穂乃果父「やってるかい?」 (20)

ピープー

店主「へい、らっしゃい」

穂乃果父「…」

店主「おっ!穂むらの旦那じゃないかい。これは珍しいね。明日は休みなの?」

穂乃果父「…」

店主「何?明日もあるの?いやぁ、老舗は大変だねぇ。まあ、ウチも休みなしでやってるけどウチの場合は貧乏暇なしって感じだからねぇ。金曜の夜だってのに旦那が今日初めてのお客さんだよ」

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店主「それで?今日はどうしてまた?」

穂乃果父「…」

店主「え?娘さんと喧嘩した?旦那ん所は確か…娘さんが二人だったよね?」

穂乃果父「…」

店主「そうか。お姉ちゃんと喧嘩しちゃったの?」

穂乃果父「…」

店主「へぇ。スクールアイドルねぇ?今は部活動でアイドルをやる時代なんだ?変わったなぁ…ちょっと前まで会いに行けるアイドルがどうとか言っててついて行けないなんて思ってたけどねぇ」

穂乃果父「…」

店主「なるほど。そのアイドル活動に熱中するあまりお店のお手伝いをしなくなったからつい?」

穂乃果父「…」

店主「まあ、気持ちは分かるよ?ウチなんか娘はもう嫁いじまってるけど高校生の時なんかロクに口も聞いてくれなかったね…」

穂乃果父「…」

店主「そうか。ウチの子もそうだったよ。小さい頃は聞かなくってね。どれ程心配した事かね。こんなお転婆で将来大丈夫かなってね。でもね、服を泥だらけにして帰って来るたびにどっか心では安心してたんだよね」

穂乃果父「…」

店主「それが会う度に綺麗になっちまってさ…」

穂乃果父「…」

店主「まあ、そんな顔しないで」

穂乃果父「…」

店主「そうか。生徒会長もやってるんだ?」

穂乃果父「…」

店主「そうだねぇ。心では絶対に娘の成長を祈ってる筈なんだけどね。さっきも言ったけどやっぱりどこかで子供のままでいて欲しいって思っちゃったりするんだよね。ずっと迷惑を掛けてて欲しいってね」

穂乃果父「…」

店主「ウチの娘はもう嫁に行ったって言ったでしょ?」

穂乃果父「…」

店主「初めて相手を連れて来た時ね…はっきり言ってブン殴ってやりたいって思ったよ?」

穂乃果父「…」

店主「いやいや、真面目な好青年だよ。相手がチャラチャラしたような奴でも真面目な子でも自分の元から娘を奪って行く事に変わりは無いからね。でもね、娘がその相手を見る目を見てね諦めたよ。きっともう私の事をその目では見てくれないんだってね」

穂乃果父「…」

店主「ああ、ごめんごめん。でも、穂乃果ちゃんはまだ高校生なんだろ?今はアイドル活動に心を奪われちまってるかもしれないけど同じ家に住んでるんだしいいじゃないか」

穂乃果父「…」

店主「まあ、親なんてもんは矛盾してるんだよね…うん…理屈じゃないんだね」

穂乃果父「…」

店主「そうだね。今日は店じまいにしてとことん旦那に付き合うよ」

穂乃果父「…」

店主「と言いたい所だったけどね。ほら?お迎えが来たみたいだよ?」

ガララ

雪穂「こんばんは」

店主「こんばんは」

雪穂「あっ!飲んでるの?もう、迎えに来たよ?」

穂乃果父「…」

雪穂「ほら、お姉ちゃんも」

穂乃果「お父さん…あの…」

穂乃果父「…」

穂乃果「え?本当?」

穂乃果父「…」

店主「はい。じゃあ、またのお越しを」

ガララ

店主「いらっしゃい」

女子高生「…」

店主「お!珍しいね?今日は一人で来たの?へえ?パパは元気かい?」

女子高生「…」

店主「そうかい。それは良かった。今じゃ立派な先生だもんね。それなのにウチなんかにちょくちょく顔を出してくれるからね?嬉しいよ」

女子高生「…」

店主「冷やしトマト?あるけど…それだけでいいの?」

女子高生「…」

店主「それじゃあ、トマトソースのスパゲッティを作ってあげよう」

女子高生「…」

店主「いいんだよ。お父さんも研修医の頃はよく食べてたんだよ。裏メニューなんか言ってね」

女子高生「…」

店主「そうなんだよ。で?今日は学校帰りかい?」

女子高生「…」

店主「へえ?もしかしてスクールアイドルってやつ?」

女子高生「…」

店主「音ノ木だもんね?もしかして穂むらの穂乃果ちゃんと一緒にやってるの?」

女子高生「…」

店主「そうか。世の中狭いなぁ。でも、部活帰りにしては早いね?何かあったのかい?」

女子高生「…」

店主「そんな事言わないで。お店に入って来たあたりから浮かない顔してるなと思ったけど」

女子高生「…」

店主「中途半端な時間に帰るとお母さんも心配するもんね」

女子高生「…」

店主「へえ。部活の友達とケンカしちゃったの?」

女子高生「…」

店主「そうか。で?どつやって仲直りしたら良いかがわからないと…」

女子高生「…」

店主「あははは」

女子高生「…」

店主「ごめんごめん」

女子高生「…」

店主「そっか。その子達は幼馴染なんだ?で、その二人と仲良くなったと」

女子高生「…」

店主「自分には二人と違って過ごして来た時間も少ないし正直嫉妬してしまう」

女子高生「…」

店主「そんな自分にイライラしてる時につい、か」

女子高生「…」

店主「でも、その二人はそんな事くらいで君の事を嫌いになる様な子達なのかい?」

女子高生「…」

店主「だったら何も心配する必要はないじゃない?」

女子高生「…」

店主「それにね、ケンカした後には取っておきの大イベントがまってるんだからさ」

女子高生「…」

店主「そうだよ。仲直りって奴はケンカしなきゃ出来ない事だからね」

確かに真姫ちゃんの声がここから聞こえたにゃー

凛ちゃん本当?

女子高生「…」

店主「この店はボロいからね。外に声が丸聞こえなんだよ」

ガララ

店主「いらっしゃい」

女性「…」

店主「こんな時間にお昼かい?」

女性「…」

店主「そうかい。仕事が長引いて?大変だねぇ。忙しいのは喜ばしい事だけどね」

女性「…」

店主「そうなの?ここのところ休日も仕事なんだ?」

女性「…」

店主「それで家の事を娘さんに任せがちになっちゃうの?一番上の娘さん高校生だったけ?」

女性「…」

店主「そうかぁ。小さい頃に会ったきりだからね。私の顔見て怖い怖いって泣いてたあの子がねぇ」

女性「…」

店主「なるほど。下の子達の世話も任せちゃって貴重な青春を奪っちまってるんじゃないかって?」

女性「…」

店主「へえ。部長なんだ?凄いね?」

女性「…」

店主「え?スクールアイドルやってるの?最近よく聞くなぁ」

女性「…」

店主「そう言えば小さい頃もあってたもんね。アイドルになるって。そっか。夢を追いかけてるんだ」

女性「…」

店主「そう言うのもあって悩んでるんだね?まあ…仕事を辞めるわけにはいかないしね」

女性「…」

店主「まあ、親のジレンマってやつだよね」

女性「…」

ピロリン

店主「おや?娘さんからかい?」

女性「…」

店主「今日はカレーですってか」

女性「…」

店主「何言ってんだ。あんたの背中を見てるからこうやって真っ直ぐに育ったんじゃないのかい?」

女性「…」

店主「あんたは母親失格なんかじゃない。子供達の写真の笑顔見て確信したよ」

女性「…」

店主「さあ。これ食べて午後からも頑張りな。ただし、食べ過ぎてカレーが食べれないなんて事がないようにね」

ガララ

店主「いらっしゃい」

女子高生「…」

店主「あれ?今日は1人なの?」

女子高生「…」

店主「そうか。なら仕方ないね。で、注文はどうする?」

女子高生「…」

店主「はい。ラーメンね?」

女子高生「…」

店主「それにしてもラーメン好きだね。ウチみたいな食堂のラーメンじゃなくってちゃんとしたラーメンに行けばもっと美味しいラーメンがたべれるだろ?」

女子高生「…」

店主「そう?そいつは嬉しい事を言ってくれるね。それじゃあ真姫ちゃんに感謝しなくちゃいけないね?」

女子高生「…」

店主「あはは。そうだね」

凛「じゃあこっちの話題の実写化した奴を」

海未「破廉恥です」

凛「また?ただの少女漫画の実写化だよ?」

海未「そんな…破廉恥なシーンが満載の映画絶対にダメです」

凛「仮にそうだとしてどうしてそんなシーンが満載って知ってるの?見た事あるの?」

海未「いえ…見てないですから。全然見た事ないですから」

凛「へー」

海未「それよりもこっちのサスペンス映画にしましょう?」

凛「あっ!良いかもしれないにゃ」

絵里「それはダメよ」

海未「何故です?」

絵里「悪魔が来たりてなんてタイトル…絶対にダメよ」

海未「ただのサスペンス映画ですよ?」

絵里「とにかくダメよ。ね?こっちの映画にしましょう?キスシーンが何度見ても感動必須でね」

海未「ダメです。破廉恥です。そんなのダメです」

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