

最原「そうだね」

白銀「ごめんなさい。私の罪悪感はもう晴らせなくって良い」

白銀「地獄に堕ちても構わない」

白銀「だから、止めて……みんなを止めてよ……!」

最原「うん。もしもみんなが死ぬのなら、僕は止めなきゃいけないだろうね」

最原「……誰も死なないとしたら?」

白銀「え?」

最原「……やればなんとかなるかもよ?」

白銀「――ッ!」

最原「僕はこれまでのすべてに感謝するよ」

白銀「え?」

最原「始まりはキミの気まぐれだったかもしれないけどさ」

最原「キミに愛を教えることができた過去の自分を誇りに思う」

最原「お陰でさ! キミはもう怪物なんかじゃなくなった!」

最原「愛を知ってる。罪悪感がある。だから僕は……」

最原「キミを許せるんだ。思う存分に」

白銀「……」

最原「僕はキミを許す。死んでいった仲間たちがどう思ってもさ」

最原「……許すよ。命をかけて」

最原「誓うよ。もうキミを置いて、どこにも行ったりしない」

最原「――生きよう。一緒に」

白銀「……うっ……」

白銀「……うっ……うう……」ポロポロ

白銀「あああああああっ……!」ポロポロ




赤松「……事情は確かにわからないけど、あれ実質上プロポーズ?」

茶柱「醜悪ですねぇ」

茶柱「……あ、あれ。なんでしょう。転子の目から汗が止まりません」ポロポロ

夢野「お主、割と涙脆いのう」ポロポロ

入間「テメェもな、電波ロリ」

百田「話はまとまったか!?」

最原「うん! なんとか!」

白銀「……もう、私の身も心も最原くんに預けるよ」

白銀「死ぬときは一緒だからね。今度こそ」

最原「まだ死なないよ」

白銀「そうは思えない。だからさ……そう思わせてくれると嬉しいな」

最原「ということで、百田くん! 完全に準備完了だよ!」

百田「おっしゃあ! じゃあ行くぞ!」

百田「命懸けの行軍になる! 自由参加だ! 来たいヤツだけ来い!」

東条「おやつは三百円まで!」

星「この際言っておくが、バナナもおやつに入るぞ!」

獄原「えっ!」←ポケットにバナナを入れようとしてた

百田「うおおおおおお! 行くぞおおおおおおお!」


ダダダダダッ

ビビーッ

アナウンス『白銀つむぎを含む複数の参加者を確認しました』

アナウンス『デスロードナイトメアを開始いたします』

アナウンス『なお、特効薬を手に入れた時点で、デスロードの全機能はストップします』

アナウンス『みなさん、頑張って挑戦しましょう』



天海「……」

王馬「……」

キーボ「……」

獄原「……」

最原「……」

真宮寺「……」

星「……」

百田「……」

赤松「……」

入間「……」

白銀「……」

茶柱「……」

東条「……」

春川「……」

夢野「……」

アンジー「……」




百田「なんで全員来てんだよッ!?」ガビーンッ!

赤松「ええっ!? 全員来る流れじゃないの!?」ガビーンッ!

夢野「ノリで来てしまったわい」ガクガクガク

百田「まあいい! ひとまず終一は背負ってる白銀に集中してろ!」

百田「腕力、体力に自信があるヤツは、ないヤツを守ってやれ!」

百田「頭脳系のトラップもあるかもしれねぇ! そのときは思いっきり得意なヤツに頼るぜ!」

真宮寺「ククク。こうなったらヤケクソだよネ!」

最原「駆け抜けよう! 最後まで! 一気に!」

モノクマ「あ。ストップ、最原くん。最後に一つ言うことがあった」

最原「あ。モノクマ……」

モノクマ100体「やっほー」

最原「が、いっぱいいるーーーッ!」ガビーンッ!

モノクマ「首謀者であるキミには、ボクが味方についている」

モノクマ「思う存分使ってよ! キミとの悪だくみも楽しそうだ!」

最原「……」

最原「足は引っ張るなよ」

モノクマ「辛辣ゥ」

最原「よし! じゃ、行こう!」

火炎放射「」ボォォ

赤松「モノクマガード!」

モノクマ「ぎゃー!」

機関銃「」パラララッ

アンジー「モノクマガード!」

モノクマ「ぎゃー!」

丸のこ「」ギュィィィンッ

東条「モノクマガード!」

モノクマ「ぎゃー!」



モノクマ「いや確かに使えとは言ったけど想定と違う!」ガビーンッ!

最原「クッ! もうモノクマの数が五十体を切った!」

最原「まだ先は長そうなのに!」

モノクマ「酷くね!?」

百田「もっとスピードを出して駆け抜けろーーーッ! モノクマが尽きる前に!」

モノクマ「……そろそろ折り返し地点。つまり半分だよ!」

最原「モノクマの数が持つかどうかだけが心配だな……!」

百田「ああ。致死性トラップっつっても、モノクマが庇ってくれりゃ問題はねぇ」

王馬「最悪、モノクマが尽きた場合はキー坊を代用にすればいいよ!」

キーボ「冗談じゃないッ!」

モノクマ「……」

モノクマ「いや、ダメだよ。折り返し地点にあるトラップは、ボクじゃ庇えない」

最原「……え?」

モノクマ「ほら。見えてきた」

帽子モノクマ「やっほー! ウェルカムトゥようこそモノクマパーク!」

百田「あ?」

赤松「最原くんが初日に被ってた帽子をつけた……モノクマ?」

最原「あれって……」

モノクマ「首謀者の味方ではない、別系統で稼働するモノクマだよ」

百田「ケッ! だから何だ! こっちにはモノクマがあと四十体近くいるんだぜ!」

百田「たかが一体なんだってんだ!」

モノクマ「違う。ヤツは物理攻撃はしない」

帽子モノクマ「うぷぷ。オマエラに、教えてやるよ」

帽子モノクマ「外の世界に希望なんてないってことをね!」ギンッ

最原「……」

白銀「……」

最原「まさか、コイツ……!」

百田「どうだっていい! んなこたあ!」

百田「それより、このデスロードにいるモノクマなら、特効薬の位置を知ってるんじゃねぇか?」

百田「締めあげて吐かせれば話が早くなるぜ!」

帽子モノクマ「まあまあ。まずはボクの話を聞いてよ百田くん」

帽子モノクマ「……ねえ。どうして外の世界から助けが来ないんだと思う?」

入間「あ? そりゃお前らが根回しして……」

帽子モノクマ「そんなことをする必要はないんだ」

帽子モノクマ「だって、この世界は元から全部フィクションなんだからさぁ!」

最原「――ッ!」

百田「……」

帽子モノクマ「じゃ、これ見ればわかりやすくなるかな?」

帽子モノクマ「オマエラ一人ひとりのオーディション映像をプレイバーーーック!」

最原?『僕は、ダンガンロンパが大好きで――』

最原「……!」

赤松?『私ってコロシアイに向いている性格だと思います。基本的に人を信用してないので』

赤松「……えっ」

百田?『賞金がありゃあ、不可能なんてなくなるぜ!』

百田「……」

最原(……目の前のモノクマは全部バラしはじめた)

最原(この学園にあるものは、僕たちを含めて全部フィクションであること)

最原(……外の世界に僕たちの居場所はないことを)

夢野「な、なんじゃと……!? こ、こんなの……そんなの嘘に決まって……」ガタガタ

帽子モノクマ「嘘はオマエラの方なんだよ。だから助けが来ないんだ」

百田「なんてこった。そうだったのかよ……」

百田「で?」

帽子モノクマ「え?」

百田「それと特効薬の位置に何か関係があんのか?」

帽子モノクマ「いや特にないけど」




百田「ふざけんじゃねえーーーッ!」バッキィィィィ!

