【モバマス】ありす「夏休みの自由研究」 (32)
「………自由研究に…魔法……ですか?」
「はい、先日、大魔導師役のお仕事をいただいて興味がわきました」
「『ひかりの創り手』…ですね、拝見させてもらいましたよ。ありすちゃん、とっても素敵でした」
「ほ、ほんとうですか!…えへへ、文香さんにそう言ってもらえると嬉しいです」
「それで…私に聞きたい事とは何でしょう……あいにく…魔法使いの役はまだ……」
「説明不足でした、ごめんなさい」
「夏休みの自由研究のテーマとして『魔法』を考えています。
魔法とは何か、をメインにした壮大なテーマです」
「……はい」
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「資料として新作のゲームも買って、知識も付けた事もあって
役もしっかりやりきりました。だけどその知識が偏っているように思えたんです」
「…なるほど」
「ゲームから得られる知識は膨大です。最近はパズルゲームにはまっていて…
って、話がそれてしまいました」
「そこで、文香さんにお願いなのですが、おすすめの魔法が出てくる小説や
なにか本を教えてくれませんか?」
「…ありすちゃんは、本当に偉いですね。私は、今でも書物以外から、
別の側面から物事を考えようと、踏み出すことが出来ません…」
「え、ええ!知識は嘘を付きませんからね!」
「…ふふ。頼もしいですね」
「魔法…の出てくる小説といえば、やはり一番有名なのは
ハリーポッターシリーズでしょうか。…もしくは指輪物語、ナルニア国物語も有名ですね」
「映画化もされてますね、聞いたことがあります」
「そうですね…私は映画は見ないもので、原作との違いなどは分かりませんが…」
「私もどちらも見ていないので、教えてくれませんか?」
「ええ…覚えている限りでよければ」
「まず、私が気になっているのは魔法を使うために、
何か体力とは別の力が使われているかということです」
「体力とは……別の、何かですか?」
「はい。例えば私のプレーするゲームでは体力とは別に
マジックポイントと呼ばれるステータスが存在します」
「マジック…ポイント?」
「そのポイントを消費して魔法を使います。
ちなみに体力は敵から攻撃を受けると減り、
なくなると気絶や、死亡といった描写がなされます」
「…………」
「…文香さん?」
「良く分からないのですが………攻撃を受けると体力が減るのですか?」
「え?」
「い、いえ…あまり攻撃を受けるという経験が無いもので…
例えば誰かに強くぶつかったりして…体力が減るものなのでしょうか…」
「…そ、それは…」
「…………………」
「…………」
「………ごめんなさい、ありすちゃん」
「い、いえ!私の説明が良くないですね…!それは次回の宿題にします…!」
「…ま、まあその、体力やマジックポイントがあるという前提で話をします」
「…はい、回り道をさせてすみません……」
「大丈夫です!それで、ゲームではこのポイントを消費して魔法を使うわけですが、
このポイントは個人差があり、魔法使いを職業としているひとは多かったり、
そうではない、そうですね、空手家などは低く設定される傾向にあります」
「消費するポイントも一律ではありません、強力な魔法や
大規模な魔法は多くのポイントを消費しますし、一気に全部消費するというものまであります」
「一晩寝たり、回復アイテムを使うことで回復することは出来ますが、
このポイントが無くなれば当然、魔法が使えなくなります、無限には使えないということです」
「私が気になったのはまさにこの点で、さっき言った、
体力とは別に数値が設定されているということです」
「……はい」
「文香さんの読まれている小説では、魔法を使うにあたって
なにかを消費するという表現はありますか?」
「……私の記憶では、単純に体力を消費しているように見受けられます」
「なるほど…では、魔法を使う際に難しさといった表現はありますか?」
「…難しさ、ですか。例えばその……魔法の言葉、詠唱が困難、
などの表現はあると思います」
「詠唱、ですか…?」
「ええ、私はイメージのようなものと捉えながら読み進めていました……
頭の中でこういう魔法を使いたいというイメージを、言葉にする、といった感じでしょうか」
「頭の中のイメージですか…!なるほど…」
「登場人物が…パニック状態では上手く魔法を扱えないという描写もあります…
そのような描写から先ほどの発言をしましたが……」
「参考になります、先ほどお話いただいた本は早速読んでみます!」
「ぜひ、読んでみて下さい…書物の世界も、イメージの世界ですから」
「イメージの、世界?」
「…はい。行った事のない場所……経験したことの無い冒険……知っているはずのない過去……
書物から得られる多くは……私たち読者、自分自身だけの、イメージの世界です」
「…このイメージを、具体化することが出来れば……
それはあるいは魔法と呼べるものなのかも知れません」
「そんなことが出来る人がいますか?」
「ふふ……意外と、私たちの身近に居て、
私たちは、魔法をかけられたことに気づいていないのかもしれません」
「この事務所には色んな方がいらっしゃいますから…
多くの意見を聞いてみてはいかがでしょうか。例えば…」
「例えば…?」
「こんにちわ!ありすちゃん!
