希「灯るロウソクと消えるおやつ」 (30)
前作リンク
怪盗エリーの恋泥棒 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1488714467/)
短編集出すと言いましたが想定より長くなりそうな為先に個別でという形にさせていただきます
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492077278
希「灯るロウソクと消えるおやつ」
ウチ、東條希。元転勤族で、今ゾンビ
あ、ゾンビゆーても別にゲームみたいにうーうー言いながらどっかほっつき回っとるわけやないよ
普通に朝起きて、仕事して、お風呂も入るし、夜はもちろん寝る
聞いた感じどこにでもおる普通の人間やろ?でも、ゾンビなんよ
じゃあなんでウチが死んでるのか生きてるのかよくわからんのかっていうとね…
おーい希ちゃん!おーやつっだよーっ!
あ、ごめんね。呼ばれちゃったから、続きは後でな
穂乃果「ろうそくの火が消えたよっ!今日は何かな?何かなぁ?」
ことり「今日はチーズケーキを作ったよ♪」
穂乃果「うわぁー美味しそう!涎が止まらないよ~!」
希「あはは穂乃果ちゃんはいつもほんとに楽しそうやね。ウチ花陽ちゃん呼んでくる~」
花陽「あ、大丈夫!ようやく片付いたよ!」
希「お、みんな揃ったねじゃあ手を合わせて…」
「「「「いただきまーす!!!!」」」」
穂乃果「ふぃ~おいしかったぁ~」
希「ごちそうさまっ」
ことり「じゃあ片付けるね~」
花陽「花陽も手伝います!」
ことり「ありがとね、お願い」
穂乃果「あ、希ちゃん!今日あの日だよね」
希「そうやね。あとで準備せんと」
穂乃果「ごめんね、今日もよろしくお願いします」
希「いやいやそんな畏まらなくてええよ!」
希「今日は調子いい感じやから、ガッツリいっちゃって!」
穂乃果「えっでも…悪いし」
希「いーのいーの!三人の中やと一番付き合い長いしこれくらい遠慮せんといて!」
穂乃果「ごめんね…じゃあ右手、出して」
希「はーい」
穂乃果「いくよ…」ガブッ!
希「うっ…!!」
穂乃果「あぁぁごめんごめんね大丈夫?いや、大丈夫じゃないよ…止めなきゃ!」
希「大丈夫。ほら、もう用意してあるから!それにすぐ治まるよ」
穂乃果「ううっ全然大丈夫じゃないよぉ…ごめんね希ちゃん」ポロポロ
希「ほらもう治った!だからそんなに泣かんといて」
穂乃果「うん…」
ウチは死んだ
もう何年前だったか…うーん別にそんな前やないけど
ウチが今こうして生命としての活動をしていられるのは穂乃果ちゃんがいたから
穂乃果ちゃんはもう何10年も前にこの世を去っている
小さい頃に両親が相次いで亡くなって、その後親戚に引き取られて暮らしてたけど、毎日酷い虐待を受けてたらしいんよ
不本意に受ける殴る蹴るの暴力
何もない時代だったとはいえ、度が過ぎる程粗末な食事
服は2着しかないからずっと同じ物を着回し
何故自分はこんな酷い扱いなのか、と義父母に聞いたら…
そこから先の記憶がないってね。こんなの酷すぎるやろ
だから穂乃果ちゃんはしょっちゅう言っとる
今が最高。って
穂乃果ちゃんの不幸な人生は幕を下ろすと神と悪魔を同時に呼んだ
神は、次は幸せな人生を送るように輪廻の器に入れよう、来世へ再臨する機会を与えようと言った
悪魔は、自分をこんな目に合わせた人間を許すな、憎悪を燃やす才能があるから現世の人間を死に導く使いにしよう、と言った
両者の意見は対立し、最終的には神の意見を通すことになったけど、どうしても未練のあった悪魔は穂乃果ちゃんに一つの呪いを齎した。
それは、再生の力。所謂不老不死やね
これは他の誰かにも移すことができるんよ
だからウチは、今再び地に足を付けている
でもこの力には大きなデメリットがあった
