二宮飛鳥「(事務所の扉を開けたら、中にいたのは…)」
姫川友紀「かわいいかわいい!幸子ちゃんかわいいー!」ワシャー
輿水幸子「ちょ、友紀さんまたですか!撫ですぎですよ…わぷっ!」
飛鳥「……」
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飛鳥「…やあ」
幸子「あっ、飛鳥さんではないですか!助けてください!」
友紀「飛鳥ちゃん、おっはよー!」ワシワシ
幸子「このままではっ、ボクが擦り減ってしまいます!あぁっ!」
飛鳥「……」
飛鳥「では、ボクはこれにて」
幸子「ちょ、ちょっと!今来たばかりでしょう!どこに行くんですか!」
飛鳥「此処でなはい、何処かにさ」
幸子「お願いですどうぞお入りくださいドアを閉めないで!そして助けて!」
飛鳥「…良かったじゃないか、幸子。キミのカワイイが認められている証だよ」
幸子「これでは身が持ちませんよ!ボクのカワイイ髪も持ちません!」
飛鳥「カタチとして見える愛だなんて、素晴らしい限りだね」
幸子「こんな雑で粗暴な愛の形がありますか!」
友紀「あたし、そんなに力強いかなぁ?」
幸子「体の大きさや年齢を考えてください!」
飛鳥「それでは」
幸子「待って!!」
――
―
幸子「…いやぁ、髪を整えるボクもカワイイですねぇ」
飛鳥「お疲れ様」
幸子「…我関せずでコーヒーを淹れ始める飛鳥さんも、大概大物ですよね」
飛鳥「そうかな?キミたちが近寄り難かっただけだよ」
友紀「あたし、まだ撫で足りないんだけどー」ブー
幸子「やめてください。レッスン前にこれ以上体力を消耗したくありません…というか!友紀さんも一緒の筈でしょう!」
友紀「分かってるって!でもさー」
幸子「荒っぽいんですよ、友紀さんの撫で方は。もっと丁寧にできないんですか?」
友紀「丁寧かぁ…低めに集める感じ?」
幸子「全くもって違います!」
飛鳥「もはや顔の位置じゃないか」
幸子「…そう、例えるならば。シルクの毛布を撫でるように。カシミヤのセーターを扱うように!こんなにカワイイボクの髪なんですからね」
友紀「んー、ガサツなのは自覚してるつもりだけど…」
幸子「友紀さんの場合、力も強いし手もちょっと硬い!手にマメでもできてるんじゃないですか?」
友紀「だって、野球選手にマメはつきものだよ?」
幸子「友紀さんはアイドルでしょう!できれば否定して欲しかったです!」
飛鳥「(あるのか、マメが…)」
幸子「日頃バットやらネギやら何でも素振りしているからですよ」
飛鳥「…そう言えば、この間はスタンドマイクを振り回していたね」
友紀「あー、あれはだめなヤツだったね。いまいちしっくり来なくって。もう振ってないや!」
飛鳥「なぜ評価の基準が素振りなんだ…」
友紀「グリップ具合がちょっとね。あと、重心がこう…」
飛鳥「解説しなくてもいいよ」
幸子「ああ言えばこう言うとはこのことですね…子供ですか!」
友紀「へへっ、よく言われる!」
幸子「褒めていません!」
幸子「全く。そんなことでは、もうボクの髪に触れるのは禁止にしますよ」
友紀「そんなぁ!」ガーン
幸子「代わりに人形でも撫でていれば良いではないですか」
友紀「人形?」
幸子「友紀さんの好きな…えーっと、ね、ねこ…ねこぴん?でしたっけ」
飛鳥「…あぁ、あの運動神経の良くて」
友紀「うん、そうだね。宙返りだってできるんだから!ねこぴんじゃなくて、ねこっp」
飛鳥「緑がかっていて」
友紀「…うん?緑?」
飛鳥「子供を食べるのが好きなモンスターのことだね」
幸子「ヒィ!そ、そうなんですか!?友紀さん?」
友紀「そんなわけないじゃん!?」
飛鳥「幸子ぐらいならバターを塗って一口だ」
幸子「うわぁぁ友紀さん……」
