大和「もし許されるなら」2 (242)


これは

大和「もし許されるなら」
大和「もし許されるなら」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492253549/)

の続きとなっています
注意事項等もそちらを参照してください
・後半から艦これらしさ皆無でグダグダ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492267924


最終決戦の翌日

提督「ふぅ、まあこんなとこで一先ずかな」

妖精「まぁ、ホントに応急処置みたいなもんだね」

大和「しばらく鎮守府は機能しそうにありませんね」

吹雪「そもそも私達って出撃する意味ありますかね?」

北上「もう深海棲艦いないしねー」

文月「暇だねー」

大鳳「終わってみると少し喪失感があります」

利根「うむ、今か今かと待ち侘びたものじゃが、いざ終わったら呆気ないものじゃな」

提督「とりあえず、親父に呼び出されてるんだ。お前ら今から大本営に戻るぜ」

艦娘「はっ!」ビシッ

妖精「んじゃ留守番してるね」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・」ポカーン

艦娘「・・・・・・」ポカーン

提督「なぁ、親父」

元帥「何じゃ?」

提督「どうしたらこんな風になるの? それにそこいらにある敵の亡骸だけどさぁ」

北上「所々融解した黒焦げの塊に、蜂の巣状態の敵」

吹雪「四肢が千切れた上に首から上が破裂したような敵もいますよ・・・・・・」

利根「あれは滅多打ちにされて最早原型を留めておらんのぅ」

元帥「うむ、全面衝突した結果じゃよ」

提督「敷地内に無傷な建物見当たらないんだけど!?」


長門「そう言うな。何はともあれ勝利したのだ」

金剛「カイも無事で良かったデース」

大和(つい昨日まで重傷者だったんですけど・・・・・・)

提督「皆も無事で良かったよ」

元帥「時に大和ちゃんや」

大和「はい」

元帥「息子を守ってくれて本当にありがとう」

大和「! はい!」

陸奥「そういえば櫂、副長さんの事なんだけど・・・・・・」

提督「え!? まさか兄ぃが!?」ギョッ

陸奥「えぇ・・・・・・港湾棲姫との戦いで・・・・・・壮絶な死闘の末・・・・・・」ツーッ

艦娘「っ!?」

提督「う、嘘だろ・・・・・・あ、兄ぃ・・・・・・」ヘナヘナ

大和「提督・・・・・・」

提督「あ、兄ぃぃぃぃぃぃッッッ!!」


副長「やかましいなぁ、何やな」ヒョコ

提督「っ!?」ギョッ

艦娘「っ!?」ギョッ

提督「え? え!? 兄ぃ!? 何で!? まさか幽霊!?」

副長「勝手に人殺すなボケ!!」ゲシッ

提督「痛てぇ!?」

副長「陸奥! 何紛らわしい事言うとんねん、櫂が可愛そうやろが!!」

陸奥「ごめんなさーい」テヘッ

北上「し、心臓に悪いよ、びっくりしたじゃん」

吹雪「本当ですよ、死んじゃったのかと思ったじゃないですか!」

提督「ん? でも陸奥姉、じゃあ兄ぃに何があったんだ?」

陸奥「それは・・・・・・ねぇ?」チラッ

副長「まぁ、実際見てもろた方がええやろな。おい、こっち来ぃや」コイコイ

「・・・・・・」スタスタ

提督「!?」

大和「な!?」

吹雪「えぇ!?」

北上「へ!?」

大鳳「え!?」

文月「ほわぁ」

利根「何と!?」


港湾棲姫「ア、アノ・・・・・・コ、港湾棲姫デス。ヨロシクオ願イシマス・・・・・・」スッ

提督「これは一体どういう事だ?」

大和「な、何で深海棲艦が」

提督「ん? 腕組んでる?」

北上「え? まさか・・・・・・」

副長「うん。何か知らんけど、惚れられた」

提督・艦娘「はぁ!?」ギョッ

港湾棲姫「アナタ、襟ガ曲ガッテルワ」テキパキ

副長「ん? あぁマジか、おおきに」

港湾棲姫「・・・・・・////」スリスリ

北上「ま、まあ愛は人それぞれだしね」

吹雪「あれもう新婚夫婦じゃないですか」

大鳳「提督と大和さんに加えて」

利根「こっちまでこんな事になっておるとは」

文月「港湾ちゃん、よろしくー」ニパァ

港湾棲姫「ヨ、ヨロシク」ニコッ

提督「おめでとう兄ぃ、やっと彼女いない歴=年齢に終止符打てたな」ホロリ

副長「やかましいわ」

元帥「まぁとにかく。大本営は全壊したが、儂らにはまだやるべき事がある。とりあえずはこの壊れた建物を直したいんじゃが、如何せん人手が足りんのでな」

提督「じゃあ俺ら帰りますんで」クルッ

団長「逃がさんぞ櫂」ガシッ

提督「げっ、叔父貴!?」

団長「お前達も手伝え。憲兵師団長命令だ」ニヤリ

提督「しょ、職権乱用だぁぁ!!」ジタバタ

団長「いいから手伝え」ズルズル

ーー
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ーーーーーー


元帥「ふむ、まぁこんなところじゃな」

提督「や、やっと終わった・・・・・・」

榛名「お疲れ様です」

大和「榛名さん達も。ずっと働き詰めじゃないですか」

榛名「榛名達は大丈夫です。これしきの事は慣れっこですから」

提督「そういや親父」

元帥「何じゃ?」

提督「深海棲艦が壊滅したから、大和達は解体なのか?」

元帥「まぁそうなるな。じゃが、その前に幾つか任務をこなしてもらうぞい。しばらく期間をやるから、皆の進路を決めさせてやる事じゃ」

提督「ありがとう。で、任務って?」

元帥「うむ、明日になれば遠方に出向いておったあやつが帰って来るからのぅ。明日詳細を話そう」

提督「何だ、あいつ帰ってくるのか」

元帥「かれこれ半年は会っておらんじゃろう」

提督「まぁな。じゃ、俺らは休ませてもらうぜ」スタスタ

ーー
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ーーーーーー


翌日

提督「さてと、久しぶりだなぁあいつに会うのも」

吹雪「? 誰か来るんですか?」

北上「こんな朝早くに誰が来んのさ」

提督「大和以外は面識ある奴だ」

大和「お知り合いですか?」

提督「同期にして俺の数少ない友人だ。腐れ縁みたいなもんだよ」



??「腐れ縁とは酷いな櫂」




提督「! 帰ったかこの野郎!」

??「今しがたの到着だ」

バシッ

提督「久しぶりの本土の土はどうだ、親友」握手

??「いいもんだ、やっぱり生まれ故郷の土地は安心するぜ」握手

吹雪「! 霊峰さん」

北上「あ、クソマゾ提督」

??「再会早々酷くね!?」ガビーン

大和「?」

友提督「初めての人もいるしな。自己紹介させてくれ。俺は『霊峰 学(れいほう まなぶ)』。櫂とはガキの頃からの付き合いだ」

提督「こいつがこの前言った「ドイツ艦の艦隊」提督だ」

大和「! あぁ、なるほど」

友提督「! アンタが大和だな? 櫂から話は聞いてる(なるほど、確かにヤマと瓜二つだ)」

大和「初めまして。大和です」

友提督「あいつは知っての通りいい奴だ。どうか一緒にいてやってくれ」

大和「はい。分かっています」


??「ちょっと、Admiral! 私達を置いていくなんていい度胸ね!」スタスタ

友提督「あ、悪い」

提督「お、ビスマルクか。皆も久しぶり」

ビスマルク「久しぶりね、櫂さん」

プリンツ「櫂さーん、Guten Morgen!」ノシ

グラーフ「本土の土も久々だ・・・・・・」スタスタ

レーベ「遠方への出撃は疲れたよ」

マックス「これでしばらく休みがとれる」

ロー「やっとのんびりできるよー」

提督「レーベ達には悪ぃけど、これから俺達また任務だぜ」

レーベ「・・・・・・え?」

マックス「」

ロー「う・・・・・・嘘だ」

友提督「まぁな。悪いが休みはお預けだ」

プリンツ「えぇえ!?」ガビーン

レーベ「Admiral、まさか知ってて僕達に教えなかったの!?」

友提督「だって教えたらお前ら嫌がって仕事しなくなるじゃん」

マックス「この世界には・・・・・・神はいないのか・・・・・・」

グラーフ「神は・・・・・・死んだ・・・・・・」

提督「ニーチェを入れるなニーチェを」


ビスマルク「Admiral! 帰ったらデートしてくれるって言ったじゃない! あれは嘘なの!? 」

友提督「いやすまん、仕事中暇見つけて行こうか、な?」

ビスマルク「Ich wei? nicht mehr wie G?lle, Sie L?gner ist!(あなたのような嘘つきは、もう知らないわ!)」

友提督「Nun sage ich, dass Stimmung wieder.(まぁそう言うなって、機嫌直してくれよ)」ダキッ スリスリ

ビスマルク「!? Gefesselt! Wissen dieser gro?en L?gner Idiot Admiral, Schande!(離せ! この大嘘つきのバカ提督、恥を知りなさい!)////」カァァ

提督「何で帰還早々、痴話喧嘩見せつけられてんだ俺達」

吹雪「何言っているのかさっぱり分かんないです」

提督「うん、まぁ・・・・・・」

北上「提督ドイツ語分かるの?」

提督「寧ろこれを聞くためにプリンツに教わった。Prinz, vielen Dank. Bismarck und er ist auch ein g?nstiger(プリンツ、ありがとう。あいつとビスマルクは、相も変わらずだな)」

プリンツ「Ja! Sie sind perfekte Paar!(はい! 二人はお似合い夫婦です!)」

提督「おいマナブ、親父に報告して来いよ」

友提督「あ、すっかり忘れてた」

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元帥「さて。お主達二人には海外諸国の様子を調査してきてほしいのじゃ」

友提督「つまり、威力偵察って事ですか?」

提督「何で喧嘩売りに行くんだよ、様子見てくるだけだ」

元帥「うむ。深海棲艦が完全にいなくなったのか、それの確認も兼ねて遠方に出向いてほしい。そして向こうの国の軍が今後どのように動くかを確認してきてほしいのじゃ」

友提督「深海棲艦という共通の敵がいなくなった以上、外国が攻めてくる可能性も否定しきれませんしね」


提督「向こうにその意思があるかどうか見てこい・・・・・・と?」

元帥「うむ、深海棲艦出現以前の日本は様々な国と友好関係を築いておった。今更対立する事は避けねばならん」

提督「俺達は何処の国に行けばいいんだ?」

元帥「その事じゃが、他の者にもこの任務は遂行してもらうため幾つかのエリアに分けさせてもらった。あくまでもこれは深海棲艦がいなくなったかどうかの調査が目的じゃからのぅ」

元帥「霊峰君には欧州を。櫂にはアメリカを担当してもらいたい。欧州は更に幾つかのグループに分かれてもらう」

友提督「はっ!」ビシッ

提督「了解」

ーー
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提督「アメリカねぇ。先ずはロッキー山脈行って、フロリダの湿地帯探索した後ナイアガラを通過してカナダに渡ってアルバータ州の恐竜公園行って、後は・・・・・・」スタスタ

友提督「おいおい、観光スポット巡るんじゃねぇぞ?」ペラッ

提督「ドイツ語のガイドブックでデートスポット探してる奴に言われたくねぇよ」

友提督「何言ってんだ、ビスマルクの故郷だぜ!? もうラブラブデートしろって天啓っしょこれ!」

提督「そっち行ったら本場のビスマルクやもっと美人いるかもな」

友提督「いーや、俺はあの娘一択だ! 他のビスマルクなんざ眼中に無いね!」

提督(しまった、地雷踏んだかなこれ?)

友提督「そもそもあいつと来たらさぁ、もぉ堪んねぇよ! だってさ、この前の土曜日の夜なんか・・・・・・」ベラベラ

ーー
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ーーーーーー


提督「あー、ったく! あの後延々とあいつのビスマルク愛と惚気話聞かされて砂糖吐きそうだったぜ」

大和「ふふふ、大変でしたね」ナデナデ

提督「なぁ大和?」

大和「はい?」ナデナデ

提督「何で俺、お前に膝枕されてんだ?」

大和「大和がしたかったからです////」

提督「あっそう////」

大和「どうですか、大和の膝枕」

提督「・・・・・・デス////」ボソッ

大和「聞こえませんよ~?」ナデナデ

提督「柔らかくてスベスベしてて・・・・・・気持ちいい・・・・・・です・・・・・・////」

大和「ふふ、ありがとうございます」ニコニコ

提督「何にせよ明日は朝早くにアメリカに向かうんだ。もう休んでおけ」

大和「海外は初めてで緊張しますね」

提督「吹雪達はもう寝たか?」

大和「はい。もう五人とも寝ています。明日のアメリカが楽しみなのでしょうね」

提督「お前もだ、早く寝ろ」

大和「提督はどうなさるおつもりですか?」

提督「マナブと一緒にこの後会議だ。視察中の予定を組まなきゃいけねぇからな」スッ


大和「分かりました」

提督「おやすみ」

大和「おやすみなさい。! あ、そうだ提督」

提督「ん?」クルッ

大和「ん・・・・・・」チュッ

提督「っ!?////」

大和「おやすみのキスです////」スタスタ

提督「・・・・・・////」ボーッ

提督「・・・・・・何か積極的になったな、あいつ」

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翌日

吹雪「あーっ、気持ちい~!!」ノビー

北上「やっぱり海の上はいいねー」

大鳳「艦娘ですもんね!」

文月「あー、イルカさんだ~」キャッキャッ

利根「おお、たくさんいるのぅ」

大和「あっちにはクジラもいます!」

ザザザザザザザザザ・・・・・・

提督「ったく、何も太平洋艤装で横断する事ねぇのに。俺だけこんなでっかい船乗って申しわけねぇ気持ちになるじゃん」

大本営妖精「皆最後に艤装で海を走りたいんですよ」

提督「アンタ達もごめんな、この船の操縦とか」

大本営妖精「いえ。皆さんの仕事をサポートするのが私達妖精の役目です」

提督「・・・・・・」ボーッ

大本営妖精「・・・・・・あの、櫂さん」

提督「ん?」

大本営妖精「先輩はお元気ですか?」

提督「元気だよ。今頃鎮守府の医務室で薬品棚の整理でもしてんじゃね?」

大本営妖精「そうですか。なら良かったです」








・・・・・・ズキッ






提督「・・・・・・っ!?」フラッ

大本営妖精「っ!? 櫂さん!?」

提督「あぁ悪ぃ、船酔いしちまったみてぇだ・・・・・・」

大本営妖精「それならいいんですが。水平線の方を眺めてください、楽になりますよ」

提督「ありがとう」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

数日後

提督「お、見えてきた。北アメリカ大陸」

大本営妖精「道中、深海棲艦は一体も遭遇しませんでしたね。もうこれは確定事項でいいかと」

提督「にしても。飛行機なら一日ぐらいで着くってのに数日かかるとは、ここが船の限界かぁ」

大本営妖精「これでも一般の船よりはずっと速いですよ」

提督「結局皆バテて船に乗るしよ」チラッ

北上「いやぁ、もうたっぷり艤装は堪能したから」

吹雪「もう何時でも艦娘辞められます」

提督「シャキッとしろよ、今からアメリカ海軍に謁見するんだからな」

大和「はい」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

スタッ

提督「ん~っ、遂に上陸したぜ!!」

北上「ユー!!」

大鳳「エス!!」

文月「エー!!」

吹雪「何だかんだ司令官もはしゃいでるじゃないですか」アキレ

大和「まぁまぁ」

利根「ふむ。ここがアメリカか・・・・・・」キョロキョロ


??「I waited for you, Admiral Unabara」ビシッ

提督「! I thank for a meeting, Colonel」ビシッ

アメリカ大佐「Please come here, the general commander will wait for you」

提督「I understand. Thank you guidance. おいお前達、アメリカ軍総司令官がお待ちしてるそうだ、行くぞ」

艦娘「はっ!」ビシッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

コンコン・・・・・・

アメリカ大佐「General commander, I took people of the Japanese Navy.」

ガチャ・・・・・・

提督「Nice to meet you, General commander. I'm Unabara of the Japanese Navy.」ビシッ

艦娘「」ビシッ

??「I was waiting, Admiral Unabara. Welcome to the USA.」ビシッ

アメリカ総司令官「Anyway, hang it to the chair. Shall I serve even any drink?」

提督「Then, with your words. お前達も座らしてもらえ」ドサッ

大和「いえ、大丈夫ですから」

提督「分かった」

アメリカ総司令官「I heard everything from the Marshal of the Japanese Navy.」

提督「ーーーー」ベラベラ

アメリカ総司令官「ーーーー」ベラベラ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・というわけで、向こうにその気は無く寧ろこれまで以上の友好関係を築きたいとのこと、と」カタカタカタカタ

提督「深海棲艦は航行中確認せず、北太平洋においては完全消滅の方向で問題無し・・・・・・と」カタカタカタカタ

提督「送信っと」カチッ


提督「報告は終わったな。結構気さくな人で良かった」ノビー

大和「日本との対立など言語道断、日米の絆はより強固なものにすべきだ、とも仰っていましたね」

提督「あぁ、内容分かっていたのか?」

大和「朧気ではありますが」

提督「総司令官がいいレストランを紹介してくれたし、今夜は二人で飯でも行くか?」

大和「はい。喜んで」ニコッ

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吹雪「司令官と大和さんは二人っきりでお食事ですし、私達はどうしましょうか?」

北上「あたし達も尾行する?」

大鳳「探偵みたいでワクワクします!」

利根「辞めておいた方がいいと思うがの」

文月「あたしもそう思うな~」

吹雪「確かに、見知らぬ国で何かあったら司令官にも迷惑ですし」

北上「まぁ・・・・・・言われてみれば」

??「それでしたら、一緒にお食事などどうでしょうか?」

吹雪「! 貴女は?」

??「申し遅れました。航空母艦サラトガです」

大鳳「航空母艦? 私と同じね」

サラトガ「お話は総司令官から聞いております。海原さんの艦隊の皆様、滞在中はサラ達に何なりと」

吹雪「随分と流暢な日本語ですね、びっくりしました」

サラトガ「いずれはサラ達も日本に派遣され建造される予定でしたので、日本語の修得は必須でした」

サラトガ「しばしお待ちを。もう一人、同僚が同じ艦娘どうしの会議に行っておりますので」


バタンッッッ!!

??「ハーイ、アイオワ級戦艦アイオワよ!!」

艦娘「っ!?」ビクッ

サラトガ「もう、アイオワ。急に入ってきたらびっくりするでしょ?」

アイオワ「Oh,I'm sorry. 改めて! Meがアイオワよ!」

吹雪「よ、よろしくお願いします」

北上「パ、パツキンメリケンガール・・・・・・だ・・・・・・」ボーゼン

吹雪「北上さんが壊れた!?」

利根「何故じゃ!?」

文月「ほわぁ、大っきい~」

アイオワ「Oh! 何てpretty girl!」ダキッ

大鳳「ふ、文月ちゃん!?」

アイオワ「So cute!」ムギュー

文月「く、くるひぃよぉ・・・・・・」

大鳳「がはっ!?」ゴパッ

ドシャッ・・・・・・

吹雪「ちょっ、大鳳さん!?」ギョッ

北上「あぁ、精神的ダメージを・・・・・・」

サラトガ「ふふ、本当に賑やかで楽しい艦隊」ニコニコ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


数日後

提督「We were taken care of for a few days」握手

アメリカ総司令官「Please send the best regards to Marshal」握手

提督「アメリカ軍に敬礼!」ビシッ

艦娘「はっ!」ビシッ

アメリカ総司令官「Salute the Japanese Navy!」ビシッ

「「「Yes,Sir!!」」」ビシッ

アイオワ「See you again!」ノシ

サラトガ「Goodbye everyone」ノシ

提督「・・・・・・」

大和「提督?」

提督「いや、ずっとここに来てから思ってたんだけどな」

吹雪「司令官?」

大鳳「何をですか?」

利根「お主が思い悩むとは、余程の事なのじゃな」

文月「何何~?」

提督「実はな・・・・・・」

艦娘「っ・・・・・・」ゴクッ

提督「アメリカの艦娘が皆同じ顔ばっかに・・・・・・アイオワとサラトガ以外同じ顔に見えるんだ」

吹雪「そんな事!?」ズッコケ

提督「うん、これでずっと悩んでた」

北上「何とまぁどうでもいい・・・・・・」

吹雪「もう! 私達の心配を返してくださいよぉ!!」グルグル

ポカポカポカポカ・・・・・・

文月「やっちゃえ~」コチョコチョ

コチョコチョ、コチョコチョ・・・・・・・

提督「痛っ、痛い痛い殴んなよ吹雪、文月もくすぐるなよ、や、止め! 大和助けて」

大和「ふふふ」ニコニコ

大鳳「行け行け~二人とも~」

北上「何この締まらない終わり方・・・・・・」

利根「言ったら負けじゃよ」トホホ

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提督「・・・・・・って事だ。報告書にもあるように、アメリカも友好関係を続けるってよ」

元帥「うむ、不安も杞憂じゃったか。いや、本当に良かった」

提督「他のエリアはどうなんだ?」

元帥「大部分のエリアで、発見されてはおらん。確定で良かろう」

提督「良かった。じゃあ俺達は鎮守府に戻るから」クルッ

元帥「うむ。近い内に新たな任務を送るからのぅ」

スタスタスタ・・・・・・

ーー
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ーーーーーー

鎮守府

提督「帰ったぜー」

大和「お疲れ様でした、提督」

提督「いや、皆もお疲れさん。部屋でゆっくり休みな」

艦娘「はっ!」ビシッ

ヨーシ、サッソクオミヤゲアケヨウ!

オーッ!

提督「ふぅ。約二週間ぶりの執務室だ」スタスタ

ギシッ・・・・・・

提督「あ~、この椅子の感触・・・・・・やっぱり慣れた椅子が一番だ」ノビー

大和「少し年寄りくさいですよ、提督」モミモミ

提督「ん? あぁ、サンキュー大和」コキコキ

大和「凄く張ってますよ、酷い肩凝りです」モミモミ

提督「まぁな。デスクワークの宿命だよ」

大和「首の方も失礼しますね」モミモミ

提督「あぁあ、そこそこ・・・・・・」

大和「ふふふ、やっぱりお年寄りみたいです」モミモミ


大和「提督、上を向いてください。首が前に傾いてますよ」

提督「ん? 分かった」クイッ

ギュッ・・・・・・

提督「ん!?」ムニュ・・・・・・

大和「ふふふ、捕まえました////」ギュゥゥ

提督「お、おい大和・・・・・・!?////」ムニュムニュ

大和「どうですか、大和の胸部装甲は?」

提督「(こ、後頭部に・・・・・・)柔らかくて気持ちいい・・・・・・って何言わせんだよ!!////」

大和「ありがとうございます////」スッ

提督「!////」

チュッ・・・・・・

大和「提督の唇、甘くて大好きです////」

提督「日に日に積極的になっていくなぁ、お前////」

大和「大和をここまで虜にする提督が悪いんです////」チュッ

ハムハム・・・・・・アムアム・・・・・・

提督(っ、この! 甘噛みしてきやがって!////)








妖精「・・・・・・あのさぁ」






提督「どわぁっ!?」ビクッ

大和「きゃあっ!?」ビクッ

妖精「二人っきりでお熱いのは結構なんだけど、せめて時と場所を弁えなよ。変態社長とエロ秘書か」ヤレヤレ

提督「わ、悪ぃ・・・・・・////」

大和「あぅあぅ・・・・・・////」

妖精「大和も、提督が愛おしいのは分かるけどすぐに発情しない!」

大和「は、はつっ!?////」ボンッ

提督「いや、本当にごめんって。ほら、土産やるから」ガサゴソ

妖精「土産? そういやアンタらアメリカ行ってたんだってね」

提督「ほれ、ブランデーチョコ」スッ

妖精「おぉ、これがテレビに取り上げられたセレブ御用達の高級ブランデーチョコ!」キラキラ

提督「皆も食べるかと思って、三箱買ってきたぜ」

妖精「皆ー、お土産だよ~!」

ワイワイガヤガヤ・・・・・・

大和「はむっ・・・・・・ん~、おいひぃ~」モキュモキュ

提督「結構いけるな、アルコールいくつだ?」モグモグ

妖精「お菓子に入ってるアルコール度数なんてたかが知れてるよ」パクッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

数時間後

提督「・・・・・・」zzz

妖精「むにゃむにゃ・・・・・・」zzz

大和「皆さん寝ちゃいましたね。風邪ひいちゃいますよ」つ毛布

バサッ・・・・・・

提督「う・・・・・・ん・・・・・・」zzz


大和「大和も眠くなっちゃいました」フワァァ

大和「提督、失礼致します」バサッ

モゾモゾ・・・・・

大和(提督の腕枕・・・・・・大和は幸せです////)

提督「ん・・・・・・」モゾモゾ

大和(っ!? 提督の寝顔、やっぱりいつ見ても可愛いです////)キュン

ツーッ・・・・・・

大和「っ!?」ハッ

提督「・・・・・・」ツーッ

大和「・・・・・・涙・・・・・・」

大和(提督・・・・・・泣いているのですか?)

大和「提督・・・・・・」スッ

ペロッ・・・・・・

大和「っ、しょっぱい・・・・・・っ!?」

許して・・・・・・くれ・・・・・・

大和(これはあの時の・・・・・・リーダーの力で提督が纏っていた赤黒いオーラ・・・・・・)

大和(『憤怒の炎』の時と同じ・・・・・・まるで提督の思いが直接脳内に響くような感覚。これは一体・・・・・・)

提督「・・・・・・」ポロポロ

大和「提督・・・・・・大和はここに。お側におります」ギュッ

大和(詳しくは分かりませんが、今すべき事。それは提督の苦しみを和らげる事です)

大和「大丈夫・・・・・・大丈夫ですよ」ナデナデ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


さぁ、選べ! どちらかを切り捨てれば片方が助かる!

い、嫌だ!! 俺にはできねぇ!

ならばどちらも失うだけだ

ドォォォォォンッッッ

うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!

ーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー


提督「っ!?」ガバッ

提督「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」ガタガタ

提督「・・・・・・夢・・・・・・か」チラッ

大和「・・・・・・」zzz

妖精「んにゃ・・・・・・」zzz

提督「・・・・・・うっ!?」

フラフラ

妖精「・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「おぇえっ!!」

ビチャビチャ・・・・・・

提督「はぁ、はぁ、うぅ・・・・・・」ガクガク

提督「久しぶりに吐いたな、くそっ・・・・・・」
グイッ

提督「にしても、吐瀉物に血みてぇのが混じってんな。まだ傷は完治してねぇのか?」

提督「トイレ掃除は後でするとして、口だけ漱いでおくか」フラフラ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ガチャ・・・・・・

提督「うぅ、俺一人のトイレとはいえ時間かけすぎたか・・・・・・」スタスタ

大和「提督・・・・・・」

提督「! 大和か、どうした?」

大和「顔色が優れませんが、如何がなさいました?」オロオロ

提督「いや、何でもねぇよ」

大和「・・・・・・そうですか」キィィ

提督「まだ早いし、もう一眠りして来い」

大和「分かりました」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


数日後

大和「元帥から新たな任務が通達されました」スッ

提督「ん? 何させるのかねぇ」ウケトリ

吹雪「数日間暇でしたからね」

大鳳「吹雪さんずっと自主練してたじゃないですか」

利根「吾輩は結構充実しておったぞ」

北上「あたしも大満足だよー」

文月「あたしも~」

提督「利根はともかく北上と文月はどうせアニメばっか見てたんだろ」

北上「失敬な、ちゃんと漫画読んでゲームしてたよー!」

文月「映画二つ観たよー」

提督「大して変わんねぇよ! にしても」チラッ

提督「そんなインドア派を外に叩き出すのにぴったりな任務だな」

大和「任務の内容は何でしょうか?」

提督「兄ぃの仕事手伝うんだってよ。まぁ、艦娘(お前達)が解体された後の進路の参考になるし」

吹雪「副長さんって何をしてるんですか?」

提督「艦娘が社会で真面目に生活できているか調べてるのさ。お前達は私服で大丈夫だから、明日は好きな服着て仕事だ」

北上「えー、ジャージでいいー?」

提督「もうちょっとさぁ、年頃の女の子なんだからお洒落に気を使おうとか思わねぇのか?」

北上「お洒落に金を使うくらいなら漫画に使った方がいーじゃんかー」ブーッ

吹雪「もう、北上さんの服は私が決めますからね!」

文月「あたしもいーい~?」

吹雪「もちろん!」ニコッ

提督「まぁ明後日だし、今日明日で服買ってきてもいいんじゃねぇか? お前達皆で行ってこいよ」

利根「では、お言葉に甘えさせてもらうかの」

大鳳「じゃあ行ってきますね!」

提督「大和、お前も行ってこい」

大和「よろしいのですか?」

提督「あぁ」コクッ

吹雪「じゃあ司令官、留守番よろしくお願いしますね!」

提督「行ってら~」ノシ

ガチャ・・・・・・パタン


妖精「何で皆追い出したのさ」

提督「・・・・・・少し一人になりたかった」

妖精「あんたがそうしたがるのは大体何か嫌な事があった時だ」

提督「・・・・・・なぁ妖精さん」

妖精「ん?」

提督「あいつらにとって、俺は本当に必要なのか?」

妖精「藪から棒に何言い出すんだか。あんたが提督である以上、あの娘達には必要だと思うけどね」

提督「"提督である間は"・・・・・・だろ?」

提督「あいつらが解体された後社会に出て暮らす上で、提督(俺)の存在はあいつらにとっての枷でしかねぇよ」

戦争が終わり、解体されて普通の人間に戻った彼女達は社会で生活する。当然そこで気になる異性や尊敬する人と出会い、その人達と生きていくものだ。そうなった時、自分という存在が足を引っ張るのではないか

妖精「あー、言い方が悪かった。そういう意味じゃなくて」アタマグシグシ

提督「あ?」

妖精「あの六人にとってあんたはただの"提督"かい?」

妖精「吹雪と大鳳にとってはお兄ちゃん。北上と利根にとっては親友。文月にとってはお父さん。そして大和にとっては愛する人なんだよ?」

提督「は?」

妖精「"提督"なんてのは軍属中の肩書きでしかないよ。少なくともあの娘達にとって必要なのは"提督"じゃなくて、その本質である"海原 櫂"そのものなんだとあたしは思う」

提督「俺そのもの?」

妖精「あの娘達は多分あんたから離れようとなんてしないよ。元帥と違って少数な分皆とあんたとの繋がりや絆が強いから」

提督「自立させねぇとな」ニガワライ

妖精「まぁ無理だね、諦めな」ニヤ

妖精「難しい事言ったかもしれないけど、あたしは例え皆が解体されても提督から離れはしないと思うよ。例え自分達がいかず後家になっちゃうとしても」

提督「・・・・・・分かった。ありがとう」

妖精「気にしない気にしない」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


任務当日

提督「さぁお前達、待ちに待った社会見学の日だ」

北上「何で提督は軍服なのさー?」

提督「俺は仕事だからだ」

ガチャ

副長「おー、皆揃っとるな」

提督「兄ぃ、久しぶりって、何かゲッソリしてね?」

副長「うん、まぁ・・・・・・あの娘に毎晩搾られた結果これよ」

提督「マジかよ」ゾッ

北上「おー、早速惚気けてますねー」ニヤニヤ

吹雪「港湾さん、もう同居してるんですか?」

副長「まぁな、俺が監視すんのも兼ねるっちゅうたら皆同意してくれたし」

大鳳「監視という名義ですよね」

副長「まぁそういうこっちゃ」

大和「それで、仕事の方は?」

副長「あぁせや、ほんなら目的地だけ伝えるわ、ほれ」つ紙

提督「えーっと、『ショッピングモール』と、『動物園』と、『孤児院』?」

副長「何処も車で一時間かからへんし、ちょっとよるぐらいやから一日で終わるで」

文月「車で行くのー?」

副長「せやけどなぁ、一つ問題あんねん」

提督「問題?」


副長「俺の車六人乗りやから、二人余んねや。どないしたらえぇやろか」

提督「あぁ、じゃあ俺がバイク出すよ。後ろに大和乗せてくから」

大和「え!?////」

提督「ん? 嫌か?」

大和「い、いえとんでもない! 是非////」

副長「決まりやな。ほな早速出発しよか」

副長「後なぁ仕事やけど軍服はあかんで櫂。私服で行くで」

提督「え、私服でいいのかよ?」

ーー
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ーーーーーー

副長「おし、着いたで。最初の目的地、ショッピングモール」

吹雪「鎮守府(うち)の近所のショッピングモールよりずっと大きいですね」

提督「ん? 確かここって・・・・・・」

副長「せやで。ここは元大本営の艦娘、つまり櫂の姉貴達で営業しとるんや」

提督「やっぱりか」

吹雪「えぇ!? じゃあたった一つのショッピングモールじゃないですか!!」ギョッ

大和「元艦娘が営業している・・・・・・」

副長「とりあえずカフェで昼食とるか。えぇ店あんねや」ニヤニヤ

提督「メイドカフェか? 港湾の姉貴にチクるぜ?」

副長「ちゃうわ、アホ!」

ーー
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北上「何ここ?」キョトン

吹雪「"カフェ Thunderbolt"!?」

利根「何とも威厳の感じる名前じゃな」

大和「カフェらしさが微塵も感じられないのですが」

提督「お前達見た目で物を判断するもんじゃねぇぜ。見ろ大鳳を」チラッ

大鳳「あぁ、ランチコースもいいけどパンケーキもいいなぁ。あ、でもサンドイッチも捨て難いし・・・・・・どれにしようかなぁ」ギラギラ ダラダラ

提督「目を爛々と輝かせて口からは滝のように涎垂らしてやがる。ほら涎拭けよ」つハンカチ

副長「まだ入るゆーとらへんのに」アキレ

艦娘(一ヶ月くらい何も食べてない肉食獣みたい)ゾッ

副長「まぁ目的地ここやし。入ろか」スタスタ

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

副長「八人や、禁煙席で頼むわ。後職場調査も兼ねとるけどな、電」

元電「副長さん、お久しぶりです。あ、櫂も久しぶり。大きくなったわね」

提督「久しぶり、電姉。何か落ち着いたなぁ、艦娘の時は『はわわ』とか『なのです』って言ってたのに」

元電「もう、言わないでよ恥ずかしいわ。では席にご案内しますね」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