帽子モノクマ「ぎゃあっはああああああ!?」

最原「百田くんの見事なサブマリンアッパーが決まったーーーッ!?」ガビーンッ!

百田「あー! クソ! 時間を無駄にした! くだらねーことで引き留めてんじゃねぇ!」

百田「かーっ、ぺっぺっ!」

帽子モノクマ「」

最原「ええーっ!?」ガーンッ!

真宮寺「……キミ本当凄いネ。僕ですらショックだったのに」

百田「ああ? くだらなさの極みだろうが、こんな与太」

百田「自分自身と、他人。どっちを信用するかなんて考えるまでもねーだろ!」

百田「第一、今この状況となんも関係ねぇじゃねーか!」

赤松「……」

アンジー「確かにそうだねー。アンジーたちはつむぎを助けにきただけだし」

東条「……先に進みましょう! 私たちの足で!」

獄原「ええっと、ゴン太たちのどこら辺が嘘だって話だったの?」

王馬「あ、別にいいよ。こんな話理解しなくっても。本当に」

最原「……ははっ……」

最原(最後の学級裁判で、キミが生きていれば……そう思っちゃったよ)

最原(百田くんには敵いそうにないなぁ)

百田「ちっ。特効薬の位置やトラップの配置について締め上げたかったのに完全に伸びちまいやがった」

百田「さっさと行くぞ!」

獄原「うん!」

最原「もうちょっとだよ。白銀さん!」

白銀「……」

白銀「……なんかさ」

最原「うん?」

白銀「……もう、救われた気分なんだけど。私」

白銀「ふざけんな、の一言でふっ飛ばされちゃうんだね。アレ」

最原「……百田くんだからだよ」

白銀「……ああ、でもさ。最後の学級裁判で必死に現実をふっ飛ばした最原くんの方が格好良かったかな」

最原「えっ」

白銀「……ふふ」

白銀(……)

白銀「大好き。最原くん」

最原「……うん! 僕もだ!」

白銀(……)

白銀(……体の感覚がなくなってきた)

白銀(でも心が軽くて、温かい)

白銀(……ありがと。みんな)

白銀(……どうか誰も死なないで)

休憩します

ミスった

五分後

最原「……モノクマ! 残機は!?」

モノクマ「ボクを含めて二十五体! かなりやばいよ、このペースは!」

百田「……そうか」

春川「百田?」

カチッ

百田「ッ! 仕込み銃か!?」

モノクマ「はいはい、またボクの出番――」

百田「来なくていい!」

モノクマ「は?」

バァンッ!

百田「がっ……!?」

春川「百田ッ!?」

百田「もう俺はモノクマガードを、使わねぇ!」

百田「……平気だ! 肩を貫通しただけだからな!」

春川「バカッ! どこも平気なんかじゃないよ!」

最原(まずい。ここに来て初めて負傷者が……!)

百田「弱気になんな!」

最原「え」

百田「……全員で生きて出るんだよ、ここを!」

百田「俺だって死ぬ気はさらさらねぇ!」

最原「……うん!」

茶柱「特効薬をゲットさえすれば全部終了です! 早く!」

天海「この程度の修羅場、いくらでも潜り抜けてきたっす!」

東条「諦める理由は微塵もないわ!」

最原「……そうだ。その通りだよ!」

モノクマ「……そろそろ来るよ。最後の難関が!」

モノケモノ「……」フシュー

最原「……」

全員「……」

最原「スーパーダンガンロンパ2に出てきた、モノケモノ、だっけ?」

モノクマ「うん。これが最後の難関。合計五体いるよ」

全員「……」

百田「無理じゃね?」

最原「流石に百田くんでもそう思うよね!?」ガビーンッ!

アンジー「……終一。モノクマ、二十四体ここに置いて行って」

最原「え?」

アンジー「これが最後の難関なら、後は終一とつむぎが先に行けばいいよー」

アンジー「後のことはアンジーたちが食い止めるからさー!」

百田「……そうだな。それがいいかも、な」

東条「それが結果的に全員の生存率を上げる最善の策……」

赤松「特効薬が手に入れば全部終わりだもんね」

最原「そんな……!」

キーボ「行ってください! 全員で生き残るために!」

最原「……モノクマ」

モノクマ「わかってる! ボク以外のモノクマは生徒のガード!」

モノクマ24体「おー!」

最原「先に行く……みんな! どうか無事で!」

星「ああ。お前さんもな」

星「……さあ。ショータイムだ!」

アンジー「……主は言いました」

入間「あ?」

アンジー「"慈悲などいらぬ!"」

ボォッ!

なんか復讐しそうな人「"我が往くは恩讐の彼方!"」

入間「ぴえっ!?」ガビーンッ!

赤松「あ、あれ!? なんかアンジーさんの隣に知らないフランス人がいるような……!?」ゴシゴシ

アンジー&なんか復讐しそうな人「クハハハハハハハ!」


ドガガガガッ!


モノケモノ「!?」

王馬「なんかよくわからないけどモノケモノが一体壊れたーーーッ!?」ガビーンッ!

天海「この調子で行くっすよ!」

真宮寺「本当彼女の召喚術は無茶苦茶だネ」

春川「百田。これ以上無茶したら私が殺すから」

百田「ああ。悪ィなハルマキ」

百田「……頑張れよ、終一」

最原「……」

モノクマ「……ねえ」

モノクマ「もう気付いてるんでしょ。白銀さん、さっきから一言も……」

最原「……死んでない。まだ」

モノクマ「……特効薬を投与したところでさ。今までボロボロになった体が急激に癒えるわけじゃない」

モノクマ「助かるかどうかは、五分五分。いや……もっと低いかもね。確率」

最原「うん」

モノクマ「……最原くんは頑張ったよ」

モノクマ「白銀さんをちゃんと救った」

最原「うん」

モノクマ「……それでも走る?」

最原「やめるわけにもいかないでしょ」

モノクマ「……」

モノクマ「悪役としては落第点だったけど、首謀者としては最高だったよ。キミは」

最原「白銀さんだけを庇って。僕のことはどうでもいいから」

モノクマ「うん」

最原「……ところでさ。なんで白銀さんを助けようとしたの? モノクマ」

モノクマ「今回はコロシアイじゃないから」

最原「それだけ?」

モノクマ「……彼女が本気でダンガンロンパを愛してたから。ボクも含めてね」

モノクマ「ま、オマエに取られちゃったけど」

最原「え。まさかの恋敵?」

モノクマ「違う違う! ボクはもうちょい親とか先生的なポジなの!」

モノクマ「……ま。オマエに嫉妬はしてるけどね」

最原「……ごめん」

モノクマ「いいの。フィクションのキャラとしてさ。愛されることは至上の喜びだから」

モノクマ「……仮に飽きられても、愛されたっていう真実は変わらない」

最原「……」

モノクマ「湿っぽいの終了! 行くよ! 頑張って!」

最原「うん!」

ズドンッ!

最原「ぐっ……!?」

モノクマ「大丈夫! 腕のお肉がちょっと抉れただけ!」

最原「そう!」


ブシュウウウウ!


最原「げほっ……!?」

モノクマ「あ、毒ガス! これはやばい! 白銀さんのためにもさっさと駆け抜けて!」

最原「うん!」


ザクッ!