友紀「ストップストップ!変なこと言うのやめてよ!」
飛鳥「冗談さ」フフ
幸子「…冗談なんですか?」
飛鳥「ああ」
幸子「良かったぁ…」グスッ
友紀「よーしよし、大丈夫だよー」
飛鳥「…そんなに驚くとは思わなかったな…。すまない」
幸子「…はっ。な、泣いてなんかいませんよ?」
飛鳥「あぁ、悪かった。ハンカチ、使うかい」
幸子「お借りします…泣いてないですけどね!ね!」
飛鳥「フフッ、そうだね」
――
―
幸子「ふぅー…なんて恐ろしい怪物とツーショットを撮ってるのかと思いました…」
友紀「怪物じゃないって!"ねこっぴー"だよ、ねこっぴー」
幸子「そうです、その子です」
友紀「うんうん、ねこっぴーが…。あー、えーっと……。なんだっけ?」
飛鳥「撫でるなら人形に、という提案だったね」
友紀「あ、そうだったそうだった」
友紀「んー…でも、ねこっぴーは毎日家で撫でてあげてるからなぁ」
幸子「撫でているんですか…」
飛鳥「毎日か…その調子だと、ボロボロなのではないかい」
友紀「やだなぁ、ねこっぴーにそんなことしないよ!」
幸子「その気遣いをなぜボクに向けてはくれないのでしょう」
飛鳥「(…さっきは割と向けていたように思うけれど。それどころではなかったかな)」
友紀「ねこっぴーのかわいさと幸子ちゃんのカワイイは別だからね!」
飛鳥「ははっ。ラブコールだよ、幸子」
幸子「今日はもう勘弁してください……はっ!」
飛鳥「?」
幸子「そうですよ!撫で足りないと言うのなら、飛鳥さんを撫でれば良いじゃないですか!」
友紀「へ?飛鳥ちゃん?」
幸子「そうです。同じく14歳!一人称ボク!エクステに目を瞑れば、髪の長さも近い!これ以上ボクの代役として適任はいません!」
飛鳥「…キミたちの戯れに、ボクを巻き込まないでくれるかな」
幸子「ボクにとっては、今後に関わる大事なことなんです!さあさあ友紀さん、どうぞ!」
友紀「いやー、飛鳥ちゃんはなぁ…」
幸子「えぇ…なんですかその含みを持った濁し方は…。まさかお2人、実は仲が悪いとか…」
友紀「いやいや、仲良いって!…良いよね?」
飛鳥「…まぁ。少なくとも最近は、キミといて煩わしさを感じるようなことはないけれど」
友紀「ほら!前と比べたら…」
幸子「そこです!」バンッ
友紀「うわ!」ビックリ
飛鳥「っ!」ビク
幸子「あ、失礼しました」
幸子「…コホン。普段の友紀さんなら、そこで頭を撫でに来るところじゃないですか」
友紀「普段って?」
幸子「そうですね…例えばですよ?今のように、友紀さんがボクに『仲良いよねー』と訊いたとします」
友紀「うん」
幸子「そしてカワイイボクが、同じくこう返す訳です」
飛鳥「…」
幸子「『少なくともボクは、友紀さんのことは憎からず。というより、親しみを感じているつもりなのですが。…友紀さんはボクのこと、どう思っているのでしょうか』」
友紀「……」
飛鳥「……」
幸子「するとどうでしょう?はい!」
友紀「あたしも好きだよー!かわいいなぁ幸子ちゃーん!!」ワッシャシャ
幸子「フギャーー!!」
飛鳥「想定内だね」
――
―
幸子「はぁ、はぁ…。い、息を整えるボクも、カワイイですね…」
飛鳥「お疲れ様」
友紀「満足!」
幸子「…それは良かったです」
飛鳥「一言余計だったのが敗因と見るね」
幸子「迂闊でした…じゃなくって!」
幸子「ボクの時は頭を撫でるのに、どうして飛鳥さんが相手だと手を伸ばさないんですかと言いたい訳です!」
友紀「そんな話だっけ?」
飛鳥「はて。幸子がキミのことを好いているという話ではなかったかな」
幸子「!」ススッ…
飛鳥「冗談だよ」
友紀「そんなあからさまに警戒シフト組まなくても…」
友紀「うーん…別に飛鳥ちゃんを撫でたくないってことでもないんだけど」
飛鳥「撫でなくて良い」
友紀「だよねー。まぁ、こんな感じ!」
幸子「どんな感じですか…」
友紀「えーっと。確かに、飛鳥ちゃんもかわいいところあるし、幸子ちゃんと似てる所もあるのかもしれないけどさ。飛鳥ちゃんは飛鳥ちゃんだもんね」
飛鳥「…」
友紀「カワイイ幸子ちゃんは幸子ちゃんでしょ?代わりになる選手なんていないんだから!」
幸子「な、なるほど…?」
友紀「幸子ちゃんは、あたしに頭触られるの嫌?」
幸子「べ、別に嫌という訳では」
友紀「あたしね。幸子ちゃんの言ってるカワイイってのを認めて、行動で示してあげよう!って最近思ったんだ」
幸子「…何です?突然」
友紀「頑張ってる幸子ちゃんはカワイイし、笑ってるところも、泣いてるところも、全部カワイイよ?」
幸子「な…」
友紀「これから先も何かあったら、褒めるついでに幸子ちゃんを撫でてあげようと思ってたんだけど…だめだったかなぁ」
幸子「…友紀さん」
飛鳥「ほら、言っただろう。キミのカワイイの証明だと」
幸子「…」
飛鳥「どうするんだい、幸子」
幸子「…しょ、しょうがないですねぇ!そういうことでしたら?撫でられるのも悪い気はしませんし?これからも、どうぞいつでもお気軽幸子で撫でてくれたって構わないんですよ!ふふーん!」
友紀「やったねー♪」
飛鳥「フ、満更でもなさそうじゃあないか。そういう関係、嫌いじゃないよ」
友紀「それと、飛鳥ちゃんの頭撫でたら噛まれちゃうから、触れないんだよね」
幸子「えっ」
飛鳥「ちょっと待った」
幸子「も、もう騙されません!また冗談なんでしょう?!」
飛鳥「待て、待つんだ友紀。何だその出まかせは」
友紀「あれ?だって前に、髪触ると噛み付かれるから気をつけろって。プロデューサーが」
飛鳥「それはモノの例えか何かだろう…ボクが、噛む?ヒトを?言いがかりも甚だしいね」
友紀「噛まないんだ?」
飛鳥「噛まないよ!ボクを何だと思っているんだ」
幸子「今も割と噛み付いているように見えますが」
飛鳥「比喩的な話ではなく」
友紀「んー?じゃあ、なんでプロデューサーはあんなこと言ったんだろ」
幸子「何か心当たりはないんですか、飛鳥さん」
飛鳥「…少し前になるけれど」
飛鳥「あれは…そう、ボクが事務所で読書をしていた時のこと」
――
―
P『…なあ飛鳥ー』
飛鳥『…』
P『エクステ触ってみても良い?』
飛鳥『…は?』
P『どうなってんのかなーって気になってさー』
飛鳥『…藪から棒に何を言い出すかと思えば』
P『駄目?』
飛鳥『ダメだ』
P『付け根とか見てみたいんだけど』
飛鳥『尚更だよ。セットにどれだけ時間をかけたと思っているんだ』
P『そっか…』
飛鳥『…』
P『…』スッ
飛鳥『!』バッ
P『うおぉ…今まで見た中で一番素早い』
飛鳥『…』キッ
P『すまんって』
飛鳥『……』
P『そんな睨まんでも…』
飛鳥『…知っているかい。"好奇心は猫をも殺す"という言葉を』
P『今のお前の方がキレた猫っぽいけどな』
飛鳥『……引っ掻いてやろうか』
―
――
飛鳥「という一件が」
友紀「へぇー」
飛鳥「あの時の猫の件が廻りまわって"噛み付く"と伝わったのだろうか…」
幸子「何と言うか…随分険悪ですねぇ」
飛鳥「譲れないモノがあるんだよ、ボクにも。誰にだってそうだろう」
友紀「ダメだなぁプロデューサーは。髪は女の子の命って言うぐらいなのに」
幸子「友紀さんは一度鏡をご覧になってみてはいかがでしょうか」
飛鳥「というワケで。髪に手を伸ばされても、別に噛み付いたりしないよ」
友紀「なーんだ」
幸子「まぁ、普通は噛んだりしませんよね。ゾンビとかならまだしも」
友紀「あっ、じゃあさ!噛まないなら、触っても良い?」スッ
