サザエ「東芝が危ないんですって」
フネ「そうみたいだねえ」
サザエ「東芝にもしものことがあったら、私たちどうなっちゃうのかしら……」
フネ「そんなことを私たちが考えてもしょうがないよ」
フネ「私たちにできることは、今まで通り生活することだけだよ」
サザエ「うん……そうよね」
カツオ「……」
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カツオ「ねえねえ、どうしたのさ?」
カツオ「東芝って有名な家電メーカーだよね? 東芝になにかあったの?」
フネ「カツオ……いつからそこにいたんだい?」
カツオ「ちょっと前からだよ。で、東芝がどうしたの?」
サザエ「子供には関係ないの、あっち行ってなさい」
カツオ「ちぇ~っ」
カツオ「なぁ、ワカメ」
ワカメ「なぁに、お兄ちゃん?」
カツオ「お母さんと姉さんが話してたんだけど、東芝が危ないんだってさ」
ワカメ「えっ、危ないってどういうこと?」
カツオ「ようするに、赤字で潰れちゃうかもしれないんだ」
ワカメ「ええっ、大変じゃない!」
ワカメ「東芝が潰れたら、あたしたちどうなるの?」
カツオ「東芝はぼくたちのスポンサーだからね……」
カツオ「もしかしたら、番組が終わっちゃうことも考えられる」
ワカメ「そんなぁ……そんなのやだ!」
カツオ「ぼくだってやだよ」
カツオ「だからさ、ぼくらはぼくらのやり方で東芝の経営を応援しようよ!」
ワカメ「どうやって?」
カツオ「東芝は赤字、赤字ってのは儲けが少なくてお金が足りないってことだ」
カツオ「つまり、お金があればいいってこと」
カツオ「だからさ……東芝のためにお金を稼ごう!」
ワカメ「うん、やろうやろう!」
タラオ「ぼくもやるですぅ」
カツオ「タ、タラちゃん!?」
タラちゃん「ぼくも東芝のために、お金かせぐですぅ」
カツオ「いくらなんでもタラちゃんにはまだ早いよ……」
ワカメ「そうよ、ここはあたしたちに任せて……」
タラオ「やです、やです、ぼくもやるでぇす!」
タラオ「ぼくも入れてくれなきゃ、ママにいってやるです!」
カツオ「わ、分かった、分かったよ!」
カツオ「よぉし、三人で東芝のために頑張ろう!」
オーッ!
カツオ「お父さん、肩を揉むよ」モミモミ
波平「おおカツオ、珍しく気がきくじゃないか」
カツオ「その代わり、ちょっとお駄賃を……」
波平「やっぱりそれが目的か。ちゃっかりした奴だ」
ワカメ「お母さん、あたしが買い物行ってくるー!」
フネ「おや、いいのかい?」
ワカメ「うん、だけどお釣りはあたしのお小遣いにしていい?」
フネ「しょうがない子だね、まったく」
タラオ「パパ、肩をたたくです」
マスオ「いや、今日はそんなに疲れてないからいいよ」
タラオ「やです、やです、叩かせて下さい~」
マスオ「わ、分かったよ……タラちゃん」
カツオ「だいぶ貯まったけど……」ジャラジャラ
カツオ「東芝を救うには、まだまだ頼りないかなぁ」
ワカメ「うん……お父さんもお母さんもそう何度もお駄賃はくれないし」
カツオ「こうなったら仕方ない。よその家にも協力してもらおう」
カツオ「外に出て、仕事をさがすんだ!」
ワカメ「うん、分かった!」
タラオ「はいですぅ!」
裏のおじいちゃん「ほっほっほ、草むしりをしてもらって助かるわい」
カツオ「いえいえ」
カツオ「その代わり、少々お駄賃を……」テヘヘ
裏のおじいちゃん「もちろんだとも、ちゃーんと払うわい」
ウキエ「部屋の模様替えを手伝ってもらって、ありがとう」
ワカメ「どういたしまして」
ワカメ「よかったら、少しだけお金を……」
ウキエ「もちろん払うわよ。あれだけ働いてもらったんですもの」
タラオ「カツオ兄ちゃんとワカメお姉ちゃんは頑張ってるです」
タラオ「ぼくだけなにもしないわけにはいかないです」
タラオ「ぼくもなにかお仕事をさがすですぅ~」トテテッ
タラオ「あれれ? ここはどこですか?」
タラオ「うぇ~~~~ん! 迷子になっちゃったですぅ~!」
サザエ「タラちゃん!?」
タラオ「ママァ~~~~~!」
タラオ「会いたかったですぅ~!」
サザエ「こんなところでなにしてるの、タラちゃん!?」
タラオ「東芝のために、おかねをかせごうとしてたら……」ヒックヒック
サザエ「東芝のため!? ……ちゃんと聞かせてちょうだい、タラちゃん」
波平「バッカモン!!!」
波平「お前たちが東芝の人にお金を届けたところで、会社の人も困ってしまうだろうが!」
波平「よその人からもらったお金はちゃんと返しなさい!」
カツオ「はぁい……」
ワカメ「ごめんなさい……」
マスオ「まあまあお義父さん、カツオ君たちも東芝のためを思ってやったんですから」
フネ「そうですよ、あまり叱らないでやって下さい」
波平「うむ……ならばこの辺にしておくか」
波平「二人とも、誰かのために働くというのは決して悪いことではない」
波平「だが、お前たち子供にはまだ他にやることがあるのも事実だ」
波平「大人の世界に首を突っ込むのは早い」
波平「だから、とりあえず宿題を片付けてきなさい」
カツオ「うげ~」
ワカメ「あたしはもう終わっちゃったもん」
カツオ「ちぇっ、ワカメはしっかりしてるなぁ」
サザエ「あんたがしっかりしなさすぎなのよ」
アハハハハハ……
波平(とはいえ、ワシとて東芝がどうなるのかは気になるところだ)
波平(それにカツオたちの心構え自体は決して悪いことではない)
波平(とりあえず明日、会社帰りにでも東芝本社に寄って、挨拶してくるとするか)
浜松町――
波平「こんにちは」
東芝社長「これはこれは、磯野さん! お久しぶりです!」
東芝社長「近頃はゴタゴタして、そちらにも大変ご迷惑をおかけして……」
波平「いえいえ、とんでもない」
波平「ただ、うちの子たちも心配して、東芝さんのためにお金を集めようとして……」
波平「……ということがありまして」
波平「せめて、子供たちの気持ちだけでも伝えようと思いまして」
東芝社長「そうですか、ありがとうございます」
東芝社長「……」
東芝社長(カツオ君やワカメちゃん、タラちゃんがそこまでしてくれたなんて……)
東芝社長「今のままではいられんな……よーし頑張るぞ!」
この後、カツオたちの熱意が伝染したように、東芝は少しずつ経営状態を回復させていくことになる……。
おわり
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