このデメリットこそさっきのウチと穂乃果ちゃんのやり取りやね
そう、穂乃果ちゃんはね…他者の肉体を自分の体内に取り込まなければ朽ち果ててしまうんや
穂乃果ちゃんはずっと自分の力を分け与える機会を探していた
身体が自然と他者の肉体を求めていた
そうして街を彷徨い歩いていた時…
丁度その時、ウチが死んだ
でもウチは自分がなんで、どうやって死んじゃったのか覚えてなくて、穂乃果ちゃんに聞いても何故か教えてくれない
もちろんウチだけやない、ことりちゃんも花陽ちゃんにも自分の死因は教えないつもりらしい
一つヒントとして教えてくれるのは、自分が本能的に強く反応することに関係があるってことやね
ウチは…自分やとちょっとわからんなぁ…
穂乃果ちゃんは常に誰かを食べ続けなきゃいけないってわけやないからいつも別の方法である程度空腹を紛らわせている
定時にロウソクに火をつけて、消えたらおやつを食べる
不思議なロウソクなんよ。必ず同じ時刻に火が消えてね、なんだかスピリチュアルやね
今穂乃果ちゃんは寝ちゃってるから静かにね
なんか食べた後は精神的な疲労がどっと一波押し寄せるみたいで…いろいろ気を使ってる証拠やね
えーと、説明しなきゃいけないことって、これくらい?
希「大体喋ったよ。ちょっと休憩」
希「あ、他に聞きたいことある?」
絵里「あるわよ!山ほどね!」
絵里「土地の所有者が急に失踪して怪しいと思って山の中調べたら家があってしかも人がいて住んでる人間尋ねたら意味のわからないことベラベラ喋りだして…」ゼェゼェ
希「長い、速いでわからんなぁ」
絵里「あーもう!いいわ、ちょっと頭が混乱してるから次回また来るわね」
絵里「絶対逃げるんじゃないわよ!」
希「別に逃げてもないやん…」
希(でも…気をつけんと。これ以上外部の人間と関わったらあかんし)
ことり「おかえり~どこに行ってたの?」
希「んーちょっと野生のちんすこうを探してたよ」
ことり「もう、希ちゃんったらまた
花陽「な、何ですかそれは!?花陽は見たことないです!今度探してみなきゃ」
ことり「あはは…多分見つからないよ…」
花陽「ええっ!?そうなんですか?残念です…」
希「純粋さって…大事かもしれんね」
ことり「いつかは謝らなきゃダメだよ?」
希「うん…ごめん花陽ちゃん今謝っとくわ」
ことり「本当は何してたの?」
希「…絶対に秘密にしてくれる?」
ことり「うん、誓うよ。だから…言って」
希「外の人間が来たから追い払ったんよ」
ことり「うそ…ついに立ち入り調査が…」
希「また来るって言っとったから、いつかわからんけど…その時はウチがなんとかするからことりちゃんは2人をお願い」
ことり「わかったよ!大変なことになっちゃったね…」
希「うん、でもいつも通りにしてればきっと大丈夫や。穂乃果ちゃんは今日食べたしね」
ことり「地主の件は聞かれた?」
希「うん、やっぱね。聞かれると思ったよ」
ことり「上手くやってくれるといいなぁ…」
にこ「もう私には関係ないでしょ!あんな薄気味悪い土地なんて思い出したくもないわ」
絵里「ふーん。何がそんなに気味悪いの?」
にこ「そ、それは…あれよ!なんか獣の鳴き声みたいなのが聞こえるから」
絵里「猛獣が出るなら市に届け出て捕まえてもらうか保護してもらわなきゃね」
にこ「えっ!?処分?」
絵里「ええ、私が見たところ木に血痕みたいなものもあったし危ないわね」
絵里「危険は起こる前に対処。これ私たちのルールなの」
にこ「待ってよ!」
絵里「何?」
にこ「処分ってことは…あの山に住んでいる生き物は…」
絵里「生態系を乱す恐れがあるとみなされたら銃かガス室か…どうかしらね」
にこ「そ、そんな…」
絵里「どうしたの?よかったじゃない。あなた嫌いなんでしょ?あの土地」
にこ(どうしよう…このままじゃあの家が!)