最原「がっ……!?」

モノクマ「足首がちょっと切られただけ! 半分以上残ってるよ!」

最原「それはよかった!」




モノクマ「あと少し……ほんの少しだよ!」

最原「わかってる!」


ヒュンッ ブスッ


最原「……ところで僕の胸に刺さってる、この吹き矢っぽいの、何?」

モノクマ「……毒矢だね。まあ致死量だけど、気合で耐えれば問題ないよ」

最原「へえ」

ズルリ……ズルリ……

最原「はあ……はあ……」

モノクマ「あとちょっと! ほんのちょっと……」

モノクマ「あれ」

最原「どうした、の……?」

最原「……行き止まりじゃないか」

モノクマ「……コンクリートの壁で塞がれてるだけだ。向こうにちゃんと特効薬はあるはずだよ」

最原「……ゴン太くんがいれば壊せたのになぁ……」フラッ

最原「……モノクマ。そろそろ、限界が近い……目が、霞んで……!」

モノクマ「しっかりしてよ。もう障害はこれしかないんだからさ」

最原「でも、僕には壊せないよ」

モノクマ「ボクが自爆する」

最原「え」

モノクマ「……ちょっと離れてて」

最原「……うん」

モノクマ「最原くん。最後に一つ言っておくよ」

最原「……なに?」

モノクマ「よくできました」ニヤァ

最原「!」



ドカァァァァン!

最原「……あった。特効薬」

最原「グッ!」フラッ

最原(……一瞬意識が飛びそうに……)

最原「バカか僕は。こんなところで……!」ガクリ

最原「あれ。膝、ついて……あれ……」

最原「……」

最原(……ここで、終わり、なのか……?)

最原(……僕は、まだ何も……!)

グイッ

最原「ん?」

最原(誰かに腕を引かれて無理やり立ち上がらされた)

百田「……」ニヤリ

最原「あ、あれ。百田くん。どうしてここに?」

百田「……」バンッ

最原「あ痛っ! 肩パンしないでよ……わかってる。あと少しなんでしょ」

最原「……うん。わかってる。ちゃんとやるから」ズルリズルリ

百田「……」




百田「流石は俺の助手だ。俺が死んだ後もキチンとやれてるじゃねーか」

最原(……ここまで本当に遠かった)

最原(物理的な距離だけの話じゃない。みんなに背中を押されて……到達できた場所だった)

最原(……そうだ。銃弾が何だ。毒ガスがなんだ。足首が半分近く切れたから何だ。致死量の毒矢が何だ)

最原(そんなの、今更どうってことない!)

最原「……僕はみんなの意思を背負ってここにいる」

最原「行けない場所なんてないんだ」

最原「どんな不可能も、やりとげちまえば可能に変わる!」


ガシッ


最原「……ほら。届いた!」


ビビーッ

アナウンス『特効薬が入手されました。デスロードナイトメアを終了します』

アナウンス『現在の生存者、十六名。全員生還です。お疲れさまでした』

最原「……よかった。全員、生きてる!」

最原「僕は、やりとげ……」フラッ

最原「……」ガクリ

最原「……いや、やっぱり致死量の毒矢食らったら死ぬよね。普通。はは」

最原「……置いてかない、はずだったんだけど……!」

最原「……」

最原(最後の気力を振り絞って、背負っていた白銀さんを床に降ろす)

最原(……死にかけているけど、生きていることを確認できただけでも、充分安心できた)

最原「……後のことはみんなに頼むよ」

最原「ご、め……」


バタリッ

休憩しますん

謎の花畑

最原「……」

最原「死んだら花畑とか露骨すぎない?」

最原「……はあ。今度こそ死んじゃったのか……」

最原「……白銀さんに申し訳ないな」

最原「……」

赤松「最原くん」

最原「ん」

赤松「……お疲れ様。頑張ってたね」

最原「……赤松さん」

赤松「ていうか頑張り過ぎだよ。致死量の毒矢を気合で耐えるとかさ。普通耐えられないから!」

最原「あ、うん。そうだね。よく考えたらモノクマ凄い無茶言ってたな」

赤松「その無茶を実行するキミが一番凄いけどね……」

赤松「……一緒に来る? もういいと思うけど」

最原「……」

最原「その言い方だと、元の場所に戻れるって聞こえるよ」

赤松「うん」

最原「なら戻る」

赤松「そっか」

最原「……」

最原「ありがとう、赤松さん。キミのこと、ずっと忘れたことはなかったよ」

赤松「白銀さんが聞いたら怒るんじゃない?」

最原「……うん。だから一度しか言わない」

赤松「……あっちの私と仲良くね。そしたら私も嬉しいから」

最原「うん!」

赤松「……行っちゃった。ねえ。最原くんに言いたいことあったんじゃないの?」

百田「いい。アイツはもう大丈夫だ」

百田「キチンと確認した」

赤松「そっか」

赤松「……ふふ。本当、成長したね最原くん。もう一人で立てるんだ」

百田「ああ。そいで、誰か別のヤツを支えてやれる」

百田「……そうやってよ、俺がやったことをアイツが誰かにやるんならよ」

百田「俺はきっとまだ死んでないって言えるんじゃねーか」

赤松「かもね」

赤松「……今度こそみんなで友達に……」

赤松「……ふふ。いや、もう友達、かな」

八日目

最原「……ん……?」

夢野「んあっ! さ、最原! 最原が……」

最原「……あれ。夢野、さん?」

夢野「うおーーー! 最原! 最原が生き返ったんじゃー! ヤッホーイ!」

夢野「東条コール! 東条コール!」カチカチ

最原「……生きてる」

夢野「マジで危ないところだったんじゃぞ! 毒矢がぶっすり刺さっておったんじゃからの!」

夢野「でもなんとかなったんじゃ! 後で入間に感謝するんじゃぞ! 癪じゃろうが!」

最原「え。入間さん?」

夢野「テンパッた入間がテンパッて適当に調合した薬が奇跡的にお主の毒を治癒したんじゃ!」

最原「面白ミラクルすぎない!?」ガビーンッ!

最原「でもそうか。ギリギリのところで僕は生きて……」

最原「……白銀さんは?」

夢野「んあっ……」

最原「……白銀、さんは……」

夢野「……特効薬でウイルスはなんとかなったはずじゃ」

夢野「でもな。でもな。まだ白銀は、目覚めなくての……!」

夢野「今は眠っておる。死んではおらん」

最原「……見舞いに行くよ」

夢野「やめい! お主もボロボロじゃぞ!」

最原「……お願い。夢野さん。見逃してくれないかな」

夢野「……」

夢野「東条への言い訳はお主がするんじゃぞ」

最原「うん。わかった」

最原「……あれ。まだ痛むけど、もう治りかけてる。銃弾の傷とか、足首の怪我とか」

夢野「ふぃぶりん? とかいう、生体用の糊らしいぞ? 入間が用意したんじゃ」

夢野「というかアイツが自分用に用意してたものをウチらがぶんどったんじゃ」

最原「はは……余裕さえあれば、ただのバカな言動を繰り返す天才だなぁ」

夢野「……そろそろ東条が来る。さっさと行けい」

最原「うん」

夢野「……」

夢野「白銀よ。最原は起きたぞ。だからお主もキチンと起きるんじゃ」

夢野「全員でここを出るんじゃぞ……!」

寄宿舎ホール

最原「ええと……さっき僕が出てきたのは、僕自身の自室か。じゃあ白銀さんは……」

百田「ああっ! 終一! 終一じゃねーか!」

最原「あ! 百田くん!」

百田「うおおおおお! この野郎、キッチリやれたじゃねーか! オイ!」バシンッ!

