上司「俺くんさぁ、こんな簡単なことでいちいち質問に来るのやめてくれない?もう大人なんだからちょっとは自分で考えなよ」
俺「馬鹿な……俺はつい昨日、分からないことがあればすぐに質問に来いとあなたから説教を受けたばかりなんだぞ。言ってることが矛盾して……」
上司「え、なに俺くん。もしかして上司のいうことにいちゃもんつける気? 怖いもの知らずだなぁ」
俺「っ……!」
俺(この圧力っ……これが権力行使【パワーハラスメント】かっ……!)
上司「くくく」
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上司「こう何度も何度も来られると、困っちゃうんだよねぇ。こっちも仕事があるし」
俺「いえ、俺からあなたに教えを請いにいくのは今回が初めてで……」
上司「そうだよね。俺くんってば、分からないことがあっても勝手に作業進めちゃうよね。何度も注意してるじゃん。すぐに聞けば修正も楽なのに、なんで勝手にやっちゃうのかなぁ……昨日も聞いたけどなんで??」
俺(し、信じられないっ。二重背反基準【ダブルバインド】を高速連続詠唱【クイックマルチアリア】しただと……っ!?)
上司「くくく」
上司「とにかく俺くんに構ってる暇はないからさあ。今回は自分で考えてやってよ」
俺「だが俺はまだこの作業についてはやり方すら教えてもらっていない……。これじゃ考えるも何も……」
上司「はぁぁぁあ(深いため息)馬鹿だな、他のやつにきけよ。同僚1なら詳しいぞ」
俺「わ、分かった……」
俺「というわけで教えてくれ、同僚1」
同僚1「い、いや、それが……」
俺「ん?」
同僚1「さっき上司さんの携帯からこれが送られてきて……」
俺「? なになに……」
上司『俺のやつに何をきかれても何も教えるなよ^ ^』
俺「三重背反基準【トリプルバインド】だとっっ!? !?」
俺(あ、ありえない!! こんな上級呪文を、社会人が、会社で、人目も憚らずに連発するなんてっっ……!)
上司「くくく」
俺「これは一体どういうことだっ!!」
上司「おいおい、どうしたそんなに慌てて。上司になんて口の利き方をするんだ」
俺「とぼけたって無駄だ! こっちには証拠があるんだ! 権力行使【パワーハラスメント】の証拠がな!」
上司「証拠?同僚1に送ったあれのことか?」
俺「そうだ、口のききかたに気をつけるのはあんたの方だ!あれがあればあんたを懲戒処分【ジ・エンド】にすることだってできるんだぞ!」
上司「……」
俺「どうした、何か言ったらどうだ!!」
上司「くくく」
俺「な、何がおかしい!?」
上司「俺くんは一つ勘違いしてるみたいだけどさぁ……あれは君を思っての行動だよ」
俺「なん……だと……?」
上司「うん、やっぱり人にきくより自分で考えてやってもらった方がいいかなって。習うより慣れろっていうだろ。俺くんには酷だけどさ。心を鬼して、同僚1には俺くんには何も教えるなって指示したんだ」
俺「め、めちゃくちゃいうにもほどがっ……!」
上司「ま、教育の一環【パートオブトレイニング】ってやつだ」
俺(ここに来て自己正当化【イービルイズジャスティス】しただとっ!? 一体……この人は一体どこまで……っっ!)
上司「くくく」
同僚1「い、いい加減にしてください!」
上司「……ん?」
同僚1「前々からおもっていましたが、あなたの部下への接し方は目に余るものがあります。特に今回ばかりはあまりにも酷すぎる!」
同僚2「そうだそうだ!」
同僚3「どうみてもパワハラだ!」
同僚4「社長にいいつけるぞ!」
俺「お、お前たち……っ!」
上司「……」
俺「おいおいどうした黙りこくって。何か言ったらどうだ糞上司」
上司「……おいお前ら」
同僚1「今更謝ったって無駄ですよ」
同僚2「そうだそうだ!」
同僚3「土下座しろ!」
同僚4「労基にいいつけるぞ!」
上司「社内で上司に歯向かって生き残れると思ってんの?」
同僚1「ごめんなさい!」
同僚2「すみませんでした!」
同僚3「土下座します!」
同僚4「社長に言いつけないでください!」
俺「お、お前たちっ……!」
上司「くくく」
俺「ふ、ふざけるなお前たち! 単一工程で編み出されただけの、背反すらしていないただの命令【シングルバインド】で怖気付くんじゃあない!」
上司「それが普通の反応だよ、俺くん」
俺「なにっ」
上司「ふつう部下というのは上司の顔色を伺うものなんだ。そうしなければ生き残れない。上司が働けといえば働き、おもちゃになれといえばおもちゃになる……それが部下だ」
俺「そんなのむちゃくちゃだ!」
上司「そう、にもかかわらず君はこうやって逐一元気よく喚いてくれた。だからちょっといじめすぎてしまったんだ」
俺「……? 言い訳のつもりか?」
上司「くくく、まだ自分の立場が分からないのかい?」
俺「何を言っている!」
上司「例え君に非がなくとも、君にはもう"上司にたてつき和を乱す人間"というレッテルがペッタリ張り付いているんだよ。もう出世出来ないねぇ」
俺「なっ……!」
俺(し、しまった! 俺としたことが、上司の振る舞いがあまりにも酷すぎて、偏見と不公平な観点による評価【ラベリングエヴァリュエィション】の存在を忘れていた……!)
上司「くくく」
俺「そ、それをいうならあんただって……!」
上司「くくく、ざぁんねん。俺の出世コースはとおの昔に閉ざされているんだよ」
俺「なにっ……!?」
上司「部下いびりに傾倒しちゃう僕みたいやつが出世できるわけないだろぉ」
上司「こっちの界ようこそ、俺くん」
俺「……う、嘘だ。うそ……う、ううう、うわぁぁぁああああああっっ!!」
上司「くくく」
「そこまでだ」
上司「あ、あなたは……」
俺「しゃ、社長!」
社長「上司くん」
上司「は、はい」
社長「君のやっていることはあきらかに権力行使【パワーハラスメント】だ。もうここにいてもらうわけにはいかない」
上司「そ、そんな! だって今までずっとっ……!」
社長「限度というものがある」
上司「で、でも……!」
社長「俺くん、君は何も心配しないでいいよ。君は被害者だからね。この件が君の評価に響くことなんてありえない」
俺「ほ、ほんとうですか!?」
社長「当たり前だ。私からも周りに言い含めておこう」
俺「あ、ありがとうございます!」
上司「う、うううううっ……!」
俺「くくく」
数ヶ月後
上司2「俺くんは減給ね」
俺「え?」
上司2「他の人帰るけど残業よろしく」
俺「え???」
上司「仕事量が多い? 君がとろいだけでしょ。飲み会に呼ばれなかった? ごめんごめん忘れてた。でも君みんなと合わせて仲良くするとか苦手だから別にいいでしょ?w」
俺「ま、まさか……」
社長「くくく」
俺「二重背反基準【ダブルバインド】だとっ……!?」
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