にこ「ちょっとだけ待ってくれない?私確かあの山に去年木の実植えたからどうなったか見たいの」
絵里「それくらいなら私たちが
にこ「自分で行くからいいわよ!」
絵里「…そ、ならどうするかすぐに決めなさい。私は2日後にもう一度立ち入り調査するから」
はぁ…はぁ…
ことり「希ちゃん!人が来るよ!」
希「思ってたより早かったね!2人は?」
ことり「家でトランプやってるよ」
希「そっか…頼むで…」
希ー!穂乃果ー!ことりー!花陽ー!
希「…あれ?」
にこ「はぁ…はぁ…あんたたちよく聞きなさいよ!今度ここに
穂乃果「うわぁーにこちゃんだー!久しぶりー!!」
にこ「ちょっと!話途中で折らないで…んぎゃっ!?」ボフ
穂乃果「心配だったよー!にこちゃん本格的にデビューしちゃったから」
にこ「ったく…アイドルってのはそんなもんよ」
にこ「…その、ごめん。私がここを離れなきゃいけなくなった時に人を寄せないようにわざと曰く付き物件にしようと思って…」
希「かえって怪しまれたから外から人が来るんやろ?」
にこ「な!なんであんたが知って…」
ことり「希ちゃん!いいの?」
希「ごめんねことりちゃん。ウチ、やっぱみんなに伝えた方がいいと思うんよ」
花陽「え、何をですか?」
にこ「私が言わなくてももうあんたは知ってるみたいね」
希「うん。あのね、実は昨日外部の人が来たんよ」
穂乃果「えっ…」
希「その時はウチがなんとか追い払ったんやけど、諦めの悪い人でな、もう1回来るみたいやん」
穂乃果「駄目だよそんなの!ここはみんなのお家!誰にも渡さない!」
希「穂乃果ちゃん落ち着いて…あ、にこっちさっき人寄せんように、って言ってたけどどんな感じにしたん?」
にこ「私が突然失踪したってことにしとけば怖がって誰も近寄らないかなぁって…」
希「にこっち」
にこ「ひぃっ!?」
希「ワシワシMAXやで~!」
にこ「ぎゃぁぁあああ!!」
希「アホか!そんな形にしたら絶対捜査入るに決まっとるやろ!」ワシワシ
にこ「そ、それしか思い浮かばなかったのよ~!」
穂乃果「あ~どうしよう!?普通に暮らしていれば大丈夫かな?」
ことり「大丈夫じゃないと思う…穂乃果ちゃんが今外で仕事やれてるのが奇跡なのに…住居はもっと大変だよぉ」
にこ「は!?あんた仕事やれてんの?」
穂乃果「うん!だって流石に家でとれる野菜や果物じゃ季節とかの影響もあって安定しないから…」
にこ「どこで働いてるのよ」
穂乃果「パン屋さんだよっ!朝の仕込みとレジ打ち!」
にこ「よく通ったわね…」
穂乃果「そのお店はもう今年65歳のお婆ちゃんが1人で切り盛りしててね、人手が足りなくてしょうがなかったらしくて。穂乃果が見かけて働かせてってお願いしたらその場でオッケー!」
にこ「偶然というものは恐ろしい…て、また話が脱線しちゃったじゃないん本題に戻すわよ!」
にこ「まず穂乃果!あんた今いくつ?」
穂乃果「えぇーっ?わかんないよ~もうずうっと寝てたし」
穂乃果「穂乃果が動き出したの希ちゃんが死んじゃったあの時の数年前だし…」
にこ「そう…希は?覚えてないの?」
希「ウチが死んだんは多分2年前やと思う…16歳の時かなぁ」
にこ「てことはあんた私とタメね…ちょっと待ちなさいよ。2年前希が死んだってことはそれまで穂乃果はどうやって生き延びたのよ!身体貰う相手いないじゃない!」
ことり「えっ穂乃果ちゃんにこちゃんにもそこまで話してたの?」