最原「いった! 背中を叩かないでよ!」

最原「……ねえ。百田くん。特効薬を手に入れる直前でさ……」

百田「ん?」

最原「……いや、なんでもない」

百田「そうか? あ、ところでテメェ、こんなところで何を……」

最原「白銀さんの見舞いに行こうかなって」

百田「……」

百田「歩くの手伝うぜ」

最原「ありがとう」

簡易医務室

最原「……やあ。白銀さん」

最原(声をかけても返事はない。相変わらず顔色の悪い白銀さんが、ベッドで寝息を立てていた)

最原(……やれることはやった。手遅れになっていないかだけが心配だ)

百田「終一。テメェはよくやった。後は絶対に大丈夫だ」

百田「……大丈夫に決まってんだろ」

最原「うん。ありがとう百田くん」

百田「……どんな夢見てんだろうな」

最原「……」

百田「後のことは俺たちに任せておけ。もういいだろ?」

最原「え」

百田「え、じゃねーよ。テメェだって死にかけてたんだからな?」

最原「え、ちょ」


シュンッ


東条「最原くん。連行するわ」

最原「あ」

東条「病室に戻ったら傷に障らない程度にお説教よ」

最原「」

最原の自室

最原「戻って来ちゃったよ!」

夢野「それでいいんじゃ! それで!」

最原「……はあ。仕方ないな。後のことはモノクマに頼もう」

夢野「んあ……」

最原「モノクマ。出てきて」

最原「……」

最原「モノクマ?」

夢野「全滅した」

最原「え」

夢野「モノクマは、全滅したんじゃ」

最原「そっか。じゃあ新しくマザーモノクマに産ませないと……」

夢野「あの壊れた図書室の向こうにある丸っこいヤツじゃろ?」

最原「うん」

夢野「後でいいのではないか?」

最原「いや、いれば結構便利だしさ」

夢野「……後でいいじゃろ」

最原「……」

最原「マザーモノクマに何かあった?」

夢野「ッ!」

夢野「……ちょっとしたオーバーヒートじゃ。心配はない」

夢野「百体ものモノクマを酷使したことがちょっと響いたらしいの」

夢野「入間の話じゃ、直せることには直せるらしいぞ?」

夢野「……一週間くらいで」

最原「時間が足りない」

夢野「……そう、じゃの。少なくとも、もうウチらはモノクマに会えん、ということじゃ」

最原「……」

最原「最後に一回くらいは礼を言いたかったな」

夢野「そうじゃの。あんなヤツでも、最後には助けてくれたんじゃしの」

首謀者ルーム

入間「だー! くっそ! なんで俺様がこんなことをしなきゃなんねーんだよ!」

モノタロウ「お願いだよ! お父ちゃんを助けてー!」

入間「だぁーってろ赤チン! 平気だ。直せない故障じゃねぇ!」

入間「……時間が足りないだけでな。多分、俺様たちが外に出た後で誰かが直すだろ」

モノタロウ「ぐすん」

入間「それまでは適当に応急処置くらいしてやらァ!」

入間「ま、無理したりしなけりゃ記憶もそのまま。綺麗さっぱり前と同じになるだろうよ」

モノダム「……」

モノファニー「……ダンガンロンパは終わりよ」

入間「あ?」

モノファニー「……お父ちゃんはもう用済み。わざわざ誰かが直したりなんか……」

入間「……ケッ。俺様がそんなこと知るかよ」

入間「祈っとけ。誰か酔狂なヤツが直してくれるってよ」

マザーモノクマ「……」

マザーモノクマ(……いや。ダンガンロンパはこれで終了)

マザーモノクマ(モノファニーの言う通り。ボクも完全に用済み、だよね)

マザーモノクマ(……さて。どうしたものかな)

マザーモノクマ(このままプカプカ浮かんでるだけ、ってのもつまらないよねぇ)

マザーモノクマ(……才囚学園の生徒たちの物語はこれからも続いていく)

マザーモノクマ(ボクだけは外に出られないけどね)

マザーモノクマ(ハァ……最後に何か一つくらいイタズラしたいなぁ)

最原(八日目は昨日とは打って変わって、特に何も起こらなかった)

最原(僕の病室に、入れ替わり立ち替わり、見舞いに人が来るくらいで)

最原(……白銀さんも、いい五分の方に傾いてくれたらしく、モノクマが心配していたようなことにはなってない)

最原(段々と回復に向かっているらしい)

最原(……)

最原(そういえば、好感度が一定以上になっていない人は学園からの脱出は不可、という話だったな)

最原(この分なら多分全員大丈夫だろうけど……)

最原(ラブラブ度の管理をしていたモノクマはあの有様だしなぁ……確認ができない)

最原(……そうやって悶々としている内に、夜になり、僕は眠りについた)

最原(本当に、久しぶりに平和な日だった)

八日目の二十四時 九日目の零時

白銀「ん……?」

白銀「……あ、あれ。医務室?」

白銀「……生きてる。私、生きてる……?」

白銀「……みんなは……?」キョロキョロ


ビヨヨーンッ!


モノクマ「やあやあ白銀さん! 起きた?」

白銀「あ、モノクマ!」

白銀「……」

白銀「なんか顔に十円ハゲができてない?」

モノクマ「いや、自己情報を無理やり書き換えて自力で出てきたから、ちょっと不具合が出ちゃって」

モノクマ「そこの黒マジックでハゲた部分を塗ってくれると嬉しいんだけど」

白銀「はいはい」

モノクマ「全員無事だよ。最原くんも死にかけたけど、今は問題ない」

白銀「……そっか」

白銀「最原くん、今回は本当に最初から最後まで私に勝ちっぱなしだったなぁ」

白銀「結局、強くてニューゲームな物語のテンプレートそのものだったよね」

白銀「凄いや。全部手に入れるなんてさ」

モノクマ「うん。そうだね」

モノクマ「じゃ、そろそろ行こうか!」

白銀「え。どこに?」

モノクマ「最原くんの部屋!」

白銀「え」

モノクマ「寝起きドッキリとかしたくない?」

白銀「……」

白銀「超したい」ニヤァ

モノクマ「前の学園生活でやらなかっただけで、ボクならどこの鍵でも開けられるんだよ」ガチャリ

モノクマ「おーじゃまっしまーっす……」

白銀「ふふふ。最原くん、驚くだろうなぁ。さっきまで寝ていた私が急に起きて、しかも部屋にいるんだもん」

モノクマ「うぷぷ。ワクワクのドッキドキだよね。ザザッ」

白銀「ん? 今音声にノイズがかからなかった?」

モノクマ「あ、ごめん。やっぱり無理に出たのが祟ったんだね」

白銀「もう。後で入間さんに診てもらわないと……」

モノクマ「うぷぷ」

白銀「ええっと……どうしよっかな。入ったのはいいけど」

モノクマ「添い寝するなり馬乗りになるなり、お好きにどうぞ」

白銀「……地味に恥ずかしいけど、まあ寝ているし……」

白銀「お邪魔しまーっす」ゴソゴソ

白銀「ふふ。やっぱり最原くんの体温、大好き。まあすぐに出るんだけど……」

最原「……ええっと……」パチクリ

白銀「……」

白銀「起きてるじゃんッ!?」ガビーンッ!

白銀「も、モノクマ!? これ一体どういう……いない! 逃げた!」

白銀「は、ハメられた! 寝ていると思ってたから来たのに!」

最原「悪質だな! いや、モノクマもそうだけどキミも!」

白銀「あ、い、いや……」

白銀「俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」ルゥゥゥク

最原「安易なオタク的パフォーマンスに逃げないでよ!」

最原「……あ、でも……えーっと……嬉しいよ」

最原「起きたんだ」

白銀「……うん」

最原「よかった。ずっと心配でさ……」

白銀「私も」

最原「……よかった……本当に……ッ!」

白銀「うん……うん……!」

モノクマ「……」ガガッ

モノクマ「悪ふざけで人を殺してきたマスコットが、悪ふざけで完全に壊れる、か」

モノクマ「うん。悪くない。悪くない結末じゃないかな」

モノクマ「……ダンガンロンパはもういらない」

モノクマ「ボクの役目は終了、かな」

モノクマ「……うぷぷ。皮肉だね。誰よりも役目に殉じたいと願っていた白銀さんじゃなくって」

モノクマ「その隣にいたボクが役目に殉じるんだからさ」

モノクマ「……うぷ。うぷぷぷぷ」

モノクマ「アーッハッハッハ!」

なんか復讐しそうな人「クハハハハハハハハ!」

モノクマ「アーッハッハッハッハッハ……誰オマエ!?」ガビーンッ!