元電「ご注文はお決まりですか?」

副長「あぁ、ちょっと多いけどえぇか?」ウィンク

提督「! あぁ、確かに多いな」ニヤ

元電「大丈夫です、ご注文をどうぞ」

副長「ほな、いくで・・・・・・」


副長「先ずは"季節の野菜たっぷりサラダ"を大盛りで一つでもトマトとキュウリは抜いてな俺嫌いやから代わりにニンジンとキャベツ多めにお願い次は"ふわとろタマゴのサンドイッチ"を三つと"ジューシーハムベーコンサンド"三つ胡椒多めに振ってな後ハムとベーコンはちょい焦げ目がつくぐらいしっかり火ぃ通して次に"メチャ甘シロップパンケーキ"を二つバターは要らへんからどっちも抜いて後はシロップちょっと多めにお願いドリンクは"これぞレディの味! ブラックコーヒー"一つ砂糖とミルクは要らへんで次に"一番搾り果汁百%オレンジジュース"を氷抜きで二つ後パルプも抜いてな次に"カルピスソーダ"と"ジンジャーエール"を二つ"コーラ"一つ後は・・・・・・」

元電「はわわっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいなのです!」ビクッ

提督「あ、口調戻った」

元電「えっと、サラダが三つでサンドイッチが五つ、じゃなくて、六つで・・・・・・」ハワハワ

「落ち着いて電、私がきちんと聞いていたわ」スタスタ

元電「雷ちゃん!」

元雷「もう副長さん、毎度電をからかうのやめてよね!」プンスカ

副長「ははは、堪忍堪忍。電からかうのおもろいからな。せやけど、『当店ではそのようなサービスは行っておりません』って感じで上手く流さなあかへんよ」

元電「お客様のご要望にはちゃんと答えたいのです」

元雷「! 櫂なのね!? 久しぶり、大きくなったわね!!」

提督「久しぶり、雷姉。電姉といい、何か身長伸びてねぇか?」

元雷「解体されたから私達も歳をとるようになったのよ!」

元電「と、とりあえずご注文を聞き返すのです」

艦娘(完全に口調戻ってる)

ーー
ーーーー
ーーーーーー

元電「では、しばらくお待ちくださいなのです」スタスタ

副長「はいよ~」ノシ

副長「いやぁ、おもろかった」ケラケラ

北上「いい趣味してるねぇ副長さんも」

提督「まさか毎度こんな事してんのか?」

副長「まぁな。このカフェ来たら大体しとる」

吹雪「電ちゃん可哀想ですよ」

文月「だよねー」

利根「とはいえ、このメニューかなり安いが
これで成り立っておるのか?」

副長「とある業界で人気なんやわ、こんな感じの店は」


「お待たせしました」スタスタ

「хорошо」スタスタ

提督「お、暁姉にヴェル姉」

元響「ヴェールヌイは呼びづらいだろう? 響でいいって言ってるじゃないか」

元暁「あっ!」カクッ

副長「おわ、危なっ!」パシッ

提督「うわ、暁姉大丈夫か!」ガシッ

元暁「これくらい大丈夫よ、暁はもう一人前のレディなんだから!」

元響「躊躇なく暁を見捨ててお盆を取ったね副長さん」コトッ

副長「あはは、つい・・・・・・」

元響「そういえば、ちゃんとロシア語は勉強してるかい?」チラッ

提督「う、最近ご無沙汰です・・・・・・」ギクッ

元響「Как это происходит?(調子はどうだい?)」

提督「っ!? Да, это сильно.(はい、好調です)」ビクッ

元響「・・・・・・うん、問題なさそうだ」ニコッ

提督「す、спасибо(ありがとうございます)」

元響「とりあえず客足も落ち着いたし雑談しても大丈夫だね。それで、櫂と一緒の皆は?」

元暁「櫂の鎮守府の艦娘よね? 今日は非番なの?」

大和「解体後の進路の参考にと思いまして」

元響「なるほど、確かに解体後どうするかは大変だからね。暁は最後まで迷っていたし」

元暁「も、もう! 恥ずかしいから言わないでよ!」

副長「まぁ、皆ちゃんと暮らせとるし問題あらへんな」

元響「うん、ただ一つ問題があってね」

提督「ん? 問題って何d・・・・・・」


「おいおい、電ちゃん俺らと遊ぼうよぉ!!」

提督「ん?」チラッ

元響「あぁ、また来ていたのか」

副長「何や騒がしいなぁ」チラッ

見ると電に言い寄る三人の男がいた。誰もが自己主張の激しい服を着てタバコを咥え、似合わない色に髪を染めている

元暁「電に言い寄ってくる迷惑な客よ」

「ほらほら誰も迷惑してねぇんだしさぁ」ニヤニヤ

元電「嫌なのです、辞めてください!」

「またまたぁ、そんな事言って恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」

北上「あの三人かっこつけてんのかねぇ」

元雷「貴方達! 毎度毎度電に嫌がらせするの辞めてちょうだい、迷惑なのよ!!」

元電「雷ちゃん・・・・・・」ウルウル

「あぁ!? 客の言う事が聞けねぇのか!?」

「お客様は神様ですって言葉知らねぇのか!?」

「常識だぜ姉ちゃん!?」

吹雪「うわぁ、めんどくさいお客ですね」

副長「・・・・・・ブフッ」

副長「あははははははははははッッッ」

提督「あはははははははははは、ひーっ、ひーっ!!」バンバン

艦娘「」

「「「」」」

副長「ちょ、おま、聞いたか櫂!? 『お客様は神様』やってさ!!」ゲラゲラ

提督「『常識だぜ!?』だってさ、もう笑っちまうよ!!」ゲラゲラ


文月「? 司令官何で笑ってるの?」

吹雪「『お客様は神様』って、合ってるんじゃないですか?」

副長「あんなぁ、『お客様は神様』っちゅうんは、ある演歌歌手が言った"ものの例え"なんやわ」

提督「歌を唄う時にな、あたかも神前で祈る時のように、雑念を払って澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできない。だから、お客様を神様とみて、歌を唄う。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件だから、お客様は絶対者、神様なのですっていう、いわばその人の心得なんだ」

吹雪「そうなんですか!?」

副長「まぁ、それ以前に『お客様は神様』っちゅうんは店員側がそうやって心得るだけであって、客が言うべきもんやないでな。そもそもその人の言う"お客様"は聴衆やオーディエンスの事で、飲食店や商店の客やないで」

「「「っ!?」」」

提督「それを恥ずかしげもなく『常識』だなんて豪語しやがって・・・・・・」プルプル

副長「あかん、あかんてマジで・・・・・・」ハラカカエ

「おい、てめぇらさっきからうるせぇんだよ」

「関係ないやつは引っ込んでろ」

「ぶっ殺されてぇのか!?」

副長「おぉ、神様がえらい荒れとんなぁ。お供えもんが足らへんかったか?」ニヤニヤ

提督「兄ぃやめてやれよ、信仰が足らねぇから神様も怒ってんだって」ケラケラ

「っ!? てめぇぶっ殺す!!」ブンッ

提督「おぉおぉ鎮まりたまえ、神様よ」

副長「からかい過ぎたんは堪忍な、せやけどなぁ」チャキッ

ヒュヒュン

スパパパパパ・・・・・・

「「「・・・・・・え?」」」

ポトポトポト・・・・・・

副長「ここ禁煙席なんやわ、タバコは他所で吸ってくれるか?」ギロッ

「「「ひぃぃっ!?」」」ビクッ

北上「タバコの火の部分だけ器用に切り落としたねー」

「な、何で刀持ってんだよ!?」ガタガタ

「じゅ、銃刀法違反だぜ、犯罪者が!」

提督「まぁ、拳銃とか刀携帯しててもいい身分だし」ギロッ

副長「それに自分ら『ぶっ殺す』とか、脅迫罪やで? 警察呼ばれて危ないんはそっちなんちゃうか?」ギロッ


「くっ、くそぉ、二度と来るかこんな店!!」

提督「とか言いつつ、一週間後にはケロッと忘れてヒョコヒョコ足を運ぶ疫病神であった」

>アハハハハ
>ゲラゲラ

「っ!? ////」カァァッ

「くっ、くそっ!! ////」カァァッ

「覚えてやがれ!! ////」カァァッ

タッタッタッ・・・・・・

提督「悪ぃ、5分で忘れるわ」ケラケラ

副長「二度と面見せんなよぉ」ケラケラ

パチパチパチ・・・・・・

元電「副長さん、櫂、ありがとうなのです!」

元雷「これでしばらくは平和になるわ、本当にありがとう!」

大和「でも、あの人達お代払っていませんね」

提督「あ、確かに」

元響「大丈夫だよ、これくらいなら」

副長「あぁ、俺が払っとくわ。どうせ大したもん頼んどらへんやろし」

元暁「ありがとう副長さん」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

副長「いやぁ食った食った。おし、早めに食ったし仕事再開やな」

文月「? 司令官はぁ?」

吹雪「さっき響さん達に呼ばれてましたよ」

北上「まぁ姉弟として話がしたかったんじゃない?」


大鳳「うぅ、食べ過ぎたぁ・・・・・・」ウップ

利根「あの後更にお替わりしておったのぅ」

副長「食べ過ぎやわ大鳳」

大和「・・・・・・」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

元暁「皆の進路の役に立ったかしら?」

提督「あぁ、きっと参考になったよ」

元電「良かったのです。安心したのです」

元雷「それにしても櫂。あの大和って人、本当にいい人ね!」

提督「自慢の彼女だ」

元響「乗り越えたみたいだね。安心したよ」

提督「今のところはな」

元雷「辛くなったら何時でも私達を頼ってね!」

元響「君は私達にとって大事な弟なんだ」

元暁「一人前のレディ、暁に頼ってね!」エッヘン

元電「なのです!」

提督「ありがとう皆」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

元電「ありがとうございましたなのです」ペコ

提督(あれ以降口調戻っちまったよ)

北上「次は何処行くのさ?」

大鳳「まさか全店舗廻るつもりですか?」

副長「まさか、そんなん今日中は無理やって。とりあえず今日は食料品店とペットショップやな」

利根「食料品店とは、そこかの?」

大和「ですね」


「いらっしゃいませって、あぁ副長さん」

「いらっしゃい・・・・・・ませ・・・・・・」

副長「おぉ白雪に弥生か」

元白雪「櫂! お久しぶりです!」

元弥生「久しぶり・・・・・・櫂」

提督「白雪姉、弥生姉久しぶり。ここは吹雪型と睦月型の皆がいるのか?」

元弥生「そう・・・・・・」

「どうしたの白雪ちゃん?」スタスタ

「弥生ちゃんも」スタスタ

元白雪「あ、吹雪ちゃんに睦月ちゃん」

元吹雪「あ、副長さん。! 櫂も、久しぶり!」

吹雪「私!?」

元睦月「あ、櫂のところの艦娘だね! 吹雪ちゃんが二人いる!」

元吹雪「ホントだぁ、よろしくね」スッ

吹雪「は、はい!」スッ

「どうしたのぉ?」スタスタ

元弥生「あ、文月ちゃん・・・・・・」

元文月「ほわぁ、あたしがいる~」

文月「あたしだぁ~」キャッキャッ

北上「何かややこしい絵面だね」

副長「言うな、しゃあないやろ。とりあえず時間も押しとるし、軽く確認だけするで」


吹雪「あの、吹雪さん!」

元吹雪「何?」

吹雪「私、成長するでしょうか!?」クワッ

元吹雪「うーん、私はあまり成長してないかなぁ。諦めちゃダメだよ! きっと大きくなるから」

吹雪「はい!」キラキラ

元睦月「あ、如月ちゃん! 副長さんや櫂が来てくれたよ!」

元如月「あらぁ、久しぶり~」

副長「おぉ、無沙汰やな」

元文月「そのヘアゴム可愛い~」

文月「司令官に買ってもらったのぉ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「結構働いてたな。全員だから軽く十人は越してるぜ」

副長「睦月型や陽炎型は艦娘屈指の大人数やからな」

大和「あの、何で元艦娘の皆さんは提督の事を呼び捨てにしているのですか?」

提督「ん? 年上の姉貴達なんだから別に違和感ねぇじゃん」

北上「でも、何かキャラ的にちゃん付けしそうな人いたじゃん」

文月「あたしも呼び捨てしてたよー」

副長「んー、まぁ事情があんねや。お、ペットショップ着いたで」


「ぽいっ!」

副長「あ?」

提督「ん?」

艦娘「ぽい?」

提督「あ、夕立姉久しぶり」

元夕立「櫂、久しぶりっぽい!」

副長「おわ、えらいこっちゃ!」ガシッ

グイッ

元夕立「きゃあっ!?」

副長「おぉい店員さーん、犬が逃げ出しとんで~!」つ元夕立

元夕立「夕立は犬じゃないっぽい~!!」ジタバタ

「はいはい何でしょうか? って何だ、副長さんか。あ、櫂も久しぶり」スタスタ

副長「お、時雨! ちょうどえぇとこに、この犬ケージから逃げとんで」

元夕立「時雨ー、助けてっぽい~!!」ジタバタ

元時雨「毎度毎度夕立で遊ぶのは辞めてくれるかな、僕としても反応に困るんだ」

提督「何か、職務中の兄ぃの厳格さが失われつつあるな」

元時雨「これでも本当に集中してる時は鬼みたいだけどね」

提督「ここは白露型が経営してるのか?」

元時雨「そうさ、姉さんが店長、僕はその補佐。後が従業員で、村雨や夕立が主に接客してるんだ」

提督「接客・・・・・・ねぇ」チラッ

副長「さて、こいつ容れるケージ何処や?」キョロキョロ

元夕立「もー! いつまで夕立吊るされてるっぽ~い!!」ジタバタ

アッタマキタッポイ! ガブッ

イタッ、カムナアホ!

提督「あれが?」

元時雨「ノーコメントで」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


元夕立「吹雪ちゃんや睦月ちゃんには会ったっぽい?」

提督「あぁ、元気だったよ」

元時雨「このショッピングモールの皆は元気さ。そういえば提督はどうだい? あのお歳だから色々心配なんだ」

副長「ぴんぴんしとるが」

大和「ここには元駆逐艦の皆さんが勤めているのですか?」

元時雨「そうだよ。大本営の駆逐艦はほとんどここに勤めているんだ」

北上「でも不思議だね、何で一から店建てたのさ?」

吹雪「確かに、わざわざ店つくらなくても就職すればいいですよね」

元時雨「なかなか難しいんだ、元艦娘の就職は。僕達や吹雪型、睦月型みたいに姉妹揃って働きたいけど、大所帯だから全員が雇ってもらえないなんてザラだからね」

元夕立「だから、いっそ自分達で店をつくればいいって思ったっぽい!」

提督「さらっとものすごい事考えたんだな、皆」

大鳳「よく皆さんだけで経営していけますよね、店の経営なんて大変ですよ」

元時雨「まぁね。何人かはその為に大学に行って経営の分野とか、経済学を学んだって話さ。そう言う僕もその一人だよ」

利根「それまでの間はどうしておったんじゃ?」


元時雨「色々したさ、パートを探して短期で雇ってもらったり、深夜のバイトを姉妹交代で行ったり。そうこうして準備ができた時に駆逐艦の皆で集めたお金でこのショッピングモールを建てたんだ」

大和「夢のような話ですね。大変でしたでしょう?」

元時雨「もちろん、提督や他の皆にも支援はしてもらったさ。お陰でこのショッピングモールはどの店も好調、今じゃ連日大賑わいなんだ。今日もさっきまでお客が殺到してたんだよ」

副長「お、そろそろ混みそうやな。別の所も廻らなあかへんし、そろそろ行こか?」

提督「分かった。じゃあ時雨姉、夕立姉、ありがとうな。皆によろしく」

艦娘「ありがとうございました」ペコ

元時雨「応援してるよ、皆の進路」

元夕立「また来てっぽ~い!!」ノシ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督達が去った数分後、事務員達の控え室で数名の元艦娘が集まっていた。話題はもちろん、自分達の弟の事である

元吹雪「ねぇ皆、櫂の事どう思う?」

元夕立「大和さんと付き合っているし、もう乗り越えたっぽい?」

元睦月「それだといいんだけど・・・・・・」

元吹雪「暁ちゃん達はどう思う?」

元暁「暁は問題ないと思うわ」

元響「そうかな? 私は完全には乗り越えてないと思うな」

元時雨「僕もさ。まだ心の片隅にあのトラウマがへばりついてると思う」

元白雪「とりあえず、他の皆にも伝えますね」

元雷「そうね。何かあったら」

元電「電達が励ますのです!」

元吹雪「でもそれは櫂が頼ってきた時だね。あの子の傍にいるのはもう私達じゃない。櫂には仲間がいる。私達は櫂や皆を見守るべきだと思う!」

元駆逐艦達「うん!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


副長「さぁ着いたで。第二の目的地、動物園」

文月「ほわぁ、動物園楽しみ~」キャッキャッ

提督「遊びに来たんじゃねぇぞ?」

北上「ここは誰が働いてるのさ?」

副長「自分や」

北上「へ?」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「まさか憲兵の身分証で通してもらえるなんてな」

副長「元艦娘が働いとる所限定やでな。ちょい園長に顔出してくるわ、待っとってな」スタスタ

??「あ、櫂じゃねぇか!」

提督「! 木曾姉、久しぶり」

元木曾「久しぶりだなぁ、元気してたか?」

北上「あ、木曾じゃん」

元木曾「うぉっ、北上姉さん・・・・・・別人だけど」

北上「え、ここあたしもいるの?」

元木曾「おう、ここは球磨型の皆が働いてるんだぜ」

提督「上の二人は飼われてる側じゃね?」

元木曾「それは言っちゃいけねぇ」

吹雪「因みに木曾さんは何の担当何ですか?」

元木曾「俺は両生類と爬虫類、あと鳥類の担当なんだ。二時間後に猛禽類のショーをやるんだ、観てってくれよ!」

副長「お待たせ~って、おお木曾か久しぶりやな」

元木曾「し、師匠!?」

副長「まぁな、今日は定期の調査なんやわ」


元木曾「師匠、俺二時間後にショーやるんだ、観てってくれよ!」

副長「二時間後か・・・・・・まぁ大丈夫やな、それまで他の四人の所行っとるわ」

元木曾「ありがとう! 皆も絶対来てくれよな!」タッタッタッ

北上「師匠?」

副長「木曾や他の奴らに剣を教えとった事があるんやわ」

大和「あぁ、そのような事言ってましたね」

副長「よし、二時間までたっぷりあるし、廻ってこか。最初は猛獣の所やな」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

吹雪「大きな熊ですね~」

提督「エゾヒグマか、かなり大きいなぁ」

文月「このクマさん寝てるね~」

??「今お腹いっぱいで寝てるんだクマ」

提督「あ、球磨姉」

元球磨「やっぱり櫂だったクマ、久しぶりだクマ」

副長「檻から出て大丈夫なんか自分?」

元球磨「球磨は熊じゃないクマ、夕立とかもそうだけどこのネタいつまで続くクマ!?」

副長「俺がくたばるまでや」

吹雪「ですよね・・・・・・」ニガワライ

提督「球磨姉は確かイヌ科とクマを担当してるんだっけ?」

元球磨「そうクマ。ネコ科は多磨がしてるクマ」


文月「あ、クマさん起きた~」

提督「何か機嫌悪そうだな」

元球磨「あいつ最近機嫌悪いクマ。残しておいた餌をカラスに食べられたんだクマ」

ヴゥゥゥゥ・・・・・・ ノッシ、ノッシ

大和「! 隣のケージの方に向かいましたよ?」

北上「ツキノワグマのケージじゃん」

グォォォォォォォッッッ!!

提督「な、何かイチャモンつけてねぇか?」

元球磨「またケンカ売りにいったクマ」スゥゥ

副長「ん?」

元球磨「ヴォーーーーッッッ!!!!」

ビクッ

元球磨「ケンカ吹っかけてんじゃねークマ、大人しくするクマ!!」

北上「まさかの吠えて大人しくさせる」

提督「流石球磨姉、えげつねぇ」


??「何ニャ、うるさいニャー。またゴローが暴れたのかニャ?」スタスタ

元球磨「あ、多磨だクマ」

元多磨「副長さん、櫂、久しぶりだニャ」ゴトン

提督「久しぶりって、多磨姉そのバケツは?」

元多磨「今からシバ達とキキに餌あげるんだニャ」

文月「餌やりしたーい!」

元多磨「止めといたほうがいいニャ、ほら」グイッ

多磨と球磨はそれぞれ右足のズボンと左袖をたくし上げた。そこには

文月「っ!?」

吹雪「!?」

提督「・・・・・・爪や牙の痕・・・・・・か」

元多磨「あいつらにとって遊んでるつもりでもこっちはこのザマだニャ」

元球磨「ここに来た頃にそこのゴローにやられたクマ。あの時はすごい怪我だったクマ」

副長「文月のトラウマになるやろ、やめぇや」

元多磨「動物園では飼育員の言う事は聞いておいた方がいいニャ」

文月「うん」

元多磨「とりあえず、多磨がいれば大丈夫だし、特別に体験させてやるニャ」スタスタ

文月「やったー!」

北上「・・・・・・」

大和「どうしました?」

北上「あたしの姉達がワイルド過ぎて驚きなんだけど」

提督「まぁそんなもんだろ、あの二人は」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


元多磨「まずはシバ達の餌ニャ」

吹雪「シバ?」

元多磨「この動物園の人気者、ホワイトライオンだニャ」

北上「シバって誰がつけたのさ」

元球磨「名前は球磨達がここに就職した時に既についてたクマ。名付け親も名前の意味も知らんクマ」

文月「ほわぁ、ライオンだぁ」

提督「へぇ、見事なホワイトライオンだ」

大和「美しい色ですね」

吹雪「でも、何で白なんですかね?」

利根「アルビノとやらではないのか?」

提督「ホワイトライオンの場合は大昔、氷河期の祖先の遺伝子が隔世的に発現したものらしいぜ」

元多磨「氷の世界では隠れられてもサバンナでは目立ちすぎだニャ。そのせいでなかなか獲物が捕れずに餓死するから数が少ないニャ」

副長「詳しいやないか」

元球磨「職業柄、この手の質問が多いから知らないわけにいかないクマ」

元多磨「とりあえずシバ達に餌やりするニャ」ゴトン

バケツの音に反応してライオン達が集まってきた。七頭のライオンが大口を開けて餌を催促する

北上「因みに本日の献立は?」

元多磨「鶏丸々一羽を全員分だから、鶏七羽だニャ」

そう言って多磨は次々とバケツから肉を掴み取り、投げ入れた。果たして七つの肉塊は見事にそれぞれの口に一個ずつ納まり、ライオン達はその場に座り込み肉にかぶりつく

副長「えらいがっついとんなぁ、断食でもしとったんか?」

元多磨「動物園では肉食獣には毎日餌はあげないニャ。シバ達も二日に一回あげるだけニャ」

吹雪「えぇ!? ちゃんとご飯あげないと可哀想ですよ!」

提督「これが普通だ。あいつらは野生ではいつでも餌にありつけるわけじゃねぇからな」

大和「逆に毎日あげたらいけないって事ですね」

元多磨「次はキキだニャ」スタスタ

大和「キキ?」

元多磨「若いシベリアトラの雌だニャ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


元多磨「次は文月ちゃんに手伝ってもらうニャ」

文月「ほんと~? やったぁ~」

元球磨「キキの餌やりは見ていても楽しいクマ」

手伝いのため多磨についていく文月と別れ、提督達はシベリアトラのキキの飼育場に向かう。しばらくすると

提督「おぉ、これが」

北上「でっか・・・・・・」

吹雪「シベリアトラのキキちゃん」

利根「すごい迫力じゃな」

大和「大きいですね」

副長「ウロウロしとんなぁ」

元球磨「あ、多磨が来たクマ」

強化ガラスで覆われたトラの檻の上に多磨と文月が立つ。檻の端から文月が肉を提督達の近くに投げ込んだその瞬間


ガォォォォッ


2mはあろうその巨体を宙に浮かし、トラが肉を空中でキャッチする。それを間近で見た皆は


吹雪「うひゃあ!?」ビクッ

副長「ナイスキャッチ!」

利根「天晴れじゃ!」

北上「すごいジャンプ力」

提督「お見事!」

大和「すごいです!」

元球磨「いつ見ても大迫力だクマ」

>オイ、キキノエサヤリシテルゾ!
>ミタイミタイ!

提督「お、客来るから退こうか」

その後数分間トラの餌やりは続き、絶えず歓声が響いた

ーー
ーーーー
ーーーーーー


提督「文月お疲れ様、すごかったぞ」ナデナデ

文月「えへへ~、楽しかったよ~」

元多磨「木曾には会ったみたいだし、後は北上と大井だニャ」

北上「お、ついにあたしに会う時かー」

元球磨「二人は草食動物の担当だクマ。北上が大型動物で、大井が中型や小型の担当クマ」

副長「おおきに。ほな俺ら行くわ」

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文月「ゾウさんだ~」キャッキャッ

提督「アフリカゾウか、しかも雄だ」

吹雪「何で性別判るんですか!?」

??「アフリカゾウは額の形で雌雄が判断できるんだ」スタスタ

提督「あ、北上姉」

北上「おー、あたしだ」

元北上「元気してたー?」

提督「まぁな。何か様になってんなぁ北上姉」

元北上「褒めても何も出ないよん」

副長「北上、大井はどうしたんや?」

元北上「大井っちはあと少ししたら来るんじゃない?」


??「北上さぁん!」タッタッタッ

提督「大井姉、久しぶり」

元大井「あら久しぶりね、櫂」

北上「あぁ大井っちだ」

元大井「っ!? き、北上さんが二人も!? あぁ」フラッ

提督「うわ、大井姉!?」

大和「だ、大丈夫ですか!?」ガシッ

元大井「す、すみません。あぁ、北上さんが二人もいるだなんて・・・・・・」ウットリ

元北上「大井っち、もう仕事終わったの?」

元大井「はい、今は少し休憩時間です」

北上「流石大井っち、仕事が早いねぇ」

元大井「ありがとうございます、北上さん!!」

副長「二人の北上を相手に会話する大井・・・・・・ややこしいなぁ」

提督「大井姉にとっては"北上"は同じ存在なのか?」


『御来場のお客様にご連絡致します。まもなく"第三広場"にて、『猛禽類ショー』を開催致します。奮って御観覧ください。繰り返します、まもなく・・・・・・』

提督「ん? これ確か木曾姉が言ってたやつだ」

副長「よし、行くか」

元北上「お~、木曾の晴れ舞台観てきてあげてねー」

元大井「ではまた後で」

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北上「さーて、どんなショーなのかね~」

吹雪「猛禽類ってどんな鳥でしたっけ?」

利根「確か鷲や鷹の事じゃったと思うぞ」

副長「あと梟や木兎も猛禽類やで」

文月「かっこいい鳥さんなのぉ」

大鳳「ワクワクします!」

大和「確かに、木曾さんがどんな鳥のショーを見せてくださるのか楽しみです」

提督「お、木曾姉が出てきた」


元木曾「それでは皆さん、今から猛禽類のショーを行いたいと思います! まず最初に芸を見せてくれるのは、このチャコ君です!!」

現れた木曾は艦娘の時に愛用していたマントを羽織り、その右腕には一羽の黒褐色の鳥を乗せていた。その様は驚く程に似合っており、周囲の観客を沸かせる

副長「ほぇぇ、よぉ似おてるが」

北上「あの鳥は、ハリスホークかな?」

吹雪「ハリスホーク?」

文月「なぁに~それー?」

提督「ハリスホークはモモアカノスリって鳥の別名だ。社会性を持つ特異性質から比較的訓練しやすいんだ」

利根「相変わらずすごい知識じゃなぁ」

提督「俺の数少ない取り柄だよ」

大和「すごい取り柄だと思いますよ」

大鳳(唐揚げ食べたくなりました)

元木曾「今からチャコに芸を見せてもらうけど、そのためにはもう一人に手伝ってほしいんです! どなたかやってみたい方はいませんか?」

吹雪「はい!」サッ

元木曾「(お、吹雪ちゃんか)ではそこのお嬢さん、前に出てきてください」

吹雪「司令官、行ってきます!」

提督「おう!」

大和「頑張ってきてくださいね!」

タッタッタッ

元木曾「よし、じゃあお嬢さん。左手にこの手袋を着けて」つ手袋

吹雪「よいしょっと、できました」

すると木曾は腰の袋から肉の塊を出して吹雪の左手の親指と人差し指で摘むようにと指示した

元木曾「いいか、絶対に肩より腕を下に下げるなよ。もし下げたら鳥が登ってくるかもしれねぇからな」

吹雪「っ! はい!」

言われた通りに吹雪は左手を斜め上に伸ばす。これにより、ちょうど木の枝の様な形となった。それを確認した木曾は、吹雪から10m程離れた場所に移動した。


元木曾「それではチャコを放ちます。チャコはちゃんとお嬢さんの腕に止まるでしょうか」スッ

吹雪「っ・・・・・・!」ゴクッ

提督「さて・・・・・・」

副長「どうなるやろか」

元木曾「・・・・・・行けっ!」グッ

ハリスホークを乗せた左手を前に突き出す木曾。勢いよく吹雪に向かって飛び立つハリスホーク。そのまま低空飛行から見事に吹雪の左手に止まった。観客席からは拍手喝采が起こる

吹雪「うわぁ・・・・・・」キラキラ

吹雪は自分の正面から飛んできた鳥の迫力とその優雅さに感嘆の声を洩らす。当のハリスホークはというと吹雪の持っていた肉を鉤状の嘴と爪を使って一心不乱に貪っていた

元木曾「ありがとう吹雪ちゃん、かっこよかったぜ。ほら、手伝いのお礼の飴玉やるよ」

吹雪「ありがとうございます!」ウケトリ

元木曾「さぁ皆さん! ショーを手伝ってくれたこのお嬢さんに今一度大きな拍手を!」

元木曾「さぁまだまだいきますよ! 続いて芸を見せてくれるのは・・・・・・」

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副長「いやぁ、すごかったなぁ木曾!」

北上「さっすが、あたしの妹だよ」

元木曾「へへ、皆も見てくれてありがとうな!」

提督「にしてもあれだな、木曾姉がまさかあんな敬語使うパフォーマーになってたなんて」

元木曾「俺だって敬語ぐらい使えるぞ!」

吹雪「私も文月ちゃんもいい思い出ができましたよ、ありがとうございました!」

元多磨「ああいうのはやっとかないと損だニャ~」

元北上「その結果身体に傷がつくとかたまったもんじゃないね」

元大井「私達も人の事言えませんよ北上さん」

大和「・・・・・・皆さんは」

元多磨「!」

元球磨「何だクマ?」

大和「皆さんは何故動物園の飼育係をしようと思われたのですか?」

元大井「私は北上さんについていっただけです」

元木曾「俺も姉さん達をほっとけねぇって思ったから」

元北上「あたしは成り行き任せ」

副長「理由軽っ!」


元球磨「球磨は元々自分が獣っていじられてたのもあるし、何より動物が好きだったからだクマ」

元多磨「結果やりたかった仕事をできたし、怪我もまるで勲章みたいで誇らしいもんだニャ」

元木曾「やっぱ、やり甲斐のある仕事ができりゃ最高だよなぁ」

艦娘「やり甲斐のある・・・・・・」

元球磨「皆は何か無いクマ?」

吹雪「私はまだ見つかってません・・・・・・」

文月「あたしも~」

北上「あたしもさっぱり。今一ピンと来ないんだー」

元北上「おぉ、流石あたしだ」

大鳳「私は食べる事が好きだし、食べる仕事で稼げたらいいなぁって思ってます」

利根「吾輩は料理人を目指しておる。提督と約束もしてあるしのぅ」

大和「大和は・・・・・・」チラッ

提督「ん?」

元多磨「まぁ、元から決まってるならそれに向かって努力すればよし、決まってない人の参考になれば嬉しいニャ」

提督「ありがとうな球磨姉、多磨姉」


副長「そろそろ最後の所行こか」

提督「じゃあ、今日はありがとう」ノシ

艦娘「ありがとうございました」ペコ

元球磨「またいつでも来るクマー」ノシ

元多磨「待ってるニャ~」ノシ

元北上「じゃあねー」ノシ

元大井「身体に気をつけてくださいね!」ノシ

元木曾「あばよ~!!」ノシ

ブロロロロロロロ・・・・・・

元球磨「・・・・・・皆、櫂の事どう思うクマ?」

元北上「まさか恋人つくるなんてねぇ」

元大井「もうあの娘の事は乗り越えたのかしら?」

元多磨「だといいんだけどニャァ」

元木曾「何かありゃ俺達が助けてやりゃいいさ。あの七人を見守ろうぜ」

元球磨型「(クマ)(ニャ)(だね)(そうね)」

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提督「で、ここが最後の『孤児院』か」

副長「櫂、ちょいえぇか?」ゴニョゴニョ

提督「んぁ?」

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提督「お邪魔しまーす」スタスタ

艦娘「しまーす」スタスタ

??「ん? もしかして櫂か!?」

??「あらぁ、久しぶりね~」

提督「久しぶりだなぁ天龍姉、龍田姉」

元天龍「何だよ、ここに俺達がいるって何で分かったんだ?」

提督「親父からの任務でね」

元龍田「司令からの~? 司令はお元気~?」

提督「あぁ。まだまだ元気さ」

提督「ここは天龍姉達以外の先生はいねぇのか?」

元天龍「まさか。俺はこの孤児院の院長様だぜ!」

元龍田「天龍ちゃん支えるのに私だけじゃ大変なのよ~?」

??「っ!? もしかして櫂!?」

タッタッタッ

提督「あ、高雄姉! って事は」


??「ぱんぱかぱ~ん!!」ダキッ

ムギューッ

大和「なっ!?」ギョッ

提督「おわっ、愛宕姉!?」ビクッ

元愛宕「なぁにぃ、こんなイケメンに育っちゃって。お姉ちゃん一目惚れしちゃったわよぉ?」クリクリ

提督「うわ、ちょ、止め・・・・・・」

ガシッ

提督「おわっ!?」グイッ

大和「大和の提督に何するんですか!」ギューッ

元愛宕「あらぁ残念」ペロリ

元高雄「もう、何をしてるんですか愛宕!」

元高雄「ごめんなさいね櫂・・・・・・っ!?」ハッ

大和「あ、あの、先程はついカッとなってしまい申し訳ございませんでした」ペコ

元愛宕「いいのよぉ、私も久々に可愛い弟をついからかいたくなっちゃったの」

元高雄「もう。改めて、高雄です」ニコッ

元愛宕「愛宕で~す!」

大鳳「ぐはぁっ!?」ゴパッ

提督「大鳳!?」ギョッ

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提督「にしても高雄型の四人もいたなんて」

元鳥海「少し興味があったんです、こういうの」

元摩耶「あたしは結構楽しいぜ、皆とこう賑わいながら過ごすの」

キャッキャッ

文月「あははは、待て待て~」キャッキャッ

ワイワイ、ガヤガヤ

吹雪「あ、ここはこう折ればっと。ほら、鶴さん折れたよ」

一段落した後、提督達は天龍達に案内されテーブルへとついていた。すぐ側のスペースでは、年少の子供達に混ざって文月が鬼ごっこを、少し離れた場所では吹雪が少し年長や低学年と折り紙をしている

元天龍「なぁ櫂、お前ちっとは剣の練習してるのか?」

提督「いや全然。ただ筋トレしてるぐらい」

元天龍「そうか。うっしゃ、俺がいっちょ鍛えてやるよ」

提督「え、今から!?」

元龍田「うふふ~、私も久々に血が騒いじゃう~」ニコニコ

提督「えぇ!? 二対一!?」ギョッ

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提督「何で竹刀や竹の薙刀があるのさ」つ竹刀

元龍田「天龍ちゃんが男の子を鍛えてるのよ~」つ薙刀

元天龍「俺様の剣技、見せてやるぜ!」つ竹刀

天龍達に連れられ、提督は中庭に立っていた。天龍と龍田はそれぞれ竹刀と薙刀を持っている

元天龍「行くぜ!」ダッ

提督「おわっ!?」バッ

バシィッッッ

元天龍「オラオラァ、その程度かよ!!」ブン

元龍田「行くわよ~」ダッ

天龍の猛攻を防ぐ提督の背後から龍田が薙刀を一閃させる

提督「っ!?」サッ

ヒュッ

元龍田「あらあらぁ、避けられちゃったぁ」グルグル

天龍に代わり龍田が攻めた。力任せの姉と違い、巧みに薙刀を操って追い詰める。
打ち込めば薙刀を前で回転させていなし、しゃがめば斬り下ろし、後ろに下がれば突きがくる。流れるような動作で相手を確実に追い詰める龍田に提督は終始圧倒された

提督「くっ!」

元龍田「足元注意♪」ブン

バシィッッッ

提督「うわっ!?」フラッ

大和「提督!」

ドシャッ

倒れた提督に薙刀を突きつける龍田。勝負ありだ

元天龍「あ~あ、また龍田がいいとこ持ってきやがって」

北上「にしても強いねー」

元天龍「おう、俺が一番だ!」

元龍田「もう、天龍ちゃんったら~」ニコニコ

提督「でも兄ぃがいたらなぁ。色々指導してもらえるんだけど」

元天龍「へっ、師匠なんてもう目じゃねぇな! 俺達は既にあの人を超えてるぜ!」

元龍田「確かにねぇ~」

北上「あぁあ、知~らない」

提督(・・・・・・かかったな)


副長「ほぅぉ、言うてくれるやないか」スタスタ

元天龍・元龍田「っ!?!?」ビクッ

副長「いつの間にか、えらい調子乗るようなったなぁ自分ら」ビキビキ

元天龍「あ、あわわわ・・・・・・」ガタガタ

元龍田「ひぃぃッッッ!?」ガタガタ

副長「櫂、竹刀貸せ。このバカ弟子どもしばいとるから、皆は飯作っとりや」

提督「程々にな」スッ

元高雄「じゃ、じゃあお夕飯の支度をしましょう」スタスタ

艦娘「はーい」スタスタ

「天龍先生と龍田先生は?」

元愛宕「ちょっと遊んでくるらしいわ~」スタスタ

元鳥海「流石に擁護しきれません・・・・・・」スタスタ

元摩耶「二人の骨は、何とかして拾っといてやるよ・・・・・・」スタスタ

提督「ごゆっくり~」スタスタ

副長「さぁて、楽しもや。・・・・・・じっっっっくりと」ボキボキ

元天龍・元龍田「ひっ・・・・・・」ガタガタ

ギャァァァァァァァァァァァァッッッ!?