穂乃果「うん、まぁにこちゃんになら言っても大丈夫かなって思って」
にこ「最初聞いた時は頭おかしいのかと思ったわ。今でもちょっと現場は直視出来ないし…」
ことり「見たんだ…食べるとこ」
にこ「その件は興味があるなら後で話すわ。とりあえずまず歳の確認」
にこ「希は一人暮らしだったんでしょ?それでまだ2年くらいなら失踪→保護という形に出来なくもない」
にこ「まぁ穂乃果は確実に無理だとして…問題は花陽とことりね。あんたたちは2年以内に死んだってことだから、事件として扱われていたら除籍されてるけど、行方不明のままだとまだ戸籍登録されているかも…」
穂乃果「にこちゃん」
にこ「何よ?」
穂乃果「全然話についていけないよ~!戸籍って何!?」
にこ「あんたねぇ…私だってあんたたちがメルヘンチックな暮らししてればそれでいいのよ!でも現実はそう甘くないから今どうするか考えてんじゃない!」
希「にこっちはね、万が一ここに住めなくなったときの話をしてるんや。確かにややこしいけど、これは大事な話だよ」
穂乃果「そっかなるほど!でもやっぱ穂乃果はここを離れたくないよ」
ことり「どうすればいいんだろ…」
コンコン
にこ「はーい…ってあんたなんで…!!話が違うじゃない!」
絵里「気が変わって今日来ることにしたわ」
絵里「予想どおり。あなたたちグルだったみたいね」
にこ「ふざけないでよ…」
絵里「それはこっちの台詞よ。説明してもらおうかしら」
花陽「あわわ…お姉さん誰?」
絵里「私は絢瀬絵里役場の職員よ。怪しい土地に怪しい人が住んでいるって聞いたから来たの。あなたまだ小学生くらいでしょ?こんな所にいないで早くお家に帰りなさい」
花陽「えっ?花陽のお家はここですが…」
絵里「あなたたちが遊んでいる分には結構。私も口は挟まないわ。でもこんな小さな子どもも巻き込むなんて許せない!」
にこ「ちょっとあんた言ってることがおかしいわよ!」
絵里「調査させてもらうわ」
ことり「あっ勝手に入らないでよ~!」
絵里「ここの家主は誰になるの?ちゃんと住民登録しなきゃ駄目じゃ
バシ-ン!
穂乃果「帰ってよ!もう二度と来ないで!!」
絵里「いった…暴力で訴えるわよ」
穂乃果「知らないよ!勝手に入ってきたそっちが悪いんだから!」
希「そうや。こっちこそ建造物侵入の容疑かけられるんやで」
絵里「…何よ。やる気?」
にこ「やめて!私が悪かったわ」
絵里「ようやく認めたわね」
にこ「いろいろ有耶無耶にしたことは謝る。だからお願い、もうあんたたち市の職員はこの家に関わらないでくれない?」
絵里「そんなこと簡単よ。ちゃんと手続きさえすればね」
絵里「どうして頑なに申し出をしないのかわからないけど、これ以上登録を拒むなら強制撤去。これは免れることができないわ」
穂乃果「許せないよ!こんなの!」
にこ「ホント頭にくるわね!こうなったら全面戦争よ!」
希「穂乃果ちゃんにこっちもちょっと頭冷やそ?お腹空いちゃうよ」
穂乃果「そ、そうだね。ごめん」
ことり「………」ソワソワ
穂乃果「ことりちゃんどうしたの?」
ことり「ちょっと火の元が気になって…」
ことり「確認してくるね」
穂乃果「あっ…」
希「ねぇ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「うん?」
希「ちょっと耳貸して」
穂乃果「なになにー?」
希「ことりちゃんの死因…火事やろ」ボソ