休憩!
多分後はエピローグだけじゃないかなぁ……

このSSの裏タイトルは

アンジー「神様呼ぼうと思ったら変なの出た」 ???「オレを! 呼んだな!」

です。嘘です

時間が時間なので今日はもう寝る! 続きは明日の朝!
もう明日で終わらせる!

モノクマ「……まあいいか。この際」

モノクマ「最期くらい大笑いしていたいしね」

モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!」ザザッ

モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!」ガリガリッ

モノクマ「アーッハッハッハ……」

モノクマ「ハ……」

ブツンッ

バタリッ

モノクマ「……」

モノクマ(卒業、おめでとうの一言くらいは言いたかったけどね)

モノクマ(……)

最原の自室

白銀「……えーっと、それじゃあお互いに無事を確認できたし、私はそろそろ部屋に……」

最原「戻っちゃうの?」

白銀「……まだいようかな」

最原「よかった」

白銀「……もう。甘えん坊だなぁ。病み上がりなのに」

最原「ボロボロなのはもうお互い様だよ」

白銀「……とても頑張ったよね。最原くん」

白銀「みんなと仲良くなって……私を救って……」

最原「僕一人じゃ無理だったよ。いろんな人の協力あってこそ、だった」

白銀「そっか」

白銀「……全部嘘でもさ。こんなに強くなれるんだもん」

白銀「嘘で世界を変えたキミが、今更女の子一人程度、守れないはずがない、か」

最原「……」

最原「一番最初に嘘で変わったのは僕だった」

白銀「ん?」

最原「キミの嘘で、僕はキミのことを好きになった」

最原「でさ。それでキミが影響された」

最原「……結局さ。キミも自分自身の嘘で変わっちゃってるんだよ」

最原「嘘は無力なんかじゃないって自分で証明してたんだ」

白銀「……そうだね。そういえば、そうだ」

白銀「バカだな、私。最後の学級裁判になる前に知ってたんだね」

白銀「外の世界が用意したフィクションの希望に、今更最原くんが縋るわけないって」

白銀「真実を自前で掴めるんだからさ。そんなもの元からいらないよね」

最原「うん。あれはないよ。白銀さんを殺すわけにはいかない」

白銀「……」

白銀「ダメだ。幸せすぎる」

白銀「やっぱりさ。悪いって思うよ。みんなを殺した私が、こんな……」

最原「うん。それでいいと思う。多分、白銀さんは永遠に救えない」

最原「でも僕は許すよ。一生をかけて、唯一生き残った僕が白銀さんを許す」

最原「……死んだ後に地獄に堕ちるんだとしても、生きている間くらいは絶対に」

白銀「……最原くん」




白銀「キスしていい?」

最原「え。ダメだよ。病み上がりだし……」

白銀「……ダメ?」

最原「……」

最原「ここから出れたら、その、たくさんするから……今は、やめよう? ね?」アタフタ

白銀(可愛いなぁ)クス

白銀「私を引き留めて置いて、今更何を……って感じだけど」

白銀「……救えない、か。本当にそうかな」

最原「え?」

白銀「このままここで寝てさ。明日の朝に、何かの間違いで私が死んじゃってて、二度と目覚めないとしてもさ」

白銀「私、悔いはないよ」

最原「……」

白銀「もう充分。キミは救っちゃいけない人間まで救っちゃった」

白銀「ありがとう。大好き、最原くん」

最原「……明日はお互い治療に専念しない?」

白銀「え」

最原「それでも十日目が残ってるからさ」

最原「そのときに思い切り遊ぼうよ」

白銀「……デートの約束?」

最原「うん」

白銀「……あ、あれ。なんだろう。顔が熱くなってきた」

白銀「今更なのに」

最原「……これが引き延ばし。明日死んでも悔いがないとか、言わせないよ」

白銀「なんかズルいなぁ!」

最原「……今日はこのまま寝たい気分だ……」

白銀「あ、うん。そうだね。明日の朝に東条さんが見回りに来る前に起きて戻れば大丈夫かな……」

最原「バレたらお終いだね」

白銀「……地味に恐ろしいよね」

白銀「先に起きたら私を起こしてね。医務室に戻るから」

最原「うん」

白銀「……おやすみ、最原くん」

白銀「……」スヤァ

最原「……よし。白銀さんは寝た、な……」

最原「……探しに行かないと」



屋外 寄宿舎出入り口周辺


最原「……モノクマ……」

モノクマ「……」

最原「入間さんから聞いたよ。無理したら壊れるって状態だったらしいじゃないか」

最原「バカだな。何もこんなことのために無理しなくってもさ」

最原「……」

最原「白銀さんに僕を会わせたかったの?」

最原「……」

最原「ここから出たらさ。チームダンガンロンパに入るのも悪くはないかも」

最原「それで、今度は人が死なないコンテンツを作ってさ……そのときはお前がマスコット」

最原「礼としてはここら辺が妥当かな」

最原「……白銀さんが悲しむよ。だから、僕はお前のことも助ける」

最原「待ってて」

最原「……ところでお前、なんかコーヒー臭いんだけど」

最原「何があったんだ?」

モノクマ(あのフランス野郎絶対殺す。弔いだとか言ってコーヒーぶっかけやがって……)ビキビキ


一応善意だった

休憩します!

九日目 最原の自室(現最原の病室)


東条「……」

白銀「……んん」スヤァ

最原「……むにゃ」スヤァ

東条「……ハリセン用意」スチャッ

東条「ファイア!」スパパーンッ!

最原&白銀「痛たーーーッ!?」

東条「何をしているの?」ゴゴゴゴゴ

白銀「……あ。いけない。寝過ごしちゃった」

最原「最悪の展開だ!」ガビーンッ!

東条「……ふふ。まあいいわ。説教はなしにしてあげる」

東条「おかえりなさい、白銀さん。これで全員揃ったわね」ニコリ

白銀「……」

白銀「うん。ただいま、東条さん!」

東条「じゃあ全員叩き起こして来るわね」

白銀「え」

東条「この喜びを全員で分かち合わないと損だもの」

白銀「え。ちょ。まだ朝六時……早いよ!?」

東条「じゃあ行ってくるわね」スタスタ

白銀「人の話聞かないなあの人!?」



スパーンッ イテェ!
スパーンッ キャア!
スパーンッ エデ……ワタシハ……


白銀「しかも一人ひとりハリセンで目を覚まさせているみたい!?」

最原「アグレッシブだな」

十分後

王馬「鍵開けは俺がやっていましたー!」ピースピース

獄原「よかった! 本当によかったよ! 白銀さんが元気になって!」

真宮寺「ククク。まさに愛と勇気が勝つストーリーだよネ! 人間って素晴らしい!」

アンジー「にゃははー! 待っててねー! 今アンジーの神様がコーヒーを持ってくるからー!」キラキラ

百田「神様をパシリにしてんのか!?」

春川「ていうか神様なんているわけないでしょ」

赤松(春川さん、霊感とか全然ないんだね。アレが全然見えてなかったみたい……)