美少女サイキックアイドル、このエスパーユッコに何かご用でしょうか!」
「……」
「文香さんから助けてあげてほしいと連絡を受けました!
私で出来ることがあればなんなりと!」
「…心強いです」
「何か無くしたものがあるとか、誰かを探してるとか…
今日の私のサイキックパワーは絶好調ですよ!」
「あの…まさにその超能力に関して聞きたいのですが、
実は魔法をテーマに夏休みの自由研究を考えています」
「おお…自由研究…!?ちゃんと取り組もうというのですね!えらい!」
「が、学生の本文ですから…!」
「しかし困りましたね…
勉強となるとサイキックを使ってもお手伝いできるかどうか…むむむ…」
「いえ、大丈夫です。
裕子さんには超能力に関していくつか質問をさせてもらいたいです」
「なるほど!それならお安いご用です!」
「ですが!魔法と超能力は似て非なるもの!全然違うのです!」
「…そうなんですか」
「ありすちゃんは、似て似てるものと思っていましたか?」
「似て似てる…という言葉は始めて聞きましたが、似ているものと思っていました」
「むむむっ!それはまずいですね、私のサイキック・伝達が上手くいっていませんね…」
「……少し話を進めたいのですが…
裕子さんは超能力を使うとき、どんなことを考えながら使っていますか?」
「どんなこと?とは!」
「…あの、例えば今も持っている、その…スプーンを曲げるときには、
どんなことを考えながら曲げているかという意味で考えていただけますか」
「ああ!イメージですね!」
「イメージ…!裕子さんもイメージなんですね!」
「そうですね!私は強力なサイキッカーなので曲がることは決まりきっているのですが、
やはり調子というものがあります。なので、いつも成功のイメージを持って念を送ります!」
「成功のイメージ!なるほど…」
「ええ!何事も、サイキックも、どうなりたいかという成功のイメージを持つことは
とても大切なことです!!」
「勉強になります…成功のイメージがサイキックに影響する…うん。
あの!続けてお話いいですか?」
「なんでもどうぞ!」
「えっと、裕子さんは普段、超能力を使用すると、もちろん疲れると思うのですが、
それは体力のようなものなのでしょうか?」
「体力…?そうですね、超能力を使用すると確かに疲れますが、
体力とはまた違う何かのような気がしますね!」
「また違う何か…!それは一体何でしょうか…?」
「…うーん、分かりませんね!今必死に考えてみましたが!」
「…へ?」
「私は、いわゆる天才肌なのででしょう、ついつい感覚で捉えてしまって、
なかなか言葉にすることができませんね!」
「そう…ですか」
「お力になれず、申し訳ないです…ですが!
同じ天才の気配をサイキックサーチで察知しました!」
「は、はあ…」
「中庭に行ってみてください!さっき見かけたのでまだ居るはずです!たぶん!」
「ふぅーん…魔法ねえ」
「…志希さん、バカにしようとしてますね?」
「にゃはは~なにそれーあたし、誰かをバカにしたことなんてないよ~」
「そう…ですか、それは失礼しました」
「ワリとちゃんと面白いテーマだと思うよ~」
「ほ、本当ですか…!」
「うん、たとえばねーそもそも魔法には匂いはあるのかにゃ?ってだけで
ケッコー大きな問答だと思うんだよね~」
「おお…!まさにそのような観点を求めていました…!」
「おぉ~キミ見込みあるねえー」
「え、本当ですか?えへへ…
あ、それで、匂いがある、無いというのはどのように大きな問答なのでしょうか?」
「うぅ~ん?それを話すと、志希ちゃんセンセー止まらないからなあ~、
簡単にいうとねー匂いってのは粒、空気中の粒子なわけ」
「粒…ですか」
「そー、粒、物体ってことは、重さがあるってわけ。
で、この話に踏み込んじゃうとホントに話が宇宙!ブラックホール!未来世界!!
にぴゅーってトンでっちゃうから、このへんにしてー」
「粒の話からブラックホールの話になるんですか?!」
「そ、科学の世界は偉大なの~
でさ、仮に魔法に匂いが無いとする、となると、重さも無い可能性が高い、
そうなると、そもそも魔法とは物質なのか、いやそうではない可能性が出てくる。
物質ではないなら、発生するメカニズムは?媒介するものは?その伝達は?