穂乃果「…すごいね希ちゃんは。そうだよ、その通り」
穂乃果「ことりちゃんは火災、それも放火で死んじゃった。お父さんもお母さんも一緒に」
希「そっか。ことりちゃんいつも火を使った後妙にソワソワするからね」
穂乃果「今まで通り内緒にしてね、この事は」
希「もちろんやん」
にこ「決めたわ。私市役所に行って話つけてくる。穂乃果、行くわよ!」
穂乃果「穂乃果難しい話わからないけど…大丈夫かなぁ?」
ことり「穂乃果ちゃんが行くのがいいと思うよ。一番にこちゃんとの付き合いが長いから…あ、お腹空きそうになった時のためにお菓子持ってって」
穂乃果「ありがとう!そうだね、穂乃果が行かなきゃ!にこちゃんお願い!」
にこ「よーしこの家を守るわよー!」
希「2人とも気をつけてな。町の人は狡猾やから」
花陽「えー?穂乃果ちゃんとにこちゃん行っちゃうんですか?」
穂乃果「すぐ帰ってくるよ!だから待ってて!」
穂乃果「パン屋さんでお婆ちゃんのお手伝いする時は反対の道だからこっちの方はあんまり来たことないなぁ」
にこ「私は売れる前はよくあの駅で歌ったりしたから思い出深いとこがあったりするのよね」
穂乃果「なんだか人が集まっているよ!どうしたのかな?」
にこ「事故でもあったんじゃない?」
穂乃果「………」
にこ「どうしても気になっちゃうんでしょ?こういうことは。行きましょ」
穂乃果「う、ごめんね…」
穂乃果「どうしたんですか?」
オバちゃん「交通事故だよ。危ないねぇ。金髪の綺麗なお姉ちゃんが車に撥ねられて虫の息といったところだよ」
穂乃果「かわいそう…その女の人は今どこに?」
オバちゃん「向こうで救急措置受けてるそうだけど…」
ザワザワ…
にこ「さっきより騒がしくなったわね」
穂乃果「にこちゃん行こう!オバちゃんありがとうございました!」
にこ「亡くなったみたいね…」
穂乃果「そっか…残念だね…」ウズウズ
にこ「抑えなさいよ。こんなに人がいちゃまず無理なんだから」
穂乃果「ごめん…大丈夫だよ」
身元の確認が取れました。市役所の職員の絢瀬絵里さん。年齢は…
穂乃果「え…うそ…まさかあの…」
にこ「罰が当たったのよ。ザマァないわね。これで安心して帰れるわ」
穂乃果「絵里さん…」
にこ「あんなやつどうだっていいじゃない。ほら、行くわよ」
穂乃果「………」
にこ「ムカつくやつがいなくなってよかったじゃない」
穂乃果「…ごめん、にこちゃん」
にこ「ちょっと!あんたには関係ないでしょ?」
穂乃果「関係あるよ!大嫌いだったけど…でも…助けたい…!」
にこ「お人好しにも程があるわ!ばっかじゃないの?」
穂乃果「馬鹿でいいよ!穂乃果はずーっとそうやって生きてきたんだから!」
にこ「はぁ…全くしょうがないわねぇ…」
にこ「いい?絶対に見られたらダメよ!」
穂乃果「わかってるよ!」
にこ「警察と消防、それから野次馬の目を常に見てなさい。こんなにたくさんの視線を掻い潜るのは難しいけど、たった一瞬、ほんの一瞬だけなら必ずあの絢瀬から全員の視線が外れる時があるから」
穂乃果「どこを貰えばいいかなぁ?」
にこ「左手の小指にしときなさい。一番隠しやすいわ」
穂乃果「そうするよ。ありがとう!」
にこ「しっかりやりなさいよ」バシッ
穂乃果「一瞬の隙…一瞬の隙…」
穂乃果「……!!今だ!」サッ
穂乃果「絵里さん、小指もらうね」
穂乃果「いただきます」
ゴキッ