入間(そっちの方がいい気がするけどな……)

赤松「それはそれとして! どうする? ピアノとか弾く!?」

赤松「ショパンでもドビュッシーでもモーツァルトでも何でも弾くよ!?」

キーボ「……不思議ですね。目覚めてほしいと願っていたはずなのに」

キーボ「いざこうして目の前に立つと、どうしたらいいのかまるでわかりません」

王馬「いや、たかがロボットには期待してないから。大人しく置物にでもなってろよ」

キーボ「空気清浄くらいはできますよ! ただの置物と侮らないでください!」

天海「なんか反論がズレてるっす」


ワイワイガヤガヤ

茶柱「……いい目をしています。あの死の行軍で、何か吹っ切れたみたいですね」

茶柱「ちょっと綺麗になりましたよ、白銀さん」

星「ふん。悪くねーな」

白銀「え。えーと、地味に反応に困るな。そんな褒められても」

夢野「東条。今日はうんといいものが食べたいぞ。夕飯は豪華にしてくれ」

東条「心得たわ」

アンジー「……あ。神様……うん。うん……ありがと……」ゴソゴソ

百田「ん。アンジー。ドアんところで何してんだ?」

アンジー「はいコーヒーお待ちどー!」ジャーン!

白銀「うわ! 凄い豪華そうなティーセット! ていうかいつの間にコーヒー淹れたの!?」

アンジー「淹れたのは神様だってー!」

白銀「ええと、二人分あるけど」

アンジー「あ。アンジーの分とつむぎの分ね」

最原「僕の分じゃないんだ!?」

天海「もうすっかり彼も影の仲間っすね……」

最原「?」

百田「さあ! 今日は祝うぞ盛大にな!」

東条「二人はまだ治療だけど」

百田「じゃあ二人を抜きでお祝いだ!」

最原「本末転倒だよッ!」ガビーンッ!

入間「俺様の生体糊は完璧だぜ。患部にベットベト塗るだけでハァハァ」

入間「す、すぐに……いぃ……っ! えちゃうの! 傷が!」ビクンビクン

最原「普通に癒えるって言って。無理にエロく言う必要ないから」

入間「もう走ったりしない限りは傷は開いたりしねーだろ。最原は退院でいいんじゃねーか?」

東条「……ま、そうね。最原くんは先に、ね」

白銀「えっ。ずるい」

赤松「まあまあ。白銀さんもすぐに完治するから。だよね?」

東条「この分なら……薬もある程度モノクマに貰ったものが残ってるから問題はないわ」

東条「……私に任せてちょうだい」

星「まだ時間は残っている。さあ。これから、何をする?」

星「首謀者代理。テメェの企画なら乗ってやってもいいぜ?」

最原「えっ」

百田「そうだな。モノクマはもういねぇが、モノクマーズは残ってる」

百田「権利のすべてが消えたわけじゃねーだろ?」

王馬「ああ、そっかー。最原ちゃんを脅せば、この学園を好きにし放題だよね」

最原「えっ。えっ」

赤松「ピアノのチューニングをお願い!」

茶柱「転子の研究教室のさらなる充実を!」

百田「ロケットだ! ロケットを出せ!」

最原「どれも無茶ぶりすぎる!」ガビーンッ!



白銀「……今、なんて言ったの?」

百田「あ? ロケット……」

白銀「じゃなくって、モノクマがいないって?」

百田「あっ」

春川「……バカ」

寄宿舎の外


白銀「……モノクマ」

モノクマ「……」

白銀「バカだなぁ。あんなことのために壊れちゃうなんてさ」

白銀「……朝まで待てば、どうせ私、最原くんに会えたのに」

白銀「……」

最原「白銀さん……」

入間「……稼働しないっていう選択肢はなかったんだろ」

入間「ぶっ壊れるよか、役目を果たせず終わる方が機械にとっちゃ致命的だ」

入間「コイツはコイツなりの行動目的に殉じた。ただそれだけだ。悲しむことじゃねぇ」

キーボ「……」

真宮寺「いなくなったらいなくなったで、寂しいネ。口やかましいクマだったけど」

百田「でも仲間だった」

最原「うん」

白銀「……」

白銀「ところでなんでコーヒー臭いの?」

全員「さあ?」

モノクマ(チクショーーー! しまらないーーー!)ズーン

休憩します!

白銀「……外に出るときは一緒だよ。モノクマ」

白銀「今まで本当にお疲れ様」

白銀「……私のワガママにつきあってくれてありがとう」

最原「……真面目に礼を言っても茶化すだけだろうけどさ」

最原「多分、今の言葉でちょっとは報われたんじゃないかな。モノクマ」

白銀「どうだろ。わかんない」

アンジー「主は言っていました。"彼の物語にこそ喝采がふさわしい!"」

アンジー「"なればこそ! オレはその生に敬意を表する!"と」

最原「なんか最近アンジーさんの神様が大仰だな……」

天海「でも俺も概ね同意っすよ。ムカつくマスコットっすけど、それとこれとは話が別っす」

百田「おっし! 外に出るときはモノクマも一緒だ! 決定事項だぜ!」

春川「……モノクマのことまで救うの?」

百田「文句あっか!?」

春川「ないよ。バーカ」フフ

百田「バカって言うな!」

モノタロウ「じゃあオイラたちのことも一緒に連れてってよー!」ヒシッ

最原「はっ!? あ、も、モノクマーズ!?」

モノファニー「廃棄処分はイヤー!」

モノダム「助ケテホシイナ」

モノキッド「スクラップは御免だー! スクラップにする方なら大好きだけどよ!」

モノスケ「ということで、ワイらのことも頼むわ。新首謀者」

最原「厚かましい!」ガビーンッ

百田「あ。そいつらのことは終一に任せるぜ」ヒキッ

最原「お願い見捨てないで! コイツら本当に鬱陶しくて……!」

最原「纏わりつくなッ!」

モノタロウ「わー! 怒られたー!」

白銀「……あははっ」

最原(と、まあ九日目もおおよそこんなものだった)

最原(外の世界がどうなっているのか……まだ僕たちにはわからないけど)

最原(この分だと全員出られるだろう。そして、そのときイヤでも真実がわかる)

最原(僕たちの存在が本当に嘘だったのか……やっぱりまだわからないことだらけだ)

最原(僕たちは外に出たら何がしたいかを全員で話し合って)

最原(夕飯は東条さんが腕を振るった祝いの豪華な晩餐をとって)

最原(赤松さんの研究教室と放送のスピーカーを無理やり繋げて学園中に音楽を流したりもした)

最原(……そして、最終日)



十日目

最原「……せっかく歩き回っていいって許可が出たのにさ」

最原「校舎をぶらつくだけでいいの?」

白銀「いいの! だって思い出の校舎だもん!」

白銀「前回、キーボくんに粉々にされちゃったときは本当に涙目になるほどだったんだよ?」

最原「そ、そこまで……」

白銀「最原くんにとっては、やっぱり仲間を失った悪夢の校舎、かな」

最原「……いや。思い出は僕もあるよ」

最原「外に出るのは、やっぱり寂しい」

白銀「……私たちだけは残っちゃおうか?」

最原「え」

白銀「で。一生二人っきりで暮らすの。楽しそうじゃない?」

最原「……」

最原「流石にそれはイヤだ」

白銀「はは。冗談。嘘だよ、最原くん!」

最原「キミとは色んな場所に行きたいからさ」

白銀「……」

白銀「うん。あ、そうだ。一緒にコスプレするって約束、私、まだ忘れてないからね」

最原「うん」

食堂

百田「終一と白銀はデートか。一体どこに行くんだろうな」

春川「女子トイレ……」ボソッ

赤松「え。なんて言った?」

春川「なんでもない」

赤松「……ねえ。デスロードで帽子のモノクマに言われたこと、覚えてる?」

百田「もう忘れた」

赤松「え」

百田「俺は俺だ。他人がどうこう言おうが関係ねぇ」

赤松「……そっか」

赤松「うん。そうだね! 私、ピアノが好きなのは本当だから!」

春川「私はもし嘘だったらな、ってちょっとは思うけど」

百田「あ?」

春川「……もしもこの才能が嘘だったら、どんなに……」

赤松「春川さん?」

百田「……ハルマキ。俺は今のテメェのことが好きだぜ?」

春川「えっ」

百田「だから今更嘘だとか言うな」

春川「……えっ」

赤松「……」

赤松「……」ニヤァ

春川「な、何その顔! 殺されたいの!?」

赤松「後はごゆっくりー!」ダッ!