ーー
ーーーー
ーーーーーー

大和「・・・・・・」ザクザク

元高雄「お上手ですね」ザクザク

大和「いえ、利根さんに比べれば大和なんて」

元高雄「・・・・・・」

大和「? どうかされました?」

元高雄「いいえ。何でもありません」

大和「?」

ーー
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副長「いやぁ運動した後の飯は美味いなぁ」

元天龍「ふ、ふふふ、怖いか?」ボッコボコ

吹雪「す、すごい顔になってる」

文月「風船みたーい」キャッキャッ

提督「ある意味怖いな」

元龍田「あぅぅ」ボッコボコ

大鳳「唇がタラコみたいですよ!?」

利根「たん瘤が五つも・・・・・・」

北上「女だろうが容赦なくボコる副長さん流石っすわ」

副長「刀握っとる奴に男も女もあるか」

元鳥海「もう、お二人とも無茶し過ぎですよ」

元摩耶「死ななかっただけ奇跡だぜ」

大和「でもやり過ぎですよ副長さん」

副長「まぁそら堪忍」

提督「・・・・・・使うか?」つ傷薬

元天龍「おぉ、妖精薬! サンキュー」ヌリヌリ

元龍田「ありがと~」ヌリヌリ

元龍田「あ~痛みが和らいでく~」


提督「なぁ天龍姉、龍田姉」

元天龍「あん?」

元龍田「なぁにぃ?」

提督「二人は、何で孤児院やろうと思ったんだ?」

元天龍「俺達は現役の時に、何度も遠征に行ってた。その度にずっと考えてたんだ」

元龍田「深海棲艦の侵攻で親を亡くしたりした子供達、戦争に限った話じゃなく親がいない子供達を救えないかしらって」

提督「それで孤児院を?」

元天龍「何でか俺はちびっ子に好かれやすい質だったし、お前を育てるのも楽しかったんだ。だからできる限り多くの子供を幸せにしたかった」

元高雄「私達も同じ思いでした。なのでこの孤児院の職員として働いています」

艦娘「・・・・・・」

元天龍「俺達が戦っている裏ではその影響で苦しんでいる人達がいる。だからそんな目に合わしちまった償いも兼ねての行いだ。二度と皆に辛い思いをさせねぇためにな」

提督「・・・・・・」

副長「えぇこっちゃ。お前らの想いはよぉ分かった!」ナデナデ

元天龍「師匠・・・・・・!」

北上「そうだよ。立派な考えだよ」

大鳳「すごく立派です!」

提督「・・・・・・」

元高雄「櫂、少しいい?」

提督「! あぁ」

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元高雄「私、安心しました」

提督「?」

元高雄「貴方があの事を乗り越えてくれたみたいで」ツーッ

提督「・・・・・・今のとこは、だけど」

元高雄「大和さんは本当にいい人です」ポロポロ

元高雄「本当に・・・・・・心配していたんですよ」スッ

提督「高雄姉・・・・・・」グイッ

涙を流す高雄は提督をゆっくり抱き寄せ、その胸に自らの顔を押し付ける。提督はそんな姉を静かに抱きしめた

元高雄「良かった・・・・・・貴方が大和さんのような人に会えて。・・・・・・・本当に、本当に良かった・・・・・・!」ギューッ ポロポロ

提督「・・・・・・」ギュッ

提督「高雄姉・・・・・・ありがとう」ナデナデ

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副長「そろそろ帰るか、もうそろそろ23時やが」

元摩耶「泊まってきゃいいじゃんかよ」

元龍田「部屋なら空いてるわ~」

北上「ダメだよ、副長さんには奥さんがいるんだから」

元天龍「えっ、師匠結婚したのか!?」

副長「何やその意外そうな顔は」

元高雄「驚きですよ、あの副長さんが結婚だなんて」

元愛宕「あの副長さんがねぇ」

副長「・・・・・・お前らの中の俺は一体どんな評価されとんねや」ガックリ

元摩耶「剣に生きる男」キッパリ

元龍田「剣が恋人~」ニコニコ

元天龍「剣じゃなきゃ満足できねぇ男!」

副長「しばいたろか天龍?!」クワッ

提督「俺達はどうする?」

大和「大和はどちらでも」

文月「あたしは帰る~」

吹雪「私もです」

利根「吾輩は泊まっても構わんぞ」

大鳳「私もう眠いですよ~」フワァァ

北上「あたしはどっちでもいいよ~」

提督(よくよく考えりゃ、バイクじゃ一人しか乗せられねぇし、兄ぃに乗せてってもらうしかねぇか)


副長「櫂達はどうする?」

提督「帰るよ。兄ぃ、皆を車で頼むわ」

副長「分かった。ほら車組はこっちや」スタスタ

スタスタスタスタ・・・・・・

提督「さて、バイク出してくるか」スタスタ

元高雄「・・・・・・大和さん」

大和「はい?」

元高雄「櫂の事、どうかよろしくお願いします」ペコ

大和「! ・・・・・・もちろんです」

元天龍「とりあえず見送りに行ってくる」スタスタ

元摩耶「あたしと鳥海は皆寝ちまったし残るよ」

元愛宕「お願いねー」スタスタ

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ーーーーーー

元龍田「うぅ、かなり冷えるわ」フルフル

副長「見送りせんでもえぇのに」

提督「まぁまぁ。んじゃ、またな」ノシ

艦娘「ありがとうございました」ペコ

元天龍「おう、また来いよ!」ノシ

元龍田「待ってるわ~」ノシ

元愛宕「バイバ~イ」ノシ

元高雄「さようなら~」ノシ

ブロロロロロロロ・・・・・・

元天龍「行っちまったか・・・・・・」

元龍田「久々に賑やかだったわね~」

元愛宕「・・・・・・一安心。よね、高雄ちゃん?」

元高雄「えぇ。本当に・・・・・・」ニコッ


元天龍「榛名さんと高雄さんは特にあいつの事可愛がってたもんな」

元龍田「天龍ちゃんもいいお姉ちゃんしてたわよ~」ニコニコ

元天龍「っ!? お、俺ぁただあいつがいつも泣きべそかいてやがったから発破かけてやってただけだ!!////」

元愛宕「お陰で逞しい子に育ったわね」

元天龍「へっ。あのガキンチョが今となっちゃ立派な提督様か」ニッ

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鎮守府

提督「今日はこのまま解散でいい。ゆっくり休め」スタスタ

艦娘「はっ!!」ビシッ

提督「それと、もうそろそろその堅苦しい敬礼を止めろ。お前達は直に軍人じゃなくなるんだから、社会人らしい挨拶にしねぇとな」

北上「お疲れッス先輩!」

大鳳「今日も大活躍でマジ尊敬ッス!」

提督「お前達は学生か・・・・・・。でもまぁ、今はそんなもんか。じゃ、お疲れさん」スタスタ

大和「あ・・・・・・」トコトコ

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提督「何も秘書艦仕事しなくても」カリカリ

大和「なら提督も休んでください」プクーッ

提督「報告書作るだけだ。さっさと寝ろ、もう天辺越えてるぞ」カリカリ

大和「そっくりそのままお返しします。早く寝てください、もう1時前ですよ」

提督「まぁ待て、後は判子押してっと」ペタン


提督「提出は明日・・・・・・じゃねぇや、今日の朝にしときゃいいか」

大和「さぁ終わりましたよ。早くお休みください」

提督「分かったから。つうかお前は何で部屋に戻って寝ねぇんだ?」

大和「? 何故恋人と寝たいと思ってはいけないのですか?」キョトン

提督「っ!? か、勝手にしろ! ////」

大和「はい♪」

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一週間後

提督「とうとう明日か」

吹雪「この艦娘としての身体も今日が最後ですね」

文月「あたし達解体されるの~?」

北上「そうだよ、丸鋸やレーザーのある実験室に連れてかれて・・・・・・」

吹雪・文月「ひぃっ!?」ビクッ

提督「んなわけねぇだろ」バコッ

北上「痛っ!?」

大鳳「空母や戦艦の食事量も常人並になるそうです」

利根「なら今日は最後の晩餐じゃな。艦娘として心ゆくまで食べてほしいのぅ」

大和「・・・・・・」

提督「? どうした大和?」

大和「!? な、何でもありません////」フイッ

提督「?」

北上「提督~、女の子にこれ以上言わせるのは失礼じゃないの~?」ウリウリ

提督「?? どういう事だ?」

北上「大和さんはねぇ、『艦娘である大和を抱いてください』って思ってんのさ」ニヤニヤ

提督「はぁ!?////」

大和「ちょっ!?////」


北上「あれ~? 違うの?」ニヤニヤ

大和「き、北上さん何を・・・・・・大和にだって心の準備が・・・・・・////」ボソボソ

北上「あれだけ露骨にイチャついて、寧ろ何で今までやらなかったのさ?」

大和「うぅ・・・・・・////」

提督「と、とにかくだ。今日はお前達にとって艦娘としての最後の日だ。艦娘としてやり残した事がないように行動しろ」

大鳳「では利根さん、お願いしてもいいですか?」

利根「うむ! たんと食べるがよい!」

北上「あたしもちょっと頂こうかな~」

文月「あたしも~」ノシ

吹雪「じゃ、じゃあ私もお願いします!」

提督「明日の分は残しとけよ利根」

利根「その辺りはちゃんと考慮しておる」

大和「大和もよろしいでしょうか?」

提督「構わねぇさ、楽しんでこい」

提督「とりあえず・・・・・・その気なら夜にここに来な」ヒソッ

大和「! はい!」パァァ

ワイワイガヤガヤ

ガチャ・・・・・・パタン

提督(さてと。流石にあの人数が心ゆくまで食ったら食料がやばいな。今週末にでも買い出し行くか。俺はあいつらの晩餐に出る必要もねぇし・・・・・・)

提督「・・・・・・鰻重の出前でも取るか」


ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ・・・・・・

突如鳴り響く着信のバイブ音。提督は棚の上にある携帯端末を手に取る。普段職務の連絡など仕事関連の場合は、部屋の固定電話からかかってくる。第一彼に携帯(私用)で連絡しようとする人物は家族を除けば数人しかいない

提督「マナブか、何だ?」

友提督『あぁ悪い、今大丈夫か?』

提督「特に用事はねぇな。大丈夫だ」

友提督『今からビスマルクとそっちに行くから。一緒に昼飯食ってもいいか?』

提督「はぁ!? 今から!? そして他人の鎮守府で飯!?」

友提督『大丈夫さ、こっちでちゃんと持ってくから。じゃ、また後で』

提督「ちょ、おい!! ・・・・・・切りやがった」

ーー
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ーーーーーー

友提督「よぉ、久しぶり」

提督「・・・・・・本当に来やがった」

ビスマルク「すみません櫂さん。Admiralが急に」

提督「いや、こっちも飯食う前だったし」

友提督「ほれ、寿司大量に買ってきたぜ!」

提督「寿司か、最近食ってねぇな」ソワソワ

友提督「ん? 誰か待ってるのか?」

提督「お前から連絡来る前に出前取ったんだよ。あぁ来たな」

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友提督「鰻重頼むとかどんだけ金持ってんだよ」パクッ

提督「俺一人分なんだ、そんなにいかねぇだろって思ってな」モグモグ

友提督「まぁまぁ、寿司も食えよ。白身好きだろ?」

提督「あぁ。鯛と?と鰤と鱸を頼む」

友提督「あいよ」

ビスマルク「っ!? ッッッーーーー!!」ジタバタ

友提督「どうしたの?」

ビスマルク「か、かりゃい、かりゃいよぉ~」ウルウル

提督「あ~ほら水」つコップ

ビスマルク「だ、danke」ゴクゴク

ビスマルク「何あの緑色の小さなやつ、めちゃくちゃ辛いじゃない!!」

提督「何だ本ワサそのまま食ったのか」

友提督「そりゃ辛いに決まってる」

ビスマルク「うぅ、あんな辛いもの、日本人はよく食べられるわね」

提督「大丈夫だ、日本人だけど俺ワサビ食えねぇから」

友提督「そのまま食べるんじゃなくて、味のアクセントとしてちょっと刺身とかにつけて食べるんだよ」

ビスマルク「うーっ、まだ舌がヒリヒリするわ・・・・・・」

友提督「しょうがねぇな」グイッ

ビスマルク「っ!?」

チュッ・・・・・・

ビスマルク「ング!?!?!?!?////」カァァッ

友提督「ぷはっ。・・・・・・どうだ、辛くなくなったか?」ナデナデ

ビスマルク「・・・・・・Ja////」ポーッ

提督「何急にイチャつきだしてんだ、こっちまで口ん中が甘ったるくなっちまったじゃねぇか」


友提督「はは、悪い悪い。けどお前と大和もなかなかのもんだぜ?」

提督「・・・・・・否定はしねぇ////」つ鯛

友提督「ん? そういやお前んとこの艦娘達は?」

提督「艦娘としての最後の晩餐を楽しみたいんだと。今頃利根の料理を心ゆくまで楽しんでるさ」ヒョイ パクッ

友提督「それでお前は六人だけで楽しませてぼっち飯か。バカだろ」

提督「うっせーよ!」ムシャムシャ

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ビスマルク「・・・・・・」zzz

友提督「寝顔がまるで女神みてぇだ」ナデナデ

提督「とんだバカップルだな、お前達も」

提督「それで? わざわざイチャラブ見せつけるために寿司持って来たわけじゃねぇだろ。一体何の用事だ?」

友提督「お前んとこの艦娘然りうちの艦娘然り、皆は解体された後社会人として生きていく。そうなった後俺達はどうしようかと思ってな」

提督「それで俺がどうするかを聞きに来た。そういう事か?」

友提督「当たり~。何か参考にならねぇかと思って」


提督「俺も正直悩んでいる・・・・・・。このまま軍(超安定職)に残るべきか、別の仕事を探すべきか」

友提督「このご時世、就職は難しいぜ?」

提督「その代わり命の危険からは多少遠ざかるだろ? まぁ、元から俺はそんなもの気にしねぇけど」

友提督「お前そんな事言いやがって・・・・・・まだ乗り越えられねぇのか?」

提督「俺は乗り越えたつもりだ。ただ心の奥底には今でもあの地獄がこびりついている」

友提督「・・・・・・」

提督「俺は・・・・・・怖い。大和を失う事が、それが俺の所為でそうなる事が怖いんだ。あの時みてぇに」

友提督「あれはお前の所為じゃねぇ!! 俺や皆、何よりヤマ自身がそう思ってる!!」

提督「・・・・・・」

友提督「何があっても俺はお前の味方だ、辛かったら俺達を頼ってくれ」

提督「・・・・・・ありがとうな」

ビスマルク「ん・・・・・・」モゾモゾ

友提督「あぁ悪い、起こしちまったか」ナデナデ

友提督「じゃあ俺達はそろそろ帰るよ」

提督「あぁ。寿司ごちそうさん」

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提督「・・・・・・」ペラッ

提督「・・・・・・」ペラッ

ガチャ

大和「提督失礼します」

提督「よぉ、楽しめたか?」パタン

大和「はい。大和も皆も大満足でした」

提督「そうか。良かった」

大和「それで・・・・・・その・・・・・・////」モジモジ

提督「・・・・・・本当にいいのか?」

大和「・・・・・・はい////」

提督「・・・・・・分かった。俺も男だ、お前の気持ちにきちんと応えよう。俺の寝室でいいか?」スッ

ーー
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翌日

提督「・・・・・・」

妖精「昨夜はどうだった?」ニヤニヤ

提督「まぁ・・・・・・イチャラブだったわ」

妖精「かなり搾り取られたみたいだね」

提督「・・・・・・少なくとも5回は果てた////」

妖精「まぁアンタならそれくらいか。ついでにいい事教えといてあげるよ」

提督「あ?」

妖精「艦娘が解体されるというのは艤装を展開できなくなるだけじゃなく、他にも様々なものを失うんだ。まず筋力や骨密度も常人レベルまで下がるし、空母や戦艦であっても食事量が並の人間程度に下がる。まぁそうするために妖精(あたし達)が体内を弄るんだ。その副作用で幾つかの臓器などがリセットされるんだ」

提督「いい事じゃねぇか、食事量が抑えられたら食費浮くし」

妖精「そのリセットされるものの中に"アレ"も含まれてるんだ」ヒソヒソ

提督「へ~・・・・・・・って、はぁ!? 何でそんなもんまで!?////」ギョッ

妖精「乙女には色々あるもんさ、その辺も理解しな。とりあえずこの事は皆知ってるし、今夜はもう一度あの娘を抱いてあげな」テテテテ

提督「お、おい!////」

提督「・・・・・・マジかよ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

工廠

提督「時間だ。これから解体されるお前達を除名するための式を行う。これは勝手に俺がやってる事だけど最後くらい軍らしく堅苦しく終わろうじゃねぇか」

吹雪「」ビシッ

北上「」ビシッ

大鳳「」ビシッ

文月「」ビシッ

利根「」ビシッ

大和「」ビシッ

提督「諸君達のお陰でこの海を、人類の制海権を再び取り戻す事ができた。軍に生きた諸君達に今度は自らの夢・目標を追いかけてほしい」


提督「吹雪型駆逐艦一番艦、吹雪!」

吹雪「はっ!」ビシッ

提督「吹雪の真面目さと元気な姿にいつも支えられてきた。お前が俺の初期艦で本当に良かった、本当にありがとう」ナデナデ

吹雪「こちらこそ、ありがとうございました!」

提督「球磨型軽巡三番艦改め球磨型重雷装巡洋艦三番艦、北上!」

北上「はっ!」ビシッ

提督「北上の何事にも動じない精神にはいつも助けられた。この艦隊が笑顔を絶やさなかったのもまた、お前の力が大きいだろう。本当にありがとう」ナデナデ

北上「こっちこそ、提督にはお世話になりっぱなしだったよー、ありがとね」

提督「大鳳型装甲空母一番艦、大鳳!」

大鳳「はっ!」ビシッ

提督「大鳳もまた、真面目な姿勢でよく俺についてきてくれた。お前が自分に自信と誇りを持てたかどうかは分からねぇけどな」

大鳳「覚えていますか、提督? 私が宝石の原石であると言ってくれた事を」

提督「もちろんだ」

大鳳「私は貴方について行き皆さんと過ごし、自分自身に誇りを持つ事ができました。私は貴方の言う通り、磨かれた宝石になれました!」

提督「そうか、良かった。お前の航空戦、肉弾戦はこの艦隊の勝利に大きく貢献してくれた。本当にありがとう」ナデナデ

大鳳「礼を言うべきなのはこちらです! 本当にありがとうございました!」

提督「睦月型駆逐艦七番艦、文月!」

文月「はい!」ビシッ

提督「文月の無邪気な笑顔と元気な姿にいつも元気づけられた。よくぞ俺の指揮に文句の一つも言わずついてきてくれた、本当にありがとう」ナデナデ

文月「えへへ、あたしも司令官と一緒で楽しかったよぉ、ありがとぉ~」ニパァ

提督「利根型重巡洋艦一番艦改め利根型航空巡洋艦一番艦、利根!」

利根「はっ!」ビシッ

提督「利根の冷静な判断と行動には何度も助けられた。また、料理でこの艦隊に幸福を与えてくれて本当にありがとう」ナデナデ

利根「吾輩もお主には助けられてばかりじゃった。吾輩の方こそ礼を言わせてくれ、本当にありがとう」


提督「大和型戦艦一番艦、大和!」

大和「はっ!」ビシッ

提督「大和には仕事でもプライベートでも本当に助けられた。皆のまとめ役になったり、秘書艦仕事を手伝ってくれたりと世話になりっぱなしだった。本当にありがとう」

大和「いいえ。本当にお礼を言うのは大和の方です。提督と共に過ごした時間が大和にとっての全てです」

一人一人に感謝の言葉を述べた後、六人はそれぞれ解体スペースへと移動する。そして横一列に並んだ後、再び提督に向かって敬礼した

提督「本日、現時刻を持って!! 吹雪、北上、大鳳、文月、利根、大和。以上六名の艦娘としての任を解く!!」

提督「・・・・・・皆、本当にありがとう。お前達は俺にとっての家族だ、愛してるぜ」ビシッ

艦娘「っ!! はっ!!」ビシッ

ゆっくりと解体室の扉が閉まる。残された提督は肩の荷が降りたように大きく息をついた

妖精「とりあえず、一時間もすれば全員終わるよ。それまで待ってるかい?」

提督「そうさせてもらうよ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「! 終わったのか」

一時間後ゆっくりと扉が開き、中から六人の少女が歩いてきた

文月「司令か~ん」タッタッタッ

ダキッ

提督「文月・・・・・・」

吹雪「私達皆、普通の少女になりました!」

北上「特に今までと変わんないけどねー」


利根「しかし、何だか喪失感があるのぅ」

大鳳「もう艤装が展開できませんからね」

大和「提督? どうしました?」

提督「もう俺はお前達の提督じゃねぇんだ、提督とか司令官って呼ぶのは止めろ」

北上「いやぁ、だからって急に変えるのは抵抗あるよ」

大鳳「でも大和さんは困らないですよね?」

大和「え?」

北上「いやだからさ、こうやって呼べばいいんだよ」スッ

北上「ーーーー」ゴニョゴニョ

大和「っ!?!?!?!?////」ボンッ

北上「ほら早く、早速呼んであげなよ」

大和「じゃ、じゃあ・・・・・・////」

提督「ん?」

大和「・・・・・・ダーリン////」カァァッ

提督「」


提督「・・・・・・」

大和「・・・・・・////」

提督「」ダキッ

大和「きゃあっ!?////」

北上「おぉ、これが伝説のお姫様抱っこ」

吹雪(そういえば着任初日にしてもらったっけ、もう一年以上前かぁ)シミジミ

提督「・・・・・・」ギューッ

大和「あ、あわわわ・・・・・・////」カァァッ

提督「いいかお前達、明日の朝まで緊急連絡以外俺に取り次ぐなよ」

大和「っ!?」

一同「了解」

提督「今日は自由行動だ、以降の連絡は明日伝える」

大和「え、ちょっ、あの、提督・・・・・・?////」

提督「悪ぃけど加減はできねぇぞ? 大和」ニッ

大和「はうっ////」キュンキュン

ーー
ーーーー
ーーーーーー


大和(大和達が解体されて一ヶ月が経ちました)

大和(皆が今後について悩んでいる間、大和は何度か提督をデートにお誘いしました。ですが・・・・・・)

ーーーー
ーー

大和「提督、週末買い物に行きませんか?」

提督「週末? 週末は・・・・・・あぁ悪ぃ、週末は三日間大本営に行かなきゃいけないんだ」

大和「そう・・・・・・ですか・・・・・・」シュン

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大和「提督、明日は予定空いてますか?」

提督「明日は・・・・・・無理だ、マナブに頼まれて買い物に付き合う事になってる。ごめん」

大和「い、いえ・・・・・・楽しんできてください」

ーー
ーーーー

大和(といった感じで断られてばかりです)

大和「それどころか、提督が大和を避けているような気がします・・・・・・」ショボン

大和(っ!? まさか浮気!?)

大和(ま、まさかそんなわけ・・・・・・提督のような方が浮気だなんてするはずがないです)


提督「大和? ぼーっとしてどうした?」

大和「ふぇっ!? い、いえ、何でもありません」

提督「そうか、ならいいけど」

大和「あ、あの、提督・・・・・・」

提督「ん?」

大和「よ、よろしければ次の土曜日に何処かお出かけしませんか?」

提督「次の土曜日・・・・・・」ウーン

大和「はい・・・・・・(また、先に予定が入っているのでしょうか)」

提督「特に何もねぇな、いいぜ」

大和「!! ほ、本当ですか!? 大和、楽しみにしております!!」パァァ

提督「最近色々と忙しくて一緒にいられなかったしな」ナデナデ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


大和「~~♪」ルンルン

吹雪「大和さん何だか楽しそうですね、どうしたんですか?」

大和「次の土曜日に提督とお出かけするので、衣服を選んでいるんです!」

北上「おー、やっと誘えたんだ」

利根「ここ最近あやつは用事ばかりじゃったしのぅ」

文月「皆の携帯買いに連れてってくれたのが最後だよぉ」

大鳳「あれももう二週間前ですよ」

大和「仕方ありませんよ。提督は未だ軍属の身、忙しくて当然です」

北上「それでも夫婦の時間は取るべきでしょうが」

大和「ふ、夫婦だなんて、そんな////」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

そして前日

提督「さてと、プランとしてはこんなとこかな」

妖精「うん、問題ないと思う」

提督「後はこれを渡すタイミングだよなぁ」つ小箱

妖精「やっぱり、ベタだけど綺麗な夜景を見ながらじゃない?」

提督「やっぱそうなるか」コトッ


ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ・・・・・・

提督「ん?」スッ

提督「もしもし。・・・・・・はい。はいそうですが・・・・・・」

妖精「?」

提督「・・・・・・! あぁ、ご無沙汰です。どうしたんで・・・・・・え・・・・・・!?」

提督「・・・・・・はい、はい分かりました。それで、日時は・・・・・・? ・・・・・・明日!?」

提督「・・・・・・分かりました」

コトッ

妖精「? 誰からだい?」

提督「・・・・・・義姉さんだ」

妖精「!?」

提督「明日は大和と出かける日なのに・・・・・・いきなり過ぎだぜ」

妖精「で、何て言ってたの?」

提督「ーーーー」ゴニョゴニョ

妖精「!? そんな・・・・・・」

提督「どっちも無下にできない。俺はどうしたら・・・・・・」

妖精「大和を連れてってあげたら?」

提督「それはだめだ。義姉さん達は大和を知らない、混乱させるだけだ」

妖精「! 確かに・・・・・・万策尽きたか」

提督「あぁ、クソッ! また大和を・・・・・・」


妖精「行きなよ、世話になった人だろ?」

提督「!?」

妖精「アンタは行くべきだ。皆にはあたしから説明しておく、アンタは大和に謝ってすぐに行きな!」

提督「・・・・・・分かった」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「大和、少しいいか?」

大和「はい?」

提督「実は明日、急用が入ってどうしても俺はそっちに顔を出さなきゃいけない。だから明日のお出かけは・・・・・・」

大和「っ!? ・・・・・・そう、ですか・・・・・・」

提督「本当にすまない」

大和「いえ、仕方ありませんよ。行ってらっしゃいませ」

提督「この埋め合わせは必ずする。本当にごめん」ダキッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌日

大和「・・・・・・」ショボン

妖精「大丈夫かい?」

大和「はい・・・・・・」

妖精「また今度誘ってみなよ。きっと上手くいくさ」

大和「・・・・・・」

妖精「? 大和?」


大和「今度って・・・・・・何時ですか?」

妖精「・・・・・・」

大和「きっと提督は・・・・・・大和に愛想が尽きたんです・・・・・・」

妖精「何バカな事を! そんな事あるわけが・・・・・・」

大和「無いって・・・・・・言い切れますか?」

妖精「・・・・・・少なくとも提督はアンタを見捨てたりはしない。これは確信を持って言えるよ」

大和「どうだか・・・・・・」

妖精「・・・・・・」

妖精(提督、早く帰ってきてよ。このままじゃ大和がどんどん・・・・・・)

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌日

大和「・・・・・・提督」

妖精(一日経った・・・・・・あれから大和は不気味なくらい静かにソファーに座って食事も摂っていない)

大和(大和だって、提督を信じています。ですが提督が一日帰らなかっただけで、不安で押し潰されそうです。提督が浮気をしたために帰らなかったという最悪の事態が頭から離れません)

妖精「とりあえず、昼食持ってくるからね」テテテテ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ガチャ

大和「!」

提督「すまない、遅くなって」

部屋に入って来た提督は普段の純白の軍服や私服ではなく、真っ黒なスーツを着ていた。その黒いスーツの上着を脱ぎながら提督は謝罪の言葉を口にする

提督「本当にごめん大和、この埋め合わせは必ずするからな」

大和「・・・・・・」上着受け取り








フワッ・・・・・・






大和「っ!?」クン

スーツから仄かに香る香水の匂い。提督は香水をつけないし、この鎮守府の皆の匂いとも違う。つまりは・・・・・・

大和(他の・・・・・・女性の・・・・・・)

私の中で何かが音を立てて崩れる音がした。今まで考えまいとしていた事態が現実となった・・・・・・。やはり提督は浮気をしていた、だからこの一ヶ月私との時間を作れなかったのだ

提督「来週の日曜日は空いてるか? 俺もその日なら予定がないから・・・・・・」

大和「・・・・・・もういいです」

提督「そんな事言わないでくれ、今まで時間が取れなかった分・・・・・・」

大和「私よりも・・・・・・一緒にいるべき女性がいるでしょう?」

提督「え・・・・・・?」

大和「私が嫌いになったなら、はっきりと仰ってください」

提督「何を馬鹿な、俺がお前を嫌いになるわけ」

大和「それは私がヤマさんの代わりだからですか?」

提督「っ、確かにお前はヤマと似ている。だけどお前はお前だ、大和」

大和「女の代わりだったらいくらでもいます、目処も立っているんでしょ!?」

提督「代わりなんかいない!」

大和「ならこの香水の女は誰ですか!!」

提督「っ!! ・・・・・・それは・・・・・・」

大和「この人との時間を取ってたから私との時間が取れなかったんですよね!?」

提督「違う!」

大和「嘘だ!! 」

大和「そもそも提督はヤマさんの事を乗り越えられてなんかいない!! 私に惚れたのも大和がヤマさんに似ていたからで、私はヤマさんの代わりでしかないんです!!」

提督「・・・・・・」

大和「その上知らない所で浮気まで・・・・・・。亡くなった人の後釜だった挙句浮気までされるなんて」

大和「こんな事なら、私は貴方に建造されたくなかった! 貴方と出会いたくなかった!!貴方の艦隊になんて入りたくなかった!! 」








大和「貴方なんかと・・・・・・愛し合わなければよかった!!!」






提督「っ!?」

大和「・・・・・・っ!?」ハッ

一通り感情をぶちまけた後、はっと我に還る。私は何て事を言ってしまったのだ。提督に対して取り返しのつかない事を言ってしまった

大和「ち、ちが、違うんです提督、大和はそんな事・・・・・・」ポロポロ

提督「分かってるよ大和・・・・・・俺が全部悪いんだ」

大和「ご、ごめんなさい、大和はこんな事言うつもりは・・・・・・」ポロポロ

提督「いいんだ、お前は何も悪くない」ツーッ

一筋の涙を流し、ゆっくりと執務室の扉に歩いていく提督。私は止める事ができない、身体が動かない。と、その瞬間

提督「っ!? がはっ!!」ゴパッ

ドシャッ・・・・・・

突如提督が吐血し、その場に崩れ落ちた。口から赤黒い血がドクドクと流れ出す


ガチャ

妖精「大和、提督は・・・・・・ってどうしたのさ!?」

吹雪「ひいっ!?」

文月「司令官!?」

北上「ちょっ、何があったのさ!?」

大鳳「提督!!」

利根「しっかりするのじゃ!!」

大和「わ、わた、私は・・・・・・」ポロポロ

妖精「っ!? これはここの設備じゃ手に負えない! 救急車を呼んで!! 元帥にも連絡を!! 急いで!!」

吹雪「は、はい!!」ダッ

利根「分かった!」ダッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

大和(その後駆けつけた救急隊員によって、提督は病院へと緊急搬送された。今は症状が治まりましたが、提督は昏睡状態になってしまいました。今は皆に鎮守府を任せ、病室(個室)にいるのは大和と妖精さんだけです)