飛鳥「全く…プロデューサーとは、後で話をつけておかなければ」ペチッ
友紀「ちぇー」
幸子「そんなに髪を触られるのに抵抗がありますか?」
飛鳥「…いいや。こればかりは退けないよ。ボクの髪はそう安くない」
友紀「んー」
幸子「ボクの髪は安売りされているということでしょうか」
飛鳥「言葉の綾さ」
友紀「…」うず…
幸子「?どうしました、友紀さん」
友紀「…触りたい」
幸子「?」
友紀「やっぱり飛鳥ちゃんも撫でたーい!」ガバッ
飛鳥「ちょっ!?何だ急に!」
友紀「わはー、すごい!飛鳥ちゃん、髪サラサラだー!」ワシャシャ
飛鳥「やめ、止めろ!」
幸子「…」
幸子「…はっ!思わず茫然としてしまいましたが、そうでした…!」
幸子「友紀さんは、やるなと言われたことは却ってしたくなるタイプ…!」
幸子「即ち、開けるなと言えば開ける。叩くなと言われれば叩く!撫でるなと言われれば撫で始める!!どうしてこんな基本的なことを失念していたのでしょう…!」
飛鳥「…幸子も!解説していないで、このハタチを何とかしてくれ!」
幸子「諦めて下さい飛鳥さん。先程助けを求めるボクを尻目に、優雅なコーヒータイムを楽しもうとした罰が当たったんです」
飛鳥「さっきからかったことも謝る!だから…ぷぁっ」
幸子「あぁ…それにしても。経験を糧に真実に辿り着くこの発想力、類稀なる審美眼…。我ながら素晴らしいですねぇ、ウットリしてしまいます。流石はカワイイボク!」
友紀「へぇー、エクステってこうなってるんだー」
飛鳥「ぅあっ、引っ張るな!今日のは長めなんだぞ!」
友紀「あ、引っ張るのはダメ?ごめんごめん」
ガチャ
小早川紗枝「お邪魔しますえ~。なんや、騒がしなぁ」
幸子「おや紗枝さん、お疲れ様です。どうかしましたか?」
紗枝「どうって、幸子はんと友紀はん誘いに来たんどす~」
幸子「…あ、もうこんな時間ですか。レッスンが始まってしまいますね」
紗枝「友紀はんは?…あら」
飛鳥「………」
友紀「いやー、飛鳥ちゃんも良い髪してるね!幸子ちゃんに負けず劣らずだよー!」ナデナデ
飛鳥「…しろ」ユラァ
友紀「?」
飛鳥「覚悟しろ、友紀!」
友紀「ひゃー♪」
飛鳥「容赦なんかしないぞ…ボクの髪を乱した罪の重さ、思い知れ!」ワシャワシャ
友紀「やめてー!」
紗枝「あらまあ、じゃれてはりますなぁ」
幸子「…危ないのでコーヒーカップは片して行きましょうか」
紗枝「レッスン前やのに元気やわ」
幸子「全くです。ほどほどにしてほしいところではありますね。…時間的にも」
紗枝「せやなぁ…置いてきまひょか」
幸子「……その方が良いかもしれませんね」
紗枝「ほなな、友紀はん。うちかて、ちゃあんと呼びに来たんやから、恨みっこなしやで~」
飛鳥「フ、フフッ…こら、避けるな!」
友紀「動き速っ!わぁー!」
おわり。エクステの付け根ってどうなってるんだろう、というところから
【おまけの後日】
P「…おろ。ユッキ、その髪」
友紀「あっ、プロデューサー!」
P「珍しいな、ポニーテールなんて」
友紀「これ?さっき飛鳥ちゃんにやってもらったんだ!」
飛鳥『これはこの間のお返し…そう、報復さ。キミはもう少し、髪のセットにかかる労力を知るべきだ。さあ、まずは簡単なところから…』
友紀「って!」
P「…報復?」
友紀「ここのところもね、くるくるーってやってもらったの!どうどう?」
P「…まぁ、なかなか似合ってるとは思うけど」
友紀「へへー」
P「(何がどう転べばヘアアレンジが報復になるんだろう)」
存在論がデレステ実装されたうれしさのあまり勢いで投下した模様。駄文失礼しました
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