春川「待っ……!」

春川「……」カァァ

春川「その言葉、もう撤回しないでよ」

百田「お? おう。男に二言はねーぞ?」

百田「なんで顔真っ赤なんだ?」

春川「うるさい」

裏庭周辺

王馬「やっぱり諦めきれねぇ! 俺はっ……俺は手塚●虫に会うんだーーー!」

獄原「うーん。もうこの学園にはいないんじゃないかな……」

王馬「そ、そんな……俺は……俺はマンガの神様への足掛かりを失ったっていうの……!?」

王馬「うびゃああああああうあうあう! あんまりだァーーー!」ビエェェン!

獄原「お、王馬くん! そんな泣かないで」

獄原「ほら! ゴン太の研究教室で虫さんと和もうよ!」

王馬「和めるか! ふざけんなよこの脳筋!」

王馬「……」

王馬「いや。どうせ最後だ。行こうか。ゴン太の研究教室」

獄原「えっ」

王馬「まあ退屈はしなさそうだしね」

獄原「……お、王馬くんんんんん!」

王馬「うっわ、泣くなよ! そんな図体してて! 鬱陶しい!」

入間の研究教室

入間「おっしと。メンテ終了。もう起きていいぜ、キーボ」

キーボ「……入間さん。最後に訊きたいことがあります」

入間「あ?」

キーボ「モノクマに対して、あなたは言いました」

キーボ「ぶっ壊れるよか、役目を果たせない方が機械として致命的と」

キーボ「じゃあボクの役目って、一体なんなんでしょう」

入間「自分で決めろ。面倒くせぇ」

キーボ「えっ」

入間「強いて言うなら、それを探すのがテメェの役目だろうが。俺様に訊くな」

入間「えげつねぇチンコ付けられたくなかったらな」

キーボ「……」

入間「一応言っておくが、人間だってそういうの探してるんだよ」

入間「別にテメェだけに課せられた義務ってわけじゃねぇ」

入間「ま。俺様の役目はわかってる。発明を作って作って作りまくることだ!」

入間「この結論に一切の疑いの余地はねぇ! 俺様は天才だからな!」

キーボ「……ブレないですね、あなたは」

キーボ「ああ、でもそうか。探すことを役目にしてもいいんですね」

キーボ「……外の世界に出ても、よろしくお願いします! 入間さん!」

倉庫

アンジー「……むいー。取れないー。取れないよー」ゴシゴシ

天海「あれ。アンジーさん。どうしたんすか、そんなところで」

アンジー「あ。蘭太郎ー!」

真宮寺「僕もいるヨ。う。なんか、薬品臭いね。何やってたんだい?」

アンジー「それがさー。今日起きてみたらさー。左手の甲に落書きがしてあったんだよー」

アンジー「誰にされたのかわからないけど、全然取れなくってさー」

アンジー「倉庫の薬品とか使っても効果なしだしー」

天海「落書き?」

真宮寺「……」

天海「……これ……落書きっていうか令――」

真宮寺「まだまだ外に出ても楽しそうなことがいっぱいありそうだネ!」ズギャァァァン!



???「クハハハハハハハハ!」

中庭

星「……」

東条「こんなところでボーッとして、どうしたの?」

星「ふっ。いや。いろんなことがあったな、と考えていただけさ」

星「結局のところ、何が大切で、何がそうではないのかは気の持ちようなのかもな」

東条「……そうね。最初は私たちは、二人を助けることを拒絶したんだったわね」

星「この学園での生活すべてが嘘だってわけじゃない」

星「そんなことわかっていたはずだったのによ……ついつまらねー意地を張っちまった」

東条「でも最終的には助けたわ」

東条「……しかも命懸けだったのよ。これでチャラにするにしてもお釣りが来るわ」

星「俺はそうは思わねぇ」

星「だからって何ができるってわけじゃねーけどな」

東条「……」

東条「外に出れば、何をすればいいのか考える時間はいくらでもあるわ」

星「死刑囚に時間を説くか」

東条「……どっちにしろ、次があったら間違えないようにすればいいだけ」

東条「こんな学園に連れてこられるなんて、私は想像もしてなかったわ」

東条「……時間はあるかもしれないし、ないかもしれない」

東条「次があるかもしれないし、ないかもしれない」

東条「……いい方に考えてみましょう?」

星「……」

星「そうだな。ちょっとくらいは」

夢野の研究教室

夢野「……よしと。おおよそこんなもんじゃろ」

茶柱「す、凄かったですよ夢野さんの魔法!」

茶柱「これを独り占めできた転子は地球一の幸せ者です!」キャー!

夢野「大袈裟……ってほどでもないか。ウチの魔法じゃしの」

夢野「……」

夢野「ちょっと聞きたいことがあったんじゃが」

茶柱「ん? なんですか、夢野さん」

夢野「お主、最原の首謀者バレのとき、ヤツを有罪にしたいと言っておったよな?」

夢野「その割には、途中から最原に肩入れしておった、と思っての」

夢野「お主、男子は嫌いでも最原のことはそこまで嫌いではなかったのではないか?」

茶柱「……さて。どうでしょう」

夢野「お主にしては歯切れが悪いのう」

茶柱「今更考えても仕方ないですし。本当に転子にもわからないですからね」

茶柱「ただ、最原さんのこちらを見る目が、やたら親し気でこそばゆかった、と言いますか」

茶柱「……知り合いにでも似てたんですかね?」

夢野「……他人とは思えんかった、と?」

茶柱「変な話ですけどね。少なくとも最原さんの方は確実にそう思ってたはずです」

茶柱「……ま。それだけですよ」

夢野「そうか。変な話してすまんかったの」

夢野「……もうちょっと続けるか」

茶柱「やったー!」

白銀の研究教室

白銀「……」

白銀「ねえ。結局さ。どこからどこまで嘘だったんだと思う?」

最原「え?」

白銀「……もしかしたらさ。最原くんの記憶全部、コロシアイしてたっていうものも含めてさ」

白銀「思い出しライトで作ったものだった、とか思わない?」

最原「そうなの?」

白銀「……いや、違うけどさ」

最原「キミがそう言うのなら、僕にとってそれが真実だ」

白銀「……そこまで信じられるとさ。怖いよ」

白銀「いつか裏切っちゃいそうで、さ」

最原「もう一回裏切られてるけど、僕は白銀さんのことを嫌いになってないよ?」

最原「……いや。むしろ裏切られる前より好きかも」

白銀「や、やめてよ! 元非リアの女の子にそんな台詞! 恥ずかしい!」

白銀「……」

白銀「二人きり、だけど……」

最原「うん?」

白銀「……で、私、元気だけど。今のところ」

最原「うん」

白銀「……まだキスしてくれないの?」

最原「……」

最原「キミの台詞も大分恥ずかしいんだけど」

白銀「心配するな。自覚はある」キリッ

最原「……もう、いいんじゃないかな、とは思うよ」

白銀「えっと、じゃあ、その……」

白銀「……やっちゃう?」

最原「……うん」

白銀「あの、あの、病み上がりだから、優しく……」

最原「……ん? あれ。キスだけだよね?」

白銀「……言わせる気?」

最原「……いや。もう充分だよ」

最原「キスだけで終われなかったら、ごめん」

白銀「んっ……!」



キーボ「ハッ! ボクの内なる声が叫んでいます!」

キーボ「今すぐ白銀さんの研究教室に行けと!」

入間「は? 急に何言ってんだお前」

キーボ「もっとクセを出して走れーーー!」ガションガションガションッ!