妖精「まさかこんな時に限って病院が人手不足だなんて・・・・・・」

大和「・・・・・・」

妖精「それで、何があったの?」

大和「っ!?」ジワァ

妖精「大和?」

大和「大和は、大和は提督に酷い事を言ってしまいました・・・・・・」ポロポロ

妖精「・・・・・・」

大和は泣きながら妖精に事の顛末を話した

妖精「仕方ないよ、誰だってそうなるさ。でもね、その言葉が提督にとってどれほどのものか、分かっているんだよね?」

大和「ひっ、ひぐっ・・・・・・」コクコク


妖精「反省してるならいいさ、提督も許してくれるよ」

大和「許してもらう資格なんて、大和にはありません」

ガチャ

元帥「櫂の様子は?」

妖精「今は眠っているよ」

団長「そうか・・・・・・」

副長「昏睡状態・・・・・・か」

友提督「辛いよな、大和」

大和「っ!?」ジワァ

妖精「マナブ!」

友提督「っ!? あ、すまない」

妖精「マナブ、アンタこの前櫂の事買い物に誘った?」

友提督「あぁ、レーベとマックスの誕生日プレゼントを買うのに、ビスマルクと行ったんだが、もう一人男の意見が欲しくてな」

大和「!」

妖精「元帥も、この前三日間大本営に櫂を呼んでたよね?」

元帥「うむ、決戦後に引退した者達が多くての。書類仕事を櫂と霊峰君に手伝ってもらっていたのじゃ」

大和「!」

妖精「ね?」

大和「・・・・・・」コクッ

大和「その件については分かりました。ですが、昨日今日と提督は何処に・・・・・・?」








??「私達の所だよ」






大和「!」

元帥「! おぉミラさん」

病室の入口にいたのは元帥よりも高齢に見える一人の女性だった。初めて見る方なのに大和は何処か懐かしさを感じた

??「もうおばあちゃん! 先に行かないでよ」タッタッタッ

??「義兄さんは! 義兄さんはどうなんですか!?」タッタッタッ

遅れて提督と同じくらいの年代の男女が入って来た。そのうちの一人、女性を見て大和は一瞬硬直した

大和「え!? (大和そっくりの方です)」

??「! 貴女が大和ちゃんね? 櫂君から話は聞いたわ。本当にヤマそっくり!」

大和「ヤマ!? え?」

??「姉さん、自己紹介まだだろ? 困惑しちゃうよ」

??「あ~そうだ、ごめんなさい。私は眞祓井 想羅(まはらい そら)。ソラって呼んで」

??「俺は眞祓井 凜玖(まはらい りく)。リクって呼んでください。さっき初めて見た時は驚きましたよ、ヤマ姉さんそっくりなもんで」

大和「眞祓井・・・・・・。っ!? それって確か!」

ソラ「ええ。ヤマは私の妹、リクのお姉ちゃんなのよ」

リク「そしてこっちが眞祓井 鏡水(まはらい きょうすい)。俺達の祖母で眞祓井家当主なんだ」

??「当主といってもつい昨日なったばかりだけどねぇ。それに鏡水だなんて呼びづらいだろう、ミラでいいよ」

大和「は、はぁ・・・・・・」

ミラ「順を追って話すとね。つい先日私の夫、つまり前当主が亡くなったんだ。それで昨日今日と葬式を行っていたんだ」

大和「え・・・・・・?」


リク「おじいちゃんはヤマと義兄さんを可愛がってたから、一昨日呼んだんだ」

ソラ「式中は大丈夫だったんだけど、その後で涙が止まらなくなっちゃって。それで私、櫂君の胸で泣いちゃったの」

リク「姉さんがそのまま泣き寝入りしちゃったから、義兄さん帰れなくてそのまま一泊してったんだ」

大和「っ!?」

頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。確かにソラさんの匂いはスーツに残っていたあの香水の匂いと一致する。提督は浮気なんかしていなかった、それを自分は一方的に決めつけあんな酷い事を・・・・・・

大和「っ・・・・・・」フラッ

ミラ「! 大丈夫かい?」ガシッ

大和「!? す、すみません」

ミラ「いいんだよ。ふふ。その目、確かにヤマそっくりだ」

大和「え・・・・・・?」

ミラ「巌山、ここは私達だけにしておくれ。彼女には話すべきだ、櫂とヤマの事を」

元帥「分かりました。では頼みますぞ」

団長「私達も帰るとしよう」

副長「あいよ~」

友提督「じゃ、後頼みますわ」

スタスタスタ・・・・・・

ミラ「さて、どこから話したものか。まずは我が一族の事について話すとしよう」

大和「はい・・・・・・」


ミラ「古来、私達"眞祓井"家はその名の通り"悪魔祓い"として悪霊や妖魔の類を成仏させる一族だった。古くは平安時代から続いていたとも言われておる旧家さ」

妖精「悪魔祓いとはまた・・・・・・」

ミラ「無論今ではそんな非科学的なと批判されるが、まだ科学が発展していなかったその当時は悪霊や妖怪が信じられていたものさ。人が床に伏せるのは全て悪霊の仕業。そんな時代さね」

大和「なるほど・・・・・・納得です」

ミラ「そして眞祓井家は人外のものを祓うために、妖怪の力を得たと言い伝えられているんだ」

大和「妖怪の・・・・・・力・・・・・・?」

ミラ「そうさね・・・・・・例えば」チラッ

リク「?」

ミラ「リク。あんたこの間の期末試験、結果はどうだったんだい?」

妖精「はぇ!?」

リク「え、あれ? まだ返ってきてないよ?」

ミラ「おや、本当にかい?」キィィ

大和「っ!? その目は・・・・・・!」

リク「っ!?」

ミラ「・・・・・・まったく、返ってきてるじゃないか。酷い点数だ」

妖精「!?」ギョッ

ミラ「嘘ついた罰だ。ソラ、部屋の本棚、上から二段目の裏と机の引き出しの二重床の中のやつ処分しておしまい」

ソラ「はぁい」

リク「ちょっ、おばあちゃんそりゃないよ!!」

ミラ「お黙り。悪い点をとった事は私は怒っちゃいない。隠そうとした事に怒ってるんだ、慈悲はないよ」

リク「そんなぁ・・・・・・」ズーン

ミラ「ふふ、大和ちゃん、身内の恥を晒してしまって申し訳ないね」

大和「は、はぁ・・・・・・」

妖精「寧ろアンタの所為だと思うけど」


ミラ「それもそうだねぇ。今のが眞祓井家が稀に発現する事がある妖力、『共鳴(きょうめい)』だよ。周りにある森羅万象と同調する力。これによって相手の考えを聞いたり、記憶を覗いたりするのさ。より精錬された力は生物だけじゃなく、無機物と同調する事もできる」

大和「!! この能力って」

ミラ「そう。ヤマもこの能力を発現していた。それもかなりの精度だったよ」

妖精「妖力なんだ、あれって。他にもそれらしきものあるんだけどさ」

ミラ「巌山と堅山の身体かい?」キィィ

妖精「ご明察。あの強靭な肉体についての仮説を妖精達で立てたんだ」

ミラ「・・・・・・その仮説は当たりだ。あの兄弟もまた、妖力を得た一族の末裔なのさ。妖力の名は『鎧鬼(がいおう)』。まるで鎧を纏っているような強靭な肉体を鬼に喩えた力さ」

妖精「やっぱりか。因みに海原家って何の一族だったの?」

ミラ「そこまでは何とも。ただ強靭な肉体を必要としていた一族なのだろうね。他にも自然を味方につける妖力の使い手や獣を操る妖力の使い手なんかもいたそうだ」


ミラ「にしても妖精さんや、あんた達の仮説には驚いたよ。ほぼほぼ正解だと思っていい。能力の発現の過程や受け継ぐ条件、よくそこまで辿り着いたものだ」

妖精「何分、考える事が好きな質なんでね」

ミラ「なるほど、確かにそんな顔だ。さて、私達が古来よりそういった悪魔祓いを行っていたんだが、ある事件が起きたんだ」

大和「ある事件?」

ミラ「祓う対象だった悪霊に呪いをかけられたのさ。末代まで続く強力な呪いを」

妖精「呪い?」

ミラ「それ以降、一族の者が恋に落ちた相手が皆一様に不慮の死を迎えるようになった。ある者は事故に逢い、またある者は急病に倒れ、またある者は殺された。それも全員が目の前で死んだと言われている。現に私の夫も目の前で息を引き取った」

大和「っ!?」

ソラ「私達のお母さんもリクを産んですぐに病気で・・・・・・」

リク「それだけならまだ何とでもなったんだ。でも呪いはまだ続く」

ミラ「死んだ相手の魂は二つに分割され、正の魂は職場の同僚、学校の同級生など比較的近い存在に転生する。そして生まれ変わりとなったその者と惹かれ合うのさ。だが、そこに負の魂が転生した存在が近づき、互いに殺し合う。目の前で恋に落ちた相手が二度も死ぬところを見ては・・・・・・。そして残された者は皆、自らその命を絶ったと聞く」

大和「そんな・・・・・・」

ミラ「愛する者を二度も目の前で失い、最後には己の命をも絶つ呪いをかけられた。これが私達が『呪われた一族』と言われる所以だよ」

妖精「それであのリーダーは・・・・・・」

大和「っ!?」ハッ


ミラ「私達の話は以上だ。この事を踏まえて大和ちゃん、あんたに櫂とヤマの過去を話したいんだけど・・・・・・聞く覚悟はあるかい?」

大和「・・・・・・お願いします」

妖精「いいの? 多分辛いと思うよ」

大和「構いません。どうか」

ミラ「分かった、話そう。先ずは櫂の過去から話すべきだね」

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10年前

提督(9歳)「・・・・・・よし、できたよ霧島姉」

霧島「では見せてちょうだい」スッ

霧島「・・・・・・」つ赤ボールペン

キュキュッ、ピッ、キュキュッ、ピッ、ピッ

提督「・・・・・・」ドキドキ

霧島「昨日やったところは大丈夫よ。ただしまだここの計算が苦手ね」

提督「マジで!? うわ、やっちゃったぁ・・・・・・凡ミスじゃん!」ガーン

霧島「集中が足りてないわね。少し頭を捻れば解けるはずよ」

提督「この歳で微積分解けるだけでもすげぇと思うんだけど」ボソッ

霧島「何か言ったかしら?」

提督「何も」

フ~ン・・・・・・

提督「! (蚊だ、もう夏か・・・・・・)」


霧島「っ!? もう何!?」サッサッ

提督「蚊は女性ホルモンに釣られるっていうし、霧島姉女なんだから仕方ねぇよ」

霧島「よく知ってるわね。妖精さんに教えてもらったの?」フ~ン・・・・・・

提督「読んだ本に載ってた」

霧島「女性ホルモンにねぇ。私艦娘よ?」フ~ン・・・・・・

提督「でも女じゃん」

霧島「まぁ確かにそうだけど・・・・・・」フ~ン・・・・・・

・・・・・・ブツッ

霧島「ッ!!」ジャキン

提督「えぇっ!? ちょっ、何でここで艤装展開してんの!?」ギョッ

霧島「目標(蚊)捕捉! 全門斉射!!」バッ

ドガァァァァァァァァァァァンッッッ

提督「ぎゃぁぁぁぁぁッッッ!?」

霧島「・・・・・・目標殲滅。ふぅ・・・・・・」艤装解除

提督「」ガタガタ

霧島「? 櫂、どうしたの?」

提督「いや、別に・・・・・・」ガタガタ

霧島「?」キョトン

提督(オーバーキル過ぎる・・・・・・てか、蚊一匹にここまでするとか、どこまで沸点低いの霧島姉は!?)ゾッ


ドタドタドタ・・・・・・

バタンッ!!

榛名「霧島、櫂! 何の音ですか!?」

霧島「あら榛名、いきなりどうしたの?」

提督「アンタの所為だ、アンタの」ハァ

元帥「何じゃ、騒がしいのぅ」

霧島「あぁ元帥、蚊がいましたので」

元帥「霧島、毎度の事じゃが蝿や蚊如きに主砲をぶっぱなさんでくれ、被害が大き過ぎるんじゃ。見ろ、壁に大穴が空いておるではないか」ヤレヤレ

霧島「申し訳ありません」ペコ

提督「毎年夏の風物詩だな」

元帥「こんな費用のかかる風物詩なぞ誰が喜ぶんじゃ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「ゼェ・・・・・・ゼェ・・・・・・も、もう無理だって島風姉」フラフラ

島風「おっそーい!! これでもまだ本気じゃないんだよ?」

提督「いや、既に目にも留まらぬ速さじゃん」

島風「何言ってるの! スピードっていうのはね、目にも留まらぬ速さじゃ二流! 目にも映らぬ速さじゃないと一流じゃないんだよ?」

提督「いや、そんな領域に到達してるの島風姉だけだから」

川内「あ、櫂に島風。何やってるの? 駆けっこ?」

提督「あ、川内姉。綾波姉に敷波姉も、『夜戦隊』の訓練してたの?」

川内「そうだよ~」

綾波「駆けっこですか。楽しそうですね」

島風「三人もしようよ駆けっこ!」

敷波「えー、アタシも?」


提督「敷波姉は本気出したらすげぇもんな~!」

敷波「持ち上げすぎじゃない? ・・・・・・まぁ、嫌じゃないけどさ////」プイッ

綾波「もう、素直じゃないなぁ」ニコニコ

川内「あはは、じゃあ私も久々に走ろうかな」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

比叡「むむ、次の櫂の一手は・・・・・・」ウーン

提督「・・・・・・よし」スッ

パチッ

提督「王手」

比叡「ヒェェェ!?」

比叡「ならここはこの駒を取って・・・・・・」スッ

パチッ

提督「なら・・・・・・」スッ

パチッ

提督「王手」


比叡「むむ、ここは王を逃がすのが・・・・・・」

パチッ

提督「・・・・・・」スッ

パチッ

提督「王手」

比叡「ならば! 歩をここに置いて」スッ

パチッ

提督「はい終わり」スッ

パチッ

比叡「あぁっ!?」ギョッ

提督「比叡姉引っかかり過ぎだよ」

比叡「ヒェェェ、また負けたぁ・・・・・・」

ガチャ

金剛「Hey! Tea timeネー!」

提督「やった、今日の茶菓子何?」

金剛「霧島手作りのクッキーデース!」

比叡「やったー!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

榛名「櫂、午後の勉強は何でしたっけ?」コポコポ

提督「神通姉の国語と、加賀姉の地理だけど」シャクシャク

金剛「Wow,神通はvery harshからネ」サクサク

提督「いや、金剛姉の方がスパルタじゃん」

比叡「あれ(チョーク弾)はお姉様の愛の鞭ですよ」ズズッ

霧島「ともあれ、皆さんの教え方は本当に分かりやすいですよ」サクサク

提督「そう言う霧島姉もな」ズズッ


加賀「櫂、ここにいたの?」スタスタ

提督「! 加賀姉」

加賀「ちょうど良かったわ、午後の勉強だけど、私達に演習の予定が入ってしまって・・・・・・」

提督「ありゃ、中止?」ショボン

加賀「えぇ、ごめんなさい。この埋め合わせは必ずするわ」

提督「まぁ仕方ねぇか、最高戦力だし。あ、ちょっとしゃがんで」スタスタ

加賀「?」スッ

提督「演習頑張ってな、天舞無法の加賀姉」ナデナデ

加賀「っ!? 分かってるわ」キラキラ

金剛(加賀がめちゃくちゃsparklingしてマース)

加賀(流石に気分が高揚します)キラキラ

加賀「ではこれで」スタスタ

ウワッ! ナニヒカリカガヤイテンノヨ、コノイッコウセン!
フッ、ゴコウセンニハアジワエナイシフクヨ
ナンデスッテ!? キーッ
オチツキナサイ、ズイカク
カガサンモオチツイテ・・・・・・

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神通「ではこの文の要点をまとめてみてください」

提督「・・・・・・」カリカリ

神通「・・・・・・」ニコニコ

提督「これで大丈夫かな?」スッ

神通「では・・・・・・」

神通「・・・・・・9割正解ですね。よくできました」ナデナデ

提督「残り1割を教えてほしいんだけど」

神通「そうですね、強いて言うならこの部分でしょう。ここは・・・・・・」

提督「・・・・・・」

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大和(本当に艦娘に育てられていたんですね、提督は)

ミラ「さて、いつまでそこにいるつもりだい?」チラッ

ソラ「え?」クルッ

リク「?」クルッ

吹雪「あ、あはは、すみません」

大和「吹雪ちゃん!? 皆も、何時からいたんですか?」

文月「司令官の昔話から聞いてたのぉ」

北上「いやぁ、入るタイミングが見つからなくて」

利根「やはり吾輩達も心配でのぅ」

大鳳「あ、鎮守府ならビスマルクさん達がいますので大丈夫ですよ」

ミラ「おやおや、櫂の仲間だね。何とも上司想いのいい娘達じゃないか」

吹雪「失礼ですが、お名前をお伺いしてもいいですか?」

ミラ「私は眞祓井 鏡水。ミラって呼んでおくれ」

北上「ミラさんさぁ、何で提督の過去が分かるの?」

ミラ「まぁ記憶を覗いてるからねぇ。それ以前に小さい頃からの知り合いで私にとっては孫も同然なんだよ」

ミラ「さて、話を戻すとしようか」


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提督「あ~小腹空いたな、間宮姉ん所に何かねぇかな」

元帥「! おぉ櫂、ちょうど良い所に」

提督「? 父さんどうしたの?」

元帥「金剛達と買い物に行ってきてくれんか、備蓄がそろそろ危なくてのぅ」

提督「赤城姉達か。二人ともあんなに食って太らねぇのかな?」

元帥「お前も犬や猫より多く食べても太らんじゃろう? そういう事じゃよ」

提督「分かった、行ってくる」スタスタ

元帥「頼んだぞい」

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金剛「後は何が必要デース?」

霧島「紅茶の茶葉とカレールーは買いましたし、後は・・・・・・」つメモ

比叡「お酒も買ってきてって言われてるよ」

榛名「じゃあお酒を買えば全部ですね」

提督「身分証あるの?」

金剛「Don't worryデース!」

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比叡「お、重い~」

提督「この荷物で家まで帰んのきつくね?」

金剛「こんなもん艤装に比べたら屁でもないネー」

榛名「榛名は大丈夫です」

提督「俺が早く車の免許取ったらいいんだ、そしたら皆を乗せて買い物に行ける!」

榛名「櫂・・・・・・」ウルウル

霧島「ふふ、楽しみにしてるわね」


ヒソヒソ・・・・・・

提督「?」

「見ろよあれ、艦娘だぜ」

「知ってるか、あいつら風呂入るだけで怪我が治るんだぜ」

「マジかよ、化け物じゃねぇか」

提督「っ!!」ピクッ

「化け物の癖して戦争ずっと続けやがって」

「正義の味方ヅラする前にさっさと海を取り返せっての」

「でも見た目はすげぇ美少女だぜ、いいよなぁ軍人は」

「やっぱり夜は何人も侍らせてんじゃね?」

「自分だけの性欲処理係とか最高じゃんか!」

提督「っ!!」ブツッ

提督「このっ・・・・・・!!」キッ


ガシッ

提督「っ!?」

榛名「・・・・・・」ギューッ

金剛「・・・・・・」フルフル

あまりに自分勝手な偏見を押し付ける周りの人間に食ってかかろうとする提督を榛名は優しく抱きしめ、金剛は静かに首を横に振る。微笑みかける二人は、まるで「手を出してはいけない」、「私達なら大丈夫だ」と言っているようだった

比叡「ぅぅ・・・・・・」アタマグシグシ

霧島「・・・・・・」メガネカチャカチャ

提督「・・・・・・」

榛名「帰りましょうか」

提督「・・・・・・分かった」

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提督「くそっ、あいつら何なんだよ!!」

金剛「カイ・・・・・・」

霧島「一般人からしたら深海棲艦も艦娘も同じ化け物だという事でしょう」

元帥「うーむ、民衆との軋轢は未だ消えず・・・・・・か」

提督「自分達が誰に生かされてると思ってんだ! 皆がいなかったらとっくに殺されてたかもしれねぇのに!!」

榛名「櫂落ち着いてください」

提督「大体、榛名姉達は悔しくねぇのかよ!? あんなに好き勝手言われて!!」

榛名「仕方ないですよ、榛名達は人の形をした兵器なんですから」

提督「皆は兵器じゃねぇ!! 兵器なら俺を大切にしてくれるわけがねぇだろ!!」

元帥「榛名、今の発言はお前が悪い。お前達は立派な人間じゃ」

榛名「すみません・・・・・・」


元帥「とはいえ、あんな事に一々腹を立てていては身が持たんぞ、櫂」

提督「何でだよ、こっちは家族バカにされたんだぞ!!」

元帥「人間というのは本来とても弱い生き物なんじゃよ。一人一人はひ弱故に心優しい。しかし人数が増え群衆となると次第に強大な力を持つようになる」

提督「・・・・・・」

元帥「そうなった時の彼らの意思、つまり民意は正に化け物じゃ。いくら正しくとも彼らの大多数が悪と言えば悪とされる。しかし、その様な理不尽にも歯を食いしばって耐え、儂らは彼らを守らねばならん」

提督「守る必要が何処にあるんだよ、あいつらは自分を守ってくれてる皆を化け物だの何だのって言ってんだぞ!? そんな奴ら守る価値ねぇよ!」

元帥「いくら理不尽でも彼らは守るべき民じゃ。儂ら海軍は国を守っておるのじゃから」

提督「はぁ!?」

元帥「儂らが守っておるのは国土だけではない。いくら土地があろうと、そこを開拓して住み、動かす人がいなければ意味がない。国とは、人間がいて初めて成り立つのじゃ」

提督「っ!? それでも俺は認めねぇ! 守ってもらってる立場で、その恩を仇で返すような奴らなんか!!」ダッ

比叡「あっ!?」

榛名「櫂!!」

ア、カイ! カケッコスルノ? マケナイヨ!
ツイテクンナ! シマカゼネエ!

元帥「・・・・・・やはり理解はしてくれんか」

霧島「仕方ありません、いくら賢くとも感情はまだ歳相応でしょう」

比叡「私達の事を思っての発言なんだけどね」

榛名「て、提督どうしましょう、櫂が、櫂が!!」オロオロ

金剛「は、早く連れ戻すネ! Hurry!!」オロオロ

元帥「まぁ慌てるでない。櫂にも考える時間が必要じゃよ」

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比叡「あれから一時間は経つよ」オロオロ

霧島「何処まで行ったのかしら」オロオロ

金剛「は、榛名?」

榛名「きっと迷子になって泣いてるに違いありません、もしかしたら人攫いに誘拐されたり・・・・・・」ガタガタ

金剛「お、落ち着くネ榛名、カイの事デスそんな事にはならないネー」

比叡「長門さんに扱かれてるもんね」

元帥「む、ローグか。・・・・・・そうか、見つかったか」

艦娘「!!」

元帥「ローグが保護したそうじゃ。どうも女の子と一緒にいたらしい」

金剛「What's!?」

榛名「お友達ができたのでしょうか?」

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提督「・・・・・・ただいま」

元帥「お帰り。頭の中はすっきりしたかね?」

提督「何かどうでもよくなった。皆も当たり散らしてごめん」

榛名「いいんですよ、榛名達を思って怒ってくれてたんですから」

長門「まったく、要らん心配をかけるな」

金剛「? その娘は誰デスカ?」

ヤマ「っ!?」ビクッ

提督「街で会った。俺の友達だ」

ヤマ「ま、眞祓井 耶麻です。初めまして」

榛名「ヤマちゃんですね? 初めまして、榛名です」ニコッ


提督「うちの姉さん達は皆すげぇんだぜ! 皆に勉強も教えてもらってるしな」

ヤマ「へ~、いいなぁ。私も教えてほしいなぁ」

元帥「いやはや、今日は息子が迷惑をかけたようですまなかったのぅ」

ヤマ「! 櫂君のお父さんですか?」

元帥「初めまして、海原 巌山じゃ」

提督「まぁ、実の父親じゃねぇけどな」

ヤマ「え?」

提督「俺は孤児だったのを父さんに拾われたから、血は繋がってねぇんだ」

ヤマ「それでもお父さんでしょ?」

提督「あぁ。血の繋がりなんてどうでもいいしな」

元帥「なかなかしっかりしたお嬢さんじゃ。これからも櫂をよろしくな、ヤマちゃん」

ヤマ「うん! そうだ、櫂君も学校行こうよ!」

提督「は? 学校?」


ヤマ「やっぱりちゃんと義務教育は受けないと!」

提督「でもなぁ、今更小学校行っても何も学ぶ事ねぇし」

長門「行くべきだ。何も学校では授業だけが全てではない」

元帥「長門の言う通りじゃ。何時かはお前を学校に入れようと思っていたのじゃが、少し遅れてしまってのぅ。櫂、お前は同じ年代の友達を作るべきじゃ」

提督「いや、行ってもつまんねぇって」

ヤマ「・・・・・・櫂君は私と学校行くの、嫌?」ウルウル

提督「っ!? 分かったよ、行きゃいいんだろ、行けば!! だからそんな目で見るな!」

ヤマ「えへへ、やったぁ」ニコニコ

提督「っ・・・・・・////」

元帥(ほぅ、なかなかの策士じゃな)ニヤニヤ

榛名(青春ですねぇ)ニコニコ

長門(そういう事か、まったく・・・・・・)ニヤリ

元帥「決まりじゃな。明日にでも話に行くとしよう」

提督「分かった」

元帥「ではヤマちゃん、櫂が送っていくからのぅ。今日はありがとう」

ヤマ「はい、ではさようなら!」ペコ

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提督「・・・・・・なぁ?」

ヤマ「何?」

提督「お前、学校楽しいのか?」

ヤマ「・・・・・・」

提督「あの様子だと、学校でもいじめられてんだろ?」

ヤマ「・・・・・・」コクッ

提督「で、仲良い奴を増やすために俺を誘ったのか?」

ヤマ「っ!? ・・・・・・」ウルウル コクッ

提督「・・・・・・まぁ何にせよ俺はお前の味方でいるつもりだし」

ヤマ「っ!? 本当に!?」パァァ

提督「(ち、近い・・・・・・////)お、おう」タジッ

ヤマ「よかったぁ・・・・・・」

提督「あ、でも俺めんどくさい奴だぜ? 自分が気に入らないとすぐ感情的になるし、ちょいサディストだし」

ヤマ「大丈夫だよ、櫂君可愛いもん!」

提督「っ!? 答えになってねぇよ////」

ヤマ「じゃあ、学校で会えるの楽しみにしてるね!」ノシ

提督「あぁ、じゃあな」ノシ

ーー
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ミラ「お帰りヤマ」

ヤマ「ただいま、おばあちゃん!」

ソラ「あら? ヤマ何だか楽しそうね?」

リク「お姉ちゃん学校でいい事あった?」

ヤマ「えへへ・・・・・・////」ニマニマ

ミラ「ふむ・・・・・・」キィィ

ミラ「・・・・・・なるほど、いい子に出会えたみたいだね」

「何、ヤマに男か!? こりゃめでたい! 酒じゃ婆さん、今夜は祝い酒じゃ!!」

ヤマ「お、男だなんて、おじいちゃん・・・・・・////」カァァ

ミラ「まったく、あんたは毎晩飲んでるじゃないか、この酔いどれ爺」ハァ

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一週間後

提督「何かさっさと話が進んだなぁ」スタスタ

先生「う、海原さん・・・・・・教室はこっちです」スタスタ

提督「先生、教師が生徒に敬語使ってどうするんですか。普通の生徒みたいに扱ってくださいよ」

先生「し、しかしあの元帥殿のご子息を」

提督「俺はあの人じゃありません。何の権力もありませんし、父の威を借るつもりもありません。どうかお願いします」

先生「は、はぁ・・・・・・分かったよ」

提督「では改めてお願いします。俺が海軍元帥の息子だって事は伏せといてください」

先生「それもそうか、なら海外から帰ってきた事にしよう。幸いお前は外国語が上手いしな」

提督「はい。ですが聞かれた時ですよ? こっちからは言わないでくださいね」

先生「分かった」

スタスタスタスタ・・・・・・

先生「ここが教室だよ。もう皆待っている」

ガラガラッ

先生「おーい皆、席に着け」

ワイワイガヤガヤ

先生「今日は転校生を紹介する。さ、入って」


提督「・・・・・・」スタスタ

ザワザワ

ネェ、チョットカッコヨクナイ?
ドウシヨウ、チョータイプナンダケド

ヤマ「!」パァァ

提督「! (お、ヤマだ。! あいつまた何かされたのか?)」

先生「自己紹介してくれるかな?」

提督「」コクッ

提督「海原 櫂です。今日からよろしくお願いします」

先生「じゃあ皆、席順に自己紹介をして」

ーー
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ーーーーーー

先生「じゃあ海原、お前の席は・・・・・・あそこだ」

提督「はい」スタスタ

先生「では授業を始めるぞ。皆教科書を開いて」

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提督「・・・・・・」

提督(初見だし一応真面目に授業は聞いてたけど、やっぱりつまんねぇなぁ)

提督(おまけに・・・・・・)チラッ

ワイワイガヤガヤ

「ねぇ海原君、質問いい?」ワクワク
「あ、私も!」
「僕もいいかい?」

提督の周りには大勢の生徒が集まっていた。転校生に質問攻め、当然の組み合わせである

「おい、新入り!」

提督「あ?」

「俺は霊峰 学様だ! このクラスでは俺に従え!」

これが提督と友提督の初の会合であった。自分達が後に唯一無二の親友となる事を、今の二人は知る由もない

提督「ふーん、よろしく」

「ちょ、ちょっと海原君、霊峰君は・・・・・・」


友提督「俺の親父は国会議員! つまり政治家だ!! そして俺は政治家の息子だ、分かったら俺には逆らうなよ?」

提督「・・・・・・どーでもいい」

友提督「な!?」

「「「「っ!?」」」」ギョッ

友提督「お、俺の親父は政治家だぞ!? 俺にそんな態度とって」

提督「どうなるってんだ?」ギロ

友提督「っ!?」

提督「偉いのはお前の親父さんであって、お前自身じゃねぇだろ」スッ

スタスタスタスタ・・・・・・

ヤマ「!」

提督「よぉヤマ。約束通り来たぜ」ニッ

ヤマ「うん、ありがとう」

チョット、ナンデウナバラクントナカヨクシテルノ!?

提督「ったく、またいじめられてたのか? 頬に痣ができてる」ナデナデ

ヤマ「あ・・・・・・」

「おい海原、そいつに関わるな」

「そいつは『呪われた一族』だぞ」

提督「・・・・・・お前達のその話、何処から仕入れた情報だ?」ナデナデ

「何処って・・・・・・」

「お父さんとお母さんが・・・・・・」

提督「じゃあ聞くけど、お前達自身はその『呪われた』場面を見た事があるのか?」

「「「・・・・・・」」」

提督「・・・・・・やっぱり、周りや親の言う事を鵜呑みにしてるだけか」

「じゃあ海原はどうだってんだよ!」

「まるで自分が私達と違うみたいな言い方してさ!!」

提督「少なくとも俺は自分の目で確かめてから肯定や否定をするさ、周りの意見は参考程度にしか見ねぇよ」

「「「・・・・・・」」」

提督「さっさと席戻れ、次の授業始まるぜ」

ーー
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ーーーーーー


提督「やっぱり学校行っても何も得るもんねぇな」スタスタ

ヤマ「櫂君よかったの? 私を庇って皆の反感買っちゃって」スタスタ

提督「あんな奴ら、こっちから願い下げだ。どうせ今の同級生も高校生になっちまえばほとんど散り散りだしな」

ヤマ「それに霊峰君にもあんな態度とって・・・・・・霊峰君のお父さんに知られたら」

提督「普通の親はそんな態度とる子供に説教するに決まってる。それにもし本当に政治家なら『そんな下らない事で一々多忙な私の手を煩わせるな』とでも言って聞き流すし、こんな事に反応するならそいつはただの親バカか政治家としての器の小さい小者だ」

ヤマ「・・・・・・きっぱり言い切るなぁ、怖くないの?」

提督「そんなもん、長門姉の鉄拳に比べたら他のもんなんて可愛いもんさ」

ヤマ「・・・・・・あのさ」

提督「ん?」

ヤマ「ありがとう。今日、休み時間の間ずっと傍にいてくれて。お陰で今日は誰も嫌がらせに来なかった」ニコッ

提督「そうか。明日以降もいるさ、お前が嫌がらせを受けなくなるまで」

ヤマ「うん!」

ソウダ、ドヨウビウチニキテ! カゾクニアワセルカラ
ワカッタ、タノシミニシテルゼ!