ざっと考えるだけでもキリが無いんだよね~」
「す、すごい…!志希さんすごいです!
ちょっと待ってください、タブレットに書いておきます!」
「目がキラキラしてる~かわいいねえーありすちゃん」
「…からかわないでください、私は真剣なんです」
「わお、怒られちゃった~」
「でも、とっても参考になりました、まだ提出まで時間はあるので
ゆっくりテーマを絞ってみようと思います」
「うん、良いココロガケだー先生も鼻が高いゾ♪
お?このまま鼻が高くなればどんどんハスハスできる範囲が広がるかも?」
「……何を言ってるんですか」
「えぇ~?だって嗅覚は鼻にしかないんだから、広くて大きくて高い方がいいじゃん♪」
「…志希さんはその……お美しいんですから、
そんな宇宙人みたいなこと言わないでください」
「お?おお~?今度は志希ちゃん褒められたー♪」
「わ、私は客観的な事実を述べたまでです」
「にゃっはー!それはゆっくりありすちゃんの匂いでもかぎながら
ききたいなー♪」
「そ、それは結構です…!私、匂いなんてありませんし」
「匂いが無い人なんていないよー、いたらそれこそ宇宙人~」
「あ、よーし、そうだ。じゃあ今度は宇宙人に話聞いてみよっか♪」
「魔法?と、に、匂い?一体何のことでしょう?」
「…匂いは忘れてください、志希さん、何でついてきたんですか?」
「にゃはは~だって楽しそうじゃーん!あたしも宇宙人と魔法の関係知りたーい!」
「ウサミンパワーというのは、魔法なのでしょうか」
「…へ?」
「何度か菜々さんのお仕事を見させていただいたことがあるのですが、
ウサミンパワーで、メルヘンチェンジ?ええっと…
ナナは、魔法の力を借りて、スク水ウサミンに変身したのです?…キャハ☆?
ですね、ええ、明確に魔法という言葉を使っています」
「そ、そんな…ナナのセリフを棒読みにしないでください!」
「すみません、短い時間では予習が足りず、ついついタブレットに頼ってしまいました」
「そ、それで!ウサミンパワーのことですね!」
「そうです。魔法なのでしょうか?」
「むむむ…これは難しい質問ですね。地球の皆さんにご理解いただけるか…」
「はいはーい!知りたい知りたーい!!んで嗅ぎたーい♪」
「…ちょっと志希さんは黙っていてください」
「理解できる範囲で結構です、教えてください」
「実は…ウサミンパワーは魔法ではないのです!」
「え!でもだって、魔法だって」
「ごめんなさい、ありすちゃん。魔法という発言は、
ウサミンパワーを身近に感じてもらうために使った、いわば例えなんです…!
ファンの方には内緒ですよ!キャハッ☆」
「そう…なんですか…魔法じゃないんですね…」
「わわっ!そんなに落ち込まないでください!」
「わーダメなんだぁ~ありすちゃんを悲しませちゃったー!
これはおしおきのクンカクンカいっちゃおー!」
「し、志希さん!私は別に悲しんでいませんから!」
「ぎゃー!!」
「…??んん~?匂いが、あんまりしないな~」
「わっかんないにゃ~ナナちゃんは宇宙人だから匂いがないのか、
永遠のじぇいけーだから匂いがないのかーんっふっふー♪」
「そ、そうですよ!ナナは、ウサミン星人で永遠の17歳ですから!
ふ、ふぅ…ま、まだ匂いが出るような年齢では…!」
「あ、あのね、ありすちゃん!ウサミンパワーは確かに魔法ではないけども、
ナナは魔法みたいなものって思ってるんですよ!」
「え?どういう…意味ですか?」
「さっき、地球の皆さんにご理解いただけるか分からないと言いましたが、
ウサミンパワーは言わば、ファンの皆様からの力なんです」
「ナナ一人では、とてもとても広い地球ではアイドル活動なんて出来ないですが、
ファンの皆様の応援や声援がほんっっっとに、力になって、
それがウサミンパワーとして、ナナをアイドルにしてくれるんです」
「……それは、私もとても感じます」
「ホントですか!それは良かった~」
「あら、珍しいメンバーですね。何の集まりでしょう?」
「楓さん、お疲れ様です。もうお帰りですか?」
「ええ、これから川島さんと美優さんと魔法の液体をいただきに♪」
「…!魔法ですか!」
「ええ、魔法の液体。誰でも元気になれて、誰とでも仲良くなれて、
誰もがおしゃべりになっちゃう素敵な魔法です♪」
「す、すごい!まさしく魔法ですね!」
「……あの、ありすちゃん、この魔法はナナは分かりますが、その…違います」
「え?違うんですか?私はてっきりゲームに出てくるエーテルのようなものだと」
「エーテル結合してる物質はアルコールの構造異性体っていえなくもないけど、
性質は全然違うからにゃーって、そっちのエーテルじゃないよね~」
「何だか難しそうな話ですね、ありすちゃん、何かお悩み?」
「魔法をテーマに自由研究を考えているんです」
「すごい。自由研究が魔法だなんて、まぁ、ほんと?」
「……はい、本当です」
「うふふ、きっと良い自由研究になるんでしょうね」
「え?なんで分かるんですか?」
「だって、ありすちゃんのこれまでの活動を振り返ったり、
そして、これからどんな魔法をかけたいか、という自由研究なのでしょう?」
「…??」
「私たちアイドルはみんな、
プロデューサーさんに素敵な魔法をかけてもらって、今があるわけですよね」
「……!」
「そして、その魔法は、私たちだけのものじゃない…
私たちがファンの皆さんに、今度は素敵な魔法をかけてあげられるようにならなくっちゃ♪」
「楓さん行っちゃいましたねー」
「にゃはは~うまいことまとめられちゃったねー
でもさすが。あの人はホント良くわかんないな…」
「……」
「ありゃりゃ?ありすちゃーん、どったのー?」
「……分かったような気がします」
「にゃ?」
「…私、最初はアイドルになりたかったわけではありません」
「でも…今はアイドル活動、楽しいって心から思います」
「きっと、気づかないうちに素敵な魔法をかけてもらっていたんだと思います」
「そして…これからはファンの皆さんの心を動かしたい、
何かを伝えたい。そう感じています」
「それが、魔法。私がかけることの出来る魔法なのだとしたら…」
「あの!志希さん、菜々さん、お付き合いありがとうございました」
「にゃはは~あたしは何もしてないけどねー」
「…菜々も何もしてませんね、いやホントに」
「いえ、そんなことありません。
志希さん、お話、相談聞いていただいて感謝しています。
菜々さん、私にはウサミンパワーはありませんが…ファンの皆さんの
応援や声援がアイドルにしてくれるという言葉、見習います」
「ありすちゃん…」
「今の私があるのは……お二人、皆さんのおかげでもありますから」
「…んっふっふ~じゃあーーー御礼にクンカクンカさせてー!」
「ちょ、ちょっと志希さん…!
はっ!そうだ!文香さんたちにお礼を言いに行かないと。
菜々さん、あとお願いします、では!」
「え?ちょっと、ありすちゃーん!な、ナナには荷が…!
あああ…行っちゃった…」
「…よ~し、それじゃ、遠慮なくー」
「ひぃ…!お、お手やわからにぃぃぃ」
「なーんて」
「…うへ?」
「ありすちゃん、あれはー…プロデューサーのとこにいったね」
「え、そうなんですか?」
「だと思うよ~」
「魔法のお礼…ですか、
確かにプロデューサーさんにはもっと感謝しなきゃだめですね」
「行ったはいいけど、
真っ赤っ赤にしてなかなか本題言えないんだろうな~」
「あはは、想像できますね!」
「いやーかわいいよねー、
あたしもあのくらいの年齢の頃は、ちゃんと物事に素直だったのかなあって」
「…大丈夫ですよ」
「にゃ?」
「私は、あまり過去を振り返らないようにしています。
過去は……確かに大事です。自分を形作ってきたものだから」
「それが良いものだったか悪かったか、自分がどんな子だったか、
きっと大切なそれらがあって、私たちの今があります」
「でも、昔どうだかったかなんて、これから魔法をかけていかなきゃいけない、
前を向かないといけない私たちにはあまり関係のないことです」
「……」
「だから今、ありすちゃんに、ちゃんと付き合ってあげて、
先輩として正しく接してあげられる志希さんは素敵ですよ。
それもきっと、魔法のひとつなんだとナナは思いますよ」
「…ありがと!…にゃは!!」
「ななななな!なんですか!いきなり抱きつかないでください!!」
「にゃっはっはー!良いこと言ってる時のウサミン星人はどんな匂いっかなあ~♪」
「ちょ、ちょっとー!志希さん!誰かー!!」
fin
駆け足ですが、以上です。
途中sage忘れしたりすみませんでした…
モバマスの事務所の絆、仲の良さはどんどん強くなっていってますが
それが少しでも伝われば幸いです。
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