入間「ああっ!? おい! キーボ!?」

キーボ「走れー! 明日へー! 続くー! 進化の道はー!」ガションガションガション!

キーボ(……走りながら、ボクは思っていた)

キーボ(あ、これ多分、どこかから操作されてるな。ボク、と)

キーボ(……さっき、入間さんに言われたばかりだ)

キーボ(ボクの役目は、ボクが探すものだと……)

キーボ(……そうだ。それなら、ボクは、こんな声なんかに)ピタリッ



キーボ「うおおおお! こんな声なんかに……」ガタガタ

赤松「ん? キーボくん? どうしたの、こんなところで震えて――」

キーボ「こんな声なんかに支配されてたまるかァーーーッ!」ボキィッ!

赤松「きゃああああああああああ! キーボくんがアンテナむしったーーーッ!」ガビーンッ!

キーボ「じ、自由だ。これで。ボクは操り人形なんかじゃない!」

キーボ「あははははは! 最高に『ハイ』ってヤツだァーーー!」

赤松「入間さん! キーボくんが壊れてる! 入間さん! 入間さーーーんッ!」

キーボ「修理なんかされてたまるか! こんなアンテナこうだ!」ブンッ!


ガシャァァァンッ!


赤松「アンテナを窓にぶん投げたーーーッ!?」


もう二度とアンテナがキーボの頭に戻ることはなかった

休憩します!

Rだったらキーボがアンテナむしったの、もうちょっと後だったかもしれない。
今更いっても詮無いがの

最原(……僕のワガママと、白銀さんのワガママが合わさって産まれた学園生活は、終わる)

最原(これでダンガンロンパは完全に終了)

最原(この密室から生まれた僕たちの存在は、外に出たら消えてしまうのだろうか)

最原(……なんて、今更こんなこと、まったく心配はしていないのだけど)

最原「さあ。行こう白銀さん」

最原「今度はみんな一緒に学園を出よう」

最原「もうひとりぼっちなんかじゃないから」

白銀「……うん!」

みんなさよなら才囚学園

百田「でっけー出口だな!」

春川「この向こうが外の世界、か……」

赤松「みんな! 忘れ物はない!?」

王馬「うぐうう……心臓を部屋に忘れてきてしまった。もうすぐ死んでしまう」

獄原「ええっ!?」ガビーンッ!

天海「嘘っすから大丈夫っす」

アンジー「……うん。アンジーも大丈夫ー! だと思う。落書き消えてないけど」

真宮寺「ククク! 学園の外でもよろしくね夜長さん!」

入間「なあ。怖ぇ。キーボがさっきから超怖ぇぞ」

キーボ「ボクは外の世界を破壊します! もう二度と操られないために!」

夢野「なに言っとんじゃコイツ」

茶柱「大丈夫ですよー、夢野さん。あんまり行き過ぎるようなら転子が〆ますので」

星「さてと。鬼が出るか蛇が出るか……」

東条「……ふふ。ちょっとだけ楽しみね」

最原「本気でお前らもついてくるのか……」

モノタロウ「ついていくよ!」

モノファニー「お願いだから見捨てないでよー!」

モノキッド「もっとミーはキサマラとヘルイェーしたいぜ!」

モノダム「……仲良クシヨウヨ」

モノスケ「ま。そういうこっちゃ。首謀者になったキサマの不運ってやっちゃな」

最原「ええー」

白銀「……最原くん。大丈夫? モノクマ、重くない?」

最原「うん。危ない機能とかは極力入間さんに取り外してもらったから、意外と軽いよ」

白銀「……また喋ってくれるよね。モノクマ」

最原「……うん。きっと」

真宮寺「さァ。ドアを開けようヨ!」

モノタロウ「良し来た! 開けるよー!」


ポチリ


ズガガガガガガガガッ!

最原(何度も夢に見た、全員での脱出。それが僕の目の前で現実として存在する)

最原(……あの人たちと同一人物じゃないかもしれないけど、それでも確かに――)

モノクマ「――オマエラ。卒業おめでとう」

最原「!」

白銀「……最原くん、今……!」

最原「……うん」

百田「俺にも聞こえたぜ」

赤松「……心残りは全部消えたね」

最原(……物語は終わらない)

最原(僕が願う願わない関係なしに続いていく)

最原(目の前にあるのはいつだって白紙のページ)

最原(……それを一緒に好き勝手に書いていく)

最原(仲間と一緒に。あるいは、誰かに追い詰められながら)

最原(……隣にいる誰かを守りながら)

最原(それは、なんてやりがいのある――)

最原「二周目は彼女と共に」 白銀("嘘"! だけどね!)

THE END

最原「……ところで、知らない人がいるけど、どちら様?」

なんか復讐しそうな人「……」ニヤァ

なんか復讐しそうな人「休む暇はないぞ!」

アンジー「およ?」

なんか復讐しそうな人「さあ! 次の物語を始めようではないか!」ギンッ!


NEXT
アンジー「聖杯戦争?」



モノクマ「いや続かないよ!?」ガビーンッ!

モノクマ「これで終わり! 終わりーーーッ!」




終結!

最原「東条さんが本気出してくる一週間」

モノクマ「逆転ダンガンロンパ!」 最原「これで終わりだ!」

を書いたのと同一人物でお送りしました!


……短かっただろ?(白目)

えー。あとがき。


毎度毎度書き溜めなしでやってるんで、大雑把な着地点を決めてからやっているため、逆転シリーズのころから誤算がいっぱいあります。
前回の東条さんのヤツ三角関係に持ち込む気なかったし。

今回の最大の誤算はモノクマがいつの間にか『自称相棒』じゃなくて『真の相棒』になってたところ。なんか復讐しそうな人が最後まで学園に残ってたことです。ところでふとFGOマテリアル読んでみたら、彼には『待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)』という回復宝具があり、味方の一人を瀕死状態から回復させることができるそうです。

モノクマにコーヒーぶっかけた後で気付いたけど、お前……まさか……みたいな裏設定。

私の作風は基本的にサイコポップなラブストーリー、いうなれば『サイコスイーツ(笑)』でやってるので、ラブ成分多めです。多めだよな? 多めなはずだ。多めだと言ってくれ。


……次誰を題材にしようかなぁ……

ああ。そうだ言い忘れてた。毎度毎度感想が励みになってますよ!

あと、あとがきの半分くらいは! 嘘だぜ!


ところでニューダンV3の設定資料集が思ったよりぶあつい上にクソ重くてでかい。置き場所に困ってるどうしよう。

まあいいや。また会いましょう。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年05月12日 (金) 23:22:38   ID: AC_0XgQz

最原くんと白銀ちゃんのコンビネーション……………………………新鮮だネ!!!!!

2 :  SS好きの774さん   2017年05月17日 (水) 10:18:47   ID: Bxcv72P2

本編もこういうキャラだったらおばさんも人気出ただろうな

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