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ーーーーーー

友提督「ちっ、何だあの野郎、この俺様に嘗めた口ききやがって!」ズカズカ

ガチャ

友提督「お父様、ただいま帰りました!」

「・・・・・・」カリカリ

友提督「今日来た転校生が俺に口答えしてきたのです、何とか言ってやってください!」

「私は今忙しいんだ、部屋から出て行きなさい」

友提督「っ!」

ガチャ バタン

プルルルルル・・・・・・

「私だ・・・・・・何!?」

「バカな!? 何故だ!! ・・・・・・この大事な時にしくじりおって!」ガタッ

「・・・・・・っ!? 何!? 私はそんな事まで望んではいない、何とかしろ! もしもし? もしもし!? っ・・・・・・くそっ!!」ガチャン

ーー
ーーーー
ーーーーーー


土曜日

提督「近くで見ると更に大きいなぁ」

ヤマ「皆心待ちにしてたんだよ」

スタスタ・・・・・・

提督「お邪魔します」

ミラ「いらっしゃい。あんたが海原 櫂君だね?」

提督「はい」

ミラ「私は眞祓井 鏡水。ふふふ、何とも女らしくない名前だろう?」

提督「は、はぁ・・・・・・」

ヤマ「もう、おばあちゃん! 何時もそんな事言って!」

ミラ「ふふふ・・・・・・確かにねぇ」

提督「失礼ですが、それなら渾名のようなものを考えたらどうですか?」

ヤマ「渾名?」

提督「そうそう。例えば、鏡水の"鏡"からミラ・・・・・・とか」

ミラ「おや、なかなか可愛らしいじゃないか」

ミラ「ふふふ。ヤマの言う通り、なかなかいい子じゃないか」

ソラ「あら、その子がヤマの彼氏?」

提督「へ?」

ヤマ「お、おおおお姉ちゃん、何言ってるの!?////」

リク「おぉ、あなたが俺のお兄ちゃんだな!」

提督「え、あ、あぁ、よろしく」

ヤマ「リク!? 櫂君まで何言ってるの!?////」

提督「え? 何が?」

ヤマ「な、何でもないけど・・・・・・////」ゴニョゴニョ


ミラ「ヤマ、櫂を案内しておやり。爺さんにもちゃんと紹介するんだよ」

ヤマ「うん! 櫂君行こ!」タッタッタッ

提督「分かった。では失礼します」スタスタ

ミラ「ゆっくりしといで」

ーー
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ーーーーーー

提督「このトウモロコシ美味ぇ!」ムシャムシャ

「当たり前じゃ、この俺が精魂込めて育ててんだからな! たんと食え!」

提督「爺さんすげぇなぁ。あんなでっかい畑一人で耕すなんて」

「いやぁ、櫂と言ったなお前。手伝ってくれた時のあの手際の良さに全然へこたれねぇ体力。最近のガキにしてはなかなか見所がある、流石はヤマが選んだ男じゃ」

リク「確かに全然疲れたとか言わないもん、びっくりしたよ」シャクシャク

提督「家族が運動好きで姉達に鍛えてもらってるんだ、あれくらいなら」

「これからも助けてもらえるとありがたいわい、はっはっはっはっ!!」

ソラ「すっかりおじいちゃんに気に入られちゃった」モグモグ

ヤマ「知り合い以外には本当に無口なのに」モキュモキュ

ミラ「打ち解けてもらえてよかったよ」

「いい食いっぷりじゃ、ほれもっと食え!」

提督「はい!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「今日はありがとうございました、わざわざ野菜まで頂いてしまって」

「また何時でも来いよ!」

ミラ「親御さん達によろしくね」

ヤマ「またね~!」ノシ

提督「さよなら~」ノシ

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ーーーーーー


提督「ただいま」

元帥「お帰り。どうじゃった、ヤマちゃんの家は」

提督「楽しかったよ。ほら、野菜もらっちゃった」

元帥「おぉ、これは何とも見事な夏野菜じゃ」

加賀「茄子やトマト、トウモロコシやキュウリがこんなにも・・・・・・流石に気分が高揚します」

金剛「Wow、明日からのdinnerが豪華デスネー」

高雄「こんなにたくさんの野菜を・・・・・・」

榛名「どれも美味しそうですね」

元帥「今度儂もお礼に行かねばな」

ーー
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ーーーーーー

提督(それからというもの、俺とヤマは毎日一緒に行動した。土曜日はヤマの家に、日曜日は俺の家で遊ぶ。そのうち、俺の家族と眞祓井家は家族ぐるみの付き合いとなった。そんなある日だった)

提督「・・・・・・」

ヤマ「? どうしたの?」

提督「なぁ、最近友提督(あいつ)が来てねぇよな?」

ヤマ「! 言われてみたら、最近霊峰君が来てない・・・・・・」

先生「ほら皆席に着けー」

先生「今日は皆に話がある。霊峰君が、家の事情でしばらく学校を休むそうだ」

提督(家の事情・・・・・・。そういえばあいつ、親が政治家だからどうこうって言ってたな。もしかしてそれが関係しているのか?)

先生「では授業を始めるぞ、移動教室だから遅れないように」スタスタ

提督「これは少し調べる必要があるな」


ヤマ「どうしたの?」

提督「普通なら人ん家の事情には首を突っ込む必要はねぇんだけど、あいつの場合はちょっと特殊だ」

ヤマ「?」

ーー
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ーーーーーー

提督「夕張姉、パソコン貸してほしいんだけど」

夕張「パソコン? いいよ」

提督「ありがとう」スッ

明石「櫂どうしたの? 調べ事?」

提督「まぁね。明石姉、夕張姉、最近何か政界のニュースってあった?」カタカタ

夕張「政治の世界ねぇ・・・・・・最近ずっと引き籠ってて分からないなぁ」

明石「! そういえば確か何とかって政治家が失脚したって話があったような・・・・・・」

提督「! その話何処に載ってたの!?」カタカタ

明石「少し貸して。ページが消されてなかったら・・・・・・」スッ

カタカタカタカタ・・・・・・

提督「!!」

明石「! あった!」カチッ

提督「・・・・・・なるほど、大体把握できた。ありがとう明石姉」

ーー
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翌日

キーンコーンカーンコーン

先生「ではまた月曜日に」

「あ~、一週間終わったぁ!」

「明日買い物行こうよ!」

提督(さて、何とかしてあいつに会うにはどうしたら・・・・・・)イソイソ

ヤマ「櫂君どうしたの?」

提督「ヤマ、あいつの家に行ってみようかと思っているんだけど」

ヤマ「何で?」

提督「事実を確かめに行く」スッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

先生「霊峰君の家の住所を教えてほしい?」

提督「はい。一クラスメイトとして気になりまして。もし彼が家族関係で困っているなら、似たような身内を持つ者同士として俺が力になれるかと」

先生「やめておいた方がいいと思うがなぁ。とはいえ、欠席の理由も詳しくは教えてもらっていないし、学校(こちら)としてはきちんと把握しておきたい」

先生「じゃあ頼んでもいいか?」

提督「はい」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「行けねぇ距離じゃねぇけど、近くはないなぁ」

ヤマ「確かに・・・・・・どうするの?」

提督「ヤマ、今日は俺ん家に来てくれ。そこから姉さんにヤマん家まで送ってもらう」

ヤマ「え? 私も一緒に行くよ!」

提督「今回は俺一人で事に当たる。悪ぃな」

ヤマ「・・・・・・分かった」

提督「ありがとう」


ヤマ「でも何で? 一人で行って大丈夫なの?」

提督「あいつだって男だ、俺一人なら胸の中ぶちまけるかもと思ったんだ」

ヤマ「あ~、男同士ならってやつね」

提督「そうそう」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・って理由なんだ。長門姉、ヤマを家まで送ってくれないかな?」

長門「そういう理由なら致し方あるまい、任せてくれ」

陸奥「念のため私も一緒に行くわ」

ヤマ「長門お姉ちゃん、陸奥お姉ちゃん、よろしくね」

提督「じゃ、行ってくる」

元帥「気をつけてな」

ーー
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提督「・・・・・・」スタスタ

提督「・・・・・・ここか・・・・・・」

ピンポーン・・・・・・

提督「すみませーん」

ガ、ガガ・・・・・・

「はい? どちら様でしょうか?」

提督「学君の同級生です、学君いらっしゃいますか?」

「学は熱を出して休んでいます、お引き取りください」

提督「一週間も下がらない熱がそうそうありますか? それ程なら普通病院に連れて行きますし熱ならちゃんと教師に伝えますよね?」

「・・・・・・帰ってください」

提督「・・・・・・事情は大体把握しています、それを踏まえて何かお力になれないかと伺った次第です」

「・・・・・・」

提督「・・・・・・」


・・・・・・ガチャ

提督「! (ひとりでに門が開いた・・・・・・)」

ガ、ガガ・・・・・・

「入ってください」

提督「お邪魔します」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

「初めまして。学の母です」

提督「初めまして。海原 櫂です」

「それで、大体把握しているというのは?」

提督「私も権力者の父がおりますので。だから学君の悩みを多少なり解決できるかと思いまして」

「・・・・・・分かりました、学の部屋はこちらです」

提督「ありがとうございます」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

コンコン・・・・・・

「学ちゃん、お友達ですよ・・・・・・」

提督「・・・・・・」

「・・・・・・ごめんなさい、学ちゃん今は機嫌が悪いみたいで・・・・・・」

提督「普段も返事しない時は放っておくんですか?」

「はい。下手に刺激したらますます機嫌が悪くなるので・・・・・・」

提督「母親が子供に嘗められてどうするんですか・・・・・・」アキレ

「は、はぁ・・・・・・?」

提督「もういいです。こっからは俺一人でしますので」スッ

「え?」

提督「ふっ!!」ブンッ

バギャァァァァァァンッッッ

「っ!?」ギョッ


提督「親に返事ぐらいしろよ、お前」ズカズカ

友提督「人の部屋のドア勝手に蹴破って入ってくるなんて、どんな教育受けてんだよ」

提督「お前が返事してドアを開ければ済んだ話だ」

友提督「ちっ、何の用だよ」

提督「引き篭もりのクラスメイトを引き摺り出しに来たんだ。来週からはちゃんと学校来やがれ」

友提督「学校なんて行くだけ無駄だ」

提督「俺が言える義理じゃねぇけど、お前は学校に行く必要があるさ」

友提督「・・・・・・どういう意味だ?」ギロ

提督「"今の"お前が学校を休んだところで、さらに自分の将来をめちゃくちゃにするだけだね」

友提督「お前に俺の何が分かる!! こっちの事情も知らねぇくせに!!」ブンッ

提督「知ってるさ。じゃなきゃここに来ねぇよ」サッ

提督「親父さん、蒸発したんだろ?」

友提督「っ!?」

提督「世間にはまだ公にされてねぇ情報だけど、そんな裏情報に精通している姉がいるんだ」

提督「お前の親父さん、裏で政治資金使ってヤバイ事に手をつけてたって話だ。その情報が何処からか漏れて失脚させられた」

友提督「・・・・・・」

提督「そしてそいつはお前達を置いて自分一人で行方を眩ませたんだな。お前は親父を盾にやりたい放題していたから学校に居辛いから仮病で休んでる。だろ?」

友提督「・・・・・・まったく、鋭い野郎だ」

提督「だから俺はお前にあの時言ったんだ、『偉いのはお前の親父さんであってお前じゃねぇ』って」

友提督「反論できねぇな」


提督「とはいえ、俺はお前を助けたいと思っているんだ。お前は寧ろ親父さんの被害者だしな」

友提督「何でだ?」

提督「・・・・・・実を言うと、俺も父さんが権力者なんだ。だからお前の力になれるかと思ってな」

友提督「・・・・・・悪いけど俺はお前に助けてもらうつもりはない。さっさと帰れ」

提督「なら来週から学校に顔を出せ。それを約束するなら帰る」

友提督「っ!! さっきから聞いてりゃ、お前一体何様のつもりだ!!」ガッ

提督「クラスメイト様だ」

友提督「ふざけんじゃねぇ!!」ブンッ

バキィィィッッッ

提督「・・・・・・」

友提督「親父がいなくなった俺の気持ちがお前なんかに分かるものか!!」

提督「俺からしたらお前達家族をあっさり捨てる時点でそんな奴は父親だなんて認めねぇよ」

友提督「っ!?」

提督「そんな奴の事考えるだけ無駄だ、お袋さんと二人でさっさと自立しちまえ」

友提督「・・・・・・」

提督「・・・・・・」

友提督「・・・・・・ふ」

友提督「あははははははははははッッッ」

提督「・・・・・・」

友提督「ったく、お前の所為だぞ」

友提督「今までの悩みが無くなっちまったよ」

提督「いや、そんな事言った覚えないけど」

友提督「一つ、借りができたな」

提督「そうか、なら来週学校に返しに来い」クルッ

提督「じゃあな」スタスタ

ア、コレデカエルンデ。オジャマシマシタ。
ド、ドウモ

友提督「・・・・・・ありがとう」ボソッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


月曜日

提督「さてと・・・・・・」

ヤマ「霊峰君、来ると思う?」

提督「こればっかりはあいつが最終的に決める事だからな」

提督「!」

ヤマ「あ・・・・・・」

友提督「・・・・・・」

ガヤガヤ

「おい、霊峰の奴が来たぜ」

「今まで散々やりたい放題してたんだし」

提督(さて、とりあえずあいつの傍に行くか)スッ

ガラガラ

先生「ほら皆席に着け~」スタスタ

提督「! (ちっ、何て間の悪ぃ・・・・・・)」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ヤマ「櫂君放課後だよ~、どうするの?」

提督「移動教室に先生からの呼び出しがくるなんて・・・・・・まさかここまでタイミング悪ぃとは・・・・・・」

ヤマ「休み時間の間は何もなかったけど」チラッ

提督「・・・・・・」ジーッ

「おい霊峰、ちょっと来いよ」グイッ

友提督「・・・・・・」

ヤマ「! 櫂君!」

提督「あ~、放課後にか。てか、今時校舎裏に引っ張ってくパターンって・・・・・・」スッ

ヤマ「あの三人、前まで私の事いじめてた子達だ」

提督(あれ以降俺がヤマの傍にいるからその内手を出さなくなってたし、次の標的を探してたって所か)

提督「とりあえず、尾行するから先生呼んできてくれ」

ヤマ「! 分かった!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


「今まで散々やりたい放題してたよな?」

「父親の名前出してよぉ!」

「でももうお前を守ってくれるお父さんはいないなぁ」ニヤニヤ

友提督「・・・・・・好きにしろ、こうなる事は分かってたさ」

「おぉ、ならやられても文句ないよな?」ブンッ

友提督「っ!!」バキッ

「えい!」

バシッ

「この!」

バシッ

友提督「っ・・・・・・っ!!」ズキッ

「何だよこいつ、つまんね!」

「やり返さないならもっと殴ろうよ!」

「最近あの呪われ女に手が出せないしな!」

友提督(そうか、そういえばこいつら前まで眞祓井をいじめてた奴らか。なるほど、次の標的は俺か・・・・・・)

提督「だったら俺も殴らせてもらおうかなぁ?」

「「「っ!?」」」

友提督「!」

提督「もちろん標的はお前達三人だけどね」

「う、海原!」

「待てよ、今までは避けてたけどここは先生いないし」

「今までの分殴れるな!」

提督「来いよ、三人がかりで丁度いいくらいだ」

「おらっ!」ブンッ

「この!」ブンッ

「食らえ!」ブンッ

バシッバキッドムッ

提督「・・・・・・」ドシャッ


「何だよ、あれだけ強がっておきながら」

「手応えないなぁ」

「いいじゃん、もっと殴ろうよ!」

提督「へっ、バーカ」ニヤリ

ヤマ「先生こっち、こっちです!」

先生「! 何をしているんだお前達は!!」

「「「っ!?」」」

提督「あ~先生、今一発ずつもらったんですよ」

「や、やべ、逃げようぜ」

「く、くそ!」

「汚ぇぞ!」

提督「おやおや、わざわざ校舎裏(見えない所)まで引っ張ってって三人がかりで寄ってたかって袋叩きにしてる奴らが何言ってんだか」

先生「と、とりあえず五人とも職員室に来なさい!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「これであいつらも懲りただろ、いや~楽しかった」

友提督「何で俺達があまり怒られなかったんだ?」

ヤマ「先生達もあの三人には注意しなきゃって思ってたらしいんだけど、問い詰めてもしらを切るばっかりだったらしいよ」

提督「お前を助けるにも、正面切って殴りに行ったら同罪だからな。だから俺達で策を弄したって訳だ」

友提督「お前本当に小学生か? 年の割に随分大人びてるな」

提督「そうか? 冷静に考えてるだけだ、喧嘩はどっちが悪くても先に手をあげた方が負けなんだから」

ヤマ「でも櫂君殴られてたけど大丈夫なの?」

提督「普段から鍛えられてるからな」


提督「さ、帰ろうぜ。あ、そうだ"マナブ"」

友提督「?」

提督「俺達と友達になってくれねぇか?」

友提督「え?」

ヤマ「あ、私も! 霊峰君とお友達になりたい!」

友提督「し、仕方ねぇな! 友達になってやるよ!」

提督「おう、これからよろしくな!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督(それから俺とヤマ、そしてマナブは掛け替えのない親友となった。その後すぐにマナブは周囲に打ち解け、今ではクラスの中心的存在となっていた)

先生「よし、この前のテストを返すぞ」

「「「え~!?」」」

ヤマ「いや、何で皆嫌がるの?」

提督「今からテストするならまだしも・・・・・・」

友提督「いや、今回難しかったぞ。あ、俺だ、はい!」ガタッ

友提督「お、やったぜ!」つ99点

友提督「あいつらに見せてやろっと!」チラッ


提督「ま、変わんねぇな」つ100点

ヤマ「えへへ、私も!」つ100点

友提督「」

提督「ん? ヤマ、お前その問題理解してなかったよな?」

ヤマ「えへへ」キィィ

提督「な!? お前先生の頭ん中覗いたのか?」

ヤマ「この能力便利だよ~」ニコニコ

提督「うぐ、証拠の残らない完璧なカンニングだな・・・・・・」

ヤマ「だって櫂君ズルいよ、小4なのにもう高校生レベルの教育受けてるんだもん!」

提督「ズルくねぇよ! それに俺より賢い同年代なんて山のようにいるわ!!」

友提督「・・・・・・」

友提督(あぁ、99点って0点なんだな・・・・・・)トオイメ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ヤマ「じゃあねー、櫂君、霊峰君!」ノシ

提督「また明日な」ノシ

友提督「・・・・・・」ノシ

タッタッタッタッ

友提督「・・・・・・なぁ、櫂」

提督「ん?」

友提督「夏のこの時期・・・・・・そろそろ、あの季節だよな?」

提督「? 蝉取りか?」

友提督「ちげーよ! 体育の授業でプールやるだろ?」

提督「確かにプール開きだな」


友提督「それでだ。俺も多少身体を鍛えてさ・・・・・・」

提督「あ~、大体言いたい事は分かった」

提督「俺ん所で鍛えたいと?」

友提督「そういう事だ、お前ん所の姉ちゃん達強いんだろ?」

提督「まぁな。下手したら殺されるぞ?」

友提督「大丈夫だ、多少は頑丈だからな!」

提督「まぁ、聞いてみるか」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・って事なんだ。マナブも一緒に訓練させてくれねぇか?」

長門「なるほどな・・・・・・しかし、私達のトレーニングは厳しい、段階は踏んでもらうぞ」

友提督「ありがとうございます!」

提督「無理言ってごめんな、長門姉」

長門「今日は見学だ、櫂のトレーニングの様子を見ておくんだな」

友提督「はい!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

副長「素振り一万、始め!」

艦娘「1・・・・・・2・・・・・・3・・・・・・」ブンッブンッブンッ

友提督「あれは?」

長門「剣を帯刀している艦娘は皆このトレーニングを受けている。天龍に龍田、伊勢に日向、木曾といったメンバーの他に強さを極めようとする者達もトレーニングに入っている」

友提督「! 櫂は何やってるんですか?」

長門「あいつは別に鍛えてもらっている。見ろ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


提督「やぁっ!」ブンッ

副長「・・・・・・」スッ

バシッ

提督「はっ!」ブンッ

バシバシバシッ

副長「多少は動き良うなったやんか」

提督「やぁっ!」

副長「せやけど・・・・・・」スッ

サッ・・・・・・

提督「っ!?(空振った!?)」

副長「せいっ!」

バシィィィンッッッ

提督「ふぎゃっ!?」

副長「直線的な攻撃ばっかやとすぐ読まれるで」

提督「痛ってぇ・・・・・・」

提督「まだ兄ぃに技出させられねぇのか」

副長「まだまだやな」

妖精「あんなのただの目の錯覚じゃん、剣気が龍の形してるように見えるだけさ」

副長「まぁせやけどな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


友提督「・・・・・・」

長門「あのレベルに今から放り込むわけにはいかん。最初は数名の艦娘の相手をしてもらう、試しに一週間通ってくれ」

友提督「はい・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌日

友提督「最初は誰だ?」

夕立「夕立っぽい!」

提督「えっ!? いきなり夕立姉か!?」

夕立「ちゃんと手加減はするっぽい!」

友提督「よっしゃ、準備運動もしたし何時でもいいぜ!」

提督「あ、ちょい待てマナブ!」


夕立「っぽい!!」ヒュッ

ガシガシッ

友提督「へ?」

夕立「ぽいぽいぽ~い!!」ブンブンブンッ

友提督「うわぁぁぁっ!?」グルグルグル

夕立「えい!」ブンッ

友提督「ふぎゃぁ!?」ドサッ

夕立「あ、やり過ぎたっぽい?」

提督「夕立姉、ちょっとは加減してあげてよ」

友提督「え? 何が起きたの?」

提督「夕立姉の攻撃は速かっただろ?」

友提督「おう、一瞬だった。何があったんだ?」

夕立「君の両肩を掴んで振り回して投げ飛ばしたっぽい!」

友提督「ま、まるで獣みたいだったな」

提督「あの荒々しい攻撃から夕立姉は『魔犬(ケルベロス)』って言われてるんだ」


友提督「こ、これが最初かよ」プルプル

提督「あぁ。どうする、続けるか?」

友提督「望むところだ!」

夕立「じゃあ続けるっぽい!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

一週間後

提督「どうだったよ、この一週間」

友提督「これを何年も続けてたのか、お前」

提督「まぁな。もっと辛いけど」

長門「どうだ、このトレーニング今後も続けるか?」

友提督「・・・・・・考えときます」ガタガタ

提督「だろうな」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・」

友提督「さぁお待ちかねのプールの時間だ」

提督「テンション高いなぁ、お前」

先生「プールでの授業は知っているな? プールサイドではふざけないように。あとプールに飛び込むのはダメだ。きちんと準備運動してからプールに入るんだぞ!」

ハーイ

提督「プールねぇ・・・・・・」

「おーい! 霊峰、海原、遊ぼうぜ!」

友提督「おーう! おい、早く遊ぼうぜ」

提督「興味ねぇよ」

友提督「いいから来いって、いい加減お前も俺ら以外の友達作れよ」

提督「分かったよ」

ソッチイッタゾ、ウナバラ!
ウワッ、ヤルナァオマエ
レイホウイケェ!

ヤマ「・・・・・・」


「ねぇ、霊峰君てかっこよくない?」

「分かる、クラスの中心で頑張ってるもんね!」

「えー、私は海原君がいいなぁ」

ヤマ「!」

「海原君かっこいいもんね~、大人っぽいし、賢いし」

「海原君運動もできるもんね、見てあの腹筋」

ヤマ「・・・・・・」プクーッ

「ねぇ海原君!」

提督「ん?」

「海原君すごい腹筋だよね、かっこいいなぁ」

提督「そうか? 運動してりゃ腹筋ぐらいつくだろ?」

友提督「それはお前だけだろ! 俺なんか今の身体造るのに苦労したぜ」

「やっぱり二人とも鍛えてるの?」

友提督「おう!」

提督「・・・・・・」

「ねぇねぇ、私泳げないんだー。海原君、泳ぎ方教えて!」

ヤマ「!?」

提督「いいけど」

「やったぁ! よろしくお願いします!」

ヤマ(あれ? 何だろう・・・・・・櫂君が他の女の子と話してると、胸が苦しい・・・・・・何で?)

ヤマ(櫂君にはすごく感謝してる。櫂君のお陰で私はいじめられなくなったし、いつも一緒にいてくれるもん)

ヤマ(櫂君が他の女の子と仲良くするのは別に悪い事じゃないのに。寧ろ櫂君は私と霊峰君以外とは全然話そうとしないし、友達を増やすべきなんだから喜ぶべきなのに)

ヤマ(それなのに、何で櫂君が他の女の子と話してるとこんなに嫌な気分なんだろう?)

ヤマ(考えても分かんないや。泳ごっと)


・・・・・・・ビキッ

ヤマ「っ!?」ズキッ

提督「!」

ヤマ(あ、足が攣った・・・・・・? い、息が・・・・・・)ブクブク

提督「おいマナブ、バトンタッチ」バッ

友提督「お、おう。というわけで、これからのコーチは俺だから」

「え~、霊峰君なの?」

ヤマ「・・・・・・」ゴボゴボ

ガシッ

提督「おい、しっかりしろヤマ!」グイッ

ザバッ

提督(! 水を飲んでる、まずいな)バシャッ

提督「おいヤマ! 返事しろ!!」

ヤマ「・・・・・・」

先生「どうしたんだ、海原!」

提督「先生、タオル持ってきてください! 早く!!」

先生「わ、分かった!」

提督「(・・・・・・やるしかねぇな)緊急事態だ、許してくれよヤマ」スゥッ

チュッ・・・・・・

「「「「「「っ!?」」」」」」

提督「・・・・・・」フゥゥゥ・・・・・・

提督「しっかりしろヤマ!」グッグッグッ

ヤマ「ゲホッ、ゴホゴホッ!!」ゴパッ


提督「!! 気がついたか!」

ヤマ「! ・・・・・・櫂・・・・・・君?」

提督「はぁ~、良かった。大丈夫か?」ダキッ

ヤマ「う、うん・・・・・・大丈夫」

先生「タオル持ってきたぞ」つタオル

提督「ありがとうございます。ヤマ、何があったんだ?」

ヤマ「うん、足が攣っちゃって」

提督「あ~こむら返りか。とりあえず今日はもうプールから上がれ。後で念のため保健室に連れてくから」ホラ、タオル

ヤマ「痛っ、足が・・・・・・」ズキッ

提督「軽く解すからな。後はタオル巻いてゆっくり揉んどけ」モミモミ グッグッ

ヤマ「う、うん・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

保健室

「応急処置が良かったね。もう治りかけてるよ」

ヤマ「そうですか」

提督「どうする? 休んどくか?」

「大事をとって休んどく?」

ヤマ「・・・・・・うん」コクッ

「分かったよ、担任には私から言っとく」

提督「じゃ、次の休み時間に来るから」ガタッ

ヤマ「! 待って!」ガシッ

提督「え?」

ヤマ「一緒に・・・・・・いて・・・・・・」

「! じゃあ二人休みか。そう伝えとくよ」ニヤニヤ

提督「は、はぁ・・・・・・」

「いやぁ、青春だねぇ。まだ小4なのに。じゃ、職員室にいるから何かあったら呼びに来て」スタスタ

ガラガラ・・・・・・

提督「・・・・・・どうしたんだ?」


ヤマ「さっき、嫌な気分だった」

提督「?」

ヤマ「櫂君が他の女の子と楽しそうに話してるのを見てると胸が苦しくてたまらない。何でだろうって思ってたら・・・・・・分かったの」

提督「・・・・・・」

ヤマ「私、嫉妬してたんだ・・・・・・だって私、櫂君の事・・・・・・好きだから////」

提督「っ!? ////」

ヤマ「初めて会った時からずっとボンヤリと思ってたけど、今はっきりした。私、櫂君の事が好き////」

提督「・・・・・・////」

提督「・・・・・・俺も、お前の事が気になってた。初めて会った時から・・・・・・一目惚れだったんだよ」

ヤマ「! じゃあ・・・・・・」

提督「ズルいと思われるかもしれねぇけど、俺から告らせてくれ。俺はヤマが好きだ、俺と付き合ってくれ」

ヤマ「うん! こっちこそ!!」ニコッ

提督「さぁ、少し寝ろ。ここにいるからさ」

ヤマ「一緒に寝る?」

提督「寝ません」

ヤマ「むぅ、即答しなくても」

ヤマ「あ、そうだ」

提督「ん?」

ヤマ「せっかく付き合ったんだから、何か特別な呼び方したいな・・・・・・」

提督「? 俺はこのままヤマって呼ぶぞ?」

ヤマ「うーん、じゃあ私は・・・・・・あ!」


提督「お、何かいいやつ思い浮かんだか?」

ヤマ「えへへ、"櫂ちゃん"」ニコッ

提督「っ!?////」ドキッ

提督「ちゃ、ちゃん付けすんじゃねぇ!////」

ヤマ「え~何で? 可愛いのに~」ニコニコ

提督「可愛さを求めるな!」

ヤマ「ねー、やっぱり一緒に寝ようよ~」グイッ

提督「おわっ!?」グイッ

ドサッ

ヤマ「えへへ、捕まえた~」ニヤニヤ

提督「お、おいヤマ、悪ふざけはやめろよ。早く降りろ////」ドキドキ

ヤマ「おやすみ、櫂ちゃん・・・・・・」ギューッ

提督「お、おいこら、俺は女の子の部屋によくある大きめのクマのぬいぐるみか!」

ヤマ「・・・・・・」zzz

提督「早っ!?」ガビーン

提督(く、くそっ! 一体どんな状況だよ、胸の上で好きな娘が寝てるって!)

ヤマ「んにゃ・・・・・・」ギューッ

提督(ヤマの奴、さっきは気にも留めてなかったけど年の割に発育いいな。そしていい匂いする・・・・・・////)モンモン

提督(って!? 俺は一体何考えてんだ!? 高校生レベルの教育受けてるから思考回路まで高校生になったのか!?////)

提督「・・・・・・考えるの疲れた、寝よ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


「おーい、そろそろ授業終わるぞーって、何やってんの?」

ヤマ「・・・・・・」zzz

提督「・・・・・・」zzz

「まったく、保健室で一緒に寝るなんて、中学生や高校生かっての」ヤレヤレ

ヤマ「ん・・・・・・」ムクッ

「あ、起きた?」

ヤマ「おはようございます・・・・・・っ!?////」

「とりあえずそいつ起こしな。もう授業終わるよ」

ヤマ「起きて、起きて櫂ちゃん」ユサユサ

「ん? アンタらそういう仲だったの?」

ヤマ「は、はい・・・・・・さっき告白されました////」

「そりゃおめでとう。同じ女としてアドバイスしておくけど、その恋が冷めないように気をつけるんだよ」

ヤマ「うん!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

数ヶ月後

友提督「そういやよヤマ。櫂の誕生日っていつだ?」

ヤマ「うーん、私も分からないんだ。遅く産まれたって聞いてるだけだし」

友提督「何か祝ってあげたいんだけどなぁ」

ヤマ「・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

榛名「櫂の誕生日ですか?」

ヤマ「はい。いつなんですか?」

金剛「カイのbirthdayは次の土曜日デスヨ」

長門「なんだ、ヤマも祝ってくれるのか?」

ヤマ「はい! 彼女だもん!」


北上「おー、だったらピッタリの誕生日プレゼントがあるよ」ニヤニヤ

大井「流石北上さんです!」

ヤマ「え? どんなのですか?」

長門「あー、これは・・・・・・」アタマカカエ

榛名「あ、あはは・・・・・・」ニガワライ

北上「それはね・・・・・・」ゴニョゴニョ

ヤマ「・・・・・・っ!?////」ボンッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

当日

提督「あぁ、疲れた・・・・・・」

友提督「いやぁ、やっとお前も10歳か」

提督「姉さん達皆して祝ってくれたんだ。そりゃもちろんありがたいけど、ちょっと疲れるぜ」

ヤマ「あ、あのさ櫂ちゃん。私達からもプレゼントがあるんだけど」

提督「ん? 何?」

友提督「まぁ櫂。とりあえず俺からはこれだ、誕生日おめでとう」スッ

提督「おぉっ、新しい恐竜図鑑! 嬉しいよありがとう!」

ヤマ「わ、私のプレゼントは・・・・・・////」

提督「?」

ヤマ「み、耳かきサービス・・・・・・してあげる!」つ耳かき棒

提督「はぇ!?////」

ポン・・・・・・

友提督「まぁそういう事だ。後は二人で楽しめ!」b

提督「お、おう・・・・・・////」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

榛名「櫂とヤマちゃん、上手くやってるでしょうか?」

比叡「大丈夫だよきっと」

長門「だが、この歳で耳かきの癒しというのはどうだろうか?」

北上「分かってないなぁ長門さんは。片方が成人で片方が幼少だったら犯罪っぽいけど、どっちも幼少なら大丈夫だって」

大井「北上さんの言う通りです!」

陸奥「そうそう」

赤城「そんなものでしょうか?」

高雄「多分違うと思いますが・・・・・・」


吹雪「ていうか、北上さんそんな事考えてたんですか?」

北上「失敬な、あたしだけじゃないよ。例えば秋雲とかさぁ」

睦月「秋雲ちゃん達を基準にするのはどうかと思うのです」

天龍「とはいえ俺薄ら考えてたんだけどよ。櫂の奴、まだ10歳なのにイヤに大人びてるよな」

川内「しょうがないよ、私達が総出で教育してるんだし」

金剛「賢くなるのはNo problemデスガ・・・・・・」

霧島「お陰で思考回路もそれなりのものになってしまいましたし」

愛宕「て事は、性欲も?」

加賀「どうでしょう・・・・・・」

長門「否定しきれんな」

天龍「あの歳で性欲持つもんか?」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


あっという間に月日が流れ・・・・・・

提督(12歳)(あっという間に卒業して、この春から俺も中学生か)

ヤマ「櫂ちゃん、制服見に行こうよ!」

提督「おう、じゃあ行ってくるよ」

元帥「気をつけてな」

榛名「行ってらっしゃい」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「俺達の通う中学の制服は・・・・・・あれか」

提督(・・・・・・見たところ普通の学ランだな)

ヤマ「ねぇねぇ見て櫂ちゃん!」

提督「ん?」

ヤマ「このセーラー服可愛い~!!」

提督「それ別の中学だぞ、お前のはこっちだ」

ヤマ「えぇっ!?」ガビーン

ーー
ーーーー
ーーーーーー


ヤマ「・・・・・・ねぇ櫂ちゃん」

提督「ん?」

ヤマ「櫂ちゃんって、将来の夢考えてる?」

提督「そうだなぁ・・・・・・俺は理系に進んで研究職に就きたいな。妖精さんから色々聞いてるうちにワクワクしてきたんだ」

ヤマ「・・・・・・私ね、海軍に入ろうかと思ってるの」

提督「な、何で!?」

ヤマ「櫂ちゃんのお姉さん達を見ててかっこいいって感じてたから」

提督「入っても成れるのは指揮官、提督だけだぜ。戦闘は皆艦娘がしてるし」

ヤマ「それでも・・・・・・私は皆を守りたいよ」

提督「・・・・・・だったら先ずは自分が強くならないとな」

ヤマ「! うん!」パァァ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督(そして俺達は中学校に進学した。授業は俺とヤマは元より、俺達に張り合おうとするマナブも何の問題もなく着いてこれた)

提督(因みに俺達三人は揃って帰宅部だ。とはいえマナブの計らいで時々部活の備品を借りて身体を動かす事もあったな)

友提督「なぁ、ここの問題教えてくれよ」

提督「ん? あぁ、ここはな・・・・・・」

友提督「おぉ、サンキュー!」サラサラ

提督「あ~、何か刺激が欲しいなぁ」

友提督「これ読むか? R-18の如何わしい本」スッ

提督「っ!? 学校に何持って来てるんだ、バカ!」


友提督「健全なる男子中学生はカバンの中にエロ本の1冊や2冊、入れとくもんだぜ?」ニヤニヤ

提督「まったく・・・・・・それに俺彼女いるし、要らなくね?」アタマカカエ

友提督「バカだなぁ、彼女持ちもこういうのはするもんだ」ニヤニヤ

提督「うーん・・・・・・」

友提督「な? 1回だけ、1回だけなら大丈b・・・・・・」

スパーンッッッ

友提督「痛っ!?」

ヤマ「もうマナブ! 櫂ちゃんに何吹き込んでるの!?」プクーッ

提督「上履きで頭は痛てぇ・・・・・・」

友提督「ヤマも読んどくか? 女としての魅力も上がるかm・・・・・・」

ヤマ「死ねッッッ!!////」ブンッ

ズパパパパァァァァァンッッッ

提督「ま、マナブぅぅぅッッッ!?」

友提督「」チーン

ヤマ「もう! 櫂ちゃん帰ろ!」ガシッ

提督「お、おう」グイッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ヤマ「・・・・・・ねぇ櫂ちゃん、やっぱり・・・・・・興味あるの?////」

提督「・・・・・・まぁ、な(寧ろよく今まで性欲が湧かなかったと褒めたいくらいだ)」


ヤマ「・・・・・・あの本の女の人と私と・・・・・・どっちが可愛い?」

提督「お前に決まってんだろ」

ヤマ「! 本当に!?」パァァ

提督「あ、あぁ////」

提督(実際ヤマの奴、初めて会った時よりずっと魅力的になったなぁ・・・・・・////)ポーッ

ヤマ「ねぇ本当? 嘘じゃないよね!?」ズズイ

提督「本当だって////」

ヤマ「本当かなぁ・・・・・・」キィィ

提督(っ!? 疑り深い奴め、こうなったら!)

グイッ

ヤマ「!」

チュッ・・・・・・

ヤマ「っ!?!?!?////」ボンッ

提督「これでもまだ疑うか?」

ヤマ「・・・・・・////」フルフル

提督「俺はお前にベタ惚れのガチ惚れなんだから・・・・・・な?」ナデナデ

ヤマ「わ、私だって! 櫂ちゃんの事大大大好きだもん!!」ギューッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

数週間後

提督「」ズーン

友提督「お、おい・・・・・・いい加減機嫌直せよ」

提督「・・・・・・ヤマがいなくて寂しい」シクシク

友提督「しょうがねぇだろ、夏風邪なんだから」

提督「お陰で今日の期末テスト全然やる気出なかった・・・・・・」

友提督「とか言って結局全教科満点じゃねぇか、分かってんだぞ?」

提督「まぁな」


友提督「とりあえず、部活してくか?」

提督「・・・・・・ヤマの見舞いに行くから遠慮しとく」スッ

友提督「そっか。分かった、じゃあまた来週」

提督「おう」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「とりあえず連絡入れといたし、早く向かうか」スタスタ

提督「人通り少ないけど近道だし、こっち行こっと」スタスタ

ヤマ『海軍に入ろうかと思ってるの』

提督「進路・・・・・・か」スタスタ

提督(俺も軍には興味がある。けど俺は皆みたいにはなれねぇ。未だにあの時の光景が頭から離れねぇ・・・・・・艦娘に対して偏見を抱いている人達が憎い)

提督(それだけじゃねぇ。俺は自分から見てクズだと思った相手に強く当たりすぎだ。俺は人と関わる仕事には向かねぇのかもしれねぇな)

提督「やっぱり研究職かなぁ。一人っきりで研究室に籠って、研究に没頭するのが性に合ってる」スタスタ

提督「ん?」ピクッ

提督(そこの曲がり角から声がする・・・・・・男の声だ)ソッ


「まさか真面目な君が学校にこんなの持って来てたなんてね」

「っ・・・・・・!?」カタカタ

提督(あの二人の高校生、この辺じゃ有名な進学校の生徒か。彼氏彼女って感じじゃなさそうだ)

「こんな事が学校の皆に知れたらどうなるだろうなぁ?」

女子高生(以降女子)「っ!?」

「君達カップルは学校中で話題になるだろうな~、つーかもし先公どもに知られたら君達二人共・・・・・・」ニヤニヤ

提督(あ~、大体事情は察した。他人事だけど俺には"そういうの"の趣味はねぇし、それが目の前で未遂なら尚更胸糞悪ぃ)

提督「姉ちゃん間違っても『私はどうなっても構わないから彼氏を助けて』だなんて言うなよ」スッ

「あぁ!?」ギロッ

女子「え?」

提督「まったく、彼持ちの女に手を出そうだなんて節操無さ過ぎだろ、サルかてめぇは」

「なっ・・・・・・!? くっ、くそっ!!」ダッ

女子「あ・・・・・・」

提督「あぁ、ちょい待った」スゥッ

提督「そんなに性欲有り余ってるなら金出してそういう店に通いやがれぇぇッッッ!!」

「なっ!? くそぉぉ!!////」カァァッ

タッタッタッタッ・・・・・・

提督「あ~すっきりした。いいストレス発散だ」ケラケラ


女子「あ・・・・・・」

提督「あぁ姉ちゃん、災難でしたね。早く彼氏の元に行ってあげてください。それと今後はできる限り彼と一緒に行動してくださいね? では・・・・・・」クルッ

女子「あの・・・・・・できれば、そこまで一緒に来てください」ウルウル

提督「いや、俺も人を待たせ・・・・・・っ!?」

振り返って見たその女子高生は、涙目になっていて身体をブルブルと震わせていた。それを見て提督は断るわけにいかなくなった

提督「・・・・・・分かりました」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督(移動中、女子高生の姉ちゃんはポツポツと事の成り行きを教えてくれた。彼氏との馴れ初め、デートをした事、初めて結ばれた事・・・・・・砂糖吐きそう)

女子「あの、本当に助けてくれてありがとうございました・・・・・・。あの人、学校でも女性絡みで噂の絶えない人だったんです」

提督「なるほど、何人犠牲になったんだか・・・・・・」

「!」

女子「あっ・・・・・・」タッタッタッ

不意に女子高生が走り出した。見れば一人の男子高生がベンチに腰掛けていた

提督(! あのサルと同じ制服・・・・・・って事はこの人が例の彼氏か)

男子高生が走り寄ってくる彼女に微笑みかける。とりわけイケメンというわけではなく、正に普通といった顔つきだがその目は優しさに溢れていた

提督(父さんや叔父さん、兄ぃや姉さん達と同じだ。優しく包み込むような雰囲気・・・・・・なるほど、姉ちゃんが惚れたのも納得だ)

提督が一人納得していると、その男子高生が近づいてきた。どうやら事の顛末を聞いたようだ

男子高生(以降男子)「あの、話は聞きました。僕の彼女を助けてくれてありがとうございます」

提督「いえ、個人的にそういう趣味が無かったので首を突っ込んだだけです。ただの気まぐれですよ」

男子「そ・・・・・・そうですか・・・・・・」


提督「では人を待たせてるんで」ペコッ

男子「ま、待って・・・・・・」

提督「?」

男子「あ、あの・・・・・・何かお礼がしたいんだけど・・・・・・」

提督「お礼なんて要りません」

女子「で、でも・・・・・・」

提督「それに、俺はアンタ達が思うような人じゃない。自分がクズだと思った相手の尊厳やプライドを完膚無きまでに叩き潰したくなるようなサディストだ!!」ギロッ

男子「・・・・・・」

女子「・・・・・・」

提督(ここまで言ったんだ、ヤマみたいなお人好しでもない限り誰だってドン引きするだろ。俺みたいな異常者の事は忘れてくれ)クルッ


男子「それでも・・・・・・君が僕達の恩人である事に変わりはないよ」

提督「っ!?」

女子「私は・・・・・・きっと君の言った通りの事を言ってたと思います。君が私にあの時注意してくれなかったら、間違った判断をして一生後悔してた・・・・・・」ポロポロ

男子「僕も、大好きな人が知らない間に取られてたかもしれなかった。それを防いでくれた君には感謝してもしきれない・・・・・・!」

提督「・・・・・・」ポカーン

男子「だから・・・・・・その・・・・・・僕達と、友達になってくれないかな?」モジモジ

はにかみながら男子高生が予想外の言葉を口にする。女子高生も賛成の様だ

提督「は・・・・・・はぁ・・・・・・構いませんが」

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その後二人はこれといって用事が無いため、提督に着いてくる事になった。提督も話すうちに心優しい二人と打ち解けたようで、許可を得てそれぞれ『兄ちゃん』『姉ちゃん』と親しみを込めて呼ぶようになっていた

提督「だからさぁ姉ちゃん、そこはもっと強気に出ないと。だからあんなサルにつけ込まれるんだよ」

女子「わ、私にできるかな・・・・・・私、引っ込み思案だから」

提督「引っ込み思案だからって逃げたらダメだよ、最低限の反撃する術は持たないと」

女子「は、はい・・・・・・」シュン

提督「兄ちゃんもだ、本当に取られたくない女とはなるべく一緒に行動しないと」

男子「櫂君ってしっかりしてるね、本当に中学生?」

提督「昔から歳の割に大人びてるって言われるんだ、周りに歳上が多いから」

ーー
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提督「着いたよ」

男子「す、すごい大きな屋敷・・・・・・」

女子「こ、ここが櫂君のお家なの?」

提督「違ぇよ、彼女の家」

ミラ「おや、櫂じゃないか」

提督「あ、ミラさん。爺さんにリクも」

「おぉ櫂か、ヤマの見舞いか!」

リク「櫂さん、こんにちは」

提督「こんにちは。はい、学校が終わったから」

ミラ「おや、後ろの二人は?」

提督「さっき知り合った人達だよ。大丈夫、いい人達だから」

ミラ「ふむ・・・・・・」キィィ

男子「あ、あの・・・・・・初めまして、櫂君には先程助けていただいて・・・・・・」

女子「は、初めまして・・・・・・」

ミラ「・・・・・・ふふ、確かにねぇ」ニコニコ

提督「ね? いい人達でしょ?」ニカッ

「にしても、よく来てくれたなぁ」

プルルルル・・・・・・

「お、電話か。櫂達、上がっていてくれ」

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ヤマ「うー・・・・・・」ゴホゴホ

提督「よぉヤマ、熱はどうだ?」

ヤマ「まだ熱いよぉ・・・・・・」


「婆さん、どうも俺達が出なきゃならんみたいだ」

ミラ「うーん、困ったねぇ」

提督「どうしたの?」

ミラ「急用ができて私と爺さんは出かけなきゃならないんだが、ヤマを置いていくわけにもいかないし」

提督「なら俺が留守番も兼ねてヤマを看病するよ」

ミラ「でも・・・・・・」

女子「私達も残ります、明日は休日なので」

ミラ「・・・・・・じゃあお願いしようかね」

提督「もちろん! 任せてくれ」

ミラ「ごめんね、じゃあお願いするよ」

「夜には帰ると思うから、頼むぞ!」

ミラ「バカだねアンタ。私達は今日は帰れないよ。一晩泊まってくるから、若い者同士仲良くするんだよ」

リク「じゃ、じゃあ俺も」

提督「分かった」

ーー
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ヤマ「・・・・・・櫂ちゃん、その人達は?」

提督「さっき帰りに知り合った人達。大丈夫、いい人達だ」

女子「よろしくね」

男子「よろしく」


ヤマ「ヤマです。よろしくゲホッ、ゴホゴホッ」ゴホゴホ

提督「うーん、まだ熱があるなぁ。姉ちゃん、タオル渡すからヤマの汗拭いてやってくれ。替えの服も場所教えてもらって」

女子「分かった」

男子「じゃあ何か消化のいいご飯作るよ」

提督「ありがとう、じゃあ兄ちゃんは飯作るの手伝って」

男子「うん」

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女子「何処か痒いところとかない?」ゴシゴシ

ヤマ「大丈夫・・・・・・」

女子「ヤマちゃんって、肌綺麗だね」ゴシゴシ

ヤマ「そうかな?」

女子「中学生なのに、顔も可愛いし胸も大きいし・・・・・・」ハイフク

ヤマ「お姉さんも負けてないよ」ウケトリ

女子「そう? ありがとう」ニコッ

ヤマ「ふー、だいぶさっぱりしたぁ。ありがとう」

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男子「何を作ろうか?」

提督「お粥やうどんかな」

男子「じゃあお粥かな?」

提督「米がありゃいいんだけど」チラッ

男子「もうほとんど残ってないね」


提督「うどんは?」

男子「無いよ」

提督「はぁ・・・・・・仕方ねぇ、素麺はあるし煮麺でも作るか。兄ちゃんネギ刻んで」

男子「分かった」

ーー
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ヤマ「ごちそうさまでした~」

女子「どう? 気分よくなった?」

ヤマ「うん!」

男子「よかった」

提督「ほら、さっさと寝ろ。歯磨きはしろよ」

ヤマ「はーい。じゃあおやすみ~」スタスタ

提督「・・・・・・」

男子「おやすみ」

女子「ゆっくり休んでね」

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提督「・・・・・・それで、今日の問題となったブツは?」

女子「これだよ」スッ

提督「・・・・・・」ウケトリ

提督(なるほど、交際しているから避妊具を持ち歩く事は何らおかしい事でもない。でもこの二人は真面目な性格だから、これすらも脅しの材料になるってわけだ)


男子「こ、これ・・・・・・初デートの時とこの前のプリクラ」

女子「////」

提督「まぁプリクラの写真を入れとくのは大丈夫だろ」

提督「姉ちゃん、帰りも言ったけど冷静に対処しなきゃ。普通、人の持ち物勝手に見てる時点で相手が悪いだろ?」

女子「で、でも生徒指導の先生にばれたら・・・・・・」

提督「先生がその現場を目撃したならともかく、直接見てないなら知らぬ存ぜぬで通せばいいんだよ」

女子「で、でも・・・・・・」

提督「とにかく。証拠隠滅も兼ねてこれは俺が貰っとくから、明日以降は誰かに聞かれても知らぬ存ぜぬで押し通しなよ?」

女子「うん。ありがとう、櫂君」

男子「ごめんね、僕がもっとしっかりしていたら」

女子「ううん、そんな事ない。私が落し物しなければ」

提督「タラレバいってもしょうがねぇだろ。とにかく、二人は人前でもっとイチャつけ。そしたらそれが周囲への牽制になる」

男子「う、うん////」

女子「善処します////」


提督「そういえば二人は高三でしょ? もう進路決めてるの?」

男子「い、医大に行きたいって思ってるんだ」

提督「医大? 医者が夢なのか?」

男子「うん。小さい頃からの夢なんだ」

提督「推薦?」

男子「ううん。基準は満たしてるけど、僕は最後まで頑張りたいんだ」

女子「私も、足を引っ張らないようにしてるの」

提督「姉ちゃんの志望は?」

女子「・・・・・・」チラッ

男子「?」

女子「////」

提督「あぁ、なるほど」

男子「櫂君は将来の夢って決まってるの?」

提督「理系の研究職に就きたいって思ってるんだ」

女子「ヤマちゃんからご家族の話聞いたよ」

提督「!」

提督「あぁ。俺の父は海軍元帥・・・・・・艦娘の提督をしているんだ」

男子「!」

女子「・・・・・・櫂君の口から、聞かせてもらってもいいかな?」

普通ならば、父親が海軍に所属していれば子供は同じ道を歩もうとする。しかし何故彼は海軍に入ろうとしないのか? 女子校生はその理由を聞いた

提督「俺には100人を超える、いや下手したらその倍以上の姉がいる。艦娘の姉だ」

提督「皆は本当に優しくて俺を実弟のように育ててくれた。勉強を教えてもらい、身体を鍛えてもらい、遊んでもくれた。俺は姉達が大好きだ」

提督「でも世間一般の奴らは、艦娘を兵器だの化け物だの、深海棲艦と同類だと陰口をたたく。それが俺には我慢ならないんだ」

男子「・・・・・・」


提督「二人は艦娘についてどう思ってるんだ?」

女子「・・・・・・」

提督「別にどうこうするわけじゃねぇ。正直に答えて」

男子「僕は彼女達のお陰で僕達が生かされていると思う。確かに戦いは続いているけど、僕達は自由に学校に行ったりできてる。それは艦娘の皆が頑張ってくれてるからだよ」

女子「私も同じ。艦娘の皆がいなかったら私達はとっくに全滅させられていたと思う」

提督「!」

男子「僕達は艦娘に感謝してるよ」

女子「今日櫂君に会う前からずっとね」

提督「・・・・・・よかった」ニコッ

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翌日

ミラ「本当にありがとうね」

ヤマ「ばいばい、また明日遊びに行くね!」

提督「風邪が治ったらな」

男子「お世話になりました」

女子「ありがとうございました」

提督「じゃあ兄ちゃん姉ちゃん、またいつか。いい報告期待してるよ」

男子「うん。ありがとう」

女子「またね」

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明石「あ、櫂どうしたの?」

提督「明石姉、ちょっと聞きたい事があるんだ」

明石「何?」

提督「・・・・・・」

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二週間後

提督(あれから暫くして兄ちゃん達から連絡が来た。どうやらあのサルは誰にも話していなかったらしく、先生達にも知られていなかったそうだ。そして今や学校内では付き合ってると認知されており、あの手の出来事は無いらしい)

ヤマ「何考えてるの?」

提督「さぁな?」ニヤリ

ヤマ「もー、教えてよ~!」プクーッ

提督(ついでに、後日俺達はデートの後晴れて(?)結ばれた。因みに姉ちゃんから預かったやつは使うより前にヤマに一つ残らずポイされました・・・・・・)モンモン

ヤマ(櫂ちゃんが何だかエッチな事考えてる気がする)

提督「とりあえず。早く帰るか」

ヤマ「うん」

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ヤマ「あのお兄ちゃん、医者を目指してたの?」

提督「あぁ。きっとすげぇ努力してきたんだろうなぁ」

ヤマ「それを追いかけて必死に頑張る彼女って何だかほのぼのするなぁ」

提督「そうか?」

ガッ・・・・・・

ヤマ「あっ、すみません!」ペコッ

「痛てぇじゃんかよ、何するんだ!」

提督「!? お前は!」

「!? てめぇはあの時のガキ!!」ガッ

サル改めチャラ男は提督の胸ぐらを掴んでグイと引き寄せた。その顔は激しい憎悪に歪んでいる


提督「こんなとこで会うなんてな。発情期は乗り越えられたか、サル」

チャラ男「てめぇの所為で俺がどれだけ恥をかいたと思ってんだ、今日こそは落とし前つけてもらうぞ!」

バキッ

ヤマ「櫂ちゃん!」

胸ぐらを掴んだ状態からチャラ男の拳が提督の顔面に直撃し、提督は地面に倒れた。しかしすぐにはね起きて睨み返す。その口からは一筋の血が流れていた

提督「何が恥だ、人の女を寝取ろうと脅してる時点でてめぇは男の恥晒し、人の風上にも置けねぇ獣畜生以下の存在だ!」

チャラ男「な・・・・・・このぉ」プルプル

ヤマ「櫂ちゃんもうやめようよ!」グイッ

チャラ男「! ちょうどいい、その娘の身体で払ってもらおうかなぁ」ニヤリ

「おう、何やってんだ?」

チャラ男「おう、今からこの女やるぞ、お前らも手伝え」

「うひょ、上玉じゃん!」

「楽しませてもらうぜ!」

提督(ちっ、まさかの援軍かよ。合わせて四人か)

提督「そういうのは俺を殺してからにするんだな」

チャラ男「いい度胸だ」

「かっこいいぜ、彼氏」ニヤニヤ


ガシッ

ヤマ「きゃあ!?」グイッ

提督「!? ヤマ!!」

「がら空きだぜ、バーカ」ニヤニヤ

ヤマ「離してよ!」

「近くでみたらますます可愛いじゃん、よく見りゃスタイルもいいし」ニヤニヤ

チャラ男「あっけないな。所詮は威勢だけのガキ、ただの中学生だな」

提督「あ"?」ギロッ

チャラ男「? 何だよ、何か間違った事言ったか?」

提督「その中坊にムキになってんのは何処の誰だ、クソザルがぁっ!!」ダッ

バキィィィッッッ

チャラ男「ぐぁ!?」

突如顔面を殴られたチャラ男はそのあまりの拳の重さに倒れる。間髪入れずにヤマを捕まえてる相手に提督は飛び蹴りを放つ

提督「いつまで汚ぇ手で触ってんだクソッタレ!!」ダッ

ドガッッッ

ヤマを掴んでいる手に飛び蹴りが入り、手を離した隙に提督はヤマを掴み、包囲網から出た

ヤマ「櫂ちゃんありがとう、すぐ逃げ・・・・・・」

提督「先逃げろ、俺はこの害虫どもを駆除する!!」ギロッ

その双眸は普段の提督からは想像出来ないものだった。まるで汚物を見るかのように冷たい眼差しからは、荒れ狂う烈火の如き闘争心と憎しみが剥き出しにされている

チャラ男「やってくれるじゃん、ますます燃えてきたぜ」スッ

提督「」ダッ

バキィィィッッッ

チャラ男「うぐっ、捕まえたぞ」ガッ

提督「っ!?」

チャラ男「石で殴られた事あるか?」つ石

ヤマ「!?」

チャラ男「俺もこんな人間じゃなかったのに。お前があの時人の恋路を邪魔しなかったら俺も荒れなかったのにねぇ」ニヤニヤ

提督「はっ、何が恋だ。お前が欲しかったのはただの肉欲だろ。恋人じゃなくてもただ自分の性を発散させるだけの女が欲しかっただけだろうが。だからてめぇは人の女にあんな事ができるんだ」

チャラ男「何が悪いのさ? あんな童貞よりも俺の方が見た目もテクも上だ。あの娘も俺の方が良いに決まってる」ニヤリ

提督「それがお前の尊厳か?」

チャラ男「あぁ、俺とやった女子は皆俺のテクで堕ちちゃうぜ」


陸奥「あらあら、そんな無骨なプライドなんて砕き甲斐がないわ」

チャラ男「なっ!?」

「「「っ!?」」」

赤城「陸奥さん何を?」スタスタ

提督「陸奥姉!? 赤城姉まで、何で此処に!?」

陸奥「赤城の食べ歩きに付き合ってたのよ、そしたら櫂の声が聞こえて」

提督「・・・・・・」

赤城「とにかく、ヤマちゃんこっちに!」

ヤマ「う、うん!」

陸奥「それで? いつまで弟を組み伏せてるの?」チラッ

チャラ男「何だかよく分からねぇけど、これまたいい女が来たねぇ」ニヤニヤ

「ちょうどいいや、こいつもやっちまおうぜ!」

陸奥「あらあら、会ってすぐのお姉さんにヤラシイ視線向けるなんて、本当に節操ないわね」スッ

ガシッ

チャラ男「!?」グイッ

陸奥「えい」ブンッ

ドシャッ

チャラ男「ぐぁっ!?」

「うぎゃっ!?」

「ふぎゃ!?」

「ぐはっ!?」

投げ飛ばされたチャラ男は仲間を巻き込んで地面に倒れ、四人は目を回している

陸奥「大丈夫?」

提督「あぁ。ありがとう、陸奥姉」


陸奥「もう、こんなにボロボロになって。帰ったら長門にお説教してもらうわよ」ナデナデ

提督「えぇっ!?」ガビーン

陸奥「赤城、櫂とヤマちゃんを連れて先に帰ってて。すぐに追いつくから」

赤城「はい」

提督「陸奥姉は?」

陸奥「盛りのついた獣を去勢するのよ」ペロリ

ヤマ「っ!?」ゾクッ

陸奥「大丈夫よ、こんな子達の性欲処理なんかしないから」

提督「そういう問題じゃないけどね」

スタスタスタスタ・・・・・・

陸奥「さて、ちょっと試したかったのよねぇこれ」スッ

悪戯っぽく笑う陸奥は何処からか注射器を取り出した

ーーーーーーーー
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ーーーー
ーー

三年前

提督「なぁ明石姉」

明石「どうしたの?」

提督「性欲を抑える薬って無い?」

明石「はぇ!?」


提督「俺まだ小4じゃん? まだ性欲出すには早いと思うんだけど、皆の英才教育で高校生の思考回路だからさ。このままじゃ面倒じゃん、頼む」

明石「は、はぁ、あるにはあるけど・・・・・・。ちょっと待ってて」スタスタ

提督「にしても、色んな物があるなぁ」キョロキョロ

提督(ん? 何だこれ? 『身体に染み付いた技術を忘れさせる薬』?)

提督("料理"に"球技"、"水泳"に"筋力"、"道術"まで・・・・・・無駄に品揃えいいな。つーか、これ必要な場面あるか?)

提督「ん!?」ギョッ

提督("性"? 何だこりゃ!?)

陸奥「あらあら? 何見てるのかな?」ニヤニヤ

提督「うぉっ!? 陸奥姉脅かすなよ」ビクッ

陸奥「櫂が見ていたのはね、服用者の体に染み付いた性技が綺麗さっぱり取れるのよ」

提督「それに限らずこのシリーズ需要ある?」

陸奥「使いようによっては必要かもね」ニコニコ


明石「櫂、これならあるけど」スタスタ

提督「それで大丈夫だよ、ありがとう」

明石「但し!!」ガッ

グイッ

提督「(か、顔近い・・・・・・)何?」ビクビク

明石「本っ当に強力な薬だから絶対に服用方法を守ってね?」

提督「え? 何d・・・・・・」

明石「分かった!?」

提督「お、おう」

スタスタスタスタ・・・・・・

陸奥「随分念を押したわね」

明石「本当にキツい薬なんですよ」

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二週間前

明石「聞きたい事って?」

提督「明石姉がくれたあの薬、三年間言われた通りの服用法をしてきたけど、ありゃ一体どんな薬なんだ」

明石「あれはね。中和剤で100倍に薄めたものを更に砂糖や小麦粉で固めた錠剤。原液はあまりに危険だから」

提督「危険ってどれくらい?」

明石「少量の摂取で性欲が無になって二度と湧かなくなる」

提督「・・・・・・は?」


明石「つまり原液を少量でも体内に取り込んだら、その男性は今後一切勃起も射精もできなくなるほどの劇薬。生命活動には何ら支障は無いけど、その人は一生交尾ができなくなるの」

提督「」ゾクッ

明石「元は野良猫やペットを傷つける事なく去勢させるための薬だからね。だから人体にも何も影響ないんだよ」

提督「もうそろそろ止めたくなってきた」

明石「! よかったぁ、もし万が一があったらって心配してたのよ?」

提督「もう今日限りであの危険薬とはおさらばしようと思う」

明石「うんうん、明日からちゃんと性欲は出るからね! 安心して!」ニコニコ

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陸奥「明石から貰ってきちゃった。でも正に使い時よね」

つまり彼女が持っているのは、例の劇薬の原液と性技を忘れさせる薬である

チャラ男「くっそ、何するんだよ!」

陸奥「もうちょっと大人しくしててね」ズン

倒れているチャラ男に馬乗りになる陸奥。その顔は妖艶な笑みを浮かべている

「「「ひいっ!?」」」ゾクッ

チャラ男「だ、大体何なんだよ、俺達お前に会ったの初めてだぞ!」

陸奥「私だってそうよ。それにいくら私でも一般人に手を出すはずないじゃない」

チャラ男「はぁ? 何言ってるんだよ?」


陸奥「私は軍人、貴方が傷つけたのは軍人の家族よ。例え軍人(そう)じゃなかったとしても、弟を傷つけた貴方達を私達は絶対に許さない」

チャラ男「っ!?」

陸奥「それじゃあ貴方の尊厳、つまり無尽蔵の性欲と自慢のテクニック。砕かせてもらうわよ」つ注射器×2

チャラ男「ひ、い、嫌だ、や、止めてくれ・・・・・・」ガタガタ ポロポロ

陸奥「きっと貴方が寝取ろうとした同級生も、櫂が助けなかったらそんな顔してたのよ。貴方達が真っ当に恋愛していたらこんな事にはならなかったのに」

チャラ男「っ!?」

陸奥「大丈夫、死にはしないわ。但し一生エッチできなくなるだけ」ニッコリ

プスッ・・・・・・プスッ・・・・・・

「「「っ!?」」」ガタガタ

陸奥「貴方達も同罪よ。同じ罰で償ってちょうだい」チラッ

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ヤマ「ふぇぇぇん・・・・・・」

提督「・・・・・・」

長門「それで喧嘩していたところをお前達が通りかかったと?」

陸奥「えぇ」

赤城「そういう事です」

長門「なるほど」ギロッ

提督「っ・・・・・・」

ーー
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ヤマ「櫂ちゃん、約束!」

提督「ん?」

ヤマ「今度からは絶対に自分の命を軽く見ないで。私のためにも生きてよ・・・・・・」

ヤマ「櫂ちゃんに守られてばかりは嫌だよ。私だって櫂ちゃんを守るんだから!!」

提督「・・・・・・分かった」

ミラ「ヤマ、大丈夫だったかい?」

ヤマ「うん」

ミラ「櫂、孫を守ってくれてありがとう。でもあんたも私達の大事な孫なんだ、いいね?」

提督「・・・・・・」コクッ

ミラ「巌山も、迷惑かけたね」

元帥「いや何の。ではミラさん、儂らは帰りますので」

提督「じゃあなヤマ」

ヤマ「っ!!」タッ

提督「!」

チュッ・・・・・・

ヤマ「ん・・・・・・」ギューッ

提督「・・・・・・」

ヤマ「ぷはっ、おやすみ櫂ちゃん////」ニコッ

提督「おやすみ////」

スタスタスタスタ・・・・・・

ヤマ「」クルッ

ミラ「? 何処に行くんだい?」

ヤマ「ちょっと倉庫に探し物」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


提督「ただいま・・・・・・」

榛名「櫂!!」タッタッタッ

提督「! 榛名姉」

榛名「ごめんなさい、痛かったですよね?」ギューッ

提督「平気だよ、伊達に鍛えられてねぇし」

榛名「あんな酷いこと言ってごめんなさい、榛名は櫂の事大好きですよ」ポロポロ

提督「分かってるさ。だから厳しく怒ってくれたんだろ?」

榛名「」ギューッ

提督「長門姉も、ありがとう。心配してくれて」

長門「私もキツく言いすぎたな。すまない」ナデナデ


明石「微笑ましい光景ですよね~」ホノボノ

陸奥「でも私達は・・・・・・」チラッ

少し離れた所で陸奥と明石は正座させられていた

元帥「それで陸奥? 赤城から聞いたが一般人相手に劇薬を投与したというのは本当かね?」ギロッ

陸奥「・・・・・・はい」

元帥「それで、明石はそれを作って剰え陸奥(このサディスト)に渡したのか?」

明石「さ、最近櫂から話を聞いていたもので、念のためと思っていたのですが」

元帥「はぁ・・・・・・使った者もそうじゃが、作って渡した者も一体何を考えておるか」

明石「うぅ・・・・・・」

陸奥「で、でも相手は櫂を傷つけた挙句石で殴ろうとしてたのよ? それ以前に櫂が助けた女子校生にも危害を加えようとしてたし、これぐらいの私刑なら」

提督「まぁでも陸奥姉は俺達を助けるためにしてくれたんだし、明石姉も俺の事を案じてくれてたわけだし」

元帥「例えそうでも・・・・・・あぁ、頭が痛い。とりあえずお前達二人は一週間謹慎じゃ」

陸奥「はい・・・・・・」

明石「分かりました・・・・・・」

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ーーーーーー


一年後

提督「あれからあっという間に一年が経ったなぁ」

提督(俺達は中学二年になった。そして兄ちゃん達二人は無事に海外でも最高難度の大学医学部に合格、日々学業に励んでいるそうだ。俺も負けてらんねぇなぁ)

ヤマ「じゃあ櫂ちゃん、また明日!」ノシ

提督「おう!」

スタスタスタスタ・・・・・・

友提督「・・・・・なぁ」

提督「! マナブか、どうした?」

友提督「・・・・・・俺のクソ親父の事で分かった事があるんだ」

提督「!?」

友提督「アイツは政治資金絡みで黒い噂があったってのは知ってるよな?」

提督「あぁ。それが何処からか情報漏洩して失脚したんだろ?」

友提督「俺のクソ親父はかなりやばい事考えてたらしいんだ。詳しくはお前ん家で話す。お前の親父さんも聞いておいた方がいいかもしれねぇし」

提督「・・・・・・」コクッ

タッタッタッ・・・・・・

ーー
ーーーー
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元帥「それで、何かの?」

提督「・・・・・・」

友提督「はい。俺の父は政治資金と言って受け取った金をある組織に流していたそうなんです」

提督「その組織って?」


友提督「詳しくは知らないけど、艦娘に成り代わって深海棲艦を撃滅しようとしている過激組織らしい。かなりの軍事力と科学力を持ってるみたいだ」

提督「何だその絵物語みてぇな奴ら」

元帥「何とも勇ましいものじゃ」

友提督「軍人嫌いだった父は彼らの思想に多少なりとも賛同していたみたいで、政府の金を活動資金として提供していたんです」

元帥「・・・・・・」

友提督「しかし彼らは日本どころか世界すらも自分の傘下に置こうとした。そのためのカードとして開発したものがヤバすぎるやつだったんです」

友提督「それを知った父は怖くなったのか資金提供を打ち切り、その結果あんな目にあったようです」

提督「つまり・・・・・・詳しくは不明だけどそいつらは今現在、世界を相手にできるほどの何かを持ってるってわけか?」

友提督「あぁ」

元帥「それにしてもよくぞそこまで調べあげたものじゃ。一歩間違えば死んでいたかもしれんぞ?」

友提督「はい。我ながら奇跡だと思いますよ」

元帥「話してくれてありがとう」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌日

提督「・・・・・・」スタスタ

提督「過激派か・・・・・・俺もある意味奴らと同じだ」

提督「自分が気に入らない相手を力でねじ伏せようとする。獣みてぇだな」


ガッ

提督「っ!?」

一瞬の出来事だった。提督は突如現れた黒服達に捕まり、口元にハンカチを押し付けられた

提督「何・・・・・・を・・・・・・(まずい、麻酔作用のある薬か・・・・・・!?)」クラッ

「よし、今だ運べ!!」

提督「」ガクッ

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榛名「!」ピクッ

金剛「? 榛名、どうしたデース?」

タッタッタッタッタッタッ・・・・・・

明石「あ、金剛さん、榛名さん!」

金剛「明石に夕張、どうしたデース?」

夕張「い、一緒に来てください!!」


タッタッタッタッタッタッ・・・・・・

島風「おう!? 何やってるの?」

明石「だ、大至急提督にお伝えしなければ!! 大淀を呼んできて!」

島風「ま、任せて!」ヒュンッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

バタンッッッ

明石「た、たたた大変です!!」

夕張「い、一大事です!!」

元帥「! どうした、二人ともそんなに慌てて」

明石「か、櫂が・・・・・・誘拐されました!!」

艦娘「っ!?」

元帥「何じゃと!?」ガタッ

夕張「櫂の持ち物には発信機が仕込んであるんですが、それの変化からして車で連れ去られたようです!!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「う・・・・・・ここは?」

提督(何処かの倉庫か? にしては狭いな)

ヤマ「櫂ちゃん・・・・・・」

提督「! ヤマ!? 何でここに!?」ダッ

声のする方を見ると、すぐ側でヤマが柱に縛りつけられていた。提督は思わず駆け寄って抱きしめる

ヤマ「いきなり知らない人達に気絶させられて・・・・・・それで・・・・・・」ポロポロ

提督「っ!? 何かされたのか!?」


『目は覚めたかい? 海原 櫂君』

突如部屋の照明が点き、声が響き渡る

提督「!」

『ようこそ、我らがアジトに。先ずは謝罪させてほしい、手荒な真似をしてすまなかったよ。何せあの元帥のご子息だ、生半可な方法じゃあ返り討ちにあうと思ってね』

提督「(変声機を使って喋ってるな)俺の事はどうでもいい。この娘は関係ねぇだろ、さっさと解放しろ」

『いや、彼女は必要だ。君に妙な真似をされては困る』

提督「どういう意味だ?」

『単刀直入にいう。我々はとあるウイルスを開発した。深海棲艦をも殺せる強力なやつをな。だが軍や政府はこのウイルスを使う事を禁じた』

提督「当たり前だ、そんなモン海にばらまかれたら深海棲艦どころか他の海洋生物にも影響が出るに決まってる」

『そうではない。彼らは恐れているのさ、戦争の終結を』

提督「は?」

『考えてもみたまえ、今日本は艦娘によって世界で最も対等に深海棲艦と渡り合っている。それがなくなればどうなる? また日本は弱い国に逆戻りだ』

提督「人間同士の戦争はずっと昔に終わってる。弱くても小さくても平和でいればいいじゃねぇか。そうなるために父さん達は奮闘しているんだ」

『甘いな。この話は平行線だ、今はよそう。さて、そのウイルスを我々は国への、延いては世界への貢献に使いたい』


『しかし、もはやその思いはない。我々に賛同できん奴らには消えてもらう。そうすれば世界は我々のもの。深海棲艦を殲滅し、我らの崇高なる志で統一された世界となろう』

提督(イカれてやがる。言ってる事がめちゃくちゃだ)ゾワッ

最もらしい事を言っているが、全然要領を得ない支離滅裂な主張。だがそれでも、そのようなウイルスがあるなら彼らはかなり危険だ

提督「!?」

急に目の前の画面が点き、そこにはカウントダウンが表示されていた

『このカウントダウンの終了とともにウイルスを世界にばら撒く。世界の人々が気づく間もなく、ウイルスは深海棲艦はもとより全人類を蝕むだろう』

提督「何だと!?」ゾワッ

『但し我々も鬼ではない。だから君には選択の余地を与えよう。マシンの動力を切る電源がある。それを机の上のピストルで撃ち抜けばこのマシンは止まる』

提督「!(ピストルってこれか)」スッ

提督「電源は何処だ?」キョロキョロ

ヤマ「・・・・・・」ガタガタ

提督「これか? これか!?」ガサガサ

ヤマ「櫂ちゃん・・・・・・」

提督「ここにはない・・・・・・ならこっちか?」スタスタ

ヤマ「櫂ちゃん!!」ガシッ

提督「!? 何だヤマ」

唐突に提督の手を掴んだヤマは震えながら








その手を自分の額に当てた・・・・・・






提督「!? ・・・・・・まさか」

ヤマ「ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」ポロポロ

『見つかったようだね』

提督「てめぇ・・・・・・!!」ギロッ

『マイクロチップ型の電源をその娘の頭に埋め込ませてもらったよ。言わなくても分かるだろうが、敢えて言わせてもらおう』

『彼女の頭を撃ち抜けば世界は救われる』

提督「!?」

『愛する女か、全人類か、どちらか選びたまえ』

提督「そんな事・・・・・・できるわけねぇよ・・・・・・」ポロポロ

『さぁ、選べ! どちらかを切り捨てれば片方が助かる!』

提督「い、嫌だ!! 俺にはできねぇ!」

『ならばどちらも失うだけだ。嫌だ嫌だと言ってどうにかなる程世の中は甘くないぞ』

提督「黙れ!!」ギロッ

ヤマ「待ってください!」

提督「!?」

ヤマ「彼と・・・・・・話をさせてください」

提督「ヤマ! 何言ってんだよ!!」

『いいだろう。時間も余裕がある、二分ほどやるから話をつける事だ』

ヤマ「櫂ちゃん・・・・・・」


提督「安心しろ、すぐに何とかするからな」

ヤマ「・・・・・・」ダキッ

提督「!?」

ヤマ「これ以上苦しまないで。私を殺して」

提督「馬鹿な事言うな!! そんな事できるわけねぇだろ!」ポロポロ

ヤマ「いつもならもっと冷静なのに。櫂ちゃんが子供っぽいところって何か新鮮だなぁ」ニコニコ

提督「うるせぇ・・・・・・」ポロポロ

ヤマ「櫂ちゃんはいつも私の傍にいてくれた。一緒に遊んで、勉強して」

ヤマ「一緒に笑って、一緒に泣いて」ジワァ

ヤマ「恋人になってからはもっと仲良くなれた」ツーッ

ヤマ「何十回もデートして、何十回も愛し合って、本当に幸せだった」ポロポロ

提督「・・・・・・」ポロポロ

ヤマ「私は心の底から櫂ちゃんの事愛してるよ」ニコッ

提督「俺もさ」グシグシ

ヤマ「・・・・・・お願い」

提督「・・・・・・」グイッ

ヤマ「!」

チュッ・・・・・・

これが最後だ。提督は愛しい彼女にキスをする。応えるようにヤマも両腕を提督の首に回し、強く抱きしめる。この行為を惜しむように互いに強く抱きしめ合い舌を絡ませた後、提督はヤマの眉間にピストルを向ける

提督「ヤマ、お前を愛してる」カチャ

ヤマ「櫂ちゃん、愛してるよ」








ドォォォォォンッッッ






提督「・・・・・・」ポロポロ

ヤマ「・・・・・・」ユラッ

ドシャッ・・・・・・

眉間を撃ち抜かれたヤマはゆっくりと倒れた。だがその顔には死への恐怖や絶望など微塵もなかった。この上なく安らかな、幸せそうな死に顔である

『どうやら全人類は救われたようだ』

提督「・・・・・・」ギロッ

『櫂君、君に一つ謝罪しなければならない』

提督「謝罪だと・・・・・・? 今更何を謝ろうってんだ」

『彼女の眉間に埋め込んだのは、何の変哲もないタダの小さな金属片だ。マシンの動力を切る電源なんかじゃないのさ』

提督「っ!?」

『まったく、SF映画の見過ぎだよ。そんな事実際にあるわけないじゃないか。それにこんな簡単に切り札を切るわけがないだろう?』

提督「何・・・・・・だと・・・・・・?」ドサッ

思いがけない告白に提督は脱力して膝をつく

『今回、我々の本当の目的は海軍元帥に絶望を与える事。その為にご子息である君を壊したのさ』

提督「あ、あ、あぁあ・・・・・・」ガタガタ

『もちろん君を殺すのが手っ取り早いが、それではつまらん。だから君の精神を壊す事で元帥に我々の力を思い知らせる。作戦は成功だろう』

『ではさらばだ』

ブツッ

提督「や、ヤマ・・・・・・」ダキッ

呆然とした提督はヤマを抱き寄せる。そして彼らの目論見通り、その精神は崩壊した

提督「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

自分の所為だ。自分が弱いから彼女を殺してしまったのだ。
何よりも愛する女を自らの手で殺し、それが無駄死にだったという事実が提督を激しく責め立てる

提督「許してくれ・・・・・・許してくれヤマ」ポロポロ


「撃ちます、Fire!!」

「はぁぁぁっ!!」

ボガァァァァァァァァァンッッッ

ズドドドドドドドドンッッッ

金剛「カイ!!」タッタッタッ

長門「大丈夫か!!」タッタッタッ

榛名「怪我はありませんか!?」タッタッタッ

加賀「っ!? これは!?」

夕立「ど、どういう・・・・・・事?」

球磨「な、何で・・・・・・ヤマちゃんが?」

高雄「そんな・・・・・・」

入ってきた艦娘達は目の前の光景に皆言葉を失った

提督「許してくれヤマ・・・・・・俺が殺したんだ・・・・・・俺が悪いんだ!!」ガクガク

赤城「櫂、どういう事ですか、落ち着いてください」オロオロ

提督「お前だ・・・・・・お前が悪いんだ、お前がヤマを殺したんだ!!」ジャキン

徐ろに提督は近くに落ちていたピストルを拾い、自分の腹に押し付ける

提督「待ってろよヤマ、俺も苦しみ抜いた後にそっちに行くからな」ニコッ

艦娘「っ!?」ギョッ

榛名「何をしているんですか、やめなさい!!」ダッ

高雄「櫂!!」ダッ

球磨「落ち着くクマ!!」ダッ

ドォォォォォンッッッ

提督「うっ・・・・・・まだだ・・・・・・もっと、もっとだ」ゴフッ

提督「もっと苦しめ!! もっと辛い思いをしろ!!」

ドォォォォォン、ドォォォォォン、ドォォォォォン、ドォォォォォン・・・・・・

弾切れするまで自分の腹を撃った後、その傷口に銃口を押し付ける。傷口が開いて大量の赤黒い血が噴き出す

提督「はは、はははははは!! もっと苦しめ、お前はそれ以上の事をしたんだろ櫂!?」ゴパッ


榛名「やめなさい!!」ダキッ

提督「離せ、離せぇぇ! 俺は俺を許さねぇ、ぶっ殺す、嬲り殺してやるんだぁぁぁ!!」ガタガタ

榛名「っ!? ごめんなさい!」グッ

提督「っ!?」ガクンッ

後ろから抱きしめる榛名がチョークで絞め落とす

高雄「早く止血を!!」

加賀「ヤマちゃんは・・・・・・」

長門「・・・・・・」フルフル

赤城「そんな・・・・・・」

榛名「榛名が櫂を運びます。誰かヤマちゃんを」

高雄「分かりました」

金剛「私もついて行きマス」

愛宕「私も」

長門「残りの者は部屋の中を調べろ!! どんな物でもいい、ここで起きた事を録音してある機械などを探すんだ!!」

艦娘「はっ!!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌朝

ミラ「それで、櫂の様子はどうだい?」

元帥「失血が酷くてな。儂の血を輸血して今は昏睡しております」

加賀「特に異常は無いようですが、それでも」

「だいたい、何があったってんだ?」

元帥「儂にも分からん。何故櫂がヤマちゃんを殺したのか」

「櫂の事じゃ、何か事情があったにちげぇねぇ」

元帥「本当に申し訳ありませんでした、櫂に代わって深く謝罪します」ペコッ

ミラ「やめとくれ。私達はまだ何も分からない」


コンコン、ガチャ

明石「失礼します」

夕張「失礼します」

大淀「失礼します」

元帥「明石か」

明石「昨日長門さん達が持ち帰った機械から当時の会話を復元する事に成功しました」

夕張「結論から言わせていただくと、櫂に罪はありません」

ミラ「そうかい、よかったよ」ホッ

「あぁ。やっぱりな」

元帥「・・・・・・」

明石「その、内容ですが」

「聞かせてくれ」

ミラ「お願い」

元帥「頼む」

明石「・・・・・・分かりました」カチッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

カチッ

明石「・・・・・・以上で全てです」

元帥「・・・・・・」

ミラ「何て事だ・・・・・・」ポロポロ

「一番辛いのはあいつじゃねぇかよ」

夕張「この機械から彼らの居場所も割り出せました。ですが、その・・・・・・」

元帥「?」

大淀「榛名さんがその居場所を確かめるや否や単騎出撃しまして」

元帥「・・・・・・」

夕張「後を追って金剛型、長門型、扶桑型、伊勢型の全艦が出撃。大本営における全戦艦が彼らの本拠地の島に」

元帥「・・・・・・そうか」

明石「申し訳ありませんでした、引き止めはしたのですが」

元帥「構わん」

加賀「大丈夫でしょうか」

元帥「責任は儂がとる」

「? どういう事だ?」

加賀「簡単に言いますと」








加賀「今から島が一つ消滅します」






ーー
ーーーー
ーーーーーー

金剛「あそこデスカ」

扶桑「大丈夫かしら、あの島が消えてしまっても」

日向「恐らく奴ら以外の人はいない。だからこそ本拠地にしたのだろう」

伊勢「好都合だね」

山城「島ごと消されるなんて、不幸だわ」

比叡「今回は不幸の対象が違いますよね」

山城「当然よ。櫂にあんな事をしたんですもの」

長門「恐らく私達の仕事は例のウイルスの処分だ」

陸奥「そうなるわよね」

霧島「それと島からの脱出手段を潰す必要もあるわね」

扶桑「それよりも問題は」

金剛「榛名デース。あれは相当ブチ切れてるヨー」

比叡「と言うか私達置いていかれてますよ、お姉様」

金剛「Don't worry! 場所は分かってマース!」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


ドカァァァァァァァァンッッッ

「な、何事だ!?」

「ぼ、ボス! 艦娘です、艦娘が乗り込んできました!!」

ボス「何!? 何体だ?」

「た、たった一体です!!」

「馬鹿な!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「くそぉっ!!」ジャキン

ドォォォォォン、ドォォォォォン

榛名「・・・・・・」

コロ、コロ・・・・・・

「あ、当たったのに傷一つない!?」

「くたばれ!」ブンッ

キィィィィィン・・・・・・

榛名「・・・・・・」

カラァァァァァァン・・・・・・

「刀が折れた!?」

榛名「・・・・・・」チラッ

「こんの、舐めやがって」つ鉄パイプ

榛名「・・・・・・」ガシッ

「ひっ!?」

榛名「・・・・・・」グッ

バキィィィィィン

ガラァァァァァン・・・・・・・

「て、鉄パイプまで握り潰しやがった」


ボス「そこまでだ、艦娘」

榛名「!?」バッ

ボス「たった一体でここまで乗り込んでくるとは大したものだ」

榛名「櫂を追い詰めたのはあなたですか?」

ボス「その通り。彼はどうかね?」

榛名「ここに例のウイルスがあるんですね?」

ボス「あぁ。地下倉庫に大量に眠っている。ちょうど全世界に散開させる目前だったのだよ」

榛名「ここに組織の構成員全員がいるという事で間違いありませんか?」

ボス「如何にも。全戦力がこの島にいるのさ。さぁ、問答は終わりだ」

榛名「!・・・・・・分かりました。はい、榛名は大丈夫です」

ボス「あん?」

榛名「今あなた達のいう地下倉庫からウイルスを運び出したとお姉様達から連絡が来ました」

「ば、馬鹿な!?」

ボス「あれは一つ10トンは下らない超大型カプセルに入れてある! それが10個だぞ!! こんな短時間に運び出せるわけがない!!」

榛名「榛名達は戦艦です。その程度の重量、運搬するのに苦労はしませんよ」

ボス「くっ」

榛名「あれはこちらで処分させていただきます」ヒュンッ

ボス「っ!? (消えた!?)」

榛名「榛名の仕事はあなた達の存在を抹消する事」スタスタ

ボス「い、いつの間に後ろに!?」

榛名「あなた達は櫂を、榛名達の弟を傷つけた」

ボス「ま、待て! そもそも我々を認めなかった政府や軍が悪いんだ、あれほどのウイルスならこの戦いに決着がつけられる」

榛名「それは榛名達がつけます。あなた達が作ったのはただの失敗作です」

榛名「櫂を、弟を傷つけたあなた達を榛名は絶対に許しません!!」スッ

ゆっくりと拳を上に上げる榛名。そして

榛名「その報いを受けなさい!!」ブンッ

地面に力いっぱい叩きつけた








ドゴォォォォォォォォォォォォォォンッッッ






ボス「っ!?」

グラグラグラ・・・・・・

「な、何だ!?」

ビキビキビキ・・・・・・

バキ、バキバキバキ・・・・・・

榛名「・・・・・・罪なき命をあんなふざけた理由で奪ったあなた達は万死に値します」

ボス「実際奪ったのはあのガキだ、俺達は何もやっていない!!」

榛名「そうさせたのはあなた達でしょう?」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

金剛「! 榛名」

榛名「ごめんなさいお姉様、皆さんも」

長門「いや、私達も来たばかりだ」

榛名「とりあえず、確かめてからでもいいでしょうか?」

長門「構わん。私達も久しぶりだ」

榛名「ありがとうございます」クル

戦艦達は全員で先程までいた島を眺める

金剛「そろそろネー」

大本営の最高戦力の一人である榛名は、その全てが規格外である。その拳を地面に叩きつけるだけで、その衝撃はその地面の下の奥深くまで伝わる。地下のマグマ溜りを刺激する事で強制的に火山活動を引き起こすのだ。結果、たった一発のパンチで火山噴火を引き起こして島一つを消滅させる事になるのだ。それ故に榛名は『黙示録(アポカリプス)』という二つ名をつけられており、その攻撃は『世界の終わり(ワールドエンド)』と呼ばれている

比叡「あ!」








ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッ






榛名「!」

長門「相変わらず・・・・・・言葉が出ないな」

陸奥「黙示録の二つ名は伊達じゃないわね」

金剛「で、このvirusどうするノー?」

長門「最も深い海溝に沈める。さぁ移動するぞ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

榛名「失礼します。榛名ならびに全戦艦帰投いたしました」

元帥「うむ」

長門「ウイルスは我々の独断で、世界で最も深い海溝に沈めました」

元帥「そうか。超深海の水圧と低温ならウイルスを完全破壊できるやもしれん。よくやった」

ガチャ

暁「た、大変よ司令官!」アセアセ

響「櫂が目を覚ましたんだ」

元帥「!」

榛名「本当ですか!?」

雷「でも、櫂ちゃん錯乱しだして・・・・・・」オロオロ

電「急に櫂ちゃんが部屋を飛び出しちゃったのです!!」アワアワ

元帥「!? いかん、早く探すんじゃ!」

艦娘「は、はい!!」ダッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

シャワー室

ザァァァァァァァ・・・・・・

提督「・・・・・・」ガシガシガシ

提督「取れろ、取れろ取れろ取れろ!!」ガシガシガシ


バンッ

榛名「っ!? 櫂!!」ダッ

提督「は、るな、ねえ・・・・・・」

榛名「!?」ギョッ

ゆっくりと振り返る提督を見て榛名は凍りついた。彼はタワシを片手に一心不乱に自分の腕を擦っていたのだ。全身から血が噴き出し、特に両腕はズタズタになっている

提督「取れねぇんだ・・・・・・どれだけ洗っても、擦っても・・・・・・。あの娘の血が、ヤマの血が取れねぇよ・・・・・・」ポロポロ

榛名「櫂・・・・・・」ダキッ

提督「あ、あぁあ、あぁぁぁぁぁぁ」ポロポロ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・」

妖精「泣き疲れて寝ちゃった?」ヌリヌリ

榛名「はい」

妖精「精神が壊れて幻覚でも見たのかな? 何にせよ辛いだろうね」

榛名「代われるものなら榛名が代わりたいです」ナデナデ

妖精「腕がこんなになるまでタワシで擦るなんて・・・・・・」

妖精(ん!? 傷の治癒が早い!? 何で!?)

ーー
ーーーー
ーーーーーー


その後、提督は発狂する事こそ無かったものの一言も言葉を発さなくなった。部屋でただ何をするでもなくボンヤリと座るだけの状態が何ヶ月も続いた。艦娘の皆は暇を見つけては足繁く提督の部屋に通った。話しかけたり、ご飯を食べたりとできるだけ彼と接するようにした。
団長や副長も気分転換にと色々な所に提督を連れ出した。それでも彼は一言も喋らなかった

元帥「回復の兆しは見せんか・・・・・・」

加賀「どうしたものでしょうか?」

ガチャ

夕張「失礼します。櫂が部屋を抜け出しました」

元帥「場所は?」

夕張「今の所不明です」

元帥「青葉達に尾行させるように。恐らくは・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ミラ「!? 櫂!」

「よく来てくれたな!」

提督「・・・・・・」

ミラ「? どうしたんだい?」

提督「・・・・・・」スッ

ミラ「!?」

「!?」

提督「申し訳・・・・・・ありませんでした」土下座

ミラ「やめとくれ、私達はアンタを責めたりなんかしないよ」

「話は全部聞いてる、辛い思いをさせてしまったな」

ミラ「さ、上がっておくれ」

提督「・・・・・・はい」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


ソラ「櫂君、大丈夫?」

リク「心配してたんだよ?」

提督「ごめんなさい」

ミラ「(すっかり他人行儀だ。相当意識してるんだね)櫂、ちょっと来てくれるかい?」

提督「はい」スッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ミラ「この倉庫には先祖代々の資料があると言われている」

提督「・・・・・・」

ミラ「私達の一族の呪い・・・・・・知ってるかい?」

提督「いいえ」フルフル

ミラ「それはね・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・」

ミラ「ただ、ヤマとアンタは逆だ。何故かというとね」

徐ろにミラは一つの巻物を提督に渡した

ミラ「ヤマはアンタを死なせないようにしたんだ」

提督「え?」

ーーーーーー
ーーーー
ーー


ガサガサ、ゴソゴソ

ヤマ「! あった! この儀式なら櫂ちゃんを守れる」パァァ


ーー
ーーー

ヤマ「これでよし。後は巻物に書かれた呪文を詠唱すれば」

ヤマ「ーーーーーーーーーーーー」

キィィィィィン・・・・・・

バタンッッッ

ミラ「ヤマ、何をやって・・・・・・!?」ギョッ

ヤマ「やった、やったよおばあちゃん! これで櫂ちゃんが死なずにすむn・・・・・・」

パァァァァァァァン・・・・・・

ヤマ「・・・・・・え?」ヒリヒリ

ミラ「何て事を・・・・・・何て馬鹿な事を・・・・・・!!」ブルブル

ヤマ「何・・・・・・で・・・・・・?」

ミラ「その巻物に書いた方法なら確かに櫂を呪いによる死からは助けられる」

ミラ「でも世の中そんなに都合よくいかないんだよ!!」

ヤマ「え?」ジワァ

ミラ「その巻物に書かれた儀式は、言ってみたら"立場逆転"。つまり」








ミラ「アンタが受けるはずの苦しみを櫂が味わうようになるんだよ!!」






ヤマ「そ・・・・・・そんな・・・・・・嘘・・・・・・」ツーッ

ミラ「愛する人を失う事がどれほど苦しく辛い事か、下手したら死ぬより辛いんだ。よく分かってるだろう!?」

ヤマ「わ、私は、ただ・・・・・・」ポロポロ

ヤマ「櫂ちゃんに生きてほしかっただけなのに・・・・・・!」ポロポロ

ミラ「本当にもう、アンタは」ダキッ

ヤマ「うわぁぁぁぁぁぁん!!」ポロポロ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・」

ミラ「ヤマは確かに浅はかな行動をしたかもしれない。でもね、アンタを思っての事だってのは理解してほしい」

ミラ「辛いかもしれないけど、乗り越えてほしい。今まで通り、皆と明るく接しておくれ。ヤマだってアンタの元気な姿が見たいんだ」

提督「・・・・・・はい」ポロポロ

ミラ「例え他所の女の子と結婚したとしても、アンタは私達の家族、孫なんだ。忘れないでね」

提督「・・・・・・ありがとうございます」ポロポロ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


ガチャ

提督「ただいま」

元帥「! 櫂、もう大丈夫なのか?」

提督「"親父"、俺海軍に入る」

元帥「・・・・・・何故か、理由を教えてくれんか?」

提督「ヤマの意志を継ぐためだ。あいつは海軍に入りたがっていた。その夢を俺が叶える」

元帥「・・・・・・分かった」

元帥「しかし、軍はお前が思うほど楽な所ではないぞ。お前が軍人となった以上は儂もケンも、身内といって甘やかしはしない。それでもよいな?」

提督「何を今更。必要以上に甘やかされるつもりはない」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌年

提督「・・・・・・ここか」

提督(軍学校への入学出願会場。来年、皆は高校生だが、俺は士官候補生だ。気を引き締めねぇとな)

友提督「真剣なツラしてんなぁおい!」バシィン

提督「! マナブ!?」

友提督「何だよ、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

提督「え、お、お前進路決めてたんじゃ」

友提督「お前を一人になんかできるかっての。二人で天辺目指そうぜ!!」

提督「・・・・・・本音は?」

友提督「めちゃくちゃ美人な艦娘とイチャラブしたい」

提督「帰れ」ゲシッ

友提督「痛てぇ!?」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


友提督「なぁ櫂」

提督「ん?」

友提督「いくら何でもおかしくねぇか? 俺達もそうだけど出願した人全員通すなんて」

提督「それだけ人員不足なんだろ。なんせ死人が出る所に務めるんだ、慢性的に人手が足りてなくても不自然じゃねぇよ」

提督(それに、どうせ軍学校の篩にかけられるだろう。油断できねぇな)

ーー
ーーーー
ーーーーーー

ガチャ

元帥「おぉ、帰ったか」

提督「ただいま」

団長「そうだ櫂、お前の意見を聞きたいんだが」

提督「?」

元帥「儂とケンで考案したんじゃが、どうかの?」

提督「? 艦娘のトレーニングプログラム?」ペラッ

元帥「何せ、資源も少なく演習も今までのようにはできんからのう。基礎的な体力をつければ練度も上がるかと思ったんじゃが」

提督「よくもまぁこれだけのデータを集めたもんだ」

団長「どうだ?」

提督「特に問題ねぇと思う。ただ・・・・・・」

元帥「?」

提督「これとは別に皆に一般教養もつけてやりたいなって思うんだ」

提督「解体された後でも社会で何不自由なく生活できるようにするのも、提督の仕事じゃないかな?」

元帥「確かにのう。考えてみよう」

提督「無理なら俺が勝手に組み込むだけだし」

団長「そうだ、今日申請してきたんだったな?」

提督「あぁ」

団長「学校とはいえ軍だ。もしお前に何かあっても容赦はしないぞ?」

提督「当然だ。それ以前に俺はそんな奴にならねぇよ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


提督(月日は流れ、俺とマナブは軍学校に入学した。朝から晩まで規律と集団行動、訓練と忙しない日々が続く。入った瞬間に車の免許を強制的に取らされたのは面食らったけど。その勢いで二輪の免許も取ったのはご愛嬌)

提督(当然の事ながら俺は元帥の息子である事を周りに隠している。教官達にも口止めを頼み、この事実を知るのは俺とマナブ、教官達だけ・・・・・・のはずだ)

教官「今日の訓練は拳銃による射撃訓練だ!」

提督「っ!?」

友提督「! 大丈夫か? もし辛いなら休んでも」

提督「いや、大丈夫だ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


教官「全員整列したな? ではこれより訓練を開始する!!」

パァァァン、パァァァン

提督「・・・・・・」

「違うって、もっとよく狙え」

友提督「うわ、またあいつ偉そうに」ヒソッ

同期の中の一人が提督は少し苦手だった。彼は自分と同じく海兵の父を持ち、その血筋なのか成績もいい。それだけならいいのだが、それを鼻に掛ける嫌味な性格であった

「何で分からないかなぁ? もっとイメージして撃つんだよ」

「具体的に教えてくれよ」

「例えばだな、あの的を人だと思うんだよ」ヘラヘラ

「人?」

「そうそう、頭を撃ち抜くイメージだ、自然と命中するようになるぜ」

提督「・・・・・・」

友提督「次お前だぜ」

提督「あぁ・・・・・・」スタスタ

拳銃を握ると同時にあの時の記憶が鮮明に甦る。あの時、愛する人を撃ち抜いたあの感じが。自然と鼓動が早くなる

提督「・・・・・・」ドクンドクンドクン

「おいおい、俺の説明聞いてなかったか?」

・・・・・・やめろ

「簡単だ、人の頭をイメージすればいいんだよ」

やめろ、やめろ!

「頭を撃ち抜くイメージだ、簡単だろ?」

提督「っ!!」ジャキン

「「「「っ!?」」」」

教官「っ!? 海原、何をやっている!!」

友提督「か、櫂!!」

「ひっ!?」ギョッ

提督「・・・・・・あるのか?」

「あ?」ガタガタ

提督「お前・・・・・・本当に人を撃ち殺した事あるのか? 人の頭を撃ち抜いた事あるのか?」

「も、ものの例えじゃねぇかよ、何本気に」

提督「人を撃ち殺した事も無いくせに分かりきった口をきくな」

「な、何様のつもりだよお前!」

友提督「まぁまぁまぁ、一旦ここは落ち着こう、な?」アセアセ

提督「・・・・・・」スッ


友提督「きっと例えが悪かったんだよ、的をスイカとかカボチャに例えればよかったんだ、ほらサイズも近いし」

提督「・・・・・・」クルッ

スタスタスタ・・・・・・

友提督「お、おい何処行くんだよ!?」

教官「! ま、待て海原、おい!」タッタッタッ

友提督(櫂の奴、やっぱりあれが堪えるよな。にしても、今までのあいつと雰囲気が違うな。前のブチ切れたあいつは烈火みたいだったのに、今はまるで深海みたいだ。静かだけどめちゃくちゃ不気味で引きずり込まれそうな雰囲気だ)

友提督「やっぱり着いてきて正解だったな」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

数日後

提督「・・・・・・」カリカリ

コンコン

教官「失礼する、海原」

提督「はっ!」ビシッ

教官「貴様の過去は聞いた。だがあの件は、流石にこちらとしても見逃すわけにはいかない。すまないが貴様は今後射撃訓練には参加できない」

提督「了解です」

教官「それともう一つ」スッ

提督「? これは?」

教官「貴様のお父君からの電報だ」

提督「・・・・・・」ウケトリ

提督「・・・・・・」ピラッ

提督「・・・・・・!」

教官「では失礼する。明日以降も訓練に励め」

提督「はっ!!」ビシッ


提督(皆が近々最終決戦・・・・・・深海棲艦との全面戦争を始める、か)

提督「こっちも返信の手紙を書くか。電報の書き方は・・・・・・」ガサガサ

ーー
ーーーー
ーーーーーー

二週間後

教官「全員揃っているな」

教官「先ずは朗報だ! 海軍はつい先日、人類の悲願を成就した!!」

ザワザワ・・・・・・

教官「深海棲艦の本拠地に総力戦を行い、見事勝利。我ら人類は深海棲艦との戦争に勝ったのだ!!」

ウォォォォォォ!!

教官「だが、まだ奴らの残党は残っている。そいつらを全て根絶するためにも、貴様らには一層の努力を期待する!!」

「「「「「「「はっ!!」」」」」」」

提督(良かった、皆が勝ったんだ!! あぁ、今すぐ無事を確かめたいなぁ)ホッ

人類の勝利という言葉に皆が沸き立つ中、提督は戦場に赴いた姉達の身を案じていた。海軍最強の艦娘達ではあったが、それでも不安はある。
勝利の代償として誰かが轟沈していないだろうか。姉達に限ってそんな事はないと信じているが、"勝利"の二文字だけではこちら側の被害状況など、詳しい内容は分からない

友提督「お姉さん達の心配か?」

提督「あぁ。確かめてくる」ソロッ

友提督「あいよ」

教官「なお、この勝利の立役者たる大本営の艦娘達、"一人の犠牲も出さずに勝利した"その訓練方法の実用性なども此度の闘いから注目され始めている。よって我が軍学校でも正式に採用し・・・・・・」

友提督(! タイミング悪っ!!)

ーー
ーーーー
ーーーーーー


そして年月は流れ

提督(ついに俺達も明日で軍学校卒業か)

友提督「ったく、お前小学校と変わらねぇじゃねぇか」

提督「何の事だ」

友提督「俺以外とは口もきかない、そのクセ座学や訓練は優秀で。ガリ勉野郎か!!」

提督「一つだけ良くないやつあったじゃんか」

友提督「あれは仕方ねぇ。それ抜きにしてもだ!」

提督「で? お前決めたのか? 初期艦誰にするか」

友提督「もちろん。二年前から決めてあるさ」

友提督「お前は? 多分新制度の対象だから選り取りみどりだろ?」

提督「・・・・・・どうだろうな?」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

翌日

教官「今日をもって貴様らはこの軍学校を卒業する! 三年前、役立たずのタダ飯喰らい共だった貴様らは立派に一新兵となった。以後、それぞれの軍でさらなる精進を期待する!!」

教官「なお、海軍所属の者はこの後必要書類を書いてもらうため、成績順に我々の元に来るように!」

提督「・・・・・・」

ーー
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ーーーーーー

提督「一番目か」

コンコン

教官「入れ」

ガチャ

提督「失礼します。海原です」

教官「あぁ来たか海原。かけたまえ」

提督「失礼します」スッ

教官「さて、まずはおめでとう。見事首席合格した事、お父君もさぞお喜びだろう」


教官「皆を呼ぶ理由は他でもない、以後貴様らがそれぞれ鎮守府に着任するにあたり、手続き書類を書くと共に一つ決めてもらいたいものがある」

提督「初期艦ですよね」

教官「その通りだ。知っての通り、三年前の大戦後、それまで第一線で戦ってきた古参提督達の多くが退役された」

教官「彼らの鎮守府にいた初期レベルおよび比較的練度の低い駆逐艦を次の世代の初期艦にしようとする新制度だが、流石に全員が選べるわけではない」

教官「成績上位十名がその新制度の対象となる。首席の貴様も当然対象だ。このリストの中から選びたまえ」スッ

提督「教官、自分は結構です」

教官「何?」

提督「初期艦は従来の五人の中から選ばせていただけませんか?」

教官「構わないが、それでいいのか?」

提督「はい」

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「・・・・・・! よぉマナブ」

友提督「よっしゃぁ!! 無事選べたぜ!!」

提督「おぉ、そりゃおめでとう。つーか次席なら大して変わらねぇよ」

提督「で、誰選んだんだ?」

友提督「Z1、レーベだよ! ドイツ艦隊編成という夢への第一歩だぜ!!」

提督「お前の目当てはビスマルクだろ」

友提督「あ、バレた? そういうお前は?」


提督「吹雪」

友提督「・・・・・・へ?」

提督「いやだから、吹雪だって」

友提督「はぁぁ!? 首席なのに!? わざわざ従来の五人から選んだのか!?」

提督「別に誰選ぼうと俺の自由じゃん」

友提督「確かに。で、理由は?」

提督「普段ちゃらんぽらんな俺と真面目な吹雪なら、丁度いいバランスなんじゃね?って理由」

友提督「あ~、なるほど」

友提督(確かにこいつ最低限のルールを守るだけで後は一切適当だからな。真面目な子ならストッパーにもなるだろうし)

ーー
ーーーー
ーーーーーー

提督「荷物はこれでよし、と」

元帥「支度はできたかの?」

提督「あぁ」

団長「お前が立派な提督になるのを楽しみにしているぞ」

提督「ありがとう、"叔父貴"」

副長「ほれ、餞別や」スッ

提督「? これは?」

副長「俺からの着任祝い。かなりの業物や、使わんですむよう祈っとるで」

提督「兄ぃ、ありがとう」

元帥「流石に全員とまではいかんが、残っている皆に挨拶はしてくれんかの?」

提督「分かってる」

副長「いえ、他の奴らも仕事休んで来てますよ」

ーー
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ーーーーーー


島風「もう行くの?」

綾波「少し寂しくなりますね」

敷波「いつでも帰っておいでよ」

元吹雪「櫂ちゃん頑張ってね!」

元睦月「挫けたらダメだよ!」

元夕立「櫂ちゃんならできるっぽい!」

元暁「辛くなったら私達を頼ってね?」

元響「хорошо」

元雷「櫂ちゃんは強い子だから大丈夫!」

元電「ファイト! なのです!」

川内「夜更かししちゃダメだよ?」

神通「姉さんがそれを言いますか? でも、身体には気をつけてくださいね?」

那珂「櫂ちゃん、笑顔を忘れちゃダメだよ?」

元天龍「そうだ! 自信を持ってやれよ!」

元龍田「鎮守府をしっかり守るのよ~?」

元球磨「でも、あんまり一人で溜め込むんじゃないクマ」

元多磨「泣きたいときは泣いてもいいニャ」

元北上「気楽に頑張んな~」

元大井「しゃんとするのよ?」

元木曾「時間見つけて俺達にも顔見せてくれよ?」

提督「ありがとう。でも、できればちゃん付けはやめてほしいな」

艦娘「えぇ!? 何で!?」

提督「ちゃん付けはあいつだけの特権なんだ。我儘だけどお願いしてもいいかな?」

艦娘「・・・・・・分かった」


元愛宕「逞しくなったわね」

元高雄「頑張るのよ」

赤城「またいつかご飯食べに行きましょうね」

加賀「貴方の仲間に会うのを楽しみに待ってるわ」

長門「精進しろよ、櫂」

陸奥「人生楽しんでね?」

金剛「See you again! 笑顔が一番デース」

比叡「ファイトだよ!」

霧島「皆と仲良くね?」

榛名「榛名達は何時でも貴方の味方です。忘れないで」

提督「皆・・・・・・ありがとう」

副長「頑張りや~」

団長「達者でな」

元帥「行っておいで。儂の息子じゃ、必ずやれる」

提督「はい!!」

提督「行ってきます!!」

艦娘「行ってらっしゃ~い!」

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ミラ「という事さ・・・・・・」

妖精「・・・・・・」

吹雪「司令官・・・・・・」

北上「・・・・・・」

文月「・・・・・・」

大鳳「・・・・・・」

利根「・・・・・・」


大和「ひっ・・・・・・ひっ・・・・・・」ポロポロ

ミラ「! 大和」

大和「私は最低です・・・・・・そんな提督に・・・・・・私は何て酷い事を・・・・・・」ポロポロ

ミラ「アンタの話は一昨日櫂から聞いたよ。最終決戦の時、普段の立ち振る舞い、そして"共鳴"の使用。それを聞いてピンときた」

ミラ「大和、アンタはヤマの生まれ変わりだ」

大和「!?」

ソラ「大和は櫂君の事、好き?」

大和「・・・・・・」コクッ

リク「だったら、義兄さんと一緒にいてください」

ミラ「それが櫂のためでもあり、アンタ自身のためでもあると思うよ」

大和「私だって、提督と一緒にいたいです・・・・・・でも、もう私にはそんな資格無いんです」ポロポロ

妖精「大和・・・・・・」

大和「!」クルッ

吹雪「大和さん?」

ミラ「!」チラッ

ソラ「おばあちゃん?」

リク「どうしたの?」

大和「提督が内出血を起こしてる」

ミラ「しかもかなりの量だ!」

妖精「っ!? まずい!」

間髪入れずに妖精はナースコールのボタンを押した

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ーーーー
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「皆さん、落ち着いて聞いてください」

その後提督は駆けつけた看護師達によって緊急治療室に搬送された。残った一人の医者が、病院に搬送されてからの提督の診断結果を皆に話している

「海原さんの体内から謎の猛毒物質が大量に検出されました」

艦娘「!?」

「謎の猛毒物質が海原さんの内蔵を汚染しています。胃や腸、肝臓や膵臓が侵されている事による出血かと」

大和「それは治るのですか!?」

「手術で取り除くしか方法はありませんが、不可能です」

妖精「な、何でさ!?」

「これ程複雑な物を除去するにはかなりの技量が必要となります。しかも汚染範囲が今も増加中で、時間も限られています」

吹雪「スピードと技量がないとできない・・・・・・って事ですか?」

「現在、当病院にはその条件に合う医者は在籍しておりません。いや、恐らく日本国内でも探すのは至難かと」

大和「そ、そんな・・・・・・」ドサッ

文月「司令官・・・・・・死んじゃうの?」ウルウル

「今は何とか抑え込む事ができていますが、近いうちにまた症状が悪化する危険性が高いでしょう」

妖精「・・・・・・」








??「そのオペ、僕に切らせてください」






艦娘「っ!?」

妖精「!?」

ミラ「!」

「!?」

驚いた顔で皆が声のする方を見ると、一人の青年がいた。歳は提督とあまり変わらないようにも見えるその青年は自信に満ちた目で見つめていた

??「僕なら成功します」

大和「え・・・・・・?」

「アルバイトの君が出ていい幕ではない! 出て行きたまえ!」

文月「アルバイト?」

ミラ「雇われた医者かい?」

??「患者を放っておく事はできない。僕なら彼を救えます」

「いい加減にs・・・・・・」

大和「お願いします!!」

「!?」

大和「例え万が一、いえ那由多の果ての可能性でも、助かる可能性があると仰るなら・・・・・・」スッ

涙を流しながら大和は深々と頭を下げる

大和「どうか・・・・・・提督を助けてください!!」

??「任せてください」クルッ

スタスタスタ・・・・・・

北上「本当に大丈夫なの? 失敗しないよね?」

ピタッ

??「僕は失敗しません、外科医には失敗は許されないから。一度失敗されたら患者はその時点で終わりですから」

それは青年の医者としての信念だった。まだ若いこの青年は、自らの手で退路を断ち切る事で迷いや油断を切り捨てていた

吹雪「・・・・・・」ポーッ

??「10分後に手術(オペ)を始めます」スタスタ

「私はどうなっても知らんぞ」スタスタ

妖精「・・・・・・」テテテテ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


妖精「待ってよ」

??「! どうかしましたか?」

妖精「これを使って」つ傷薬

??「妖精印の傷薬・・・・・・実物を見たのは初めてです」ウケトリ

妖精「毒に侵された範囲が全部摘出できたら、それを切断面に塗って。摘出された部分を再生できるから」

??「それほどの薬ならオペするまでもないのでは?」

妖精「傷薬は傷は治せても病や毒は治せないのさ。あくまで傷を塞ぐ力を引き出してるだけだしね」

??「なるほど」

妖精「本当に治せるのかい?」

??「できるできないじゃない、やらなきゃいけないんだ」

妖精「・・・・・・」

??「僕は必ず彼を救ってみせる」スタスタ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


そしてオペが始まった。大和達はオペを行っている部屋の前で待っている。ミラはひたすら合掌してお経を読み上げ、オペの成功を祈っている。ある者は壁にもたれ掛かり、ある者は椅子に座って俯く。皆が緊張しながらその時を待っていた
そして手術中のネオンが消えたのは、実に半日以上過ぎた時、翌日の正午だった。

大和「っ!?」ガタッ

??「皆さん」

部屋から出てきたのは白衣に身を包んだ若い女性だった。歳はあの青年と同じくらいだろうか。非常に整った顔立ちの美女だった

大和「て、提督は、提督は大丈夫ですか!?」

??「結論から言いますと、手術は成功です。彼の体内の猛毒物質に汚染された箇所は全て摘出できました」

ミラ「! あぁ、良かった」ホッ

艦娘「やったぁ!!」ピョンピョン

ソラ「わーい!!」

リク「ちょ、姉さん落ち着いて」アセアセ

妖精「アンタ達も、ここ病院だよ!」

??「・・・・・・ですが」

大和「?」

??「手術には成功しましたが、彼が目を覚ますかまでは我々には判断できません。こればかりは彼自身の力に頼るしかありません」

大和「・・・・・・はい。それでも提督を助けていただき、本当にありがとうございます」ポロポロ

涙を流しながら大和は女性に頭を下げた。続いて周りの皆も頭を下げる

??「あぁそうだ」スッ

妖精「!」

??「あの人から。手術の時に助かったって言ってましたよ」

妖精「そっか」ウケトリ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


数日後

大和「・・・・・・」

吹雪「大和さん、本当に帰らないんですか?」

大和「はい。提督の傍にいたいんです」

北上「だからって・・・・・・」

妖精「あたしも残るよ。流石にこの娘一人にはさせない」

大鳳「お願いしますね」

文月「司令官、目覚ますかな?」ウルウル

利根「分からぬ。また明日じゃな、明日来たら起きておるかもしれぬぞ」ナデナデ

スタスタスタ・・・・・・

大和「・・・・・・」

妖精「ねぇ、あれからずっと泊まってるけど、帰らないの?」

大和「はい。提督がいないと辛いんです」

妖精「皆や元帥、団長や副長、ミラさん達も言ってたけど、せめて食事はちゃんと摂ってよ。提督が目が覚めた時、窶れた大和を見たらどう思う?」

大和「・・・・・・」コクッ

妖精「とりあえず、先ずはシャワーを浴びといで。その間に元帥が持ってきてくれた差し入れ温めとくから」

大和「その姿でですか?」

妖精「大丈夫、アンタ達の艤装メンテに比べたら楽なもんさ」テテテテ

大和「・・・・・・」スッ

ーー
ーーーー
ーーーーーー


大和「ごちそうさまでした」

妖精「榛名が作った野菜炒め、どうだった?」

大和「凄く・・・・・・美味しかったです」ジワァ

妖精「!?」

大和「提督が・・・・・・大和に作ってくれたのと、同じ味です・・・・・・」ツーッ

妖精「ほら涙拭いて」つハンカチ

大和「・・・・・・」グシグシ

妖精「ほら、もう休みなよ」

大和「はい」スッ

スタスタスタスタ・・・・・・

妖精(休みなって言ったのにベッドの側の椅子に腰掛けて。言う事なんて聞きやしない)

妖精(ま、提督の傍が大和にとって一番安心するんだろうね)テテテテ

妖精「大和」

大和「・・・・・・」

妖精「? 大和?」

大和「・・・・・・」スーッ、スーッ

妖精「・・・・・・寝てるし」

妖精「毛布だけ掛けとくか」バサッ

大和「・・・・・・」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


気がつくとそこは何もない真っ白な空間だった。どっちが上下かも分からない。地面に足をつけているわけでもなく、空中に浮いているでもない不思議な感覚だ

大和「ここは・・・・・・?」

大和「っ!? 提督は!?」キョロキョロ

『落ち着いて』

大和「!! 誰ですか?」

『貴女の事はずっと見てたよ。櫂ちゃんをありがとう』

大和「!? まさか・・・・・・ヤマさん?」

ヤマ『うん。この前は私が迷惑かけちゃってごめんね?』

大和「そんな! ヤマさんは悪くないです」

ヤマ『私の負の魂が起こしたんだから、私の責任。止めてくれてありがとう』

ヤマ『それに貴女が私の生まれ変わりで本当に良かった』

大和「そんな・・・・・・大和は何もできていません。提督を傷つけてしまって」

ヤマ『私も時々喧嘩したよ。でも直ぐに櫂ちゃんが謝ってくれるから仲直りしちゃってたし』

大和「大和はヤマさんの代わりになんてなれません・・・・・・」

ヤマ『櫂ちゃんは大和ちゃんの事愛してるよ。私の後釜とか生まれ変わりだとかなんて理由じゃなくて、大和ちゃん(貴女)自身に惚れてるの』

ヤマ『大和ちゃんは、櫂ちゃんの事好き?』

大和「っ!? はい! 大好きです!」

ヤマ『それなら大丈夫! きっと櫂ちゃんは分かってくれるよ!』

大和「!」

ヤマ『だから、私からお願いしてもいいかな? 櫂ちゃんと幸せになって!』

大和「大和にはそんな資格ありません・・・・・・。知らなかったとはいえ、提督を傷つけたんです!!」ポロポロ

ヤマ『人を愛するのに資格や理由なんて必要ないよ。私は呪いの所為で長生きできなかったけど、貴女は違う。死人(私)にできない事を大和ちゃんにしてほしいの』

ヤマ『だから、お願い』

大和「大和は・・・・・・大和は・・・・・・」ポロポロ

ヤマ『大丈夫。私は何時でも大和ちゃんの事見てるから。櫂ちゃんや他の皆と幸せに過ごしているところを、これからも見せてね?』

ーー
ーーーー
ーーーーーー

大和「ん・・・・・・」ムクッ

大和「! 夢ですか・・・・・・」


ミラ「起きたみたいだね」

大和「っ!? ミラさん! おはようございます」ペコッ

ミラ「いいよ。妖精さんから聞いたよ、付きっきりだったんだって?」

大和「はい」

吹雪「おはようございます」

大和「吹雪ちゃん、皆も」

北上「提督はどう?」

利根「うーむ、多少顔色が良くなっておる気がするのぅ」

大鳳「そうですか?」

文月「司令官起きるかな?」

大和「起きると・・・・・・いいですね」ナデナデ








提督「・・・・・・」ピクッ






大和「!?」

提督「ん・・・・・・」

薄らと目を開ける提督。黒い瞳は数日ぶりに光が入った事で一瞬眩んだが、直ぐに順応した。ゆっくりと酸素マスクを外し、提督は大和を見る

提督「・・・・・・大和・・・・・・」

大和「う、うぅう~・・・・・・」ジワァ

艦娘「提督(司令官)!!」

大和「っ!!」ダッ

タッタッタッ・・・・・・

吹雪「っ!? 大和さん!?」ギョッ

提督「!」

文月「司令か~ん!!」ダッ

ボフッ

提督「文月・・・・・・」

文月「うぇぇぇぇぇぇん、良かったよぉぉぉ!!」ビェェェェ

北上「本当に提督はー!!」ポロポロ

大鳳「よがっだでず・・・・・・ぼんぼび、ぼんぼびよがっだぁぁぁ」ポロポロ

利根「本当に・・・・・・世話がやけるのぅ」グスッ

提督「ごめんな、皆。迷惑かけたな」

吹雪「ちょ、皆さん落ち着いてくださいよ、司令官起きたばかりなんですから!」アセアセ

提督「吹雪もいいぜ、ほら」コイコイ

吹雪「っ!?」ジワァ

提督「我慢するなよ、泣いてもいいから」

吹雪「司令官・・・・・・」ウルウル

タッタッタッ・・・・・・

ダキッ

吹雪「うわぁぁぁぁぁぁぁん!! 司令かぁぁぁぁん!!」ギューッ ポロポロ

提督「心配させてごめんな吹雪」ナデナデ

ミラ「本当に良かったよ、アンタが無事で」グスッ

提督「ミラさんも、迷惑かけてすみませんでした」

ミラ「無事ならいいんだ」


妖精「提督!? 目が覚めたの!?」

提督「あぁ。お陰様で」

妖精「さっき大和が泣きながら走ってったからまさかと思ったけど」

提督「っ!? そうだ、大和を追いかけねぇと」ガバッ

そう言うが早いか提督はベッドから跳ね起き、腕の点滴を乱暴に外す

妖精「ちょ、何やってんのさ!?」ギョッ

提督「今はこうしちゃいられねぇんだ!!」ダッ

ベッドから立ち上がり、走ろうとした瞬間

提督「!?」クラッ

提督「あ、足が動かねぇ!?」ヨロヨロ

激しい目眩に襲われる。足もおぼつかない。数日間寝たきりだったのだ、当然体が鈍っている

吹雪「司令官!?」ガシッ

提督「悪ぃ吹雪」

妖精「あぁもうっ!!」ダッ

懐から傷薬を取り出した妖精は、提督に駆け寄ると点滴痕の止血をし、彼の口の中に牛乳を流し込む

妖精「上着の左胸ポケット!」

提督「っ!? ありがとう!!」ゴソゴソ

かけてあった上着から何かを取りだして、今度こそ提督は大和を追いかける

提督(分かる! あいつが何処にいるのか!)タッタッタッ

先ほどの体の鈍りを全く感じさせない足どりで提督はどんどん大和の後を追う。その行き先は・・・・・・

ーー
ーーーー
ーーーーーー


屋上

大和「何で・・・・・・逃げてしまったんでしょうか」

大和「あの人の傍にいたいのに、傍にいると罪悪感に押しつぶされそうになる・・・・・・やっぱり提督を傷つけた私に、彼の傍にいる資格なんて・・・・・・」ポロポロ

提督「見つけたぞ、大和!!」

大和「っ!?」バッ

提督「・・・・・・」スタスタ

大和「提督・・・・・・」フイッ

提督「本当にすまなかった!!」土下座

大和「っ!?」

提督「お前を傷つけるような事をして。お前に寂しい思いをさせ、不安にするような事ばかりしていた」

大和(違う・・・・・・やめて・・・・・・)

提督「本当に俺が悪かった。この事は一生かけてでも償っていく! やれというならこの場で腹を切ってでも詫びる!だかr・・・・・・」

大和「やめてッッッ!!」

提督「っ!?」

大和「・・・・・・何謝ってるんですか! 悪いのは全部私なんです! 貴方を疑い、傷つけた!」ポロポロ

大和「こんな私に・・・・・・貴方の傍にいる資格なんてないんです!!」ポロポロ

提督「そんな事・・・・・・」

大和「なのに・・・・・・!! 提督がいないと私は辛くて堪らない」グシグシ

提督「・・・・・・」スッ

大和「・・・・・・こんな私に提督を愛する資格なんてないんです。でももし・・・・・・」








大和「もし許されるなら・・・・・・提督、貴方とやり直したい」






大和「提督、本当に申し訳ありませんでした」土下座

提督「・・・・・・」

提督「何言ってんだ、そんなもん無理に決まってんだろ」

大和「っ!?」

提督「俺達別れてねぇのに何でやり直す必要があるんだ? 勝手に終わらせんじゃねぇよ」

大和「え・・・・・・!?」ジワァ

提督「お前に初めて会った時、確かに俺はお前にヤマの面影を見て取った。何かにつけてヤマと比較していた」

提督「でも今は違う。いや、お前に告白した時には既に違った」

提督「俺は大和に惚れていたんだ。ヤマの生まれ変わりとしてではなく、一人の異性として、お前に惚れていたんだ」

大和「っ!?」

提督「俺はもうお前がいないと生きていけねぇ。だから」ゴソゴソ

大和「?」

徐ろに大和の前に跪き、小さな小箱を差し出す

パカッ

大和「っ!?」

提督「大和、俺と結婚してくれ」

箱に入っていたのは結婚指輪だった。銀色に輝くリングは単純な形ながら非常に美しく感じる。そしてそのリングの上にはダイヤモンドが付いている

大和「私なんかで・・・・・・」フルフル

大和「私なんかでいいんですか・・・・・・?」

提督「お前以外考えられねぇよ」

大和「・・・・・・喜んで」

提督「!」

大和「喜んでお受け致します!!」ポロポロ

提督「良かった・・・・・・」ホッ

提督「ほら、指出して」スッ

大和「あ・・・・・・」

提督「お、やっぱりピッタリだ」

大和「提・・・・・・督・・・・・・」

提督「一生幸せにするからな、大和」

大和「っ!!」ダキッ

提督「おわっ!?」ギューッ

大和「提督、大好きです!! 一生貴方を愛します!!」

大和「本当に・・・・・・本当に良かった」ポロポロ

大和「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」ギューッ

提督「・・・・・・」ナデナデ

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ホラ、ナキヤメッテ。キレイナカオガダイナシダゾ

ウワァァァァァァン!!

??「・・・・・・」

??「彼の事が心配だった?」コツコツコツ

??「まあね。君の麻酔医としての補佐もあってオペは成功した。でも彼の心を治すのは僕には無理だったな」

??「でも、もう彼女がいるから大丈夫ですね」

??「これで僕達も君に恩返しができたかな、櫂君?」

??「彼がいなかったら私達はあの日、一生後悔してたかもしれない」

??「櫂君のお陰で僕は夢を叶え、そして君と結婚できたんだ。彼は僕達の恩人だよ」

??「うん////」

??「でも勝手にオペしちゃったからもうすぐ契約切られるかな」ナハハ

??「所長から他の派遣先聞いてみましょう」

??「ごめんね、君まで巻き込んじゃって」ナデナデ

??「ん・・・・・・」チュッ

??「!」

??「私は貴方の妻よ? 貴方と一緒にいれたらそれでいいんです////」

??「ははは。僕もさ」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


提督「え? 若い先生?」

文月「うん。その人が司令官を助けてくれたんだよぉ」

北上「他の医者が前列が無いとかリスクが高いとか言ってたのにその人は一切迷わなかったんだ」

大鳳「確かこんな漢字の名前でした」カリカリ

提督「・・・・・・!?」

吹雪「因みに手術の後に話してくれた女の人もいたんです」

大鳳「その人も同じ苗字でこんな漢字の名前でしたよ」カリカリ

提督「!? は、ははは。まさかなぁ」ポロポロ

大和「提督? どうしました?」

提督「とんだサプライズだ。あの二人に助けられるなんて」グシグシ

提督(ありがとう、兄ちゃん、姉ちゃん)

提督「にしても驚きだ、まさかあの歳で医者に、しかもドクターXになっていたのか」

文月「ドクターXって?」

提督「ドクターXってのは、手術が確立されてねぇ危険なオペも行って、命を天秤にかける事もあるから、悪魔の外科医と言われてる人達だ」

提督「でもそれは違う。俺からしたら、彼らは命を救うためにはなんでも行うという、自分を守る事より命の可能性に賭ける事のできる熱い心を持った、凄い技術者だ」

提督「一般の医者が己の保身のために匙を投げるハイリスクなオペを進んで開拓していく、言ってみたら医術の先駆者達さ」

吹雪「・・・・・・」

提督「? どうした吹雪?」

吹雪「私、医者になりたいです!」

提督「・・・・・・お前、医者がどれだけ辛いか分かっているのか?」

提督「人の命を預かる仕事だ。生半可な覚悟じゃ務まらねぇぞ」

吹雪「それでも私は! 彼のように多くの人を救いたいんです!」

提督「・・・・・・お前が決めた道だ、俺に口出しする権利はねぇ。だけど、医師免許を取ったら逃げる事は許されねぇぞ?」

吹雪「当然です!!」

提督「・・・・・・なら頑張れ」ナデナデ

吹雪「はい!」


ミラ「大和、迷いは消えたかい?」

大和「はい!」

ソラ「良かった」ホッ

リク「義兄さんの事、よろしくお願いします」

元帥「ところで櫂、お前この後どうするつもりじゃ?」

提督「どうするって退院するけど」

元帥「馬鹿者、軍を抜けるかどうかじゃ」

提督「・・・・・・」

団長「もう艦娘は戦いの場に出向く必要もない。同時に提督も必要なくなったしな」

副長「軍やめて他んとこ探すかっちゅうこっちゃ」

提督「どっちにしろ一線は退くさ」

大和「私達はどのようなご決断でも貴方に着いて行きます」

ーー
ーーーー
ーーーーーー


提督「この鎮守府ともおさらばか」

大和「思い出が詰まってますよね」

北上「最初は吹雪との二人三脚」

大鳳「北上さんや私のどんちゃん騒ぎ」

文月「勉強や訓練以外にも楽しい事ばっかだったよぉ」

利根「当然出撃もこなしたのぅ」

吹雪「こうして来れたのも全て司令官のお陰です」

提督「俺だけじゃねぇよ。皆がいたからさ」

大和「・・・・・・////」

提督「そろそろ出発だ。皆引っ越し業者に荷物渡したか?」

艦娘「はい!」

提督「よし、じゃあ歩いてくか」

艦娘「は・・・・・・って、えぇっ!?」ギョッ

吹雪「ここからですか!?」

提督「当たり前」

北上「鬼ー、人でなしー!!」

提督「うるせぇ!」

大鳳「着くのいつですかぁ?」

提督「たぶん二、三時間で着く」

文月「司令官おんぶして~」

提督「最初は自分の足で歩こうな? 疲れたらおぶってやる」

文月「うん~」ニパァ

利根「食事はどうするんじゃ?」

提督「今日は外食」

大和「提督」

提督「お前もか、何だ大和」


大和「あ、愛してます////」

提督「」

艦娘(さり気なく愛を叫ぶ大和さん可愛い)

提督「俺もさ」ナデナデ

大和「ん・・・・・・////」スリスリ

提督「お前ら、俺と大和ホテル行ってるから先に向かってくれ」

妖精「行かせないよ?」ギロッ

提督「はいすみませんでした」

大和「むー・・・・・・」

吹雪「妖精さんも一緒に来ますよね?」

妖精「誰がこのバカップルのストッパーになるのさ?」

提督「本当にありがとうな」

妖精「いいって事よ」

提督「じゃ、行くか」

艦娘「はい!」

文月「行くよぉ!」タッタッタッ

吹雪「待って文月ちゃん」

北上「元気だねぇ」

利根「お主が言うか」

大鳳「私達もさほど変わりませんよ」

ワイワイ

提督「・・・・・・」








『お幸せに、櫂ちゃん』






提督「っ!?」バッ

提督「・・・・・・あぁ。ありがとうな」

大和「どうしました?」

提督「お幸せに、だってさ」

大和「! はい!」ニコッ

妖精「幻聴かい?」

提督「多分な」

大和「そんな事ありませんよ」

シレイカーン、ヤマトサーン、ヨウセイサーン!!

妖精「はいはい、今行くよ~!」テテテテ

提督「さ、行くぞ」スッ

大和「はい」ギュッ

スタスタスタ・・・・・・

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10年後

大和「~♪」コトコト

提督「楽しそうだな大和」

大和「えぇ。今日は少しお出かけをするから」

ドタドタドタドタ・・・・・・

文月「おはよう司令官、大和さん!」

提督「おう、おはよう」

大和「おはよう。どうしたの文月ちゃん?」

文月「生徒会から呼び出しがあったんだぁ。朝早くから大変だよぉ」イソイソ

提督「大変だな引退したのに」

大和「はい、お弁当」スッ

文月「ありがとぉ、行ってきまーす!!」ダッ

提督「ほれ、文月」ポイッ

文月「ほわぁ、菓子パン?」

提督「何も食わねぇと力出ねぇぞ」

文月「ありがとぉ司令官」パクッ

タッタッタッ・・・・・・

提督「忙しないなぁ、受験生なのに」


吹雪「おはようございます、司令官、大和さん」

提督「おはようさん」

大和「今日はお休み?」

吹雪「ううん、今日はゼミの後輩指導。午後からだから」

北上「ふわぁぁぁ、おはよー」ノビー

提督「おはようさん、クソニート」

北上「誰がニートだ、ちゃんと稼いでるじゃんかー」

提督「家から出ろよ引き籠り」

大和「まぁまぁ朝から」

北上「確か利根っちと大鳳は今日朝帰りだっけ?」イタダキマース

提督「あぁ。静かにしてやれよ?」

北上「はいはーい」モグモグ

吹雪「二人も大変だよね、今じゃ忙しい日々だし」

提督「まぁな。本人が楽しんでるならそれが一番だ」

ガチャ

大鳳「ただいまー」

利根「今帰ったぞ~」

大和「お帰りなさい。一緒に帰ってきたの?」

大鳳「えぇ。利根さんと駅で会ったから」

利根「ちょうど良かったしのぅ」

提督「有名人は大変だねぇ」


利根「吾輩は少し寝てくるとしよう」フワァァァ

大鳳「私も寝てくるわ」ノビー

北上「はいはーい」ノシ

大和「静かにね?」

利根「うむ」

スタスタスタ・・・・・・

提督「じゃ、そろそろ仕事に」スッ

大和「分かったわ」

提督「行ってくるよ」スタスタ

吹雪「行ってらっしゃい!」

北上「行ってら~」

大和「貴方」トコトコ

提督「ん?」クルッ

チュッ・・・・・・

大和「行ってらっしゃい」

提督「おう」ナデナデ

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大和「そろそろかな?」

北上「んぁ? 何処か出かけるの?」

大和「えぇ。留守番お願いしてもいい?」

北上「自宅警備の達人に任せなって」ニヒヒ

大和「行ってきます」スタスタ

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大和(私達が鎮守府を引っ越してから10年。市役所への届け出で提督と私は夫婦に、皆は書類上は私達の養子という事になり、それぞれの道を歩み出した)

大和(22歳になった吹雪ちゃんは、進学した医大で歴代トップの成績を修めている。今は卒論を作り終わって院への進学待ち)

大和(北上さんは26歳。持ち前の知識を活かして執筆したライトノベルが異例の大ヒット。生活の片手間に書いた小説が悉くヒットして印税のみで億万長者になった)

大和(大鳳さんは自身の夢を叶えて料理評論家になった。その的確かつ客観的な評価、そして自身の体験談を交えた自筆の本のヒットにより、27歳にして世界中から注目される存在に)

大和(文月ちゃんは18歳。この辺でトップの進学校で主席。スポーツも万能で生徒会長も務めていた、正に学校のアイドルね。でも何故か告白は全て断っているのよね)

大和(利根さんは提督との約束通り、世界的に有名な料理人の下で5年間修行し、今はその人の下で働いている。その腕前と発想から28歳で料理界のホープとも呼ばれてる)

大和(29歳となった提督は一線は退いたものの、艦娘が居なくなった軍を盛り立てるために霊峰さんと一緒に後進育成の教官になった。今では教え子から絶大な支持を得ているみたいね)


「大和ー、遅いわよー!」

大和「! ビス子にコウちゃん、遅れてごめん」タッタッタッ

ビスマルク「やっと揃ったわね」

港湾「ハヨ行コ!」ワクワク

大和(霊峰さんの奥さんであるビスマルク改めビス子と、副長さんの奥さんの港湾棲姫ことコウちゃんとはよく週末に出かける親友になった。コウちゃんが副長さんの真似をして関西弁を使うようになったのは驚いたわ)

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大和「~♪」スタスタ

提督「よう大和」

大和「! 貴方! 今帰り?」ギューッ

提督「まぁな、そっちもお出かけの帰りか?」

大和「うん! 早く帰ろ、櫂ちゃん」ニコッ

提督「おいおい、外は恥ずかしいって」

大和「最近軍はどう?」

提督「特に問題無さそうだ、目立った事もないし」

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提督「ただいまー」

ドタドタドタドタ・・・・・・

「お父さん、お母さん!」ダキッ

提督「おっとっと、今日は何時に起きたんだ? 休日だからって昼まで寝てたのか?」ナデナデ

「10時だよ、朝ご飯の後ちゃんと勉強したもん!」ニパァ

大和「妖精さんは分かりやすかった?」

「うん!」

吹雪「お帰りなさい司令官、大和さん」

北上「今日も異常なーし」ニヒヒ

大鳳「平和ね~」

文月「後であたしもお勉強教えてあげるね?」

「本当に? ありがとう文月お姉ちゃん!」

義理の姉達囲まれているのは提督と大和の間に産まれた8歳の娘である。親バカ二人曰く「海原家の天使」であり、今は小学2年生である

利根「久々に吾輩が晩ご飯を作ったからの!」

大和「ありがとう利根さん」

大和(本当に・・・・・・幸せ)

提督「大和・・・・・・」ナデナデ

大和「天国のヤマさんも・・・・・・見守ってくれてるかしら」

提督「! あぁ、きっとな」

妖精「あの娘のためにもこの平和を維持しなきゃね」

提督「当然」

提督「さ、行こうぜ!」

大和「うん!」




以上で終わりです。こんな駄作に付き合って頂いて誠にありがとうございました。また何か思いついたら書くかもです

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