穂乃果「う…不味…身体の損傷が激しいからかなぁ」
穂乃果「いつもより再生に時間かかるかも…意識も小指も」
穂乃果「しょうがないよね…絵里さんごちそうさまでした」ペコ
にこ「おかえり。バレてないでしょうね」
穂乃果「もちろん!思ってたより人がいなくて助かったよ」
にこ「生死を彷徨ってる時はどんどん人が集まるのに死んだってわかると一斉に散らばるのよね。人間の醜さが垣間見れるわ。私も言えたもんじゃないけど」
穂乃果「心臓がまた脈打つのが1時間後で、意識を取り戻すのが18時間後だったかな?あの食感だと」
にこ「げぇ…気持ち悪くなるから言わなくていいわよそんなこと」
にこ「というかよくわかるわね。流石ってとこかしら」
穂乃果「希ちゃんが一緒にいてくれるまではあんな感じで死んじゃった人から貰ってたからね。結構詳しいよ」ドヤ
にこ「詳しく聞くのは遠慮しとくわ…」
にこ「とりあえずどっか泊まりましょ。そんで明日あんたたちに魘されているあいつの顔でも拝んでやればいいわ」
穂乃果「絵里さん…穂乃果の顔見たらどう思うのかな」
ここはどこ?
蜃気楼みたいに景色が朧げでよく見えない
向こうから女の子が歩いてくる…
花陽「酷いです!私たちの暮らしを滅茶苦茶にして!」
ごめんなさい…伝えたいけど、できないの…
また1人、こっちへ歩みを進める
ことり「どうしてあなたは意地悪するんですか?」
ごめんなさい…命令だったの…意地悪するつもりはなかったの…
あ…最初にあったあの子ね…
希「ウチの話を最後まで聞いてくれなかったから…」
そうね、その通りよ…ごめんなさい…
地主の子ね、悪いことしたわ…
にこ「最低。ホント救いようがないわ」
ごめんなさい…今になってようやく自分の愚かさに気がついたわ
あの子…こんなに遠くにいるのに一番星みたいに目が光ってる
怖い…嫌…来ないでよ…
穂乃果「許さない。あなたのこと、絶対許さない!!」
穂乃果「骨の髄まで食べてやる!!」
やめて!私が悪かったわ!謝るから!お願いこっちに来ないで!
身体が熱い…燃え尽きそうなくらい…
いや…誰か助けて…嫌よ食べられるなんて…
やめて…やめて…
絵里「やめてっ!」ガバッ
にこ「あ、起きた」
絵里「はぁ…はぁ…あれ…ここは…?」
穂乃果「病院だよ。よく魘されてたけど大丈夫
絵里「どうしてあなたがここに!?いやっ!来ないでよ!」
にこ「聞いた?穂乃果、こいつやっぱクズね。あのまま死なせた方がよかったじゃない」
絵里「あ、待って!ごめんなさい、ちょっと怖い夢見て思わず無礼なことしちゃったわ…そうよ…私は確かに事故で死んだはず…なのにどうして…」
にこ「あんたが絶対に信じるっていうんなら教えてあげてもいいけど?」
絵里「信じる!だから教えて」
穂乃果「絵里さんはね、穂乃果が再生の力をあげたから今また生きてるんだよ」
絵里「…まだ夢を見ているのかしら」クラッ
にこ「あれれ?信じるって言った人はどーこだっけ?」
絵里「ごめんなさい。でも…こんな突飛な話…正直信じられな
にこ「はぁ?」ギロ
穂乃果「確かに信じられないかもだけど、今は疲れてると思うからもう一回寝てた方がいいよ」
絵里「そうさせてもらうわ」
絵里「…」
にこ「顔に落書きでもしてやろうかしら」
穂乃果「やめなよ…きっと絵里さんとも分かり合えるよ」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません