男「・・・・・・百物語か」(12)
深夜、旧校舎・空き教室
男「・・・・・・百物語か」
女「なに、ここまできて怖いの?」ニヤ
男「そういう訳じゃないけど、喜ぶ程縁起の良いものでもないだろ」
幼馴染「なにも起こりはしないさ」
友「なんでもいいけど、早くやっちゃわないと蝋燭の火消えちまうぞー」
幼馴染「そうだ、夜警がきても面白くない」
後輩「じゃあ私からいきまーす!」
女「いいねー!」パチパチ
幼馴染「拍手、はちょっと変じゃないだろうか」
友「雰囲気が大事だからなァ」
後輩「えーっとこれは二年前だから、私がまだ中学生の頃の話なんですけど――」
第1話「人形」
放課後、教室
「――魂の重さって知ってる?」
「なにそれ」
「人が死ぬと、何故か21グラム軽くなるんだって。それが・・・・・・魂の重さって話」
「うわ、なんか怖くない?」
後輩「うーん。ガスとかじゃないの?」
「後輩は夢がないなぁ」
後輩「だって嘘っぽいじゃん」
「ひどーい!」
後輩「あはは、ごめんごめん」
「あ! じゃあこれは? 髪が伸びる人形!」
「それは有名すぎ」
後輩「毎日話しかけたり大事にすると――ってやつでしょう? これも嘘っぽい」
「本当だよ! 友達の友達の人形も変になったって聞いたもん」
後輩「ああ。友達の友達、ね」
「信じてないでしょ! 夜喋ったり、髪が伸びたり・・・・・・ほんとに魂が入ったみたいだって言ってたんだから!」
後輩「わかったったら」ニコ
「――あ、じゃあそういう人形って、21グラム重くなってるの?」
後輩「え?」
「だってさっき言ってたじゃない。魂の重さは21グラムだって」
「・・・・・・そっか。そうだね! そういうことだと思う!」
後輩「馬鹿らしいってば」
「じゃあ後輩試してみてよ!! 毎日話しかけたら人形が重くなるかどうか」
後輩「な、なんで私が?」
「だって信じてないんでしょう?」
後輩「・・・・・・やるっていっても、私、人形なんか」
「私、誕生日に貰った人形あるから持ってくる! いらないし」
後輩「えー、いいよそんな」
「後輩が信じてないのが悪いの! もしかして、怖いの?」ニヤ
後輩「・・・・・・あーもう分かった。やるよ」
「やったー!」
「じゃあ明日持ってくるからね」
後輩「・・・・・・うん」
翌日の夜、後輩の部屋
後輩「・・・・・・あ、既読無視しちゃってた」
後輩「・・・・・・」ピコン ピコン
後輩「――あ、そうだ。人形」スタ
ガサゴソ
後輩「・・・・・・これ、フランス人形? なのかな。・・・・・・気持ち悪いなァ。本当にもってこなくていいのに」
(いーい? ちゃんと毎日話しかけてね? 重さを書いた紙も渡しておくから)
人形「・・・・・・」
後輩「・・・・・・こんばんは」ボソ
人形「・・・・・・」
後輩「――ぷッ。馬鹿らしー。なにやってんだろ」
人形「・・・・・・」
後輩「・・・・・・毎日、ね」
深夜、旧校舎・空き教室
友「――で、どうなったんだよ!」
女「毎日話しかけたんでしょ?」ワクワク
後輩「はい。馬鹿っぽいなーって思ったんですけど、なんか習慣になっちゃって」
男「それで、重くなったのか?」
後輩「・・・・・・さあ」
幼馴染「ん? どういうことだ?」
後輩「あれから計ってないんですよ、一度も」
友「おいなんだよそれー! どうなったか分かんないじゃないか」
後輩「今日持ってきたんです」
男「・・・・・・は?」
後輩「だからー、今日持ってきたんですよ、その人形。百物語にぴったりだなァって」
女「・・・・・・そのカバンに入ってるってこと?」
後輩「はい」ゴソ
友「・・・・・・」
幼馴染「・・・・・・」
男「・・・・・・」
後輩「じゃあ、計りましょうか」ニコ
女「い、いや・・・・・・それはいいかなー・・・・・・なんて」
後輩「どうしてですか?」
友「ほ、ほら。楽しみは後にって言うだろ。な?」
後輩「――そうですか。なら後で、ということで」ニコ
幼馴染「なかなか気味が悪いな。ほら、蝋燭を消してくれ」
後輩「はい。・・・・・・あれ? もう、一本消えてる」
第1話「人形」終
※1日1話くらいで書いていきます。
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